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【WEB版】異世界転生した元教師、【臨時教師】として崩壊した魔術学園を救う。『GA文庫様より11/15発売!』  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第129話 キャンプファイヤー


「それじゃあ、早速火をつけよう。アノン、頼んだぞ。……くれぐれもほどほどにな」


「うむ、任せるのじゃ!」


 生徒たちの中心には大きな丸太が漢字の井の字状に組まれている。どうやらアノンはいろいろと有名だったらしいので、せっかくなのでキャンプファイヤーへの着火を頼んだ。もちろんすでに着替えており、いつものローブ姿だ。


 ……アノンが本気でやったらこの辺りが火の海に包まれるので、キャンプファイヤーの組んだ木々の中心にだけにするよう2回ほど念押しをしてある。


「それでは皆の者、この合宿でよく頑張ったのう。慣れない学園の外の環境で学ぶことも大変だったと思うが、きっと皆の力になるはずじゃ。そして共に互いを高め合うライバルでもあり、大切な仲間でもあり、同じこの学園で学ぶ隣にいる者たちと過ごす今この一時を決して忘れないでいてほしい。長い年月が過ぎたこの先でみなの胸へ大切な思い出として残ることを切に祈るのじゃ!」


 アノンも実に良いことを言う。


 魔術を学ぶことも大切だが、今この瞬間に魔術の道へと進む大切な仲間と過ごすこの時間も忘れないでほしいものだ。アノンの種族はエルフで寿命は俺たちと異なるため、一層その想いは強いのだろう。


「それでは点火なのじゃ!」


「「「おおおおお!」」」


 アノンが無詠唱で放ったファイヤーウォールは一本の空高く光る細長い円柱となって、キャンプファイヤーの中心部を盛大に熱して一瞬で火が点いた。しっかりと範囲は絞ったうえで、ここから見えないほど空高く伸ばした炎の柱は一瞬だけだが空を紅く染め上げ、それを見た生徒たちが歓声を上げる。


 アノンもしっかりと分かっているようだ。


「さて、お次は俺の番だな。……これは俺の師匠から教えてもらった()()という魔術だ。ぜひ楽しんでくれ」


「「……っ!?」」


 花火という単語に若干だが、エリーザとソフィアが反応する。一応俺はギル大賢者の弟子ということになっているので、この魔術を知っていても不思議ではないはずだ。それに昔2人に見せた魔術は線香花火のようなもので、今回見せる花火とは異なる。


「すごく綺麗! 炎がいろんな色に変わっていくわ!」


「うわあ~綺麗な火の魔術ね!」


「これはすごい!」


 俺の頭上から鮮やかな赤、紫、黄、緑などの様々な火柱が空へ打ちあがっては消えていく。空に打ち上がって爆発する打ち上げ花火というわけではなく、様々な色の火柱が広がっていくイメージだ。


 花火の魔術と言ったが、正確に言うとただの火の魔術に前世の科学で学んだ炎色反応を利用しただけである。炎色反応とは燃える炎の中に特製の金属元素を含む物質を入れると、様々な色の炎を出す現象だ。赤色はリチウム、紫色はカリウム、黄色はナトリウム、緑色は銅といった感じである。


 エリーザとソフィアも線香花火とは異なる花火に驚いている。しばらくの間、火柱を打ち上げていく。見た目はとても綺麗なので、生徒たちにも好評のようだ。


 お次はノクスとイリス先生による出し物、そして学園の校歌斉唱などといったプログラムをいくつか用意しているが、メインは最後のプログラムである。




「さて、最後は()()()()()()()だ。これはみんなに参加してもらうからな」


 いよいよこのキャンプファイヤーメインイベントであるフォークダンスである。当然こちらの世界の者はフォークダンスなど知らないので、まずは実演してみせる。……というか、多分前世の者でも今の若い世代の人たちはきっと知らないだろう。


 フォークダンスとは世界各地の民族舞踊を通じて、文化理解、協調性、コミュニケーション能力を育むことを目的としたダンスの総称である。だが、どちらかというと男女でペアになって踊るという意味合いの方が強いだろう。


「ノクス、イリス先生、頼む」


「オッケ~。ポチッとね」


 ノクスが魔道具のスイッチを入れると、浜辺に音楽が鳴り響く。こちらの世界には音を蓄える性質を持つ素材があるので、前世のように音楽を記録して再生する魔道具がある。


「し、失礼します!」


 そして音楽が流れる中、正面にいるイリス先生と向かい合って両手を繋ぐ。フォークダンスといっても様々な踊りがあるのだが、今回はどちらかというとダンス自体が目的ではないので、両手を繋ぎながらその場でクルクルと回るだけだ。


「こんな感じで男女に分かれてペアになって火の周囲を回ってもらい、30秒ほど経ったら隣にいる者と交代していくのを繰り返すだけだ。これは俺の故郷で行われていて、普段はふれあいのない異性との絆を深めるための重要な踊りなので、ちゃんと異性全員と踊ってもらうからな」


 俺の説明にざわめきだす生徒たち。そうこれは俺から生徒たち、特に男子生徒へのご褒美である。


 普段は意識している異性がいても、なかなか学園では声をかけられない者も多いだろう。そんな中でこのフォークダンスでは意中の者がいれば、確実に手を繋げるのである。このくらいの年代の者の中には初恋をしている者もいるに違いない。そんな中でこのフォークダンスは生徒たちの思い出の一ページへと加わることは間違いないだろう!


 我ながらよいイベントを企画したものだ。


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