表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/5

1.青空の下 1 【イラストあり】

◆こちらは、完結した長編『村娘は聖剣の主に選ばれました ~選ばれただけの娘は、未だ謳われることなく~』(https://book1.adouzi.eu.org/n9414ge/)の番外編です。


◆本編のネタバレはありますが、初めての方にもなるべく雰囲気が伝わるような話として書いております。



挿絵(By みてみん)



 朝の日差しは、今日も1日天気が良いと告げている。


 馬の背に揺られて青い空を見上げていたローゼ・ファラーは、ゆるやかな丘の中腹で来た道を振り返った。


 見えるのは、出発したばかりの町だ。


 町の周囲を取り囲むのは高い壁、その中で一際(ひときわ)光る白い建物に目を細めた時、腰の剣から男性の声が響く。


【どうした?】


 声の主は聖剣に宿る存在であるレオンだ。

 彼の問いかけにローゼは後ろを向いたままで答える。


「んー、ちょっとね。出発するのがもったいないなって」

【お前がそんな風に言うなんて珍しいな。いつもの『早く帰りたい』はどこへ行った?】

「まあ、早く帰りたい気持ちは変わらないんだけど」


 照れたように笑い、ローゼは体を正面に戻した。

 結い上げた赤い髪のおくれ毛が、柔らかな風に吹かれて首筋をくすぐる。


「昨日、神官が子どもたちに物語を聞かせてたでしょ?」

【ああ。自分でも話を書いてるとかいう、あの男か】

「そうそう。あの人が語る他の話もね、聞いてみたかったなって。あんなに物語を上手く読める人、そうはいないもの」

【確かに。お前と比べたら、天と地ほどの差があったな】


 そう言って笑う彼の声に眉を寄せ、ローゼは指で聖剣の柄を弾く。


「うるさい、馬鹿レオン。あたしと比べることないじゃない」


 演技や朗読が不得手だということは、ローゼも昔から自覚していた。


「でもね、全部が下手ってわけじゃないの。上手くできるものだってあるのよ」

【そうだな。確かにお前のハッタリは一流だ】

「でしょ? ……じゃなくて、朗読のこと! あたしにだって上手く読める話があるの!」

【ほうほう】


 レオンの声色は、ローゼの言葉を全く信じる気がない、と告げていた。


【2ページくらいの話なのか? ああそれとも、3行くらいか? 短ければ短いだけ、下手さは感じずに済むもんな】

「そっか。レオンはもう、あたしが本をめくらなくても平気なんだ。じゃあ今後は自分だけで読んでちょうだい」


【なるほど。つまりお前は、その話をずいぶん練習したというわけだな】


 聖剣に宿るレオンは自分で本がめくれない。

 気に入りの本が読めなくなるのは困る、とばかりにわざとらしく神妙な声を出すレオンへ「単純ね」と呟き、ローゼは話を続けた。


「レオンは『石になった嘘つき少年』って話、知ってる?」

【さあ、聞いたことないな】

「そっか。じゃあ、レオンが人だった頃にはまだ無かったのね。……えっと、『石になった嘘つき少年』っていうのはね、うちの村に伝わる子ども向けの話なの。その昔、村の誰かが作ったんじゃないかな」


 といっても大都市ならばともかく、ローゼの故郷のような小さな村では、物語を作れるほどの教養を持った人物は少ない。おそらくこの話を作ったのは神官だろう。

 王都の大神殿で修業を積む必要がある神官は、普通の人よりずっと多くの知識を持っている。


「でね。あたしはその『石になった嘘つき少年』を、みんなの前で朗読したことがあるのよ」

【お前が? みんなの前で?】

「そう。意外でしょ?」


 ローゼはくすくすと笑った。


「あれはね、あたしが11歳だったときの話よ」


 その6年後、17の年に神から聖剣(せいけん)(あるじ)として選ばれるなど、夢にも思っていなかった頃のこと。

 そして18歳の神官・アーヴィンが、グラス村に来てしばらく経った頃のことだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ