402話 ランドリー・ハイツ
その後、エステラに付き合う形でデリアも店に残ってくれるということになって、俺たちはマグダの帰りを待って陽だまり亭を出発した。
「ごめんなさいね、マグダさん。帰ってすぐまた出かけることになってしまって」
「……平気。帰ってすぐにまたやって来たマグダを見たウーマロの反応が楽しみ」
ランドリー・ハイツから戻ってすぐに再び同じ場所へ向かうことになったマグダだが、ジネットやロレッタと出かけるのが楽しそうだから、問題はないだろう。
「お召し替えもしましたし、ウーマロ棟梁様にとっては二度楽しめるお得な一日となりますね、きっと」
先ほど着て行った網タイツを履き替え、今はお出かけ着のマグダだ。
ふりふりワンピのギルベルタを見て、対抗心を燃やした結果らしい。
さらりとしたシルエットのワンピースは、マグダにしては珍しいファッションだ。
いつでも臨戦態勢をとれる系の服が多いからな、マグダは。
「……平気。下に見せるパンツを穿いているので、めくれても大丈夫」
「『見えてもいい下着』ですよ、マグダさん」
積極的なマグダの発言を訂正するジネット。
もっと積極的に見せていってもいいと思うの。
どうかな? ねぇ? ねぇ!
「……浴衣があれば着て行きたかった」
「それは、またお祭りの時の楽しみに取っておきましょうね」
以前ウクリネスからもらった浴衣は、下取りと称してウクリネスに返却した。
そうでもしないと、「以前のがありますから」と新しいものを絶対買おうとしないから、こいつら。特にジネット。
ウクリネスとしては、じゃんじゃん新しいものを着て宣伝してほしいという思惑もあり、かなり協力的に、むしろ積極的に、陽だまり亭着せ替え計画に参加してくれている。
水着と浴衣は毎年新しいものを!
そういうオシャレを楽しむ余裕は必要だと思う。
俺の目の保養的な意味合いも込めて。
ちなみに、回収された浴衣は生地を再利用して子供用に作り変えるらしい。
今後はレンタル浴衣とか始めてもいいかもしれないな。
「カタクチイワシよ」
ワンピースをふりふり歩くギルベルタと手を繋いで、ルシアが満足そうな顔で聞いてくる。
手、繋いでやるなよ。護衛しにくいだろうが。
「男用の浴衣というのはないのか?」
「えっ、あのっ、ルシアさん……っ」
俺が答える前に、ジネットが慌てた様子でルシアを連行していく。
「浴衣には、『アノ』ルールがありますので……男性の場合は……その……」
男に穿かないルールを適用すると、浴衣の裾からコンニチワする危険がある……つーか、男に穿かないルールなんぞ適用するかよ。楽しくもない。
「あるぞ、男物の浴衣。ただし、男は大股で歩く上に雑な動きが多いから前がはだけて大変なことになりかねない。だから専用の下着を穿くことになる」
「そんなものがあるんですか?」
どこかほっとしたような様子で、ジネットが尋ねてくる。
「ふんどしって言ってな、細い紐で布を固定するんだが、下腹部をしっかりと覆ってくれるのでちらっと見えても大丈夫な下着なんだ。まぁ、男版の見えてもいい下着だな」
「あの、それに女性用はないのでしょうか?」
「あるぞ。というか、俺の故郷ではふんどしとさらしの上に法被っていう浴衣みたいな服を纏って、神輿っていう神様の乗り物を引っ張りながら、ふんどし丸出しで街を練り歩く祭りが存在する」
「ま……丸出しは……ちょっと困りますね」
ジネット的には、浴衣の時に身に着けられる下着があるのであれば是非とも採用したいのだろうが……ふんどしだったらこちらもウェルカムだ☆
「神輿を引くのは神聖な行為だから決してそのような目で見てはいけないのだが、なんか無性にテンションが上がるよね☆」
「も、もう! 神聖なものをそのような目で見てはいけませんよ」
ジネットが赤い顔で俺の腕をぺしぺし叩いてくる。
ふんどし採用を視野に入れているせいか、自分が見られているような羞恥を覚えているようだ。
「ちなみに、見えてもいいやつだから☆」
「お兄ちゃんの故郷には、見えてもいい下着が多過ぎです!」
そーゆー文化なんだよ。
俺のせいじゃねぇーもーん。
「捏造ではなかろうな? ミセクチイワシ」
「馬鹿者。誰が見せるか、俺は見る専門だ」
「見ないでください」
ルシアに反論したらジネットから反論が飛んできた。
ほわぃ?
「俺の故郷は、ほんの百年くらい前まで浴衣みたいな形状の着物が主流だったからな。走ったり跳ねたりするとどうしても裾がめくれちまうんだ。それに、大工とか岡っ引きっていう自警団みたいな役割の連中とか、裾を気にしてられない職業のヤツが多かったからな」
下手人を追いかける岡っ引きが「いや~ん、裾が捲れておぱんちゅ見えちゃう~」とか言ってられなかったろうし。
「結果、『下着くらい見えてもいい』という風潮が根付いたわけだ。その時代の大衆浴場は男女混浴が当たり前だったらしいし、非常におおらかな時代だったんだろうなぁ……羨ましい!」
「その結果、お兄ちゃんみたいな人がわんさか生まれてきたわけですね」
「百年前からやり直せ、カタクチイワシ」
祖国の歴史全否定しやがったな、テメェ!?
むしろ、古き良き時代を今の世に蘇らせればいいとすら思っているのに!
温故知新って言葉、今の時代だからこそみんなの胸に刻み込もうぜ!
「まぁ、浴衣でふんどしを見せつけるようなことはないけどな」
あくまで岡っ引きや飛脚が裾を捲り上げて走り回ってたってだけで、見せつけるのが目的だったわけではない。
……たぶん。
…………いや、中には……まぁ、その辺は知らん。
「では、貴様も浴衣を着るのだ、カタクチイワシ」
「いや、別にいいけど……」
今から男物の浴衣も作るとなると、ウクリネスの工房がえらいことになりそうなんだが……
ウクリネスはいいとして、工房の針子たちが……なんか差し入れてやるか、今度。
「ウクリネスのところに行ったら生地選ばせてもらおうっと」
「そうですね。あ、そうです。今回の浴衣は一緒に作ってみませんか?」
いや、ウクリネスが張り切って作ると思うぞ、お前らの浴衣は。
「下手したら、もう完成してるかもしれないぞ」
とはいえ、選ばせてやるくらいはしたいもんだ。
ウクリネスなら、それくらいの余地を設けていてくれるだろうけれど。
この街にはノーマの和服っぽい普段着や、リベカの作務衣っぽい作業着がすでに存在していた。
なので、「こんな見たこともないもの、そうそう簡単に作れるか!」ってほどの苦労もなく、針子たちもそれなりに作れてるらしいんだ。
つまり、浴衣のバリエーションは比較的多い。
前回の祭りの前にイメルダが四十区で流行らせたこともあり、需要は多いみたいだしなぁ。
下駄と巾着と浴衣は、ちょっと特別な日に着るおしゃれ着として定着している。
ぼちぼちメンズ浴衣を出してもいい頃合いか。
「ウクリネスが用意してなかったら、作ってみるか」
「はい。カンパニュラさんの浴衣はルピナスさんにお任せするとして、マグダさんとロレッタさんの浴衣はわたしに任せてください!」
「いや、ロレッタのをやると、妹たちの分も作らされかねないぞ?」
「いやいや、そこはあたしが止めるですから、店長さんの作る浴衣が着たいです!」
「……裁縫をマスターしたマグダも手伝う」
いつマスターしたんだよ、マグダ。
子供服コンテストで一着作っただけじゃねぇか。
「楽しそう、四十二区は、いつでも」
「そうですね。ギルベルタ姉様も、素敵な浴衣を着て見せ合いっこしましょうね」
「では、おねだりしてみる、ルシア様に」
「なんでも買ってやるぞ、ギルベルタ!」
水商売の娘に貢ぐダメ社長のような大盤振る舞いだ。
もうちょっと堪えてたら、ギルベルタのおねだりを聞けたというのに……
チョロ過ぎだぞ、ルシア。
「じゃあ、みんなでウクリネスさんのお店に行くです!」
「ランドリー・ハイツを見に行くんだよ!」
次の予定に引っ張られて暴走するロレッタの首根っこを掴まえて街道を進む。
大通りの方に向かうんじゃない。ここで曲がるんだよ。
大通りの手前を右折し、モーマットの畑を眺めながら歩いていると、前方に巨大な建物が見えてきた。
想像以上にデカい建造物に、一同の足が一瞬止まる。
……どんだけ張り切ったんだよ、ウーマロ。
「……毎日お弁当を届けていたら、日に日に成長していった」
「マグダ効果、すげぇ……」
これ絶対、五階建て余裕だったろ。マジで。
「大きいですね……」
そびえ立つランドリー・ハイツを見上げ、ジネットが口をぽか~んと開けている。
「あ、ヤシロさん、店長さん。見学に来てくれたんッスか?」
現場でテキパキと大工たちに指示を出していたウーマロが俺たちに気付いて駆け寄ってくる。
今は庭の手入れとか塀とか作ってるっぽいな。
「むはぁああ! まさかまさかのマグダたん再来ッスー! しかもお召し替えで本日二度目のマジ天使ッスー!」
お前、もっと真面目に働けよ。
絶対遊んでるだろ?
「完成したマンションに張り付いてなにサボってんだよ。働け」
「働いてるんッスよ!? 家具の搬入が始まったッスから、最終的な確認と仕上げとプラスワンを施して回ってるんッス」
「なんかとんでもない労力が割かれてそうですね『プラスワン』!?」
ウーマロの発言にロレッタが慄く。
こいつら、とんでもないハイレベルなことを「ほんの一手間」とか言って軽々しくやってのけちゃうから、常人には理解できない領域なんだよなぁ。
「いや、それヤシロさんッスからね!? そっくりそのまま、四倍くらいに膨らませてお返しするッスよ!」
なんか返ってきたので、ブローック! エーンド、アターック!
「なんか叩き返されたッス!?」
日本チャチャチャなナイススパイクで叩き返してやれば、ウーマロは観念したようにそのセリフを受け取った。
うむ、よしよし。
「ウーマロ。中って見学できるのか?」
「出来るッスよ。ただ、まだ一応工事中ッスから、責任者としてオイラが同行させてもらうッス」
お前が同行しても、ろくにこっち見ないじゃねぇか、このメンツだと。
「我が領民が世話になる部屋だ。隅々まで確認させてもらうぞ、キツネの棟梁よ」
「は、はいッス! 厳しい目でチェックしてくれてかまままま舞わないッス」
緊張し過ぎでちょっと舞っちゃってんじゃねぇか。
舞うな。落ち着け。
いや、「舞わない」んだから舞ってないのか?
んだよ。舞えよ。
「ウーマロ。舞え」
「要求の根拠が分かんないッス!」
舞ってほしい時、それが舞う時だろうが!
いつ舞うの? 今でしょ!?
「早くせぬと埋めていくぞ、カタクチイワシ」
「『置いていく』程度に留められないのか、お前は?」
来年の春に、美しい花を咲かせるぞ、コンニャロウ。
「それじゃあ、中を案内するッス。あ、カンパニュラちゃん、その辺資材があるッスから、足元気を付けてッス」
「お気遣いありがとうございます、ウーマロ棟梁様」
「やはは。本当にしっかりした子ッスよねぇ。あ、ミリィちゃんも、足元気を付けてッス」
「…………じぃ~」
「な、なんかミリィちゃんにメッチャ見られてるッス!?」
カンパニュラと同じ感じでミリィに話しかけるから、「しっかりした子供」扱いされてると思ったんだろうな。
ミリィ、最近その辺に敏感なんだぞ。
「ウーマロ」
「なんッスか、ヤシロさん ?」
「カンパニュラやミリィよりも先に、ジネットに注意をしないと、びっくりするくらいすっ転ぶぞ」
「そ、そんなことありませんもん!」
「……店長なら、同じ場所で三度は転べる」
「転びませんっ!」
「障害物を避けた先のフラットな床で躓いて転ぶ危険が一番高いです!」
「フラットな床で何に躓くんですか!? もぅ、みなさん酷いですよ!」
「店長さん。……本っ当~に気を付けてッス」
「そんな力一杯言わないでください!」
珍しく、ジネットの目を見て注意を促すウーマロ。
危機感を持ってくれたようで何よりだ。
「もぅ!」と怒るジネットを見て、ミリィがくすくすと笑う。
「ミリィさん、笑うなんて酷いです」
「ごめんね、じねっとさん……でも……ふふふ」
「むぅ!」
両手を振り上げてミリィに向かって駆け出したジネット――が、何もない地面の上で躓く。
「おっと!」
「きゃぅっ!?」
転びかけたジネットの体を支え、びっくりしたように目をまん丸くするジネットの全身に素早く視線を巡らせて、どこにも怪我がないことを確認する。
その後、ジネットの足元へと視線を注ぐが……何もない、よな?
「ロレッタ、マグダ、念のため確認を頼む」
「何もないです、お兄ちゃん!」
「……ウーマロ。ここに、店長のためだけに注意喚起の看板を」
「ひ、必要ありません! ……今のは、たまたまです」
お前は「たまたま」が多いなぁ。
資材が置いてある場所を通る時は、マジで気にかけておいてやろう。
「あの……すみません、支えていただいて。ありがとうございました」
「どういたしましてだ」
ちょっとヒザがぷるぷるしているようだが、ジネットは俺から体を離して一人で立つ。
……ちょっと生まれたての子鹿みたいになってるけども?
「支えようか?」
「だ、大丈夫です。あの……お手数をおかけするわけにはいきませんので」
とか言いながら、耳の先が真っ赤に染まっている。
俺に支えられるのは恥ずかしいらしい。
まぁ、抱きついてるようなもんだからなぁ。
「ジネット姉様、大丈夫でしたか?」
「はい。驚かせてしまいましたね」
「ご心配おかけしました」と、カンパニュラに照れ笑いを向けるジネット。
けどまぁ、大丈夫だろう。
「カンパニュラも、そのうち見慣れるから驚かなくなるだろう」
「……みんな通る道」
「あたしたちレベルになると、店長さんが転ける前に『あ、今から転けそう』って察知できるようになるですよ」
「そんなにいっぱい転んでません!」
「精進しますね」
「しなくていいんですよ、カンパニュラさん!?」
古参の陽だまり亭メンバーは、ジネット検定一級を余裕でクリアできるだろう。
カンパニュラはまだ準二級クラスか。精進したまえ。
「あの、中を案内させてもらってもいいッスか?」
「あぁ、頼む」
「……店長は危険なので、ランドリー・ハイツに何度も入ったことがある熟練者であるマグダの手をしっかりと握っていて」
「は、はい。では、よろしくお願いしますね」
「むふー」
普通に手を繋ぎたいだけじゃねぇか。
頭まで撫でられて、嬉しそうに尻尾がぴーんとしてるわぁ。
「じゃあ、ロレッタも危険だからウーマロと手を――」
「無理ッス!」
「いや、それはそうだろうなって分かってるですけど、なんだかちょこっと傷付くですね、その全力の拒絶!?」
「もうそろそろ、あたしたちにくらい慣れてもいいんじゃないですかね!?」と詰め寄るロレッタと逃げるウーマロ。
逃げ回るウーマロが……あ、資材に躓いて転けた。
「ウーマロが『転けっこ』第一号だな」
「うふふ。ウーマロさん、大丈夫ですか」
「……ほのかに、嬉しそうッスね、店長さん」
ジネットはな、こういう時、ちょっと意地悪なんだぞ。
自分が第一号にならなかったのが嬉しいらしい。
ついさっき、ほぼ転けかけてたけどな、お前は。
そんな転けっこ第一号のウーマロに案内されてランドリー・ハイツへと入る。
「ここが玄関ホールッス」
「わぁ、大きいですねー!」
広々とした玄関ホールを見て、ロレッタが両腕を広げて声を上げる。
それを見つめるマグダが、なぜか得意そうだ。
腕組んで「うんうん」じゃねぇんだわ。お前、どこから目線だよ。
「ここは、外部の人と交流できる多目的スペースになってるんッスよ」
寮内は基本的に男子立入禁止。
部外者の立ち入りも極力禁止されている。
細々と例外的措置の余白を残しているのは、ルシアやエステラがやむにやまれず立ち入らなければならなくなった場合の保険だな。
あと、急な故障や破損の際、完全に男子立入禁止にしてしまうとウーマロが入れなくて困ることになる。
トルベック工務店は、全員男だからなぁ。
他の工務店には女の大工もちらほらいるが、トルベック工務店にはいない。
だって、棟梁がまともに会話も出来なくなるから。
これは決して性差別ではない。
ただただ純然なる病気だ。
なので、基本的に男子立入禁止(例外・特例・超法規的措置有り)って感じだ。
「けど、この玄関フロアまでなら誰でも入っていいんッスよ」
そうしておけば、行商ギルドに配達してもらうことも、他のギルドの人間を呼んで打ち合わせすることも出来る。
「あと、このすぐ奥が食堂と厨房なんッスけど、あわよくばヤシロさんや陽だまり亭のみなさんを呼んでみたいって意見が多かったッスよ」
あわよくばを狙ってんじゃねぇよ。
ただでこき使おうとはいい度胸じゃねぇか。
一度手痛いしっぺ返しを食らわせてやらねばいかんかもしれないなぁ……ふっふっふっ。
「では、お引越し祝いのお料理を作りに来させていただきましょうね」
いや、ジネット。
「ね」じゃなくてだな……
はぁ……ジネットが決めちまったら、逆らうわけにはいかないからなぁ。
なにせ俺、陽だまり亭で下から二番目のペーペーだから。
やーれやれだ。
「とても使いやすそうな厨房ですね!」
ジネットが床に根を張って動かなくなった。
いや、あっちこっちに興味を示して動き回っているが、一切厨房から出ようとしない。
そんなに好きか、厨房が。
まぁ、好きに見させてもらえばいいけども。
「ミリィ、時間は大丈夫なのか?」
「ぇ?」
「お遣いの途中だろ?」
ギルド長の婆さんに光の祭りの花について聞いてきてくれと言われていたはずだ。
花の種類やレイアウトに関しては、陽だまり亭でエステラと話していたし、今は完全に俺たちに付き合ってくれている状態だな。
「ぅん、平気だょ。聞いた内容は明日、ギルド長さんに伝えることになってるから」
つまり、陽だまり亭に行って息抜きしてきなさいってことか。
甘やかしてんなぁ、ギルド長の婆さん。
まぁ、ミリィを甘やかしたくなる気持ちは分からんではないが。
あ、もしかして。
「ジネットたちと一緒に浴衣を選んでこいって時間だったりして?」
光の祭りまで、生花ギルドは忙しくなるだろう。
デザインから始めるわけだし。
だから、今のうちに浴衣を選んでおきなさいよって気遣いの可能性もある。
「ぇっと……実は……ね?」
きょろきょろと、辺りを見渡した後、ミリィが口のそばに手を添えて背伸びをする。
内緒話のサインだ。
耳を近付けると、こしょこしょと小声でミリィが囁く。
「みりぃには内緒の話なんだけど、ギルド長さんがみりぃの浴衣作ってくれるつもりなの」
「……ミリィには内緒なのか?」
「ぅん。……だから、きっと今頃生地を見に行ってるんじゃないかな?」
だから、ミリィをお遣いに出してゆっくりさせているらしい。
「バレてんじゃん」
「それは、ぁの……みりぃが浴衣を買おうかなって話をしたら、大きいお姉さんたちが……ね」
サプライズしたいけれど、ミリィが自費で浴衣を買ってしまったら渡すことすら出来なくなってしまう。
ミリィも、何かと指名の仕事をしていて蓄えは出来ただろうからな。
「お友達とお揃いの浴衣なの~」なんて嬉しそうに言われたら「こっちを着て」とは言えなくなるだろう。
で、もし万が一ギルド長の婆さんの親切を無駄にしてしまったと知ったら、ミリィもすごく気に病むだろう。
なので、どっちも傷付けないように「こっそり話しちゃった方がいいわね」ってことになったのだそうだ。
「サプライズって難しいよな」
「そぅ、だね」
眉尻を下げてミリィが「ぁはは……」と笑う。
「でもね、みりぃ、すごく嬉しぃんだょ。ギルド長さんのこと、本当のお祖母ちゃんみたいって、思ってるから」
「そっか」
ここはここで、新しい家族の形を作っていたわけだ。
「婆さんは母親のつもりかもしれないけどな」
「ぇっ!? ぃゃ、でも、ぁの…………ぅう……ごめんね、ギルド長さん……」
まぁ、母親って歳ではないよな。
「だから、ね。今、こっそりと驚く練習、してるの」
「ほほぅ。じゃ、練習の成果を見せてもらおうか」
「ぇっ!? ここで?」
「自主練だけだと、自分では気付かない不自然さが出ちゃうかもしれないしな」
「それは……そぅ、かも……だけど」
「大丈夫です! あたしたちがちゃんと見守ってるですよ、ミリリっちょ!」
「……練習で出来なかったことは本番でも出来ない。ここは思い切ってやるべき」
「ここでなら失敗しても構わないのですから、やってみませんか、ミリィさん」
「ゎあっ!? なんでみんなこっち見てるの!?」
俺たちの内緒話は、全員に筒抜けだったらしい。
まぁ、俺は気付いてたけどな。
ジネットがにこにこして俺の背後に来てたし。
「では、我々が審査しようではないか」
「では、移動を願う、厨房から食堂エリアへ。都合がいい思う、ほどよい空間と座席があるから、あのスペースには」
「では、すぐに準備をしてまいりますね」
ルシアがふんぞり返り、ギルベルタとカンパニュラが厨房とはカウンターで区切られただけの食堂エリアに椅子を並べていく。
社員食堂や学食みたいな造りだな~なんて思っている間に、準備は整った。
開けたスペースの前に椅子がずらりと並ぶ。
あっという間に簡易劇場の完成だ。
「なんか、本格的過ぎるょぅ!」
「頑張ってください、ミリィさん。わたしたちみんなが応援していますよ」
「ぁ、ぁのね、じねっとさん、その応援がね…………ぅう……ぁりがと」
「その期待が重いんだよ」とは言えず、ミリィはジネットに見送られて舞台の真ん中へ進む。
「よし。じゃあ俺が婆さんの役をやってやろう」
「……ヤシロが浴衣を見せたら、ミリィは盛大に驚く。では、第一幕――開演」
ぱんっと手を叩いて開始の合図を送るマグダ監督。
この街にもそーゆー概念あるんだな。
ともかく、合図が出たので演技に入る。
「Hi! 今日もとってもハッピーなナイスデイDANE、ミリィ!」
「ギルド長さんは、そんなネックやチックみたいなしゃべり方しないょ!?」
「……ストップ。…………ヤシロ、真面目にやって」
「分かったよ……」
ちょっとふざけたら怒られた。
ちぇ~……
ならば、俺の本気を見せてやろう。
この、何もない空間に幻の衣類を登場させる。
そこにないものをさも存在するかのように演じて『魅せる』技術――エチュード。
俺の本気のエチュードを見せてやる。
布の柔らかさ、衣類の重さ、どんな色でどんな肌触りなのか、見る者すべてがそれらをはっきりと認識し、確かにそこに存在していると感じるように本気で演じ上げる。
恭しく、胸の前で広げてみせる。
お祭りの日に、ミリィが身に着けるようにとギルド長の婆さんが用意した大切な衣類――
「ミリィちゃん。お祭りの日にはこれを身に着けてね」
「――って、お兄ちゃん、そのサイズは確実にパンツですよ!」
「……何もないはずなのに、布の柔らかさや重さ、色やフリルの具合までなぜか鮮明に想像できる」
「ヤーくんの指使いや視線、呼吸で、私にも確かに下着があるように見えました。すごいです、ヤーくん」
「見えた、私にも、白いフリルのパンツが、友達のヤシロの手の中に」
「くだらぬ技術を極めるな、バカクチイワシ! 実際、ちょっと存在しているように見えたのが悔しいわ!」
「もぅ、ヤシロさん! ギルド長さんが準備してくださるのは浴衣ですよ! それに、浴衣の時に下着は――なんでもないです!」
「ん、なんだってジネット?」
「懺悔してください!」
今の懺悔は八つ当たりじゃないか?
俺、悪くなくね?
「……というか。お兄ちゃんの故郷にも浴衣っぽい服があるんですよね?」
「っぽいっていうか、浴衣があるぞ」
「はっ!?」と、何かに気付いた素振りのロレッタ。
そして、ジネットやマグダと視線を交わし、若干青い顔でおそるおそる尋ねてくる。
「じゃ、じゃあ……もしかしてお兄ちゃんは……知ってるですか? 浴衣の……あの……アレを?」
「ん? アレってどれだ?」
「……あの顔は知らない顔」
「あぁ、よかったです! 同じ服があっても文化が違ったです!」
「そ、そうですね。ヤシロさんの故郷では、浴衣の下に見えてもいい下着を身に着けるようですし」
俺のすっとぼけ顔を見て、マグダが「真実!」と判断し、ロレッタとジネットがほっとした表情を見せる。
……うん。俺、嘘は言ってない。
ただ目線や表情のコントロールが巧みなだけで、な☆
「ってぇ! そんなことより、ミリリっちょの驚く練習です!」
「ぁの……みりぃは、さっき、物凄く驚いた……ょ?」
浴衣かと思ったら、まさかのおパンツ様登場にビックリ仰天したらしい。
でもな、ミリィ。それ、本番じゃ使えないビックリなんだよ。
ギルド長の婆さん、たぶんだけど、浴衣と見せかけてパンツを差し出してくることはないだろうから。
「ぇっと……じゃあ、ギルド長さん役は、ジネットさんにお願いして、ぃい?」
「わぁ、解雇された」
「当然ですよ、お兄ちゃん! 次は何が飛び出すか分かったもんじゃないですからね!」
「……じゃあ、店長。ヤシロと持ち場を替わって」
「え? あ、は、はい!」
主演女優と監督からダメ出しされ役を降ろされた。
代わりにジネットが舞台へ立つ。
ガッチガチに緊張しているのはなぜだろう?
浴衣を「はい」って差し出す振りするだけなんだが。
「で、では、ミリィさん、い、行きます!」
「ぅ、ぅん……ぁの、普通でいいからね?」
「はい!」
ミリィにも心配されるくらい緊張して、ジネットが何も持っていない両腕をずいっと突き出す。
「こ、これ、浴衣です! ミリィさんによく似合うと思います!」
「わ、ゎあ~! びっくり~! まさか、浴衣とは~!」
……ん~。
「驚き方がジネットそっくり」
「「えっ!?」」
女優二人が似たような顔で驚いて同時にこちらを向く。
その驚きは「そこまで酷くないよね?」って思いの表れか?
何気に酷いな、お互いに。
「かわヨさで言えば20ミリィは固いのだが、今の驚き方では事前にバレていたとギルド長も気が付くであろうな」
「はぅ……」
ルシアの冷静な分析に肩を落とすミリィ。
……くっ、今の項垂れた姿、50ミリィ付けたいけど、落ち込んでる姿に点数付けるのはなんか悪い気がするので出来ない!
「60ミリィ!」
「点数付けてんじゃねぇよ、ルシア」
アホ領主め。
「まぁ、出来もしない演技で下手に驚いてみせるよりも、素直な感謝を伝えた方が婆さんも嬉しいと思うぞ」
「そうですね。大切なのはミリィさんが驚くことではなく、ミリィさんが喜ぶことですから。嬉しいという気持ちを伝えてあげるのが一番だと思います」
「……ぅん。そうだね。みりぃも、そんな気がしてきた」
サプライズが失敗したからって、婆さんがヘソを曲げるとも思えないしな。
とはいえ……
婆さんが張りきってサプライズしたがってるのに、それが全部無駄になるってのも、ちょっとなぁ。
……なら。
ちょっとアドバイスしに行ってやるか。
バレているからこそ出来るサプライズってヤツをな。
「じゃ、浴衣でも見に行くか」
「部屋見て行ってッス! なんか、この流れでそーゆー感じになりそうかもって思ってたッスけども!」
あぁ、そうだった。
ランドリー・ハイツを見に来たんだった。
一階だけ見て満足しかけてたぜ。
「じゃあ、個室の方を案内するッス」
ウーマロを先頭に俺たちは多目的ホールをあとにして、階段を上っていった。
「広っ!?」
案内された部屋は、思ってた以上に広くてびっくりした。
俺たちは今、二階を飛ばして三階まで上ってきていた。
折角だから最上階からの景色でも見てやろうかと思ってな。
けど、その前に部屋の広さに驚かされた。
「これ、一人部屋か?」
「いや、二段ベッドを置いて二人部屋になるッス」
だよなぁ。
一人だとちょっと広過ぎると思った。
でも、二人でも随分余裕を持って過ごせそうだ。
「二段ベッド二つ入れて四人部屋でもいいくらいだ」
「それはさすがに狭くないッスかね?」
いやいや。
寮なんてそんなもんだって。
「ベッドというプライベート空間があるのならそれで十分だろう!」ってくらいにぎっちぎちに詰め込まれてる寮がどれだけあるか。
自宅がカプセルホテルみたいな状態なんかざらにある。
この部屋、十畳くらいあるんじゃないか?
リビングじゃん、この広さ。
「女性なら、部屋に集まっておしゃべりとかするかもしれないッスから、これくらいは必要だと思ったんッスよ」
「多目的ホール行けよ、しゃべりたいなら」
「そこは外の人も入れちゃうッスから、パジャマパーティーできないッスし」
寮にそこまでの利便性求めなくてよくね!?
あんまり快適にしちゃうと誰も出て行かなくなっちゃうよ!?
「パウラさんのお部屋より大きいです」
「……パウラの部屋が四つくらい入りそう」
「さすがにそこまで狭くないですよ、パウラさんのお部屋!?」
部屋が狭い狭いといつも文句言ってるもんなぁ、パウラ。
『立地』に全振りしてんだなぁ、カンタルチカって。まぁ、フロアと食糧庫がデカ過ぎて生活空間を圧迫してんだけどな、あの家は。
「全部二人部屋なのか?」
「二階の一部は一人部屋になってるッス」
三階には、この広い二人部屋が四つあり、二階は二人部屋が二つと、それより幾分狭くなった一人部屋が三つあるらしい。
二人部屋二つ分を一人用にして三つか……一人分損した気分だな。
「イロハさんとかいるッスからね」
まとめ役のイロハはシラハより年上のオバア……オバサンだ。
洗濯屋の研修に参加する若者たちと同室ってのは避けた方がいいだろう。
同室になった若いヤツも気を遣うだろうし。
「あとはゲストとか、ふいに住む場所が必要になった時の予備に出来ればと考えてるッス」
で、イロハやゲスト用の部屋が二階なのは、三階まで上り下りするのが地味にしんどいからだな。
エレベーターがなかった時代は、一階に近いほど身分の高い者が使って、使用人や召使いは最上階や屋根裏を宛がわれていたこともあるという。
今とは発想が逆だな。
タワマンの最上階とか、エレベーターがなかったら拷問だもんな。
「なぁ、ルシア。研修には何人来るんだっけ?」
「十一名だ。イロハを含めてな」
じゃあ、二人部屋が五つと一人部屋が一つ埋まるのか。
空き部屋は二人部屋が一つと一人部屋が二つ。
結構余るな。
「……住み着くなよ?」
「仮の別荘にはよいかと思っておる」
今すぐ埋まらないかなぁ、空き部屋!
ルシアが私物を運び込む前に!
「見てください、ヤシロさん!」
窓を開け放ったジネットがテンション高く俺を手招きする。
「モーマットさんの畑が見えますよ。ほら!」
窓の外には、モーマットの畑が一面に広がっていた。
小麦が頭を垂れるほどに実を結び、風に揺れて黄金色に輝いている。
うん。
秋の風景。
日本の暦で四月に当たる今見る景色じゃねぇな。
「綺麗ですね……」
まぁ、確かに。
眼下に広がる小麦畑はとても綺麗に見えた。
小麦畑の真ん中で見知ったワニ顔がこっちに向かってにっこにこで手を振ってなければ、な。
「うっわ、台無し」
「そんなことないですよ。モーマットさ~ん! やっほ~で~す!」
海で叫んで、手を振った経験からか、ジネットがモーマットに手を振っている。
あんまりかまうと近付いてくるぞ、あのワニ。
もし我が子が生まれたら「知らない大人とモーマットには付いていくなよ」と教えるつもりだ。
「近隣に不審者が出没するのか……この寮、地価下がるな」
「モーマットさんは不審な方ではありませんよ」
「ウーマロ、この寮のセキュリティって万全か?」
「もう、ヤシロさん」
叱りながらもくすくす笑うジネット。
たぶん、六割くらいは「あり得るかもな~」と思っている証拠だろう。
……なんだよその「冗談ばっかり言って、本当に仲良しさんですね」みたいな目は?
そんな目で俺を見んな。
「じゃあ、一人部屋の方も見せてもらうか」
「そうですね。折角なので見てみたいです」
「では参ろうか。私の仮別荘になるかもしれぬ部屋だ。しっかりと確認しておこう」
「ギルベルタ。ここ三階だけど、突き落としといて」
「ギルベルタにつまらぬ指示を出すな、カタクチイワシ! 貴様の給仕長ではないのだぞ!」
ギルベルタをぎゅっと抱きしめ俺から距離を取るルシア。
ふりふりワンピース着てるからか、今日は一段とスキンシップが過剰だ。
なんでセクハラで訴えられないんだろう、あいつ?
「ここの階段、なんか降りやすいですね」
「それは、角度と踏み板の長さを調整してるんッスよ」
「……マグダが何度も上り下りして導き出した黄金比」
「下り階段を優雅に降りてくるマグダたんは、まるでどこかの国のお姫様みたいだったッス!」
「もしかして、階段の手すりがやたらと豪奢に作られてるのって、そのせいですか!?」
手すりに指を添えるようにして優雅に階段を降りるマグダ。
ウーマロがその後ろ姿を眺めて感涙している。
あいつも訴えられればいいのに。ギリアウトだろ、あの視線。
「わぁ! 一人部屋も広いですね」
「先ほどよりもコンパクトで、私はこちらの方が落ち着くかもしれません」
「けどな、カンパニュラ。二人部屋でテレサやジネットと同室だったらどうだ?」
「それでしたら、二人部屋の方が断然嬉しいです」
ま、そうだろうな、お前らなら。
俺は断固として個室がいい派だがな!
一人部屋は、カンパニュラが言ったとおりコンパクトで落ち着きのある空間だった。
窓のサイズによるのかもしれないが、二人部屋のような「明るっ!?」って感じがない。
とはいえ暗くもなく、実にいい塩梅だ。
落ち着くなぁ、この部屋。
「まぁ、これでもまだ広いけどな」
「……マグダは、マグダの部屋くらいの大きさが一番好き」
俺やマグダの部屋はここよりももう少し狭い。
けど、住み慣れるとそっちの方がしっくりくるんだよ。
特に俺は、物を増やさないタイプだから。
「だが、イロハならばこれくらいの広さがちょうどいいだろう。まとめ役としていろいろと物が増えていくであろうからな」
研修に来る者たちの情報や資料なんかを管理しようと思えば、保管するスペースと事務仕事するスペースが必要になる。
これくらいの広さは妥当か。
「棟梁~! イロハさんがお見えになったっすよ~!」
ひょろ長大工のグーズーヤが階段を駆け上ってきてウーマロに告げる。
俺を見つけてぺこりと挨拶した後、ルシアを見て「うっわ、今日もあり得ないくらい美人!」と奇声を上げやがったので窓から突き落とした。
「なにするんっすか!? マジで落ちかけましたよ、今!?」
ちっ!
窓枠にしがみつかれたか。
「ウーマロ。この窓枠、もっとぬるぬるのつるつるにしといてくれ」
「イロハが落ちるであろうが、バカモノ。其方も気を利かせて落ちぬか、細長い大工よ」
「いやヒドッ!? ルシアさん美人なのに容赦ない!」
アホめ。
容赦のない貴族なら「ルシアさん」なんて呼び方した時点で首が飛んでるっつーの。
こいつは最近、大工をイジるということを覚えやがったんだよ。
まったく、誰だ? ルシアにろくでもないこと教えたのは。
「いいから、一回落ちて、壁をよじ登ってきて、階段を降りてイロハを呼んでこいよ、グーズーヤ」
「いや、出来ないっすよ!? 『一回落ちて』の時点で終わりですから!」
「なぬ? そなた、そんなことが出来るのか?」
「出来ないって言ったんですよ、僕、今!」
「うるせねぇなぁ。ぎゃんぎゃん吠えてないで、喉仏歩行でイロハを呼んでこいよ、グーズーヤ」
「聞いたことないですけど、『喉仏歩行』!? 喉仏で歩くの!? 喉仏を床に付けること自体大変なのにそれで歩くとか絶対出来ませんからね!?」
「なぬ? そなた、そんなことが出来るのか?」
「だから、出来ないって言ったんですよ、僕、今!」
「お前は何にも出来ないんだな。もういいから、そこで30センチくらい浮いとけ、グーズーヤ」
「羽もないのに!?」
「なぬ? そなた――」
「出来なぁーい! そして、これだけヤシロさんが名前を呼んでくれているのにルシアさんが一切僕の名前を覚えようとしてくれてない!」
「グーズーヤ。いいから呼んでこいッス」
「うわぁ……この一連見て僕に怒ってるよ、ウチの棟梁……権力者にとかじゃなくて、確実にヤシロさんに甘いんだよなぁ、あの人……」
ぶつぶつ不平を漏らしながらグーズーヤが階下に待たせているイロハを呼びに向かった。
程なくして、二階へ上がってきたイロハがルシアに挨拶をしたあとで部屋を見渡す。
「広いですね。これが二人部屋ですか? 詰め込んだら八人くらい寝起きできそうですけれど」
いや、それはさすがに窮屈過ぎるだろう。
それに、ここは二人部屋じゃねぇし。
「ここは一人部屋ッスよ。一応、イロハさんの部屋になる予定ッス」
「えっ!? ここに一人で!? 広っ!? 広過ぎますよ!?」
「まぁ、いろいろ物も増えるでしょうし、狭いよりかはマシだと思って、ここを好きに使ってほしいッス」
「いやいやいや、落ち着きませんわよ、こんなの。使用人の部屋はこれの半分に二人で寝起きするくらいなのですよ?」
「お前はもう使用人じゃないだろ。これからは、研修生たちのまとめ役、リーダーになるんだ。広い部屋で堂々としていればいい」
「そうはおっしゃいますけど、ヤシロちゃん様……」
なぜか涙目のイロハ。
先んじて間取り図は見せたらしいのだが、部屋の広さは想像できていなかったようだ。
「今から、もう一回コンパクトに作り直すことって可能ですか?」
「それはさすがにメンドイわ!」
「オイラたちも心折れちゃうッス、この段階でその要望出されたら……」
「大きいから一回り小さく作り直しといて」って……確かに心折れるな。
「まぁ、そのうち慣れる」
「……はい」
ルシアに言われて、イロハは肩を落としながらも頷いた。
部屋が広くて難色示されるとは思わなかったなぁ。
マグダが日参した影響で、寮のグレードが上がり過ぎてしまったのかもしれない。
……二人部屋に住むことになる虫人族たちは大丈夫だろうか?
早めにお披露目しておいた方がいいかもしれないな、引っ越し前に。
「なぁ、ルシア」
「うむ。その懸念はよく分かる。検討してみよう」
ルシアと話して、都合が付き次第下見に来させることに決まった。
あとがき
桜が綺麗な季節ですね
ごきげんよう、宮地です。
ちょっとオシャレに始めてみました☆
る~るる るるる る~るる るるる る~る~る~る~る~~♪
テツコのへや……ではなく
私は男なので……テツ、ヤ?
「テツヤの部屋だっつってんだろうがこのバカチンが!」
……今、このモノマネ分かる人って、結構な大人なんでしょうねぇ(遠い目)
大人のボキャ天が好きだった人、この指と~まれ☆
(≧▽≦)/
まぁ、そんな時代の話です。
懐かしい。
昔ですね、
高校生が三人一組でクイズに挑戦してアメリカまで行く的な番組があったんですよ
地方予選から始まって
ニューヨークへ行きたいかー! って。
私が高校生の頃、
先輩がそれの予選に参加して、見事に一問目で敗退して帰ってきたんですが
私も出てみたかったんですよね~(*´ω`*)
だって、
勝ち進めばただでアメリカ行けるんですよ?
旅費と宿泊費は番組が持ってくれるので
参加者はクイズに勝ち続けるだけでアメリカへ行けるんです!
でもさすがに、参加者それぞれに個室なんて与えられないでしょうから
きっと1チーム一部屋だと思うんですよね。
で、1チームは三人
つまり!
女子二人と同じチームになれば
合法的に、
番組の意向で
同じお部屋に宿泊です☆(゜∀゜)o彡°
こりゃあもうはっするパラダイスですよね☆(゜∀゜)o彡°
うっはうは☆(゜∀゜)o彡°
……でまぁ、
一緒に出場してくれる人が見つからずに断念したんですけどね
出たかった、高校生クイズ選手権っ!
……あれ?
高校生の方ってニューヨーク行きましたっけ?
それは大人の方でしたっけ?
もはや記憶すら薄らいでおりますが
でもきっと、1チーム一部屋だったはず!
くそぅ
もう一度高校生に戻りたいっ!
今だったら、バイトをめちゃくちゃ効率よく出来ますよ
改善計画とか立案してばっしばっし職場環境整えちゃいますよ☆
業務改革とか経費削減とかお任せください☆
あと、態度の悪い嫌な上司の追い詰め方も懇切丁寧にご指導しちゃいますよ★
ガスライティングっていうのがありまして……(ふふふ……)
あぁ、高校生バイトにそんなもん求めてないんですか?
そうですかぁ、ざんね~ん。
ちなみに、
今書いててちょっと気になるというか
さすがにここまで続くと目に付くんですが、
『1チーム』と『一部屋』
アラビア数字漢数字が混ざってるじゃないですか
これ、実は明確なルールがありまして
1センチとか50Kgとか
単位がカタカナ、アルファベットの時はアラビア数字で、
一件とか十匹とか
単位が漢字の時は漢数字になっているんです
なので『チーム』も1チームかなぁと
ルールがあるとはいえ、
結構微妙で悩むこともあるんですよね
1号2号はアラビア数字の方が見栄えするよなぁとか
『一つ』と『ひとつ』はどっちが読みやすいだろうとか
田中1郎、田中次郎、田中3郎の次郎はどうしようとか…………
いや『1郎』は漢数字でよくない!?Σ(゜Д゜;)
なんてこと言いつつ、本編にもちょこっと触れておきましょうか
というわけで、今回の本編は
ランドリーハイツの話に偽装したミリィたんを愛でる会でした。
ミリィ「わぁ、びっくりこきまろ~」
みたいなお話でした。
ジネットレベルと言われてショックを受けるミリィたん( *´艸`)
ご堪能いただけたでしょうか
ついつい筆がのってカクヨムの方で3000文字を超えてしまうのも致し方ない!
……あぁ、そうだ。
思い出したんですけども、
カクヨムさんの方で分割更新すると決めた時に
「1000文字~2000文字くらいが読みやすい」ってどこかで聞いて
じゃあ、それに倣ってみるか~って短くまとめる練習をしていた……はずなんですが
気付いたら毎話毎話3000文字オーバー
そして、四話分まとめて更新しているこちらでは毎話毎話12000文字オーバー
長いわ(# ゜Д゜)
というわけで、いつかどこかのタイミングでもう少しすっきりさせたいと思います☆
そのうち
出来れば
出来るものならば……
出来るかなぁ…………(´・ω・`)
小賢しい技法は試してみたくなるんですが、
基本的な部分って難しいんですよねぇ
(^^;
小賢しい技法とはなにか、ですか?
そうですねぇ
たとえば、縦読みを仕込むのとか
書き手の遊び心が刺激されてやってみたくなるんですよねぇ
( *´艸`)気付くかなぁ、わくわく
って。
たとえばこんな感じで――
おっす、おらゴクウ!
っていうか、ギョキュウ!
ぱりぴだって
いーじゃなーい♪
……ふむ、縦読みを仕込むのって、案外難しいんですね、お
そもそも、私の作品にゴクウ出てきませんしね、っ
ふむ、ナチュラルに仕込むのは難しいようですね、ぱ
でもいつか、本編でやってみたいですね、い
どうです!?
気付きましたか!?
縦読みは、文頭だけじゃないんです!
文末に注目してみてくだ……あ、気付いてました?
ナチュラルに溶け込ませたと思ったんですが……鋭いですね、皆様
はっは~ん
さては、皆様、
見た目は子供だな?
いつかミステリーとか書いてみたいんですよねぇ
異世界ミステリー
剣と魔法のファンタジー世界で巻き起こる不可解な難事件
騎士団長「この部屋は完全に密室だったわけか……」
探偵「(シュヴィン:←瞬間移動の音)騎士団長、事件ですって?」
騎士団長「犯人、お前じゃね!?」
くっ……異世界だと、密室が成り立たないっ!
騎士団長「くそっ、一体凶器はどこに消えたんだ!?」
探偵「ウィンドカッター!(シュヴィヴィン:←風魔法の音)え、なんですって?」
騎士団長「犯人、お前じゃね!?」
くそぅ、この探偵、いちいち邪魔してくる!
探偵「まぁ、これだけの殺人事件を考え、事件を起こしている真の黒幕は、そのミステリーを書いている作者なんですけどね……」(にやり)
って、やかましいわ!(# ゜Д゜)ノ
一周回って~~~
クルクル(・ω・*)(ω・* )(・* )(* )( )( *)( *・)( *・ω)(*・ω・)クルクル
やかましいわ!(# ゜Д゜)ノ
とかなんとかやってる間に、
あとがきが2000文字超えてる!?
Σ(゜Д゜;)
本当にこんな分量で一話をまとめられるのか!?
むぅ~……(・_・;
10年経ってもチャレンジし続ける宮地さんの今後の成長にご期待ください☆
成長しなかった時は、温かい目で見守ってあげてください☆
次回もよろしくお願いいたします。
宮地拓海




