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異世界詐欺師のなんちゃって経営術  作者: 宮地拓海
第四幕

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461話 夕闇迫る

「それじゃあ、慌ただしくて申し訳ないけど、みんなは光の行進の準備を頼むよ」

「あたしたちは、会場でちょっとした食べ物を配ってるね。ちゃんと見てるから、みんな頑張ってね」

「みんな、ファイトだよっ!」


 エステラに促され、パウラとネフェリーに応援され、行進に参加する一同がそれぞれの待機場所へと向かって歩き出す。

 ジネットや陽だまり亭一同はここからほど近いイメルダの館へ。

 今ごろは、各区の馬車や馬で大変なことになってそうだけど、それでも祭りの時と同じように場所を提供してくれた。


 今度イメルダには、何かお礼でもさせよう、エステラに。エステラの金で。

 ついでに俺もお零れがもらえるような褒美ならいいな☆


「今度はイメルダも参加してみるか?」

「その場合、ワタクシは行列から離れ、先頭を一人で歩くことになりますわね」


 いや、行進なんだから協調性は持てよ。

 一人で突出してんじゃねぇよ。


「この行進に関しては、ワタクシは見る側でいたいですわね」


 静かに呟いて、こちらへ色っぽい視線を向ける。


「ワタクシにとっては、特別なものですから」


 美人がそんな顔をすると、百人単位の男が勘違いしちまうぞ。

 視線一つで、小選挙区くらいなら制覇しちまいそうだ。


「これからも、この光の行進は見る側でいたいですわ。注目され、美しいと誉めそやされることよりも大切なものがありますもの」


 イメルダにとっては、光の行進は人生を変えるきっかけだったもんな。

 これがあったから今の場所に木こりギルドの支部を建て、そこにいたから起こった出来事がいくつもあり、そのすべてでこいつは成長していった。


「イメルダを四十二区に引き寄せた功労者だからな、光の行進は」

「功労者はあなたですわよ、ヤシロさん。他の方でしたら、ワタクシ、きっとここに留まってはおりませんわ」


 それは光栄だね。


「俺関係なく、エステラと大の仲良しじゃん」

「心外ですわね。向こうが懐いてきているだけですわ」

「じゃれついてくる子犬は可愛いもんだろ?」

「子犬ほど愛嬌があれば、心証も多少は変わったのでしょうけれどね」


 はぁ……と、頬に手を添えてため息を落とす。

 そんなこと言って、頬が緩んでるぞ。


「今回はいろいろありがとな。助かったよ」

「四十二区はワタクシのお気に入りですもの、荒らす者は許しませんわ」


 言って扇子を開いて口元を隠す。


「ワタクシのお気に入りに手を伸ばす者には、手痛いお仕置きが必要でしょう?」


 と、俺を見つめながら言う。

 お気に入ってもらえているようで光栄だよ。


「俺に何かしてほしいことはあるか?」

「ピザの密造をお願いいたしますわ」

「そんなに美味かったか?」

「あれはすごいものですわ」


 ここにもピザマニアが。

 密造は出来ないけどな。


「そのためにも、大成功を収めないといけませんわね」


 パシッ、と扇子を閉じ、背筋の伸びた美しい姿勢で館へ向かうイメルダ。

 イメルダも、館の給仕たちに指示を出す仕事があるからな。

 丸投げにしないのがイメルダらしい。


「それから、ヤシロさん」


 少し歩いて立ち止まり、振り返って蠱惑的な笑みを浮かべて言う。


「ワタクシ、テントで眠るのを期待しておりますわ」

「ベッドで寝るより硬いから、覚悟しとけよ」


 大人っぽい色香を纏って子供っぽいわくわくした顔を見せる。

 ホント、イメルダは変わったな。

 ただの美人だったら、ここまで魅力的にはなってないだろう。


 あいつが全力を出すと、断れる男なんかいないんじゃないかなぁ、もはや。

 俺も、気を付けとこっと。


「ヤーくん」

「おぉ、カンパニュラ」


 館に戻るイメルダの背中がある程度遠くなったころ、カンパニュラが俺のもとへと駆けてきた。

 さっきまで、ジネットたちに「頑張ってくださいね」「ちゃんと見てますからね」と話しかけていたんだが、お見送りが終わったらしい。


「テレサは?」

「レジーナ姉様の護衛です」


 と、笑いながらテレサのいる方向を指さす。

 そこの先では、地べたで尺取虫みたいな格好で転がるレジーナと、それを背に守るように胸を張って周りを警戒しているテレサがいた。

 なにやってんだ、あの尺取虫は?


「レジーナはどうしたんだ?」

「なんでも、シスター様たちの纏われている神聖なオーラにあてられて、体細胞が壊死? というものを起こしかけているのだそうです」

「じゃあ切除しなきゃな」


 もういっそ、全身切除されればいいのに。


「テレサを取られちゃったな」

「ふふ。そうですね」

「嬉しそうだな?」

「はい。テレサさんがとても可愛らしくて。あのですね、レジーナ姉様はなんでも教えてくださる大先生なのだそうです」

「エロいことじゃなきゃいいけど」

「そのようなことはなさそうですよ」


 どうだか。

 あいつのことだから、お子様には分からないようにいろいろ織りまぜているに違いない。


「文字も、随分と綺麗に書けるようになったと、先ほど見せていただきました」

「へぇ、どうだった?」

「とてもお上手でした」


 カンパニュラの判定は甘いからなぁ。

 まぁ、お子様にしてはそこそこって感じだろう。


「薬学と医学を学び、将来、私のために役立ててくださるのだそうです」

「そりゃ楽しみだな」

「はい。……ただ」


 少しだけ寂しそうな、でもどこかで諦めているような、そんな弱々しい笑みを浮かべる。


「テレサさんが薬学に興味を持ち、薬剤師ギルドに就職するとおっしゃったら、私の将来は少しだけ不安になります」


 テレサの夢を阻みたくはない。

 でも、出来れば一緒にいてほしい、ってところか。


「まぁ、大丈夫だ。テレサはお前から離れたりはしないさ」

「そうであると。嬉しいのですが」

「そうだよ。見てりゃ分かる」

「ヤーくんにそう言っていただけると、安心できます」


 へにゃりと、笑顔から変な緊張が解けて消える。


「しかし、薬剤師ギルドの技術を引き継げるような人材となると、テレサさんはかなり適任であると思うんです」


 まぁ、難しいからなぁ、レジーナの技術の継承は。


「テレサさんは、少しだけエッチなところもありますので、そこも適任かな、と」

「えっ、テレサって、そうなのか?」

「一緒にお風呂に入ると、胸を触ってくることがあるんです。……ヤーくんの影響でしょうか?」

「待て待て、人聞きの悪い」


 俺はテレサがそんなことになっているなんて、知りもしなかったんだぞ。


「たぶん、給仕長修行の一環だろう。ナタリアの影響だな、それは」

「人聞きが悪いですね、ヤシロ様」


 背後にナタリア。

 ふふん。そう毎回毎回驚くと思うなよ?



 まぁ、今はめっちゃ驚いたけども。



「……俺の心臓を止める気か? はたまた俺の胸を『きゅっ』ってさせてAカップにする気か!?」

「後者です」

「お二人の影響が色濃いような気がしてきました」


 わぁ、カンパニュラの天使のような笑顔が眩しい。


「……浄化されそうだ」

「……奇遇ですね、私もです」


 手を取り合い、砕けそうになる足腰を奮い立たせてかろうじて立っている俺とナタリア。

 レジーナの隣で同じ尺取虫ポーズで横たわりたい気分だ。


「確かに、テレサさんには給仕長とはかくあるべしということを少しずつお伝えしていますが、特に変なことは言っていませんよ」


 本当か?


「何か、主の胸関連で伝えたことはないか?」

「あるとすれば一つだけ……主よりも胸が大きいと、何かと優位に立つことが出来ますと」

「言ってんじゃねぇか」


 確実にそのせいだろ、テレサがカンパニュラの胸触るの。


「私とエステラ様との関係か、トレーシー様とネネさんの関係か、どちらがいいか――と尋ねたところ、そのような行動が見られるように」

「ネネはイヤなんだな、テレサ」


 子供って、時に残酷。


「まぁ、遺伝的にはルピナスよりもバルバラの方が期待できるけどな」

「……え」


 短く息を漏らすカンパニュラ。

 少し深刻そうな顔をして――


「確かに遺伝は重要なファクターですが、環境はそれをも凌駕すると、以前レジーナ姉様に伺ったことがあります」

「カンパニュラも、そういうことを気にするお年頃になったのか」

「確実にヤシロ様の影響でしょうけれどね」

「エステラを見習うといい。あいつの技術は、本人以外には効果絶大だから」

「ご本人様には、強力な呪いがかけられておりますからね」


 力強く頷き合う俺たちのもとへ、イネスとデボラがやって来る。


「いいですね、四十二区は、いつも楽しそうで」

「二十三区では、まずそのような会話をする機会がありません。まして主をいじりネタにするなど。ねぇ、イネスさん」

「いえ、二十九区では、たまに」

「えっ!? ……これは、私も遅れないようにしなければ……!」


 変なもんを羨ましがるなよ、イネスにデボラ。

 で、デボラはこの先何をしようとしてんだ?

 なんにせよ、ほどほどにな。


 そして、ナタリアがぽんっと手を打つ。


「そうでした。行進の準備が完了する前に、皆様には観客席へ移動していただくようにお伝えに来たのでした」

「うっかり忘れてんじゃねぇよ」

「いえ、カンパニュラさんとテレサさんの交流話が興味深くて、つい」


 確かに、意外ではあったけども。


「カンパニュラも、嫌な時は嫌だって言うんだぞ?」

「はい。その時には。……ですが」


 口元を押さえて「ふふふ」と笑うカンパニュラ。


「こちらも触り返していますので、お相子なんです」

「ここにも、しっかりとヤシロ様の影響が」

「俺のせいにすんな」


 つーか、俺は誰のも触ってないから!

 羨ましいぞ、お前ら!

 女子同士だからって!


 行進の準備が進む中、俺は精霊神に向かって男女平等を声高に叫んでおいた。




「それでは皆様、観客席へご案内いたします」


 ナタリアに先導され、俺たちは教会の前へと戻る。


「うわぁ……」


 思わず声が漏れた。

 だってよぉ、教会の前にごちゃっと人が集まってやがるんだもんよ。


「たくさんの方が見に来られたのですね」


 と、やや楽しそうに言うカンパニュラ。

 暇人ばっかだな、おい!? ――っていうニュアンスは一切含まれていない。

 含まれていればよかったのに。


「お前ら、祭りの時に一回見たろ」

「いやでも、折角やるんだったら見たいじゃねぇかよ」


 と、陽だまり亭には一切顔を出さないくせに、こういう無料のイベントではかなりの高確率で遭遇するしみったれたワニ顔農家がほざいている。


「カンパニュラ。こいつは客じゃないから、愛嬌を振り撒かなくていいからな?」

「なんでそんなこと言うんだよ!? カンパニュラはいい子だから、ヤシロのそんな冗談真に受けないよな? な?」

「『慣れ慣れしくしゃべりかけるな、このワニやろう』」

「えぇっ!? ……ん? あぁ、ナタリアか!? 一瞬マジでビビったじゃねぇか!」


 カンパニュラの背後に立ち、カンパニュラそっくりな声で、カンパニュラの本心を代弁したナタリア。

 器用なヤツだ。


「いや、代弁じゃねぇから! カンパニュラはそんなこと思わねぇから! なぁ~? カンパニュラ?」

「うふふ」

「否定してほしかったなぁ、そこは!」


 カンパニュラに泣かされて、「ヤシロの影響が強過ぎるんだ!」とか、失敬なことを抜かすワニ。

 今度はテレサをけしかけて泣かしてやろうか?


「シスターの皆様は、こちらの観客席の上へお越しください」

「住民の皆様は、今回は申し訳ないのですが、ご遠慮ください。ただし、この場所でご覧いただく分には何も問題ございません」


 イネスとデボラがごった返す観客をかき分け、シスター連中を観客席へと誘導していく。

 トルベック連合特製の二階席。

 祭りの山車や阿波踊り、花火大会なんかをのんびりと見学できる『桟敷席』みたいな感じだな。

 ごった返す観客の頭の上から見学できるから、行進もよく見えるだろう。

 人ごみにもまれることもないのでゆったり座って見られるし、酸素が薄いってこともない。


 普通こういうのは、クッソ高い上に予約制で、一年も前から取り合いになることだってしばしばあるんだけどな。

 今回は無料。大盤振る舞いだ。


「ヤシロ様も、どうぞ二階席へ」

「イヤ、俺はちょっと東側でノーマたちの行進を見るって約束したから」

「はい。その話は聞き及んでおりますので、ここより少し東側にヤシロスペースを設けております」


 何してんの、俺に断りもなく。

 ウーマロ、調子よく使われ過ぎじゃね?


「俺のウーマロなのに!」

「やめてんか、そーゆー発言。捗ってまうさかいに」


 初めて聞いたよ、そんな禁止の理由。


「レジーナも生きてたか」

「なんとかな……護衛騎士はんに感謝や」

「おまませあれ!」

「おませだとよ」

「ほなら、やらしいおっぱいの触り方でも教えてあげなアカンな」

「レジーナ姉様、それはご遠慮ください」


 カンパニュラが止める。

 そうだな。

 被害に遭うのは真っ先にカンパニュラだもんな。

 止めとけ、止めとけ。

 なんなら、母親の力を使ってもいいから。


「レジーナさんも、とりあえず二階席へ。行進が始まるころにはみなさんでヤシロスペースへご案内いたしますので」


 なんだか、執拗に俺たちを桟敷席へ案内しようとするナタリア。


「何かあるのか?」

「はい。行進をする光乙女たちの準備にはまだ少々時間がかかりますし、日が落ちるのももう少し後になります。ですので、その間、余興として紙芝居をご覧いただこうと思います」


 ナタリアの「思います」に合わせるように「じゃん!」と、登場した給仕一同。

 ……なに?

 お前ら、練習してたの?

 うわぁ、めっちゃやる気満々じゃん。


「ナタリアがずっとドヤってたから、羨ましくて仕方なかったんだろうな」

「いえ、そのようなことは――」

「ありました。……まったく、給仕長は」


 と、ナタリアの暴挙を暴露するエステラの館の給仕序列同率二位のシェイラ。

 誰と同率なのかは知らんが、ナタリアがそう言うのだから仕方ない。


 ……つか、シェイラ?


「めちゃくちゃ気合い入ってないか? すげぇ目がギラギラしてるぞ」

「そ、そのようなことは――」

「ありまくりです。シェイラは今朝からずっと足元がふわふわと浮きたっておりました」

「そこまでではなかったはずですよ、給仕長!?」

「♪おっこっしにつっけた~」

「「♪きびだんご~」」


 めっちゃ綺麗にハモったな、おい。


「――このように」

「ほ、本番を前にすれば、体が自然と反応するのは当然です! むしろ、それくらいでなければ、舞台に立つ資格などないのです!」


 つまり、めちゃくちゃ張り切っていると。

 ……ユニークな給仕ばっかり集めやがって。

 そして、ユニークな順に出世していきやがる。


「ナンバー3は、『目にも留まらぬ速さで走ればセーフ!』って全裸で廊下を走ってた給仕か?」

「「アレはまだまだです。仕事がいちいち雑なのです」」


 物っ凄い息ピッタリだなナンバー1・2。

 やっぱ、ここら辺は別格なんだな。

 ……っていうか、いつだったかエステラに聞いた給仕のその痴態、実話だったのか。

 思わぬ形で裏が取れてしまった。


「桃太郎はやっぱりナタリアなのか?」

「いえ、今回は主役をシェイラに託し、私は影に徹します」


 えっ!?

 それはちょっと驚きだ。

 ナタリアは絶対桃太郎を譲らないと思っていた。


「私は、私にしか出来ない仕事をしてまいります」


 なんかまともに見えるぞ、給仕長!?

 どうした、ナタリア!?


「桃太郎はシェイラに任せ、私は――ダンシング・シャドウ役をやり切ってきます」

「え、待って、その人めっちゃ初耳」


 影に徹するって、そーゆー意味!?

 シャドウに徹するの!?

 つか、何するんだよ、ダンシング・シャドウ!?


「桃にいるころから桃太郎に寄り添っていた影が、実は鬼を操る最後の敵なのです」

「真実を知った桃太郎と、我が子のように育てた桃太郎との決闘で心を揺らす純悪のシャドウの葛藤が見所です!」


 と、熱く語るシェイラ。

 よ~く分かった。

 似た者ナンバー1・2だよ、お前らは。


「では、我々は準備がありますので――しばしの別れ!」

「いざまいらん!」


 めっちゃ男性ボイスで、なおかつ完璧な腹式呼吸で言って、ナタリアとシェイラがうきうきと教会へ入っていった。

 あ、給仕たちの手によって紙芝居の舞台が組まれていく。

 あ~らら、大工連中が給仕にこき使われてやがるわ……いや、あのデレデレした表情……


「わぁ~、こんなに早く組み立てられるなんて、すごいです!」

「いやぁ、これくらい、軽い軽い。プロ、だからな」

「すご~い!(ぱちぱち~)」

「でへへ~(トンカチカンカーン!)」


 あいつらは、うん、やり甲斐搾取されてもいいや。


「金槌の使い方がなってないッス。音で分かるッスよ、こういうのは」


 と、俺の隣でウーマロが憤っている。

 お前は参加できないもんな、あんな女子女子しい空間でのお手伝い。


「みなさん、よろしければこちらで一緒に見学しませんか?」


 桟敷席の上からベルティーナが俺たちを手招きしている。


「じゃあ、お邪魔するか。レジーナ、浄化されるなよ」

「守ってな、護衛騎士はん」

「ぁい!」

「ふふ、すっかり仲良しさんですね」

「えへへ~」


 カンパニュラと手を繋いで、テレサが桟敷席へ上がっていく。

 わぁ、護衛対象が放置されてる。


「んじゃ、お手をどうぞ、レディ」

「アホいいな。……ようやらんわ、そんなん」


 差し出した手をスルーして、レジーナも桟敷席へと上がる。

 俺も、その辺に落ちていたベッコを拾ってきたウーマロと一緒に桟敷席へ上がった。


「しっかりするッスよ、ベッコ」

「他区の給仕長氏たちは……加減をまだよく分かっておらぬでござる……」


 あぁ、ちょっと酷使し過ぎたっぽいな。

 壊れる直前で止めるテクニックが必要なのに。まだまだだなぁ、あいつらも。


 で、俺たちが桟敷席に座ると、ほどなくして紙芝居が開演した。


 一瞬、バザーでお披露目された大人な内容の物語だったらどうしようかと不安がよぎったが、さすがにこれだけシスターが大勢いるところで危険なことはしないだろう。



 ……なんて思ってた俺がバカだったよ。

 やりやがったな、ナタリア!?

 エステラがいないからって!


 幸いなことに、カンパニュラやテレサはもちろん、ベルティーナもソフィーやエリアスと言った若手も、特に違和感や裏の意味には気が付いていないらしい。

 婆さん司祭は…………セーフ。にこにこと拍手を送っている。

 他のシスター連中も、特に何も感じていないようで、ただただ、大盛り上がりだった紙芝居を健全なお芝居だと解釈しているようで拍手を送っていた。

 とりあえず、何事もなく終わってよかっ……


「これは、どういった趣旨なのかしら、ヤシぴっぴ?」


 あぁ、ここに勘付いちゃった人がいたぁ!?


 マーゥルに説明を求められるが、俺も寝耳に水状態だと弁明する。

 悪いのは全部ナタリアです。


 俺がマーゥルに詰められている時に、もう一人、俺に駆け寄ってきた人物がいた。


「お前さん、どーなってんのよ、これ!? 子供もいんのに、いい加減にしろよぉ、マジで!」


 幼少期に思春期を盛大に満喫したピーピングティムこと、ブラザー・ティムは何かを察した側らしい。


「あんなうら若い女性があんなセリフ言って、いいんかい? どーなってんの、四十二区!?」


 あぁ……まぁ、領主の館の給仕が仕出かしたことだから……これは全部領主の不手際ってことで、いいんでないかい?




 少々、胃に来るトラブルはありつつも、紙芝居は概ね好評を博したようだった。


「ウチの区にも紙芝居というものが出来ましてね、子供たちに大人気なんですよ」

「まぁ、三十七区にもこのような紙芝居が?」

「羨ましいわぁ。ウチの区にも出来ないかしら」

「そういえば、三十五区ではまた違った劇場が出来たのですよね、司祭様?」

「えぇ。三十五区では人形劇という、可愛い人形を使ったお芝居を見られる劇場が港に出来たのですよ」

「それはとても楽しそうですね」

「是非拝見してみたいわ」


 シスターたちがきゃっきゃと最新の話題に花を咲かせている。


「ちなみに」

「ぅわおっ!?」


 さっきまで紙芝居でダンシング・シャドウを熱演していたナタリアが背後に立っていた。

 忍者か、お前は。


「人形劇も上演可能です。ただし、三十五区の棒使い人形ではなく、パペットによる花咲か爺さんになりますが、それでよろしければ」

「見せていただけるのであれば、是非お願いしたいです」


 ベルティーナが嬉しそうな顔で言う。

 こいつも、花咲か爺さんには好意的なんだよな。

 ポチの死に悲鳴が上がったが、それでも前を向いて生きる正直爺さんには心温まるものを感じるのだそうな。


 ガキどもも泣いてたからなぁ、シスター連中も泣かなきゃいいけど、あんな物語の序盤で。


 いやでもまぁ、ガキどもは「ミリィちゃん飼いたい!」って言ってたし、結構受け入れられる、のか?


「んじゃ、頼めるか?」

「はい。今回は、イネスさんとデボラさんにも出演していただきます」

「そんな急に言って出来るのかよ?」

「もちろんです」

「これくらいは朝飯前です」


 ナタリアの背後からにょきっにょきっと生えてくる給仕長コンビ。


「紙芝居を羨ましがっていたので、『もし上演許可が下りるならば』という条件のもと、脚本を渡しておきました」

「紙芝居を堪能しながら、しっかりと読み込みました」

「完璧に頭に入っています、紙芝居の感動とともに」


 それ、ちゃんと入ってるか?

 まぁ、イネスもデボラも優秀だからちゃんとやってのけるだろうけども。


「んじゃ、頼めるか」

「「「合点承知の助☆」」」

「どこで練習してんの、そーゆーの?」


 コイツラの生態は、日に日に謎に包まれていく。

 知れば知るほど分からなくなっていくなぁ。


「というわけで、人形劇まで手が回らなかったシェイラは、エステラ様にこのことを報告に行ってきなさい」

「……くっ、なぜ給仕長はあそこまで器用なのか……ダンシング・シャドウと正直お爺さんの演じ分けとか……器用過ぎる」


 給仕長とナンバー2の壁にぶち当たって絶望していそうな顔で、シェイラが走り出す。

 走る時の姿勢も、ナタリアの方が何枚も上手だな。優雅さが段違いだ。


「東側にも人を派遣しますので、皆様は存分に人形劇をお楽しみください」

「我々の熱演を御覧ください」

「うまく出来たら褒めてください」


 飢えるな、褒めに。


「絶賛の拍手が最大限の称賛だよ」

「では」

「それを」

「目指します」

「「「うぉんちゅ☆」」」

「もうアイドルグループでも結成すれば?」


 お笑いトリオになるかもしれないけど。


「楽しみですね」

「ガキどもは?」

「この下に、とてもいい席を用意していただいたんですよ」


 桟敷の下に、ガキども用のスペースがあるらしい。

 真正面から見られるのか、そりゃ楽しそうだ。


「デリアさんたちが子供たちを見てくださっているんですよ」


 デリアたちが面倒を見てくれているなら安心だ

 ……まぁ不安があるとすれば、パウラとネフェリーが売っているっていう軽食が、ベビーカステラだった場合、デリアが腹いっぱい食っちまわないかってことだが。

 ガキがそれに触発されて食ってなきゃいいけどな。

 ピザを腹いっぱい食った後にベビーカステラなんか食ったら、夕飯食えなくなるだろうし。


 ……お菓子食って夕飯食えないなんて言ったら、ベルティーナが怒るぞ~。


「買い食いしてなきゃいいな」

「大丈夫だと思いますよ。今夜はすき焼きですよと言ってありますし」


 ガキどもがうるさいんだよなぁ、「また食わせろ、また食わせろ」って。

 自分で稼いでから言えってんだよ。


「教会には、エステラとナタリアとジネットを派遣するが、俺は陽だまり亭でガキ連中の相手だ」

「おそらく、かなり大変だと思いますが、よろしくお願いしますね」

「大丈夫だ。まだ勝てる」


 いざとなれば鉄拳制裁を喰らわせてやる――と、拳を握って見せてやれば、ベルティーナは「ふふっ」と笑って俺の拳に手を乗せてきた。

 そっと。


「ヤシロさんなら、きっとみんな、いい子に言うことを聞くと思いますよ」

「聞かなかったらお尻ぺんぺんな」

「度が過ぎるようであれば、それも致し方ないですね」


 教会は、体罰を禁止はしていない。

 ベルティーナも、よく俺の鼻を「ぷしっ」って押してくるしな。


 とはいえ、そういうことはするなよと、俺の拳を包み込むベルティーナの手が言っている。

 少しだけひんやりとしている、ベルティーナの手。

 風邪を引いた時、おでこにのせてもらうと気持ちよさそうだ。


「教会にはジネットを派遣して、食べ過ぎは厳しく取り締まってもらうからな」

「逆にはなりませんか? ほら、ジネットは子供たちの相手が上手ですし」


 俺なら甘やかしてもらえると?

 甘いんだよ、考えが。


「本当に、仲がよろしいのね」


 ふと、どこかの区のシスターの声が聞こえた。

 見れば、シスター連中がこっちを見てによによしてやがった。いっぱい。


 で、視線を戻せば、俺の拳に添えられるベルティーナの手。


「きゃっ!?」


 と、ベルティーナが声を漏らして手を引っ込める。


「まぁ、お可愛らしい」


 そんなからかいの言葉に、ベルティーナの顔がみるみる赤く染まっていく。


「もぅ、シスター。からかわないでください。悪いお口ですよ」


 と、なんともジネットそっくりな叱り方をするベルティーナ。

 ホント、そっくりだよな、ここの母娘は。


「お前さん、本当に何者なんだぃ?」


 と、ティムが何に驚いてるんだか分からん、見当違いな驚きを寄越してくる。

 何もんでもねぇよ。

 ただの、そこら辺にいるイケメンだ。


「シスター・ベルティーナの特別っての、案外その通りなんかもしんないね、ホントのとこ」


 特別というか、ベルティーナは我が子との距離が近いだけだよ。

 俺も、我が子カテゴリーらしいからな。


「自分。反論は、声に出さな伝わらへんで?」

「ウッセぇ、卑猥薬剤師」

「そこの反論はぱっと出たなぁ。『どの口が言ぅとんねん』としか言われへん反論やったけども」

「あっ、ヤーくん。人形劇が始まりますよ」


 と、カンパニュラが俺の手に自身の手を重ねてくる。そっと。

 ……こいつ、さり気に俺のことイジってんじゃないだろうな?


「少し、羨ましかったので……かまいませんか?」


 こてんと首を傾げて、俺を見上げてくる純粋な瞳。


「ルピナスに、効果あり過ぎるから、あんまいろいろ教え過ぎるなって伝えといてくれ」

「褒めていただけて、嬉しいです」


 こういう返しが、もう、マジルピナス。

 英才教育し過ぎだ、あのオバハンめ。



 観劇中、カンパニュラの好きにさせてやり、飛び入り参加の給仕長コンビの熱演を楽しんだ。

 ……あいつら、ベテランの舞台俳優かよ。

 臨場感半端ねぇな。

 あと、デボラポチ可愛いな。

 ナタリアとイネスのジジイ対決も見どころ満載だった。

 っていうか、漫才だな、あれじゃ。


 あぁ、そうだったそうだった。最後は精霊神の奇跡でポチが復活するんだったっけ。


 うっわ、すっげぇ大歓声。

 なんでか、精霊神を称える言葉があちらこちらから聞こえてくる。


 俺のおかげで信仰が強くなったな、おい。

 感謝してもいいんだぞ? ん? 精霊神よ?



 幕が閉じると同時に、シスター連中は立ち上がり、割れんばかりの拍手を贈った。

 スタンディングオベーションだ。

 あ、ティムが「ブラボー!」とか叫んでる。

 ブラザーがブラボーって。

 あ、違った。

 ブラジャー好きのブラザーがブラボーって叫んでる、だな。


「思春期は卒業したっつってんべ!?」


 とかなんとか、よく分からないことを言われつつ、いよいよ光の行進の時間がやって来た。




 場所を移し、ウーマロが作ったという『ヤシロスペース』へとやって来た。

 うわぁ……無駄に豪華なセットが……


 なんか、道端に観客席みたいな豪華なもんが設置してあるから、ロケのセットみたいになってる。

 まぁ、終わったらすぐ解体するんだし、セットみたいなもんか。

 ご苦労なこって。


「あっ、ヤシロ~! こっちこっち!」

「ベビーカステラ、とっておいたよ~」


 スペースに行くと、パウラとネフェリーが出迎えてくれた。

 デリアは教会前に残ってガキどもの面倒を見てくれることになっている。


「やっぱ、ベビカス売ってたのか」

「えへへ。ウチのお父さんとお母さんが大張り切りでね。エステラも、ウチの両親には優しいから、すぐ出店が決まったんだよ」


 笑いながら「はい」と、クッションを載せた席を勧めてくれるネフェリー。


「このクッション、ネフェリーのお手製か?」

「あ、分かる?」


 そりゃ、モチーフがヒヨコだからな。


「とても可愛らしいクッションですね」

「よかったら、今度カンパニュラにも作ってあげるよ」

「よろしいのですか?」

「もっちろん」

「部屋のコンセプトから外れると、ルピナスに却下されるかもしれないけどな」

「母様はそのようなことはなさいませんよ。私のお気に入りをたくさん増やせばいいと、そのようにおっしゃっていました」


 あの真っ白な部屋を、カンパニュラの色に染めていくのか。

 それはそれで、楽しそうな計画だ。


「レジーナ、生きてる?」

「かろうじてなぁ……」


 ネフェリーと話している間に、レジーナはパウラの向こうへと着席した。

 人の多さに、ちょっと酔っているようだ。


「陽だまり亭に戻ったら、ちょっと籠もりたい気分やわ」

「ざんね~ん。あたしたちが泊まりに行くから、それはムリだよ」

「いや、籠もらせてぇや」

「じゃあ、お風呂は一緒ね」

「でたな、妖怪パンイチ乳モミモミ」

「変な名前つけないで!」

「的確じゃない」

「ネフェリー!?」


 ネフェリーのツッコミに、パウラの尻尾がぶわっと広がる。

 で、俺を気にするようにチラチラ視線を向けてくる。

 へいへい。

 分かってるって。


「志を同じくする、友よ!」

「そんな握手には応じられません~っだ!」


 べーっと舌を見せて、パウラが椅子に座る。

 俺から見るとネフェリーの向こうなので、ネフェリーの体をバリアーにしているようだ。

 丸まって隠れようとしている。

 めっちゃ見えてるけども。


「俺も、パンイチになったら、おっぱいモミモミさせてもらえねぇかなぁ……」

「パンイチ見せてもろた見返りに、おっぱい差し出しとるわけやないんやで?」


 等価交換じゃね?

 ダメなのかよ、そーかよ。


「あぁ、そっか。ここにはジネットもシスターもエステラもいないんだ」


 ツッコミの不在に、ネフェリーが不安そうな表情を見せる。


「そういう時のためのネフェリーじゃねぇか」

「私に、そんな変な期待寄せないで!」


 この中だと、一番ツッコミ役なのがネフェリーだからな。


「はじまぅ!」


 ガバっと立ち上がったテレサが俺たちに向かって言う。

 楽しそうに瞳をおっきく開いて。


 遠くで太鼓の音が鳴り始めた。


「テレサ、見えるか?」

「うん!」

「こっち来とけ。カンパニュラと一緒に見るといい」

「でも……」


 と、レジーナを見るテレサ。

 そこは大丈夫だ。


「イネス、デボラ。頼むな」

「おまかせください」

「ここホレわんわん」


 すっと現れたイネスとデボラ。

 こいつらは、今回こっちを守ってくれる。


 ナタリア的にも、レジーナの身辺警護はまだ必要だと感じているようで、すっごいガッチリとした守りを寄越してくれた。


 ……というか、デボラ。

 何言ってんの?

 そんなに気に入った?


「ちなみに、先ほどのここホレわんわんの『ここホレ』は、『ここ惚れ』で、『惚れちまってもいいんだぜ』というポチからのメッセージが込められています」

「随分とワイルドになっちまったもんだなぁ、ポチも」


 俺の知ってるポチはもっとマイルドだったよ。


「護衛騎士はん」

「ぁい」

「ウチは大丈夫やさかい、行っといで」

「ぁい!」


 レジーナに送り出され、カンパニュラのもとへ駆けてくるテレサ。

 到着するなり、「ぎゅー!」としがみ付く。


「たまぃら!」

「はい。おかえりなさいませ」


 出張的な感覚だったのかね?

 なんか嬉しそうだ。


「よかったな、テレサ」


 カンパニュラにくっつくテレサに、今回の任務の有意義さを教えておいてやる。


「失敗しても大丈夫な護衛対象で、護衛の経験が積めて☆」

「おい、こら、そこのおっぱい食堂店員」


 おい、待てレジーナ。

 今のだと『おっぱい・食堂店員』なのか、『おっぱい食堂・店員』なのか分かんなくて、ちょっとした希望が胸に宿るじゃねぇか。

 ……あればいいなぁ。


「ないよ」

「ないわよ」


 パウラとネフェリーがドライだぁ、かっさかさだぁ。


「皆様、見えましたよ」


 イネスが街道の東側を指さす。

 遠くに、光の行列が見えてくる。


 いつの間にか集まっていた大勢の見物客の間を、ゆっくりと光の行列が近付いてくる。

 先頭を歩くのはノーマ。

 ジネットと同じデザインなのに、ジネットとはまた違った見え方がする神聖な衣装で、光を纏いながら静かに街道を歩いてくる。


 ほぉ……これは。


「綺麗だな、ノーマ」


 思わず呟いた瞬間、ノーマの耳が「ぴんっ!」と立ち、尻尾がお祭り騒ぎを始めた。

 聞き取ってんじゃねぇよ。

 あと、その尻尾、黙らせて!

 神聖で厳かな雰囲気台無しだから!

 ほら、後ろの人ちょっと笑っちゃってるから!


「シスターたちの目に触れる前でよかったよ」

「ノーマ姉様は、本当にお可愛らしいですね」


 くすくすと、カンパニュラが笑う。

 クルージングの時、ノーマと同室になって以降、カンパニュラはことあるごとに「ノーマ姉様はお可愛らしいです」と言うようになった。

 一体、船の客室で何があったのやら。


 というか、こんな小さなお子様に微笑ましい目で見守られてるぞ、妙齢の美女。

 不思議な街だよ、四十二区は。


「あれ? ノーマの後ろにいるのって」

「乳牛牧場のモーモー姉様ですね」


 東側エリアのスタンプを作る際、俺がセクシー(笑)に描いてやると言ったのに固辞した牧場の姉ちゃん、Aカップのモーモーだ。

 あそこは、西側だとエステラのポジションなわけだけど……


「あのポジションって、ぺったんこ専用なの?」


 って呟いたら、メッチャ「きっ!」って睨まれた。

 よそ見してんじゃねぇよ。

 ほら、前向いて。前!

 う~っわ、ずっと俺のこと睨んでくるじゃん。

 後ろの人に抜かされかけてんじゃん。

 真面目にやれよ。まったく。


「ヤシロ、邪魔しないの」


 なぜか、ネフェリーに叱られた。俺が。……解せぬ。


 みんなが静かに見てるもんだから、囁き声も結構聞こえてるみたいだな。

 今後気を付けよう。


「やはり、美しいですね」

「賛同します。我が区でも、光の祭りの導入を急ぎます」

「じゃあ、ついでにバザーもやってやれ。教会の資金が増える」

「そうですね。少々鼻につく言動の多い行商ギルドにも恩が売れて、ゲラーシー様も少しはやりやすくなるでしょう」


 領主相手に鼻につく言動してんだ、二十九区の担当者。

 いまだにそんな態度なのか。


「アッスント送り込もうか?」

「いざという時はお願いします。こちらの支部代表は非常に有能ですので、使い勝手がよさそうです」


 他区の給仕長からも評価が高いとか……偉そうだな、ブタ顔のクセに。


「その際は、必要なくても思わせぶりなセリフを『会話記録カンバセーション・レコード』に残しておいてくれ」

「何か、楽しいことが?」

「直接見ることは出来ないが、家に帰ると嫁さんのチェックが入るらしい」

「なるほど。善処しましょう」

「便乗しましょう、その面白い試みに」

「真面目に見なさいよ、ヤシロ」


 パウラに叱られた。

 見てる見てる。

 ちゃんと見てるから。


 スペースから身を乗り出して西側を向けば、先頭がぼちぼち合流するタイミングだった。


「カンパニュラ、見えるか?」

「はい。ジネット姉様、お綺麗です」


 西側の行進もちゃんと見える位置にスペースを作ってくれたようで、ちらりとではあるが全員の姿は確認できた。

 マグダとロレッタも、今回は真面目にやってたっぽいな。


 それにしても……


 カンパニュラ的に、ジネットはお綺麗で、ノーマはお可愛らしいなのか。

 人の受け取るイメージってのも、千差万別だな。


「やっぱ、何回見ても綺麗やなぁ……」


 ぽつりと、レジーナがそんな言葉を漏らしていた。


 合流した光の行進は、神聖な衣装を身に纏った教会のガキどもに連れられて教会へと入っていく。

 今回は、ベルティーナが桟敷席で見学しているので、教会で待ち受けているのはナタリアだ。


 中での儀式に関しては、シスター連中を教会に移動させてから、ベルティーナに説明してもらう予定になっている。


「とりあえず、これで目的は達成できたな」


 各区の教会関係者に光の行進を見せる。


 厄介な横やりを逆手に取って、こんなに早く実行することが出来た。

 もしかして、光の祭りの拡大を待ち切れなかった精霊神が何か小細工をしていたんじゃないか?


 もしそうだとしても、俺は全然驚かないけどな。



 とにかくこれで、精霊神を讃える光の祭りは外周区と『BU』へ一気に広まるだろう。

 さながら、精霊神が人間の世界へ光をもたらした時のように。


 ……なんてな。







あとがき




有言実行シスターズ・宮地です


あ、シスターじゃなかったです。

複数でもありませんでした。


(有)宮地です。


 Σ(゜Д゜;)会社か!?


459話のあとがきで書きました通り、

クレアモナ家の給仕一同に輝ける場所をプレゼントさせていただきました


輝いていたよ!

紙芝居!

最高だったよ!


爛れた文化が浸透しつつあって、ちょっと不安になっちゃったけどね☆



……ナタリアのせいですね、絶対。



隠語紙芝居……うぅむ、恐ろしい。




というわけで、夕闇迫るというタイトルなんですが、

夕闇といえば、トワイライト……でしたっけ?

宵闇はDuskダスクらしいですけども

初めて聞いたな、ダスク


きっと現在進行形にしたらダスキンですよ


ダスキン、宵闇ってる!

( *´艸`)ぷー、くすくす!



さて、本年の締めくくりにふさわしい一笑いが炸裂しましたところで

……あ、まだこんなもんじゃ締めくくれませんか?

結構笑いに厳しいスタンスなんですね、皆様。

これを引っ提げて来年のM1に殴り込もうかと思っていたんですが、今の反応を見てやめておくことにします。


で、トワイライトなんですけど、

私、プレイステーションで思い出に残ってるソフトが3つありまして


一時期、兄に本体ごと借りて

いくつかプレイしていたことがあるんですが……確か、世間様はプレステ2が発売して浮かれていた時代でしたか……互換性あったんですかね? で、プレステ1の本体ごと貸してくれたんだと思いますが

私、その時プレステ持ってなかったんですよね


後々、作曲するために『音楽ツクール かなでーる2』っていうのを使うために本体を中古で購入しますが――


プレステは実家で兄と遊んだ時しかやったことなかったんですね


で、思い出のソフトが


ヴァルキリープロファイル

闘神伝

トワイライトシンドローム


この三つなんです。


闘神伝(初代)は兄とよく対戦しました。

鉄拳とかサターンのバーチャファイターとかはまったく勝てませんでしたが

闘神伝だけは、なんかたまに勝てたんですよね


格闘ゲームで兄に勝てたのってスーファミの幽遊白書で100%戸愚呂使った時と闘神伝だけでした


メガCDのヘビーノヴァって知ってます?

ロボット同士の格闘ゲームなんですが、ロボット感出してたんでしょうけど、

動きが遅いんですよ。

「ン……ガッシャン!」みたいな(^^;

あれで、ぼっこぼこにされていた直後の闘神伝でしたので、勝てたのが嬉しくて嬉しくて

印象深いゲームでした。


あ、ご存じない方のために、

私、めっちゃくちゃゲーム下手なんです。

マリオ、1-3がクリアできない腕前です。

で、兄はゲーム機をいくつも持ってるくらいのゲーマーで、

兄の部屋に行くと、なんかゲームセンターみたいな感じだったんですよね~


ありがとう、兄。楽しかったよ、兄。

(*´ω`*)


で、ヴァルキリープロファイルは本当に名作でした

アレはよかった……攻略本見ながら一回クリアしただけですけども。

機会があればまたやりたいゲームの筆頭ですね



で、トワイライトシンドローム!

これが、もう!

発売当初、兄がやってるのを後ろで見てたんですが

……怖かった(・_・;


三人の女子高生が七不思議を調べるために夜の街とか学校とかを探索するんですが

キャラが、写真を取り込んだような実写っぽいグラフィックで、

それがもう、怖い

で、使い捨てカメラで心霊写真撮影したり、MDで音を録音したりするんですよ。

当時だな~(*´▽`*)


それがやりたくて、プレステ借りている間に中古屋さんをめぐって探したんですけど

なんでかめっちゃくちゃ高くて、しかも品薄で

全然手に入らなかったんです!


すげぇ人気!?Σ(゜Д゜;)


で、兄に「貸して」って言ったら「もうない」って……


結局プレイしたのは、実家にいた時、兄に借りてやった二回のみでした……

全部で4話くらいあったのかな?

で、1話の前にイントロダクション的な、チュートリアル的なステージがあるんですが、

操作がうまく出来なくて、そのステージをクリアできなくて……

挫折したら、兄に「なんでやねん」って素で突っ込まれた楽しい思い出……

(´・ω・`)


で、兄が途中まで進めたヤツを一回やらしてもらったんですけども、

あ、なんか、心霊写真とか、MD使って霊の声とか、そういうのを集めるやり込みプレイをするゲームなので、何周もするんですよ。

で、「やってみるか?」ってやらしてもらったのが、終電後の駅のお話で


なんか幽霊みたいなのがわっさ~って降りてきた電車があったので、

とりあえず乗ってみたら



兄「なんで乗るねん!?」



って、爆笑されまして。

開始間もなくゲームオーバーに……

見るからに罠っぽいものは、やっぱり罠だったようです。

主人公キャラの一人が行方不明になっちゃいました……


今でも、すごくやってみたいですが、

もう本体もない。

きっともうやることもないでしょうねぇ~


結局、一番やったのは音楽ツクール かなでーる2でしたね~

あれで数百曲作曲しましたからね

初の打ち込み作曲でした(*´▽`*)


物によってなんですけど、

後々使うことになるMIDI音源よりいい音色の楽器とかあって

なかなか侮れないソフトだったんですよ。

めっちゃ使いにくいですけども!


当時作った音源、今もいくつかデータで残ってます

よい思い出です(*´ω`*)



ゲーム、好きだけど下手なのでやらないんですよね

また実家で兄の後ろで兄のプレイを見てみたいものです


そんな、末っ子あるあるでした☆


……ただの思い出語りになってしまいました。

次回は、もっとシャキッとあとがき書きます!

(有)宮地の名に懸けて!


 Σ(゜Д゜;)有言実行シスターズの突込み忘れてたな、そういえば!?



次回もよろしくお願いいたします!

宮地拓海



追伸


本当に、本日急に決まったことなんですが



『異世界詐欺師』初の


挿入歌を公開いたしました!

\(≧▽≦)/



劇中歌と言いましょうか?


232話 昔と今と、老人と若者と

https://book1.adouzi.eu.org/n6240cp/320


内でマーシャが歌った歌にメロディーをつけて、

しかも、めっちゃ頑張って、


動画にしました!

\(*´▽`*)/


よろしければ、いえ、多少よろしくない状況でも

是非是非見てやってください☆


リンクはこちら

なんかたぶん、コピーしてペタッと貼ったら行ける気がします!


『海に閉じ込めた星空』

https://www.youtube.com/shorts/6PygdQeNFHQ


詳しくは活動報告で♪

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― 新着の感想 ―
最新話まで…!追いついた…!! これからも楽しみにしていますね!
アニメ化ならないかな〜
更新ありがとうございました。イメルダ様…(*´Д`*)微笑まれたい、蔑まれ隊!イメルダ様もっと下さい!さて、ベッコ氏生きてて良かったです。落ちてましたか?回収。偉大な芸術家ですのに。ウーマロ皇帝は働か…
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