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異世界詐欺師のなんちゃって経営術  作者: 宮地拓海
報労記

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報労記64話 謝罪行脚

「あっ、ヤシロ!」

「ちゃんと元気になったみたいね」


 カンタルチカへ行くと、パウラとネフェリーが出迎えてくれた。

 ネフェリーが、また店の手伝いでもしに来ているのかと思ったら、メンコを見せ合っていた。


「見て見て、ヤシロ! ベッコさんも! すっごく可愛いの!」

「いや、俺が描いたんだよ」

「拙者も、隣でしかと拝見していたでござるよ」


 パウラが嬉しそうに尻尾をぱたぱたさせてメンコを見せてくる。


「でも、尻尾目立ち過ぎ!」


 パウラのメンコは、酒と料理を運ぶパウラが、後方から注文を受けてとびっきりスマイルで振り返っているような構図になっている。

 前面に尻尾がばーん! と、物凄く目立っている。


「ヤシロの尻尾好きっ!」


 両手で尻尾を隠してべーっと舌を覗かせる。

 わぁ、なんかすごく犬っぽい。

 似合うわぁ。


「私のも可愛いんだけど~……ウチの子、こんなにやんちゃじゃないからねっ」


 ネフェリーのメンコは、脱走したニワトリをネフェリーが慌てて追いかけている、なんとも躍動感あふれる仕上がりとなっている。

 すまし顔で直立不動よりも、よっぽど可愛く描けていると思うけどなぁ。


「いやいや、しかしながら、このメンコにはネフェリー氏の魅力がぎゅっと詰まっているでござるよ」

「えぇ~、そうかなぁ?」

「然り。輝く汗には仕事へのひたむきさが表れており、この驚いた表情などは普段はおしとやかなネフェリー氏とのギャップでとても可愛らしく見えるでござる」

「そう、なの? ヤシロ」


 なんで俺に聞く。

 一応、モデルがとても可愛らしく見えるように考えて描いているんだから、そう見えて当然だろう。


「あと、この若干前屈みな姿勢は、ネフェリー氏のスタイルのよさを如実に見せつけているでござる」

「あぁーっ、言われてみれば、なんか胸が強調されてるー! もぅ、ヤシロのエッチ!」


 自分のメンコを俺から隠すように胸に抱き、べーっと舌を見せつけるネフェリー。

 ……いや、大丈夫!? 舌の裏側とか切ってない!?

 毎回ひやひやするんだよなぁ、ネフェリーのあっかんべーは……

 パウラとのこの差は一体何なんだろう…………あ、種族差か。


「でも、頑張り過ぎて倒れちゃダメだよ」

「そうそう、心配しちゃうからね」

「あぁ、反省してるから、これから謝罪行脚だ」

「ふふ、ヤシロには悪いけど、なんか似合わないよね」

「やかましいわ」


 くすくすと笑うパウラ。

 ネフェリーは俺の隣にいるベッコに目を向ける。


「それで、ベッコさんはなんで?」

「『毎日みんなをイラつかせてゴメン』って謝罪行脚だ。な?」

「『な?』じゃないでござるよ!? 拙者、誰にも謝罪するようなことはしてはござらぬ!」

「なに言ってんだよ、ベッコ。お前は、ちゃ~んと、みんなをイラつかせてるって!」

「なんか励ますような雰囲気で暴言吐かれてるでござるな、拙者!?」

「じゃあ、とりあえず謝ってもらおうか」

「そうね。じゃ、ベッコさん。ど~ぞ」

「女子二人がヤシロ氏に便乗して悪乗りを!?」


 あははと笑い、なんとも姦しい女子二人。

 三人寄らなくても賑やかなもんだ。


 しかし、事前情報のおかげか、パウラもネフェリーも必要以上に心配する素振りは見せない。

 やっぱ大事だな、報告って。


「ところで、バザーについては聞いたか?」

「うん。それでネフェリーがウチに来てくれたんだよね」

「そう。今度もお手伝いしてあげようか、って」


 イベントの際、ネフェリーはよく人を手伝っている。

 中でも、カンタルチカでは助っ人の常連だ。いや、ベテランだ。

 陽だまり亭で言うところのデリアみたいなポジションになってるよな、もはや。


「それはちょうどよかった。カンタルチカにはちょっと頼みたいことがあってな」

「えっ、なになに!? また仕掛け側に入れてくれるの!?」

「じゃ、私も!」


 別に何をするってわけでもないんだけどな。

 そもそも、主催は俺じゃなくて教会なんだし。


「じつは、キンッキンに冷えたエールを出してほしいんだ。簡易氷室はアッスントに用意させるから」

「あっ! そうだ! 陽だまり亭、すっごい氷室を作ったんだってね! いいなぁ、ウチにも欲しいんだよねぇ……エールもビールも冷やすと美味しいから。でもスペースがなぁ……」


 大通りに並ぶ店は、立地がいい反面敷地が狭い。

 土地を広げようにも、大通りにはびっしりと店が並んでいる。

 どこも譲ってはくれないだろう。


「やるなら、地下を掘って貯蔵庫にでもするしかないんじゃないか?」

「地下かぁ……あり、かもね」

「じゃあ、私は地下にお風呂作ってもらおうかな」

「あっ、待って待って! ズルいよネフェリー! あたしも家にお風呂欲しいのにぃ!」

「じゃあ、地下に氷室とお風呂作ってもらえば?」


 その両立はムリだろ。

 冷たいのと熱いのを同じ空間には置けないっての。


「客を優先するか、自分の生活を優先するかだな」

「ん~…………ちょっと、しばらく悩む」

「悩む必要ないよ。どーせパウラはお客さんを取るから」

「分かってるけど! たぶんそうなるだろうけど! ちょっとくらい家にお風呂が出来るかもって妄想に浸りたいの!」

「というか、建っている家の地下に部屋を増築するなどということが可能なのでござるか?」

「そんなもん、ウーマロがなんとかするだろう」

「だよね、ウーマロさんだし」

「頼りになるもんね、ウーマロさん」

「物凄く無責任で甚大な期待が圧し掛かっているでござるよ、ウーマロ氏ー!」


 現在どこにいるのか分からないウーマロに向かって、ベッコが空へと吠える。

 そんな心配しなくても大丈夫だって。

 ウーマロだぞ?

 なんとかするだろうし、なんともならなくても顰蹙ひんしゅく買うのはウーマロなんだし。

 俺はノーダメージ! へーきへーき。


「で、どうして冷たいエール? ビールはダメなの?」

「ビールを出しても問題ないが、今回は『子供エール』があるからな」


 炭酸水を使ったアップルサイダーなのだが、子供エールって名前の方がガキどもの食い付きがいいだろう?

 ほら、日本にも子供ビールってあるし。

 ガラナとかホップとか、ちょっと苦みのある炭酸ジュース。


「ガキどもが大人の真似をしてエールを飲みたがるように、大人にはエールを飲んでいてもらいたいんだよな」


 親子で並んで飲んでいる様は微笑ましいとジネットも言っていたし。


「えっと……あのね、ヤシロ。ヤシロの故郷はどうだったか知らないんだけど、この街の子供は普通にお酒飲むからね?」

「はぁあぁぁあっ、そういやそうだったな!?」


 この街――というか、この世界では、ガキでも酒を飲むんだった。

 旅に出ると安全な水の確保が難しくなる。

 そんな時は、煮沸したお湯か、薄めたワインを飲むのだと、たしか以前誰かに聞いたな。


 いや、でも、ジネットもなんか微笑ましそうにしてたぞ?

 子供が大人の真似して可愛いな~みたいな想像してたぞ!?


「でも、薄めたお酒って美味しくないんだよね。気分も悪くなっちゃうし」

「あぁ、分かる。それで大人たちがこう言うんでしょ? 『この美味さが分かるようになったら大人だぜ』って」

「あぁ~、私のお父さんも言ってたなぁ」


 いくらガキのころから酒を飲んでもいいとはいえ、ガキがアルコールに弱いことには変わりない。

 なので、好んで飲むようなことはなく、水の代わりがそれしかないから仕方なく飲む――という位置づけらしい。

 そんな思い出のせいなのか、パウラは酒屋の娘なのにあんまり酒好きのイメージがない。

 料理の研究や商品を熟知するために飲むことはあるらしいが、あんまり好きそうではない。

 パウラにとっての飲酒は、仕事の一環なのだろう。


「じゃあ、ガキがエールみたいな甘いジュースを、大人ぶってごくごく飲んで大人の真似してたらどうだ?」

「「かわいい!」」


 あぁ、ジネットの発想も、こんな感じなんだな。

 なるほどなるほど。


「じゃあ、エールを頼む」

「ということは……結構忙しくなりそうね」

「今からいろいろ準備しとこうよ、パウラ」

「そうだね! ネフェリー手伝って!」

「任せて!」


 向かい合わせで「がんばろ!」と声を掛け合う二人。


 会場に酒が登場すれば、オッサンどもは昼間っから酒を飲み、ガキのおねだりを黙らせるためにお小遣いを握らせて「向こうで遊んでこい!」っていう展開になるだろう。


 ふふふ、これでまたメンコが売れる! 駄菓子が売れる!


 やっぱ、商売って家族全員を満遍なく満足させてあげなきゃいけないもんだよね☆





 カンタルチカを出て、俺たちは街の東側へ向かう。

 滅多に歩かない道を歩き、たどり着いたのは狩猟ギルド四十二区支部。


「ウッセはいるか?」

「おぉおお! ヤシロ! 無事だったか!」

「おーい! ヤシロが来たぞ!」


 近場にいた狩人のオッサンに声を掛けたら、奥からわらわらとオッサンどもが湧き出してきた。

 で、肝心のウッセがいないな。


「お前らは『どろんこハンド』か」

「俺らはあんな弱くねぇ!」


 レジーナが言っていた、すぐに仲間を呼んで群れで襲い掛かってくるという謎の魔獣だが、狩人たちは知っていたようだ。

 案外この街の近くにいるのかもしれない。気を付けよう。


「それより、見ろ見ろ見ろ! これが、バザーで使う弓なんだがよ、弦の張り方に細工をして威力を極限まで上げてあるんだぜ! すごいだろう!」

「ガキがゲームで使うもんなんだから、そこまで威力上げなくていいっつの!」


 危ねぇだろうが!

 ガキはどこに向かって矢を放つか分からんのだぞ?

 うっかり人に当たって大惨事――なんて巻き起こすなよ?

 ひょろろ~んっと飛べばいいんだよ。


「じゃあよ、じゃあよ! こっちの的を見てくれ! 迫力があるだろ!?」


 と、見せられたのは、「俺、絵心あるんっすよ!」とイタイ勘違いをしたヤツがドヤ顔で描いたような、なんとも微妙な魔獣の絵。

 ……迫力が足りないからって「ぎゃおぉおおん!」って書いちゃってるし。


「ベッコ」

「承知したでござる」


 何も描かれていない板に、ベッコが数分でド迫力の魔獣を描き上げる。

 まるでこちらに迫ってくるような迫力と躍動感。こういうのだよ!


「うぉおお、すげぇ!?」

「これは、拙者が以前襲われかけた魔獣の絵でござる。あの時は死ぬかと思ったでござる」


 お前、どこで何やってたんだよ?

 写生大会気分で街門の外に出たんじゃないだろうな? 死ぬぞ?

 ハチ人族とはいえ、お前の腕力は俺と大差ないんだから。


 ……あぁそうそう。ちょいちょい忘れかけるけど、ベッコってハチ人族なんだよな。

 で、家が養蜂家と。

 …………お前の親父が集めたハチミツとか混ざってないだろうな?

 オッサンの唾液入りのハチミツなんぞ食いたくもないぞ。

 え、なに? ローヤルゼリーも出ちゃってますって? やかましいわ。


「おい、絵描き! 他のも頼む! 予備の的も含めて、あと十枚くらい」

「しかしながら、拙者はあまり魔獣を見たことがない故、これ以外の魔獣が描けるかどうか……」

「架空の魔獣でもいいんだよ」

「それはそれで、拙者にはまだまだハードルが高いでござるよ。魔獣の骨格や筋肉についても、不勉強でござる故」


 船で、筋肉の付き方を分かっていないと指摘されて、こいつは自身の不勉強を悔いていたからな。

 不十分だと感じている状況で、適当な絵は描けないのだろう。


「んじゃ、紙とペン」

「おう。これでいいか?」


 狩人に渡された紙に、さらさらと数十種の魔獣の絵を描いていく。

 日本のRPGでお馴染みのモンスターたちだ。


「お、おい! このどろっとしたテカってるのはなんだ? こんな魔獣がいるのか?」

「それはスライムだな。ゲル状の生物だから打撃も斬撃も通用しないんだ」

「……そんなヤツ、どうやって狩ればいいんだ!?」


 いや、実際いるかどうかは知らねぇよ。

 お前らが知らないってことは、いないんじゃねぇの、スライム。


「俺の故郷では有名なモンスターなんだよ」

「……お前、おっかねぇところから来たんだな」


 この街よりはるかに安全な国だったけど!?

 少なくとも、外壁で守りを堅牢にしないと安心して暮らせないような場所ではなかったよ。


「ヤシロ氏! これは龍人族でござるか!?」


 と、ベッコが、俺の描いたドラゴンを指さして言う。


「いや、俺の故郷で有名なドラゴンだ」

「おぉ、これがかの有名なドラゴンでござるか! 初めて見たでござるが……いやはや、恐ろしい形相でござるな」

「……つか、龍人族ってこんな感じなのか?」

「拙者が読んだ古い資料によると、このような顔付きをしている者がいたそうでござる」


 二本の角に、鱗に覆われた体。

 鋭い牙と獰猛な瞳。

 口からは炎を吐き、背中に生えた両翼は突風を生み出し、空を高く舞うことを可能にする。


 ……なにそれ、怖い。

 そいつら本当に人間?

 しかもそれが数百年前この街を攻撃してたのかと思うと……


「おっかねぇ街だな……」

「「「いやいやいや! あんたんとこの故郷の方がおっかないから!」」」


 俺の描いたイラストを手に、狩人のオッサンどもが騒ぐ。

 そんなもん、ちょっと高めの装備を買って、強い魔法でもぶつけてやればあっという間に経験値になるような連中だよ。

 害はない。


 が、日本のRPGに出てくるような魔獣は、この近辺にはいないようだ。

 城よりデカいストーンゴーレムや甲冑に身を包んだスケルトンナイト、双頭のケルベロスや炎を操るヒュドラ、人を石化させるメデューサや三つ首の合成獣キメラ。


 ただ、ドラゴンはいるらしい。


「滅多に人前には現れないが、その昔、こいつ一頭で一つの街を亡ぼしたらしいぜ」


 と、狩人に伝わる話を聞かせてくれた。

 えぇ……やだ、怖ぁ~い。


「まぁ、ママならそんなドラゴンでも一撃だろうけどな!」


 えぇ……やだ、もっと怖ぁ~い。


「ベッコ。大ボスはメドラにしといて、この的にだけちょっと錘を付けとこうぜ」


 なっかなか倒れない仕様にしておこう。

 それこそ、狩人が本気の矢を射っても跳ね返すくらい強靭な的にしとかないとな。


「ママに矢を向けるなんて……俺ぁ恐ろしくてとても出来ねぇ……」

「射った瞬間、反撃にあって即お陀仏だぜ……」


 肝っ玉の小さいオッサンどもだな!?

 ゲームのメドラはただの的なんだから反撃なんかしてこねぇよ!


 ……え、してこない、よね?


「おう、野郎ども。何を騒いでやが……おぉ、ヤシロか!」


 どこで何をしていたのか、のそりとウッセが建物から現れる。

 手にはべったりと血が付いている。


「お前……物っ凄いエロいことを考えて大量の鼻血を噴き出してたのか?」

「違うわ! 魔獣を解体してたんだよ!」

「どんなエロい魔獣を?」

「魔獣にエロいも何もあるか!」


 手の血を手拭いで拭いて、ウッセが呆れたような息を漏らす。

 仕事の手を止めてこっちの話に混ざるつもりらしい。


「で、何を騒いでたんだ?」

「こいつらが、メドラを的にして矢を打ち込みたいって」

「「「言ってなぁーい!」」」

「ふふん。面白いじゃねぇか。ママに弓矢で挑戦か。ママと対峙する恐怖に打ち勝ち、矢を射ることが出来た者だけがその挑戦を許される。おまけに、ママを倒すことが出来りゃあ、そりゃあもう英雄じゃねぇか」


 ちょっとやそっとでは割れない木の板を三枚ほど重ねて強化し、支える板に300kgほどの錘を乗せて的を作るなら、メドラの強大さが多少は表現できるだろうと、ウッセは言う。


「そんな的なら、俺がこの手で倒してやるぜ!」


 たかがゲームだからと、ウッセが随分と息巻いている。


「では、的の絵はこのような感じでいかがでござろうか?」


 話の間に、ベッコがメドラの絵を描く。

 どっしりと構えるメドラが、ドラゴン顔負けのド迫力でこちらに向かって吠えている。

 この表情は、二人三脚の時に間近で見た表情だそうだ。

 ……あぁ、そういえば、ベッコってメドラと組まされてたんだっけなぁ、二人三脚。

 お前、よく生きてたな。


 そして、ハビエルの筋肉を徹底的に模写したベッコが描くメドラの肉体は、見ているだけでダメージを喰らいそうなほどに荒々しく、猛々しく、ある種神々しく描かれている。

 すっげぇ迫力……直視したらチビりそうだ。


 そして、そんな渾身のメドライラストを前にしたウッセは――


「……まぁ、恩師に矢を向けるなんてのは、冗談でもすることじゃねぇよな」


 ――一瞬でヘタレやがった。

 イラストでもおっかないらしい。

 まぁ、このメドラの表情じゃあ、普通の人間なら無条件降伏するだろうな。


 すげぇなぁ、メドラ。


「あとでハビエルのところに持って行って、このイラストに見合う板を用意してもらおう」

「待てヤシロ! ウチのハンターゲームには置かないからな!? もし的にしようとしたことがママにバレたら、俺らが的にされかねねぇ!」

「メドラはそんなつまらないことで怒らねぇって。むしろかかってこいって受けて立つだろ」

「じゃーお前が許可取ってこいよ!? ママの正式な許可がない限り、俺らは一切その案件に触れないからな!」


 さっきまでの威勢はどこへやら、すっかりヘタレやがって。

 これだからウッセは……


「ほんっと肝っ玉の小さいしょーもねぇーオッサンだよなぁ、ウッセは、あ、心配かけてすまん、肉ありがとうな、クソヘタレ」

「貶しながら感謝と謝罪してんじゃねぇよ!」


 ついででいいだろう、お前への感謝なんか。


「あぁ、そうだ。感謝ついでにお前らのメンコを作ってやるからよ、『これぞ狩人だ!』って感じで並んでみろ。こっちが絵の前面になると思って」


 とか言ったら、狩人が「俺が一番前だ!」と醜い争いをしながら詰めかけてきやがった。

 お前ら……テレビカメラに群がる小学生か。


「ウッセを中心に、ハの字に並んで、ご自慢の筋肉でも見せつけてろ」

「「「「こうか!? いや、こうだな!」」」」


 指示を出せば、ノリノリでポーズを決めるオッサンども。

 ノリがいいなぁ、狩人どもは。


「実に暑苦しい絵でござるな」

「「「んだと、丸眼鏡! 筋肉に謝れ!」」」


 ベッコに詰め寄るオッサンどもだったが、ベッコが「かっこよく描いておくでござるよ」と言えば、手のひらを返してベッコを守る者が複数名現れた。

 媚び売って自分だけかっこよく描いてもらおうとしてんじゃねぇよ。


「じゃ、メンコ関連事業への寄付よろしくな。詳しくはエステラに問い合わせてくれ」

「おい、ちょっと待て! お前が説明していけばいいだろうが! おい! ヤシロ! ちぃっ! こんな時ばっかり足速ぇな、テメェは!?」


 追いかけてくる狩人を振り切って、さっさと汗臭い支部を離れる。


 感謝の気持ちも伝えられたし、寄付の約束も取り付けた。

 うん、上々の出来だろう。





「お~い、ミリィ~!」

「あ、てんとうむしさん! ……と、べっこさん?」


 東側の森へやって来ると、森の入り口付近でミリィを発見した。

 よかった。森の奥の方じゃなくて。

 ミリィなしでこの森へ踏み入るのは自殺行為だからな。


「どうしたの?」

「ベッコがみんなに謝りたいって言うから、その付き添いだ」

「逆でござるよ!? ヤシロ氏が心配をかけた者たちへ謝罪行脚に出ているのでござるよ、今は!」

「ぁ、そうなんだ。……くすくす」


 ベッコの顔がよほど面白かったのか、ミリィが細い肩を震わせて笑う。


「ょかった。てんとうむしさん、元気そう」

「心配かけたか?」

「少し、ね。けど、元気になったって聞いたから、安心してた」


 花がほころぶような笑みを浮かべるミリィ。

 さすが実写版花キューピット。可愛らしさが天井知らずだ。


「わざわざ、顔、見せに来てくれたの?」

「それもある。直接謝って、安心してほしくてな」

「ぇへへ……ありがと、ね。もう大丈夫、だょ」


 なんて可愛い!

 バザーでミリィ売ってないかな!?

 余裕で買うよ!?

 展示品のみとか、開封済みでも気にしない!

 パッケージとか特に必要としない派なんで、俺!

 本体さえあれば、全然、それで!


「ミリィ、バザーなんだけど」

「ぁ、ぅん。なたりあさんに聞いたょ。みりぃたちも、生花ギルドで何か出店したいね~って話してたの」

「ミリィは出品されないのか?」

「みりぃは売り物じゃないょ!?」

「そこをなんとか!」

「むり、だょ!?」


 そっかぁ、無理かぁ。


「あら? あらあらあら! ヤシロさん!」

「まぁまぁまぁまぁ! ヤシロさん、元気になったのね!」


 森の奥から、異形の者たちが這い出してくる。


「ベッコバリアー!」

「ぎゃぁぁああ、でござる!」

「あ~ら? ぎゃあとは、随分失礼じゃない、ベッコさん?」

「私たちが魔獣に見えたとでもいうの?」

「い、いや、今のは条件反射でござって……」

「ベッコ……。謝っとけって」

「ヤシロ氏のせいでござるよ、八割ほどは!?」


 せいとか、責任とか、そんなもんどうでもいいから、お前が謝っとけ。

「申し訳ござらんかった」と頭を下げるベッコ。うんうん、人間、素直が一番だぞ☆


「しかし、森からぞろぞろ出てきたら物凄い迫力だな。もうハロウィン始まったのかと思ったぞ」

「ちょっと、よく言うわよ、ヤシロさ~ん!」

「もう、どんだけ~!」

「ひどいわよね~!」

「くぅうう、ヤシロ氏は謝罪を求められないでござる……っ! これが、格差っ!?」


 オバハンらは適度にいじったって怒りゃしないんだよ。

 いじられるの好きだし。

 関西のオバハンは、舞台上の芸人にいじられると、それを自分の持ちネタにして知人友人に話しまくるからな。

 オバハンとは、そういう生態なのだ。


「それで、今日はな~に? 明後日のバザーのこと? あ、心配かけたミリィちゃんに顔を見せに来たのね。んもぅ、やっぱりヤシロさんって……ねぇ~?」

「「「ねぇ~」」」

「ぁ、ぁのっ、そぅぃうんじゃ、なぃ、ょぅ!」


 オバハンらが訳知り顔で連帯感を見せ、ミリィが慌てふためいてわたわたしている。

 よし、くれ!


「生花ギルドで、花のエッセンスオイルを作るようになったろ?」


 ハンドクリームが誕生して以降、生花ギルドでは積極的に様々な花のエッセンスオイルを研究開発、そして作成している。

 これが結構いい出来で、ハンカチにでも染み込ませておくといい香りがするんだ。


「それをいくつか分けてくれると、ベッコがアロマキャンドルを作って持ってくるから、バザーで売ってみないか?」

「ちょっと待ってほしいでござる、ヤシロ氏! その話、拙者、初耳でござるぞ!?」

「だから今、説明しただろうが」

「今のは説明ではなく、漏れ聞こえた程度でござったよ!?」


 うっせぇなぁ。

 ろうそく作るの得意だろ?

 なら黙って作れよ。

 お前に拒否権なんてないんだから。


「ぁの、それなら、みりぃたちがみんなで作りたい、な。生花ギルドの新しい商品にしたいし……ぁ、もちろん、てんとうむしさんが『いいよ』って言ってくれるなら、だけど」

「いいよ」

「ぁりがとう!」

「拙者との対応が雲泥でござる!?」


 なに当たり前のこと言ってんだよ、ベッコ?

 ミリィだぞ?

 そんなもん、「いいよ」以外に言葉出てこねぇに決まってんだろ。

 なに、さっきの可愛いおねだり?

 お小遣いとかあげようか?


「あ、そうだ。ミリィ。お小遣いポイントをあげよう」

「みりぃ、子供じゃないもん!」


 なんか、バザーのルールを聞いた後から、ずっとオバハンどもにお小遣いポイントをあげるあげると言われて、おへそを曲げているらしい。

 普通に仕事してるだけで「えらいね~、お小遣いあげるね」って言われるのだとほっぺを膨らませる。

 そういうところでムキになるの……すっごく子供っぽくて、かわヨ!


 お小遣いポイントは、一応換金も出来るし、物と交換できるし、くれるってんならもらっておけばいいのに。


「アロマキャンドルなんだけど、バニラとラベンダーは入れてくれ、売れるから。あと、ポプリのストックがあれば――」

「あるわよ~! 取って置きのポプリが! バザーで売りましょ~って話してたのよ。ね~?」

「「「ね~」」」


 大丈夫かそのポプリ?

 ミリィが売ってると可愛らしいポプリに見えるだろうけど、オバハンらが売ると怪しい薬草汁に見えないか?

 大丈夫か?


「あと、メンコを作りたいんだが――」

「あ、見たわよ、ミリィちゃんのメンコ!」

「すっごく可愛かったわ!」


 オバハンたちのテンションが上がる。

 森の中で花に囲まれるミリィのイラストは、ミリィ大好きオバちゃんズにクリティカルヒットしたらしい。

 今はギルド長が持っていて、ギルド本部の目立つ場所に飾ろうとか言っているらしい。

 ……それを、ミリィが全力で阻止しようと奮闘している最中なのだとか。


「どうせ飾るなら、全員が描かれているメンコにしたらどうだ?」

「えっ!?」

「私たちも描いてくれるの!?」

「四十二区にあるギルドにはなるべく声をかけて、駄菓子やメンコに関わる新事業に寄付をしてくれたところのメンコは作ろうかと思ってるんだ。ほら、ウチの領主様って、領民みんなのことが好き過ぎるだろ? だから、そういうメンコが増えれば喜ぶと思ってよ」

「確かに、言われてみれば三十五区でメンコを作った際、エステラ氏はメンコの絵柄が三十五区の特色をよく表していることに感銘を受けていたようでござったな」

「あぁ。で、四十二区でやるなら、それのもっと規模のデカいものにしたいと思ってるんだが……生花ギルドも一枚噛まないか?」

「「「噛むわ!」」」

「私、ギルド長を説得してくる!」

「絶対メンコに描いてもらうんだから!」

「お化粧、直してこなきゃ!」

「だったら、森の花をいくつか持って行って、みんなで着飾ってみたらどうだ? 髪に花を挿すと、女性は華やかに見えるだろ?」

「「「乱獲してくるー!」」」


 乱獲って……獣でも狩りに行くのか、あいつらは?


 物凄い勢いで森に突撃していったオバハン……おぉっと、ずっとオバハンで通してしまったが、一応訂正――大きなお姉さんたちを見送り、俺は一つの懸念を口にする。


「森、なくならないといいな」

「だ、大丈夫だょ! お姉さんたち、森の管理のプロ、だから、……たぶん」


 ミリィも、ちょっと自信をなくす勢いだったようだ。


「しかし、領民みんなのメンコでござるか。ヤシロ氏の考えることは、実に壮大で、それでいて思いやりのある提案でござるな」

「ぅん。きっとみんな、喜ぶ、ね」


 そうだろ?

 ミリィも、みんな喜ぶと思うよな?


 そしたらさ、自分が描かれているメンコくらいは、欲しいよな?

 自分家のガキが「メンコほしぃー!」って駄々こねた時に、「そんなくだらないもの、買う余裕ありません!」なんて言わないよな?

 自分たちのメンコが出るまで、何度でも何度でも買っちゃうよな?


 つまり――メンコ、飛ぶように売れるよね?


 一度定着してしまえば、リピーターは増えやすい。

 目当てのものを手に入れたらもう買わないって連中もいるだろうが、「なんかいっぱい集まっちゃったし、ついでにあのギルドやあの可愛子ちゃんのメンコも狙っちゃう?」なんて層も出てくるだろう。


 母数が増えれば生き残りも増える!


 おまけに、新事業への寄付も『ギルドから』もらえるんだ。

 個人の金じゃなく、企業からの寄付なら、相応にまとまった額が動くだろう。


 これで、もっとじゃんじゃん作れる!

 新しいものがじゃんじゃん増えれば、ガキどもとコレクターどもがじゃぶじゃぶ金を注ぎ込む!


 そうして、発案者の俺にマージンが転がり込んでくる!


 まぁ、素敵!

 なんて素敵!


「やっぱり、みんなで幸せになるのが一番だよな☆」


 うん。結局のところ、駄菓子屋を盛り上げようとすれば、この結論に帰結するわけだ。





 というわけで、四十二区中を巡っていろんなギルド、店舗にメンコの話を持ち掛け、描きに描いた大量のメンコ。


「すごい量ですね」

「そんだけ、この街で働いてるヤツがいるってことだな」


 もちろん、これでもほんの一部だ。

 声すらかけられなかった連中も、まだまだいるだろう。

 とりあえず、第一弾としては多過ぎる枚数になったので、今回はこの辺で。

 評判が良ければ、第二弾として今回スポットが当たらなかった連中を描いてやればいいだろう。


「農業ギルドに、木こりギルド……あ、飲食ギルドは店舗ごとなんですね」


 ある程度ギルドでまとまって活動している連中は、まとめて一枚のメンコに収めた。

 狩猟ギルドや木こりギルドなんか、筋肉率が高過ぎて、メンコを叩き付けると「むきっ!」って音が聞こえてきそうな迫力だ。

 ……金物ギルドは、まぁ、うん。ノーマがいないとただの魔窟だな、あそこは。


 で、飲食ギルドや陶磁器ギルド、木工細工ギルドや畜産ギルドのように、個々が別々の場所でそれぞれに仕事をしているようなギルドは、めぼしいところをピックアップした。

 陶磁器ギルドならセロンのところ、木工細工ギルドはゼルマルのジジイ、畜産ギルドはネフェリーに加えて牛飼いの連中という具合にだ。


 で、飲食ギルドはそれぞれに特色が違い過ぎるので、何店舗かの店を回って看板娘たちをモデルにしてきた。

 カンタルチカはパウラが元気よく、檸檬は老夫婦が並んでにこやかに、陽だまり亭はいつものメンバーが楽しそうに笑っている。そんな仕上がりだ。


 この辺をエステラに見せて、どれを第一弾にするか選定して、今回漏れたメンコは「次回はこんなラインナップが待ってるよ」ってチラ見セしてやればいい。

 そうすりゃ「次はウチかな?」って、まだ声がかかってない連中もわくわく出来るだろう。

 不満は、なるべく散らしてやる方がいい。


「ヤシロさん」


 ジネットが陽だまり亭のメンコを持って俺にそれを向ける。

 イラストを指さして。


「ヤシロさんがいません」

「いや、それは『看板娘シリーズ』だから」

「でも、檸檬さんは店長さんも描かれていますよ?」

「……檸檬の店長が女じゃないという確証はない」

「男性ですよ、確実に!?」


 爺さんになれば、もう男も女もないだろうに。

 年齢一桁以降、五十数年ぶりに「可愛い」が似合う年齢になるんだから。

 ……いや、まぁ、爺さんは間違いなく男なんだけども。


「次回、検討するよ」

「……では、ヤシロは蓄光塗料で現れる、隠れキャラということで」


 マグダがぬっと現れて、そんな提案を寄越してくる。

 手には蓄光塗料の入った瓶と筆が。


 ……今描くのかよ。


「えっ、と、あの……蓄光塗料は……」


 前回、ベッコが描いたメンコが無意識事故を引き起こし、ジネットが警戒している。

 大丈夫だ。あんな事故、俺なら未然に防ぐ……っつーか、引き起こさせやしねぇよ。


「じゃ、端っこの方にちょこっと……」

「そんな隅にですか!?」

「……しかもかなり小さく描くつもり」

「えぇ~、ヤシロはもっと真ん中がいいよ。なぁ、ロレッタ?」

「デリアさんの言うとおりですよ、お兄ちゃん! お兄ちゃんはもっとドドーンと描かないと!」

「需要がねぇよ」

「そんなことないです! 陽だまり亭レディースが華やかな表の顔で、その裏で陽だまり亭を掌握しているお兄ちゃんが闇に浮かび上がる! それこそがかっこいいです!」

「俺は影の支配者か……」


 掌握なんぞしとらんわ。

 陽だまり亭は、今もこの先もずっとジネットの店だよ。


「じゃあ、ジネットのおっぱいをツンツンしている絵にしよう」

「ダメですよ!?」

「せめて絵の中だけでも!」

「ダメですっ!」


 筆を取り上げられた。

 そして、その筆をベッコに。


 おぉ~、ジネット。

 ここまで数十枚、百枚に近いメンコを休みなく描き上げたベッコにまだ無償労働を強いるのか。

 お前も、人の使い方が分かり始めたんだなぁ、ようやく。


「わたしたちに囲まれながら、楽しそうに笑っているヤシロさんを描いてくださいますか?」

「――素っ裸で」

「ヤシロさんっ!」

「えっ、素っ裸のヤシロ氏を描くでござるか? それとも、拙者が素っ裸で描くでござるか!?」

「……大変、ベッコが疲れている模様」

「さすがのござるさんも、これだけ書くと疲れるですね」

「……では、ブドウサイダーを持ってくる」

「あ、アップルの方が美味しいかもですよ、マグダっちょ!」


 我先にと二人が厨房へと駆け込んでいく。

 炭酸飲料を振る舞うつもりのようだ。二人とも。おそらく個別に。

 ……ジネットの許可も取らずに。


 これは、何かあるな。


「なんか仕込んだのか?」

「炭酸飲料の試飲を多くの方に行っていただこうと思いまして、バザーまでの間は積極的にご提供しましょうねと、先ほどお話ししていたんです」


「広報活動ですね」と、得意げに話すジネット。

 いや、ベッコはもう散々飲んでたろ。他のヤツよりも先に。


「……さぁ、ベッコ」

「飲んでです!」


 戻ってきた二人の手には、炭酸ジュースが握られていた。

 両手に。

 計四個!

 ……多いわ。一人で飲めるか、その量?


 あぁ、なるほど。

 あいつら、作りたくて仕方ないのか。

 バザーで売る時に客の前でやって「おぉー!?」って言われたいんだな。

 随分とうまくなってんじゃねぇか。いい泡だ。


 でも、デリアは参加しない。

 炭酸、イマイチだったんだな。甘い物と比べると食いつきの差が雲泥だ。


「ぐぇぇええっぷ」


 わぁ、めっちゃ既視感あるわ、あのゲップ。

 つか、ベッコ、ゲップやめれ。

 マグダもロレッタもあんま飲ませんな。

「まぁまぁ、グイッと一杯」じゃねぇーっての。


 そんな、炭酸攻めされるベッコをよそに、ジネットは出来上がったメンコを眺める。


「みなさん、いい表情をされていますね」

「モーマットは、ガッチガチに緊張してたけどな」


 モーマットに「モデルになれ」と言ったら、何を思ったのかがちがちに緊張して、畑の真ん中で直立不動になりやがった。

 写真じゃねぇってのに。

 ……写真を知らなくても、やっぱあぁなっちまうんだな、小心者は。


「このメンコを四十二区の地図の上に配置すれば、どこでどのような方が、どのような様子でお仕事に従事されているのか、よく分かりそうですね」


 ジネットが楽しそうにそんなことを言う。

 昔あったなぁ、教育系のテレビで、主人公が街を探検して出会った人や物の絵をデッカい模造紙に書いて地図を作るって番組。


「相当デカい地図が必要になるぞ」

「それでは置き場所に困ってしまいますね」


 え、まさか自分用に欲しかったのか?

 さすがに部屋には置けないと思うぞ。メンコもそこそこのサイズだし、何より数が多い。


「でもまぁ、情報紙にこの情報を提供して、どこの店でどんなヤツがどんな料理売ってるのか~なんて、食べ歩きマップくらいなら作れるかもな」

「それはとても楽しそうですね。作り手の顔が見られるのは安心と親しみを感じますから」


 まぁ、飯の情報はすでに情報紙で特集を何度も組んでいるが、そこの看板娘までは情報が出回っていない。

 カンタルチカと陽だまり亭は載ったことあるけど。

 ……あぁいや、陽だまり亭はウェイトレス三人をミックスした架空の人物だったが。


 けどまぁ、一つの企画としてなら面白いかもしれないな。看板娘特集は。


「じゃあいっちょ開催してみるか? 四十二区限定、看板娘トーナメント」

「むはぁ! それ面白そうです! 是が非でも参加しなきゃですね!」

「……マグダが優勝を掻っ攫う」

「あたいも参加していいか!?」

「では、今お遣い中のカンパニュラさんとテレサさんもエントリーしませんとね」


 ウチ、看板娘多いなぁ。

 普通一人か二人なのにな。


「お兄ちゃん、優勝賞品は何ですか!?」


 知らねぇし、やる予定もねぇよ、そんな角が立ちそうな大会。

 でもまぁ、もしやるなら……


「メンコ全種でどうだ?」

「わっ! それは欲しいです!」


 意外にも、真っ先に飛びついたのはジネットだった。

 こういうのが好きなのか?


「働くみなさんのお顔は、どれもとても素敵ですから」


 こいつは、ホント四十二区が好きだな。

 見たこともないような連中の顔なんぞ見ても楽しくないだろうに。

 今ここにあるメンコに描かれた面々は、多少なりとも面識のある連中ばっかりだけどさ。


 ――と、そこへ、先ほど出向いた時にはいなかったアッスントがやって来る。


「ヤシロさん、おられますか?」


 ドアを開けて俺を見るなり「あぁ、よかった」と息を吐くアッスント。


「先ほどは入れ違いになってしまったようで、不在にして申し訳ありませんでした」

「いや、気にするな。お前以外の面々でメンコを作ったから」


 アッスント抜きの行商ギルドのメンコを見せる。


「……この辺に私も入れていただけませんかね?」

「左上に丸く囲って顔だけでいいか?」

「それは、ロレッタさん専用の仕様ではないんですか?」


 まぁ、ロレッタには、いつかやってもらうつもりだけども。


「なんなら、嫁さんと二人で並んでるメンコでも作ってやろうか?」

「ぶふーっ!?」


 アッスントは、嫁に『会話記録カンバセーション・レコード』を読まれている。

 こういうことを言っておけば、きっと面倒くさい感じでおねだりされることだろう。


「い、いえ……妻は、あまり目立つのが好きではないようなので」

「じゃあ、二人だけでこっそり所有しているといい」

「どうしてそんなに見たがるんですか、私の妻を?」

「面白いからだけど?」

「面白がらないでください。…………メンコの件はいったん持ち帰り妻と話して検討させていただきます」


 どこまで嫁をひた隠しにする気なんだ。

 ……つーか、嫁の方も身を隠してる感があるんだよなぁ。

 予告なく訪れても、いっつもいないんだもんよぉ。


 ……本当に実在してるのか? アッスントの嫁?

 こいつの妄想なんじゃねぇーの?

 あ、そっか……そーゆーことか。


「涙拭けよ、アッスント」

「実在しますから! 寂しい妄想じゃありませんからね!」


 ぷりぷり怒って、アッスントは懐から紙の束を取り出す。

 その瞬間、満足そうに相好を崩す。


「ふふ、このような紙のお金は珍しいのですが――」

「お、出来たのか? 仕事が早いな」

「それはもう。早々に売り出した方が、確実に利益が上がりますからね」


 人は購入する瞬間にこそ躊躇いを覚えるが、一度手元に置いてしまうと結構無頓着になるものだ。


「こちらが、今回使用するお小遣いポイントです!」


 お小遣いポイントの販売を早めて、親世代の手元に持たせておけば、ちょっとしたことで「じゃあ、はい。お小遣い」と渡しやすくなる。

 硬貨に慣れているこの街の連中なら、紙の金券はオモチャのように見えるだろうし、抵抗も少ないだろう。

 日本でも、子供への贈り物に現金は抵抗があっても図書券なら渡しやすしとされているしな。


「『リボーン』のクーポン券同様、偽造防止の仕掛けを施してあります。情報紙発行会には今日と明日、可能な限りこちらの印刷を行ってもらえるよう手配しておきました」

「んじゃ、早速何枚か――」

「購入させていただきますね!」


 俺より早く、ジネットがお小遣いポイントを購入した。

 すでに用意されていたのか、ポケットに入っていた硬貨をアッスントに手渡す。


 そうして、受け取ったお小遣いポイントを、俺とベッコに差し出してきた。


「では、大変頑張ったお二人に、わたしからお小遣いです」


 それがやりたくて仕方なかったようだ。


 あ~ぁ。

 こりゃ、ジネットのヤツ、今日と明日は散財するんだろうなぁ。







あとがき




各方面に謝罪行脚をしなければいけないかもしれない、宮地です


この度は、誠に申し訳ございませんでした。

いや、なんかぱっとは思い浮かびませんが、きっと何かしらやらかしていると思いますので、とりあえず念のため、申し訳ございませんでした。

ぺこり



あ、今の「ぺこり」は頭を下げる音ですよ?

決して、おっぱいが揺れる音ではございません。



ぺこり☆



このように「☆」を付けるとおっぱいの可能性が……


 どんなおっぱいの音だΣ(゜Д゜;)



というわけで、

ヤシロが謝罪行脚と称して、街の人に会いに行くお話でした。

ヤシロと街の人との交流って、書いてて楽しいんですよね(*´ω`*)


こういう人生を歩みたかった、っていうのを盛大に歩んでくれていますので、ヤシロ。

私もなぁ、

街に出たら「あ、宮地さん!」「こんにちは!」「今日はいいおっぱいが入ってるよ!」

とか、

あっちこっちで声をかけられるような大人になりたかっ……


 いいおっぱいが入ってる!?(;゜Д゜)


え、どういう状況!?

入荷状況教えてくれます!?

いいおっぱいって、そんなインテルみたいに入っちゃうもんなんですか!?


とりあえず、お店に案内してもらいまsy――



お巡りさん「宮地さんですね? 署までご同行願います」



ん~……

この方たちにはしょっちゅう声をかけられるんですが、

私が思い描いている感じとはちょっと違うんですよねぇ~(^^;


なので、ダッシュ!

((((((; ̄□ ̄)」 しゅばっ!



ふぅ……走ったら喉が渇きました

そんな時は、そう、モスシェイクですね☆


 喉が渇いた時にシェイク!?Σ(゜Д゜;)


というわけで、レッツラゴ☆



店員さん「いらっしゃいモス~」

宮地「独特な出迎え!?」

店員さん「わたくし、店員の、幕戸マクド腱太ケンタです」

宮地「他所の店に行け!」

店員さん「十六歳、ぴちぴちの女子高生です☆」

宮地「女子高生なのに腱太!? 両親を告訴してもいいレベル!」

店員さん「『アキレス腱が太ぉ~くなるように』という願いを込めて腱太です☆」

宮地「込められた願いも酷い!? で、よく見たら健太じゃなくて腱太!?」

店員さん「本日はどのようなご用件で?」

宮地「買いに来たんですけども!?」

店員さん「どの面下げて?」

宮地「口が悪い!?」

店員さん「ご注文はモスシェイクでよろしいでしょうか?」

宮地「決めてかかったね!? そして、まさかの正解!」

店員さん「こちらでおモスあがりですか?」

宮地「『おモスあがり』!?」

店員さん「それとも、おモス帰りでしょうか?」

宮地「モス推すねぇ!? じゃあ、おモス帰りで!」

店員さん「サイズは、甲・乙・丙・丁・戊・己とございます」

宮地「SMLでなく!? そして多いな、サイズ!?」

店員さん「味は、静岡、栃木、鳥取とございます」

宮地「まさかの県名!? 味が想像だに出来ないね!」

店員さん「作り手は、吉田、小林、アントニーから選べます☆」

宮地「それは誰でもいいわ!」

店員さん「では、わたくし、幕戸マックが担当させていただきます」

宮地「名前のルビが『マクド』から『マック』に変わってるけど!?」

店員さん「はい。高校入学を機に大阪から東京に引っ越してきましたので!」

宮地「だからって、苗字の読み方は変えなくてよくない!?」

店員さん「とか言っている間に完成! はい、マックシェイクお待ち!」

宮地「モスシェイクを出せ!」



というわけで、もうすぐ(モス)1グランプリの季節なので、

漫才風味でお届けいたしました☆


……すみません。

ちょっと別件で忙しく、あとがき書いてる時間がなかったので、

今大急ぎで思いついたことを書いております@ナウ

まぁ、年末あるあるですよね☆



あぁ、そうそう



(」 ̄□ ̄)」< M1は、モスワンじゃないですよー!




いえ、一応言っておかないと、信じる方がいらっしゃるかもしれませんし

世の中、何が起こるか分からないものですからね☆


三ヶ月くらいの余裕を持ってスタートしたのに、

50話くらいでストックが尽きかけるなんて、一体誰が予想したでしょうか!

まぁ、毎回、その辺で一回「ストックが!?」ってなるんですけども!

『学習しない』でお馴染みの宮地さんですから、今回も例に漏れずそんな感じです

てへっ☆


去年の今頃は、

報労記の準備をしたかったのに仕事に忙殺されて「むきー!」ってなって

「うっきぃー!」ってなって「うっほうっほ、うっほっほ!」ってなっていまして

アレに比べれば、今年はまだ比較的穏やかに過ごせておりますし、

このまま何事もなければ『異世界詐欺師』を書きつつ年越しできそうですし

よかったよかった(*´▽`*)


では、皆様、よいお年を――



 いや、まだ早い!Σ(゜Д゜;)



しかしまぁ、なんですね、

モスの店員さんの「お持ち帰りですか?」が「おモス帰りですか?」に聞こえたっていう

それだけの小さぁ~い話題だけで、なんとかあとがきって書けるもんなんですねぇ~

(*´▽`*)


世間には、あとがきのネタがたくさん転がっているものです。

皆様も、あとがきのネタを見つけて、素敵なあとがきを書いてくださいね☆


私も、まだまだ精進いたしますので

飽きずにお付き合いくださいね☆

ぺこり☆



 今、おっぱいが揺れる音しなかった!?(゜∀゜)o彡°


 だから、どんなおっぱいの音だ!?Σ(゜Д゜;)



前フリと、ネタ回収

これが大事!(≧▽≦)/



次回もよろしくお願いいたします。

宮地拓海

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[一言] 店員さん「味は、静岡、栃木、鳥取とございます」 宮地「まさかの県名!? 味が想像だに出来ないね!」 え、出来ますよね? 静岡は抹茶味、栃木は苺味、鳥取は、、、砂味!? いや、鳥取と言えばカ…
[良い点] パウラたんと言えば尻尾! ヤシロさん、分かってますね! あと、私もミリィたんにお小遣いポイントをあげたいです。 ミリィ「みりぃ、子供じゃないよぅ!」 次回も楽しみにしています。 [気…
[気になる点] メンコでこの熱狂・・・野球とかみたいにトレーディングカードにしたらさらに売れるのでは?(金の亡者) [一言] ミリィたん、かわヨ!
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