第137話 競技開始
『ただ今より、4校合同による魔術競技会を開始します。初戦はベルトルト魔術学園対バウンス国立魔術学園となります。第一選手は各会場へお進みください』
拡声の魔術によって、司会の大きな声が会場中に響き渡る。いよいよ魔術競技会が始まった。
出場する選手たちを見送り、上にある観客席の座席へと戻ってきた。教師や出場しない選手たちはここでうちの学園の生徒たちの戦いを応援したり、他学園の試合を見ることになる。
残念ながら今回出場することができなかった生徒たちにも試合を見ることはとても勉強になるし、来年と再来年があるからその際の参考にもなるはずだ。
「さて、初戦はベルトルト魔術学園か」
「うちの次の試合はアルファード魔術学園、最後はエテルシア魔術学園の順番だね」
試合は総当たり戦となる。ただし会場はひとつしかないので、2校ずつが順番に戦っていく。第二試合はアルファード魔術学園とエテルシア魔術学園が戦い、第三試合はベルトルト魔術学園対エテルシア魔術学園となる。各試合の合間には休憩時間が設けられており、その間にポーションを使って回復して次の試合に備えるわけだ。
各競技の第一選手がそれぞれの会場へと進む。試合はそれぞれの競技ごとに進んでいき、その勝敗は会場上部に設置してある大きなボードへと書き記されていく。
『的当て競技の第一選手はカシアス=エランディル様対ガレス=ヴェスパリス様、ボード競技の第一選手はクラリス=オルティス様対ノエルダ=レグナード様、戦闘競技の第一選手はガルド=アイン様対セドリック=ルーヴァン様となります』
司会の人が順番に選手の紹介を行う。生徒たちが多い上に貴族の名前は長いから読み上げる人も大変だ。
呼ばれた選手は競技場へ上がり、そこにいる審判の指示に従う。いよいよ魔術競技会の開始だ。
『ただいまのボード競技の勝者はノエルダ=レグナード様となります。第二選手は試合の準備をお願いします』
「よっしゃあ、今ので第一選手はうちの学園の全勝だぜ!」
「やったわね!」
アナウンスが競技場内に響き渡り、生徒たちが歓声を上げる。
それぞれの第一選手の競技が終わり、バウンス国立魔術学園の生徒が全勝した。といってもまだ一人目なので先は長い。
「皆さん、やりましたね!」
「ああ。ちゃんと実力が出せているようだな」
隣にいるイリス先生も喜んでいる。
「ベルトルト魔術学園の第一学年は昨年の成績は3位で一昨年は2位。ここ数年は2位と3位ばかりだね。今年入学した生徒の中にも飛びぬけて突き抜けた生徒はいないみたいだね。順当に行けば問題なさそうな相手だよ」
「ノ、ノクス先生は本当にすごいですね……」
確かにノクスは一体どこからそういった情報を集めてくるのだろうな。味方にいてくれるとありがたい。
「……ギーク先生、なんだか圧倒的すぎませんか?」
「ええ、特に戦闘の競技なんてもう第二選手の試合も勝利で終わりそうですわ」
上の席に座っている生徒たちから疑問の声が上がる。だが、これについては俺も実際に見てみるまではわからなかった。
「ふむ、そのようだな。俺も君たちが最初の教え子となるから他の生徒の実力をあまり知らなかったが、どうやら同じ第一学年の一般の水準を遥かに超えているらしい。周りの生徒も同じくらいの早さで成長しているから気付かなかったのだろう」
生徒たちの言う通り、今のところうちの学園の生徒たちの実力は相手の生徒を圧倒していた。
戦闘の競技はいつも演習場で行っているように一定のダメージを受けて、ブザーが鳴ればそこで勝敗が決まる。そのため、先ほどの試合や今の試合のように決着がすぐに着けば次々と試合が進んでいく。
俺がこの学園で最初に模擬戦をしていた時と同じように相手はほとんど動かずに魔術を構成していくだけなので、こちらからしたらいい的だ。この戦闘の競技は特に生徒たちの実力差がよくわかる。
元のうちの学園もそうだったが、実戦的な戦い方を教えるよりも、より強い魔術を教えるような教育方針なのかもしれない。ただそれだとこういった実戦的な競技会では不利になると思うのだがな……。
『ただいまの戦闘競技の勝者はレヴィス=ルーヴァン選手の勝利となります。第三選手は次の試合の準備をお願いします。現在のポイントは8対0でバウンス国立魔術学園が優勢です』
この魔術競技会はポイント制となっており、多くポイントを得た学園の勝利となる。勝利数の一番多い学園が優勝となり、勝利数が同数の場合はこれまでの獲得した合計ポイントの一番多い学園が優勝だ。ポイントは的当てとボードの競技が各2ポイントで戦闘の競技だけ優遇され、3ポイントとなる。
今のところはこちらの選手が全勝している。遠見の魔術でベルトルト魔術学園の観客席に座っているラルシュを見ると、ものすごく焦った様子だった。ここ数年連続で最下位のうちの学園の実力を完全に見誤っていたようだな。
とはいえ、競技会はまだ序盤。生徒たちには慢心することなく全力を出し切ってほしいものだ。




