第138話 圧勝
『……こ、こちらで第一試合の競技はすべて終了しました。35対0ポイントでバウンス国立魔術学園の勝利となります!』
「よっしゃあ!」
「やりましたわね!」
司会の人が第一試合の勝敗を告げる。それと同時にうちの学園の生徒たちから歓声が上がった。
うちの学園の生徒たちの盛り上がりとは裏腹に他の学園の観客席はざわめき立っている。ここ数年のうちの学園の成績から考えれば、全ての競技で全勝することなど考えられなかったのだろう。まだ1勝しただけだが、生徒たちのおかげでうちの学園を見る目も変わってくれそうだ。
……それにしてもまさか全勝とは思わなかったぞ。他の学園よりも生徒たちを教える時間は短かったはずなのだが、まさかここまで成長してくれるとはな。
第一学年ということで、本格的に魔術を学び始める時期だったことが幸いしたのかもしれない。第二、第三学年となるとある程度の基礎が出来上がってしまうと、考え方を変えるのにも時間がかかりそうだ。
……あるいはベルトルト魔術学園の教え方があまりに酷いかだ。ラルシュの態度からするとうちの学園のように学園崩壊はしていなかったみたいだけれど、その辺りは他の学園の試合を見ればわかることか。
「ただいま戻りました!」
「先生、やりましたよ!」
「ああ、ちゃんと見ていたぞ。みんな見事だったな」
第一試合が終わり、生徒たちが上の観客席へと戻ってきた。全員が勝利したこともあって、みんないい笑顔だ。
「ゲイル様、楽勝でしたね」
「ふん、手応えがなさすぎてガッカリしたぞ」
「クネル、ゲイル、まだ試合は始まったばかりだ。油断をせず引き締めていけ」
特に戦闘の競技は圧倒的過ぎたから、2人が油断する気持ちもわからなくはない。とはいえ、まだ第一試合が終わっただけだし、手強そうなエテルシア魔術学園との試合もまだ残っている。
「イリス先生、勝てました!」
「見てましたよ、メリアさん。とってもすごかったです!」
メリアがイリス先生に抱き着く。
的当ての競技は四方に様々な速度で動く的を制限時間内にどれだけ当てるかで勝敗が決まる。的には触れればいいというわけではなく、一定以上の威力がないと当たった判定がなされない。
メリアは的当て競技の第5選手だったが、得意な風魔法で見事に相手選手を圧倒していた。平民特待生として選ばれたメリアの魔術の実力は回復魔術も含めてかなりのものなのだが、少し対人戦に向いていない性格をしている。
しかし的当ての競技であれば、気にするのは的だけなのでメリアは全力を出せるというわけだ。イリス先生のこともあって合宿も今まで以上に頑張っていたし、当然の結果である。
「シリルもよくやったな。ボード競技の最速記録だったぞ」
「ありがとうございます。でも、まだ一試合目ですし、対戦相手にもよりますからね」
シリルはボード競技に参加し、この5試合間の中で最速タイムだった。
ボード競技は魔力をこめると動くボードを操作し、障害物をかわしながら相手よりも先にゴールした方が勝者というルールだ。ボードは毎年同じだが、コースや障害物が変わって年ごとに最速タイムは異なるが、ベルトルト魔術学園との試合ではシリルが最速タイムだった。
シリルは魔力の総量について気にしていたが、この競技はどちらかというと魔力の繊細な操作の方が重要だ。それに冷静な判断力も持っているから、最速タイムだったことにも納得だ。
「戦闘競技の者も見事だったが、次の試合も油断はしないようにな。他の学園はうちの学園と同じように身体能力強化魔術を使ってくるかもしれないぞ」
「はい、気を付けます!」
「もちろん油断はしません!」
「はい、ギーク教諭の言う通り全力を尽くします!」
ベルン、ソフィア、エリーザの3人が良い返事をする。この3人なら俺が言わなくても問題はなさそうだ。ゲイルにも先ほど言い含めておいた。
戦闘の競技はセドリック、ベルン、ゲイル、ソフィア、エリーザの順番だ。他の競技もそうだが、うちの学園はシンプルに強い者ほど後に来る順番となっている。勝利だけを目指すのなら、順番を他の学園が予想できないように変えるという手段もあるが、ここは真正面から戦ってもらうことにした。
ちなみに順番は実際に模擬戦を行ったわけではなく、俺や他の先生方と相談をして決めた。ゲイルからは実際に模擬戦をして決めたいと言われたが、各々の相性もあるし、戦闘の競技参加希望者全員で総当たり戦をすることはできなかったからな。
『続きまして第二試合を始めます。アルファード魔術学園とエテルシア魔術学園の代表選手は会場までお進みください』
「おっと、次の試合が始まるな。試合を見ることも勉強になる。しっかりと見ておくように」
第一試合の総評をしたところで、次の試合が始まる。この2校は次とその次に競い合う学園であるし、自分が当たる相手選手の実力を確認しておいた方がいい。もちろんそれは相手も同様で、先ほどの試合はおそらく全部見られていただろう。見ることもまた戦いである。




