460話 大海原へ
「すっげぇ~!」
ガキが手すりから身を乗り出して魂からの叫びを上げる。
船は洞窟を抜けて外海へと出る。
洞窟を出た瞬間、目の前に広がる無限の青。
空と海がどこまでも続くこの景色は、凄まじいインパクトがあっただろう。
「お昼に海へ出ると、このような景色なんですね」
日の出のきらめきを見た経験者のジネットをもってしても、この絶景に心を揺さぶられて、深い感動を覚えているように見える。
「……絶景かな、絶景かな」
マグダが舳先でイナセに海を眺めている。
もう、恐怖心はないようだ。
「ふふ……一度マーシャさんの超高速船を味わえば、普通の船なんて怖くもなんともなくなるですよね……」
あぁ、そうね。
お前らは一回地獄のような高速船に乗せられたことがあるんだよな。
だったら通常運航なんか、屁でもないか。
「おにいーちゃーーん!」
と、四十区教会の七歳男児(自称十歳)パスカが俺の腰にしがみついてくる。
「すっごいよ、海! 見て! 海!」
「見てる見てる。つーか、どっち向いたって見えるっつーの」
「おっきぃね!」
「へいへい」
なんか、無性に懐かれたな、この小僧に。
「ちょっとぉ~! ヤシロお兄ちゃんの独占は禁止だよ!」
そこへ、ヤギ耳少女が駆けてくる。
パスカの前に立ち、腰に手を当てて「違法だよ!」と、どこで覚えてきたのか、覚えたての言葉を振り回す。
そんな法律ねぇよ。
「だって、ヤシロ兄ちゃん、好きだもん!」
「わたしたちの方がもっと好きですぅ~!」
「ヤシロ、モテモテだね」
「ことごとく未発達だけどな」
教会のガキに好かれても、こっちは一切楽しくないんだよ。
どうせくっつくなら、もっとぽぃんぽぃんの女子にしてもらいたいもんだ。
「ジネット、引き剥がしてくれ」
「わたしの手には負えそうもありませんので、ヤシロさんは子供たちの面倒を見ていてあげてください」
「ピザの準備は、私たちにお任せください、ヤーくん」
「れんしゅう、した!」
あぁ~なるほど。
こうなることを見越して、全員にピザの作業を教えてたんだな、ジネット。
なら、ガキどもをカンパニュラたちに任せて、俺がピザチームに入れば効率よく回るだろうが!
「楽しい思い出は、一生物ですから」
と、俺をこのガキ地獄へと置き去りにする。
なんて素敵な笑顔で……
「俺、ジネットに何か恨み買うようなことしたかな?」
「思い当たる節はいくつもあるんじゃないのかい?」
「ねぇーよ」
……まさか、パイオツカイデーの本当の意味を知ったとか?
だったら恨まれるかもしれないが……そんな素振りは見えなかったしなぁ。
「『エステラはここぞって時に勝負服着るけど、ジネットの場合は勝負下着だよな☆』って言ったくらいで……」
「じゃあ、それだよ」
冷たく言って、俺のデコをペチリと叩くエステラ。
生え際がびっくりして後退したらどうしてくれる。
ほらほら~、怖くないよ~。もっと前の方にいていいからね~。
「お兄ぃ~ちゃ~ん! わたしも抱っこ~!」
俺の腰回りで、パスカと幼稚な争いを繰り広げていたヤギ耳少女が全力で甘えてきた。
今まで、そんな甘え方したことなかったろうに。
「抱っこしてほしかったら、ハビエルに言ってこい。何十人でもいっぺんに抱え上げてくれるぞ」
「よく言った、ヤシロ!」
遠くから、デカいオッサンの声が聞こえてくる。
イメルダは……あ、シスターたちに捕まっていろいろ話聞かれてるな。
ははぁ~ん、日傘が欲しいんだな、婆さんども。
今さらシミ対策しても遅かろうに。
「えぇ~、お兄ちゃんがいいのにぃ~」
「レディが異性にベタベタするもんじゃねぇぞ」
「ハビエルおぃたんも異性じゃん」
まぁな。
つか、俺はガキの相手なんか全力でするつもりはねぇんだよ。
「おい、七歳児」
「十歳!」
「こっからダッシュであのデカいオッサンに突撃して、転ばしてこい」
「むりだよぉ。ハビエルギルド長はめっちゃ強いって街中のみんなが知ってるもん」
あ、そうか。
四十区では木こりギルドは有名なのか。
「馬車に勝ったお前なら出来る! なんなら、仲間に応援を頼んでもいいぞ。全員で飛びかかって『まいった』って言わせてこい!」
「分かった!」
「もし勝てたら、全員にケーキご馳走してやるよ」
「ホント!?」
「「「ケーキ!?」」」
「わたしも、行ってくる!」
ガキどもが一斉に「わぁー!」とハビエルへと突撃していき、ヤギ耳少女もケーキにつられて俺から離れていった。
あぁ、さっぱりした。
「甲板で走り回って、危険なんじゃないのかい?」
「大丈夫だろう。ほら、メドラとマーシャが近くに待機してくれてるし」
つーか、こっからピザが焼けるまで、ずっとガキの相手とかしてらんねぇっつーの。
「体力があり余っていて、ガキが大好きなヤツに丸投げするのが、相互扶助ってもんだ」
「相互扶助って……まぁ、ハビエルもこれだけのシスターがいれば羽目は外さないと思うけどね」
「シスターがいなくても、ハビエルはそこまで愚かじゃないさよ」
と、ノーマがくつくつ笑ってやって来る。
まぁ、あいつの病気は有名だが、本気で幼女をどうこうするつもりがないことは分かっている。
「ただ、見た目がアウトなのでアウトだけどな!」
「そこは、否定しないけどねぇ」
と、煙管をイジって懐にしまう。
吸いたいけど、ここではやめとくのか。
青空の下で吸う煙管は、さぞ美味かろうに。残念だったな。
「ねぇ、ヤシロ」
と、エステラが進行方向を眺めて言う。
「今日は女神の瞬きまで行くのかな?」
「そこまでは行かないだろう」
そこそこ遠かったよな、たしか。
「近海をぐるっと回って、飯食って帰るだけだと思うぞ」
「それじゃ、これが今後導入される、クルーズランチやクルーズディナーのコースなんだね」
エステラが海を眺めながら、近々導入予定のクルージング計画の草案を脳内で練り始める。
「ちなみにだけどさ、クルージングでピザとか、出せないかな?」
「今日、シスター連中の熱烈な共感が得られれば、ゴリ押ししてくれんじゃねぇの?」
「そっか。よし、頑張ろう!」
ピザなんか出したら、金かかるだろうに。
生地は教会から買うことになるだろうからなぁ。
まだまだ先の話だ。
「まぁ、飯を食うまでは特に何があるわけでもないから、飽きないようにちょっとした工夫は必要かもしれないけどな」
「なに言ってんさね」
ノーマが呆れたような声で言う。
「これだけの絶景が目の前に広がってんさよ。どれだけ見てても飽きやしないさよ」
「けど、ガキどもはもう海には目もくれずに走り回ってるぞ」
というか、ハビエルに飛びかかってる。
ハビエルのヤツ、男女で扱いに差を出してやがるな?
あの重篤患者め。優しくして、少しでも好感度を稼ぎたいのか。
「イメルダに、九歳くらいの母親が出来るかもな」
「そうしたら、区は違うけれど、ボクから重い懲罰を与えておくよ。越権行為だと承知の上でね」
「そん時ゃ、アタシやイメルダも加勢するさよ」
わぁ、極刑よりも極まった刑罰だな、それは。
シスター連中もガキどもも、みんな賑やかで、クルージング経験者のパウラやネフェリーも、それなりには楽しんでいるようだった。
ミリィは……うん、今回は大丈夫そうだな。
「唯一死にかけてるのは、レジーナだけか」
「太陽の光が降り注いでっからねぇ」
「キノコか何かなのかな、レジーナは?」
ノーマもエステラも、カッサカサに乾いた顔でレジーナを見ている。
いや、見下している。
本当に薬剤師ギルドに後継者を送り込んでおかないと、あと数年で技術が途絶えてしまうかもしれないな。
ほんと、扱いにくい生き物だよ、あの残念生物は。
ピザが焼け、ベルティーナから他のシスターたちへ、このピザについての説明がなされる。
今回は特例で作っているが、この味は教会が変わらなければもう二度と味わえないことを力強く、それはもう力強く語っている。
本気度がすげぇよ。
「今回は鉄のオーブンを使ったので、厳密に言えばこれは教会の定めるところの『パン』には該当しない。ついでに、こっちの脱法パンもフライパンで焼いたので『パン』ではない」
目の前に並ぶ、どう見ても『パン』な『パンではないもの』。
それを目の当たりにして、シスターたちは戸惑いを隠せないようだ。
「ですが、教会の威信を傷付けずに、このピザを流通させる手立てはあります。ね、ヤシロ?」
なんで俺に振るんだよ。……ったく、ちゃんと説明してやったろうに。
しょうがないので、ピザ生地を教会で作って販売するやり方を改めて説明する。
……ていうか、お前ら、人の話ちゃんと聞いてないだろう?
完全に目がピザに釘付けじゃねぇか。
はぁ……ったく。
「エステラ。その前に、試食会を始めよう」
「そうだね。では、みなさん、新たなパンの可能性をご賞味ください」
「「「いただきますっ」」」
どことなく、ベルティーナに似た雰囲気の声を上げて、シスター連中がピザに手を伸ばす。
おぉっ、やっぱシーフードピザが人気だな。
見た目に豪華だもんなぁ、シーフードピザ。
「ん!? なんですかこれは!?」
ベルティーナが、シーフードピザの耳に隠されたチーズを発見して驚いている。
むに~んと伸ばすと、ベルティーナの口とピザ生地の間でチーズのアーチが架かる。
「美味しいですぅ~!」
大好評のようだ。
それを見たシスター連中が、自分も自分もと、シーフードピザに群がる。
「「「ちぃーーーず!」」」
はしゃぐな、いい年齢こいて。
「やれやれ。婆さん連中でこれなら、ガキどもはもっと大はしゃぎしてそうだな」
パンに関する話をするだろうからと、シスター連中には船室の一つに集まってもらった。
ガキどもは、今ごろ食堂で盛大なピザパーティーをしていることだろう。
ナタリア以外の給仕長といつものメンバーが様子を見てくれているので問題は起こらないだろう。
ジネットとベルティーナ、あと四十区のシスター二人という保護者が全員いないわけだが、まぁ、あのメンバーならなんとかするはずだ。
俺とエステラとナタリアは、説明のために大人チームだ。
大騒ぎするガキの面倒を見なくて済むのは、ひじょ~にありがたい。
やっぱ、大人な俺には、落ち着いた大人な空間がよく似合う――
「「「ちぃ~ず☆」」」
はしゃぎ過ぎだ、ババアども!
年齢考えろ!
「精霊教会、もっと規律を厳しくしろよ。人のおっぱいにばっかり懺悔を強要しやがって」
「規律が厳しくなると、君の懺悔時間も飛躍的に伸びることになるだろうね」
だから、俺ばっかり見てないでシスター連中をもっとしっかり監視しとけって言ってんだよ、精霊神!
お宅の娘たちなんだろ!?
「あの親にして、この子ありってとこか」
「君のその精霊神様に対する認識は、一度どこかで徹底的に矯正するべきだろうね」
いやいや。
たぶん、この街の誰よりも的を射ていると思うぞ、俺の精霊神分析。
「あら、この緑のピザも美味しいですね」
「うふふ。冗談ばっかり。こんな緑の料理が美味しいわけが……美味しいわ!?」
芸人か。
あれ、教会って面白い人を養成する場所だっけ?
見た目が地味だったのか、ジャーマンポテトピザと、緑の見た目をしたジェノベソースピザは不人気だったのだが、ここにきてようやく食べられ始めた。
「これ、美味しいですね!?」
「わたし、一番好きかもしれません!」
食うと美味いんだよ。
食わず嫌いしてんじゃねぇよ。
とにかく、これで、一通りピザと脱法パンは全員食ったかな。
「確かに、これがパンではないと言われてしまうと、パンの定義が揺らぎかねませんね」
「それに、これはパンではないからと様々なお店で売られるようになれば、教会のパンは売れなくなってしまうでしょうね」
「最近は美味しいパンが出来ましたので、完全に売れなくなることはないと思いますけれど……」
「以前のパンだったら、誰も買わなくなっていたことでしょう」
「これもまた、巡り合わせなのでしょう」
もっともらしいことを話しているシスター連中だが、両手にピザを持ってわんぱく食いしてると、説得力なんぞ微塵も感じられない。
ほら、ほっぺたにソースついてる!
落ち着いて食えよ。
だから、かぶりつくなって!
あ~ぁ、口の周り真緑じゃねぇか。妖怪か、お前は。
「みなさん。お味はいかがでしたか?」
「とても美味しいわ、ティナール」
厨房から顔を出したジネットに、シスターを代表して婆さん司祭が答える。
そのあとで、どこぞの婆さんシスターがジネットに質問を投げかける。
「こちらのピザは、あなたがお作りになったの?」
「はい。調理をしたのはわたしたちですが――」
と、こちらに視線を向けて、軽く微笑むジネット。
「発案したのは別の方です」
それはもう、答えを言ってるようなもんだぞ、ジネット。
事実、シスター連中の視線が一斉に俺に集まった。
「新しいパンのレシピも、四十二区から広まったのでしたね」
と、司祭がとんでもないことを言う。
「それは、詮索をしないって約束のトップシークレットじゃなかったのか?」
「詳細は知らずとも、教会の者でしたらほぼすべての者が知っている公然の秘密です」
とはいえ、明言すんじゃねぇよ。
「これがきっと、あなたの助けになると思いますよ」
と、婆さん司祭。
全員が正しく認識することで、貴族からの横やりを防ぐ抑止力になってくれると?
ついでに、今回の計画――パンの定義の見直しの地盤固めも出来て一石二鳥だってか?
かぁ~、したたかな婆さんだねぇ。
「劇場を運営する貴族が、四十二区内で問題を起こしたと聞き及んでおります」
淡々とした声で、婆さん司祭はシスターたちに話をする。
「そして、薬師ギルドが教会の秘匿情報を詮索するような訴えを起こし、統括裁判所が動いてしまいました」
ここまで起きたことを、淡々と、時系列順に。
「偶然にも、この一連の動きを見せたのは、みな同じ区に本拠地を構える者たちです」
ざわっと、室内がさざめき立つ。
その辺の詳しい事情までは、まだ知らされてなかったらしい。
「このレシピの発案者は、とても優しい子です」
婆さん司祭がピザを見つめ、静かに囁く。
「独占する方法などいくらでもあったでしょう。今だってきっと、もっとすごい知識を隠し持っていることでしょう」
こちらを一瞥もせず、ただ淡々と、ピザを見つめて話を進める。
淡々と、淡々と。
「けれどその方は、教会の威信を守ってくださいました。教会の力が弱まり、市場が混乱することを厭い、子供たちが笑顔で暮らせる日々を守ろうとしてくださっています」
いや、そんなことは考えちゃいないが。
「みなさんも、今日、この短い時間の中で、彼がどのような人物かを直に見て、よく分かったと思います」
数名のシスターの視線がこちらを向く。
……見んな。
「彼は、危うい現状の制度に警鐘を鳴らし、我々に備えと改革の機会をくださいました。疑う余地もなく、純粋な善意の心によって」
そんな心は持ち合わせた覚えがないけどな。
「このピザが世に出回れば、きっとこの国の人々の生活はより豊かになり、彩り鮮やかなものに変わるでしょう」
婆さん司祭はここで初めて、俺へと視線を向けた。
「彼が見据えている未来はきっと、我々が願い、思い描いている未来より、ずっと明るいのです」
そんなことを、確信を持って口にする。
「我々は流されるのではなく、おのれの足で、その輝かしい未来に寄り添うべきであると、私は考えます。今日の子供たちの笑顔が、彼の優しさが紡ぐ明るい未来の入口だと、私は信じています」
ピザを置き、手を組んで、祈りを捧げる。
数秒間、まぶたと口閉じ、静かに祈りを捧げた婆さん司祭が、まぶたを開けると同時に頬を緩めて――
「まぁ、その『彼』というのがどなたなのかは、ここではお教えできないのですけれどね」
――なんて、今さらなことをほざく。
いや、それもう、答え全部言ってるようなもんだったから。
見て。
全員こっち見てるから!
……教会の言う『秘匿』ってもんも、あんま信用できねぇなぁと、俺は改めて精霊神のしょーもなさを実感したのだった。
特に「こうしましょう」「そうしましょう」などという話し合いはなされず、認識をすり合わせる程度の話し合いをして、シスターたちの密談は終了した。
とりあえず、船から降りたら即座に、「薬師ギルドの訴えは完全な言いがかりであった」と連名で手紙を出してもらえることになった。
これで、明日にも薬師ギルドと統括裁判所へ抗議文が届くだろう。
「みなさん、ピザはもうありませんが、こちらで新鮮な海の幸をご賞味ください」
「美味しい美味しい、網焼きだよ~☆」
甲板に移動し、人魚と陽だまり亭一同による盛大な船上バーベキューに参加する。
出迎えはカンパニュラとマーシャだ。
食堂でのピザパーティーは、やはりガキどもが大はしゃぎしていたようで、高いテンションのまま甲板でバーベキューパーティーになだれ込んだようだ。
そこに、俺たちが合流した感じだな。
実に騒がしい。
ロレッタとパウラが走り回り、デリアやノーマ、ミリィにネフェリーも手伝いをしてくれている。
給仕長とマグダは一歩引いたところから甲板全体を見渡し、過不足のないサービスを提供している。
……マグダ、いつの間にそこに並び立つ存在になったんだよ。
さり気に、自分を特別な位置に置いてるよな。
まぁ、いつものことか。
シスター連中も、初めて食べる海の幸に興味津々な様子だ。
あちらこちらで恵比須顔が咲き乱れている。
それを、少し離れた場所で観察する。
「なんや、らしくないな」
カニの味噌汁を片手に、レジーナがそっと俺の隣へやって来る。
「カニがはみ出てんぞ」
「どうやっても収まりきらへんねん、これ。大き過ぎやわ」
「おっぱいみたいなもんか」
「みんながみんな、収まりきらへんほど大きいわけやないけどな」
みんながみんな、そうならいいのに。
「らしくないって、何がだ?」
「自分の子供好きは、もう周知の事実やけどな――」
「ずずっ」と味噌汁をすすり、レジーナがこちらを見ずに言う。
「今日の自分は、なんや、妙に張り切り過ぎてるように見えるわ」
「そうか?」
「まぁ、ウチの思い過ごしなんやったら、それでえぇねんけどな」
さすがに鋭いな、こいつは。
「伊達にぼっちを極めてないな」
「極めるつもりもあらへんかったんやけどな」
レジーナの言う通り、俺は少々無理をしていた。
いや、無理ってほどではないんだが、いつもよりも大袈裟に、普段なら焼かないような世話まで焼いてみせ、シスター連中に好印象を与えるよう行動をしていた。
「なんか、気になることでもあるんやったら、聞かせてもろとこかなぁ、思ぅてな」
レジーナは、薬師ギルドに名指しでちょっかいをかけられている。
こいつには、言っておいた方がいいか。
「薬師ギルドのやり口が、あまりに安直過ぎるから、ちょっとな」
「それは、貴族流の風習みたいなもんで、特に深く考えずにいつも通り、おのれの権力を振りかざして平民を黙らせようとしとった――って、自分、言ぅてへんかったっけ?」
そう。
傍目に見ればそうなんだよ。
今まで、そんなやり方でなんでもかんでも思い通りにしていたバカ貴族が、今回も調子に乗って同じやり口で自身のわがままを貫こうとしている。
そんな単純な話だったら、どれだけ楽なことか。
「だが、ウィシャートとの一件があった直後だ。そこまで杜撰でいられると思うか?」
「考え過ぎなんとちゃうん?」
「なら、それが一番いいけどな」
だが、考え過ぎでなかったら?
この安直な仕出かしが、別のものを誘発する罠だったら……
「つっても、考えても答えなんか出ないんだけどな」
「貴族の頭ん中は、直接覗き込んでも理解できへんと思うわ」
「同感だ」
感性が違い過ぎてな。
プライドのために、人も金もどんどん切り捨ててしまえるあの連中を理解するのは、おそらく一生かかっても無理だ。
何を考えているのか、くらいは読み通せるが、到底理解は出来ない。
「今回、教会が動いたことで、薬師ギルドにはもちろん、統括裁判所にもダメージがいくだろ?」
「まぁ、せやね」
「統括裁判所なんて、貴族の集まりだろ? 誰がどんな誘爆するか分かったもんじゃないぞ」
「プライド踏みにじられた~って言ぅてか? ……それこそ、考え過ぎとちゃうのん?」
「かもな」
ただ、どうにも据わりが悪いんだよな。
「最初にちょっかいをかけてきたのは劇場の貴族だぞ? それが、薬師ギルドが出て来て、統括裁判所にまでダメージが及ぶことになる……なんか、範囲が広がっているというよりも、進む道を捻じ曲げられているような気がして…………まぁ、気のせいならそれに越したことはないんだけどな」
俺の話を聞いて、レジーナは味噌汁をベンチに置き、腕組みをして考え込み始めた。
「バオクリエアやったら……」
そんな前置きをして、レジーナはある仮説を立てる。
「小物Aのいざこざに、後ろ盾である大物Bがしゃしゃり出て来て、Bの権力を使って別の大物Cを引っ張り出す。ほんで、AとCの向いとる方向っちゅ~か、視線の先、まぁ、標的を一ヶ所に集中させて自分は姿をくらませる。こうすることで、自分は直接的に関与せんと目標を排除する――っちゅう手法は割と存在したわ」
自分が動くと他の、自分と同程度の大物が腰を上げてしまいかねない時には、そういう手法が有効になるだろう。
とあるAとBの間にいざこざが起こった時、メディアがそれを大々的に取り上げる。
『Aには正義があり、Bはそれを妬んで難癖をつけている』という論調で。
そうすれば、メディアに扇動された群衆が総出でBを非難する。
「A対B」だった争いが、いつの間にか「世論対B」にすり替えられる。
そして、それを扇動したメディアは「私はどちらにも加担していませんよ」という顔を平然と貫き通す。
なんてことは、メディアに限らずいくらでも実例が存在する。
実に単純で効果的な方法だからな。
戦時中であれば、たったそれだけのことで戦局が大きく傾くことだって、ひっくり返ることだってあり得る。
強い者ってのは、なにも強大な力を有している者だけに限らない。
強大な力を自在に操れるヤツもまた、強い者なのだ。
「だからな、四十二区の港は守ってもらわないと困るんだよ」
四十二区を潰せば、もしくはそうするぞという脅しが使えれば――
俺を引き抜ける。
――そんなしょうもない発想で、四十二区を荒らされてたまるか。
「それ、領主はんに言ぅたったら、当面の懺悔は大目に見てくれはるやろうに」
「あいつには、懺悔をどうこうする権利ねぇもん」
「さよか」
けらけらと笑って、レジーナが立ち上がる。
「ほな、教会に守ってもらえるように、ウチもいっぱい徳積んどかなアカンなぁ」
言って、レジーナが歩き出す。
目指す先には、はしゃぎ過ぎて転んだクソガキが泣いている。
「シスターはんの群れに飛び込んで、万が一ウチが浄化されかけた時は、自分が卑猥なジョークでウチのこと救いに来てな」
そんなもんで救われるようなヤツを救いたくねぇなぁ……
「分かった。『ウェット』に富んだ小粋なジョークで救い出してやるよ」
「はは、そら濃そうやなぁ。ベッタベタやん、絶対」
空になった味噌汁の器を片手に、レジーナは、「はいは~い、もう泣かんでもえぇで~。ちょっと傷口見せてんか~」とガキのもとへと向かった。
それから、食べ過ぎだったり、船酔いだったりするシスター連中を一人一人診察して回り、丁寧に薬の効果や用法容量を説明してやっていた。
そんな時間がしばらく続き、レジーナが浄化されかかったところで、クルージングの時間は終了となった。
「まぁ、可愛らしい!」
港へ戻り、最後のページにデッカいスタンプを捺したシスターがにっこりと頬を緩めている。
スタンプラリーとは別枠の、大きいスタンプは全二種類。
港と牧場エリアに存在している。
……牧場エリアが、全っ然盛り上がってないから、一個置いとこうってことになったんだよ。
最初は領主の館に一個置いておこうとも思ったんだが、不特定多数の者が領主の館に詰めかけると、それに対応する人員が必要になり、警備面でも看過できないと却下された。
善良なる観光客に混ざって、悪辣な刺客が潜んでいるかもしれないしな。
ってわけで、牧場エリアにスタプを置いたわけだ。
これで、東と西に大きいスタンプが一個ずつ。……結構気を遣ったんだぞ?
スタンプもな? 港のヤツに負けないように賑やかで可愛いデザインにしたんだから。
こういうの、ベッコはまだまだ苦手だから俺がやる羽目になるんだよな。
絵柄は、デフォルメした牛やヤギやヒツジと、ミルクや肉や羊毛などの製品が可愛く賑やかに、飛び出してくるような迫力で描かれている。
うん、頑張ったぞ、俺。
なにせ港のスタンプは、以前三十五区で俺が描いた、丸っこい船とマーシャのデフォルメイラストに、無数の人魚と港を追加した豪華仕様だからな。
マーシャに匹敵するキャラクターがいないんだよ、東側!
ペチャパイの牛人族女子とか、一部マニアには物凄く受けそうだけど、全力で拒否されたし。
「めっちゃセクシーに描いてやるから(笑)」
って、説得しに行ったのに!
涙目で「統括裁判所に訴えますよ!?」とか言いやがんの、酷くね?
で、動物をこれでもかと描いたわけだ。
……なんか、牛飼いのオッサンどもが筋肉をムキムキさせてポーズ決めてやがったけど、描くわけねぇだろ。
面ぁ見て物を言え、オッサンども。
てなわけで、現在港では人魚と豪華客船のデフォルメスタンプで大盛り上がりしているわけだ。
「あちらに、お土産屋もありますので、見て行ってください」
と、エステラが、自身のセクシーキュートなメンコと引き換えに値切りに値切って建設したサンドアート工場の方へとシスターたちを誘導していく。
ようやく完成したな。
ここまで長かった。
……まぁ、ここからが大変なんだけどな。
カラーサンドアートをマスターする職人が誕生するのは一体いつになることやら。
現在は、手先の器用な細工師連中に、俺が書いた作り方指南書を渡して作業してもらっている。
せっかくの全面ガラス張りなのに、職人の技術がイマイチだとか……工房の持ち腐れもいいところだ。
さっさとマスターして免許皆伝といきたいもんだ。
だがまぁ、とりあえず今は、なんとなく作ってる雰囲気だけでも見えてれば十分だろう。
あと、完成品は俺が少々と、ベッコが大量に作った。
さすがのベッコも、最初は苦戦してたっけなぁ。
今もまだ、複雑なアートは難しいらしい。
ふふふ……ベッコの苦手なものって、珍しいから、ちょっと嬉しい。
「え、俺は出来るけど?」って態度取れるからなぁ~。
「まぁ、素敵。瓶の中に海があるわ」
「まぁ~、素敵ですねぇ~」
「私、買って帰ろうかしら? そうしたら、子供たちに海を見せてあげられるもの」
並ぶカラーサンドアートを見ながら盛り上がるシスター連中の中、ティムがカラーサンドアートを一つ持って俺のところへやって来る。
「お前さん、このガラスって……」
「ダックがお前んとこの領主に言って、格安で揃えてもらったものだ」
「これ、高ぇ~べ? どんだけ勉強させたの、お前さん?」
「知らん。ダックに聞け」
俺は交渉に参加してないからな。
こちらが許容できる額だったから購入したまでだ。
「お前んとこと連携できれば、こういうのがもっと作れるようになる。いいからさっさとガラスを量産しろ」
「人に物を頼む態度じゃなかんべよ、それよぉ?」
つか、遅いんだよ、お前んとこの領主。
外周区も『BU』もとっくに港に一枚噛んできてるんだから、動けよ、そろそろ!
「三十三区は、レンズの加工も得意だよな?」
「そりゃあ、お前さん。ガラスの加工は三十三区の十八番だぜ。他のどこの区にも負けやしねぇやね」
「そんじゃ、オペラグラスを作るように言っといてくれ」
「オペラグラス?」
帰ってからでもよかったのだが、折角そういう話が持ち上がったんだ。
今渡してしまってもいいだろう。
「ほい、設計図と原理を分かりやす~く書いたテキストだ」
ガリレオ式の簡単な双眼鏡と、ケプラー式の双眼鏡をやや高度にしたもの。
そして、ポロプリズムを用いて像を明るく正しい向きで歪みなく拡大する方式と、ダハプリズムを用いたコンパクト化を目指した難易度の超高い双眼鏡の仕様書を渡しておく。
「……さっぱり意味が分からねぇ」
「きっと領主に見せりゃ飛びついてくるさ。酒と石には興味があるんだろ?」
鉱石に興味があるなら、きっと加工や研磨にも興味があるはずだ。
ダハプリズムなんて面倒で難しいもんを、俺は絶対に作りたくはないが、技術力の高い変態がいるなら是非作らせたい。
「最低でもガリレオ式、出来ればケプラー式の望遠鏡にポロプリズムを組み込んで像が上下逆になるのを防いで、さらに加工が出来るならダハプリズムを使って軽量化しといてくれ」
「見たことも聞いたこともない技術を、そんな軽々しく頼むなってばよ!」
「大丈夫! 領主に伝えるのは俺じゃない、お前だ!」
よって、怒りを買うとしても叱られるのはお前だ!
ガンバッ☆
まぁ、オペラグラスならガリレオ式で充分だ。
でもどうせならバードウォッチングとか天体観測とか出来るようになっておきたいじゃん?
今後の儲け話のために。
「あぁ、もう。なんかいろいろ名前が出て来て、どれがどれだか分かんねぇーっちゅーの!」
ガシガシと頭を掻くティム。
まぁ、覚えなくてもいいよ。
ガリレオ式は、日本でもオペラグラスに使われる、結構簡単な作りの双眼鏡。
ケプラー式は、遠くを見られる代わりにレンズに映る像が上下逆になる。
それじゃあ見にくいっつーんで、プリズムを使って目に映る像を上下左右正しい位置にしましょうってわけだ。
で、ポロプリズムは加工が簡単だがデカい。でも明るくて視野も広い。
ダハプリズムは加工が鬼難しくて手作業ではまぁ、無理だ。でも、作れるようになると小型軽量化が出来てすげぇ便利!
ってところかな。
なので、今はガリレオ式オペラグラスだけ出来りゃいいよ~、と、仕様書には書いておいた。
「ちなみに、ライターっていう火をつける道具もある」
懐から取り出したライターで火をつけてみせる。
「この着火に必要なのがフリントっていう石英とかから作る着火剤だ。そーゆーのもあるぞって言っといてくれ」
「お前さんは、領主様をなんだと思ってんだぃ?」
都合よく権力と技術を提供してくれる変わり者だろ?
「まぁ、視察から戻ったら領主様に報告に行くことになるから、そん時ついでに言付けておくよ」
「おう、吉報を待ってるぞ」
「とんでもねぇ大物だなぁ、お前さんはよぉ」
ティムが肩を竦めて、「こいつは、トップシークレットだかんね」と、オペラグラスの仕様書を懐に大切にしまった。
絶対落とさないように、ってか。
さて、領主から反応はあるかなぁ~っと。
ティムが、若干おどおどしながら俺のもとを離れていったあと、マーゥルがにこにこ顔で近付いてきた。
「素晴らしかったわ」
「めっちゃ楽しんでたな」
マーゥルは、モコカとシンディを引き連れて、完全に観光モードで楽しんでいた。
ピザもちゃっかり食ってたしな。
「この後の光の行進も見学して帰るわね」
「見たじゃん」
「何度でも見たいものなのよ」
さいで。
「ヤシぴっぴ」
一瞬、笑顔を引っ込めて、マーゥルは俺の顔をじっと見つめてくる。
まるで、些細な言い逃れも許すまいとするように。
「何かあれば、頼ってね」
それは、「何か心配事を隠し持ってるんじゃないのか?」と問い質してるのと同じ意味だよな、きっと。
「お返しが大変になりそうだから、慎重に検討するよ」
マーゥルに借りを作るなんて、そんな恐ろしいこと、おいそれとは出来ないって。
「ひどいわね、もぅ」
と、マーゥルは頬を膨らませる。
その「ひどいわね」は、俺の暴言に対するものか、回答をはぐらかされたことに対するものか……
「私、相場以上のものは奪っていかないつもりよ?」
相場通りのものは要求するんじゃねぇか、じゃあ。
その相場が怖いんだっつーの。
「まぁ、あなたがそうして笑っている間は、信用しておいてあげるわ」
言いたいことだけ言って、マーゥルは給仕長連中のもとへ歩いていった。
何も起こらないのが一番さ。
ただ、「どうせ何も起こらないだろう」と、楽観できるほど、肝が据わってないだけで。
小心者なんだよなぁ、俺ってば。実はな。
……いや、笑うとこじゃないから。
あとがき
ええぃああ、宮地です
さてさて、
感想欄などを見ていると、読者様の中にも割と「あれ?」と違和感を覚えておられた方も多いように見受けられましたが――
『ヤシロさん、いい人過ぎない?』問題
その答え合わせと言いますか、
ヤシロが漫然と感じている不安のようなものを今回吐露いたしました。
まぁ、物事がうまくいっている時ほど
足元の落とし穴に気が向きにくくなるものですからね
下手に不安を煽らないように、
一人、黙って根回しをする男、ヤシロ
我々、
心の中まで読めてしまう読者様サイドにすら語らずに根回しをしておりました。
この男には、
一体何が見えているのか……まぁ、ほぼおっぱいなんでしょうけども
そう言えば、「ほぼカニ」っていうカニカマが売ってたんですよ
美味しかったですし、もう、ほぼカニでした。
……ということは、ほぼおっぱいというのは…………ごくり
オッス! オラ、ごくり!
エッレェことばっか考ぇてんだ! よろしくな!
いえ、なんでもないです。
ちょっと思いついてしまったもので
で、ですね、
話を戻しますが、
話をすり替えて、被害者ぶるのがうまい加害者っていますよね~
っていうことを、きっと嫌というほど見てきたであろうヤシロなので
殊更慎重になっているようです
そこに気付くのが、やっぱりレジーナだという
この二人が、心底のほほ~んと暮らせる世界って
いつ来るんでしょうかねぇ~
そして、オペラグラス。
以前ちらっと出てきましたね。
きっともうほとんどの方がお忘れでしょうけれども。
ルシアやマーシャと話していたことがあったんですよ。
ガリレオ式とか、ケプラー式とか、プリズムとか
そーゆーことを
もうお忘れでしょうけども
ここにきて、本格的に製造計画始動です。
これで、レンズ関係が強くなりますね☆
そして、レンズが出来ると次に期待したいのがパンちr――カメラですね!
思い出の風景を一枚の写真に閉じ込める、
思い出製造機、カメラ!
きっと素晴らしい発明になることでしょう!
……ふぅ、ヤバいヤバい。
危うく警察沙汰だ。
(^^; ギリセーフ、ギリセーフ
しかし、レンズ付きフィルムってすごかったですよね。
……おや? ピンとこないですか?
写ル〇です、です☆
まぁ使い捨てカメラって呼ばれ方が一般的でしょうが、
なぜかある時からテレビが「レンズ付きカメラ」って言うようになって、
なんかダメだったんでしょうかね?
「使い捨て」とかがよくないワードだったんでしょうか?
でもまぁ、使い捨てますけどね!
90年代後半から、スマホが普及するまでは、結構みんな持ってましたよねぇ
一発勝負なんですよ、
画像が確認できないから
現像するまでどんなふうに写ってるのか、まったく分からない
これがまたわくわくしましてねぇ
なんか、2000年代は、やたらと早くて安い現像屋さん多くなかったですか?
昔は、クリーニング屋さんに持っていって
……あ、ウチの地元、クリーニング屋さんが現像引き受けてくれてたんですよ、なぜか。
で、そっから現像屋さんにまとめて送って、五日から一週間くらいですかね、待たされまして
で、24枚で3000円弱くらいだったでしょうか?
結構高かったんですよ。
田舎だったからかもしれませんけれども。
それが、2000年ころは「45分で現像、680円!」みたいなのがゴロゴロ出てきましてねぇ
駅前とかにどーんって現像屋さんがあったんですよ
皆様も
もし見かけましたら、
ぜひ活用してみてくださいね~
(*´ω`*)
で、わくわくして写真を見たら、まぁ~あ、写りが悪い(笑)
まず、暗い。
使い捨てカメラのフラッシュは弱い!
そして、夜景は全滅です
綺麗な夜景を使い捨てカメラで撮影して、真っ黒だった人
かなりいるんじゃないでしょうか?
なかなかひどい仕上がりでした。
私が高校生の頃はミルキーペンっていうのが流行ってまして
それで、写真にもりもり落書きするんですよ。
女の先輩とかが、メッチャ落書きしてて……アレも文化だったなぁ。
私の写真も、何枚か盛り盛りに落書きしてもらったことがあるんですけども
二十歳になるころには手元にはなかったですねぇ
……あれ、どこ行ったんだろう?
捨てた?
いえね、
めっちゃ写真撮るのが好きで
めっちゃ写真撮ってたんですよ、当時
で、私が撮るじゃないですか?
そしたら私が写ってないじゃないですか
そしたら、写ってる人に写真あげちゃうんですね
でもまぁ、喜んでもらって、
気付いたら自分の写真なんかほとんど残ってなくて……
Σ(゜Д゜;) カメラマンじゃん!?
Σ(゜Д゜;) え、使い捨てカメラマン!?
でもまぁ、当時の友人たちは盛り上がってくれていましたし
写真も喜んでくれていましたし
その時の笑顔は、私の心のフィルムに今も焼き付いていますし☆
よっ!
名カメラマン!
いや、キャメラマン!
まぁ、その友人たちも、今では誰一人連絡取ってませんけどね☆
……使い捨てられてない?
使い捨てられカメラマン……(;゜Д゜)
い、いや、大丈夫!
思い出はプライスレス、頑張れ自分、現実に負けるな!
で、ケータイで写真撮れるようになって
SDカードパンパンになるまで写真撮って
スマホになって画質が爆発的によくなって、容量いっぱい写真撮って
あいかわらず、自分の写真はほとんど撮らないという……(^^;
自分の顔なんか見たって楽しくないんですよ!?
(# ゜Д゜)
うっかり見惚れるイケメンに生まれたかったさ!
(´;ω;`)ウッ…
そんな私も、最近は写真を撮ることが減ってきまして
一時期、何か撮ってはツイッターにアップしていたんですが
それももう随分とご無沙汰で……
もう写真で形に残すのではなく、心にそっと刻む年齢になったのかぁ……
なんて思ってた矢先!
ホームセンターでレンズ付きフィルムを見かけたんですよ!
使い捨てカメラ!
『写ル〇です』を!
Σ(・ω・ノ)ノ! 復刻!?
まさか、今また女子高生の間で流行っていたりするんでしょうか?
それとも、かつて女子高生だった大人女子が当時を懐かしんで
現像した写真にミルキーペンでもりもり落書きしてるんでしょうか
もし落書きしてるよ~という女性がいらっしゃいましたら
わたしの写真にも落書きしてくださいね☆
三日目くらいに捨てるかと思いますが、三日間くらいは精一杯楽しみます☆
いえ、今ちょっと断捨離をしていまして……(^^;
そんなこんなで、
三十三区が本気を出してレンズ制作に取り掛かったら
いつか四十二区でも使い捨てカメラが大流行するかもしれませんね~
四十二区にコギャル文化が発生する日は、近いかも!?
(≧▽≦)/ちょべりば~
次回もよろしくお願いいたします。
宮地拓海




