440話 お祭り~新たな遊び場~
「ところで、ノーマ。なんか俺を探してたのか?」
この当て物屋に入ってきた時、ノーマは「ここにいたんかぃね」と言った。
このタイミングだから、俺かエステラに手押しポンプ関連で伝達事項でもあるのではないかと思ったのだが。
「いや、用ってほどのことでもないんだけどさ、一通り見て回っちまったし、光の行進までは店長さんたちと祭りを回ってみるのもいいかぃね~って思ったんさよ」
あぁ、俺に用じゃなかったのね。
恥っず。
「……自意識過剰で、ごめん」
「いや、謝るほどのことでもないだろうに……なんでちょっとヘコんでんさね?」
いや、ここまで結構ノーマとガッツリタッグを組んで仕事してたから、「あ、俺に用事かな?」って思っちまっただけで……あぁ、そっかー、ここまでガッツリタッグを組んでやってきたから飽きられたのかー。
「……しょんぼり」
「ヤ、ヤシロにも会いたかったさよ、もちろん! ほら、一緒に祭りを回るさね」
こうしてヘコんでみせると、ちゃんと構ってくれるノーマは、本当に面倒見がいいと思う。
「ノーマたんをとるな、カタクチイワシ」
「ノーマも、ヤシロのいつもの冗談なんだから、真に受けないようにね」
「けどさぁ、エステラ。あんな顔されたらさぁ……」
「分かります! 可愛いですよね!」
と、全力で共感するジネット。
あれ、ノーマってジネットに似てきた?
数日陽だまり亭に滞在した影響出ちゃってる?
これは、もしや……イケるのでは?
「ぽぃんぽぃんカーニバル……しょぼん」
「エステラ、この懺悔券をシスターに渡しといておくれな」
「では、わたしのもお願いします。もぅ、ヤシロさんは。懺悔してください」
おい、ジネット!
お前、懺悔券を使った上に普通に懺悔強要してくるなよ!
二重懺悔だぞ、それ!
二重懺悔ってなんだ!?
ねぇわ、そんな末恐ろしいシステム!
「おぉっ! やったぁ!」
こっちでノーマたちと話している間に、デリアたちはメンコくじを引いたらしい。
しかも、アタリを引いたみたいだな、デリア。
デリアがあそこまで喜ぶアタリとは一体……カンパニュラか、ルピナスか……オメロってことはないだろうし……
「見てくれ、ヤシロ! アタリが出たんだ!」
そう言って、デリアが見せてきたメンコの絵柄は――
「ポップコーン!」
「そんなんまであるのかよ!?」
商品じゃん!
え、なに?
四十二区に関連する商品とかも混ざってるわけ?
でもまぁ、ナポリタンとかオムライスとかのメンコがあったら、ちょっと揃えてみたい気はするけども。
「やったぁ、これでいつでもポップコーンと一緒だぁ」
一緒でも、食えないからな?
その辺、ちゃんと理解させといてくれよ、ルピナス。
今からの再教育とか、結構大変だと思うけど、愛娘みたいなもんだろう、もはや?
頑張れ、ルピナス。
「ゎあっ!」
デリアに続いてくじを引いたミリィが、聞くだけで嬉しそうだと分かる、華やかな声を上げる。
こっちもアタリを引いたらしい。
「てんとうむしさん、ほら! よこちぃ!」
おぉ~、そういやよこちぃとしたちぃは入れるって言ってたな。
へぇ~、なかなか可愛く出来てるじゃないか。
「ベッコ、可愛いぞ」
「ヤシロ、言わんとすることは分かるけど、よこちぃの可愛さが減る気がするから、そーゆー発言、やめて」
「辛辣でござるな、エステラ氏!?」
エステラもよこちぃの大ファンだからな。
ちょっとでも味噌がつくのは看過できないようだ。
「味噌ベッコ」
「それは、悪口なのでござろうか!?」
どっちかって言うと、『ベッコ』の方が悪口に該当するかな。
「この味噌やろう!」より「このベッコやろう!」って言われる方が腹立つし。
「よぉ~し、じゃあ私は、したちぃを狙っちゃうぞ~☆」
「マーシャがしたちぃのメンコを欲しがるとはなぁ」
「う~うん☆ よこちぃとしたちぃはセットで欲しいでしょ? だから、したちぃを当ててミリィちゃんにプレゼントしてあげるの☆」
「ぇっ、まーしゃさん、いいの!? 嬉しいっ」
ほほぅ。
デリアを取り合うサイバル認定しているかと思いきや、結構気に入ってるみたいだな、ミリィのことも。
「その代わり~、私がしたちぃ当てたら、ミリィちゃんは今日一日水着で私と同じ水槽に入ってお祭りに参加ね☆」
「みりぃ、そんなのムリだょ!?」
「したちぃ当たれ! したちぃ当たれ! したちぃ当たれ!」
「も、もぅ、てんとうむしさんっ! 懺悔券、使っちゃうょ!?」
ミリィが真っ赤な顔で抗議してくるから、俺の今の言動は大正解だったと証明された。
ほら、ジネットまでもが笑顔になってる。
「よぉ~し、水着ミリィちゃん、来~いっ☆」
「違ぅよ、まーしゃさん!? 当てるのはしたちぃ!」
そうしてマーシャが引き当てたのは――
「……レジーナだ」
なんだろう。
この流れじゃなかったらそこそこ喜ばれただろうに、落胆が酷いな。
ミリィの水着パレードがかかっていたからなぁ、こればっかりはしょうがない。
しょうがない。
ちょこっと励ましてやるか。
「まぁ、アレだな、マーシャ。したちぃではなかったが、はみちちぃだと思えば幾分気も紛れるだろう。な、エステラ?」
「気も紛れないし、はみ出してもないよ」
「はみ出してない……? 何やってんだよ、ベッコ!?」
「謂れなき叱責を受けてるでござるな、拙者!?」
「ごめ~ん、ミリィちゃん。はみちちぃだけど、いる?」
「ぁの、ね、まーしゃさん。そーゆーとこは、てんとうむしさんをマネしちゃ、ダメ、だょ?」
わぁ、ミリィも辛辣☆
「それにこれ、すごいレアなやつ、だょ?」
ミリィがマーシャの持つメンコを手で覆う。
メンコの表面が暗くなるとぼんやりとベティ・メイプルベアの姿が浮かび上がった。
「あぁ、これって、あの時ヤシロ君が作った光るメンコ?」
港にカラーサンドアートの製造&直売工場を作ろうという話になった時――
「エステラが『ボクのメンコを配って大工に工費をまけさせよう』ってメンコの絵柄を描いていた時に作ったヤツだな」
「捏造だよ、それは!? ボクはそんなこと言ってないからね!」
予算削減の方策として、エステラの姿絵メンコを作って配ったのは事実じゃねぇか。
ウーマロが参加してないから時間はかかっているが、もうぼちぼち完成しそうなんだろ?
「……ヤシロ。ウーマロも設計には参加している」
と、俺の顔を見て補足を寄越してくるマグダ。
……お前には何が見えてるんだ?
俺の顔が「ウーマロが参加してないから完成まで時間かかるんだよな~」って表情に見えたって?
どんな表情だ、それは。
「で、そのウーマロは、今どこにいるんだ?」
「あぁ、あのキツネ大工なら――」
と、ノーマが当て物屋のプレハブの外に向かってアゴを「くいっ」と動かす。
「――この外に新しい小屋を作ってるさね」
「何やってんの、ウーマロ!?」
祭り開催中に新しい小屋!?
また何か新しい店を追加するのかよ!
「エステラ、聞いてるか?」
「うん、まぁ……ついさっきナタリア経由で確認したけど……あはは、まぁ害があるものじゃないし、本人たっての希望だから、スペースがあるならいいよって許可は出しといたよ」
エステラのあの盛大な引きつりフェイス……
ウーマロ、一体何を建てている?
「まぁ、原因を作ったのはノーマさんなんですけどね……」
「ちょっ!? ルアンナ、それは誤解さね! あのキツネ大工とゼルマルの爺さんがムキになるから、アタシもしょうがなく……」
またウーマロと衝突したのか。
でも、なんでそこにゼルマルが?
「じゃあ、とりあえず、見に行ってみるか」
「そうだね。本当にすぐそこだから、行ってみようか」
内容を知っているらしいエステラは肩をすくめ、先頭を切って当て物屋を出て行った。
で、外に出てビックリ。
そこに建っていたのは、ホント、笑えるくらい豪華なプレハブ建築だった。
……こんなもん、もうプレハブじゃねぇよ。
そのプレハブは、三十五区に建設されたメンココロッセオを彷彿とさせる荘厳さを放ってそこに建っていた。
念のために言っておくぞ。
俺たちが向かいの当て物屋に入った時、ここにはこんな建物はなかった!
「あ、ヤシロさん、やっぱりいたんッスね。マグダたんの気配がしたからきっとヤシロさんもいるッスよね、って思ったッス」
「さらっと、人間離れしてんじゃねぇよ」
感じ取れねぇよ、人の気配なんて。
そう、常識人ならね!
「またとんでもないモノを、あり得ない短時間で建てやがったな」
「やはは。これは、メンココロッセオの改良はどうすればいいかって試しに作ってたヤツで、ほぼ完成していたものを一回畳んで、こっちに持ってきて、組み直しただけなんッスよ」
一回組み上がったものを?
パタンって畳んで?
こっち持ってきて?
パコって組み上げて?
ぽーんって置いてみただけって?
段ボールか!?
家って、そんな段ボールを組み立てるみたいに簡単に建たないものだからね!?
忘れてるかもしれないけども!
「地盤は手つかずッスから、本当に仮設なんッスよ。屋根と壁のある屋台程度に思っておいてほしいッス。明日には取り壊すッスから」
いやぁ、見るからにどっしりとしていて、数十年住み続けても一切問題がない建造物に見えるけどな。
「で、これはなんなんだよ? まさか、当て物屋で当たったメンコを使って、ここでバトルでもさせようってのか?」
「そのスペースも一応作ってあるんッスけど、それはおまけみたいなものッスね」
この辺って、人混みに疲れたヤツらが一息つける空き地スペースだったろうに。
そこにプレハブ建てちまってよかったのかよ。
息つく暇もねぇな、四十二区。
「表でごちゃごちゃやかましいぞ、陽だまりの穀潰し」
出来たばかりの建造物から、しわがれた声とともにゼルマルが姿を現した。
「なぁ、ウーマロ。この建物、過去に悲惨な事件とか事故が……」
「事故物件じゃないッスよ!?」
「ワシも亡霊じゃないわ、バカモンが!」
なんだ違うのかよ、紛らわしい。
とはいえ、遅いか早いかの違いしかないだろうなぁ。ゼルマルって、絶対未練たらたらでぽっくりいくし。
「早く成仏しろよ、ゼルマル」
「まだ生きとる! おぬしより長生きしてやるわ!」
ジネット~、ジジイが大嘘吐いてるぞ~、笑ってないで叱ってやれよ。
アルヴィスタンは嘘を嫌うんだろ~?
「そもそも、そこのキツネ女がゼルマル先輩に食って掛かったりするからッスね……ゼルマル先輩、頑固者なの知ってるくせに……」
「誰が頑固者じゃ、ウーマロ!」
「わっ、聞こえたッスか!?」
「『耄碌して耳も遠くなってると思ってたッス』」
「いや、言ってないッスよ、そこまでは!?」
そうか、心に留めたのか。
大人だな、ウーマロは。
「つまり、原因はノーマか?」
「違うんさよ、ヤシロ。聞いとくれな」
「ノーマさんが、木工細工師さんたちが木の歯車で動くおもちゃを売っていると聞いて、『歯車といえば金物ギルドの領分さね! ビックリハウスの時だって、アタシがファスナーの試作・制作に忙しくていたのをいいことに横からかっさらってったってのにさぁ、歯車技師を名乗るならアタシを納得させてご覧な!』と」
「ルアンナ、誇張するんじゃないさよ」
「いや、誇張0%ッスよ」
「むしろ、口調が柔らかくて可愛げがあったくらいじゃい」
ゼルマルまでもが酸っぱい顔をしている。
ノーマ、相当荒ぶってたな。
……つーか、やっぱビックリハウスを木工細工師に頼んだの、根に持ってたのか。
「それで、歯車なら金物ギルドでも同等以上のものが作れるとか、そのキツネ女が先輩を煽るから、先輩も意地になって、ヤシロさんに発注されていたビリヤードっていうヤツを持ち出してきて、ここまで精巧な球体が作れるのかって反論し始めて、『ヤシロさんからの発注』ってとこに過剰反応したそのキツネ女が、『こっちにはダーツがあるさね!』とか、ワケ分かんない対抗心を燃え滾らせて、『どっちが面白いか、勝負だ!』ってことで、この遊技場が建ったんッス」
「な~にを冷静に第三者視点でモノ言ってんさね! お前だってシャフトがどーとかこーとか薀蓄垂れ流して悦に浸ってたじゃないかさ!」
「ビリヤードの台にも注文をつけてきおったのぉ、まだまだ尻の青い若造の分際で」
「いやいや、でもあの台は脚をもっと改良しないと、プレイする時の安定性がッスね……」
「しゃらくさいわ、小僧が!」
まぁ、要するにアレだな。
「お前ら、限度を知れよ」
「ヤシロさんには言われたくないッス」
「ヤシロには言われたくないさね」
「どの口が言うとるんじゃ、陽だまりの穀潰しが」
うっわ、感じ悪ぅ~!
「まぁ、とにかく入ってみようよ。ボクは中を確認する義務があるからね。もう出来ているんだよね、ウーマロ?」
「え、や、はは、はいッス。今内装が終わったところッス」
くるっと背を向け、ウーマロがエステラの問いに答える。
完治しねぇなぁ、全然。
「出来たとこっつっても、もう午後だし、この後光の行進あるし、すぐ取り壊しだな」
「まぁ、内容が面白ければ、しばらくここに設置しておいてもいいんじゃないかな? 数日は持つよね?」
「もし残すなら、あとでもう一回耐久性チェックをして、必要なところは改修しておくッス……と、エステラさんに」
「うん、大丈夫、聞こえたから」
いつもの光景。
見慣れたなぁ、この背中合わせのミーティング。
「んじゃ、ちょっと中を見て行くか。お祭り感ゼロの建物だけど」
「ふふ。でも、とっても楽しそうですよ」
精霊神に感謝を捧げる光の祭りから大きく逸脱した建物に対しても、ジネットは好意的な感情を向けている。
「精霊神様のためのお祭りの最中に違うことを始めるなんて不謹慎です!」とか、絶対言わないもんな。
そもそも精霊教会自体が「祈りたければ祈り、信じたければ信じなさい」みたいなゆるさだもんな。そりゃそうなるか。
んじゃまって感じて、俺たちは超絶突貫工事の、築数分のプレハブ遊技場へと足を踏み入れた。
「うわぁ……」
思わず呆れた。
内装、すっげ。
三十五区劇場を経験したからか、どこぞの豪華客船のロビーかと見紛うような豪華さだ。
これも、プレハブなんだぜ?
笑うだろ?
「あの辺の彫刻は木工細工師さんたちと、ウチのヤンボルドが張り切ってたんッスよ」
「拙者も参加したかったでござるなぁ」
「これはオイラたちの暴走で建ったものッスから。ベッコにはまた、ヤシロさん案件でしっかりと働いてもらうッスよ」
なんだ?
ベッコはウーマロの中でその他の木工細工師より格上なのか?
まぁ、仕上がりが雲泥だから。
あと、費用もとってもお安く抑えられるし☆
「よっ! ナイス安物!」
「それは褒め言葉ではござらぬよ、ヤシロ氏!?」
えぇ~……渾身の褒め言葉だったのにぃ。
「これは、壮観だね」
壁一面にずらりと並ぶダーツの的を眺め、エステラが口元を緩める。
遊んでみたくなってんな?
ダーツ好きだもんな、お前。
……ただし、ナイフは投げるな?
「ウーマロ。あの辺に『ナイフ禁止』って書いとけ」
「投げないよ、ナイフなんか!」
いいや、お前は投げる!
ダーツが狙い通りに飛ばなかったら、「ナイフなら正確に当てられる!」とか言って投げるに決まってる。
で、ダーツとは反対の壁沿いには、メンコで遊ぶバトルフィールドがあって、……はは、あの台、メンコ落とし用か? そんなんまで作ってんのかよ。
あ、バランスゲームまで置いてあるじゃん。
マジで遊戯場だな。
そして、俺たちは、ことさら目を引く、中央スペースにやって来た。
「ゼルマルさん。これが、先ほどおっしゃっていた『びりやーど』というものなんですか?」
遊技場中央にどーんと鎮座する一脚のテーブル。というか、ビリヤード台。
見た目は豪華そうに見えるが、ウーマロの言った通り、脚周りをもう少し改良したいな、アレは。
「ビリヤードは、遠くの球をショットする時に台に乗ったりするから、もっと強度を確保しておいてくれ。あと、床が傾いていてもプレイ出来るように、脚の長さを微調整できるとなおいい」
「最初に言え!」
「あぁ、すまん。ウーマロなら言わなくても察して改良しといてくれるから、つい。ゼルマルじゃあ、ウーマロほど気が利かないよなぁ~、失念失念」
「こんの、穀潰しが……明日までに修正しといてやるわい!」
祭りは今日で終わりだっつーの。
明日以降も残りそうだな、この遊技場。
評判がよかったら、どっかに場所確保して正式オープンさせるか。
「エステラ」
「うん。場所の確保が出来ないか、調べてみるよ」
豪華な内装に、遊び道具がいっぱいの空間は、エステラの心にクリーンヒットしたようで、大きな赤い目がキラキラと輝いていた。
「とりあえず、遊んでみようか!」
言うが早いか、ダーツへと駆けていくエステラ。
対戦相手を募集しているが、ナタリアが一歩踏み出したら「プロはダメ!」と腕で大きく『×』を描いていた。
あいつの負けず嫌いも大概だな。
「お兄ちゃん、このびりやーどってどうやって遊ぶですか?」
ゼルマルに頼んだせいで一台しかないビリヤード。
ベッコやウーマロなら、予備にってもう二~三台くらい用意してたろうに。
やっぱ動き遅ぇな、ジジイは。
「それじゃあ、一番分かりやすいナインボールのルールを教えてやる」
そうして、ビリヤードに興味を持った連中の前で、ビリヤードのルールと遊び方と、ちょっとしたコツを教えてやる。
対戦相手がある程度うまくないと面白くないからな、これは。
ルールを覚えたら、チーム戦で軽ぅ~くプレイしてみるかね。
ナインボールとは、白い手球をキューという棒を使って突き飛ばし、転がった手玉で数字の振られた球を数字が小さい順にビリヤード台の穴――ポケットに入れていくゲームで、最後の9番をポケットに入れた者が勝ちとなる。
ここで注意すべきは、手玉が台の上――フィールドにある最小の数字の球以外に当たるとファールとなる点。
逆に、最小の数字の球に手球が当たりさえすれば、その後どの球に当たっても問題はなく、手玉に弾かれた球が他の球に当たっても問題はない。
つまり、最初に1番の球に手球を当てて弾き飛ばし、弾かれた1番の球が9番の球にぶつかって9番の球がポケットに入れば、その時点で、他の球がフィールドに残っていたとしても、9番の球をポケットに入れた者が勝ちとなる。
また、手球がポケットに入ってしまうと、仮に9番の球をポケットに入れたとしてもファールとなり、9番の球は初期の位置へと戻される。
「というルールだ」
「はい、お兄ちゃん! よく分かんないです!」
「ん、頑張れ!」
「けんもほろろです!?」
まぁビリヤードのナインボールなんて、やってりゃそのうち覚える。
「とりあえず、チームを組んで覚えながらやってみるか」
「そうですね。……あの、ヤシロさん。一緒に組んでもらえますか?」
「……店長がさりげに優勝を狙いに行っている」
「い、いえ、そんなつもりは……っ。わたし、たぶんこの中で一番こういうゲームが苦手ですので、ヤシロさんに教わりながら出来れば心強いなと」
まぁ、俺がジネットと組むのが一番バランスのいいハンデになるかもな。
他の連中は、ルールを知らないだけで、すぐにコツを掴んで上達するような面々だし。
「じゃあ、俺はジネットとミリィと三人で組もう」
「ズルいぞ、カタクチイワシ!」
「可愛さでは勝てないルールだから安心しろ」
「勝利よりも可愛さが欲しいと言っておるのだ!」
「あの、ルシアさん。あとでチーム替えもしましょうね?」
「うむ。ならばよい」
と、ジネットは言うが、もうそんなに時間はないんだけどな。
「じゃあまず、キューの構え方を教えるぞ」
キューを握り、上半身を倒してビリヤード台へと覆い被さるようにして構える。
ビリヤードに興味があるのか、ナタリアが俺の説明を近くで聞いている。
あ、ダーツの対戦相手を拒否られたから暇なのか。
「それが基本の構えなのですか? 随分と低い姿勢なのですね」
「球と視線を水平にするとショットがブレないんだよ。体を起こせばフィールド全体が俯瞰で見える。考え抜かれた高さなんだ、これが」
「そうなのですか。てっきり、谷間が最もきれいに見える角度を計算され尽くしているのかと思いました」
「俺が決めた高さじゃないからな?」
まぁ、ビリヤードの姿勢は、谷間がとっても素敵に映えるけどね☆
「フィールドっていう、このシートが張ってある部分に乗らなければ、台に腰を掛けてもいいからな?」
手玉が遠い場合は、結構身を乗り出さなければイケない時もある。
「これが、お手本のショットだ」
と、まずは一人でナインボールを進めていく。
うわぁ、やっぱ本物と寸法一緒にしても感覚がまるで違う。
こりゃ、手こずりそうだ……
それから数回手球をショットしてフィールド上の球を次々落としていく。
球がポケットに入らなければプレーヤー交代となるため、毎回きっちりと球をポケットに入れていかなければいけない。
「ヤシロさん、上手です」
「いや、やっぱ故郷のと違うからすげぇやりにくい。本当なら、今ので9番が落ちてたはずなんだ」
すっごいギリギリを通過していってしまった。
キューも球もフィールドもクッションも、みんな微妙に感触が違ってやりにくい。
これ、案外いい勝負になっちまうかもしれねぇなぁ。
「ほい、ラスト」
なんとか微調整を繰り返しながら、ノーミスで9番まですべての球をポケットに落とした。
……ふぅ。
一応、格好はついたか。
「貴様に先手を取られると、何も出来ずに終わってしまいそうだな」
「そのレベルになると、もっと難しいルールのゲームをするようになるから心配すんな」
ナインボールは、初心者向けの優しいルールだ。
ナタリアなら、あっという間に無敵になることだろう。
「俺はアドバイスだけで、基本はジネットとミリィにやってもらうよ」
「あ、あの、でも、ここぞという時はお願いしてもかまいませんか?」
「ぅ、ぅん。みりぃ、こういうの緊張しちゃうから」
まぁ、負けそうになったら大人気なく圧勝してやるさ。
というわけで、二人一組になって順番にプレイしてみることになった。
「こ、こう……ですか?」
「ジネット、もうちょっと体を倒してみろ。台に手をついていいから」
「こ、こうですか?」
「わっほぃ☆」
浴衣のジネットが、ビリヤード台の高さに合わせて前傾姿勢になったら、祭りやろがい!
こんなもん、もう祭りを開催するしかないやろがい!
「♪揺れ~るぅ~♪ 重ぉ~い~♪」
「ヤシロ、変な歌を口ずさむんじゃないさね」
はっ!?
つい無意識で!
だって、重そうなたわわが揺れていたもので!
「ぇ、え~い!」
カツンッ、とミスショット丸出しな音を鳴らしてジネットがショットした手玉がゆっくりと転がっていく。
……ビリヤードでもゆっくりなんだな、お前の移動速度は。
今にも止まりそうなジネットの手玉は、なんとかかんとか1番の球にぶつかって、そこそこ面倒くさそうな位置へと球を押しやった。
「あぁ、すみません、ノーマさん。わたしのせいで!」
「いや、ジネット。勝負だから。そういうゲームだから」
相手が打ちにくい場所に球を配置させるのもテクニックの一つだから。
「こっからじゃ、ちょっと届かないさね。向こうに回ると……この位置じゃ1番を狙えないし……どうすりゃいいんかぃね、ヤシロ?」
「台に尻を乗せて、身をぐっと乗り出せば届くだろ?」
「いぃんかぃ、乗っちまって?」
「そういうもんだから」
「そんじゃあ……よっと」
ノーマがビリヤード台へ腰をかけてぐぐっと身を乗り出すと、胸元、背中、腰が美しいS字のラインを生み出し、そして台にかかって宙に浮いた左足の内ももが浴衣の隙間からチラリと――
「かぁぁああーーーにばぁぁぁーーーるっ!」
「は~い、懺悔券回収するよ~。出して出して~」
のぉおーい、こら、エステラ!?
お前何してんだよ、縁起でもない!
没収だ、そんなもんは!
「んもぅ、外れちまったじゃないかさっ」
と、悔しそうにキューを振る仕草も可愛らしい。
ノーマ、お前、分かってるなぁ。
「では、次は私が」
まさに今初プレイのはずのナタリアが、ベテラン顔負けな美しいフォームでビシッとキューを構える。
開いた脚が浴衣の裾を広げて足元チラリズムでなんとも艶めかしい。
美しい『しな』を作って女性らしさを強調しつつも、その瞳は獲物を狙う猛禽類のように鋭く、思わず呼吸を忘れるほどに魅入ってしまった。
「しゅっ!」
短く吐き出された息と共に、手球が勢いよく射出される。
カンコンっと球がぶつかり合う音がして3番の球がポケットに落ちた。
「……楽しいですね」
好きそうだな、ナタリアは。
こういう、狙い通りに事が進んでいく系のゲーム。
自分の狙いがドンピシャだった時の快感、堪んないだろ?
「ちなみに、俺の故郷では、ビリヤードがうまい女性はめっちゃモテた」
「なんかそれ、分かるです! ナタリアさん、カッコよかったです!」
「ぅん、みりぃも、ちょっと見惚れちゃった」
「ナタリア姉様のような整った容姿の方でしたらなおのこと、同性にも異性にも憧れられそうですね」
「きゅーじちょーしゃ、カッコいい! きれい!」
「えぇ、そうでしょうとも!」
「ナタリア、謙遜してー」
エステラが、かっさかさに乾いた声でおざなりに突っ込む。
諦めんなよ。
諦めたらそこで躾け終了だぞ?
「なるほど……寸法に厳しい注文だったが、こういうゲームならそれも当然か……。よし、量産体制に入るぞ!」
と、ゼルマルが鼻息荒く遊技場を出て行った。
あんまり意気込むとお迎えが駆け足で寄ってきちゃうぞ。
「こりゃ、延長決定だな」
「ふふ、みなさんとっても楽しそうですね」
わーわーと盛り上がる一同を眺め、遊技場常設を確信する。
これも、他区の領主連中に欲しい欲しい言われるんだろうなぁ……分かってんのかねぇ、あそこではしゃいでいる微笑みの領主様は。
一通りみんながビリヤードをプレイして、ゆるい感じで勝負が始まる。
……が。
そこまで時間ないこと、こいつら理解してんのかね?
このままここでビリヤードやダーツに夢中になるのはもったいないような……
「午前中に屋台を回っておいて正解だったさね。これで、時間までビリヤードに集中できるさよ!」
あぁ、そうか。
こいつらは午前中に祭りを堪能していたのか。
なら。
「ジネット」
「はい」
「俺たちはまだ東側に行ってないし、行ってみないか?」
「そうですね。わたしも、お祭りの屋台をもう少し回ってみたいです」
「ロレッタたちも行くか? 残っててもいいけど」
「むぁ~っと、行きたいです! でも、ちょこっとだけ待っててです! もうすぐ決着がつくですから!」
フィールドを見れば、残りの球は四つ。
まぁ、確かにぼちぼち決着か。
今、キューを構えているのはマグダ。
「……あはぁーん」
「セクシーショットに撃ち抜かれちゃったッスー!」
棒読みにもほどがあるぞ、マグダ。
ナタリアを真似するなら、もっとよく見て研究して。
あと、ウーマロはいつも通りだな。
あいつ、朝、陽だまり亭の脱衣所に更衣室作った後でマグダの浴衣見て大はしゃぎしてたろうに。
何回見ても、毎回新鮮な感動を味わってないか、あいつ?
幸せそうな人生だなぁ、おい。
「んじゃあ、そのゲームが終わったら行くか」
「はいです!」
「カンパニュラたちも行くか?」
「はい、是非ご一緒させてください」
「おまつり、はしっこからはしっこまで、ぜんぶ!」
んじゃ、陽だまり亭一同で行くか。
「ごめん、ヤシロ。あたいたち、この後マーシャについて港に行く約束なんだ」
「構わねぇよ。ちょっとでも一緒に遊べて楽しかったぞ」
「あたいもだ!」
「じゃあ、ミリィとマーシャも、祭りを楽しめよ」
「ぅん。ありがとね、てんとうむしさん」
「行進は見に行くから、店長さんもエステラもみんなも頑張ってね☆」
わいわいと賑やかなのもいいが、祭りは人が多い。
やりたいことがあるヤツはやりたいことを優先させればいいし、なんとなくぷらぷらしたい者はそうすればいい。
全員で同じ行動をする必要はないし、大所帯だと動きにくい。
ここらで解散すればいいだろう。
「カタクチイワシよ。夜は貴様が私を歓待せよ」
「んじゃ、この辺で待ち合わせでいいか?」
「うむ。ここか海漁ギルドにいるとしよう」
とか言って、イメルダのところにいたりするんだろ、お前は?
探してやるから、西側のどっかにいろよ。
見つからなかったら、割と早めに諦めるからな、俺は。
「じゃあ、ジネット。悪いがちょっと付き合ってくれるか?」
「何かされるんですか?」
「ビリヤードにドハマリしたあの辺の連中に差し入れを買ってくる。特にノーマはこの後光の行進だから、何か食わせとかないと」
「そうですね。では、美味しそうな物を探しに行きましょう」
「すぐ戻ってくるから、カンパニュラたちはマグダたちのゲームが終わるまでここで待機しててくれ」
「はい。あとで、どのお店で何を買ったのか、歩きながら教えてくださいね」
「おみおつけ~!」
惜しい、テレサ。
「お気を付けて」だ。
『おみおつけ』は味噌汁のことだぞ。
「じゃ、行ってくる」
「すぐ戻りますね」
一言残して、ジネットと二人で遊技場を出る。
「空が、少し落ち着いた色になってきましたね」
燦々と降り注いでいた陽光は少し落ち着きを見せ始め、暑さのピークも過ぎた頃合いだ。
精霊神の依怙贔屓の賜物のようなよく晴れた空には、呑気な雲が浮かんで、のんびりと流れていた。
「ジネットの見立てでは、ノーマの空腹具合はどれほどだと思う?」
「そうですね、声の感じからして……七割くらいというところでしょうか?」
「結構腹ペコだな」
「うふふ。ノーマさん、お腹が空くと甘えん坊さんな口調になるんですよ」
「酔っ払ってる時もなるし、なんなら眠たい時もなってるけど?」
その予測、当たってる?
「それじゃあ、ガッツリ系をいくつか見繕うか」
「わたしたちが戻るまで、デリアさんは残っているでしょうか? なら甘いものも買っていきたいですが」
「買っといてやれ。ギルベルタもいるし」
「そうですね。ギルベルタさんも、甘いものが大好きですもんね」
言って、口元を隠してくすくすと笑う。
「可愛かったですね、ミックスジュースを飲むギルベルタさん」
あぁ、確かに。
幸せそうな顔をしてたっけ。
「一回広場を出て、教会のそば辺りまで行ってみるか」
「はい。あまり時間をかけられませんので、急ぎましょう」
「いや」
歩き出そうとしたジネットを呼び止める。
「……ちょっとだけ、のんびり行こう」
確かに時間はないんだが……
「折角浴衣を着ているんだし、下駄の音を楽しみながら、のんびりと、な」
先日、ちらりとだけ顔を覗かせた、ジネットのおねだり。
結局「みんなで」ということで流れてしまったが、ジネットは俺に、一緒に祭りを歩いてほしいと言っていた。
みんなで一緒にってのが嫌なわけじゃない。
でもまぁ。
「少しの間だけ、二人で散歩、しないか?」
めったに自分の望みを口にしないジネットの願いなら、叶えられる限り叶えてやってもいいんじゃないだろうか。
まして、この程度の、控えめな願いくらいなら。
一緒に歩くだけで叶うような、なんの苦労も伴わない、無欲な望みくらいはな。
「…………はい」
俯き、でも嬉しそうに頬をゆるめ、少しだけ困ったように眉根を寄せて、ジネットは言う。
「やっぱり、ヤシロさんは、甘やかしの天才ですね」
甘やかしてるわけじゃねぇっつーの。
「来る途中に美味そうな店とか見かけたか?」
「そうですね、イメルダさんのお宅の近くに、山菜炊き込みご飯のおにぎりを売っている屋台がありましたよ」
「マジか!? 見落としてたな」
「ノーマさんはお好きでしょうか、山菜?」
「ノーマの前に俺が食いたい」
「ふふ……では、みなさんには内緒で、こっそりとつまみ食いしてみますか?」
それ、ただの買い食いだから。
でもまぁ、そうだな。
「じゃあ、つまみ食いのプロに手ほどきをしてもらおうかな」
「むぅ。そんなにつまみ食いばかりしているわけじゃありませんからね?」
説得力ねぇーなぁー。
カンパニュラやテレサにまでつまみ食いキャラだと認定されているというのに。
「ノーマさんはあっさりとしたものもこってりとしたものも好まれますから、選択が難しいですね」
「逆に、何買っていっても美味そうに食いそうだけどな」
「ノーマさんは、そんなに食いしん坊さんじゃありませんよ?」
「確かに。食いしん坊というより、呑兵衛だもんな」
「そんなことは…………あ、カットフルーツの屋台ですよ」
濁したなぁ。
誤魔化したねぇ。
嘘は吐けないもんなぁ、精霊神を讃えようって祭りをしているこんな日には。
「陽だまり亭のクレープを覗きに行って、ちゃんとハムっこマークやってるか、抜き打ちチェックしてやろうか?」
「さすがに、あそこまで戻っている時間はないと思いますよ」
「このまま二人でバックレちまうか?」
「えっ……?」
そんな提案を悪人顔で告げてみれば、ジネットは驚いたような顔をして、すぐに首を横に振った。
「悪いことをしているようで、ちょっとどきどきする折角の提案ですが、わたしたちが戻らないと、マグダさんやカンパニュラさんが膨れてしまいますよ。お二人の膨らんだほっぺたをもとに戻すのは至難の業です」
そんな言い訳をしつつ、俺からの申し出をやんわりと断る。
ジネットは、みんなと一緒が好きなのだ。
「二人でお散歩するのは、またの機会に……誘って、ください、ますか?」
だから、ジネット。
その顔は、強要と同義だってのに。
「いつでも。いくらでも」
「では、楽しみにして、お待ちしています」
断っといて楽しみもないだろうに。
「まぁ、ジネットの顔に『ロレッタやテレサたちとお祭り回りた~い』って書いてあるしな」
「あれ? 不思議ですね。ヤシロさんのお顔にも同じことが書かれていますよ?」
「そんなわけないだろう。あぁ、アレかな? 毎日ピカピカになるまでお肌を磨いてるから、反射してるのかも」
「ふふっ……そんなに磨いているんですか?」
「スキンケアは美容の基本だからな」
まぁ、反射するほど磨いてたら、逆にぼろぼろになるだろうけども。
「今日は、精霊神様にお話することがたくさん出来ました。話し切れるか、不安になってきました」
光の行進で緊張するというジネットに授けた、緊張をほぐす秘策。
精霊神とおしゃべりでもしながらいつも通り歩けばいい。――そんなことを教えておいた。
今日あった出来事を、いっぱい報告するつもりなのだろう。
おしゃべりに夢中になり過ぎて、教会の前を通り過ぎるなよ?
「まずは、ヤシロさんがとても優しい方だとお伝えしておきますね」
「やめてくれ。懐かれでもしたら一大事だ」
「ふふ、精霊神様はネコではありませんよ?」
ネコほど可愛げがあればまだ救いはあったんだけどな。
「あっ、ヤシロさん……」
上機嫌だったジネットの笑みが驚きに上書きされる。
何事かと思ったら、ジネットの視線の先に回転焼きの屋台があった。
「今年も出店していたんですね」
去年、俺もあの屋台を見かけて、ジネットにって回転焼きを一個買っておいたんだよな。
で、夜になって冷えた回転焼きを半分こしようとして……出来なかったんだ。ジネットの自爆によって。
「半分こしてみるか?」
「いいですよ。今度こそ、わたしが勝ちます」
また勝負するのかよ。
お前が自爆して、照れまくる未来しか見えねぇよ。
「普通に食おう。勝負はまた今度でいい」
「そうですね。では――すみません、回転焼きを一つください」
人差し指を一本立てて、ジネットは屋台のおっさんに回転焼きを注文する。
……二個頼めばいいのに。
やっぱ、回転焼きは半分こするものって意識が刷り込まれちまってるみたいだな。
「それじゃあ、半分こしますね」
まぁ、これだけ嬉しそうに笑っててくれるなら、いくらでも付き合うけどな、半分こ。
それから少しの時間、ジネットと屋台を回り、お土産用の食い物を買い込んだ。
俺たちが遊技場に戻った時、ノーマが浴衣の乱れも気にしない勢いで渾身のガッツポーズをしていた。
あとがき
おおきに!
宮地どす☆
文章作品
いわゆる小説というものは
さり気ない一言が、実は後々重大な意味を持ってくる
『伏線』というものが重要になってきまして
何気ない日常シーンの中に紛れ込ませた何気ないセリフが
あとになって「あぁ、そういえばあの時こんなこと話してた!」とか
「あのセリフ、こういう意味だったのか!?」とか
そういう、あとになって意味が分かり、
がっちりとピースがハマるように理解できると滅茶苦茶気持ちがいい
そんな仕掛けをうまく使っている作品というのが物凄く面白い
名作と言われるようになるわけですけれども
今回の、100%お遊び日常回は、
なんの伏線でもございません!
完全無欠の、日常回です!
何の仕掛けも\(≧▽≦)/ございませーん!
……いいんでしょうか、こんな日常を描いていて?
え、今回の事件の解決にビリヤードが役に?
立たない、立たない。
ただただ、浴衣から覗く内腿を描きたかっただけなんです!
そして、ビリヤードのショットの時の姿勢って――
いい(*´ω`*)
そんな思いだけで書き上げてしまった一話なのです!
ただただ、書きたかっただけという(笑)
これが技巧的なミステリーであれば、
探偵「えぇ~、あなた! ビリヤードする時左足を前に出していましたね?」
ノーマ「はっ!?」
探偵「つまりあなたは、無意識のうちに右足をかばってしまっていたんです!」
ノーマ「……アタシが、やりました」
とかいって、謎解きのキーになっているんですが、
異世界詐欺師は違います。
内腿にわっほ~い\(*´▽`*)/
それがすべてです!
浴衣でビリヤードのショットの姿勢を取ると、
谷間が大変なことになって、カーニバルやろがい!
カーニバル( ゜∀゜)o彡゜ やろがい!
伝えたかったのは、それだけです!
伏線なんてありません
なんなら、過去に
ゼルマルにビリヤードの制作依頼していたことすらうっすら忘れかけてて、
ここでビリヤード出しとかないと、次の仕事振ったら、前の仕事投げ出したことになって
そんなヤツは職人失格だよな
とかいう危機感から強引にここにビリヤードをねじ込んだ感すらありますから!
もう、私としましては
「♪揺れ~るぅ~♪ 重ぉ~い~♪」
が言えただけで、もう十分でございます
(*´ω`*)リスペクト
あと、ジネットの望みは、どんな小さなことでも叶えてあげたいなと
ヤシロがずっと機会を狙っていたということを皆様に知っていただければ
浴衣デート、してやりましたよ!
ザマァミロ精霊神!
ヤシロ的には、そんな感じかもしれません(笑)
なんかこう、みんながちょっとはしゃいで
目一杯楽しんでいる雰囲気が伝わればいいな~と
(*´ω`*)
なので、伏線とかありませんからね!
この後しばらくお祭り続きますが!
重要なキーワードとか、特に期待しないようにお願いします!
高いハードルはくぐって進む! 宮地です☆
さて、ビリヤード。
中学生のころに流行りまして
ボーリング場にビリヤードコーナーと卓球コーナーがあって、
そこでよくプレイしていました
作中に登場した9ボールから始めて
変則的な8ボールとかやりました。
1~7までを順番に落としていくチームと
15~9までを順番に落としていくチームに分かれて
8番を落とした方が勝ち、みたいなルールで
8ボールとはルールが違うので、アレはなんてゲームになるんでしょうね?
まぁ、素人が勝手にやってたルールなので(^^;
あのころは、女子にモテたいとか一切なくて
ただ友達と遊ぶのが楽しかった、そんな時期でしたね~
女子高生が無敵なように、
男子中学生も無敵なんですよね~
なんでも出来る気でいましたし
結構無茶もしましたし……今だと絶対叱られるようなことも……
で、でもまぁ、
それがこうして作品に活かされているのですから、
結果、オーライ?(^^;
あ、でもイジめとセクハラはしませんでしたよ
この作品をご覧いただいていると、セクハラ三昧ないじめっ子っぽく見えてるかもしれませんが
一応、線引きはきちんと、えぇ、はい、たぶん、……ギリ、セーフ?
女性には優しくしろって、祖母ちゃんが言ってましたし
祖母ちゃんの言うことはちゃんと聞くお利口さんでしたし
(*´ω`*)
まぁ、「よく噛んで食べなさい」と「好き嫌いするな」はいまだに守ってませんけれども
だって、焼肉に行った時にちょっと焼きタレのついた白米を飲むように食べるのが美味しくて美味しくて!
白米は丸のみした時の喉越しが最高!
(≧▽≦)/うまい、もう一杯!
無添加の焼肉回はよく書けたと、
自分で自分を褒めたいくらいです
ルシアがご飯掻き込むシーンの美味そうなこと
あのシーンが書けただけでも、続けてきた甲斐がありました。
あそこを読むと、焼肉に行きたくなりますもの♪
おかげで、腹回りに肉が…………おのれ、ルシア!
どこかで盛大に照れさせてやるから、覚悟しておくがいい!
私の焼肉好きって
高校の部活の先輩たちと初めて行った焼肉食べ放題が楽しかったからかもしれませんね
それまで、焼肉って高くて、
ちょっと遠慮しながら、お腹いっぱいになるほどは食べずに
いい肉を腹六分目くらい食べる場所って印象だったんで
あんまり好きじゃなかったんですよねぇ、
炭火と煙草の煙がけむたっかですし
ところが、
高校のころに関西で有名な焼肉屋さんが食べ放題のチェーン店を始めて
それがまぁ、美味しくて、楽しくて
大好きになったんです。
煙たくもなかったですし
好きな物を好きなだけ食べられる
しかも、肉以外にもいろいろ充実しているというあの感動!
当時は、カウンターとか冷蔵スペースに肉や野菜やデザートがずらっと並んでいるビュッフェスタイルが主流で
皿に山盛り肉を積み重ねて自席で焼くっていうスタイルだったんですが
私が席を立つたびに、テーブルにデザートが増え、
肉を焼いても、肉一枚で茶碗一杯くらいの白米を平らげるような状況で
先輩A「宮地、肉食え!」
先輩B「俺、野菜食えって言われたことあるけど、肉食えって言われてるヤツ初めて見た」
宮地「その前に、このミニチョコサンデー食っていいっすか?」
先輩C「ごめん、こいつ今度ケーキバイキングに連れてってやってくれる!?」
楽しかったですねぇ、部活メンバーとの食べ放題
(≧▽≦)
そうだ!
焼肉の話を書こう!
いや、もういいわΣ(゜Д゜;)
そんなわけで、
書きたいことを楽しく書いております
皆様にも、この楽しい雰囲気が伝わっていれば嬉しいです
是非、楽しんでご笑覧ください!
引き続き、次回もよろしくお願いいたします
宮地拓海




