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首輪と××と私と  作者: 犬之 茜
奴隷解放編─王都旅程─
1/40

失楽の目覚め

タイトルの省略は『首輪×私』『カラーバイミー』『色私(いろわた)』など募集です。


数年前に他小説サイトにて数話だけ投稿していたものの改稿作品です。

 さわさわと風が肌を撫でる。

 草と土の匂いが鼻腔(びくう)(くすぐ)り、ひどく安心する。

 何かの虫が頬に止まり、再び飛び立った。

 一陣の強い風が吹き抜けた。


 ゆっくりと目を醒ます。

 場所を確認するよりも、頭がクラクラして若干の痛みに顔をしかめる。


「………ん、ん」


 痛みも引いて、改めて辺りを見渡す。そこは見慣れない光景だった。

 なぜ、ここに居るのかも分からなかった。それ以前に、自分が解らなかった。

 所々に隆起(りゅうき)した岩と木々があるだけの場所に、自分一人がいた。

 空は快晴。鳥の鳴き声が聞こえ、ひどく長閑(のどか)なここは草原と言えば良いのだろうか。

 遠くに目をやると、川沿いに道が延びているのが見える。その道がどこに向かっているのかは分からないが、その先から私はやって来たのだろうか。


「わ、ん」


 何故か頭に浮かんだ言葉を口にする。それはひどく馴染んだ言葉。だけど、意味は解らない。

 それ以外には思い出すことが出来なかった。


「わふぅ……」


 ため息を吐き、仕方なく立ち上がろうとして、光景や記憶以上に不可解なことを自覚した。

 ジャラと鈍い音が身体から聞こえた。

 まだスッキリしない頭で見下ろすが、よく解らなかった。自分の姿が。自分が身に付けているモノが。


 左足首には鉄の輪が千切れた鎖を垂らして存在していた。

 ボロボロの膝よりかなり上で切れている麻の服を着ている。あちらこちらが破れ、着ているというよりも羽織っていると言ってもいい状態だった。それ以外には着ている物はなく、素肌が覗いている。

 左腕も同じく鉄の輪と千切れた鎖。

 右腕にも鉄の輪があった。こちらの鎖は首へと繋がっており、手をやると首にも鉄の冷たさが感じ取れた。


「………」


 何もかも理解出来ない。特にこの拘束具は異常なのではないだろうか。

 だが、いつまでもその事を考えてここに居てもどうしようもない事だけは解る。

 だから重い身体を付属品と共に持ち上げた。気持ちの良い風に気分を紛らわし、遠くに延びる道を目指して歩き出す。



***



 目算(もくさん)よりも時間がかかり、ようやく目的の道へと辿り着く。思ったよりも体力がなかった。

 低かった太陽(オド)中天(ちゅうてん)に移動していた。

 思った以上に時間が掛かった為か、気温が上がった為か、さては体力が尽き欠けな為か喉の渇きを覚え、(かたわ)らの河の水を地面に四肢を着けた状態で胃に流し込む。冷たくて美味しかった。


「はふぅ……どこ?」


 喉も潤い、始めの疑問を今さらのように漏らした。答える人はどこにもいなかった。

 水を飲んだ事で胃が刺激されたのか、今度は空腹が襲ってきた。疑問も空腹により頭から薄れていく。

 無意識に指が草を摘み、それを口へと運んでいた。(わずか)な苦味と青臭さが口腔内に拡がるが、しばらくその作業を繰り返す。再び大量に水を飲み、空腹も幾らか緩和したので立ち上がる。

 道は左右延びており、直感だけを頼りに右を目指して歩き出す。


「……くわぁぁ」


 欠伸が出る程に眠いのか退屈なのかも分からないまま、道程を歩き続けた。

 身体が重く、足取りも遅いが確実に前へと進む。

 再び太陽(オド)が低くなり、蒼の(ルンナ)が見え始めた頃に、道の先に村が見えた。

「ここでは世界についてや、私たちのことを紹介するよ」



※太陽と月※


太陽はオドとこの世界では言います。

蒼の月はルンナ。いずれも作中にでましたね。

黄の月はソド。



「基本、作中に出たことの補足だって。今回はルビも振ってあったので大丈夫だろうって、何がだろ。とりあえず、渡された辞書に書いてあったものを今回は紹介したよ。これで、いいのかな?」

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