403話 浴衣を見よう
「ちょっとウーマロと話をしたいから、先にウクリネスのところに行っといてくれ」
「え、お待ちしますよ?」
「劇場用の建材について話すだけだからすぐに済む。女子が多いとウーマロの口が重くなるからな」
「ふふ……、それは困ってしまいますね」
部屋を一通り見て回った後、ジネットにこの後の予定を告げる。
劇場は出来そうなのかとルシアに詰め寄られ、ガチガチに緊張しているウーマロをちらりと見て、ジネットが苦笑をこぼす。
「やかましいルシアを連れ出してくれると助かる。浴衣でも見せておけば大人しくなるだろう?」
「でも、ルシアさんはヤシロさんに浴衣を見繕ってほしいそうですよ」
「とはいえ、現状どんなものがあるのか見ておいて損はない」
「そうですね。分かりました。では、ウクリネスさんのお店でお待ちしています」
話がついたところでウーマロを呼びに行こうとした俺に、ジネットは控えめに告げる。
「早く来てくださいね」
これ、新婚家庭の玄関先で言われたら出社を取りやめるレベルだな。
「善処する」
「期待します」
なんだろう。
俺はそんなに放蕩なイメージでもあるのだろうか。
ジネットと話をつけ、ランドリー・ハイツを出る。
ジネットがこの後の予定を一同に説明し、大通りへ向かおうとした時、ルシアがこちらに向かってずんずんと大地を踏みしめやって来た。
「貴様に見繕うようにと命じたはずだが?」
「重要案件の前には、下調べしておくのが常識だろう。市場調査しておけ」
「劇場の話であれば私が同席するのが道理であろう」
「お前がいるとウーマロがポンコツになって話が進まないじゃねぇか」
「…………」
なんかメッチャ睨まれてる。
何が不服なんだよ。
別にお前を仲間外れにしているわけでもあるまいに。
むしろ、俺が仲間から外れる方だろうに。
「……まぁよい。仮設であるからな。本建設の際は、私もデザインに口を出させてもらうぞ」
「もちろんそのつもりだ」
というか、お前が主体で進めるべきだと思っている。
丸投げしやがったらジャストミートで打ち返してやる。
「仮設劇場を見て、イメージを膨らませるといい」
「ふむ。それもそうだな」
ゼロからイメージするのは難しい。
何か一つ取っ掛かりがあると一気に膨らんでいくのがイメージというものだ。
これまで四十二区と共同で起こした様々な改革も、そんな感じで叩き台を作ってからブラッシュアップしていったはずだ。
ルシアはしばし真面目な顔で考え込んだ後、すいっとアゴを上げて強気な笑みを浮かべた。
「既存のどの劇場にも見劣りしないものにしなければな」
随分と嬉しそうな顔だ。
こういう、勝ち気というか傲岸不遜というか、自信に満ち満ちている表情を浮かべたルシアは、悔しいかなとびきりの美人に見える。
まさに女帝。
最近はポンコツ化が著しくて忘れがちだけど、手強い領主のはずなんだよな、たしか……そんな記憶はすっかり薄れてしまっているけれども。
「『どの劇場にも』って、そんな何個もあるのか?」
俺がこの街に来た時、『BU』の内側で一個デカい劇場を見かけたが。
三十区の外門から入ってまっすぐ北上したから、十一区かその右隣の二十二区だった気がする。
「いくつかあるぞ。中央にある王立劇場は伝統もあり格式も高い素晴らしい劇場だ。外観を見ているだけで気分が高揚するような美しさがある」
へぇ~。
ルシアがそこまで手放しに褒めるとはな。
「今度連れて行ってくれ」
「行った途端不敬を働きそうな貴様など連れていけるか。あと物凄く高い」
さすが王立劇場。
チケット代も超一級らしい。
けっ! えっらそーに。
「どーせ大した芝居もしてないくせに」
「よし、貴様は王立劇場には近付くな。度が過ぎれば四十二区に累が及びかねん」
マジな目で睨まれた。
こいつ、王族相手だと一切シャレが通じなくなるんだよなぁ。
王族なんか、所詮ただの血筋でしかないのに。
どーせ、ここの王様もあれだろ?
冒険者に50ゴールドほど渡して「魔王倒してこい」とか無茶振りする感じだろ?
そのくせ、いつ行っても謁見できて、気安くしゃべりかけても「おぉ、よく戻った」って歓迎してくれる庶民派でさ、「お前が次のレベルになるにはこれくらいの経験値が必要だぞ」ってこっちの行動が手に取るように分かっているまじない師紛いの不思議ちゃんだろ?
「ふっ……、不思議ちゃんめ」
「言葉の意味は分からぬが、貴様は絶対に中央区へ近付くな」
へーへー。
頼まれても近付かねぇよ。
王族になんか関わったっていいこと何もないからな。
「他の区にもいくつかあるが、十一区の劇場はなかなか立派なものだぞ。外から来る者の目に留まりやすいので力を入れたのであろうがな」
あ、じゃあやっぱり俺が見たのって十一区の劇場なのか。
確かにあれはデカかった。
「さすがに、あんなデカいのは仮設じゃ無理だぞ」
「無論、そこまでのものは求めておらぬ。……が、超えなくてよいとも思ってはおらぬ。まぁ、ゆくゆくは、だな」
ゆくゆく越えようとしてんじゃねぇよ。
まぁ、船から降りて港にどどーんっとデッカい劇場が建ってたらかっこいいけども。
……いいな、それ。
凄まじいインパクトだ。
「よし、王立劇場とやらを超えてやろう」
「それは不敬になる。自重はしろ」
んだよ。
超えられたら超え返すくらいの気概を見せろよ、王族!
まったく、しょーもない。
京都の南座みたいな、デッカいヤツを作ってやろうか、それとも帝国劇場? 夢が膨らむなぁ……ふっふっふっ。
「キツネの棟梁よ、ほどほどにな?」
「そ、それは、もちろんッス。……王族にケンカを吹っかけるような真似、ヤシロさんじゃなきゃ恐ろしくてとても出来ないッスよ……」
俺も別に喧嘩するつもりはないっつーのに。
失敬な。
俺のことをどんな人間だと思っているのやら。
「仮設劇場はキツネの棟梁に任せる。そこの不敬イワシの暴走をうまくコントロールし、情報だけ引き抜いて活用してほしい。よいものを期待しているぞ」
「は、はいッス! ……ヤシロさんをコントロールとか、ちょっと不可能過ぎて検討する余地もないッスけど、出来る限りのことはやるッス」
「うむ。そなたの『出来る限り』であればなんら問題はない。信頼しておるぞ」
「は、はいッス!」
緊張しながらも、嬉しそうなウーマロ。
信頼と期待が嬉しいんだろうな。
悪徳貴族主導のネガキャンをも跳ね返した技術と信頼のトルベック工務店の名は伊達じゃない。
「では、頼む」
「はいッス!」
「二日ほどで建つか?」
「それは無理ッス!」
「では、頼む」
「頼まれちゃったッス!?」
最後にウーマロをからかって、上機嫌でジネットたちのもとへと向かったルシア。
嬉しそうな顔しやがって、あのいじめっ子。
さっさと浴衣でも選びに行ってこい。
「ウーマロ。あんま安請け合いすんなよ」
「してないッスよね、オイラ!?」
けどまぁ、やっちゃうんだろ? 二日ほどで……ぷぷっ。
「で、二日は冗談としても、なんとかなりそうなのか?」
「そこは任せてほしいッス! マグダたんの期待を裏切れないッスからね!」
すげぇ効果だな、マグダの網タイツ。
劇場、建っちゃうんだ。
「劇場に欲しい機能と、見落としがちな注意点をまとめておいたから、とりあえず目を通しておいてくれ」
エステラにせっつかれて、デザインとまでは言えないまでも、いろいろと描き起こした『設計図の素』的なものを作ってきている。
ウーマロなら、これだけでちゃんと理解してくれるだろう。
「んじゃ、俺はちょっと用事があるから」
「あれ? 劇場の打ち合わせするんじゃないんッスか?」
「まかせたZE☆」
「ヤシロさん、それ打ち合わせじゃなくて丸投げッス!」
ジネットたちが大通りへ向かい、姿が見えなくなったことを確認して、俺は反対方向――生花ギルドの方へと向かう。
潰れちゃったサプライズの仕込み直しをしに行かなければな。
ウーマロは、俺のメモを見て「ふむふむ……なるほど~ッス」とか、なんか感心してるから、あとはお任せで大丈夫だろう。
何かあったら聞きに来るだろうし。
ジネットやミリィに怪しまれないように、俺は急ぎ足で生花ギルドへと向かい、こっそりミリィの浴衣を縫っているギルド長の婆さんに面会した。
サプライズは事情があってバレてしまったことを告げると「あら、そうなの。残念ねぇ」とさほど気にしている様子もなく言う婆さん。
サプライズを潰してでも、ミリィが婆さんの浴衣を着たがってるってことの方が嬉しいっぽいな、この様子じゃ。
そんな婆さんに、新たなサプライズの種を授けておく。
それが、プレゼントの上乗せだ。
浴衣がもらえると思っているミリィに、浴衣にプラスワンで贈り物をする。
単純だが、これが結構驚かれるし、高確率で喜ばれる。
「テントウムシ柄の巾着を一緒にプレゼントしてみたらどうだ?」
「まぁ、それはとっても素敵ね。……うふふ。今度はちゃんとサプライズできるかしら?」
「ミリィには『巾着が欲しいなら、浴衣のガラを確認してから買いに行こう』とでも言っておくよ」
「あらあら、さすがヤシロちゃんね」
サプライズを潰さずに購入を待たせる言い方なんざ、いくらでもある。
「じゃこれ、巾着の型紙と作り方のコツ」
「まぁまぁ、至れり尽くせりね」
型紙とメモを渡し、俺は急いで大通りを目指した。
サプライズのことは、あとでジネットに教えておいてやろう。
ミリィとの買い物が終わった後にでもな。
「いらっしゃいませ、ヤシロちゃん」
「なんか、最近よく見る顔だな」
ウクリネスの店に入ると、全開の笑顔で出迎えられた。
「ありがたいことに、御縁があるみたいねぇ。嬉しいわぁ」
今日のウクリネスは、エプロンの下に運命の赤い糸Tシャツを着ているっぽい。
……おぉう。信じて、求めて、すがっちゃってる感じか? これを着れば恋愛運アップとか盲信しちゃってる系か?
「あ、違うわよ。このTシャツは、あくまでコンテストで優秀な成績を収めたから宣伝として着ているんです。他意はないんですよ、おほほ」
今、このオバちゃんに『精霊の審判』をかけたらどうなるのか……試してみたい。
「ヤシロさん」
ぱっと、店の奥からジネットが顔を出す。
大きな花が印象的な白い浴衣を着て。
「おぉっ! 似合うな」
「ぁ、ありがとうございます」
褒めたら急にわたわたと挙動不審になり、どこに持っていったもんかと悩んだらしい両手を後ろに回してモジモジさせている。
後ろ手を組むって、幼馴染女子にやってほしいポーズの筆頭だよなぁ。
「それにしたのか?」
「いえ。こちらはガラを見るために試着させていただいたものでして」
「今年は自作するということでしたので、いろいろ生地を見ていただいているんですよ」
ウクリネスは、一応ジネットたち用にと作っていたらしいが、特にこだわった工夫もないようで、自分で作るならそれを着ればいいというスタンスだそうだ。
「その代わり、猛暑期の水着は私の作ったものを着ていただきますけどね!」
そこは譲れないらしい。
譲る気もないらしい。
いいぞ、もっとやれ。
ウクリネス発信の方が、俺が言うよりみんな素直に着てくれるから。
「でも、もう作ったんだろ?」
「それはお店に並べればいいだけですから」
まぁ、そうだな。
オーダーメイドしたわけじゃないんだから、誰でも着られるだろう。
「……ジネット用の浴衣、胸元の布余らないか?」
「そこはほら、詰め物も出来ますし」
やっぱり、ちょっと手を加えていたっぽい。
ジネットは特別だからなぁ。
「……呼ばれた気がした」
ジネットと話をしていると、マグダが浴衣姿で出てきた。
藤色の、なんとも落ち着いた色合いの浴衣だ。
「おぉ、大人っぽいな、マグダ」
「……来年は、成人ですから」
そうか、もうそんな年齢になるのか。
……なんでだろう。一切成長しているように見えないのは。
身長とか胸元とか。
「……来年のカウントダウンとともに『ばぃん』と来る可能性も」
あるといいな、その可能性。
今度一緒に精霊神にお祈りしに行こうぜ☆
「お兄ちゃん見てです! この浴衣、生地がめっちゃ可愛いですよ!」
「ん……えっ!? ウソだろ!? ちりめん!?」
飛び出してきたロレッタを見て、俺は目を見張った。
ロレッタの着ている浴衣には『しぼ』と呼ばれる細かな凹凸がキレイに浮かんでいて、見た目に軽やか、色味も鮮やかに涼しげな印象を見る者に与えている。
「以前ヤシロちゃんにこういうものがあると伺いましたから」
確かに、前回の祭りの時にちりめん生地がないのを悔やみ、いつか完成させたいなとは思っていたが。
で、いつだったかウクリネスに「こんな作り方で生地を作ると面白いものが出来るぞ」とちりめんの折り方をさらっと伝えたことがあったけども。
「俺は数年がかりで研究して、いつか物に出来ればいいなって思って情報提供したんだぞ」
「服飾ギルドの友人に話したらね、物凄く興味を持っちゃって、つい先日、ようやく納得がいくものが出来たって持ってきてくれたんですよ」
他にもいたのか、ウクリネス級のお仕事マニアが。
「そいつも服屋なのか?」
「いいえ。その子は織物専門の子でね……あ、『子』って言っても、私と同じ歳なんですけどね」
全然『子』じゃねぇじゃねぇか!?
「幼馴染なもので、ついいつまでも昔のまま呼んじゃうんですよねぇ」
それは分からんでもないが……『精霊の審判』には気を付けろよ。
ちりめんは、糸を撚らずに束にした『無撚糸』と、逆に4000~5000回ほど撚った『強撚糸』の組み合わせであの独特の凹凸『しぼ』を生み出す織物だ。
生糸を4000回も撚るなんて、機械がなきゃ面倒でやってられないだろうと思ったのだが……やってのけちまったか。
「そいつも獣人族か?」
「もちろんです。根気と根性と性根の強い女性ですよ」
わぁ、『根』が強い。
『根』の圧がすごい。
「あと、染め物を専門としている友人もいるんですが、友禅染にハマってしまって、大変なんですよ」
服飾ギルドには、布を染める染め物職人も多く在籍しているらしく、四十二区の川の支流で染め物を行っているらしい。
……支流なんてあったんだ。
俺が教えたのは簡単なもので、米から作ったデンプン糊で防染して模様を描く『糸目染め』、蝋で防染する『蝋纈染め』、あえて防染しないで輪郭の滲んだ柔らかい風合いを表現できる『無線書き』、糸で縛って染める『絞り染め』あたりだ。
京友禅のようなきらびやかさや、加賀友禅のような上品さではなく、シンプルながらも粋を感じる江戸友禅に近い仕上がりになるような知識を与えておいた。
「こだわりが行き着くところまで行ってしまって、こんなに華やかな染め物をしてきたんですよ」
「京友禅!?」
ウクリネスが取り出したのは、艶やかで華やかで、それでいてどこか静謐さと歴史の重みのようなものを感じさせる実に豪奢な反物だった。
これ、高級デパートに置いておくと中流家庭以下がその近辺に寄ってこなくなるレベルで高そうな一品だぞ。
伝統とお金のある名家のお客様以外お断りっぽい雰囲気があるな。
いや、伝統的な京友禅や加賀友禅は教えてないから、きっと似て非なるものなんだろうけれど……似てたらもうそれでいいじゃん。
「見事としか言いようがないな」
「まぁ、きっと彼女も喜ぶわ」
「その染め物職人も知り合いなのか?」
「服飾ギルドの子たちはみんな知り合いですけど、これを染めた職人は私の幼馴染ですよ」
「またか!?」
どうなってんだ、その幼馴染チーム!?
ウクリネスレベルの達人が三人も集まってたのか!?
むしろ逆に、その三人が一緒に育ってきたからみんなこんなレベルになっちゃったのか!?
「とんでもない幼馴染トリオだな」
「まぁ、嬉しい褒め言葉だわ」
知識を与えれば、どこまでも勝手に成長していく。
これはある種の脅威と言っても過言ではない。
「今でも仲良くしてんのか?」
「私は、織物職人の子とも染め物職人の子とも仲良しなんですけれど……織物職人の子と染め物職人の子は微妙と言いますか……」
友達の友達みたいな微妙な感じなんだね!?
いや、いたけども、俺にも!
ダチの友達で紹介されたけど、ダチがいない空間に二人きりにされると何話していいか分からなくなる系の知り合い!
「俺、ギターで音楽業界変えてやるから」とか言ってたっけなぁ。
……変わらなかったなぁ、音楽業界。
あいつ、今何やってんのなぁ?
「……ヤシロちゃん?」
「悪い。昔のことを思い出したら、ちょっと涙が……」
「まぁ。故郷を思い出すほど喜んでもらえたんですか? だとしたら嬉しいわ」
俺が故郷を思い出して涙ぐんだと勘違いしているウクリネス。
だが残念だな。この涙はそんなキレイなものじゃないんだ……世知辛ぇなぁ。
とはいえ、そんな昔のことはどうでもよくて、今目の前にある反物や浴衣をみやる。
目を見張ると言うか、思わず目を奪われるほどの出来栄えだ。
「ホント、すごいもんが出来ちまったなぁ」
「そうですね」
と、ジネットが身に纏っている浴衣を見つめて言う。
「素敵なガラが多くて、選ぶのに苦労してしまいますね」
困ると言いながら顔はにこにこ、足取りも軽やかだ。
嬉しい悲鳴というやつか?
そんなジネットを見て、ウクリネスは満足気に微笑んでいる。
はは~ん、さてはお前、今回は浴衣を自作させる気満々だったな。
一応、標準レベルの浴衣は用意しつつも、本心では新たに誕生した織物、染め物を堪能してほしかったんだろ?
だって、今まで俺に一言も言ってこなかったじゃん。
「出来ましたよ~」とも、「ちょっとご相談が~」とも、なんにも言ってきていない。
つまり、今日、まさにこの日に驚かせたかったわけだ。
祭りの準備がにわかに活気づき始めて、今か今かと待ち構えていたわけか。
してやったりな顔しちゃってまぁ。
「そんじゃ、服飾ギルドの自信作の数々、俺も見せてもらおうかな」
「はい。自信作揃いでどれをお勧めすればいいのか悩んでしまうくらいなんですよ。ヤシロちゃんのお眼鏡にかなうものがあればいいんですけれど」
謙遜、ここに極まれりだな。
鼻の穴広がってんぞ。自信が顔中に溢れ出過ぎだろ。
「これなんていかがですか? すごくいい色に染め上がってると思うんですけれどね」
「お勧めあるんじゃねぇかよ!?」
それからしばらく、にっこにこ顔のウクリネスの売り込みを聞きつつ、どの布が自分に合うかと賑やかに話し合う女子たちに囲まれて布選びを続けた。
「で、なんでルシアは浴衣着てないんだ?」
陽だまり亭一同が浴衣を着てはしゃぐ傍ら、普段着のままのルシア。
まぁ、普段着っつっても、貴族のお出かけ用衣装だからかなりきらびやかなんだけども。
「貴様に見繕えと命じたはずだが、もう忘れたのか?」
「試しに着るものくらい好みで選んどけよ」
そうしたら、好みの傾向が分かったのに。
ノーヒントで見立てるとか、結構しんどいんだぞ。
「楽しみにしている、ルシア様は。初めての浴衣を選んでもらうのを、友達のヤシロに」
「ち、違うぞ! 領主として、おかしくないものを身に纏わねばならぬのだ、私は。知識のない分野は、その道の者に任せるというのが貴族のあり方だからだ。勘違いするでないぞ、カタクチイワシ!」
「お前は日に日にツンデレ化してる気がするな」
ビシッと人差し指を突きつけてんじゃねぇよ。
反対の手を腰に当てて偉そうに胸を反らすな。
なんか懐かしさすら感じるわ、そのテンプレツンデレ。
「大人の魅力を引き立たせるなら、黒か藤色、白もいいな」
ウクリネスの用意した反物はしっかりとした作りで軽やかに見えつつも重厚感があり、下着が透けてしまうようなぺらっぺらな生地ではない。
なので、白い浴衣でも問題なくキレイに着られるだろう。
「ただ、ルシアくらい顔がはっきりしていると真紅の浴衣も似合いそうだな」
「顔がはっきりとはどういう意味だ? 事と次第によっては承知せぬぞ、カタクチイワシ」
「端正な顔立ちだって褒め言葉だよ」
「……ぅみゅぅ」
「照れ方、分かりやすっ!?」
顔がもう真紅じゃねぇか。
赤い浴衣はやめておこう。金魚みたいになっちまう。
「お、これいいな」
ふと目に留まった反物を広げてみれば、思わず息が漏れるほど美しく染め上がっていた。
白を基調とし、薄く淡くグラデーションしながら黒に変わっていく。
この布を使えば、全体的に白で、足元だけ黒い浴衣が作れそうだ。
正面から見て左下だけが黒ってのは、スッキリしつつも目を引くデザインとして様々なバリエーションが生み出されている。
斜めのラインが美しさを強調するんだよなぁ。
「この色合いで、紫の花が描かれているものがあればよかったんだが……」
「ありますよ」
「あるのかよ!?」
すっと、背後から一巻の反物が差し出される。
広げてみれば、俺の注文通り――いや、イメージ通りのガラがそこにあった。
「これ綺麗だな」
「そうでしょう。でも、生地が綺麗過ぎて着る人を選ぶというか、服に負けてしまうというか……どなたにもお勧めできなかったんですが、ルシアさんなら問題ないですね」
「ルシアが服に負けることはねぇよ。きれいなものを着せりゃ、その分引き立つようなタイプの顔だ、あれは」
「このようなキレイな布にも負けない美貌、と褒めている、友達のヤシロは」
「ぅううゎ分かっておるから、いちいち改めて報告せずともよい!」
ギルベルタに背を向けるルシア。
わぁ、珍しい光景。
赤さで反物超えてきたな。
「じゃあ、ウクリネス。これでルシアの浴衣を作ってやってくれ」
「承知しました。腕によりをかけて、最高の一品を縫い上げておみせしましょう」
高そうな反物を抱きしめ、ウクリネスがルシアのもとへと歩み寄る。
サイズの確認か、と思って視線で追うと――
「お祭り当日に、ヤシロちゃんがドキドキしちゃうような素敵な浴衣を期待していてくださいね」
――なんて、素っ頓狂なことを耳打ちしていた。
んばっ! と、ウクリネスの顔を見たルシアは、何かを言いかけて、やめて、口を開きかけて……代金を支払った。
なんも反論できなかったのかよ。
しかし、俺がどきどきするような浴衣ねぇ。
ウクリネスは、浴衣を持ち込んだのが俺だと知っているわけで、浴衣ってだけで俺がどきどきなんてしないと知っているはずだから…………はっ、もしかして!?
「ついに来るか……超ミニ浴衣を超える、丸出し浴衣が!」
「来ませんよ。懺悔してください」
こちらの反物選びが終わるのを待っていたかのようなタイミングで俺に懺悔を言い渡すジネット。
そんなスキマ時間に懺悔とか挟み込んでこなくていいからな?
俺、時間持て余しても「じゃあ、この空き時間に懺悔しといちゃお☆」とか思ったことないから。
「ギルベルタさんの浴衣も選んであげてくださいね」
「俺が選んでいいのか?」
「嬉しい思う、選んでもらえると、友達のヤシロに」
「そうか。じゃあ、俺の趣味で選ばせてもらうか」
「……ヤシロの趣味は危険」
「お兄ちゃんが趣味に爆走するのはほぼ諦めかけているですけど、やっていい相手とそうじゃない相手がいるですよ!」
と、ギルベルタを背に守るように俺の前に立ちはだかるマグダとロレッタ。
『俺の趣味』が、完全に卑猥なものと解釈されてるな、これ。
「俺が好きなガラって意味だよ」
「ごめんなさいね、ヤシロちゃん。……おっぱいガラは置いてないんですよ」
「なんでねぇんだよ!? あ、間違えた。そんなガラがいいって言ってないから!」
「……残念。本音が先にこぼれていた」
「本当に間違えていたのかどうかも疑わしいですよ、お兄ちゃん!?」
いや、おっぱいガラなんて想像もしてなかったし、欲しいとか思ってなかったけれども、あるんだったら欲しいなぁって思った矢先に「ない」とか言うからちょっとショックが大きかっただけだよ。
ただ、そうだな……
「もしおっぱいガラを作る気になったら、俺、染め物職人に弟子入りしちゃうかも」
「そんなに着色したいですか、おっぱい!?」
「……したいのが、ヤシロという男」
「ヤシロさん」
「ヤーくん」
「「懺悔してください」」
そんな、二人で声を揃えんでも……
あと、さっき聞き忘れたんだけど、ロレッタ、『やっていい相手』って誰? 教えといて、メモ取るから。……わぁ、ジネットがこっち見てる。メモしまっとこ。
「ミリィ、随分おとなしいけど、楽しんでるか?」
「ぅ、ぅん、大丈夫。その話に入りたくないな、って思って黙ってただけだから」
控えめな口調で辛辣☆
俺が傷付かないか、細心の注意を払いながらも、自分の主張はちゃんとする。
ミリィも大きく成長したんだなぁ……
「ジネット、ミリィが大人になってる」
「困らせないであげてくださいね」
優しく釘を刺される。
困らせたりなどするものか。むしろ俺はミリィを救いたい派だ!
しかしながら。
これだけみんなが布地を見てはしゃいでいるのに、ミリィは第三者的なポジションにいる。
自分の浴衣はギルド長の婆さんが作ってくれるから、好きなガラを選ぶ必要がないわけだ。
けど、それはちょっと寂しいだろう。
「ミリィも手伝ってくれるか? ギルベルタが一番可愛く見える浴衣選び」
「ぅん! ……ぁ、みりぃが手伝っちゃっても平気、ぎるべるたちゃん?」
「もちろんと宣言する、私は。むしろ嬉しい思う、かわYOエンジェルミリィの助言は」
「また変な二つ名付いちゃってるぅ!」
ギルベルタに飛びかかり、きゃーきゃー騒ぐちびっこ……もとい、ミリィ。
カンパニュラがはしゃぐ二人を微笑ましそうな目で見守っている。
……お前ら、年齢逆じゃね?
「カンパニュラも意見を聞かせてくれ」
「はい。微力ながらお手伝いさせていただきますね、ギルベルタ姉様」
「お願いする、私は。未来の領主様のカンパニュラに」
そうして、反物を広げ始めるちびっこ三人衆。
……うん、もうどっからどう見てもちびっこ三人衆なんだもん、だって。
「これで、浴衣が決まっているミリィさんやカンパニュラさんも反物選びに参加できますね」
ぽそりと、隣で呟く声がする。
顔を見れば、「さすがです」なんて思ってそうな笑顔がこちらを見ていた。
「でも、その親切のために変な浴衣のガラが欲しいだなんて言ってはいけませんよ」
そして、眉根を寄せて叱ってくる。
そんな怒り顔もすぐに霧散して、またいつもの笑顔が俺を見上げ「では、わたしたちも一緒に選びましょう」とギルベルタの浴衣選びの輪に俺をいざなう。
ジネットの表情も、ころころとよく変わる。
そういうところが、まだまだ子供っぽかったりもするんだよな、ジネットは。
裏表なく、素直な感情をすぐ表情に出す分かりやすい四人に囲まれて、ギルベルタの浴衣を選んでいく。
お子様だから赤い浴衣でも似合いそうだが、ギルベルタは肌の色が濃いからもっと明るい色の方が似合うかもしれない。
白――は、ルシアが着るから、水色とか、ピンクとか……
「お、この黄色はいい色だな」
すごく明るいレモン色の反物を広げると、そこには大きな桃色の花が描かれていた。
うん、これはいいな。
「これ、似合いそうじゃないか」
「ゎあ、かわいい! ぎるべるたちゃん、絶対似合うと思う」
「下地が明るいのに桃色の花の絵柄が落ち着いた雰囲気で、しっかりとした頼れる大人でありながらもとても可愛らしいギルベルタ姉様を体現するような素敵な生地ですね」
「嬉しい! もらって帰る、カンパニュラを」
褒められて嬉しかったようだ。
もしかして、「大人」な部分を褒められたかったりしたのか?
俺、その辺全然ノータッチだったわぁ。
「ルシアさんの浴衣との相性もよさそうですね」
二つの反物を並べて、ジネットがうんうんっと頷いている。
「では、こちらで浴衣を作っていただきましょうか?」
「お願いしたい、私は。衣類の女神に愛されし服職人ウクリネスに」
また大層な二つ名が付いたもんだな。
衣類の女神ってなんだよ?
「私は世界の衣類を守る者です」って?
タンスにゴンか、お前は。
「では、次はわたしたちの浴衣をお願いしますね」
「いや、お前らは自分で選びたいんじゃないのか?」
「参考までに、意見をお聞きしたいと思いまして」
まぁ、参考までになら、いくらでも口出すけどさ。
「カンパニュラさんも、生地がまだ決まってないようでしたら、こういうのがいいとルピナスさんにお願いしてみるのもいいと思いますよ」
「そうですね。母様と生地を選びに行く機会があるなら、おねだりしてみます」
言って、山と積まれた反物に視線を向けるカンパニュラ。
やっぱ、子供から大人まで、何歳でも女子は服選びが好きなんだな。
一歩引きつつも気になった部分には口を出し、俺たちは心ゆくまで浴衣の生地を選んだ。
ジネットたちの浴衣の生地を選び終わり、じゃあ買って帰るかと腰を上げた時。
「では、今度はヤシロさんの生地ですね」
とジネットが手を打った。
……ちょっと、エステラに店番任せ過ぎかもな。
「エステラに土産でも買ってってやるか」
「あっ、そうですね。のんびりし過ぎてしまいましたか」
「……デリアがいるから大丈夫」
「じゃあ、デリアさんにも何かお礼をするです!」
「それはきっと、お二人とも喜ばれますよ」
つーわけで、今陽だまり亭で店番をしてくれているエステラとデリアにお礼の品を送ることになった。
「ガマ口はもう持ってんだよな、エステラ」
巾着は……ミリィへのサプライズだから話題に出したくないし……
「何かあいつらが持っていない新しい物はないか…………はっ!? ふんどし!」
そうだ!
今朝話題に出たふんどしがあるじゃないか!
よし、こうなっては仕方ない!
俺が直々に手縫いでエステラとデリアに相応しいふんどしをプレゼントしてやろう!
「ウクリネス! スケスケのレースか黒のシルクはあるか!?」
「『ふんどし』は下着なんですか?」
「なぜ分かった!?」
「いや、分かるですよ、お兄ちゃん!?」
「……ヤシロの『好き』が集約されていた」
「…………っ」
「ジネット姉様? どうかされましたか?」
「……店長が口ごもった理由は、今日店長の穿いている――」
「マグダさん。悪いお口はチャックですよ!」
「……むぅ」
ジネットに叱られ、素直にお口チャックするマグダ。
あぁ、そうか。
今日はスケスケの日か。
今夜はちょっとしたパーティーでも開催しようかな♪
「えっとですね、ウクリネスさん。ふんどしというのは、ヤシロさんの故郷に伝わる、浴衣の時に着用する見えても大丈夫な下着なのだそうです」
話を変えるためか、ジネットが進んで下着の話をウクリネスに振っている。
けどな、ジネット。あんまりでかい声で「見えてもいい下着」とか「ふんどし」とか言わない方がいいぞ。
お前、キャラじゃないから。
「どういったものなのか、聞かせていただけますか?」
ウクリネスの目に「浴衣の時に下着は着けないと言ったのはあなたでは?」という疑問が色濃く表れている。
まぁ、まて。
決して嘘ではないのだ。
「そーゆー場合もある」というだけでな。
「野郎は走る時にこんな感じだからな」
と、大股開きでどったばた走る様を演じてみせれば、「それでは裾がめくれて大変なことになりますね」とウクリネスは納得の声を上げる。
「すげぇ簡単な構造なんだ。長い布に紐を取り付けただけのな」
と、近場にあった布と紐を重ねてふんどしの構造を説明する。
「これ……が、下着なのですか?」
テーブルに広げられた『T』字の布。
その場にいるものはそれが到底下着には見えない様子だ。
「ちょっと試しに身に着けてもらえませんか?」
「だ、ダメですよ、ウクリネスさん!?」
俺より先に、ジネットが却下をくだす。
身に着けて「こんな感じだ」って見せられても困るということだろう。
「じゃあ、身代わりにウーマロかベッコを――」
「お二人でもダメです!」
ジネットの顔がみるみる真っ赤に染まっていく。
ミリィも、両手で顔を隠している。
……ルシア。
真顔で人の下腹部に視線送るのやめてくれる?
せめて照れるとかしてくれないかな?
「代わりにやるか、私が、モデルを?」
「えっと……ふんどしは、今のところヤシロさんしか着け方を知りませんので、ギルベルタさんにお願いするわけには……」
「じゃあ、ギルベルタ。下はすっぽんぽんで☆」とか、言えるわけもないからな。
子供に見えてもギルベルタは成人女性。
それも、エステラやジネットよりも年上なのだ。
「お兄ちゃん」
「立候補か、ロレッタ?」
「違うですよ!? ちょうどいいところにハム摩呂がいたので捕まえてきたです」
「突然の、拉致監禁やー!」
なんでか嬉しそうに両手を上げて笑顔を振りまくハム摩呂。
嬉しいのかよ。
「この子なら、多少辱めにあっても大丈夫です」
「長女がもっと恥ずかしいことしてるからか?」
「あたし、人に恥ずべき行いなんかしてないですよ!? ……少ししか」
小声で保険をかけるな。
身に覚えがあるらしいな、どうやら。
いつか問い質さねば。
「ちょうど短パンか」
「いる~?」
「いらん! ちゃんと穿いてろ!」
ガキンチョの短パンに興味はありません!
この中に、紐パン、スケスケ、Tバックを穿いている者がいたら俺のところまで来なさい!
以上!
……おかしい。ジネットがやって来ない。
あくまで秘匿するつもりか。
「じゃあまぁ、ハム摩呂に着けさせるとして……ウクリネス、布を借りていいか?」
「はい。そちらの布でしたらお好きに使ってください」
「ついでに、この布に紐を縫い付けておいてくれ、しっかりと」
「はい、すぐに」
言うが早いか、ウクリネスは物凄いスピードでふんどしを縫い始めた。
速ぇ!?
「ヤバ、つい見入ちゃった」
「相変わらず鮮やかですね」
「お手本にさせていただくには、私ではまだまだ精進が足りないようです」
カンパニュラ的には、ウクリネスに習うレベルにも達していないという認識らしい。
「うふふ。タダの一つ覚えですよ。私にはこれしかありませんから」
謙遜でもない風な口ぶりで、ウクリネスが完成したふんどしを手渡してくる。
もう出来ちまった。
「本当は、待っている間に別のふんどしの締め方を教えようと思ってたんだが……」
そんな暇、なかったなぁ。
「まぁいい。とりあえず、最初は布一枚で出来る『六尺褌』の縛り方からだ」
六尺褌は、細長い布一枚で出来るふんどしだ。
ふんどしを肩にかけて体の前に垂らし、股間の下を通して背中側へ持っていく。
その時布をねじりながら細くして、尻の中心を通って腰、ぐるっと前面を回って尻の上へと持ってくる。
すると、そこにさっき尻から腰へ持っていった布があるので、下からくぐらせるように布を絡めて「ぐい!」っと引き上げる。
引き上げた時にハム摩呂が「ほぅ!」と声を上げたが、引き締まっていい感じだろう?
ふんどしはやはりぎゅっと引き締めねばな。
締め上げた後、布の先端を腰のところに挟んで、輪っかを作るように仮止めしておく。
で、最初肩にかけておいた前面の布をもう一度股間の下を通してねじりながら背面へ持っていき、尻を通るねじった部分へ巻きつけつつ締め上げて、先ほどの仮止めの輪っかへ通して、あとは余った布を背面の『T』字に絡ませてやれば――
「ほい、完成だ」
「お尻が丸出しですね!?」
今は短パンの上からだが、これを直に身に着けるとお尻が丸出しになる。
完成形を見たジネットが顔を真っ赤にして「……これは、無理です」と呟いていた。
「六尺褌は布一枚で出来るんだが、締めるのに技術がいるのと、見た目がちょっと刺激的なんだ。そこで、さっきウクリネスに作ってもらった『越中褌』の出番ってわけだ」
ハム摩呂の六尺褌を外し、今度は越中褌を締めていく。
「これは簡単で、背中側に布を垂らして、紐を腰の前で結んで、垂れてる布を股の下から前に持ってきて、縛った紐と腹の間を通して、余った布を前に垂らせば――ほい、完成だ」
「こちらは、お尻も隠れて前面にも布があるので恥ずかしくはないかもしれませんね」
と、カンパニュラが評する。
別の人にそう言われると「なんとなくそうかも?」と思ってしまいがちなジネット。
越中褌は恥ずかしくないものとして認識したことだろう。
まさに狙い通り!
そのために、わざわざ先に六尺褌をお披露目したのだ!
お尻丸出しじゃないから恥ずかしくないよね!
じゃあ、ふんどしを流行らせようぜ☆
量産されちゃえ、ふんどし女子!
「いや、お兄ちゃんが物凄くわくわくしてるですから、なかなかに恥ずかしいもののはずです、ふんどし!」
「……ヤシロの目がキラキラしている」
「多く隠れると言っても、やはり下着ですからね……お見せできるものではありませんね」
見えてもいいヤツなのに!
「くぅ……!」
俺が悔し涙をぽろりしている時、ウクリネスが興味深そうにハム摩呂を持ち上げて観察している。
おい、セクハラだろ、これもう。
「いいですね。簡単に身に着けられてシルエットもスッキリしてます」
「着物に合う下着として長年使われてたからな、俺の故郷では」
俺は使ったことないけどな。
「試しにいくつか作ってみますので、女性のみなさん、試してくださいませんか?」
ウクリネスからの依頼に顔を見合わせる女子たち。
そして、女子を代表してジネットが返答する。
「……ヤシロさんのいないところで、でしたら」
除外されたのわ!?
まぁ、いいさ。
使ってみて「これはイケる!」と判断がくだされれば、お祭りの日にはふんどし女子がわんさかだ☆
「しょうがない。俺は先に帰ってるから、みんなゆっくりと試着してくるといいぞ☆」
「めっちゃキラキラしい顔をしてるですね、お兄ちゃん!?」
「……未来が楽しみで仕方ないという表情」
「も、もぅ……ヤシロさんっ。紳士でいてくださいね」
大丈夫!
妄想しかしないから☆
「あ、ウクリネス。これ、男物の浴衣の作り方。女性用とはちょっと違うからその辺注意して、俺用に一着頼む。生地はあの辺の中から俺に似合いそうなヤツで」
俺は特にこだわりがないのでプロにお任せで十分だ。
ジネットが「そうでした! ヤシロさんの浴衣を選ばなくては!」って顔をしていたから、きっとウクリネスと一緒に生地を選んでくれるのだろう。
任せておこう。
自分が好きな色ガラより、他人が俺に合うと思ったものの方が見栄えはするだろうし。
というわけで、自分の浴衣とふんどしの試着を女子たちに任せ、俺は一人で一足先に陽だまり亭へ戻ることになった。
……あ、エステラとデリアへのお礼考えてない。
じゃあ、まぁ帰ってから何か作るか。
……やっぱ巾着か。
ミリィのいないところでジネットに相談しよっと。
あとがき
(*´▽`*)/ふんどし!
あ、すみません
地元の挨拶が出ちゃいました☆
宮地です
作中出てきたふんどしの締め方
図があるととても分かりやすいのですが
文章だとなかなか……
是非、ネットで検索してくださいね
『ふんどし 無修正』検索……
はっ!?
余計な一言のせいで卑猥な画像ばかりが!?
Σ( ̄□ ̄;)
『ふんどし 締め方』とかで検証してください
是非!
私が未就学児だったころ
地元ではそこそこ盛り上がるお祭りが開催されておりまして
金魚すくいとか水あめとかヨーヨー釣りとか
出店もけっこうあって賑やかで
回転焼きなんか50円くらいで売っていて
瓶ラムネが氷の入ったケースの中でキンキンに冷えていて
夏の風物詩だったんですが
日程が近所の大きなお祭りとダダ被りで
私が小学生のころ、ついに廃止になってしまったんですよねぇ
(´・ω・`)
楽しかったのに、夏祭り……
で、その夏祭りではお神輿が出まして
オッサンたちがふんどし一丁で街中を練り歩くんですね
ふんどし男が「わっしょい!」と言いながら町中を練り歩く……
冷静に考えるとすごい状況!?Σ(゜Д゜;)
「今度試しにやってみます☆」
とは、気軽に言えない状況……
車掌「扉開きます。駆け込み乗車はおやめください」
私(ふんどし)「わっしょい!」
ホームの客「なんか降りてきた!?」
……うん、ダメですね。
でもお祭りの時はいいんです!
伝統ですので!
で、夏祭りなんですが
小学生になると、子供神輿を引っ張れたんですね
車輪がついていて、縄がいっぱい繋がってて
それを無数の子供たちが引っ張って移動させるんですが
私(未就学児)「やりたい!」
母「小学生になったらね~」
私(未就学児)「うん!」(わくわく!)
小学生に上がると同時に廃止になりましたよね……
( ̄_ ̄)すーん
穿きたかったなぁ、ふんどし
あと法被
法被を着てハッピー野郎になりたかったって?
やかましいわ!
もうね、
毎朝通勤電車の中でふんどし姿のサラリーマンを見かける度に
「あぁ、私も子供のころにふんどし穿いておきたかったなぁ」
って思――いや、いませんよ、ふんどしリーマン!?
Σ(゜Д゜;)
どんな通勤電車ですか!?
ふんどしリーマン「おっと、ここは女性専用車両でしたか。失敬」
って、誤乗車以上に失敬な事態ですよ!?
立ち去る後ろ姿、お尻丸出しですよ!?
っていうか、ふんどしリーマンって!?
なんかもう、フレンドリーすらフンドシリーに見えてきましたよ!
あ、見えてきませんか?
そうですかぁ……
……東京フンドシリーパーク
パッジェッロ\(*´▽`*)/パッジェッロ
……おかしい
マグダたちの可愛い浴衣姿とかあったはずなのに
完全にハム摩呂のふんどしに全部持っていかれてますね、記憶。
ちりめん生地まで完成して
京友禅まで再現できたというのに
完全にふんどし回ですね、今回!?
というか、ウクリネスの幼馴染、すごいな!?
伝聞だけで友禅再現しちゃいましたよ!?
いつか、服飾三人娘(……娘?)も登場するかもしれませんね☆
というわけで
浴衣回になるはずのふんどし回でしたが、
お祭り本番はもうちょっと先になります
楽しみですねぇ、四十二区ふんどし祭り☆
わく(* ̄▽ ̄*)わく
いやぁ、わくい(←形容詞)ですね
めっちゃわくい(←形容詞)です!
わくい えm――いえ、なんでもないです。
あぁ、そうでした
ふんどし祭りじゃなくて光の祭りでした
ちょっと違いました
誤差みたいなもんですが、微かに違いましたね
光りの祭りのお話を公開するのは、夏ころになるかもしれませんねぇ
現実でもお祭り行きたいです(*´▽`*)
今年はどこかのお祭りに参加してみましょうかねぇ~
宮地「わっしょい!」
警官「そこのふんどしリーマン、止まりなさい!」
羽目を外し過ぎないように気を付けます☆
次回もよろしくお願いいたします!
宮地拓海




