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内緒の共有と着信履歴

 薫の疑問を良治は静かに肯定した。

 彼女は信じられないと言った表情で一歩後ずさり、首を横に振る。


 それはそうだろう。突然白髪金目に姿が変化したら驚く。それも自分は魔族だったと言えば驚かない人間はいないはずだ。


「正確には混血ハーフで、半魔族だけどね。……まぁ大した違いはないよ」

「そんな、本当に魔族……半魔族?」

「はい……ってどうしました? いやそう言うのもおかしいですけど」


 ピタリと動きを止めた薫に尋ねるが、どうしたもこうしたもない。

 ただ魔族だと言った途端に襲い掛かってくる可能性もあっただけに、予想外の反応に戸惑っただけだ。

 白神会の目的の中に魔族の討伐もある。薫であればそれをするのがむしろ当然だとも思っていた。


「その、半魔族っていうのは……魔族そのものじゃないってことですか?」

「……難しいな。魔族の父親と人間の母親の間に産まれたけど、本当に色々混じってるとは思うから」


 魔族としてのメリットとデメリットは大きい。

 メリットは退魔士として一人前並みの力を身に付けることが出来ること。今行っている半魔族化で全体の能力が向上することが挙げられる。


 対してデメリットは魔族の力に人間の肉体うつわが耐えきれないことだ。これは寿命に直結し、半魔族は二十歳を前に肉体が持たずに死を迎えることになる。


 良治はこのデメリットを受け入れて死ぬことを選ぼうとしていた。しかしそれを阻み、解消したのは柚木まどかだった。


 魔族としての力が強く、人間の身体に負担をかけているのなら魔族としての力を弱めればいい。

 魔族と人間の間では契約を交わすことが出来る。

 魔族の力を貸し与える代わりに、死後その魂を貰い受けるというものだ。その人間の魂は死した後も救われることなく、道具に成り果てる。

 そんな絶望しかない契約を、まどかは全て理解したうえで受け入れた。


 つまり今の良治はまどかに生かされてる状態にある。


「……私、魔族は嫌いです。すぐに死んでほしいくらいに、絶滅してほしいくらいに。だって今まで何人も知ってる人を、まーくんも……」


 彼女にとって魔族は不倶戴天の仇だ。決して許せる対象ではない。戦闘前に聞いた話からそれは良治もよく理解している。


 それを理解していながら、良治は半魔族化をした。そうしなければこの場で死んでしまうからだ。

 半魔族化したお陰で毒液を浴びた部分は少しずつ回復してきている。これは変化前に比べて全体の力の量が増え、新陳代謝が活性化してのことだ。このまま十分程度この状態でいれば命の危険の域は脱せるだろう。


「……鷺澤さん」

「……はい」

「さっきの話も聞いたし、鷺澤さんが魔族のことを憎んでることも、許せないって思ってることもわかってる。だからこの場で俺を殺そうとしてもそれは仕方ないと思ってる。……まだ死にたいと思ってはいないけど」


 自分の命には大した価値はない。だがそれでもこんな自分の命を救ってくれた彼女まどかがいる。自分の教えを待っている弟子ゆきがいる。


「このこと、他の皆さんは知っているんですか?」

「知ってる人はそれなりにいるよ。昔から東京支部にいる人たちを中心に。……たぶん全部で十人くらいかな」


 昔からの付き合いである和弥や葵、そして今傍にいてくれているまどかや結那、天音。良治が把握してる人数は十人を超える程度だ。

 言えば偏見の目は避けられないと思っている。薫のように友人や同僚、親しい人間を殺された者も多いのだから。


「じゃあ……皆さん知っていて」

「うん。本当にありがたいことだって思ってる」


 人間社会は異物に対して冷たい。そうしなければ自分たちの立場が揺らいでしまうかのような、仲間はずれにされてしまうような強迫観念めいたものが存在している。


 最初に白神会に引き取られた時から、周囲の冷たい視線を浴びてきた。だからこれ以上違うことを知られたら殺されてしまうかもしれない。幼いながらも良治はそう感じていた。

 それからは自分からは言わず、そして引き取ってくれた今は亡き柊の両親、そして師匠となってくれた葵の父親の南雲なぐも孝保たかやすも必要以上の口外はせずにいてくれた。

 それだけで良治は救われたような――いや、実際救われたのだろう、こんな風に成長することが出来た。


 ――自分は恵まれた環境で育つことが出来た。

 今でも強くそう思っている。


「そういうことなら、私から言うことはないです」

「いいの? 魔族だよ俺?」

「半分、ですよね。それに例え魔族だったとしても、柊さんが私を助けてくれたことはなくなったりしません。……でも、ごめんなさい。ちょっとびっくりしました」

「驚かなかったらこっちがびっくりだよ」

「ふふ、そうかもですね」


 笑ってくれた薫に救われた気持ちになる。

 何もかもがひっくり返りかねない状態だった。


 最悪薫が攻撃してきて、良治は逃亡生活になる可能性すらあったのだ。

 彼女が優しく、良治個人を見てくれたことで丸く収まった。


「ありがとう、鷺澤さん。借りが出来たね」

「何言ってるんですか。そもそも私は柊さんに返せないくらいの借りがあるんですよ? それにさっきだって私を助けてくれたじゃないですか。それだけでこっちの借りの方が大きいですって」

「そうかな……?」


 苦笑しながら言う薫にあまり納得いかないが、あちらがそう言うならそういうことにしておくことにする。いつか勝手に借りを返そうと心に決めた。


「そうですよ。……あ、じゃあ一つ我が儘言ってもいいですか?」

「……どうぞ」


 なんだか嫌な予感がする。

 そう思ったがまさかこの状況で断ることも出来ない。逆に自分に出来る範疇外のことを言ってくれたら断れるのでそっちの方がありがたい。そう思いながら先を促した。


「その、私も『良治さん』と呼んでもいいですか? あと私のことも……『薫』と。……呼んでくれたら、嬉しいなって」

「……喜んで」

「やったっ」


 良治は人の感情の機微に疎い方ではない。そうでなければ立ち位置を調整してこれなかったし、今の立場にもいなかっただろう。

 だからこそこの状況が言葉とは裏腹に良いものだとは思えなかった。


(いや嬉しいことは嬉しいんだけどね?)


 可愛い女の子に好意を持たれる。それは世の男性なら誰もが喜ぶものだ。テンションが上がることだ。

 だが良治の場合は違う。彼女がいる。三人も。

 間違いなく何か言われる。ある意味裁判ともいえるだろう。しかも弁護士もいない。


(あれか。吊り橋効果か。ならそのうちどうにかなるか。……たぶん)


 危機的状況でそれを救ったこと。そして薫の最近の仕事のこと、半魔族の秘密を知ったこと。それらは二人の秘密の共有というになり、それが影響してしまった――そう良治は結論付けた。


「ええと、そろそろ帰りましょう。……ちょっと服がぼろぼろなんでお店寄っていいですか」

「あ、はい。そうだ、私のコート着れば大丈夫じゃないですか?」

「それはちょっと。いや好意は嬉しいですけど遠慮しておきます」

「残念です……」


 薫の着ている可愛らしいベージュのコートは、正直に言って良治には似合わない。


「あ、そうだ。さっきの蜘蛛にやられた背中は」


 蜘蛛の攻撃から助けようと彼女を突き飛ばした際に、背中を脚で切り裂かれたのが見えた。

 薫が痛みを訴えるような仕草をしていなかったので忘れてしまっていた。


「背中、ですか? 別に痛みは……あ、一応見ていただけると」

「ですね。確認します」


 くるりと後ろを向いた薫の背中をかがむようにして見る。


「……なるほど。大丈夫そうですね」

「あ、良かったです」

「でもコートは駄目ですね。斜めにばっさりやられてます」

「良くなかったっ!?」


 叫ぶ声が何故か可愛らしく聞こえて小さく笑う。

 疑ってはいなかったが、本当に半魔族ということを気にしていないようだ。そうでなければ安易に背中を見せたりはしないだろう。


「――ふぅ。じゃあ帰りましょう」

「あ、すぐに元に戻れるんですね」

「オンオフは結構簡単にできますよ。ただ変化してる時間に比例して、戻った時にダメージがありますけど」

「え、大丈夫なんですか、怪我もしてるのに」

「まぁ変化してなかったらその時点でかなりまずかったんで……仕方なかった感じですね。でも今回は大丈夫です」

「なら良いんですけど。もしつらくなったら言ってくださいね。出来ることなら何でもしますから!」

「はは、その時は甘えさせてもらいます」


 実はもうこの時点でふらふらしそうな身体を無理やり動かしている自覚はある。しかしそれを言えばあれこれと世話を焼くだろう。

 それは薫に悪いし、これ以上距離を詰めていいのかという問題もある。


 良治は落とした小太刀を拾うと、鞘に納めて転魔石で二刀とも送り返した。ぼろぼろになっていたがなんとか上手くいってほっとする。

 破損が大きいと転魔石との紐づけが切れ、上手く発動しなくなるからだ。以前使っていて折れた村雨がこれに当たる。


「帰り道はこっちですね。行きましょう鷺澤さん」

「あの……薫、です。薫って呼んでください……よ、良治さんっ」


 この暗さなのに、彼女が顔を赤くしながら勇気を出して名前を呼んだのがわかった。本当にこの呼び方を定着させるつもりだ。

 嘘とも冗談とも思っていなかったが、呼ぶ機会がなかったらそのうちうやむやになると思っていた。


「……じゃあ行きましょう、薫さん」

「あの、私の方が年下なので、呼び捨てで……」


 自分のことを名前で、しかも呼び捨てで呼んでほしいというやり取りはひと月ほど前にもやった気がする。

 既視感を覚えながら良治はそっと溜め息を吐いた。


「帰ろう、薫」

「はい!」


 呼び捨てにすると丁寧語が消えてしまう。しかしもうそれを薫は気にしないだろう。気にするのは周囲だけだ。


(……後のことはその時に考えよう)


 大なり小なりトラブルは必ず起きるだろうが、それはその時に頑張ることにして今は彼女の笑顔を眺めることにしよう。


 死にかけるほどの負傷はしたが、それでもそれ以上の収穫はあった。


 良治は満足感に浸りながら夜の山を降りて行った。









「ん……」


 良治は左腕に何か温かいものを感じて目を覚ました。

 彼の左腕は蜘蛛の前脚によって貫かれ酷い有様だった。逆の右腕も毒液にに浸すような格好になってしまった為こちらも変わらず見るに堪えない状態だったが。


「あ、起きたんですね。おはようございますっ」

「……ああ、蒔苗さん。おはようございます」


 彼の左腕をさすっていた蒔苗が笑顔で挨拶をしてくれる。どうやら治療中だったようだ。


 そっと周囲を見るとそこは見覚えのある和室だった。確か宇都宮支部救援に来た時、蓮岡加奈が横になっていた部屋だ。どうやらそこに運び込まれたらしい。


 あれからなんとか意識を保ったまま宇都宮支部に戻ってきた二人だったが、良治は蒔苗に怪我をしたことを伝えてすぐに気を失った気がする。なので実際治療を受けた記憶はない。


「柊さんって会う度に怪我してませんか?」

「……否定できない気がするからノーコメントで」

「もう。……それにしても身体全体も傷だらけだったけすけど、両手は酷すぎますよ。薫さんに何があったのか聞きましたけどぉ」


 今回の魔獣退治はかなりの難度だった。良治と薫という一人前以上の退魔士が二人いて命を落としかけた。

 特に最後の巨大な蜘蛛は知性を感じさせ、あれは並みの退魔士では太刀打ちできなかったかもしれない。


「俺どれくらい寝てました?」

「四時間くらいですよ。まだ九時くらいです」

「……まだ帰れるな」

「駄目ですよ、まだ治ってないんですから。せめて明日の朝まではゆっくり大人しくそのままでいてくださいっ」

「……はい」

「わかればいいんです」


 医者には逆らえない。特別何かの理由があれば逆らうこともあるが、良治の予定帳は真っ白だ。心配からの言葉なので大人しく従うことにする。


 きっと東京支部にも連絡は行っているはず。ならば少しだけ休ませてもらおう。帰ろうと言ったものの、体力は空っぽだ。途中で力尽きる可能性はある。


「左腕の貫通した穴は完治まで少しかかりますからね。良治さんが自分で治せるようなとこまでは頑張りますけど、無理はしないでください。あと右腕は爛れたような感じなのでしばらくは皮膚が引っ張られるような感覚が残るかもです。……あの、本当に大怪我なのでちゃんと休んでくださいね?」

「うん。ありがとう」

「即答が返って怪しい気もしますけど、まぁ信じます」

「どうも」


 右腕は先に治療を行ったらしく、見れば包帯でぐるぐる巻きにされていた。言われたような感覚があるが痛みはさほどではない。これの様子なら、動かすだけなら明日には出来るだろう。


「あと、その身体の方は大体大丈夫なはずです。爛れたような痕も残らないはずです。というか右手が酷すぎるんですよね、これ」

「まぁ、うん。それは仕方ないと納得してるから」

「諦める前に怪我をしない努力をもう少ししてください……」

「善処しておきます」

「もうっ」


 怒りに任せて余計な怪我を負った自覚はある。しかしまた同じことを繰り返しそうなので良治ははぐらかした。自信のない約束はしない。

 するのは守るつもりのものと、そして最初から守るつもりのない約束だけだ。


「……蒔苗さん、治癒術結構上達した?」

「あ、そうですか?」

「うん。今朝も思ったけど力の操作が丁寧で繊細になってきてる気がするよ。この部屋で見たあの時の治癒術に比べて段違いだ」


 この部屋で加奈の治療を行った時のことを思い出す。

 あの時は先に行っていた蒔苗の治癒術が稚拙で、傷口をもう一度開いてから再度二人で協力して治した。二度切られることになった加奈には申し訳ない気持ちもあるが、傷跡が残らないようにできたので納得してもらうほかない。

 先日会った時も特に何も言っていなかったので気にしてはいないだろうが。


「ありがとうございますっ……ってそれはそれとして、そのお聞きしたいことが」


 褒められたにも関わらず、それよりも聞きたいこと。その反応で良治は彼女の話を察した。


「鷺澤さんのことかな」

「はい……その、聞きました?」


 そこでようやく出発する時に蒔苗が言おうとしてしていたのはこの話だったことに思い至った。

 彼女も心配だったのだ。それが伝わってくる。


「聞いたよ。……うん、もう鷺澤さんは大丈夫だと思うよ」

「よかった……やっぱりちょっと心配だったので。どんなことあったんですか?」

「それは内緒。でもまた頑張っていくと思うよ。立派な支部長になれると、俺は思ってる」


 乗り越え、決意した彼女の声を、瞳を思い出す。

 現実に打ちのめされた一人の人間が顔を上げ、立ち上がった瞬間。

 それを忘れるほど良治の心は鈍くはない。

 むしろ薫の気持ちに触発されそうだ。もう少し頑張らないと、と。


「そうですか……柊さん、ありがとうございます」

「いいよ別に。きっと俺じゃなくても出来たことだから。……ごめん、ちょっと眠くなってきたから寝かせてもらっていいかな」

「あ、はい。治療は続けますが寝て大丈夫ですよ」

「ありがとう蒔苗さん。適当なところで終わらせて大丈夫だからちゃんと休んでね」

「はい、ありがとうございます。じゃあおやすみなさいです」

「うん、おやすみなさい」


 普段は親しくない人の傍で寝ることに抵抗がありなかなか眠れないのだが、今日一日の疲労と上達した彼女の治癒術への信頼からか眠気が訪れた。

 無理をする理由もなく、そんな場面でもないので眠らせてもらうことにした。


「……まるで王子様だなぁ」


 そんな言葉が部屋に落ちたのは良治が眠った直後のことだった。










「もう大丈夫なんですか? まだしばらく居てくれても」

「ありがとうございます、鷺澤さん。でももう問題なく身体は動きますから」

「名前……」

「おっと。ええと、やっぱりやめませんか。呼び捨てになると口調が荒くなるので……」

「それが良いんですってっ」

「……了解しました」

「はい、良治さんっ」

「……」


 薫とそんなやり取りをしているのは宇都宮支部の玄関前だ。

 時刻は陽が昇ってからそんなに経っていない午前七時。クリスマスも近づいた冬の夜明けは遅い。


 支部員も起きている者はまだいない。

 寝るまで治療をしてくれていた蒔苗も、彼が起きた時にはもう部屋にはいなかった。今はぐっすりと自分の部屋で休んでいるはずだ。


 書き置きだけ残して帰ろうとして部屋を出ると、ちょうど自分の部屋から出てきた薫と鉢合わせしてしまった。

 心配する薫の言葉に良治が折れるはずもなく、結局彼女は見送りをすることになった。


「じゃあ、お世話になりました。また何かあったら声をかけてください」

「はい、その時はお願いしますっ」


 元気な、元気になった薫の声に苦笑して手を軽く上げて立ち――去ろうとして良治は足を止めた。

 再会した時から言おう言おうとしてずっと忘れていたことを今思い出したのだ。


「――ああ、一つ言いたいことが」

「? なんですか?」


 きょとんとしている薫に良治は照れくさそうな顔で言った。


「昔のツインテも可愛かったですけど、今の下ろした髪型もとても似合ってると思いますよ。では」

「――ッ!?」


 昔会った時の薫はまだ中学生で、ツインテールの似合う可愛らしい少女だった。

 だが今良治の前にいるのは一人の女性、それも自分の力で立ち上がった立派な人間だ。


 年上の人間、先輩として、後輩の成長は嬉しいもので、それを素直に認めて褒めるのは先輩としての役目だ。


「あ、ありがとうございますっ!」


 支部員が起きて来るんじゃないかと思うくらいの大きな声を背に受けつつ、今度こそ良治は手を振って宇都宮支部を後にした。


「――さて、そろそろ電話するか……」


 しばらく歩いた先で携帯電話を取り出す。

 そこには昨日の夕方から深夜にかけて着信履歴が並んでいる。全部で五十二件は多いと判断すべきか否か。


 とりあえず着信履歴の一番下にあった彼女にコールをする。

 するとワンコールが終わる前に――


「良治ぅぅぅぅぅっっ!」

「……連絡できなくてごめん。でもそんなに叫ぶなって、まどか」


 どうやって宥めようか。そんなことを考えながら良治は微かに笑みを浮かべながら帰路についた。



【五十二件の着信履歴】―ごじゅうにけんのちゃくしんりれき―

良治の携帯電話にあったおよそ七時間の履歴の数。

そのほとんどは夕方から日付が変わる前までのもの。

電話をしたのは四人。最初に電話した者は四回、一番最後に勇気を振り絞って電話をかけた者が一回、一度かければ全てが終わった後折り返してくれると信じていた者が一回。

そして出るまでかけようとして支部長に怒られた者が四十六回。

「だって心配だったんだもの!」とは最後の者の弁。

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