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異世界詐欺師のなんちゃって経営術  作者: 宮地拓海
第四幕

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442話 お祭り~行進前のスタンバイ~

 大通りにたどり着いたところでタイムアップとなった俺たちは、もう一度一塊になって街道を西へ向かって歩き出した。


「ジネットたちは『(なんかやる時に)(とりあえず)(集まる場所)』でいいのか?」

「いえ、今回はイメルダさんが木こりギルドの敷地の一部を開放してくださるということで」

「NTAじゃ参加者全員入りきらなかったですよ、前回」


 まぁ、狭いからな、NTA。


「んじゃ、とりあえずそこを目指すか」

「……ルピナスやヤップロックたちも、そこで待っていると言っていた」


 んじゃ、カンパニュラとテレサも同じ場所まで連れて行けばいいか。


 そこまで送り届けたら、陽だまり亭一同は一時解散だな。

 ジネットとマグダとロレッタは光の行進に参加。

 カンパニュラとテレサは、それぞれの両親と一緒に夜の祭りを回ることになっている。


 そして俺は、ルシアの接待だ。


 わぁ、俺のだけ心が躍らない。

 まぁ、あいつもここまでで散々屋台の物飲み食いして、いろいろ遊んでいるだろうから、あとは光の行進を一緒に見てやるくらいで満足するだろう。


「そういえば、東側の連中はどこで着替えるんだ?」


 西側チームは木こりギルドみたいなデカい場所があるけど、大通りの建物ってどこもかしこも狭いよな?


「……東側の待機場所はウクリネスの店」

「あぁ、あそこか」


 ウクリネスの店は店舗こそ狭いが、奥に大きな倉庫と工房がある。

 そこを開放すればそれなりの人数を収容できるか。

 場所も、大通りからこの街道に入るところのすぐそばだし。

 申し分ない立地だ。


 俺の手配書が張り出された掲示板もすぐそばだったよなぁ……けっ。


「だいぶ空いてきましたね」


 カンパニュラが街道を歩きながら辺りを見渡す。

 走り回れるほどガラガラではないにせよ、普通に歩く分には問題ないくらいに道は空いていた。

 店に並ばないのであれば、何のストレスもなく往復できそうなくらいの密度だ。


「……おそらく、原因はあれ」


 マグダが指さす先は、モーマットの畑――に、設けられた観客席。

 と、その周りに転がる無数の大工たち。


「また、無茶したなぁ、ウーマロ」

「エステラさん、人混みのすごさ理解してたですかね?」

「いや、ロレッタが照れまくってる時にすれ違った妹に伝言を頼んどいたんだ」

「なんてタイミングで妹と会話してたですか!? 一切気が付かなかったですよ、あたし!?」


 でも、妹の方はばっちりと気付いてたぞ、お前の照れ加減とか、いろいろ。


 街道が人で塞がれては光の行進が出来ないから、なんとか観客を追いやれる場所が必要だぞと伝えた結果、モーマットの畑に観客席を作るという案を採用したらしい。

 遠くの方でウーマロたちが作業をしている。


「お~い、ウーマロ~!」

「あ、ヤシロさん! マグダたんも!」

「人間卒業おめでと~!」

「いや、やめてないッスよ!? これは、ハビエルが『百人乗っても大丈夫な頑丈な板だ』って言って持ってきたヤツを畑に置いただけッスから!」


 遠くから反論してくるウーマロ。

 とか言って、どうせ『板を敷いただけじゃ大勢が乗った時に不安定になって危険ッス!』とか言って、地面をちょっと固めたり、足場を作ったりしたんだろ、どうせ?

 その板にも、強度を数十倍に高めるような補強がされていると見た!


 つーか、なにあの板?

 巨大にもほどがあるだろ。

 直径何十メートルの巨木を切り倒してきたんだよ、ハビエル。


「もう、レジーナに言って、水を吸うと土がガッチガチに固まる薬もらってきてモーマットの畑に撒いてやろうぜ」

「ダメですよ!? それで三十一区の貴族さんたちは滅茶苦茶苦労してたですよね!?」


 ウィシャートにそんな薬を撒かれて広大な農地をダメにされた三十一区の四大貴族。

 名前はイチロー、ジロー、サブロー、シロー。

 妻は、ユキコ、ツキコ、ハナコ、アマリコ。(共に命名は俺)

 農地が向こう数十年使い物にならない状態だったから、その固まった土を逆に利用してテーマパークを作ることになったんだよな。


 農地を殺す薬。

 絶対に悪用させてはいけない毒薬だ。


「でも、モーマットなら苦労してもいいんじゃないかと、俺は思う!」

「ダメですよ!? また泣いちゃうですよ、モーマットさん!?」


 あのオッサンすぐ泣くからなぁ。


「あ、そろそろお店が終わるみたいですよ」


 街道に並ぶ屋台が慌ただしく店をたたみ始める。

 光の行進の際は、この街道すべてが真っ暗になるため、屋台を出している連中には協力を要請している。

 闇の中を光の行進が進むってのに、屋台が明々と光を灯して商売してたら興ざめだろ?

 逆に、真っ暗闇の中で商売されるのも危険だしな。


 なので、屋台は日没まで。

 日が沈んだら店を閉めて明かりを消す約束になっている。


 まぁ、食い物関係の店はギリッギリまで営業するつもりらしいけどな。

 どいつもこいつも、最後の掻き入れに大声出してやがる。

 威勢のいいこって。


 屋台はたたまずそのまま翌日まで放置される。

 前回は、その放置された屋台が並ぶ街道をジネットと歩いたんだよな。


「あの、ヤーくん。教会の前の屋台がたたまれていますよ?」


 カンパニュラが、撤去作業の進む屋台を見て首を傾げる。

 他は放置なのに、教会の前の屋台は早々に撤去されていく。


「あそこは一番人が集まる場所だからな」


 東西の光の行進が合流する教会前は一番の見所だ。

 ここで見たいってヤツが多くなるだろうと予想して、教会のそばの屋台だけは早々に撤去することになっていた。


「ウーマロも、それが分かってるからこの場所に足場と観客席を作ってるんだろうしな」


 前回は、教会真ん前のベストポジションで見物できたが、今回は難しいかもなぁ。

 なにせ人が多い。

 ルシアが文句を言うかもしれんが、人でごった返す場所に領主を連れて行くのは少々危険だ。


 ……いや、むしろ逆に領主だらけでごった返すことになるかもしれんな。

 なにせベストポジション。

 貴族の大好きなVIP席だからなぁ。


 一般客、弾かれなきゃいいけど。


 この辺も、次回に向けて要改善だな。

 対応が後手に回り過ぎだ、今回は。


 ……まぁ、急遽外周区と『BU』ほとんどの領主が参加することになって大わらわしたせいでもあるけども。

 誰が事前に予想できるよ、こんなに領主が集まるだなんて。

 こんなにも他区から見物客が押し寄せてくるだなんて。


「あの、ヤシロさん」


 比較的空いてきた道を歩いていると、不意にジネットが俺の袖を引っ張った。

 遠慮がちに、そっと。


「今回もまた、見ていて、くれますか?」


 控えめながらも強い思いのこもったおねだり。


「当たり前だろ。ルシアが見るって聞かねぇよ、絶対」

「それじゃ、あたしお兄ちゃん探すですね!」

「いや、きょろきょろはすんな」

「……平気。マグダはくんかくんかで探し出せる」

「荘厳な光の行進中にくんかくんかし続けるつもりかよ、マグダ」


 やめとけって。


「お前らは見られる側なんだから、存分に神々しさを振り撒いてこい」

「任せてです!」

「……迸る、マグダの女神属性」


 神々しさのかけらもねぇな、お前らは。

 それでも、衣装をまとって雰囲気たっぷりにしずしず歩けば、それなりに見えるんだから不思議だよな。


 ……まぁ、前回はジネット以外見つけられなかったから、どんな仕上がりだったかは分からんのだけども。

 きっとそれなりには綺麗だったに違いない。


「ヤシロさんは前回、教会の目の前で見ていてくださいましたよね」

「見つけたのか?」

「えっと……はい。たまたま……目に入りまして」


 そうか。

 観客の方は真っ暗だから見つからないと思ってたが。

 教会の真ん前だったから、俺のいたところも明るかったのかもしれないな。


「出来ればまた教会前で見たいが、今回は難しいだろうな」

「人が多いですからね」

「まぁ、教会から西側の、どっかで見てるよ」

「はい。ちゃんと見ていてくださいね」

「お兄ちゃん、あたしも見ててほしいです!」

「じゃあ見つけやすいように、一人だけスキップしててくれ」

「悪目立ちもいいとこですよ!? 次回から出禁になるですよ、あたし!?」


 絶対見つけられると思うんだけどな。


「……マグダは、目が合ったら合図を送る」


 いや、余計なことはすんな。

 ロレッタじゃないが、悪目立ちしちまうぞ。


「ちなみに、なんて合図するんだ?」

「……『Crazy For You』」

「どこで覚えてくるんだよ、そーゆーの……」

「……ネフェリーが考える、『イケてる女の告白集、第二巻』」

「ネフェリー、そんなもん書き溜めてんのか」


 第二巻まであるんだな。

 ちょっと見てみたいもんだ。


「お兄ちゃん、『Crazy For You』って、『お前、頭は大丈夫か?』って意味ですか?」

「違ぇよ!?」


 それは『Are You Crazy?』だよ。

 なんでマグダが行進の最中に俺にそんな暴言吐くんだよ。


「『あなたに夢中』とか、そんな感じだよ」

「なるほど~、勉強になったです」

「って、なんで翻訳されてねぇんだよ、『強制翻訳魔法』!?」

「……それは、直訳されない方がエモいから」

「精霊神様の粋な計らいなのですね。さすが、全知全能なる精霊神様ですね」


 カンパニュラ、あんま褒めんな。

 すぐ調子に乗るからアイツ。

 で、たぶん「なんかぁ~、そっちの方がオモロイっしょ?」みたいなもっと軽いノリで決めてるから。

 そーゆーヤツなんだよ、精霊神って。


「ネフェリー姉様のその告白集、是非拝見してみたいです」


 それには、俺も同意だ。

 今度頼んでみようぜ。

 カンパニュラの可愛い全開おねだりなら、もしかしたら折れるかもしれないし。


 そしたら、俺もおこぼれで見せてもらお~っと。




 ジネットたちを送って木こりギルドの支部を目指して歩いている途中、教会を過ぎた辺りでハム摩呂と手を繋いで焼きとうもろこしを食べながら歩いているルシアを発見した。


「確保ぉーっ!」

「ぅおう!? 何事だ、カタクチイワシ!?」

「児童誘拐の現行犯で逮捕する!」

「誘拐ではないわ、戯け者! 『好きなお祭りの屋台ご馳走してあげるから一緒にお散歩しよう~』と誘っただけだ!」

「そーゆーのを誘拐っていうんだよ!」


 誘拐犯の手から幼気なハム摩呂を奪い返す。

「あぁ、何をする!? 返せ!」じゃねぇーんだわ。


「ハム摩呂。知らない人について行っちゃダメって、あたしいつも言ってるですよね!」

「待つのだ、義姉様! 知らない人はさすがに酷過ぎではないか?」


 要注意人物として知れ渡ってるだけだよ、お前の名前は。


「冗談、ルシア様の先ほどの発言は」

「ぽぅっ!?」


 突然、背後から声が聞こえて思わず声が出た。

 やめろよ、ギルベルタ。

 ぼちぼち夕闇が迫ってきて、世界がなんとなくおどろおどろしくなる時間帯なんだから。

 知ってるか? 逢魔ヶ刻っていって、この世とあの世が繋がる時間帯なんだぞ。


「ここまで来てしまった、寂しくて、ルシア様は」

「寂しい? エステラたちと一緒だったんだろ?」

「準備に向かった、微笑みの領主様は。大変、参加者への対応が」


 あぁ、行進に参加する女子たちを誘導するために一足早く集合場所に向かったのか。

 じゃ、ナタリアも一緒だな。


「トレーシーは?」

「確保しに行った、最もよく見えるポイントを、行進中の微笑みの領主様の勇姿が」


 よかったよ、一処に留まってくれて。

 並走とかしそうな勢いだもんな、あいつは。


「ノーマも準備に向かっただろうし、デリアは……あぁ、そうかマーシャたちと一緒に港へ行ったんだったか」

「肯定する、私は」


 つまり、遊技場でルシアの相手をしてくれるヤツがいなくなったのか。


「そういや、今日イメルダは?」

「ずっと忙しくしていた、イメルダ先生は。領主の受け入れ、会場の設営、指示を出していた、現場の者たちへ」


 そうか。

 あいつ、今回は裏方に回ってたのか。

 前回はVIP待遇だったのに。えらい落差だな。


「で、一人ぼっちになって寂しくて、ハム摩呂を誘拐しに来たのか」

「たまたま、スウィートハニーエンジェルハム摩呂に出会ったのは」

「肩書きが甘ったる過ぎるですよ、ギルべっちょ!?」

「影響、ルシア様の。求む、理解を、普通のロレッタ」

「あたしの肩書き、なんかいろいろ迷走してそこに落ち着いちゃったですか!? やめてです、あたし普通じゃないですから!」

「……ロレッタ。今日は精霊神のお祭りだから、嘘は……」

「嘘じゃないですよ、マグダっちょ!? あたしの、個人の感想です!」


 じゃあ、『お前がそう思っているならそれでいいよ案件』だな、これは。

 個人の感想にはとやかく言えない。


「とうもろこしを食いに来たら、たまたまハム摩呂に出会ったわけか」

「肯定する、私は」

「ふふん。こういうのを運命と言うのであろうな」

「偶然だろ、ただの」


 小指を見つめても赤い糸なんぞ見えないぞ。


「ハム摩呂。そのとうもろこし、ルシアさんに買ってもらったですか?」

「うんー!」

「ちゃんとお礼言ったですか?」

「後日改めて、文書で伝えるー!」

「今ちゃんと言うですよ!」

「……はむまろ?」

「ぐっは、可愛いっ!」

「ちょっとルシアさん、今きっちり叱って躾けてる最中ですから邪魔しないでです!」


「いつのハム摩呂に対する『はむまろ?』だよ!?」的なツッコミを邪魔されたロレッタが憤っている。

 やっぱ部外者が割り込むと、躾によくないよなぁ。


「ほら、ちゃんとお礼言うですよ」

「うんー! ありがとー、ルシアおねーちゃーん!」

「ごっふぅ!」


 こらルシア、吐血するな、トレーシーとキャラが被る。


「礼など不要だ……と、思っていたが、これは、よいな!」


 満足したか?

 じゃあさっさと成仏しろ。


「ただ、欲を言えば、私は『お姉ちゃん』ではなく呼び捨てにしてほしい」

「欲を言ってんじゃねぇよ」

「本当は『ハニー』と呼んでほしいところをかなり譲歩しての呼び捨て希望だ! 汲み取れ、カタクチイワシ!」

「汲み取れるか!」


 こちとら、変質者の心理を理解する気はさらさらないんでな!


「呼び捨てすると、シスターに叱られるよ?」


 こてんっと、ハム摩呂が小首を傾げる。

 ベルティーナは、ガキどもに「目上の方を呼び捨てにするのはダメですよ」と教えているらしい。

 ガキどもには必要な教育だな。


「よい。ハム摩呂たんには特別に許可をする。というかむしろ是非!」


 うん。

 ルシアは目上の人間じゃないからいいんじゃないかな。

 むしろ、見下げ果てて見下し過ぎるくらいがちょうどいい人間だよ、こいつは。


「それじゃー、呼んでみるー!」

「一回だけですからね、ルシアさん!」

「一回でもよい! さぁ、いざ!」

「カタクチルシアー!」

「待つのだハム摩呂たん!? 私はこの男とは結婚などしておらぬ! 誤解だ!」

「俺と結婚してもカタクチを名乗ることはねぇよ」


 そもそも俺が名乗ってねぇんだ、カタクチイワシ。


「ありがとー、ルシアおねーちゃーん!」

「くぅ……結局お姉ちゃんに戻ってしまったが……カタクチイワシと同類にみなされるよりはかなりマシか。では、結ばれるその日まではお姉ちゃん呼びで我慢するとしよう」

「吐血するくらい喜んどいて、我慢も何もないっつーの」

「黙れ、カタクチイワシ。その口を抉り取るぞ」


 怖ぇことを平然とほざくな。


「お兄ちゃん、唇なくても、平気?」


 平気なわけないだろ、ハム摩呂?

 お前からも、そこのアホにきつく言って聞かせておいてくれ。

 たぶんそれが一番効果あるから。


「ルシアお姉ちゃん」

「ん? なんだろうか、ハム摩呂たん」

「お兄ちゃんの唇、奪っちゃダメー!」

「ハム摩呂たんに何を言わせておるのだ、カタクチイワシ!? そ、そんなことするわけないだろうが! えぇい、おちょぼ口でこっちを見るな!」


 誰がおちょぼ口なんぞしとるか。


「まったく……ちょっと油断すると桃色空間を発生させおって……モモイロイワシめ」


 お前だ、脳内が年中桃色空間なのは。


「あれ? ウチ、なんか今、呼ばれたやろか?」

「ほら見ろ、ルシア。お前が桃色の話とかするから、本家桃色が寄ってきちまったじゃねぇか」

「えらい言われようやないか、自分」

「レジむぅのは、桃色と言うか、なんか、もう……」

「言葉濁したなぁ。小さいお子様の前ではよぅ言われんかったか、領主はん」

「まぁ、ちょうどいい。ジネット、こいつ教会に連れてって浄化しといて」

「誰が、精霊神はんに頼らな落ちきらへんしつこい頑固汚れやねん」

「……ヤシロ。いらない」

「わぁ、辛辣やわぁ、トラの娘はん! 結構仲良ぅなれたと思ぅとったのに」

「光の行進は純白の光を教会に届けるですから、レジーナさんはちょっと遠慮してです」

「よぅ言うたな普通はん!? うっすら桃色に染めたろか、その光!」

「あの、レジーナさん。その浴衣はどうされたんですか?」

「めっちゃマイペースやな店長はん!? 被せることもなく、諌めることもなく!」


 レジーナいじりが加速していくかと思いきや、ジネットが別の話題を振ったのでオチる前に終了となった。

 わぁ、不完全燃焼。


「レジーナ。幼女の前で『ばっさぁー』してきたのか?」

「するかい!」


 いや、だってお前、「前開きの服を着たらついつい」って言ってたし。


「なんかな……ヒツジの服屋はんに捕まってもぅてな……無理やり…………」


 げっそりと、その時の状況を語るレジーナ。

 ウクリネス、なんなんだよ、お前のそのバイタリティ。


 でもまぁ……


「よく似合ってるぞ、レジーナ」

「ぅぁ……っ、あ、アホいいな。似合うかいな、こんな可愛らしいもん……ほんま、冗談ばっかやわ」


 しかめっ面を装いつつ照れるレジーナに、ジネットたちが笑みをこぼす。


「カタクチイワシ。レジむぅも一緒がいい」

「じゃあ、逃げないように手でも繋いどけ」

「え、待って、ウチの意見は?」


 そんなもん、領主様のわがままの前には存在し得ないんだってよ。

 諦めろ。

 どうせ、あとは行進を見学するだけだから。


「はぁ……しゃ~ないなぁ。ほなら、お邪魔させてもらうわ」



 レジーナがため息を吐きつつ了承し、そんなメンバーで光の行進を見学することとなった。




「では、行ってきます」


 ジネットたちを送り届け、ルシアとギルベルタ、そして浴衣姿のレジーナと共にしばらく街道をぶらつくことにした。


「レジーナ、飯は食ったか?」

「まぁ、ぼちぼちやね。なんや、人が仰山おって、落ち着いて食べられへんかったわ」

「それでは、私と一緒にたこ焼きを食べようではないか。ハム摩呂たんの揚げたこ焼きは歴史に名を残すほどの逸品なのだぞ」

「ウチ、領主はんみたいな分厚っついフィルターかかってへんからなぁ。実際、どの程度の美味しさなん、自分?」

「めっちゃ美味いぞ」

「アカン、こっちには親バカフィルターかかっとったわ」


 んなもんかかってるわけないだろう、親じゃねぇんだから。


 何が面白いのかけらけらと笑うレジーナ。

 ウクリネスが選んだのだろうが、今レジーナが着ている薄桃色の浴衣は、緑の髪との相性がよく、実に可憐に見える。


「似合ってるぞ、レジーナ。その元は白色だったはずの浴衣」

「あ、ごめん。言ぅてへんかったけど、これウチから滲み出した桃色エキスで色染まったわけやないねん」

「えっ、違うの!?」

「そのエキス塗りたくったろか、自分?」


 レジーナ汁を塗りつけられるのは勘弁してほしいな。


「購入してきた、私は、揚げたこ焼きを」


 ギルベルタがたこ焼きを二船持って帰ってくる。

 屋台を見れば、ハム摩呂が楽しそうにたこ焼きを焼いていた。

 さっきまで休憩して今はラストスパートってところか。


「もう、店しまるんやね」

「営業してると明るいからな」

「そんなんも邪魔になるくらい真っ暗になるんや」


「ほぇ~」っと、空気の抜けるような音を漏らして納得し、こちらににこっとした笑顔を向ける。


「ウチ、前回見に来てへんさかい、光の行進ってどんなんなんか楽しみやわぁ」


 あぁ、そうか。

 前回の時、レジーナは完全引きこもり、クイーンオブ出不精だったもんな。


「でぶってたもんな」

「出不精をそんなポップな言い回しにした人初めて見たわ。とりあえずあとで一発殴らせてんか?」

「やめるのだ、レジむぅ。……カタクチイワシが喜ぶ」

「誰が喜ぶか」

「叩こうかと問う、私は。全力で殴る、友達のヤシロが喜ぶのならば」


 いや、ギルベルタの全力で殴られたら、俺の体に穴空いちゃうから。

 その握った拳は下におろしといてくれ。


「よし、レジむぅ。たこ焼きを半分こしよう」

「他所の区の領主はんと、同じ皿に入ってるもん半分こするとか……ウチの人生、どこでどうなってしもたんやろ?」

「いや、お前は、もともと王子の幼馴染じゃねぇかよ」


 結構親しい知り合いに王子がいるんだから、領主なんて屁でもないだろう?


「せやかて、ただの変態やさかいなぁ、あの王子は」

「ルシアも似たようなもんだろ」

「おいこら、カタクチイワシ、口を慎め」

「え、ほなら領主はんも、蒸れた靴下とか好きなタイプなん?」

「同種の変態ではないぞ、私は!? ……あぁ、いや、そもそも変態ではないのだ、私は!」

「っていうか……第二王子…………マジか」

「あはは、まぁ、半分冗談や」


 半分は本当なんじゃねぇか。

 今の話の半分って、どこからどこまでだよ?


「提案する、私は。友達のヤシロに、たこ焼きの半分こを」

「お、半分くれるのか?」

「嫌でなければ、友達のヤシロが」


 嫌なもんかよ。


「んじゃ、俺の分、真ん中から割って冷ましといてくれ」

「貴様っ、カタクチイワシ! なんという邪道なことを!?」


 たこ焼きの衣を爪楊枝で割っていると、ルシアから非難の声が飛んできた。


「たこ焼きは、口の中であつあつハフハフするのが礼儀であろうが!」

「んな礼儀はねぇし、熱いと味分かんねぇんだよ」


 どうにもハフハフするのは苦手だ。

 いや、あえてそれを楽しむ時もあるけども。

 今回は冷まして食いたい。


「マネをする、私は、友達のヤシロの」


 ギルベルタも俺のマネをして、爪楊枝でたこ焼きの衣を破り、そのまま口へ放り込んだ。


「はふはふ……食べやすい思う、この食べ方は」

「いや、全然冷めてないだろ、それ!?」


 開けた意味ねぇ!?


「猫舌、友達のヤシロは。冷ましてあげる、私は」


 そう言って、ギルベルタは俺が割ったたこ焼きに「ふぅ~ふぅ~」と息を吹きかける。


「召し上がれ」


 と、皿を差し出してくるギルベルタ。

「あ~ん」こそないが、それはなかなか特別なサービスだな。

 裏表のないギルベルタだから、変に勘ぐるような必要もないだろう。

 純粋な善意だ。


「じゃ、いただこうかな」


 ギルベルタが冷ましてくれたたこ焼きを爪楊枝でひょいっと持ち上げると――「ぱくっ!」っと、ルシアに横から掻っ攫われた。


「って、おい!」

「はふはふ、うむ、格別に美味い!」

「ほほぅ、そんなに俺の『あ~ん』がお気に召したか?」

「だっ、誰がだ!? そもそも『あ~ん』って言ってなかったではないか!」


 俺の手から食ったら、それはもう『あ~ん』だろうが。


「『あぁ~ん、いゃ~ん、うっふぅ~ん』……もぐもぐ。ホンマや、美味しっ!?」

「それで美味く感じるなら、お前はもう手の施しようがねぇよ」


『あ~ん』を『あぁ~ん』にすんじゃねぇよ。


「俺のを一個食ったんだから、お前の一個寄越せ」

「ケチ臭いことを申すな、カタクチイワシ! これは全部私のだ!」

「お前の方がケチくさいわ、この盗賊領主」

「ギルベルタのふーふーは我が区の財産だ!」


 それで大はしゃぎするの、主にお前じゃねぇか。


「ミニマムボインの給仕長はん」

「問う、何かと、私は。聖なる淫猥のレジーナに」

「けったいな肩書きつけられたもんやなぁ!?」

「お互い様だろ」


 なんだミニマムボインって。

 確かに小柄でボインちゃんだけども。


「『ふーふー』でこんだけの価値があるんやさかい、『ぺっ!』にはもっと価値あるんちゃうかなぁ?」

「なにロクでもないこと吹き込んでんの、お前?」


「ぺっ!」ってされたたこ焼きはさすがに食えねぇよ。

 ……ルシアなら食いそうだけど。


「究極は口移――」

「もう黙れ、お前」


 いつものツバ広のトンガリハットを被っていないから、アイアンクローがやりやすいわぁ。

「あぃたたたっ、じょーだん! じょーだんやんかー!」とかいう泣き声が聞こえるが、俺の耳には届かない。


「……ったく」

「カタクチイワシよ。ここに懺悔券がある」

「あぁ、そうだな。じゃあそれを『レジーナの分』って言ってベルティーナに提出しといてくれ」

「しかし、この券が教会へ届けられると、貴様が懺悔を受けるというルールになっている」

「融通利かねぇな、その券!?」


 対象者を指名できるように作っとけよ!

 なに、俺を狙い撃ちしてんだよ!


「あ、店終わってしもぅたな」


 最後のたこ焼きを爪楊枝でも持ち上げて、レジーナが店じまいを始めた屋台を見て呟く。

 飲食系もこれで終わりか。

 今日一日でがっぽり稼いだことだろう。


「じゃあ、そろそろ場所確保に行くか。……つっても、もうすでにいい場所は埋まってるかもしれないけどな」


 特に、領主一同が特等席を陣取っていることだろう。


「教会前のベストポジションに、ウーマロが観客席を作ってたぞ」

「おそらく、多数押し寄せた領主や貴族に対する配慮なのであろうな」

「そこに行けば、ルシアの席も確保されてると思うぞ


「ふむ……」


 腕を組み、しばし黙考するルシア。


「今回はやめておこう」


 ニッと笑って、ルシアは冗談を言う時の顔をする。

 それも、俺を盛大にいじってやろうという時特有の、あの小憎らしい顔だ。


「領主が集まる場所へ貴様を連れていけば、盗られかねんからな」


 な?

 だが、ルシアはエステラと違ってこういうお遊びには慣れているので、仮にここで俺が「俺を独占したいだなんて、光栄だな」なんてことを言っても、大人の余裕で軽ぅ~く流してくるわけだ。

 試しに言ってみるか。


「俺を独占したいだなんて、光栄だな」

「ふ、ふなっ!? ち、違うわ、バカが! 今日は私を歓待せよと先約しておったから、それで、あの、横から持っていかれるのは癪という感じのアレだ、ばーか!」


 めっちゃ照れんのかよ!?

 大人の余裕どこ行った!?

 そう言えばこう返されるって分かるだろう!?


「ったく、なんで来るヤツ来るヤツポンコツになるんだ、四十二区は」

「ホンマ、恐ろしい街やねぇ」


 照れて、残っていたたこ焼きを一気に口へ放り込んで「熱っふい!?」とはふはふ身悶えているルシアを尻目に、俺は乾いた苦笑が止められなかった。




「この辺りでよいであろう」


 屋台と屋台の間。

 わずかに出来た空間に体を滑り込ませ、ルシアはそこを陣取る。


「もうちょっと前に出ないと見えないかもしれないぞ」

「よい。全身隈無く観察するわけではないからな。それに、前の方は小さい子らに譲ってやるべきであろう、大人のマナーとしてはな」


 そんなルシアの言葉に、最前列を陣取っていた大人たちがそそくさとスペースを空けた。

 空いたスペースには、ちんまいガキどもがなだれ込んできて、ルシアに向かって「ありがとー!」と元気よく礼を述べる。


 ガキにくっついている保護者連中も、後ろの者たちに配慮して腰を落として視界の確保に協力している。

 この一角がそういうことをすると、向かいと左右にその波が広がっていって、最前列の者は座って、後方の者たちも周りと譲り合って見物する姿勢が整っていく。


「すげぇな、領主の一声」

「それを汲んでくれる心根の優しい者が多いのであろう、この街には」


 ルシアに褒められ、真っ先に前を譲った大人たちがにこにこしている。


「そなたらの行動力の賜物だ。感謝する。その位置で見づらくはないか?」

「いっ、いえいえ、とんでもない!」

「バッチリ見えるっす! 俺ら、デカいんで!」

「前の人も座ってくれてるし、ばっちり丸見えです!」


「褒められた~、えへへ~」なんて思っているところへ、ルシアから直接の声掛けをされて盛大にテンパるデッカい男たち。

 よかったなぁ。

 外から見てると、美人で聡明な女性貴族だもんな。声を掛けられるなんて誉れだろう。

 ……外から見てる分にはな。


「っていうか、俺もう行進とか見えなくてもいい」

「うん。俺もルシア様見てる」

「見てると癒やされるぅ~」


 こら。

 俺の後ろで発症すんな。


「ふふっ。そう言わずにしっかりと堪能するといい。光の行進は美しいと聞く。私の顔など見ていてもつまらぬぞ」

「うわ、ホントだ。つまんねっ」

「やかましいぞ、カタクチイワシ! 貴様に言われたくはないわ!」

「そうか、じゃあ訂正しよう。ルシア、お前の顔、面白いぜ☆」

「ケンカを売っておるのか、貴様は!?」


 眉を吊り上げて、ルシアが俺の脇腹をぐりぐりしてくる。

 やめい!

 くすぐったいよりもこちょこちょ感が増し増しで、こちょぐったいんだよ!

 俺はくすぐったいのが苦手なの! 絶対言わないけど!


「分かった分かった! いつもとは雰囲気が違うアップにまとめた髪も超似合ってて綺麗だからやめろ! くすぐったい!」

「ふなっ!? きゅ、急に褒めるな! こっちの方がくすぐったいわ!」

「え、でも、今日も美人ですよ?」

「何キャラだ、それは!? 普段そんなこと言わないであろうが、貴様は!」

「うわっ、照れてる顔が眩し過ぎて、光の行進始まったのかと思った」

「やめろと言っておる!」


 巾着を大きく振り上げて俺の顔に叩き込んでくる。


 もっふ……ぅ。


 お前、巾着に何入れてんの?

 すっげぇ、もっふもふじゃん。

 なに買った?


「……今日は、いつものドレスとは違う服なのだ。だから、なんというか……心の防御力がいつもより低いのだ! ……不用意な発言は慎め、フトドキイワシ」


 あぁ、そっか。

 今日は浴衣だから、なんかいつもよりも開放的でありつつ緊張していたりもするわけか。

 どうりで日中あんまり絡んでこなかったわけだ。

 反撃を恐れていたんだな。


 そういや、さっきも盛大にテンパってたっけなぁ。

 ……ふふふ、ルシアに逆襲する大チャンス☆


「ルシア、浴衣の下って――」

「懺悔券であれば、三十枚綴りでもらってある」


 ルシアになんて凶器を持たせてるんだ!?

 致死量超えてるぞ、もはやそれ!


「なぁ、自分らぁ」


 ルシアの手の中にある懺悔券を巡る無言の牽制を互いにし合っていると、ルシアとは反対隣からレジーナの声が聞こえてきた。


「あんまイチャイチャしぃなや。後ろのメンズはんらぁ、『うわぁ、なにこれ、和むわぁ』みたいな顔してはんで?」


 言われて、見てみれば……まぁ~ぁ緩んだ頬筋。

 圧力鍋で二~三時間煮込まれたのか、お前らの顔?

 ゆるっゆるだな、おい。

 お箸で突っついたら「ほろっ」と崩れそうじゃねぇか。


「こちらを見るなと言っておる! 街道っ、街道を眺めておれ、そなたらは!」


 によによメンズに厳重注意をしつつ、もっふもふの巾着で俺の腹をぼすぼす乱打するルシア。


 やめれ。


「まったく! ……貴様がしょうもないことを言うから……」


 なんだよ。

「つまんない」と「面白い」がお気に召さないようだったから綺麗だって褒めてやっただけだろうに。


「レジーナ。お前はちゃんとモテて、こういうこじらせレディにはなるなよ」

「自分、領主はん相手にえらい失礼なこと言ぅなぁ」

「あ、ごっめ~ん。お前にモテてとか無理難題過ぎたか~☆」

「こっちもごめん、訂正するわ。自分が失礼なんは全方に向こぅてやったな」


「こちょぐるで?」とか、恐ろしいことを呟くな。

 お前のくすぐり、しつこそうで怖いわ。


「ウチ、これでも地元ではモテとったんやで? 幼馴染のメンズ四人には、いっつも汚物を見られるような目ぇで見られとったしなぁ~」

「お前の祖国のモテ基準ぶっ飛び過ぎてない?」


 それをモテてると認識すんじゃねぇよ。


「レジむぅの幼馴染はみんな男なのか?」

「薬剤師関連の人ばっかりやったさかいなぁ。女の子は、あんな薬臭い現場は好きやないんやろなぁ」


 レジーナには、女子の幼馴染がいないらしい。


「その四人って、蒸れ靴下王子を含めてか?」

「他国の第二王子捕まえてよぅ言ぅな、自分」


 お前だよ、言い出したのは。


「せや。蒸れ王子ともよぅ遊んでもろとったわ」

「お前もイジってんじゃねぇかよ、靴乃下くつのした蒸レ太郎(むれたろう)

「そのうちまとめて罰せられるぞ、そなたら」


 えぇ~、レジーナとまとめてはヤだなぁ。

 隣り合わせの牢屋に入れられでもしたら、ずっとくだらない下ネタ聞かされ続けるじゃん。


「あとの三人はハエ・トリ・グサだっけ?」

「ワイル・ドスト・ロベリーや!」


 あぁ、そっちかぁ。

 どっちかだな~とは思ってたんだけど。

 惜しいっ!


「その者たちはまともなのであろうな?」

「おい、なに言ってんだよ、ルシア。……レジーナの幼馴染だぞ?」

「そうか……愚問か」

「失敬やな、そこ二人」

「けど、お前に会いに来た騎士はメンズラブだったじゃねぇか」


 まぁ、それが悪いとは言わないけれども!

 愛にボーダーラインなんてないからね!

 以上、フォロー終わり!


「他の二人はどんなヤツだったんだ?」


 たしか、植物を研究してるヤツと、薬剤で化学反応を研究してゴムを生み出したヤツだったっけ?


「ドストはストライクゾーンが四~七歳で、ロベリーは六十歳超えにしかときめかへん極普通のメンズらぁやで」

「ドニスより外角低め狙ってるヤツがいるとはな!?」


 愛のボーダーライン、フォローしきれないかも!?


「なんかな、真偽は定かではないんやけどな……三人とも、ウチが微かにでもストライクゾーンに入らへんように『ぐりんっ!』って角度変えたっぽいねん」

「お前、罪深い女だなぁ!?」

「せやろ? 魔性の女と呼んでもえぇで?」


 こいつの幼馴染たちは、レジーナを中心に育ってきたんだな。

 レジーナを中心に置いて、全力で外へ視線を逸らして。


 目を見たら取り憑かれでもするのか、こいつは。


「まぁ、第二王子とは身分が違うさかい、幼馴染なんて軽々しく口には出来へんけどな」


 と、一歩引く。

 けどたぶん、向こうはお前のこと幼馴染だと思ってるんじゃないか。

 インパクト強いもん、お前。

 ……お前の幼馴染だったせいで、蒸れ靴下フェチなんて病を発症したんだろうし。

 まったく、被害が甚大だな、こいつの周りは。



「あのぉ……」


 レジーナのお祓いに効果があるのは盛り塩か御札かと考え始めた時、レジーナに声をかける女性が現れた。

 浴衣ではないが、かなり整った身なりをしている。

 情報紙に載るような感じでも、イメルダが発信するような感じでもないタイプの着こなしだが、かなり洗練されているように見える。


「ごめんなさい。ちょっと話が聞こえてしまって」

「いやん、ウチの幼馴染連中が思春期の頃、女子のパンツが見た過ぎて洗濯屋に弟子入り志願した話とか、聞かれてもぅたやろか?」

「それは俺も初耳だよ」


 バラしてやるなよ、そんな黒歴史を。

 だから怖がられるんだぞ、幼馴染に。


「えっと……」


 ほら、声をかけてきた女性も戸惑ってる。

 きっと、「声なんかかけなきゃよかった」と後悔していることだろう。


「お嬢さんは、薬師ギルドの方、なんですか?」


 あぁ、薬剤師ってあたりを聞いたのか。


「いんにゃ。ウチはそれとは別っこの方や」

「ということは……薬剤師ギルド?」

「せや。まぁ、ギルドいぅても、ウチ一人しかおらへん、活動してんのかしてへんのかよぅ分からんもんやけどな」


 からからと笑うレジーナを、女性はじっと見つめる。


 ……なんだ?


「薬剤師に何か用なのか?」

「あ、いえ。……ちょっと食べ過ぎちゃって。胃がスッキリするような薬でもあればいただこうかなって」

「かまへんで」


 女性が「ないですよね、さすがに」と言いかけたのを遮るように、懐から一包の粉薬を取り出す。


「今日はシスターはんだけやのぅて、食べ過ぎる人が仰山出そうやったさかいな、いっぱい持ってきたんや」


 それでこいつはこの辺をうろついていたのか。

 具合の悪そうなヤツがいたら、助けてやれるように。


 すっかりお気に入りになったみたいだな、四十二区が。

 積極的にお節介を焼いてやろうと思えるくらいに。


「あの、おいくらですか?」

「ん? せやなぁ……5Rbでえぇわ」


 50円。

 安っすいな、相変わらず。

 こいつ、十包入りで50Rbとかで売ってるからな。

 ドラッグストアか、お前は。


「……お安いんですね」


 薬をもらった女性が、軽く引いている。

 他所の区じゃ、薬がこんな値段で買えるなんて、信じられないだろうからな。


「えっと……外国から、こられたんですか? あの、さっきのお話で、そうなのかなって」

「まぁ、せやね。せやから、この街の薬とはちょっと違うけど、効果は確かやさかい、安心して服用したってや」

「そう、ですか……」


 呟いた女性は、薬の包をじっと見つめて――ちらりとルシアを見た。



 その視線の動きに、違和感を覚えた。



「ありがとうございます」


 女性がニッコリを微笑んでそう言った時、遠くから「ドォーーン!」と、腹に響くような太鼓の音が聞こえてきた。







あとがき




スピリチュアル・宮地です☆


いえ、「占いとか、所詮占いだし☆」とか言いながら

悪い結果だとめっちゃ気にしてしまうタイプでして……(^^;


あと、不気味な夢とか気になる夢を見るとついつい夢診断のサイトを……


所詮占いなんですけどね! 占いなんて!


……はい、ちょっと悪い結果が出まして(・_・;



旅行に行く夢を見たんです。

予約していた宿に着くと、そこはコンビニ

「え?」とか思ってるとコンビニ店員さんが出てきて「あ、宿泊っすね。こっちっす」ってバックヤードに案内されて、

コンクリート打ちっぱなしの倉庫みたいなところに畳が四枚置いてあって

そこに泊まれと

めっちゃ小汚い場所なんですけど、

それ以上に驚きなのが、野生の子亀がうじゃうじゃいるんです

「亀じゃん!?」って驚いていると、亀の中に一匹ワニが混ざってるんです

「ワニじゃん!?」って驚いていると、コンビニ店員が不機嫌そうなお婆さんを連れて戻って来て

「相部屋になりますんで」って

いや、無理よ!? 単体でもキツイ部屋なのに!

この倉庫の中の亀だらけの四畳半で見知らぬお婆さんと相部屋?

無理無理!


っていう夢なんですが

朝起きてまず「なんで!?」って思いましてね(^^;


夢は、脳の情報整理とかいいますが……何がインプットされたんだ、私の脳?


で、夢診断すると、

『汚い部屋』『亀とワニ』『不機嫌なお婆さん』

これら全部が、体調不良のサインだそうで

特に不機嫌なお婆さんは要注意だと。


で、びっくりなのが亀!

亀が夢に出てくるのはいいことが起こる前兆で、金運から恋愛運、健康運や仕事運があがり、時には子宝にも恵まれるといいこと尽くめな夢になるはずなんですが

唯一、ワニと一緒に出てきた時だけ、体調を崩す前兆、邪魔者が現れて足を引っ張る予兆になるそうなんです。


何故だ、ワニ!?Σ(゜Д゜;)



というか、この夢を見る数日前に

まさに邪魔者に物凄く足を引っ張られて

ストレスからまんまと体調を崩してしまったんですが……



遅くない!?Σ(゜Д゜;)

それ、予兆じゃなくて事後報告じゃない!?Σ(゜Д゜;)



もう邪魔者に出会いませんように……


皆様も、亀とワニの夢にはお気をつけください。


実際夢に見ると違和感物凄いですけども

亀とワニが一緒にいる光景、まずなかなか見ないですからね

もしかしたら、夢の中でこの話を思い出して


「やっば! マジで亀とワニが一緒にいるじゃん!(笑)」


って、ちょっとテンション上がるかもしれませんが

起きた後、手洗いうがい、あとお白湯を飲むことをお勧めします。

布団、肩までかけて寝てくださいね!

風邪ひきますから!



まぁ、占いなんて所詮占いなんですけどね!


……めっちゃ気になる。

とりあえず、健康管理に気を付けましょう!



ちなみに、

大きなおっぱいを見る夢は幸運が舞い込んでくる予兆らしいですよ☆


お金や健康、幸運が舞い込んでくるそうです


みんなでみよう、おっぱいドリーム!

\(≧▽≦)/


あ、これ、2025年の標語にしませんか?

しまったなぁ、年始に思いつきたかった。


ちなみに、

ちっぱいを見る夢は――


……お金と健康が逃げていくそうです( ̄_ ̄;

ちっぱい……



他人のおっぱいに顔を埋める夢は

ラブ運大上昇!(≧▽≦)/


……その夢、女性も見るんでしょうか?

いや、女性の方がラブ運とか気にしそうだなって


脳は記憶の整理作業――


女性の皆さん!

これから積極的に他人のおっぱいに顔を埋めていきましょう!

夢に見るほど!

そうしたら、ラブ運大上昇間違いなしですよー!

(」≧▽≦)」


まぁ、変な噂が広がってラブ運急降下する可能性も……



そして、おっぱいどころか

女性のフルヌード、素っ裸、すっぽんぽんの夢を見た時は


欲求不満だそうです☆


そりゃそーだー!

\( ̄▽ ̄)/



占いなんて所詮占いですよ。

当たるも八卦、当たらぬも八卦……


はっけ、とは?

ホッケなら知ってるんですけどね

サバとかに比べて、すっごい張り付きませんか? 金網とかに。

脂の量なんでしょうかね?

なかなか綺麗に焼けないんです、毎回


運なんでしょうかねぇ、アレも



焼けるもホッケ、張り付くもホッケ

( ̄▽ ̄)



えっと、本編なんでしたっけ?

あぁ、そうそう

怪しい女性が登場して……こいつは、一体?

みたいな終わり方でしたっけね


あ、もう皆様すっかりと本編忘れてる感じですか?

おっぱいの記憶しか残ってない?

まぁ、いつものことです☆


後味はおっぱい


いいじゃないですか(*´▽`*)

きっと夜もぐっすり眠れますよ

悪い後味が残った状態って眠りにくいものですからね~


おっぱいの後味で眠ると

きっとおっぱいの夢をみて金運とかよくなりますよ!

(≧▽≦)



……ちぃっ! ちっぱい!(>△<;)


いや、でも、なぜだろう……

目覚めた時のこの幸福感( ̄▽ ̄)


大きかろうと小さかろうと

おっぱいの夢はいい夢、ということですね☆



では、夜読む派の皆様、素敵な夢を

朝読む派の皆様、素敵な一日を

日中読む派の皆様、うっかり「おっぱい!」って声に出ないようお気をつけて☆



次回もよろしくお願いいたします!

宮地拓海

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― 新着の感想 ―
渋いところからTMネタ持ってくるじゃないの‥‥
どうも。カタクチイワシから「クチ」を抉り取ったら、カタイワシになるんだろうなーと、しょーもないことを思い付きました。 おっぱいは好きです。ちっぱいも好きです。 でも四十一区領主様の胸筋が一番好きです…
更新ありがとうございます♪ハムマロさんお久しぶりです。相変わらず愛らしいです!たこ焼きからカンナがけまで器用にこなすハムマロさん。でも、まだまだ子供なんですよねぇ。知らない人wに着いて行っちゃダメです…
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