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異世界詐欺師のなんちゃって経営術  作者: 宮地拓海
報労記

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報労記98話 新たなゲームとお出かけと

 夜が明け……ては、ないのだが、ジネットが起き出してくる時間になり、フロアが賑やかなことに気付いて顔を出したジネットが「まぁ」と呟いてくすくす笑い出す。

 よっぽど楽しげに見えたのだろう。


「洗い物、また出ちゃいましたね」


 あぁ、昨夜のエンドレス洗い物の話か。

 お茶、飲んでたからな。


「悪いな、厨房を使わせてもらった」

「構いませんよ。また真心を込めて洗いますから」

「手伝うさね」

「では、朝食のお手伝いをお願いできますか? みなさん、お腹すいてますよね?」


 夜通し遊んでいたのなら、きっと腹も減っているだろうと。

 ジネットの経験則だな、これは。


 実際、ウーマロとベッコが照れくさそうに空腹を訴え、イメルダが自信満々「いくらでも食べられますわ」と胸を張る。

 なんで自信たっぷりなんだろうな、あのお嬢様は。


「教会の悪ガキと同じだろ、こいつら?」

「ふふ、ヤシロさんもですよ。夜更かしは、シスターに見つかったら叱られるんですよ?」


 ってことは、ベルティーナは結構遅くまで起きているのか。

 ジネットは寝るのが早いから、夜更かししたガキを見つけられないだろうし。


「それが『だーつ』というヤツですか? なんだか、思っていたものと随分違いますが」

「全然違うだろうが」


 そりゃ違うだろうさ。

 これはバランスゲームだしな。

 ダーツは外だ。

 ダーツはある程度完成したからフロアに入ってバランスゲームをしていたのだ。


 外、まだ暗いしな。

 光るレンガがあろうと、夜は暗いしな。

 ……怖いんだよ、悪いか?


「ちょっとやってみるか?」

「いえ、朝食の準備もありますし」

「ほんじゃ、ちゃっちゃと作っちまうさね。そんで、仕込みの前にちょっと遊べばいいさよ」


 俺とノーマがいれば、仕込みも多少は時間短縮できるだろう。

 二人がかりでジネット一人分かもしれないけれども。


 そんなわけで、ジネットとノーマが協力して、なんともほっこりする、美味そうな朝飯が出てきた。

 俺は教会で食ってもよかったんだが、折角作ってくれたので、ここで食っていこう。


 炊き立てのご飯に、焼き鮭。

 マーシャに用意してもらったたらこで作った明太子。

 ジネット特製、昆布の佃煮と海苔の佃煮。

 ノーマの作った味噌汁。

 そこにベーコンエッグとレタスとトマトとキュウリのサラダがつけば、文句のつけようもない朝食だ。


「焼き鮭とベーコンエッグは、お好きな方を召し上がってくださいね」

「俺は両方」

「オイラも両方いただくッス!」

「拙者も、これくらいは軽いでござる」


 メインとなるおかずは選択制だったようだが、この見た目だ。

 一瞬で腹が減って絶対平らげられると確信できる。


「あと、ノーマんとこの漬物があれば完璧だった」

「取ってくるさね!」

「いや、そこまでせんでもいい……あ~ぁ、足速いなぁ、あいつも」

「忙しない女ッスねぇ、まったく」


 ウーマロはノーマを待つことなく飯を食い始めたが、俺は言い出した手前、ノーマが戻ってくるまで飯を置いておこうと思う。


「ヤシロさん、お茶を入れますね」

「悪いな」


 そんな俺を気遣い、ジネットがお茶を入れてくれる。


「待たせたさね!」

「速っえぇな、おい!?」


 ノーマって、そんなに俊足キャラだっけ?

 ハム摩呂を超えてなかったか、今?

 つか、壷ごと持ってきてんじゃねぇか。


「ちょうどいい機会だから、店長さんにも味を見てもらいたくってねぇ」

「わぁ、嬉しいです。実は、興味があったんですよ、ノーマさんのお漬物」

「言ってくれりゃ、いつでも持ってくるさよ」

「いただいてばかりでは、申し訳ないですから」


 いやいや、ジネット。

 確実にお前の方が与え過ぎてるから。

 漬物くらいもらっても罰は当たらんと思うぞ。


 あと、めっちゃ美味いから。


「んっ! 美味しいですね」

「そうかい? じゃあ、好きなだけ食べておくれな」


 ジネットに褒められて、上機嫌のノーマ。


「以前いただいたキュウリのお漬物よりも深い味わいになっていますね」

「あぁ、前にヤシロが持って帰ったヤツさね。あれは簡単に作った浅漬けだったからねぇ。やっぱ、漬物の醍醐味は糠さよ!」


 米を食う習慣はなかったくせに、糠漬けは広まってたんだよなぁ、この街。

 三十三区では清酒が作られていたようだから、糠を食い物に活用するって発想自体は出て来ても不思議ではないけれど。


「カリコリ、かりこり……ん、ばーちゃんの味がするッスね」

「おだまりな!」

「褒めてんッスよ!」


 ウーマロ、そこはほら、デリケートな問題だから。

 ウーマロのばーちゃんも、糠漬けとか作ってたのか。


「本当に美味しいでござるなぁ。拙者、このようなお漬物であれば、毎日食べたいでござる」

「ほんじゃ、キュウリと一緒に漬け込んでやろぅかぃ?」

「そこまで密接して貪り食いたいとは申してござらぬよ、拙者!?」


 あぁ、惜しい。

「お前の漬物、毎朝食わせてくれないか?」が、プロポーズっぽくってドキッ! ――みたいなエピソードは、ベッコには生まれなかったみたいだ。

 ノーマなら、ちょろ~んって引っ掛かりそうなものなのになぁ。

 相手がベッコだからかなぁ。

 そうなんだろうなぁ。


「……やばい。おかずが美味過ぎて、朝から四杯もおかわりしちまった」


 だって、飯が進むおかずばっかなんだもんよ!

 ご飯がご飯がススムんだもんよ!


 重たい腹を抱えながら、食器を片付け、仕込み前にいざ一勝負――という流れになった。


 時間はないが、いきなりチーム戦にすると、失敗した時の罪悪感が酷いことになりそうなので、個人戦ということにしておいた。

 まぁ、そんな長くは続かんだろう。


 軽くルールの説明をすると、ジネットは子供のようにきらきらした目で土台の船を見つめる。

 まさに、おもちゃを見つめる子供の目だな。


「きゃっ!」


 精巧な出来の、若干丸っこい船をつんと指で突っついたジネット。

 船が思いのほかぐらぐら揺れて驚いたようだ。


「物凄く不安定なんですね」

「そうだ。だから、どこに駒を置くかが重要になってくる」

「なるほど……難しそうですね」

「ガキでも出来る単純なゲームだよ」


 勝つのは、難しいかもしれないけどな。

 これ、たぶんウーマロがめっちゃ得意だ。

 あいつ、見ただけで物体の重心がどこにあるのか見抜きやがるから。


 ジェンガとか将棋崩しとか、無敵に違いない。


「ウーマロだけ、1ターンで二個な」

「まぁ、それくらいはいいッスけど……」


 とか、困り顔しつつも余裕しゃくしゃくだな、こいつ。


「いざとなったら、ジネットとイメルダが耳元でなんか囁いてやれ」

「それは反則ッスよ!?」


 うっせぇ。

 お前の技術の方が反則だっつの。


「じゃあ、ハンデとして、ジネットからでいいか?」


 こういうのは、後になるほど難易度が上がる。

 さすがのジネットも、一個目から転覆させることはないだろう。


「では、第一回、乗り過ぎ注意、豪華客船転覆ゲーム~!」

「マーシャが怒りそうな名前さね」


 ……確かに。

 あと、海難事故とかあった際に自粛しなきゃいけない危険もあるから、名称は変えておこう。


「グラグラ、船上バトルロワイヤルー!」


 船はコケるけど事故じゃない。

 あくまで船上で繰り広げられる生き残りをかけた戦いだ――ということにしておこう。


「では、サイコロを振ります!」


 当然、重心が低く、軽い、子供の駒が一番難易度は低い。

 で、サイコロを振ったジネットは、見事にその簡単な子供の駒を引き当てた。

 幸先がいいな。


「では……え~っと、この辺でどうでしょうか?」


 と、舳先に駒を置いたジネット。

 ……が、置く場所が悪く、手を離した瞬間子供の駒が「ころーん!」っと落下した。


「きゃあ、お子さんが!?」

「まさか、初手でゲームを終わらせるとは……」

「なんで舳先なんて不安定なところに置いたんさね?」

「あの、舳先で見た景色がとても綺麗だったので、この子にも体験させてあげたいなと……」

「店長さん。それは駒ですわ」

「えっと、あの、この辺の安定した場所に置くと、いいと思うッスよ」

「ウーマロ氏、せめてこちらを向いてアドバイスしてあげてはいかがでござるか? 『この辺』と指さした先がまるで見当違いでござるよ」


 そんなに長くは出来ないが、これではさすがに呆気なさ過ぎる。

 なので、もう一度ジネットから再スタートを切ることにした。


「ここに置いてみろ」

「はい」


 ――俺のナビ付きで。


「じゃあ、店長さんはヤシロさんとコンビってことでいいッスね」

「それなら、いい勝負になりそうですわ」

「みんなでこのキツネ大工をぶちのめしてやろうじゃないか!」

「そういうことを言い出すヤツが負けるんッスよ」

「では、負けた者は渾身のモノマネを披露するということでいかがでござろうか?」


 ベッコが提案した罰ゲームは、ジネットの抗議を退けて認証され、そして大方の予想どおり、きっちりとベッコが回収していった。

 そういうのはな、言い出しっぺが喰らうって相場が決まってんだよ。


 ちなみにベッコ渾身のモノマネは――



「あぁ、ウェンディ、眩し過ぎて君が見えないよ」



 という、セロンのモノマネで、これがちょっとびっくりするくらい似てた。

 ……無駄に器用だな、ベッコのヤツ。


 案外、見せたくてわざと負けたんじゃねぇの?

 やらしー男だよ!





「やぁ、末期の諸君」


 寄付の時間より早く、陽だまり亭に来ては俺たちを呆れた目で見てくるエステラ。


「あぁ、そうだ。お前ら、調整が終わったら帰って仮眠取ってこいって言ってたろうに。まったく……」

「いやいや、ヤシロさんがその後からいろいろ作り出したんッスよ!?」

「仮眠を取りに行くようなタイミングはなかったでござるよ!?」

「すやぁ……ですわ」

「イメルダ、こんなとこで寝てんじゃないさよ」

「あの、よろしければ、客間でお休みになりますか?」

「そうさねぇ……ほんじゃ、イメルダを寝かしつけてくるさよ」

「ノーマも寝てこい。俺のベッドも使っていいから」

「う………………じゃあ、イメルダをヤシロのベッドに寝かせてくるさね」


 言って、そそくさとイメルダを抱えて厨房へ向かうノーマ。


「なに妄想してんッスかね、あのエロギツネは」


 ウーマロが呆れ顔でため息を吐く。

 エロい妄想してたのか、そうか。


「さすが同族。発想が同じだな」

「オイラはそんな妄想しないッスよ!?」


 ウーマロを、女子の匂いのするベッドへ放り込む……あ、死ぬな。

 いや、待て。もしそれがマグダのベッドだったら…………死ぬな。


「ウーマロは、死ぬな」

「……ッスね」


 ご本人様公認である。


「それで、何をしていたのさ? 寝なよ、君たちは」

「俺は寝てたんだよ。そしたらな……真夜中、陽だまり亭の庭から『……カッ、……カッ』という謎の音が……」

「あぁ、表にあったのがダーツの的だよね。よく出来てるじゃないか」


 感動のないヤツだなぁ!?

 もっと怖がれよ!

 全国の淳二が怖がるような語り口で怪談っぽくしゃべってんのによ。


「ねぇ、あれって、もう遊べるの?」

「あの、エステラ氏。あのダーツは、今日のヤシロ氏とのデートで遊ぶのではござらぬのか?」

「でっ、で、でぇーとじゃ……なくは、ないんだけど、も……っ!」


 照れんなよ、そんなことで。

 やらされてるだけだろうに。


「ちなみに、ナタリアは?」

「所用のため、今は館で実務中だよ」


 所用ね。

 そんじゃ、今のうちに練習しておくか。


「目指せ、打倒ナタリア!」

「ボクたちならきっと出来るさ!」

「それじゃ、オイラたちは少し家に戻って仮眠を取ってくるッスかね」

「そうでござるな」

「あ、ウーマロ。ボク用にシャフトの調整してほしいから、ちょっと残って」

「あとベッコ。たぶんエステラは癇癪を起こして『ナイフなら確実に当てられるのに』とか言ってナイフ投げて的を壊すから、予備の的をいくつか作っといてくれ」

「そんなことしないよ!? ……でもまぁ、予備は必要な気がする」

「おかしいッス……さっき、寝ないことで末期とか言われた気がするんッスけどね、オイラ」

「諸悪の根源がここに渦巻いているでござるな」


 失敬コンビを拘束して表でダーツの練習を始める。

 あぁ、大丈夫。

 イメルダが寝落ちする前にノーマと一緒にジネットを手伝って寄付の仕込みはばっちり終わっている。

 なんなら、ちょっと時間が余ってジネットが休憩する時間が取れたくらいだし。

 ジネットは今、一人でバランスゲームの攻略法を探るべく駒を置く練習をしている。

 寄付までの間に覚えて、あのゲームを教会のガキたちと遊ぶらしい。

 ベッコの許可を得て、あのバランスゲームは教会へ寄付することに決まった。

 あぁいうのは、ガキどもが熱中してこそ価値が生まれる。

 どこかで見かけたガキが羨ましがって親にねだれば、商品が飛ぶように売れるというわけだ。


 あ。

 アッスントに話通してないな。

 まぁ、あとでいいか。


「あれぇ?」


 ダーツを投げたエステラが素っ頓狂な声を上げる。


「ナイフだったら、今ので絶対中心を捉えてたよ」

「ナイフじゃねぇんだから、同じように投げてもダメに決まってんだろ」


 エステラの放った矢は、センターのかなり上。

 20ポイントのダブルに刺さっていた。

 ラインは合ってるんだな。

 ナイフより軽いから、思ったよりも下降しなかったってところか。


「これさぁ、重心をもっと前に付けた方が投げやすくない?」

「そういうのは職人と話して自分用にカスタマイズしてくれ」

「ウーマロ~、あのさ~」


 そして、普通に領民を酷使する微笑みの領主。

 その微笑み、かなり邪悪じゃね?


「ここ」

「どこッスか?」

「ここだよ」

「エステラさん、全然見当違いのところ指してるッスよ」

「じゃあ、そっち向いていい?」

「じゃあ、オイラが後ろ向くッス」

「ここ」

「どこッスか?」

「なんか物凄く無駄なことしてござらぬか、お二人とも!? さといお二人でござるのに、揃うとなんと愉快なポンコツぶりでござろうか!」


 顔を合わせないように、常にどっちかが背中を向けているので「ここ」が一切伝わっていない。

 ……アホだろ、お前ら。

 背中向けてしゃべることに慣れ過ぎた弊害だな。


「ウーマロ氏、この辺だそうでござる」

「前の方に重心を置くんッスね。やってみるッス」

「じゃあ、その間、ナイフでやってみていい?」

「壊さないでほしいでござる!」


 ナイフを投げようとするエステラを止めるベッコ。

 お前がナイフ投げ得意なの、知ってるから。

 わざわざ腕前見せなくていいっつのに。


「エステラは腕の振りがデカいんだよ。こんだけ軽いもんなんだからさ――よっ! これくらいでいいんだって」

「へぇ、うまいねぇ」


 ふっ。

 ダーツはな、ちょっと一時期ハマったんだよ。


「俺の故郷ではな、ダーツバーってのがあってな。連れの女の前で格好つけてる男の隣で、それを遙かに上回る妙技を見せつけて羨望の眼差しを掻っ攫ってやっていたのだ」

「……地元でも、君は幸せなカップルをやっかんでいたのかい?」


 やっかんでねぇよ!

 公衆の面前でイチャイチャするのは迷惑行為を通り越して、時にはテロ行為だからな?

 特に十二月後半!


「お酒も飲まないのに、他人の幸せを邪魔するためにバーになんか行かないようにね」


 バカモノ。

 その頃は飲んでたわ。

 今よりも十歳くらい年上だったし。


「ヤシロさん。これ、エステラさんに『出来たッス』って渡してッス」


 おいこら。

 何を気易く使ってくれてんだ、お前は。


 また何か作らせるぞ。

 ゾートロープとかどうだろう?

 ほら、あの、回転する箱の中を覗き込むと中の絵がアニメーションして見えるってヤツ。


 そろそろ、そういうのも欲しいよなぁ。

 ほら、紙芝居とか人形劇とかメンコでキャラものとか流行りそうだし、今後。


 ……か、金の匂いがするっ!


「ウーマロ、俺とちょっと一儲け――」

「いいから、ボクのダーツを寄越してくれないかな?」


 こいつ、自分が興味あるものばっかり優先させやがって。

 よし、エステラには内緒でこっそり作って、完成品を見せて黙らせてやろう。


 ふふふ……楽しみにしておくがいい。


「ヤシロさんが、なんか邪悪な顔で心温まることを考えていそうな雰囲気出してるッスね」

「やはり、ヤシロ氏の睡眠時間を奪うと、ちょっと脳が活性化し過ぎるのでござろうな。適度に睡眠を取っていただかねば、いろいろなところに影響が出過ぎてしまうでござる」


 俺の隣で野郎二人がうんうんと頷いている。

 別に睡眠不足でテンションとか上がってねぇから、俺。


「あっ! これはいいね」


 投げたダーツがブルに刺さり、機嫌が良くなるエステラ。

 そのまま二投目も投げる。あ、惜しい。


「ウーマロ、すごいね君は。よく手作業でここまで同じ物を作れるよね」

「やはは……それはもう、なんというか、慣れッスよ」

「すごく投げやすいよ」

「どれ?」


 エステラが使ってるダーツを借りて重さを見てみる。

 うっわ、独特な重心。

 よくこんな攻めた調整でブルに当てられるな。


「エステラって、相当変わり者だよな」

「君に言われたくはないよ」


 俺は、基本に忠実だぞ。

 初心者用ダーツでも狙い通り投げられるし。


 その後、寄付の時間までダーツの練習をし、ついに俺たちはその時を迎えた。



「私に挑もうというのですね……よろしい、受けて立ちましょう」



 遅れてやって来たナタリアとの勝負。

 俺とエステラ、起きてきたマグダとロレッタも参加する。


 寄付に行かなきゃいけないので、勝負は三投。

 合計点で競うこととなった。


「あっ、外した!」


 20のトリプルを狙って外したエステラ。

 その後、ターゲットをブルに変更して手堅く100ポイントを稼ぐ。

 合計120ポイント。


 俺は、危なげなく20のトリプルを三連続決めて180ポイント。


 マグダは、三連続ブルで150ポイント。


 ロレッタは18、11、5のシングルで34ポイント。

 普通だな、お前は。

 なぜ参加した?


 そして、ナタリアは――


「せい!」


 調整の異なる、重心がバラバラの三本のダーツを同時に投げて、全部20のトリプルに的中させやがった。


「ヤメだ、ヤメ!」

「ナタリアに勝つなんて無理だよ!」

「……ダーツを受け取る時、すでに重心を見極めていた」

「たぶんですけど、ナタリアさんだけ距離を倍にしても勝てないですね、これ!?」

「いつでも挑戦、お待ちしております」


 人間の域を逸脱したヤツなんか、相手にするだけ無駄だ。

 アイツに弱点はないのか。

 一般常識とか良識っていうヤツ以外で!


 ……いや、そこの欠如は致命的な弱点ではあるのだけれども。



「ではみなさん、一緒に教会へ向かいましょう」



 ゲームが終わり、俺たちは教会へと向かった。





「ここッス」

「ここです」

「「「すげぇ!」」」


 教会での朝食の後、バランスゲームを始めたわけだが……


「じゃあ、ここッス」

「では、ここです」

「「「全然倒れない!」」」


 ウーマロと互角に渡り合うナタリア。

 あいつ、マジで何者なんだよ……


「なぁ、エステラ。ナタリアの正体が、実は精霊神だった……なんてことないよな?」

「ない、とは、思うんだけどね、ボクも」


 そっか、自信はないか。

 ウーマロが重心を見抜く目を持っているのは知っていたが、ナタリアも同じスキルを持っているとは。


「じゃあ、次は……あれ?」

「駒がなくなりましたね」


 二人が、今初めて同時にテーブルを見る。


 いや、ウーマロが緊張するからって、駒を載せる時以外は背を向けるルールだったんだよ。

 ……メンドクセェな、ウーマロ対応。


「ベッコ、大至急追加の駒をお願いするッス」

「いや、お二人の決着は一生つかないでござるよ、たぶん!」


 どんなに作っても無駄そうだな。


「じゃあ、今度は逆に、置かれた駒を一個ずつ取っていってみろ」

「なるほどッス。取る時もバランスは変わるッスからね」

「それでも、勝負が付くとは思えませんが」

「だろうな。だから、今度は接触さえしなければプレーヤーへの直接攻撃を許可する」

「では……ふぅ~」

「ぅぎゃぁあああッス!?」


 ナタリアがウーマロの耳に息を吹きかけると、ウーマロが飛び上がり、テーブルの上の豪華客船はひっくり返って駒をバラ撒いた。


「アイ、アム、ウィナー!」

「「「ナタリア姉ちゃん、すごーい!」」」


 拳を掲げ称賛を浴びるナタリア。

 一方のウーマロは、ナタリアの足下に横たわって白目を剥いている。

 こいつ、寝不足だろうから、このまましばらく寝かせておいてやろっと。


「では、次は子供たちの番です。私が審判を務めましょう」

「「わーい!」」

「順番ですよ。悪い子にはおしおきが待っていますので、そのつもりで」

「「「はーい!」」」


 ナタリアがガキどもを見てくれるらしい。

 ……ナタリアのおしおきってなんだ?

 若干、怖いんだが。


「なぁ、エステラ。ナタリアのおしおきって……」

「聞かない方がいいよ。そして、子供たちがいい子にしていることを、ボクは切に願う」


 やっぱ、おっかないんだろうな、ナタリアのおしおき。


「ジネットも混ざってくるか? さっき練習してたろ?」

「いえ。みんなは初挑戦ですから、みんながある程度練習したら、一緒に遊ばせてもらいます」


 いやいや、ジネット。

 お前は、一人先に練習して、それでやっとガキどもの初挑戦レベルだからな?

 試しに混ざってみ?

 たぶん最初に負けるの、お前だから。


「また楽しい遊びを考えてくださったんですね」


 わいわい盛り上がるガキどもを見て、ベルティーナが頬を緩める。


「昨夜は髪留めとプロミスリングで大盛り上がりだったんですよ」


 寝かしつけるのが大変だったようだ。


「その前はメンコで遊んで……みんなが夜更かしするようになって、少し困っています」

「だったら、ベルティーナの言いつけを守れないヤツは、オモチャ禁止だな」

「「「「えっ!?」」」」


 ガキどもが一斉にこちらを向く。


「そうですね。悪い子には一時的に使用を禁止しましょう」

「いい子にする!」

「ルール守る!」

「お手伝いもする!」

「こらガキども。『する!』じゃねぇよ。『します』だろうが?」

「君の影響だよ、子供たちの言葉が乱れているのは。君も少しは言葉遣いに気を付けなよ」

「ふふ、困ったことに、みんなヤシロさんに憧れていますので」


 ジネットが可笑しそうに言う。

 俺に憧れるのが『困ったこと』なのかよ。

 へーへー、口が悪くてごめんなさいねーっだ。


「エステラ様、そろそろ」

「あぁ、うん。そうだね」


 ガキどもがわーきゃー騒ぐ中、ナタリアがエステラに耳打ちをする。


「それじゃ、ヤシロ。そろそろ行こうか」


 あぁ、俺を連れ出す時間なわけね。

 へいへい。邪魔者は退散しましょうかね。


「お兄ちゃんどこ行くの~?」

「デート~?」

「でっ……でーととか、そーゆーんじゃ…………」


 だから、ガキの戯言に照れんなっつーのに。


「エステラがデートに誘ってくれてな。昼飯奢ってくれるんだぜ、いいだろ?」

「「「いいなぁー!」」」

「「「僕もエステラ姉ちゃんとデートしたーい!」」」

「あ、あはは、それじゃあ、もうちょっと大人になったらね」

「「「わーい!」」」


 いやいや、大人になる前にデートしてやれよ。

 大人になった後だと、それはそれで面倒くさいことになるから。


「それじゃあ、ジネットちゃん。あと、よろしくね」

「ふふ……はい。いってらっしゃい」


 ジネットに笑われて、少し頬を染めるエステラ。

 からかわれたわけじゃないと分かっていても、この状況は照れるようだ。


 ぐいっと腕を引っ張られエステラに連行されていく俺を、ジネットたち陽だまり亭一同が手を振って見送ってくれた。


「えいゆーしゃ、いってっしゃーい!」


 テレサの声を耳に、玄関まで来たところで俺の腕を解放するエステラ。

 その空いた手でペしりと肩を叩かれた。


「子供たちに変なことを言わないでよね、もぅ……」


「言わないように」とか、領主ぶった口調も忘れて、素のエステラが出てきている。

 どうやら、本気で恥ずかしかったようだ。

 お前じゃねぇか、公衆の面前でデートに誘ってきたのは。

 これはそーゆーデートだろ?

 デートだけど、誰に隠すでもなく、堂々としてても「あ、アレね」って認識される類いの何かなんだろ?


「あれ? そういえばエステラ、スカートじゃないんだな」

「ぅぐっ……きょ、今日は、動くかもしれないから!」


 なんだよぉ、初めての時はパンツが見えそうなくらい攻めたスカート穿こうとしてたくせに。

 ナタリア情報で知ってるんだぞ、俺は。


「で、スカートがまくれ上がるくらいの、どんな運動させる気なんだよ?」

「そんな運動はしないけど…………そんなにスカートがよかった?」

「パンチラの可能性が増えるなら、無条件で大歓迎だ!」

「出発が遅れるけれど、懺悔してくるといいよ。懺悔室、借りてこようか?」

「さぁ、さっさと行くぞ、エステラ」


 縁起でもないことを言い出したエステラの背を押して教会を出る。

 微かに、こちらに近付いてくるベルティーナの足音が聞こえた気がする。

 逃げるが勝ちだ。


「で、どこに行く?」


 教会の庭を出ると、左右に道が延びている。

 西は街門。港がある。

 東に行けば陽だまり亭やニュータウン、大通りがある。


 これまでなら、デートだったら東、って決まっていたのだろうが、今は港もなかなか楽しめるスポットになっている。


「そうだね……じゃあ、先に港にでも行ってみようか」

「いいのか? 小一時間あとに陽だまり亭の前を通ったら、なんかいろんな物目撃しちまわないか?」

「えっと…………二分待ってて!」


 ダッシュで談話室へ戻るエステラ。

 この後の予定をナタリアに話しに行ったのだろう。


 先に済ませとけよ、そーゆーのは。

 デートのプランは前日までに固めておく方がいいぞ。

 何もなくてもだらだら過ごすだけで幸せだ~なんて成熟したカップルでもない限りな。


「賑やかなところに行けば何かしら楽しいことがあるだろう」なんてざっくりしたプランで行くと、高確率でデート中にダレる。

 少年たちが一度は喰らうデートの洗礼だな。

「どうしよう……話が続かない、このあと何しよう?」ってな。


「おまたせ。じゃあ、港を覗きに行ってみよう」

「任せろ。覗きは得意だ」

「それ、ジネットちゃんに言ったら懺悔だよ」

「甘いな。昨夜はかろうじて免除された」

「……もうすでに言ってたのかい? まったく、君は」


 またペしりと、俺の肩を叩く。

 今度、ふいに仕返ししてやろう。


「はい」


 と、何かを手渡される。

 なんだ? とみれば、キノコ尽くしの髪留め。


「さっきの失言に対する刑を執行するよ」

「つけりゃいいのか?」

「そゆことっ」


 嬉しそうな顔で……

 へいへい。


「この辺でどうだ?」

「うん。いい感じ。……似合う?」


 俺が作ったんだから似合うに決まってんだろうが。


「作ってよかったなぁ~って、感動するくらいには、な」

「ぅぐっ…………も、もぅ、君は、すぐそうやってからかう」


 また俺の肩を叩こう……と、して止め、にっこりと笑う。


「今回ばかりは、素直な称賛として受け取っておくよ」


 ま、似合ってるのは事実だしな。

 見た目年齢、ちょっと下がっちゃうけども。


「さぁ、行こう」

「手繋いだり、腕組んだりはしないのか?」

「ふぐぅ……い、いいからっ、行くよ!」


 髪との境が分からなくなるくらいに顔を赤く染め、エステラが街道を歩いていく。

 赤い髪にくっついて揺れる髪留めを見ながら、その背中を追った。





 港に着くと、見たことない建物が出来ていた。


「なんだありゃ?」

「君が発案した、海漁ギルドミュージアムだよ」


 とんと記憶にないが?


「人魚たちの蝋像を展示するんだろう?」

「あぁ、蝋人形の館か」

「なんか、禍々しい名前になってないかい?」

「ふははは、お前も蝋人形にしてやろうか?」

「え、ボクの蝋像も作ってくれるの?」


 違うんだなぁー!

 そーゆー反応じゃないんだよなぁ、こっちが求めてるのはさぁー!


「中は出来てるのか?」

「まだだよ。君のデザインが出来るのと、ウーマロとベッコの体が空くのを待ってるんだって」

「おい、何も聞いてないんだが?」

「マーシャだからねぇ。断りにく~いタイミングで言ってくると思うよ」


 そのやり手な技術、是非教えてもらっておけ。

 お前に足りないの、その辺のしたたかさだから。

 けったいな投げキッスなんか見習ってないでよ。


「ちょっと見てみるかい?」

「入れるのかよ?」

「ボクは領主だよ? 特別許可はもらってるから」


 しょーもないところでばっかり発揮されるな、お前の職権乱用。


 海漁ギルドミュージアムに近付くと、入り口が二階にあることに気付いた。

 お化け屋敷と同じ構造だな。

 ただ、二階に上がるための手段が階段ではなく、建物をぐるりと取り囲むスロープになっていた。


「これは、行列が出来た時に階段だと危険だからって配慮か?」

「ううん。水槽タクシーでも出入りできるように、だって」


 なんで人魚が見に行くんだよ。

 お前らは本物の深海を見に行けるだろうが。


「楽しそうだな、最近の人魚は」

「そうだね。こっちも負けてられないよ。三十五区、楽しいことになりそうなんでしょう?」

「で、四十二区と三十五区が競い合うと、また三十七区が泣くぞ」

「そこは……まぁ、領主に頑張ってもらうってことで」


 あんな名もなき領主が頑張れるのかねぇ。

「名前はあるんだよ、君が覚えないだけで」とか、よく分かんないこと言ってるけど、無視。


「結構キツいな……」

「長い坂だからね」


 角度はさほどでもないが、建物をぐる~っと回るスロープなので地味に長い。

 これを歩くだけでは飽きてくるな。


「外壁に何か仕掛けが必要だな」

「落とし穴とか?」

「客を落としてどうする」


 はっは~ん、さてはお前、アホだな?


「人魚姫のストーリーを歩きながら追っていくとかさ」

「あぁ、それはいいね! 豪雪期に陽だまり亭でやった雪だるま君の冒険みたいなヤツだね」


 そういえば、豪雪期には雪像でそんな感じのことをやってたっけなぁ。

 文字はないが、切り取った場面を並べて、ストーリーを表現する。

 この街の連中にも受け入れられたし、伝わりやすいだろう。


「ふふ、ここにマーシャがいたら、きっとすごく張りきっただろうね」

「どっちも水槽押せないだろうが、俺らだと」

「じゃあ、お姫様抱っこだね」

「なら、エステラの仕事だな」

「君の方が力はあるだろう?」

「残念ながら、俺はマーシャを抱っこする許可が下りてないんでな」


 マーシャは、水槽の押し手も、抱っこも、許可する相手を選んでるんだよ。

 誰にでも飛びついてるわけじゃないんだよなぁ、これが。


「『エステラ、あっちあっち! ダッシュで~☆ で、その次はそっちね☆』」

「うわぁ、容易に想像できるよ、その面倒くささ」


 あいつ、人間のことを小回りの利く運搬マシーンだと思ってんだろうな、たぶん。


「マーシャに足があったら、きっとロレッタよりも忙しなく動き回ってるな」

「あははっ、そうかもね」


 好奇心の塊だから、マーシャは。

 きっと、アリの行列でも興味津々で覗き込むことだろう。


「おぉ、何もないけど、造りはしっかりしてんだな」


 室内に入ると、中は殺風景な空間だった。

 ただし、建物としては上物。

 頑丈で、広くて、実に雰囲気がいい。


「海岸から始めて、どんどんと海の底へ潜っていくってコンセプトだって言ってたよ」

「俺の知らないところで、いつそんな話してたんだよ」


 つか、この建物はいつ建ったんだ?

 蝋像を作って、その翌日には三十五区へ行ってたような?

 ウーマロもカワヤも、こんなもん作ってるヒマなかったろうに…………あれ? あいつらって夜寝るのやめたの?


 何もない建物の中をエステラとゆっくり歩いて下りていく。

 建物内には階段はなく、緩やかなスロープで下りていく仕様になっている。

 ……あ、一応非常階段はあるんだ。ここは、従業員以外立ち入り禁止区域だな。


「うわぁ、改めて見るとすげぇ量だな」

「蝋像は、今のところここに全部集められているようだよ」


 あの日、ベッコが作った蝋像が一ヶ所に集められていた。


「……この辺の床だけ、なんか濡れてんだけど?」

「見に来てるんじゃないのかな、人魚たちが」


 ここは最下層。

 そうだな。あそこの出口から入ってくれば、この蝋像は見られるもんな。


 とか思っていると、海漁ギルドの二足歩行船員サリサに抱っこされた人魚が出口から入ってきた。


「ねぇねぇ、私の人形って、どれ~?」

「こちらですね」

「わぁ~、可愛い~☆ もっと近くで見たい!」

「はいは~い」


 ……なるほど。

 あんな状況なのか、今。

 つか、サリサ……大変だな。


「サリサ~! 次、私ね~☆」


 とか、外から聞こえてきてるし。


「さっさと水槽タクシー作ってやれよ」

「うん。大至急予算を通しておくよ」


 額に汗して走り回るサリサ。

 俺たちに気付くことなく外に出て行ってしまった。

 つか、他にいないのかよ、運搬係。


「行こうか?」

「だな」


 しばらくは、この蝋像だけでも人魚ははしゃぎまくるのだろう。

 ミュージアムが完成したら、人魚の行列が出来そうだな。

 ……なんだかんだ、自分たちが大好きなんだよな、人魚は。


「ここに、聖女王と英雄王の蝋像でも建てとくか?」

「さすがに、それは……ルシアさんに宣戦布告されちゃうよ」

「じゃあ、小便小僧――」

「ちらっと小耳に挟んだけど、却下ね」


 ちぃっ!


 海漁ミュージアムを出ると、また見覚えのない屋台が営業していた。

 覗いてみると……


「いらっしゃい、人魚焼き、美味しいよ!」


 人形焼きを人魚の形にした人魚焼きが売っていた。


 いや、だから!

 俺が提案したものが、俺の知らないうちに出回ってるんですけど!?


「俺、もしかして半年くらい意識不明で寝込んでた?」

「これに関しては、話を聞いたノーマがゴンスケたちをフル稼働させて超特急で仕上げてきたんだよ」


 その後、エステラに売り込んで、アッスントを経由して、飲食ギルドの許可を取り、屋台での販売に漕ぎ付けたのだそうな。


「おかしいぞ、この街の発展速度」

「その中心にいるのは君なんだよ、自覚したまえ」


「たまえ」と言われても、たまえねぇなぁ!

 だって、俺が今びっくりしてるし。


「あれ? でもあんこの炊き方を教えたのはジネットちゃんだよ? 何か聞いてないのかい?」


 初耳ですが?


 ジネットのヤツ、何を俺に秘密にしなければいけないのか、訳が分からなくなってやがるな?

 で、別に言ってもいいことまで「内緒です!」って肩肘張っているのに違いない。


「……なんで、ジネットってあんなに不器用なんだろうな」

「得意なことは、他の追随を許さないプロ級の腕前なのにね」


 出来ると出来ないの差が激し過ぎるな。

 ギネスに申請したら認定されるんじゃね?


「食べてみるかい?」

「ごちになりまーす」

「いちいち言わないくていいよ、もう」


 いやいや、ちゃんと言っとかないと、割り勘にされかねないし。

 経費で落ちるんだろ、どうせ。


「おっ、お嬢ちゃんべっぴんさんだから一個オマケしちゃうよ!」

「いや~ん、やぴろ、こまっちゃう~ぅ☆」

「君じゃないよ、ボクだよ、ボク」

「権力におもねろうって魂胆が透けて見えるな。たぶん脱税してるぞ、この店」

「してねぇよ!」


 どっかで見たことのある顔のオッサンが人魚焼きを二個手渡し、一個分の料金を受け取る。

 マジで一個オマケしてくれてやんの。


「サンキュな、見ず知らずのオッサン」

「いやいやいや! ケーキ講習会とラーメン講習会でめっちゃ会ってるから!」


 知らんなぁ。

 なんか、オヤジが飲食店をやっていて、なんとなく店の手伝いをしていたのだが、この度「これだ!」という料理に出会い独立したのだそうな。

 その「これだ!」が人魚焼きかよ。


「俺は、この人魚焼きで一時代を築き上げる!」


 ケーキとラーメンは挫折したっぽいな、どーやら。


「あつっ、あふっ。もぐもぐ……ん~、出来立てって、美味しいね」

「あぁ……、ウチの領主様、可愛いっ」


 幸せそうに人魚焼きにかぶりつくエステラを見て、なんか感涙してるオッサン。

 そーゆー性格だから、料理の神髄を見落とすんだよ、お前は。


「これ、きっとマーシャも好きな味だから、頑張ってね」

「はい! 四十二区を代表するスイーツにしてみせます!」

「『精霊の――』」

「それくらいの意気込みで!」

「ヤシロ、いじめないの」


 だってよ、陽だまり亭のケーキやポップコーンを差し置いて代表するとか言うからさぁ。


「じゃあ、もう少し港を見て回ったら、大通りの方へ行こうか」

「そうだな。あ、それから、人魚焼きの中のあんこ、抹茶あんとかサクラあんとか白あんとかゴマあんとか栗あんとか、あとカスタードとかチョコとかバリエショーン増やしといてくれ。じゃ」

「えっ、待って!? 去り際に物凄い高い要求放り投げられたんですけど!? えっ、えっ、えっ!? アドバイス聞きに行ってもいいのかな!? 陽だまり亭の店長さん頼ってもいい感じのヤツ、これ!?」


 自分で編み出せよ、自分の店なんだからよ。

 陽だまり亭・港支店って呼ぶぞ、こら。


「君は、本当に面倒見のいい男だねぇ」

「惚れ直したか?」

「ほっ……!? …………直すも何も、ないよ」


 それは……取り方によっては結構危うい発言に聞こえるぞ。

 そもそも惚れてないから「直す」も何もないってことが言いたかったんだろうけど……



 ずっと夢中だよ。



 って意味にも聞こえるから、気を付けろよ。

 まったく、迂闊なんだから。







あとがき




どうも

前回のあとがきでデーモン閣下の話をしたら

今回本編に蝋人形の館が出てきてびっくりしている――宮地です


先日のシティーハンターに続き、二度目です


いえ、わざとじゃないんですよ。

あとがき書く時は、本当に本編のこと忘れていまして

なにせ、一ヶ月くらい前ですからね、本編書いたの。


あとがきの前に、今回の本編をさらっと読み返すくらいはするんですが

次回の本編のことはすっかり忘れております


つまり

一ヶ月に一回くらいの割合で

デーモン閣下のことを考えているというわけですね☆


ぬわははは!

愚かなる人間どもよ、

いつもありがとう!

\(≧▽≦)/



ほい、というわけでデートです。

四十二区に映画館があれば

確実に映画に行ってそうな二人ですが

港へ行きました


いえ、四十二区ってデートスポット増えたな~とか思いましてね

そこら辺を巡ってみようかと


港を見て、

デートには欠かせないケーキを食べに陽だまり亭へ……あ、行けないんでした、陽だまり亭。


デートプラン、頓挫……ですね



そんなわけで、

ヤシロよりもうっきうきのエステラさんをお楽しみください☆


次回は、がっつりデートです。



さて

先日映画館に行ったというお話をしたんですが、

どうにも私はドラマとか映画には興味を持てない人間のようでして


「あ、これ見たい」というものがなかなかないんですよねぇ

見れば見たでそこそこ楽しめるとは思うんですが……



どっちが時間もったいないかという価値観の話になるんですが


もう何度も見た映画に二時間かけるのと

知らない映画を二時間見て「面白くなかったなぁ」ってがっかりするのだと

私は後者の方がもったいないと思っちゃうんですね


最後の最後に、どんでん返し狙いの後味の悪いオチをつけるような映画って、あるじゃないですか……そーゆーの見ると、3日間くらい暗い気持ちになっちゃうので


なので、映画のタイトルも

一時期のラノベのように長文にしてくれると分かりやすいんですけどね



『平凡な毎日を送っていた俺が幼馴染の悩み相談に乗ったら猟奇的な殺人事件に巻き込まれて結果的に犯人を追い詰めちゃったんですが!?~しかも黒幕がその幼馴染ってどういうこと!?~』



みたいなタイトルだと、

「あ、最後に『実は私が黒幕なの』ってオチがくるんだなぁ~」って安心して見られますのにね(*´▽`*)


興行収入、めちゃくちゃ低そうですけども!

\(≧▽≦)/



どうにも、「衝撃」とか「怒涛の」とか

そーゆーのが苦手なようで


小学生の頃、プロレスとか格闘技が流行ってたんですが、

私はなんか痛そうなので得意ではなく

K1とかPRIDEとか、

なんとか話し合いで解決できないのだろうかと、常々思っていたものです。



レフェリー「ふぁいっ!」

選手A「今日、婚約者が応援に来てるんだ」

選手B「俺のファンの小学生が、明日手術を受けるんだ」

選手A「分かった。俺の負けだ」

選手B「ありがとう。いい試合だったぜ」



みたいな!

優しい世界!



そんな映画ないですかねぇ……



劇場版サザエさん



とか。

あ、あれでいいですよ

テレビ放送してたアニメの劇場版でよくある

テレビ放送のリマスター版とか総集編みたいなやつで


……サザエさんって、映画やったことありましたっけ?

子供映画祭りの中の一本とかもないですよね?

やればいいのに。



もしくは、こんなのどうでしょう?



劇場版 日曜夕方6~8時



ちびまる子ちゃんから始まって、サザエさん、キテレツ大百科、世界名作劇場の四本立て!


1990年前後の、どっかの日曜日の放送をそのまま放映!

世界名作劇場だけ、なんか途中ですけども!

他の三本はどこから見ても問題ないですし!


で、

まるちゃんかサザエさん付近で、

夕飯出てくるんです。


オカン「ご飯よ~」



だいたい、それくらいの時間に夕飯でしたからねぇ

(*´ω`*)



いつもは夕飯のすぐ後くらいに「風呂入れ」って言われるんですが、

日曜だけは8時まで待ってもらえるんです

名作劇場見たいので


そのかわり、8時に風呂入って9時には寝てるので

髪の毛乾き切る前に布団に入るから月曜日は高確率で後頭部に寝癖が……


そんな映画、ないですかねぇ

なんなら、上映後、後頭部に寝癖ついててもいいですし。


平日は、夜7時くらいにお風呂なんですよ

ほら、平日ってだいたい野球やってるじゃないですか

父とか、野球見るじゃないですか

私、スポーツに興味のないお子様だったのでその時間に風呂入るわけですよ


で、風呂上がりにアイス食べるんですよねぇ

(*´▽`*)


凍らせたチューペットを兄貴と二人で半分こしたものです



……まるちゃんからチューペットまでを含んだ映画とかないですかね?

(´・ω・`)


キテレツのOPはコロッケ作る歌かすいみん不足か、どっちがいいですかねぇ

ここ、年代で分かれるんですよねぇ


あと、名作劇場

ブッシュベイビーかティコか、若草物語とか?

ロミオだと、いかにも狙ってます感が出ませんかね?


それでたま~に、



『本日の上映は、野球中継が延長したため、一部内容を変更してお送りいたします』



とか!

「えぇー、ビデオの予約録画してたのにー!」的なハプニングもありつつ

10回表位から上映始まって、

最初は「なんだよぉ~」とか思いつつも

見てるとちょっと見入っちゃって

10回裏の逆転ホームランで「やったー!」とか感情移入しまくったりするんですよねぇ、なんでか


近鉄バッファローズとか南海ホークスとかの試合だったら、私より上の世代の人に刺さるかも?




……四十二区で野球でも広めてみますか?



ネフェリー「甲子園に連れてって」



あぁ、ダメだ

あまりにもまんま過ぎて叱られちゃいますね

モデルに近付いちゃダメですよ、ネフェリーさん。

私の中では、ずっとあの声でしゃべってるんですから、あなたは。


野球はダメですね

何より、私がルール知りませんし


えっと……直接攻撃していいのって

ピッチャーとキャッチャーのどっちでしたっけ?

ほら、デッドボール当てられた時は二回まで反撃ありってルールありましたよね?


あれ?

あれって、うちの近所だけのローカルルールですか?

そっかぁ……

(´・ω・`)



というわけで、間もなくゴールデンウィーク!

劇場版 日曜夕方6~8時(夕飯お風呂付き)の上映を期待しています!☆



次回もよろしくお願いいたします。

宮地拓海

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[良い点] 迂闊なのはヤシロくんですな。 折角のデート、優曇華の花が咲くくらい滅多にないチャンスなんだから、端々でアピールしてくるのは当たり前なんだよなぁ・・ まあ、本人は意識してやってなくても、ナ…
[一言] え、野球のルール知らない昭和生まれの男て、いたんだ!? おったまげ~! せめて、ヤシロには野球盤作って広めて欲しいですね。
[良い点] どうも。ノーマさんの糠漬けが食べたいです。 1本丸々ください。 できれば谷間に挟んで(煙管の煌々と赤く光る灰『ジュゥゥゥ!』) ロレッタさんが普通で安心しました。 普通じゃないロレッタさ…
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