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異世界詐欺師のなんちゃって経営術  作者: 宮地拓海
第四幕

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408話 朝も早よから騒々しい

「んなぁああー!? どこッスか、ここはぁー!?」



 早朝。

 奇妙な生き物の鳴き声で目が覚める。


「ベッコ、アラームがうるさい。止めてくれ」

「むにゃ……相分かったでござる。ウーマロ氏、しぃ~でござるよ……むにゃむにゃ」

「いやいやいや、しぃ~では黙れないッスよ!?」

「ベッコ、スヌーズが煩わしい。止めてくれ」

「ウーマロ氏、……めっ」

「めっじゃないッスよ、ベッコ! 起きて説明するッス! あらーむとかすぬーずとかよく分かんないッスけど、たぶんオイラに責任ないヤツッスよね!?」


 早朝からけたたましく鳴り響くウーマロアラーム、いや、アラートだな、これは。

 そんな爆音に眠りを妨げられ、ダルい体を起こす。


「人が寝てる時に騒ぐんじゃねぇよ……ったく」

「オイラ、寝てる間に知らない場所に連れてこられたみたいなんッスけども!?」

「文句があるなら、ルシアとヤンボルドに言え」

「……ヤンボルドッスか、あのヤロウ、一回シメてやるッス」


 ターゲットが明確に定まったようだ。

 ルシアには文句言えないもんな。


「その木箱を作ったのはヤンボルドだが、その木箱にお前を入れたのはマグダだぞ」

「どうりで、夢見がよかったわけッス」


 一瞬で機嫌が直ったな。

 単純な男だ。


「それで、ここはどこッスか?」

「今の大きな声はなんなのわ!?」

「あぁ……理解したッス」


 さすがウーマロ。

 状況把握能力が人並み外れている。


「というか、男の寝室に寝間着で飛び込んでくるな、アルシノエ」

「の、のわ? ダメなのわ?」

「変な噂が立つぞ」

「変な………………『実はワタシのヒジはどっち方向にも曲がるのわ』とか、のわ?」


 そいつぁ変な噂だな。

 違ぇーよ、ばーか。


「俺と男女の仲だとか言われたらどうする気だ?」

「カタクチイワシ様とは、男女で仲良しなのわ!」


 うーん、ピュア。

 やりにくい系の天然だな、こいつは。


「俺のことを好きなんじゃないかとか言われたら、どうするんだってことだよ」

「カタクチイワシ様のことは大好きなのわ。家族よりも」


 うん。お前らんとこは、家族仲が悪いわけじゃないんだけど互いに興味を持ってなさ過ぎるんだよ。

 もうちょっと興味持て、家族に。


 で、そうじゃなくて。


「俺と結婚するんじゃないかとか言われると、お前の名に傷が付くだろうが」

「カタクチイワシ様がお相手なら、ワタシは第十八夫人でもいいのわ」

「お前の前の十七人は誰だよ!?」

「まず、洗濯屋のムムさんのわ」

「『まず』で出てくるのが、なんでムム婆さんだ!?」

「年齢の順のわ。続いて、マーゥル様のわ」

「介護施設か!? ――って、言いたそうな顔をしてるぞ、ベッコが」

「危険な責任をおっ被せられたでござるな、今!?」


『まず』も『続いて』もねぇーよ。


「そもそも、重婚はダメなんだろうが、この街では」

「今の国王様は四人の奥方を娶られたのわ」

「八個も独占だと!?」

「おっぱいの数で数えるのやめてッス、ヤシロさん!」

「それはさすがに、王妃様方に対して不敬が過ぎるでござるよ!?」

「……分かったよ。今の無し」

「聞かなかったことにするッス」

「ちゃんと敬って『ロイヤルセット』で数えるよ」

「ないでござるよ、そんな敬い方も数え方も!?」

「聞かなかったことにしたいッス!」

「4ロイヤルセットも独占してんのか、エロ王族め」

「首をハネられるでござるよ!?」

「あぁぁああぁ、アルシノエさん、今のは聞かなかったことにしてほしいッス!」

「と、ととと、当然のわ! 口外したら、ウチの家まで取り潰されかねないのわ!」


 なんか周りがあたふたしている。

 大丈夫だよ。『エロい』は褒め言葉だから。


「違うッスよ!?」

「違うでござるよ!?」

「えっ? え? 今何か言ったのわ?」


 息の合ったウーマロとベッコ。

 一人慌てふためくアルシノエ。

 なるほど、これでよく分かった。


「お前らが変なのは四十二区のせいだな」

「「ヤシロさんのせいッス!」でござる!」


 ひどくなーい?

 ヤシロ、ご立腹!

 もう寝る!


「ダメでござるよ! 時間がないゆえ、早朝から作業を開始するという話だったでござる」

「はぁ……結局まともに状況説明されなかったッスけど、状況は把握したッス。カワヤたちにも連絡行ってるッスよね? なら、四十二区から荷物が届き次第、即始めるッス」

「ワタシも何かお手伝いするのわ!」

「じゃあまず着替えてこい。ウーマロが怖がって木箱から出てこれない」

「ワタシ、怖いのわ!?」

「大丈夫でござるよ。ウーマロ氏は少々特殊な御人でござるゆえ。アルシノエ氏はお気になさらずお召し替えをしてくるでござる」

「のわ。メンコ絵師さんがそう言うなら、従うのわ」


 ベッコのことはメンコ絵師と認識してるのか。

 確かに、その場でメンコを量産させたあの技術は衝撃的に映っただろうけど。


 アルシノエが出ていくと、入れ替わるように部屋のドアがノックされ、給仕長のシュレインが顔を覗かせた。


「失礼いたします。お起こしするよう申し付けられていたのですが、お役に立てずに申し訳ありません」

「気にすんな。こっちが勝手に起きただけだ」

「ありがとうございます。ですが、まだ朝食の準備が整っておりませんで……」


 そんなに早く起きちまったのか。


「準備はどの辺まで進んでるんだ?」

「呼んでもないのに『手伝うのわ』って厨房に突入してきた奥様を追い出したところまでです」

「その工程、この館限定のものだから、進捗確認の役に立たねぇんだ。覚えとくといいぞ」


 自由奔放か、この館の住人、全員。


「無駄な工数増やさないために、エカテリーニにも作らせてやれよ」

「いいこと言ったのわ! さすがカタクチイワシ様のわ!」


 ずばっ! ――と、寝間着姿のエカテリーニが俺たちの寝室に入ってくる。


「ネグリジェを他所の男にさらすな、貴族のご婦人!」

「のわ? でも主人はパンツ一丁で館中を歩き回ってるのわ」

「一家総出で意識改革しろ!」


 アレよりマシだからセーフとかないから!

 合格ライン下回ってたら、全員まとめてアウトだから!


「よっ! ナイスラッキースケベ!」


 黙れ、シュレイン。

 駄給仕長。


「服を着替えてきたら、調理を手伝わせてやる」

「カタクチイワシきゅんがお作りになられるのですか?」


 腕まくりする俺に、シュレインが目を丸くする。

 まぁ、もう目も覚めちまったしな。

 さっさと作って、さっさと食って、さっさと用事を済ませて、さっさと帰りたい。


「まだ調理にかかってないなら、俺が簡単なものを作ってやるよ。厨房を貸してくれ」

「はい。厨房はご自由にお使いくださって結構です。お好きに料理してくださいませ――食材も、奥様も!」


 ドヤァアア!


 いや、「ドヤァアア!」じゃねぇよ!

 なに言ってんの、この給仕長!?


「料理に自信のあるヤツを数名スタンバイさせといてくれ、すぐ行くから」

「承知いたしました」


 シュレインが足音もなく、高速で部屋を出ていく。

 能力はあるんだよなぁ、この街の給仕長。

 ただ思考が残念なヤツが多いだけで……


「ウーマロ、腹減ってるか?」

「そういえば、昨日は夕飯を食べ損ねたからペコペコッスね」

「ベッコは?」

「拙者、寝起きからなんだって食べられる体質でござる!」


 そいつは羨ましいな。

 俺は、朝に重たいものは避けたい派だもんな。


「よし、じゃあガッツリ作るか」

「じゃあ、その間に、劇場のデザインを最終チェックしておくッス。ベッコ、手伝えッス」

「合点承知でござる!」


 こいつらが準備をしっかりしておけば、作業も滞りなく進むだろう。

 んじゃ、休まずに働き続けられる重めの食事でも作ってやるか。


「準備できたのわ、カタクチイワシ様! さぁ、厨房へ向かうのわ!」


 部屋を出たところでエカテリーニに捕まり、厨房へ向かう。

 厨房の前で、おしゃれし直してきたアルシノエも合流した。

 お前も手伝うのかよ。


 厨房に入ると、エプロンを身に着けた女性たちがズラッと並んで俺を出迎えてくれた。

 野菜がいくつか作業台に置かれているが、なんだか心許ない。

 ……そうか。

 つい先日まで爪に火を灯すような生活してたんだっけなぁ、この館。


「ベッコー! 俺の荷物持ってきてくれー!」

「了解でござるー!」


 こんなこともあろうかと、陽だまり亭から食材と調味料をいくつか持ってきていた。

 というか、ジネットが持たせてくれた。

 ジネットも、イーガレス家の台所事情を知っていたのだろう。

「ヤシロさんの秘密道具が一つ増えましたね」とか、嬉しそうに言って食材を箱に詰めていた。

 役立つんだもんなぁ、秘密道具。道具じゃなくて食材だけど。


 ベッコが食材を持ってきたところで、居並ぶ料理人たちに宣言する。


「体力の付くガッツリした朝食を作るぞ!」

「「「ガッツリ系はやめろって言われてたのに!?」」」


 ん?

 あぁ、まぁ、確かに昨日はそんなことを言ったかもしれんが、今回はウーマロに照準を絞った献立にしておく。

 自分で作るなら、俺は適当につまみ食いすればいいだけだしな。


「んじゃまずはスープからいくか」


 真っ赤なトマトを取り出して調理を開始する。

 具沢山を通り越して具山盛りのミネストローネを作るとしよう。



 ジネットの玉手箱(食材入れ)から、トマトの水煮の瓶詰めを取り出す。

 そして、ジネット特製のコンソメスープを――


「重っ!?」


 あいつ、俺がどんだけ料理すると思ってんだ。

 まぁ、正直これだけあるといろいろなものに使えて助かるけれども。


 ノーマ特製スープジャーのおかげで、一滴もこぼれることなくスープが運べたようだ。

 あとは、玉ねぎとキャベツと、おっ、トウモロコシあるじゃん。入れよう入れよう。

 豚バラブロックの燻製と、じゃがいもと人参、マッシュルーム。

 まぁ、こんだけあれば上等だろう。


 これらを1cm角に切って、でかい鍋で炒めて、トマトの水煮をドバっとぶち込んで、コンソメスープをなみなみと注いで、塩コショウで味を調えれば……


「ほい、お手軽山盛りミネストローネの完成だ」

「物凄い手際のよさなのわ!?」

「こっちはまだ、じゃがいも全部剥けてないのわ!?」


 ミネストローネを作っている間、手伝いたいというエカテリーニとアルシノエにじゃがいもの皮むきを命じたのだが、まだ終わっていないらしい。

 遅い!

 丁寧なのはいいが、ここまで遅いと支障が出てくる。


「じゃがいもは、こうやって剥く」

「デコボコのじゃがいもがするする剥けていくのわ!?」

「料理長が瞬きもせずに手元を見て技を盗みにかかってるのわ!?」


 賑やかだなぁ、この母娘は。


「じゃあ、剥けたじゃがいもを2mm程度の細切りにしといてくれ」

「任せてのわ!」

「いえ、奥様。ここは私が!」


 ナイフを振り上げたエカテリーニを料理長が慌てて止める。

 振り上げてんじゃねぇよ。


「エカテリーニは駄菓子以外の料理が苦手なのか?」

「そんなことはございません。料理は一通りお出来になられます。……が、少々『ま、いっか』精神が見え隠れしておりまして」

「じゃ、料理長に頼む」

「お任せください」


 そこそこ年配の女性であり、指先には苦労が見え隠れしている料理長。

 金がない時でも、なんとか主人たちを満足させようと試行錯誤していた苦労人らしい。

 ナイフ捌きは堂に入っており、見ていて安心感がある。


「仕事取られたのわ! ズルいのわ! ワタシもやりたいのわ! のわ! のわっ!」


 ナイフ使ってるヤツの周りをうろちょろすんな!

 見ててハラハラするわ!


「エカテリーニとアルシノエには別の仕事を用意してある」

「ホントのわ?」


 てててっと近付いてきて、俺の手元を覗き込むエカテリーニ。

 家のお手伝いがしたくてたまらない小学生低学年か、お前は。


「二人にはホットケーキを作ってもらう」

「のわ?」

「パンの代わりになる甘いヤツだ」

「それ、きっとワタシが好きなタイプのご飯のわ!」


 甘いパン代わりにアルシノエが食いついた。

 じゃあ、作り方を教えて、飽きるまで焼かせてやるか。

 どうせ最初は失敗して何枚も焼くことになるだろうし。

 しばらくは大人しくなるだろう。


「じゃがいもの細切り、完了しました」

「じゃあ、オリーブオイルを敷いたフライパンに、じゃがいもの細切りを隙間なく敷き詰めて、両面こんがりと焼き上げてくれ」


 じゃがいものガレットだ。

 ひっくり返したあと、生地の四隅にバターを落とすと、香りがよくなっておまけにカリカリに焼き上がる。


 料理長一人でガレットは事足りてしまったので、余った料理人たちにも仕事を振る。


「薄力粉に油と水を入れて、ダマにならないようにしっかりと混ぜ合わせて……そこに塩をぱらぱらと」


 緩めの生地が完成したら、フライパンに油を引いて、弱火でじっくりと生地を焼き上げていく。

 薄く伸ばして、厚みにムラが出ないように、丁寧に焼く。


 指でつまめるくらい焼けたらひっくり返して、豚バラブロックの燻製を薄ぅ~くスライスして、焼けた生地の上に載せる。

 そこへ、よ~くとろけるチーズを載せて、左右を折りたたむ。

 で、細長くなったソレを手前から折り返していくと――


「ベーコンチーズのなんちゃってブリトーだ」


 もっちりとした食感がクセになるブリトー。

 結構簡略化したけれど、これだけ出来れば上等だろう。


「あとはもう、残ったベーコンを分厚く切ってがっつり焼いといてやるか」


 食いたきゃ食うだろう。

 くわっ、いい匂いだなチキショウ。

 俺もちょっと食お。


「じゃ、食堂に運んでくれ」

「「「承知しました、主様」」」


 違うぞー。


 お前らの主はメンコで大はしゃぎしてるイーガレスだから。

 知ってるだろ? ヨル兄? あいつがお前らの主!

 え? ヨル兄じゃなくてヨル爺だろうがって? それは本人に直接言ってやれ。


「げ、原価が……仮にあの豚バラ肉のブロックを300Rbと仮定しても、とてつもない原価の安さです!? こんな値段でこれだけの料理が……!?」


 料理長がわなわな震えている。

 あぁ、たぶん、四十二区で買ってるからお前らが思うよりもうちょっと安いと思うぞ。

 こっちには無料野菜販売所のモーマットがいるからな。

 ……え? お金払わなきゃダメなの?

 なんで?

 モーマットなのに?

 え、なんで?


「貧乏料理が習いたきゃ陽だまり亭に行ってジネットに聞いてこい。この半分の値段で、この二倍以上豪華な料理を作ってくれるぞ」


 しかも、栄養バランスもばっちりの、見た目にも華やか、味は言うまでもない、最強の節約料理だ。

 マジで一度くらいは見てみたかったよ、ジネットと女将さんの頂上決戦。


 なんか、途中から仲良く一緒に料理始めそうだけども。


「料理長」

「はい、マイマスター!」


 違うから!

 お前らのマスターはメンコ男!

 たぶんまだ寝てるであろう、見た目はジジイ中身は子供の迷当主!


「コンソメスープが結構余ってるから、これでピラフを炊いてくれ」

「ピラフ……あぁ、あの難易度が高くて見なかったことにしたあのレシピですか」


 見なかったことにしてんじゃねぇよ。


「『まずコンソメを作ります』と書かれていて、ちょっと挫けました」


 まぁ……ね?

 コンソメって、一般人が作ろうとすると、結構難易度高いもんな。

 固形ブイヨンとか、もちろんないわけで。

 けど、美味いピラフは美味いスープがあって初めて作れると言っても過言ではない。


「このコンソメを使えば簡単に美味いピラフが出来るから、レシピ通りにやってみろ」

「では、すぐに取り掛からせていただきます」


 料理長がコンソメの入ったスープジャーを受け取り、「なにこれ、すごっ!? 欲しっ!」と感激しつつ、レシピとにらめっこを始める。


 レシピに書かれているのは、鍋一つで出来る簡単なピラフのレシピだ。

 小さく切った玉ねぎ、ピーマン、パプリカをバターで炒め、輪切りウィンナーを入れ、米とコンソメスープを入れてから沸騰させて、その後蒸らすだけ。

 30分とかからずに作れるお手軽レシピだ。


 むきエビやグリーンピース、コーンなんかを入れると、見た目も味もワンランク上のものになる。


「はぁぁあああ! なんかもう、匂いが幸せですぅぅううう!」


 料理長が料理しながら吠えている。

 あ、こいつ陽だまり亭に来るな……


「エカテリーニ。時間がある時にでも、料理長をジネットに会わせてやってくれ」

「のわ。ワタシもまたお菓子を習いに行くのわ」


 料理長がジネット流のコンソメをマスターすれば、駄菓子横丁の喫茶店はもっと繁盛するだろう。

 区内の領主派貴族の土台が固まれば、ルシアの立場も盤石になる。


 三十五区が盤石になれば、四十二区にも恩恵が生まれる。

 ルシアとエステラの関係が、この先悪くなるなんてことは、よほどのことがない限りないだろうし。


 イーガレス家には、ちょっと頑張ってもらわないとな。



 ただまぁ、ジネット流のコンソメをマスターするってのが、かなりハードル高いんだけどな。


「あ、そこの手の空いてる料理人。じゃがいものガレットにチーズを載せて、軽く火で炙っといてくれ」

「そんなの、絶対美味しいじゃないですか!」


 絶対美味しい朝食を食おうぜ、どうせならな。


「あぁ、これが日常になれば、どんなに素晴らしいことか……」

「そのためにはカタクチイワシ様にご当主を継いでいただかなくては……」

「「「アルシノエ様、頑張ってください!」」」

「の、のわっ!? 何を頑張るのわ、ワタシ!?」


 あぁ、大丈夫大丈夫、アルシノエ、聞き流しといていいぞ。

 絶対ないから。


 そんな目で見つめられてもねぇーよ。

 キビキビ働け、給仕ども。




 飯を持って食堂に出ると――


「よい匂いだな。私は大盛りで頼むぞ」


 ルシアがいた。


「おかしいな。今日は現地集合だったはずなんだが」

「ふふん。マグマグが朝からとても可愛らしくてな」

「……ルシア。それは内緒のヤツ」


 何かを暴露されかけて、マグダがルシアの尻を両手で鷲掴みにする。

 むんずっと。

 相当焦ったのか、手段を選ばなかったな、今。

 ルシアが「ほぅっ!?」って、シャウトしちゃってんじゃねぇか。


「なかった、元気が、我が永遠のライバルマグダは、朝、目が覚めた瞬間から」


 ルシアと戯れるマグダの隙を窺って、ギルベルタがこっそりと教えてくれる。

 あぁ、なるほど。

 朝目が覚めて、なんか急に寂しくなったんだな。

 朝はほぼ毎日ジネットが起こしてくれるもんな。

 それがないと、遠くへ来たことを実感してしまうのだろう。


「じゃあ、さっさと終わらせて、さっさと帰るか」

「……別にマグダは寂しがっているわけではない……が、ヤシロがそうしたいならマグダも全力で手伝う」


 お前が全力出すと、ウーマロが灰になっちまうよ。


「今マグダたんの声が聞こえたッス! むはぁああ! 目覚めてすぐ見るマグダたんはマジ天使ッスー!」


 ほら。顔見ただけでこの元気だ。

 ちょっと応援でもしてやれば小一時間で劇場が建っちまうぞ。


「いや~、いい匂いでござるなぁ~」

「マグダ、隠れろ! 妖怪くんかくんかが現れた!」

「おのれベッコ、マグダたんに不埒を働くとオイラが容赦しないッスよ!」

「マグダ氏のことではござらぬよ!? 朝食のいい匂いに釣られたでござるよ、拙者は!」

「なんだよ。紛らわしい顔しやがって」

「ベッコはそーゆーこと言いそうな顔してるッスからねぇ」

「酷い偏見でござる!?」

「……まぁまぁ。ベッコも、悪気があってあんな面白い顔をしているわけではないから」

「朝から切れ味鋭いでござるな、マグダ氏の『乗っかり』は!?」

「……マグダは、そんなベッコですら許容してあげられる器の大きな女」

「ものっすごい上から物を言われつつ、自画自賛を織り交ぜられてるでござる!?」


 こんな賑やかなやり取りが楽しいのか、マグダの尻尾が嬉しそうにピーンっと立っている。


「御食事の用意が整いました」


 給仕長シュレインが俺たちに声をかけ、給仕たちがずらりと並ぶ。


「では、みんなで一緒にいただくのわ」


 エカテリーニが言って、俺たちを席へと誘導する。


「あれ? イーガレスは?」

「旦那様は、昨夜メンコのやり過ぎでまだ寝てるのわ」

「子供か」

「二日メンコのわ」

「そんな二日酔いみたいな症状、メンコにはねぇーよ」


 ともかく、イーガレスはもう少ししないと起きてこないらしいので、先に飯を食う。

 いいのかねぇ、館の当主の扱いがこんなぞんざいで。


「おはようからおやすみまでいい男、やぁ、君たちのパキスだよ☆」

「飯食う前から胃もたれ起こすようなことを言うんじゃねぇよ」


 朝っぱらからきらきらした表情で現れるパキス。

 一応、まだ日の出前だからな?

 早朝から作業を開始するってことで早起きしてるだけだから。

 つーか、ウーマロが騒いだせいで予定より早く起きてるから。

 だからせめてもうちょっと眠そうなダルそうな感じで出てこいよ。

 こっち、めっちゃローテンションなんだわ、この時間。


「ややっ? やややややっ!? ルシアではないか!」

「人違いだ」


 うーっわ、すっげぇさらっと嘘吐くじゃん。

 ルシア、『精霊の審判』って知らないのかな?


「こんな、日も昇る前からワタシに会いたくなったのか? しかし、……困ったな。ワタシにはもうすでに心に決めた女性がいるのだ。ルシアがどんなに想いを寄せてくれたとしても、ワタシはそれに応えてやることが出来ぬ……すまない。せめて、真実の愛を見つけたワタシを恨んでおくれ」

「おい、シュレインよ。そこの阿呆を裏庭の滅多に人が通らないジメッとした日陰に埋めてきてくれ」

「拙者が危うく埋められかけた場所でござるな!?」


 なぜかベッコが過剰に反応を示す。

 きっと、埋められ候補同士、シンパシーでも感じているのだろう。


 そこへ、寝ぼけ眼のタキスがやって来る。


「……むぁ…………おはよう、ございます……」

「テンションが低いぞ、タキス! 折角カタクチイワシ様がいらしているのだ! 声を張っていけ、声を!」


 いや、いいんだよ!

 タキスの方が普通の反応だから!

 日の出前のド早朝に起こされた時の人間の素直な反応ってこーゆー感じだから!


 この館の中でタキスだけが正解!


「お前らは、もうちょっとタキスを見習え」

「え? ……わーいわーい、可愛いのわ?」

「あ、そこだけ見習っちゃダメなヤツ」


 カニとかの「ここだけ食えないんだよなぁ」みたいなところだから、タキスのそれ。

 そこだけ捨てといてくれ。


 誰発信なんだろうな、この館のダジャレ遺伝子。


「わー! ピラフだー! いただきまーす!」

「切り替え早ぇよ、タキス! 全員座るまで待てよ!」

「うっわ、美味しい!」

「食べちゃってるし!」

「美味しい、美味しい、愛おしい! タキスです☆」

「あぁ、食べられないとこ出ちゃった」


 美味しい料理で目が覚めちゃったかぁ。

 なんならずっと眠たそうにしててくれてもいいのに。


 なんかもうこうなってくると、二日メンコでまだ寝てるイーガレスが無害で一番の常識人に思えてくるな。

 二日メンコとかいう謎の症状出てるのに。


「この一族、寝てる時だけ大人しいんだな」

「ふむ、否定は出来ぬな」


 ルシアがさらっと俺の隣に腰を下ろす。

 反対隣はマグダ。

 で、ギルベルタはルシアの向こうに座る――かと思いきや俺のヒザの上に座ってきた。


「空いていた、珍しく、特等席が」

「そこに座んの、マグダぐらいなんだけどなぁ」

「むふーと言う、私は、我が永遠のライバルマグダに倣って」


 倣っちゃったかぁ。

 さすがに食いにくいのでルシアの隣に移動してもらう。

 あとでなんか甘やかしてやるから。


「ほぅ、これは美味いな。なんという料理だ?」

「ブリトーだ。豚バラの燻製とチーズが、朝からどっしり胃にくるだろ?」

「うむ、確かに少々重たいが、この生地のお陰で食が進む。よい食感だ」


 もっちもっちとブリトーを咀嚼するルシア。

 両手で持ったブリトーにかじりついて、ほっぺたをぱんぱんにしてもちゅもちゅと口を動かしている。


「ハムスターみたいになってるぞ」

「では、ヒューイット家に紛れ込んでも違和感はないな」


 いや、違和感しかないから。

 遠目で見ても一瞬で見つけられるくらいに異彩を放ってるから。


「……ぱりぱり、サクサク。これはイケる」

「じゃがいものガレットだ。ジネットにいえば、このじゃがいもにうっすらコンソメ味を付けてくれるぞ」


 コンソメ味のポテトチップスみたいになりそうだ。

 絶対うまい。


「……それは、絶対に美味。帰ってすぐおねだりするべき」


 ジネットのことを考えて、マグダの表情が少し柔らかくなる。

 こりゃ、帰ったらくっつき虫になるな、きっと。


「……なるほどな」


 マグダを見ていると、反対隣からルシアの声が聞こえる。

 振り向けば、にやけ顔。


「大したパパぶりだ」

「どうした、まだ寝ぼけてんのか?」

「目はとっくに覚めておるわ」

「じゃあボケてんだな、可哀想に」


 俺の嫌味も、どこか嬉しそうに聞き流し、「マグマグが最初に頼るわけだ」とよく分からないことをほざく。

 もういい。

 お前に構うとなんか損する。

 勝手に言ってろ。


 そっぽを向くと、背後でルシアが「くくっ」と笑う。


「貴様といると、退屈という言葉を忘れてしまいそうだ」


 そんなことを言って、「少しエカテリーニと話をしてくる」と席を移動する。


 フットワークの軽い領主様だこと。

 この隙に、ギルベルタを隣に呼ぼうかとしたのだが、ギルベルタはルシアにピタリとくっついて移動していった。

 さすが、優秀。


「エカテリーニよ。本日の早朝、館に出向くという先触れの手紙を持ってきたぞ」


 先触れ遅っ!?

 先触れより先に着いてんじゃねぇよ。


 で、ルシアが退いて空いた席にアルシノエがやって来て腰を下ろす。


「びっくりのわ」


 ホットケーキを両手に持って、手掴みで左右交互にむさぼり食う令嬢。

 いや、お前の食い方にビックリだよ。カトラリーを使え。


「最近のルシア様は、とっても近付きやすくなったのわ」

「昔から仲良かったんだろ?」

「それでも、朝からウチに来るなんて、これまでなら想像できないことなのわ」


 そう言われてみれば、初めて三十五区に来た時なんか、ルシアに会うのに随分と苦労したんだっけ。

 下手すりゃ顔すら見られずに終わるところだったんだ。


 非常に残念な隠れた性癖を露呈させないためってのもあったが、兄弟のいない女領主は、警戒し過ぎるくらい警戒しておかなければいけなかったのだろう。


「きっと、カタクチイワシ様だけは特別なのわ」

「四十二区だと、誰に対してもあんな感じだぞ」

「じゃあ、四十二区が特別なのわ」


 最後の一口を頬張り、もぐもぐと咀嚼したあと、空っぽになった口を開けて、アルシノエは言う。


「それだけ感謝して、大切に思ってるのわ、きっと」


 ……まぁ、ルシアがいろいろ気を遣ってくれてるのは知ってるけどな。


「カタクチイワシ、このピラフは美味いな。レシピを寄越せ」


 まっ、同じくらい気を遣わされてるけどな。

 レシピが欲しけりゃ金を出せっつーの。




 その後、俺たちは連れ立って劇場建設予定地へと向かう。

 まぁ要するに、港だな。


「通行税、ありがとうございます!」

「いちいち言われずとも、我が区のために尽力してくれるそなたらからチマチマ金を取るつもりなどない」

「今後ずっと!? やったー!」

「尽力する時に限り、だ!」


「まったく、このタワケイワシが」とか、よく分からない暴言を吐きつつ、ルシアは背もたれに身を預ける。


 俺たちはルシアの馬車に便乗させてもらい港を目指している。

 ウーマロは走ると言ってたが、仕事前に疲れさせるのはナンセンスだとルシアが言って、強引に馬車に乗せている。


「その代わり、ベッコを走らせる」

「そう言われると思って真っ先に乗ってやったでござるよ!」


 ベッコのヤツ、一番出入り口に近い席にいの一番に座りやがって。

 おかげで、その後から乗るヤツ全員、ちょっと狭いな~って思いながら乗車したんだぞ。

 空気読め。面白い顔している暇があるなら。


「……え? ベッコの面白い顔は、暇つぶし?」

「違うでござるよ、マグダ氏!? 違うということが、少し考えれば分かるでござるよね!?」

「……ベッコのために頭を使えと?」

「そんな驚愕の表情されるようなことは言ってござらぬぞ、拙者!?」

「身の程を弁えるッスよ、ベッコ!」

「あぁ、常識人が減っていくでござるなぁ、このメンツが揃うと!」


 ウーマロを常識人枠とカウントしているらしいベッコ。

 馬鹿だなぁ、ウーマロは重症患者なんだぞ?

 レジーナの薬も効かないほどの末期だというのに。

 ホント、ベッコは馬鹿なんだから。


「ばーか」

「おぉう、なんの捻りもない暴言が飛び出したでござる……逆に新鮮でビックリしちゃったでござるよ」


 ベッコがドキドキ高鳴る胸を押さえている。


「貴様は胸なら男でも女でもなんでもいいのか、カタクチイワシ?」

「バカモノ。お乳は好きだが雄乳おちちに興味はない」

「さらりと聞き慣れない言葉を生み出すな、カタチチイワシ」


 誰がカタチチイワシだ!?

 両乳だ!


「……ウーマロ。体調はどう?」

「もうばっちりッスよ! 朝からマグダたんとご飯が食べられて、今日のオイラは絶好調ッス!」

「……そう。お仕事、頑張って」

「むはぁー! 今ので百人力ッス!」


 マグダのエールを受け、マジで今日中に劇場を完成させてしまいそうなほど昂ぶるウーマロ。

 無茶はするなよ?

 お前にやらせたい仕事はまだまだ山積みなんだからな。


「ウーマロが一人で暴走しないように、ベッコにも発破をかけておかないとなぁ……やれやれ」

「それはおそらく、心の中だけに留めておくべきセリフでござるよ、ヤシロ氏」

「ベッコ、頑張って死ね」

「『死ぬ気で頑張れ』の間違いでござろうな、きっと!?」


 あぁ、そうそう、そっちそっち。


「こうして見ておると、実にユニークであるな、そなたらは」


 向かいの席からルシアがこちらを眺めている。

 馬車の席順は昨夜と同様、窓側からウーマロ、俺、ベッコの順番で、ウーマロの真正面にはマグダが座っている。

 これが、ウーマロが密室でルシアやギルベルタと同席できるギリギリのラインらしい。


 網タイツ穿いてたらアウトだっただろうけど。


「ウーマロ。頑張って完成させたら、ルシアが網タイツ穿いて見せてくれるって」

「勝手なことを申すな、カタクチイワシ!」

「オイラ、直視は出来ないッス!」


 いや、お前は鏡に反射させても見られないだろうに。

 なに「直視でなきゃセーフ」みたいに見栄張ってんだ。


「馬鹿なことを言っておらずにさっさと準備をしろ。そろそろ現場に着くぞ」


 ぷいっと窓の方へ顔を向けるルシア。

 ……の、首筋をガン見するギルベルタ。


「赤い、少し。ルシア様の首と耳は」

「そのような報告はいらぬぞ、ギルベルタ!?」


 赤い顔でギルベルタに突っかかり、ちらっと視線が合うや否や「こっちを見るな、カタクチイワシ!」と包み紙を投げつけられた。


 お前もエカテリーニに駄菓子もらってたのかよ。

 で、しれっとバレないように食ってんじゃねぇよ。

 すんすん……この匂い、キャラメルか。


「少し休む、話しかけるな」


 と、腕を組んでまぶたを閉じるルシア。

 もうすぐ着くから準備しろって言ったのはどの口だよ。


「……ヤシロ」

「どした、マグダ?」

「……ルシアは、押せばイケるタイプ」

「そんなことはないぞ、マグマグ!?」


 話しかけなくても、お前の方から会話に加わってきてんじゃねぇかよ。


 とかなんとかやっているうちに、馬車が減速し、停車した。


「到着しましてございます」


 御者台から落ち着いた爺さんの声が聞こえ、ルシアが表情を引き締める。


「では、参るぞ」


 ルシアの言葉にギルベルタが立ち上がりドアを開ける。


「そして俺は、ドアの前に陣取る邪魔なベッコを蹴り落とす――」

「今すぐ退くでござるから押さないでくだされ!」

「え? 『押すなよ』?」

「そっちのニュアンスではでござらぬよ!?」


 俺に押される前に、ベッコが我先にと馬車から降りる。

 お前、フリ逃げかよぉ~。

 オチまで責任持てよ~。

 関西だったら夕飯抜きにされても文句言えない愚行だぞ。


「さっさと降りろ、カタクチイワシ。蹴り落とすぞ」

「俺は、ヒールに蹴られて喜ぶ趣味はねぇよ」


 ルシアのキックは痛そうだ。

 特に、鋭く尖ったヒールがな。


 蹴られる前に急いで馬車を降りると、そこにはすでにトルベック工務店とカワヤ工務店の大工たちが集結していた。


集尻しゅうけつ!」

「言葉は合ってるのに、なんか違って聞こえたでござるよ、今!?」


『強制翻訳魔法』はニュアンスを伝える細やかさがあるんだよな。

 大したもんだ、精霊神の魔法も。


「お前たち、ご苦労だったッス。もちろん準備は抜かりないッスよね」

「寝てた分際で……もちろん、抜かりない!」

「最初、一瞬本音が漏れてたッスよ、ヤンボルド!?」


 ウーマロに代わり、配下の大工たちを率いてきたヤンボルド。

 ウーマロが事細かに部材や道具をチェックしていくが、一切の抜かりはなかったようだ。

 やるな、ヤンボルド。


 で、その隣で、音に反応してくねくね動くオモチャみたいなけったいな動きをしているグーズーヤはどうしたんだ?

 寄生虫に脳を破壊でもされたのか?


「あはぁ……夜中の出発でふざけんなって思ってたけど、まさかデリアさんに見送ってもらえるなんて……しかも、朝ご飯のお弁当を手渡してもらえたし! あぁっ、僕もう死んでもいい!」

「じゃあ、マグダ」

「……うぃ」

「それぐらい幸せを感じているっていう比喩ですよ! 比喩は嘘じゃないってシスターも言ってたもん!」


 マグダの前からダッシュで逃げるグーズーヤ。

 甘いな。その程度の速度でマグダから逃げ切れると思うな!


「……それは残像」

「それ、こっちが攻撃した時にだけ言って!? 残像残しながら迫ってこないで、マグダたん!?」


 マグダに追いかけ回されて悲鳴を上げるグーズーヤ。――を、見て「あいつは今日、休憩抜きッス」と静かにジェラシーを滾らせるウーマロ。

 そうかそうか。じゃあ、結構進みそうだな、劇場建設。


「カワヤの連中もおはよう」

「めっちゃ早いっすね、びっくりするくらい……まぁ、これが四十二区のスピードなんでしょうけど……」


 とか、死んだ顔で言ってるカワヤ工務店棟梁のオマールだが、こんな無茶なスケジュールになったのは、お前んとこの領主のせいだからな?


「その前に、朗報」


 ヤンボルドが言い、グーズーヤがデカい包みを持って前に出てくる。


「実は、陽だまり亭の店長さんが『ぜひみなさんで』って、朝食を持たせてくれたんっすよ!」

「「「「ぅぉおおお! マジか!? 最近三十五区にかかりっきりだったからすっげぇー久しぶり!」」」」


 と、一糸乱れぬ動作でまったく同じことを口走る大工ども。

 お前ら、全員誰か同一人物のクローンかなんかなのか?

 揃い過ぎだ。

 一卵性双生児タレントでもそこまで揃えられないぞ、きっと。


 しかし、ジネットの弁当か……


「しまったな、マグダ。こっちがアタリだったみたいだ」


 さっき腹いっぱい食っちまったからなぁ。

 もうちょっと我慢すれば、ジネットの飯が食えたのか。

 残念だ。


「……少しくらいなら食べられる。きっと店長なら唐揚げを入れてくれているはず」

「じゃ、もらってくるか?」


 俺はもう入らねぇ。

 ちょっとピラフを食い過ぎた。


「……ん。もらってくる。……けど」


 一歩進んで振り返り、マグダは俺を見上げて言う。


「……マグダにとっては、どっちの料理も大当たり。今朝のご飯も美味しかった」


 言って、くるっと背を向けて弁当に並ぶ列に加わる。


 気を遣ってくれたんだろうな。

 でも、絶対ジネットの弁当の方が美味いから。

 出来立ての俺の料理より、冷えててもジネットの弁当の方が圧勝だ。


「……やっぱ、俺も一口もらってくるか」


 ウーマロの采配により、最後尾から先頭へと大胆な順番抜かしをしたマグダに続いて、俺も弁当を覗き込む。


 いつも見慣れた、ちょっとほっとするような、豪勢な大盛り弁当に思わず口元が緩む。

 何人前だっつーの、これ。


「ルシア、食えるか?」

「無論だ。いい感じに取り分けて持ってくるがよい」


 へいへい。


「甘えている、ルシア様は、優しくしてくれる友達のヤシロに」

「なっ、ち、違うぞ、ギルベルタ! 決してそのようなことは――えぇい、こっちを見るな、カタクチイワシ! こっちを見ずに持ってこい!」


 転けるっつーの。



 弁当はあっという間になくなり、さぁ仕事を始めようかという段階になった時、空が薄っすらと明るくなり始めた。







あとがき




自分で設定したスヌーズ機能に、軽く殺意を覚える朝☆

どうも、寝坊助・宮地です☆


あのですね、

早朝って、まぶたが開かないんですよ。


だからね、

スマホさんね


「スライドで停止」


とか、読めないんですってば!

なんかもう、ガラケー時代の

目を開けなくても指先の感覚で「ここだ!」ってボタン押せる感じが懐かしいです


あと、終話ボタンが欲しいです!

切実に!


アラームだろうが通話だろうが

何でもかんでも全部止められる終話ボタン(長押しで電源OFFボタン)

あれが欲しいです!


……スマホの画面の下の方に、終話ボタンだけつけられませんかね?

クリック感のちゃんとあるヤツで



ちなみに、

先日、珍しく電話がかかってきて、

もしかしたらスマホに変えて初かも? くらいに珍しい着信で

慌てて出ようと思って、

画面に表示されている緑色の通話マークを押したら……出れない!?


え、出れない!?Σ(゜Д゜;)

えっ、えっ、なに? 「上にスライド……」


電話「……ぷつっ」

宮地「まだ読んでる途中でしょうが!?」



……通話ボタンが欲しいです

ちゃんとクリック感のあるヤツで

画面の下の方につけてもらえませんかねぇ?



あと暇なときに「パカパカ」したいわぁー!

カムバック・ガラケー!

今こそ、時代はガラケーでしょう!?

求ム! iモード復活!

帰ってこい、LISMO!


コギャルのみなさん、

ストラップをジャラジャラ

アンテナをピカピカ

させちゃいましょうよ!

ねぇ!?



いましたねぇ、ストラップが本体の三倍くらいかさばってる女子

(^^;

それもう、ケータイが付属品じゃん、みたいな

「カバン小さいと携帯入んないんだよねぇ」って、入ってないのストラップだから!


みたいな時代。


90年代末

懐かしいですねぇ


ある地域では「ヒャッハー!」「あたたたっ!」「ひでぶっ!」とかやってたっぽいですが

私の周りは平和なもので、

街のいたるところにヤマンバが徘徊してました


 ……平和、か?(・_・;


ヤマンバギャルっていう人種がいまして

気になった方は画像検索してください



90年代末、

日本の未来がウォウウォウしていた時代

原宿竹下通りには加トちゃんのお店があって

原宿名物とか言って小石みたいに見える砂利チョコが売ってたんですよ


実家に持って帰って食べてたら


母「何食べてんの!?」


ってビックリしてましたっけ。

あれが正しい使い方、だったんでしょうねぇ、きっと

( ̄▽ ̄)



それより少し遡って90年代中頃

たまごっちが流行ってアムラーが街中を闊歩していた時代

あの頃はまだ毎週アニメとか見てました

最近の人は知らないかもしれませんけど、

名探偵コ〇ンとか忍たま乱〇郎とかポケットモ〇スターとかやってたんですy……


 今もやってんなぁ!?Σ(゜Д゜;)


あれ、もしかして、

探せば今でもアムラーとかヤマンバギャルとかいます?

加トちゃんのお店も!?


見た目は子供の名探偵なんて

私、主人公より年下だったのに、気付いたら追い越していて

何なら眠りの名探偵追い越して

お隣の天才博士も追い越して

鈴木財閥の相談役まで追い越して――いや、まだその辺は追い越してないですけども


そのうち追い越すことになるでしょう


いつまで高校生やってんだ!?


とか、まぁ、皆様一度はおっしゃったことがあるでしょう

やっぱり、学生という限られた時間を延々と生き続けていると突っ込まれやすいものです


高校生活は三年間しかないからこそ、輝かしいみたいなところもありますからね

……まぁ、私の知り合いは四年間やってましたけども

あぁ、一年半だったヤツもいましたっけねぇ

人生いろいろです☆


それはともかく

あの名探偵も、社会人でありさえすれば

そんな「いつまでも高校生」とか言われなかったはずなんですよ

だってほら、世界的大泥棒Ⅲ世なんて、年齢をネタにされないじゃないですか

……昭和~平成~令和を生き抜いてきたのはすごいですけどね

そういうネタはありましたっけね、本編でも



いや、つまりですね、

何が言いたいかというと、

あの見た目は子供の名探偵を参考に

完全無欠に大人な名探偵を生み出せば、

これはもうパクリとは言われないんじゃないかと!


ここをご覧の皆様が黙ってさえいれば、世間様にはバレません!

著作権取り締まり委員会の目も誤魔化せるはずです!

そんな組織があるのかどうか、知りませんけども!


大丈夫です、バレないようにやりますから

パクリとかやったことないですけど、

たぶんプロ級の腕前だと思いますし


まず主人公ですが

大人なので車に乗ります!(わぉ、大っ人~!)

しかも軽自動車やオートマじゃないです!

四駆!

山道も泥沼もがけ崩れした斜面だって走り抜けるパワフルな四輪駆動の自動車を乗りこなす大人な名探偵!

シンボルマークともいえる四輪駆動をその名に冠した主人公!

その名も――


四輪駆動しんいち!


ばばーーん!\(≧▽≦)/どやぁーー!


完っ璧にオリジナル!

完全無欠に独自性!

きっと誰もアノ名探偵をモデルにしたとは思わないでしょう!



そして、

主人公にはライバルがいまして、

東の四輪駆動と並び称される西の名探偵!

彼は工場を経営している経営者で(わぉわぉ、大っ人~!)

仕事の合間に探偵業を行っているんです

だって、大切ですもの、自分の工場、ファクトリーが!


そんな大切なファクトリーを冠する名前のライバルキャラ!

その名も――


ファクトリーへいじ!


オリジナリティー!\(≧▽≦)/どや! どやねーん!?



四輪駆動「おい、ファクトリ~」



どうです?

あの声で脳内再生されました?

これで完ぺ……


あぁっ!?

脳内再生されるということは元ネタがモロバレということなのでは!?

Σ(゜Д゜;)



ふぅむ……ヒット作を生み出すというのは、

かくも難しいものですなぁ


…………ぼちぼち、四十二区も月日の概念なくなるかもしれませんねぇ

すでに一日が24時間以上ありそうなくらいいろいろやらかしてますからねぇ、彼ら


時間の概念なんて、

現実世界に縛られた大人だけがとらわれる些細なことなのですよ!


移動速度が「電車でも走ってんのか!?」ってくらい速くても

「あれ、教会のヤギ耳少女前より若返ってない? っていうか、最初何歳の設定だったっけ?」とか

「ロレッタの弟妹、年齢設定ゆるゆるのまま来ちゃったから成人するタイミングとかぼちぼち破綻しそう!?」とか


そんなことはどーーーでもいいーーんですよーーーーー!

(」>□<)」


……齟齬を見つけたら「あはは、宮地さんってば☆」って、優しく見守ってくださいね☆



作者の暴走と、読者様の寛容

その二つで、作品は成り立つものなのですから☆

(・ω<☆)ね☆


頑張って書きますので、

なにとぞ温かい目で……なにとぞ!


次回もよろしくお願いいたします!

宮地拓海

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― 新着の感想 ―
>> ロレッタの弟妹、年齢設定ゆるゆるのまま来ちゃったから成人するタイミングとかぼちぼち破綻しそう!? ロレッタの妹が成人して大人の女性になったとしても、ロレッタはいつまでもマグダと同じくらいの低年齢…
皆、毎話可愛いなぁ(*´ー`*)
いつも楽しく読ませて頂いております。 ありがとうございます。 ああ、マグダさんの切れ味が凄い…。 ヤシロ氏とウーマロ氏とベッコ氏とマグダ氏 の4人揃った状態だとボケもツッコミも隙がないですねぇ。 新章…
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