表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【WEB版】異世界転生した元教師、【臨時教師】として崩壊した魔術学園を救う。『GA文庫様より11/15発売!』  作者: タジリユウ@6作品書籍化


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

126/132

【第126話】家庭教師の誘い


「いえ。昼の模擬戦を含めて、ギーク先生にはとても多くのことを教えていただきました。魔術の指導には相応の対価が支払われるべきです。むしろこれだけでは少ないくらいですが、どうぞお受け取りください」


 そう言いながら頭を下げるユリアス。


 確かにこういった魔術の指導には相応の対価が支払われるべきである。学園の教師も給料をもらって生徒たちに教えているわけだしな。その意見については俺も賛成である。


「気持ちだけもらっておこう。昼の模擬戦はうちの学園の生徒に他学園の生徒の実力を見せられるとてもよい機会だった。それに今の時間は俺個人として若者である君と魔術の意見交換をしていただけだから、対価などは受け取れない」


「ですが――」


「そして、どちらかというとこちらの方が大きな理由だが、これから魔術競技会で競い合う他学園の生徒に対価をもらってアドバイスをしたとなると、他の者からどのように見られると思う?」


「あっ……」


 そう、ユリアスは真っすぐな性格をしているからそういったことを考えなかったのかもしれないが、他学園の生徒に個人的指導をしてお金をもらっていたなどと他の者に知られれば面倒なことになるかもしれない。しかも今は魔術競技会の前だ。下手をすれば俺が他学園のスパイとして扱われる可能性もある。


 そうなったら、シリルの言っていた罰どころではすまないだろうな。俺もその辺りのことは考えて、うちの生徒たちが不利になるような話はしていないぞ。


「すみません、僕が浅慮でした……」


「気にする必要はない。それに俺も魔術の話をするのは好きだからな」


「……ありがとうございます」


 再び俺に向かって頭を下げるユリアス。


 本当に身分は気にしないみたいだな。……護衛の人たちは後ろの方であまりいい顔をしていないけれど、まあそれが普通だ。


「やっぱりギーク先生は本当にすごいです。昼の模擬戦でも驚きましたが、改めて話をしてみても他の誰よりも魔術に詳しいと思います。あの、ギーク先生はバウンス国立魔術学園に臨時教師として今年1年間勤められているのですよね。そのあとで大丈夫ですので、僕に家庭教師として魔術のことを教えていただけないでしょうか?」


 なるほど、確かにそれならば外野からあれこれ言われることはないだろう。1年間の任期を終えたあとであれば俺が何をしようと自由だ。しかし――


「……すまないが、それはできない。この1年が終わったあとにはやることがある」


「そうですか……。やっぱりギーク先生ほどの人ですと、やらなけばいけない大きな仕事がありますよね……」


 正直なところ、この1年――実際にはもう残り半年を切ったわけだが、そのあとのことは決めていない。とはいえ、ユリアスの家庭教師をするという選択肢はないため、ここははっきりと断っておく。


 曖昧にどうするか決めていないというよりはこちらの方が誠実なはずだ。……断った瞬間に周囲の護衛の者からのプレッシャーが強くなったのはユリアスが慕われている証拠だろう。


「その代わりといってはなんだが、この施設にいる間に質問があればうちの学園の生徒が不利にならないくらいには答えよう」


「はい、ありがとうございます!」


 ……あまりにも残念そうな表情を浮かべていたので、ついそう言ってしまった。まあ、たとえ学園が違っていたとしても、魔術に興味のある若人の質問に答えるのも教師としての務めである。そう思わせてしまうのもユリアスの人柄というものだろう。






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「へえ~そういうことになったんだね」


「ああ。魔術に大いに興味があるようだし、多少は教えてあげないとな。アノンの許可も取ったことだし、できることをしてやるのが大人としての務めだ」


「……なんだかんだいいつつ、お人好しなのはギークらしいねえ」


 昨日のことについては学園長であるアノンにも報告してある。学園の教師としてではなく、一個人として質問に答えるなら問題ないようだ。もちろん現在の役割を怠る事がないようにすることは前提だがな。


「それにしてもここのご飯はおいしいね」


「ああ、栄養までしっかりと管理されているらしいし、長期間滞在する人のためによく考えられている。うちの学園もこれくらいの学食を提供してくれればいいのだがな。まあ値段的に少し厳しいか」


 今はノクスと一緒に食堂で朝食をとっている。この施設の食堂は本当に便利だ。値段が少し高いところだけが玉に瑕だがな。


「ギーク先生、ノクス先生、おはようございます!」


「ああ、おはよう」


「これはユリアス様、おはようございます」


 そこへ眩しい笑顔をしながらユリアスがやってきた。


「奇遇ですね、ぜひ僕もご一緒させていただいてもよろしいでしょうか?」


「……構わないよ。ノクスもいいか?」


「……ええ、もちろんですよ」


「ありがとうございます!」


 多分ノクスも気付いているが、おそらく食堂で俺を待ち伏せていたのだろう。ユリアス自身の姿は見えなかったが、スーツを身に付けた護衛の者がいたので俺が食堂にやってくるのを待っていたらしい。


 食事をとりながら、昨日の夜と同様に魔術の質問に答えてあげた。


 ……気軽に質問してもいいと言ったが、まさか翌日の朝から来るとは思わなかったぞ。ちょっとだけユリアスの魔術に対する情熱を舐めていたのかもしれない。


 さて、今日は合宿3日目だ。合宿をしていると、この辺りから羽目を外す生徒が出てきてもおかしくないころだ。一層気を引き締めるとしよう。


【お知らせ】

昨日GA文庫様より第1巻が発売されました∩^ω^∩


そして嬉しいことにGAコミック様にてコミカライズ企画が進行中となっております!

続報をお待ちくださいませ!


ブックマークや評価がまだの方は何卒よろしくお願いしますm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

◇書影公開中◇

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

(リンクからイラストが見られるAmazonへ)


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ