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【WEB版】異世界転生した元教師、【臨時教師】として崩壊した魔術学園を救う。『GA文庫様より11/15発売!』  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第125話 ユリアスの質問


「ギーク様ですね。お待ちしておりました」


「……はい」


 夕食を終え、ユリアスから聞いていた部屋の前へ行くと、そこには2人の護衛がいた。


 装飾の付いた随分と高価そうな鎧だ。そしてその鎧に見合う実力も兼ね備えているとみた。魔術や魔道具なしで戦えば、おそらく俺など瞬殺であろう。


 さすがに侯爵家長男ということで、こういった場所ではしっかりと護衛が付いているらしい。ちなみにあえて突っ込まなかったが、昼に模擬戦をしていた時もだいぶ遠くからユリアスを見守っていた。


 そして待っていたと言っているが、まったく歓迎しているようには見えない……。一応相手は侯爵家ということでいつもの白衣ではなく、それなりの服装をしてきたつもりなのだがな。


「ギーク先生! 来てくれたんですね、ありがとうございます!」


「……ああ、お邪魔するよ」


 部屋の中へ入ると、そこは俺やノクスが泊まっている部屋よりもかなり豪華な部屋だった。いわゆるスイートルームという部屋だろうが、俺たち2人部屋の倍以上の広さで、絵画や美術品なんかも飾ってある。


 俺たちの部屋でもだいぶ豪華なものだと思っていたが、上には上があるものだ。まあ、ここで寝たいかと聞かれれば、むしろこんなところでは寝られなそうで嫌なんだけれどな。


「……ギーク様。ユリアス様の手前、言葉遣いにはご注意いただけないでしょうか?」


「そうでしたね、これは失礼しました」


 護衛もいる手前、侯爵家長男にタメ口で話していたらさすがにまずいか。さすがにここで問題を起こす気もない。


「いえ、ギーク先生は歳上なので今までのままで構いません! すみません、いつも厳しいんです……。でもみんなすごく良い人たちなんですよ!」


「……ああ、みんなユリアス様想いの護衛みたいだ。もちろん、ユリアス様への敬意は忘れておりませんので」


「承知いたしました。差し出がましい真似をお許しください」


 ユリアスがそう言うと、大人しく後ろへ下がっていく。貴族への敬意はちょっと嘘だが、ユリアス想いの護衛というのは間違いないだろう。


 ユリアスは真っ直ぐな性格だし、護衛や周りの者にも人望がありそうだ。だからこそ、平民かつ臨時教師の俺が招かれたことをよく思っていないのかもしれない。


「まずは来てくれて本当にありがとうございました。昼間のことを改めて思い出すと、いきなりギーク先生のご都合も考えずに非常識なことをしてしまい、本当に申し訳ありません」


 部屋の中心にある大きなテーブルに案内され、開口一番に謝罪された。


「いや、それについては問題ない。純粋に魔術に対して興味があっただけだろう」


 俺も魔術に対する好奇心なら他の者には負けていない。もしも初めて見る魔術で気になることがあったら、迷わず質問する。


「ありがとうございます。僕は昔から魔術のことになると周りのことが見えなくなっちゃうんですよね……。最近では少し収まってきたはずなのですが」


「ふむ、俺もある意味では似たようなものだから、その気持ちはよくわかるぞ」


 俺もよく周りからそう言われてきたものだ。まあ、俺の場合は魔術を学ぶことを邪魔するやつはすべて排除してきたわけだが。


「それで、何か話したいことがあるようだが?」


「はい! 昼の模擬戦でギーク先生が使っていた魔術にいろいろと質問があります」


 やはり昼間の模擬戦のことで質問があるようだ。




「……なるほど、魔術でそんなことが可能なのですね!」


「ああ。君も魔術式を書き換えることでウォーターウォールの魔術の形状を変化させていただろう。普段使用している魔術であっても、状況に応じて魔術式を書き換えて使用するという手段もある。とはいえ、現代の魔術はだいぶ最適化されて、改良する余地はあまりないがな。それと、魔術式を書き換えて魔術を発動させるときは暴発する危険もあるので、十分に注意して行うことだ」


「わかりました。それにしても、よくあの魔術がウォーターウォールだとわかりましたね。僕も学園長から教えてもらったのですが、全然原型を留めていなくなっちゃいました」


「魔術の魔術式を書き換えて実験をすることには慣れているからな」


 新しい魔術を開発する時も既存の魔術式を応用したりするものだ。その辺りは前世の科学の実験と同じで、これまでの知識を総動員し、果てしないほどの実験と失敗の積み重ねの上に成り立っている。魔術の実験も楽しいものなのである。


「おっと、いい時間になってしまったな。そろそろ戻らせてもらうとしよう」


「あっ、すみません! あまりにも楽しくて、つい時間が経つのを忘れてしまいました! ギーク先生は明日も指導がありますものね!」


 気付けば話し始めてからすでに2時間ほどが経過していた。魔術の話をしていると時間の流れが早いと思うのは俺も同じである。


「今日は本当にありがとうございました。ギーク先生、少ないですがこちらを受け取ってください」


 そう言いながら、ジャラジャラと音のする布袋がのったトレーを護衛の者が持ってきた。


 おそらくだが、これには金貨が入っているのだろう。音から察するに結構な金額が入っているに違いない。


「……申し訳ないが、それを受け取るわけにはいかないな」


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頑張って書いたので、お近くの方はぜひお手に取っていただけますと幸いですm(_ _)m

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