報労記60話 ある密かな企み
本日、ヘア&メイクを変えた二人が、フロアの真ん中で見つめ合う。
長年ライバル関係にあり、かーなーりーギスギスしていたイーガレス家とベッカー家。
その長男と長女が今、呆けたような顔で互いを見つめている。
「こんなハンサム……見たことありませんわ」
いや、あるだろう。
「なんて可憐な女性なんだ……名前を知りたい」
いや、知ってるだろ。
「の、……のわ?」
真ん中でおろおろすんな、アルシノエ。
ちょっと、視界的に邪魔だから。
気が散るから。
脇に避けてて!
「「あ、あのっ!?」」
意を決したように発した声が重なる。
いや、もういいよ、そーゆーの!
どーせ「お先にどうぞ」「いえ、あなたから」的なヤツだろ?
ベタだなぁ……
「「お名前は!?」」
ゆずらねぇーなぁ、どっちも!?
どんだけ我が強いんだよ!?
「ワタシの名は、パキス・イーガレス」
「アタクシは、ロリーネ・ベッカーと申します」
「「……素敵な名前」だ」
いや、知ってるよね!?
めっちゃ知り合いだよね!?
なんなら、三十五区でバッチバチ口論してたよね!?
え、なに?
この辺みんな揃って記憶喪失なの!?
「あ、あの……レディにこんなことを聞くのは失礼かもしれませんが……ご趣味は?」
「えっと……お芝居を、少々」
「奇遇だなぁ。実はワタシもなのです!」
「まぁ……運命、ですわね」
「ちょっと、こいつらの記憶、その辺に落ちてないか探してみて!?」
つい先日!
昨日、一昨日、俺らがお前らに教えたんだよ! 紙芝居と人形劇を!
奇遇も何もあるかぁ!
「い、いやぁ、なんだか、今日は暑いな」
「そ、そうですわね、なんだか、顔がぽかぽかいたしますわ」
「では、冷たい飲み物でもいかがですか?」
と、ジネットがぶどうジュースを差し出す。
……炭酸入りを渡せばよかったのに。
で、二人して盛大に咽ればいいのに。
「これはありがたい。感謝する、店長殿。さ、レディ、椅子をお引きしましょう」
「まぁ、紳士的……ぽっ」
「カタクチイワシ。少し聞きたいのだが……我々は今、何を見せられているのだ?」
「こっちが聞きたいわ」
この珍場面、半分はお前んとこのせいだからな?
珍場面の半分は三十五区で出来てるからな?
「では、どうぞ」
「ほいさっと」
テーブルに着いた二人の前にぶどうジュースが置かれ、いつの間に見つけたのか、予備として作っておいたラブラブストローをレジーナがコップに差す。
そしてマグダが、二個あったグラスの内一つを素早く回収する。
「こ、これを使って飲むのであろうか?」
「そ、そのようですわね」
「……実はこれは、今後港で売り出す最新アイテム」
「な、なんと! 港関連のものであるならば、ワタシが試さないわけにはいかんな」
「アタクシも、ベッカー家の長女として、知らずにはおれませんわ!」
マグダの一言で、パキスとロリーネが意欲を燃やす。
……燃え尽きればいいのに。
「で、では……」
「は、はい。失礼……いたしますわ」
そっと顔を近付け、ゆっくりとストローを咥える二人。
そして――
「「ちぅ~……」」
「でぇぇえい! いちゃつくな! 誰だ、こんなくだらないものを作りやがったヤツは!?」
「あぁ、残念やなぁ。明日までもたへんかったわ」
「存外、すぐに爆発しましたわね」
「君だよ、あんなものを生み出したのは」
えぇい、なんとも言えず不愉快だ!
得も言われぬ不愉快さだ!
「こ、これは、恥ずかしい!」
「ですわね!」
恥ずかしさが限界に達し、双方が立ち上がり、互いに背を向けて少し距離を取る。
「しかしながら……あんなことまでしてしまったのでは……これはもう、責任を取るより他ないのでは……?」
「あぁ、こんなはしたない真似を……もう、あの方以外のもとへはお嫁に行けませんわ……」
「おい、カタクチイワシ。なんだこれは?」
「だから、半分はお前の責任だっつーのに」
ルシアが若干不機嫌なのは、散々自分に言い寄っていたチャラいナルシストが、割と本気めに恋するオーラを放っているから…………ではなく、単純にイラつくからだろうな、目の前で繰り広げられるこの甘ったるい雰囲気が。
ジネットですら苦笑いだ。
「むぅ……」
そんな中、分かりやすく不機嫌顔を見せているのは、パキスの妹、アルシノエ。
「お友達が……取られたのわ」
友達になった瞬間、男になびかれて、史上最速で「友情より愛情を優先するのか、この薄情者ー!」的な展開を味わっているようだ。
高校生くらいで起こるんだよな、そういう現象。
だが、友達がいなかったのはロリーネも一緒だったようで、アルシノエの言葉に反応を見せる。
「取られてなどおりませんわ! アタクシは、今もちゃんとアルシノエ様のお友達ですわ」
「……ホントのわ?」
「証拠をお見せいたしますわ! アルシノエ様とも、このストローでジュースをいただきましょう」
そう言って、先ほどパキスが座っていた席へアルシノエを誘導するロリーネ。
先ほど咥えていたストローを咥え、アルシノエを待つ。
だが……
「兄上のよだれがべったり付いているストローなんて使いたくないのわ!」
そりゃまぁ、イヤか。
「で、では、アタクシの方へ。それでアタクシがそちらへ…………って!? 間接キッスは結婚してからですわ!」
そんなルールはねぇよ。
で、キスに小さい『ッ』を入れるな。
「では、こちら側にはワタシが座ろうではないか」
そして、アルシノエの向かいに座るパキス。
「兄上と飲んでも、ちっとも楽しくないのわ!」
そりゃごもっともだ。
「カタクチイワシ様! 三人で飲めるストローを作ってのわ!」
「え、なに、その修羅場製造機?」
カップルで飲んでるところへ浮気相手が乱入してくる時用?
港の海が真っ赤に染まっちゃうだろうが、そんなもん。
「母上! 兄上がワタシのお友達を取ろうとするのわ!」
「ごめんのわ、アルシノエ。今いいところだから話しかけないでのわ」
「のわっ!?」
おいこら、そこの毒親。
放任主義も度が過ぎると児相に報告するぞ。
もう一緒に住めなくなっちゃうんだぞ!
で、独特な驚き方すんな、アルシノエ!
「とりあえず、弟たちとお菓子でも食ってろよ」
と、タキスとリーネの方へ顔を向けると――
「しゅわしゅわ、美味」
「みたらし、至高ですわ」
「お前らはずっとマイペースだな!?」
気になったりしないかねぇ?
この兄と姉のひと悶着!
おもしろ珍場面集!
参加して!
我関せずを貫き通さないで!
で、タキス、ゲップ漏れてる!
リーネ、口の周りベッタベタ!
「まともなヤツはいないのか!?」
「ホンマや、見渡す限り一人もおらへんわ」
と、俺をガン見しながら言ってくるレジーナ。
アホめ。今お前の目に映ってる人物こそが、この空間で唯一まともなイケメンだろうが。
兄貴は恋に、弟は炭酸に、母親はお菓子作りに、で、きっと実家では父親がメンコに夢中になっているのだろう。
……なんか、アルシノエが可哀想になってきたわ。
「アルシノエ。友達なら、エステラやルシアになってもらえよ。今ならトレーシーもいるぞ」
「領主様とお友達だなんて、恐れ多いのわ!」
「じゃあ、カンパニュラ」
「次期領主様のわ!」
ちっ。知ってやがったか。
誰に入れ知恵された? ルシアか?
「教えておいた、念のために。しそうだったから、とめどなく粗相を」
なるほど。ギルベルタだったか。
まぁ、粗相くらい、笑って許してくれそうだけどな、カンパニュラ『は』。
カンパニュラに粗相すると、ブチ切れる人員、結構いそうだなぁ。両親はじめ、三十区の兵士たちが。
「じゃあ、私とお友達になってくれないかしら?」
と、マーゥルが穏やかに微笑む。
おい、やめとけ、アルシノエ!
この中で一番ヤバいヤツだから、そいつ!
「わぁ、優しそうなオバちゃんのわ」
その発言で優しくなくなったと思うよ、たぶん!?
「うふふ。あなたはまず、自分を知り、他人を見る目を養いなさい――ね?」
「なんか、物凄い迫力なのわ!?」
そりゃそうだろう。
なんたって『BU』で一番怖い貴族なんだから。
人付き合いの『いろは』どころか、『ゑひもせす』まで知ってるヤツだからな。
「私が少し、礼儀見習いを手ほどきしてあげようかしら?」
ベッカー家、最大のピーンチ!
イーガレス家からマーゥルみたいなのが誕生したら、ルシアでさえ手古摺りそうだ。
「でもその前に……」
にっこりと笑った顔が、こちらを向く。
怖っ!?
何その笑顔!?
めっちゃ怖いんですけど!?
「紙芝居と人形劇って、なぁ~に?」
もう、一から十を通り越して百まで全部知らなきゃ気が済まんのか、お前は!?
しょうがないので、この場にあるもので簡易的な紙芝居と人形劇をやってみせた。
ジネットが口を滑らせて、落語まで披露させられた。
観客連中はよく冷えた濃厚プリンを食いながら、俺の出し物を鑑賞してやがった。
なに、この差!?
金取るよ、ホントにもう!
つーか、見返りはきっちりもらうからな、覚悟しとけよ、貴族ども!
「さすがヤシぴっぴね。素晴らしい話芸だったわ」
「やはり、オオバ様の桃太郎は一味違いますわね……っ!」
「見たことない人形劇だったのわ!?」
マーゥルがぱちぱちと拍手をする横で、軽くパニくってる連中がいる。
手元にあるのが、桃太郎の紙芝居と花咲か爺さんの人形だけだったので、その二つを上演したのだが、人魚姫しか知らないイーガレス家が盛大に慌てふためいている。
人形も、自分たちのとは違う作りだしな。
まぁ、しょうがない。
適当に驚いてろ。
ちなみに、落語は寿限無をやった。
短くまとまっていて、分かりやすく面白い。
ジネットが必死に真似しようと頑張っているが、初っ端から「じゅげぞ」って言ってたから先は長いだろうな。
そこで詰まったヤツはジネットしかいなかった。
とかなんとかやっているうちに、太陽は随分と高くまで昇っていた。
「おはようございます、皆様」
そんな時、タイミングよくナタリアが陽だまり亭へやって来る。
胸を張り、いつにも増して凛々しい顔つきで。
「準備は完璧に整っております。さぁ、楽しい楽しいレッスンを始めましょう」
ナタリアがにやりと笑った瞬間、ひやりと背筋が冷えた。
……お前、どんなレッスンするつもりだよ?
ほどほどにしとけよ?
「丸投げで大丈夫か?」
「はい。こちらにすべてお任せください。本日中に、最低ラインにまで到達させてみせます」
それぞれの兄弟姉妹たちが身を寄せ合った。
脳が警鐘を鳴らしているようだ。
なんでか、マグダもジネットの背中に身を隠してるし。
「じゃ、死なない程度によろしく」
「はい。蘇生は得意ですので、おまかせください」
あぁ、そっかー。
一回は軽く死んじゃうんだー。
ま、がんばってねー。
役者連中がナタリアにドナドナ~っと連行されていくのを見送っていると、アッスントが懐から砂時計を取り出した。
間もなく落ち切りそうな砂時計。
……あんなもん、懐に入れてたら、正確な時間なんか計れないんじゃねぇの?
「間もなくですね」
嬉しそうに呟いて、フロアをぐるりと見渡す。
エステラ、ルシア、トレーシーを見て、にこりと眼を細める。
「イメルダさんとマーシャさんは想像できましたが、ルシア様とトレーシー様に関しては僥倖と言わざるをえませんね」
『何が』という部分が隠された発言に、エステラが身を固くする。
揉み手のアッスントの顔が、邪悪にほころぶ。
そして、アッスントの持つ砂時計の砂が、すべて落ち切った。
まさにその時!
「おはようございます、みなさん。おかえりなさいませ。そして、ありがとうございます!」
満面の笑みを浮かべ、今にも踊り出しそうなほどのハッピーオーラを纏ったウクリネスが、大荷物を背負って陽だまり亭へやって来た。
なんでウクリネス?
と思っていたら、アッスントがその理由を口にする。
「カワヤ工務店の皆様には、精一杯頑張っていただかなければいけませんからね」
「あぁーっ!? まさか!?」
エステラが事態を察し、悲鳴を上げる。
「エステラさん。とっても可愛いお洋服をた~っくさんご用意しましたから、楽しみにしていてくださいね」
そう。
四十二区の港にカラーサンドアートの工場を建設するにあたり、工費削減のため大工どもを極限まで酷使しようと目論んだエステラは、アッスントの罠にはまり自身のプリティ~な姿絵を提供させられることになってしまったのだ!
そして、今、その姿絵の制作が、この場で、強制的に行われようとしているわけだ!
「ちょっと待ってよ、ヤシロ! ボクが大工を酷使しようと目論んだわけじゃないよ!?」
「私の罠ではなく、ヤシロさんの発案でしたよ、この姿絵計画は」
なんか、腹黒コンビが責任を俺に擦り付けようとしてくる。
お前らが値切りたがって、大工を酷使しようとしている。それが事実で、それがすべてだろうに。
「それよりも、喜んでください、ウクリネスさん。今回はなんと、ルシア様とトレーシー様もご一緒です!」
「まぁ、素敵!」
「ちょっと待つのだ、支部長! 聞いておらぬぞ!?」
「私に何をさせようというのかは知りませんが、それに応える義務はありませんよ」
他所の領主の姿絵を、庶民に勝手にプレゼント――なんて言えば、そりゃ反発されるわな。
だが、突き崩す方法はいくらでもある。
そこんとこ、分かってるよな、アッスント?
「そうですか……残念です」
わざとらしく、盛大なため息を吐くアッスント。
「トレーシー様にはお喜びいただけると思ったのですが……」
「横から失礼いたします。今聞いた感じでは、トレーシー様の姿絵を描いてどなたかに贈るという話ですよね? さすがに、そういったことに許可は出せません」
「そうです。ネネの言う通りです」
ネネの背に庇われ、トレーシーが完全防御の姿勢を見せる。
ネネかぁ……バリアとしては脆弱だなぁ。
「トレーシー様には、エステラさんとお揃いのドレスで、仲睦まじく微笑み合うお二人の姿絵にご協力いただきたかったのですが」
「エステラ様と……お揃いで、仲睦まじく…………二人の姿絵……」
ほら、貫通。
しかも、クリティカルヒット。
効果は抜群だな。
ネネを押しのけて自分から前に出てきちまってるし。
ネネ、もっとしっかり止めないと暴走するぞ、その領主。
「その姿絵が世に出回れば――『あぁ、この二人の領主はとても仲が良いのだな』『なんてお似合いなお二人なんだろう』『四十二区と二十七区の絆は永遠に不滅だな』――と、そう周知されるかと思ったのですが……」
「やりましょう!」
「トレーシー様! そのような安請け合いは――」
「黙りなさい、ネネ! エステラ様には、ひいては四十二区にはいろいろとお世話になっているではないですか! もしそれがご恩返しになるというのであれば、私はどんな協力も惜しみません! そして、ちょっと大きめのサイズのその絵をくだされば何も文句は申しません!」
はい、陥落。
チョロいな~。
あ~ぁ、ネネが「もう知りません」って拗ねちゃった。
拗ねて奥のテーブルでプリン食べ始めちゃったよ。
まぁ、トレーシーは常日頃から、堂々と弱点を宣言しているようなもんだしなぁ。
攻略難易度はイージーだろう。
で、トレーシーが陥落したならば――
「ルシア様にも強制は致しません。エステラさんととても仲の良いトレーシー様がご協力くださるならば、それでもう十分ですので」
「ふん。それで私を煽っておるつもりか? 浅はかな」
「あ、マーシャさんとイメルダさんには、是非ともお願いしたいです。エステラさんの隣にお二人は不可欠ですので。ライバルであり友人であり、エステラさんの隣に並び立てる気品と美貌をお持ちのお二人ですので、何卒、よろしくお願いいたします! あ、ルシア様には強制いたしませんので」
「カタクチイワシ! なんか、あいつ、嫌いだ!」
拗ねるなよ。
そりゃ、他のヤツには「是非お願い!」で、自分にだけ「あ、無理しなくていいから」って「いてもいなくても別にどっちでもいいし?」みたいな扱いされたらムカつくのは分かるけども!
そういう作戦なんだって、考えたら分かるだろうに。
……ったく、しょうがない。
「ルシア。アッスントの思惑に乗るんじゃなくて、エステラを助けると思って協力してやってくれないか? サンドアートの工場建設は三十五区にも影響のあることだし、今回の姿絵で得るのは金じゃなく労働力だから還元するのは難しいが、何かあればエステラが全力で協力するってことで、な?」
「まったく……四十二区は貴様だけでなく、困った者が多いようだ」
腕を組んで腹立たしげに息を吐き、エステラを見る。
「まぁ、エステラに協力することに否はない。もっとも、完成品を乱雑に扱うことには、全力で抵抗させてもらうがな」
領主の姿絵を叩き売りして小銭を稼ぐなんてのは、そりゃ怒られるだろうよ。
けどまぁ、お前、もうメンコになってるわけだし。
地面に叩きつけられるわけだし。
気にすんなって☆
――ま、こういうのは建前が必要なんだよな。
「じゃあ、ベッコ。大きいキャンバスに領主たちの絵を描いてそれぞれにプレゼントしてくれ。四十二区の領主から、友情の証として」
「そういうことでござれば、拙者いつにも増して力を込めて描かせてもらうでござる!」
「で、その絵を模写して、その模写のレプリカを作ろう」
あくまで模写のコピーの量産品だ。
それなら、多少は名誉も守られるだろう。
「貴様の舌は、本当によく回るな、カタクチイワシ。二枚どころではないのであろうな」
憎まれ口を叩きつつも、落としどころを見つけて納得したらしいルシア。
アッスントの口車に乗るのは癪だが、エステラの助けになるのはやぶさかではない、ってのがあいつの本音だろうしな。
あとは、それを使ってどう稼ぐか……あ、メンコにしたら売れるかも。
今回の港や駄菓子関連の新規施設の建造にかかる費用を、そのメンコで捻出するというのはどうだろうか?
ある種のクラウドファンディングだな。
返礼品が領主の姿絵だ。
合同開発基金でも作って、そこで資金を管理すればもっといろいろ作れるんじゃね?
ふむ、いいかもしれない。
基金に寄付金を出した領主は、漏れなく自分のメンコが作られる――となれば、リカルドとゲラーシーから金を巻き上げられる。
よしやろう!
やってみよう!
で、今回。
ルシアとトレーシーが協力をOKしてくれて一番喜んだのは、言うまでもなくウクリネスだった。
「みなさん、とっても綺麗です!」
ドレスに着替えた領主三人がフロアに並ぶ。
王都で開かれるダンスパーティーに出席するかのような、華やかなドレス姿の三人は、否定のしようもないほどに完璧なまでの美しさと華やかさを身に纏っていた。
やるなぁ。
「さすが、腐っても領主」
「もっとマシな誉め言葉は思い浮かばなかったのかい?」
「誰が腐るか。余計なことしか言わぬ口を縫い付けるぞ、カタクチイワシ!」
「あはぁ、エステラ様……素敵」
一人だけ、物凄く幸せそうだ。
そして、一人だけ物凄く――
「ダイナマイツ!」
「「黙れ」」
ナイノパイズな二人が俺を睨んでくる。
「ナイノパイズ」
「「黙れと言っている!」」
いやだって、トレーシーのトレーシーが、もう、「とれぇぇえーーしぃぃいいー!」なんだもんよ!
ウクリネスが強制的にさらしを没収したようで、それはそれは、たいそうたわわなふくらみが華やかなドレスをより一層ゴージャスに魅せている。
「いりゅうぅぅうう――」
「懺悔してください」
ジネット。
耳を引っ張るのはやめなさい。
そこは人間の急所だから。
「では皆様、こちらの席へお越しください」
カンパニュラが、窓辺の明るい場所へ設けた特設ステージへ、領主三人を案内する。
ちょっと豪華な椅子を一脚用意して、手前に小さなサイドテーブルを置き、そこには可愛らしい花を飾ってある。
「ゎあ……みんな、本当に綺麗……」
と、超特急の依頼にも嫌な顔一つせず、素晴らしい花束を持ってきてくれたミリィが、並ぶ領主たちを見てため息を漏らす。
ちなみに、このちょっとゴージャスな家具はゼルマルの家から分捕ってきた。
あいつ、キャラバンの時にエステラに椅子を褒められてから、なんか高級志向の家具とか作ってやがるんだよな。
誰に売るわけでもないくせに。
なので、有効活用してやった。
「えっと、ここはやっぱり年長者のルシアさんが椅子に――」
「そなたが座ればよかろう。私とトレーシーはそなたのおまけみたいなものだ」
「それじゃ、おまけに本体が負けてますよ」
先輩領主に持ち上げられて居心地悪そうにしているエステラ。
あいつなら、そういう反応するよなぁ。
別に負けちゃいないと思うけど。
「とりあえずエステラがセンターで、向かって左側にルシア、右側にトレーシーが立ってくれ」
「えっ、……本当にボクが真ん中なの?」
「これは四十二区用だ。あとでその二人がセンターの絵も描く」
「はは……、ベッコだからこそ出来る芸当だよね」
この世界。
肖像画を描かせるとなると一日仕事になり、さらに完成までは数ヶ月かかるのだそうだ。
写真撮影のように何パターンも構図を変えて――なんてことは出来ないらしい。
そりゃそうか。
「エステラ、顔は前を向いたままで膝をトレーシーの方に。で、体も若干トレーシー側に向けてくれ……そう、そんな感じで。で、ルシアは後ろからエステラの肩に手を――」
「オオバヤシロさん! 手を乗せる役、私がやりたいです!」
「…………じゃあ、エステラ。180度反転」
「なんか……ポーズ決めるのって、むず痒いね」
今のうちに慣れとけ。
こういう機会は、今後増えていくかもしれないし。
「ナタリアがいないから、髪やメイクの手直しはイメルダに頼んでいいか?」
「任せてくださいまし」
「後ろの二人は給仕長に頼む」
「引き受けた、私は、友達のヤシロの依頼を」
「お任せください。トレーシー様を輝かせるのは得意です!」
給仕長がそれぞれの主の髪やドレスを整え、イメルダがエステラを担当する。
一通り整えた後、領主たちが持ち場についたところで、イメルダが全体を見渡して、前髪や服のシワなどを微調整する。
うまいもんだ。
ホント、なんで出来るんだろうな? お前はやってもらう側の人間なのに。
「ではベッコさん、お描きなさいまし!」
「イメルダ。邪魔。ボクの前で仁王立ちしないで」
「この方が美しいですのに!?」
「あとで描いてもらえばいいから、今は退いて!」
キャンキャン吠えて、折角整えた髪の毛を跳ねさせるエステラ。
……まったく。
「ほれ、動くな」
「ぅえ……っ! ヤ、ヤシロがやるの?」
「お前とイメルダはいつまでもじゃれ合うからな」
「……じゃれ合ってなんか……」
「ほら、俯くな。髪が落ちる。前を向いて……そう。いい感じだ」
「ぅぐ…………いい感じとか、言わなくていいから」
「顔動かすな」
俺を睨もうとしたエステラの動きを封じる。
「ルシアとトレーシーはさすがだな」
「肖像画なら、何度か描かせたことがあるからな」
「私も、父に言われて、幼少期から何度か」
貴族のご令嬢なら、その可愛らしい成長記録を絵に残しておくものなのだろう。
極貧の四十二区では、そんな余裕はなかったようだが。
「なんか、変に緊張する……顔、このままでもいい?」
「せめて笑ってやれよ」
写真じゃないから、そこまでキメ顔しなくてもいいだろうとはいえ。
ベッコは瞬間記憶力が凄まじいからな。油断すると、油断したままの顔で描かれるかもしれんぞ。
「いつも通り笑ってりゃいい。お前は、そん時の顔が一番似合ってる」
「そ……そう」
エステラを納得させ、モデルたちの前から離れる。
――と、エステラがひょっとこみたいな顔してた。
「何やってんだ、お前は!?」
「う、うゅしゃい! こっち見りゅにゃ!」
「ヤシロく~ん。エステラにあんなこと言っちゃ、そりゃこうなるよ~☆ エステラだも~ん」
「まったく、ユニークな顔ですわね」
「エステラさ~ん、いつものお顔の方がもっと素敵ですよ~。笑ってくださ~い」
ジネットがエステラに手を振って気を紛らわせようとしている。
写真撮影でグズる赤ん坊か、あいつは。
まぁ、今はめっちゃ真っ赤ん坊だけどな。
「しょうがない。俺が小粋なジョークを披露してやるから、それで自然に笑え」
先日あった、実体験を少々……
「ナタリアに『ナイスなおっぱいを知らないか』と尋ねたら、エステラを推薦された。『どういう意味だ?』と尋ねたら、あいつはこう言ったんだ。『胸が、ナイっす』」
「さ、ベッコ。さっさと描いてくれるかい? この後狩らなきゃいけない獲物が出来たから」
「あの、エステラ氏。お気持ちは重々察するでござるが、せめてもう少し笑顔になってほしいでござる」
なんか、戦直前のような顔してるぞエステラ。
……まったく、しょうがない。
「ルシア、トレーシー」
後ろに立つ二人の名を呼び、エステラを指さして、俺の首を指し、両腕で抱きつくような仕草をしてみせる。
意図を察したルシアと、隙あらばそういうことがしたいトレーシーは俺の望み通り、同時にエステラへと抱きついた。
「わっ!? ちょっと、なんですか!?」
「表情が硬いそうなので、協力してやろうと思ったまでだ」
「笑ってください、エステラ様」
ルシアが首に、トレーシーが胸に手を回し三人で顔を寄せ合うように引っ付く。
「わぁ!」っとジネットが声を漏らし、「ちょっと、羨ましいです」と笑みを零す。
綺麗に着飾った令嬢三人が、子供のように抱き合ってけらけらと笑い合っている。
うん。この光景は、なかなかいいんじゃないだろうか。
「ベッコ。目に焼き付けたか」
「抜かりなく、でござる。踊る毛先の一本まで、しっかりと記憶したでござるよ」
この後、盛大に乱れた髪をセットし直す時間が必要になる。
その時間で、ベッコなら今のこの絵を描き上げてくれるだろう。
デカいキャンバスに、次々と色が塗られていく。
インクジェットプリンターのように、正確に、速く、まるで写真のように。
完成を待たず、俺はイメルダを伴って領主たちのもとへと向かう。
あ~あ、盛大に乱しやがって。
誰もここまでじゃれ合えとは言ってないっつーの。
「私も手伝うわ」
と、マーゥルがエステラのドレスを直し始める。
あ、胸元に手を当てて形を整えている。
それを俺にやらせないために出張ってきたのか…………余計なことを。
「じゃあ、トレーシー――」
「――さんは、ワタクシが整えますわ」
イメルダ……素早い!
じゃあ、しゃーない。
「ルシア――」
「――様は、やっている、すでに、私が」
有能な給仕長だなぁ、ギルベルタは! もう! んもう!
で、ネネ。
出遅れてるぞ。
「あぁ、もう仕事がないです!?」じゃねぇんだわ。
イメルダに負けちゃダメだろ、お前は。
しょうがないので、俺はネネを伴ってベッコのもとへ戻り、絵の出来栄えをチェックする。
先に見ているジネットがにっこりと微笑んで……あれ? 苦笑い?
何事かと絵を覗き込むと――
トレーシーの右手が、めっちゃエステラの乳を鷲掴みにしていた。
それでマーゥルが念入りに直してたのか胸元!?
「「トレーシー(様)、アウトー!」」
「な、ななな、なんのことでででしょしょしょしょ……ぴゅ~ふひゅ~」
「トレーシーさん……バレてますからね?」
若干頬を赤らめるエステラと、汚物を見るような目でトレーシーを見つめるルシア。
あはは、ルシア。対象が違うだけで、お前も同類だぞ~? なに常識人チームみたいな顔してんのかな~?
それにしても、ベッコの記憶力は凄まじい。
凄まじいが……そこは、空気読んで普通に抱きついてる風に描き直しとけよ!
「素敵です、エステラ様! もう、ずっと素敵続きです!」
エステラが衣装を変える度にいちいち大袈裟に感動して喜んでいるトレーシー。
もう、何枚のハンカチをダメにしたか分からない。
涙とよだれと鼻血で。
……つか、ネネ。
お前、どんだけハンカチ持ち歩いてんの?
え、四十二区特別体制?
んなもん作る前に主を躾けろ。飼い主だろ、お前?
「ベッコさん。いえ、ベッコ様。そちらの絵画、一式我が館へも届けさせてください。お金に糸目は付けません!」
「いや、これは、販売用ではないでござるゆえ、エステラ氏とヤシロ氏の許可がないとお譲りできないでござる」
「願いを聞き届けていただけるのであれば、あなた様の一日専属メイドになっても構いません!」
「他区の領主様に給仕なんてされたら、拙者心臓が破裂してしまうでござるよ!?」
すでに数枚、エステラの絵を描き上げているベッコに、トレーシーが圧をかけている。
いいじゃねぇか、くれてやれよ。
金に糸目は付けないつってんだから、あっちこっちの工事費に寄付でもさせてやればいい。
「ベッコ。このサイズの紙に縮小して書き写せるか?」
と、A4サイズの紙を見せて問えば、「それくらいは容易いでござる」と分かりきった答えが返ってきた。
「じゃあ、このサイズのエステラのイラスト集をやるから、港の開発に寄付してくれ」
「お安いご用です!」
「ちょっとヤシロ! 勝手に決めないでくれるかい!?」
「大口顧客からまとまった額をもらっといた方が安心だろう? そうでなきゃ、お前の姿絵メンコを四十一区あたりまで配り歩かなきゃいけなくなるぞ」
「四十一区は飛ばして四十区にしようよ……」
確実に買いに来る幼馴染がいるもんな。
嫌だろ?
だから、トレーシーに払わせとけって。
「そもそも、お前が巨大ガラスを値切ろうとしたからだろ」
「うぅ……こんなことになるなら、別にガラスじゃなくてもいいのに……」
「では、エステラさん。次はこの衣装に着替えてみませんか?」
ベッコが一枚書き終わると、ウクリネスがにこにこ顔でエステラに次の衣装を持っていく。
おぉっと、あれはこれまで三度却下されたビキニだ。
そして今、四度目の却下が下された。
不屈の精神だな、ウクリネス。
頑張れ。もっと頑張れ。
「エステラさん、お着替え、お手伝いしますね」
「うぅ……ジネットちゃ~ん」
しおしおの顔でジネットに抱きつくエステラ。
この場にいる全員に見られながらポーズを決める気恥ずかしさもあっただろうが、単純に長時間にわたる絵のモデルに疲れたようだ。
「あの、ベッコ様。先ほどのイラスト集なのですが、こっそりと、もう2セット追加していただけませんか?」
「誰かにあげるでござるか?」
「とんでもない! 見る用と保存用と使う用です!」
「何に使うつもりでござるか、トレーシー氏!?」
エステラがやつれるにつれ、反比例するようにトレーシーが元気になっていく。
さっきのもふもふマフラー&イヤーマフの時は凄まじいはしゃぎっぷりだった。
口を開けば「可愛い可愛い」と。
当のエステラは汗だくで倒れそうだったけれども。
「さすがに、つらそうですね、エステラさん」
ジネットが心配そうに言う。
エステラは次の衣装を握りしめたまま、カウンター側の席にぐったりと突っ伏している。
着替えに行く体力もないのか。
現在の衣装はチアガール。太ももが眩しいNE☆
「じゃあ、その間にイメルダとマーシャの絵でも描くか?」
「私はもういい~や☆」
「ワタクシも、疲れましたわ」
だよなぁ。
ウクリネスが大はしゃぎして、イメルダやマーシャ、ルシアやトレーシーを着せ替えさせていたからな。
着替えの度に二階に上がってフロアまで降りてきて、数分とはいえ決め顔でポーズを取って、終わったら衣装を変えて、それに合わせてメイクを替えて……と、モデルもすごく大変そうだった。
ルシアなんか、エステラより先に疲れてテーブルに突っ伏している。
全然動かねぇな、あいつ。
「じゃあ、ジネット。お前描いてもらうか?」
「えっ!?」
エステラのためにと運んできたお茶を取り落としそうになって驚くジネット。
いや、そんな驚かんでも。
「ついでだから、ジネットもメンコになってみるか?」
「そんな、わたしなんて……」
「なんなら、特殊加工で一部分だけをぷにぷににしてやるけども!」
「懺悔してください!」
えー、だめかなー?
マウスパッドでもそーゆーのあるしさぁー。
ねぇ、ねぇー!
「デリアはどうだ?」
「あたいはいいや。なんか、面倒くさそうだし」
「そんなことないわ! ちょこっと立っているだけでいいのよ。ね、やってみましょうよ、デリアちゃん!」
ウクリネスの熱量がすごい。
こいつ、実は他の誰よりもオッサンマインドの持ち主なんじゃねぇの?
「ほら、こ~んな綺麗なドレスもあるのよ。これを着れば、デリアちゃんもお姫様みたいに――」
「お姫様はもういいよ!」
デリアが「ぷくぅ~!」っと頬を膨らませる。
以前、港の完成式典の際、ドレスを着ていたがために賊を捕らえられなかったこと、まだ気にしているようだ。
変なトラウマになってなきゃいいんだけど。
「あ、そうだ。じゃあマグダとカンパニュラ、テレサも混ぜて、全員でドレス着てこいよ」
「……マグダも? まぁ、物凄く似合うことは確定しているけれども」
「私もでしょうか、ヤーくん?」
「あーしも?」
「あぁ。それで、みんなでお姫様みたいにしてもらってこい」
「えっと、ヤシロさん。その『みんな』には、わたしも……含まれてますか?」
「当たり前だろ。そうだな……さながら、ここは陽だまり城だ。陽だまり城には美しい姫が四人居る。たまに遊びに来るデリア姫を交えて、みんなで絵を描いてもらうんだ」
「……ふむ。なら、陽だまり城の第一王女、店長姫は必須」
店長姫って……
そこはジネット姫って言ってやれよ。
「ですが、ヤーくん。第三王女のロレッタ姉様がおられませんよ?」
「ロレッタは……そうだな…………右上に丸で囲んで顔だけ描いといてやろう」
集合写真の時に欠席したヤツみたいに。
ぷぷっ、ロレッタにぴったりの『オイシイ』ポジションだ。
「……それは、ロレッタが泣いて喜ぶオイシイポジション」
「喜ばれるでしょうか?」
「あの、わたし、呼んできましょうか?」
「あーし、おつかい、いく!」
「なぁ、あたい、別にドレスなんて――」
「さすがヤシロちゃんだわ! 日常をちょっと不思議な非日常にしてしまう天才ね! さぁさ、ヤシロちゃんの折角のアイデアなんですから、みなさんお着替えしましょう! さぁ! さぁ!」
反対意見が膨れ上がりそうだった空気を察し、ウクリネスが強引に陽だまり亭ウェイトレスたちを厨房へと押し込んでいった。
あいつ、必死だな。
「ほんと、面白いわぁ」
ただ一人、なんの被害も受けていない女性、マーゥル。
さすがのウクリネスも、マーゥルにコスプレしろとは言えないようだ。
……需要がないから、か?
「何かしら、ヤシぴっぴ?」
察すんな。笑顔が怖ぇよ。悪かったよ。
「お前も何か着てみるか?」
「遠慮しておくわ。お茶が、とっても美味しいもの」
お茶が美味し過ぎて、他のことをしているヒマがないって?
嘘吐け。
この後、完成品がどんな扱いされるか分からないから様子見してんだろう。
「ところで、メンコってな~に?」
「あぁ。駄菓子と一緒に広める予定のオモチャなんだが……アッスント、材料はあるか?」
「はい。まだ量はありませんが、いくつか確保しておりますよ」
アッスントに魔獣の革をもらい、それをメンコサイズにカットする。
で、さっき見たドレス姿の三領主をそこへ描いていく。
一枚に一人ずつ。
「こんな風に絵が付いていて、こいつを地面に叩き付けて相手のメンコをひっくり返せば勝ちってゲームをするものだ」
「へぇ、面白そうね。ここに描かれる絵は何か指定があるのかしら?」
「ないな。絵を売りにしてコレクションするもよし、絵は適当でボロボロになるまで遊び尽くすもよしだ」
「なるほどね……これは、お金が動きそうね」
コレクション性の高さを瞬時に見抜いたようで、マーゥルは頬に手を添えて軽く思案するような表情を見せた。
……参入する気だな。
「ヤシロ氏。領主様たちは個別に描くのでござるか?」
一枚に一人ずつ描かれたメンコを見て、ベッコは「拙者は一枚に三名描くのかと思っていたでござる」とか言っている。
甘いな。
まだまだ先が見えていない。
こういうのは、いちいちプレミアム感を出すのがいいんだよ。
「この三枚はな――並べると一枚の大きな絵になる」
「おぉ!? これは豪華でござるな!」
「素敵です、オオバヤシロ様! ください!」
「あらあら、楽しいわね、これは」
一枚で見ても完成された領主たちの絵は、三枚並べると三領主が並ぶ豪華な一枚絵となる。
エステラが椅子に座って、ルシアとトレーシーが両サイドに立っている構図だ。
こういうのを作っておくと、コレクターが増えるんだよ。
他の絵柄には興味がなくても、「これだけは欲しい」と思わせられれば、それをきっかけにコレクションの沼へ引き摺り込むことが出来る。
気付いた時には、部屋中にコレクションがびっしりだ。
さぁ、金を落とすのだ、愚民ども!
「なるほどねぇ……」
そっと呟いたマーゥルが、俺を見上げてにっと笑う。
「ヤシぴっぴ。私もお金を出すわ。混ぜて頂戴」
マーゥルが食いついたとなると、『BU』で流行ることは間違いないな。
あとがき
イーガレス&ベッカー
お家騒動の中、禁断のロミジュリ的ラブストーリーか――
と思わせておいて、華麗にご退場です!
ナイスナタリア!
からの~
トレーシー無双!\(≧▽≦)/
……あれ?
トレーシーさんって、こんなに重篤な方でしたっけ?
どうにも、他の領主様たちと比べて影が薄いというかキャラが薄いというか
名前がゲラーシーと被っているというか……
なので、再登場する度に個性ばっかりが強調されてしまいます!
(≧▽≦)てへっ!
というわけで、
キャラメイク検定準二級の宮地です
いや~、なかなか二級に受からない
試験官「では、クラスメイト男子、恰幅がよく温和であるが、やる時は根性を見せる主人公の仲間をキャラメイクしてください」
宮地「ごっつぁんです!」
試験官「六級からやり直してこい」
宮地「じゃあ、『ごわす』! 語尾に『ごわす』!」」
試験官「昭和か!?」
キャラメイク、難しいです……
(´・ω・`)
試験官「では、第一ヒロインと第二ヒロインを、それぞれ別の魅力を持たせつつ、可愛さを十倍増しにしてください」
優等生「なるほど。(眼鏡『くいっ』)第一ヒロインは快活で明るい性格だけれど、実は乙女な一面もあって主人公に一途な思いを抱いているにもかかわらず素直になれない幼馴染。第二ヒロインはクラスで人気者の美人で温和な性格なのだが、ある事件をきっかけに主人公に対してだけは積極的にアピールしてくるようになる優等生――という感じですね(眼鏡『くいっ!』)」
試験官「ふむ、よいね! では、宮地もやってみろ」
宮地「第一ヒロイン(Iカップ)、第二ヒロイン(Aカップ)……っと」
試験官「お前はそれ以外ないのか!? もっと可愛さを表現するんだ!」
宮地「第一ヒロイン(CV早見〇織)、第二ヒロイン(CV阿澄〇奈)……っと」
試験官「セリフが全部その声で脳内再生されて、すごく可愛いぃっ!」
小説家になろうに投稿されている、すべての作家の皆様、
ヒロインの可愛さを底上げするこの裏技、使っていいですよ!
(・ω<☆)
ただし、好みは千差万別
この裏技を使う時は、注意してくださいね☆
宮地「第一ヒロイン(CV日高〇り子)、第二ヒロイン(CV坂本〇夏)」
試験官「トト□!?(←伏せ字ですよ!)」
宮地「第三ヒロイン(CV北林〇栄)」
試験官「カンタのお祖母ちゃんをヒロイン枠にカウントしてるの、君!?」
……あぁ、いかん!?
キャラメイクに行き詰って他人様の力に思いっきりタダ乗りしてしまうところでした!?
( ̄□ ̄;
頑張って自分の力でキャラの魅力を上げることにします。
イリュゥゥウウジョォォォォオオオン!
\(≧▽≦)/
試験官「お前は、それしかないのか!?」
どうも、それしかない、宮地です☆
先日ですね、
我が家のベランダにツチイナゴという昆虫が迷い込んできまして
ツイッターでちょっと呟いたりもしたのですが、
折角我が家に来てくれたので飼育してみることにしました。
花壇のあるお家や、
ベランダにプランターを置いて花を育てているご家庭だと
もしかしたら見かけることがあるかもしれませんね
ツチイナゴは、成虫のまま冬を越す珍しい昆虫なのですが、
実は寒さには強くなく、凍結するような寒さの中では生きられないのだとか
今年は東京でも秋ごろからカメムシが大量発生しており
カメムシが大量発生した年は大雪になるとか、
あくまでジンクスなんですが、今年の冬は寒いかもしれないんですよね
そんな寒い外に置いておくわけにはいかないと、
お魚のために室内温かめにしている我が家へご招待!
きっと、ツチイナゴちゃんもこのパラダイスのような環境を気に入ってくれるでしょう
(*´▽`*)
ツチイナゴ「出せ! うら! 出せや、コラ!(ビッタン、バッタン!)」
宮地「めっちゃ跳ぶぅぅうう!?」(;゜Д゜)
なんか、ご機嫌斜めのようで、
不貞腐れているのか、全然エサを食べてくれないんですよ。
宮地「グッピーは、このエサ大好きなのに」
試験官「いや、魚のエサは食わねぇよ!?」
なんでも知っているキャラメイク検定の試験官さんに聞いたところ、
キャベツや白菜、リンゴなんかを食べるそうで
全部与えてみました!(*´▽`*)
ツチイナゴ「……ふむ。まぁ、そんなに悪くない」
ちょこ~っとだけ食べるものの、
あんまりがつがつ食べないんですね。
やっぱり、草の方が好きなのかな~っと思って
試験官に聞いてみました
宮地「ツチイナゴって何食べるの?」
試験官「私、専門家じゃないからね!? でもまぁ、クズの葉っぱとか、ススキの葉っぱが多いところによくいるから、その辺なら食べるんじゃない?」
やはり試験官!
知識がすごい!
というわけで、
近所の大きな公園に草を盗みに……もとい、雑草除去のボランティアに向かいました!
で、クズの葉っぱが生い茂っているところに行ってみると、
タイミングのいいことに、公園の管理人さんがクズの葉をばっさばっさカットしてたんです
クズって、放っておくとどんどん伸びていくので定期的に草刈りしてるんでしょうね
これはちょうどいいと思いまして、
その切ったクズの葉っぱをちょっと分けてもらえないか交渉に――
草むら「がさごそ」
バッタ「ぴょん!」
宮地「今、バッタいた!? ――捕ったどー!」
と、メイちゃんがまっくろくろすけを捕まえたように両手でバッタをキャッチ!
試験官「えっ!? まさか、上の(CV○○)の流れ、ここのための布石だったの!?」
( ̄▽ ̄)……にやり
それでですね、
公園の管理人さんが「おぉ~、手でよく捕れましたね~」って話しかけてくださって
それで、聞いてみたんです
宮地「この子、持って帰っていいですか!?」
管理人さん「あぁ~、公園内の生き物は持って帰っちゃダメなんですよ~」
宮地「えっ!? 子供のころめちゃくちゃ持って帰ってましたけど!?」
管理人さん「時代ですかねぇ。今はダメなんですよぉ」
マジか!?
公園で虫取りしちゃいけないジェネレーションなのか、令和!?
まぁ、ダメならしょうがない
お別れしましょう……
宮地「じゃあね、ショウリョウバッタ」
管理人さん「いや、それはショウリョウバッタモドキですね。背中に赤っぽい線があるでしょ? それが目印なんですよ」
宮地「詳しっ!?」
管理人さん「昔はこの辺でよく虫取りしましたから」
宮地「それを持ち帰ったり……?」
管理人さん「今は、ダメなんですよ」
ダメかぁ……
まぁ、ダメならしょうがない。
なので、軽トラックの荷台に山と積まれた除草済みのクズを指さして聞いてみました
宮地「ウチにツチイナゴがいるんですけど、そのクズもらえませんか?」
管理人さん「あぁ~、残念。植物もダメなんですよぉ」
宮地「捨てるのに!?」
管理人さん「ルールなもので」
まぁ、例外とか認めちゃうと、それを盾に無茶なことする人が出てきちゃうんでしょうね
公園を守るため、一律禁止にせざるを得ない……
なんて世の中だ!( ノД`)シクシク…
昭和はおおらかでよかったなぁ……
近所の公園で虫を捕まえて、その辺の草をエサ代わりに引っこ抜いて
草むらをガサゴソしてたら……こ、これは!?
テテーン♪
宮地少年は大人のトレジャーを手に入れた
宮地少年「わぁ~お、ダイナマ~イツ」
バッタ「おいこら、こっちの存在忘れてんじゃねぇよ」
宮地少年「バッタとかもうどうでもいいんだよ! 野に帰れ、虫!」
管理人さん少年「いらないならくれ! ウチで飼う!」
宮地少年「この頃から虫好きだったのか!? どーりで詳しいわけだ!」
試験官少年「ふむ、この大人のトレジャー、表紙にはGカップ美女を持ってきつつ、巻頭記事は制服特集か……読者を飽きさせない工夫がなされている上に、キャラが立っている!」
宮地少年「あんたもこの時代からそんな感じだったのか!?」
虫を見ていると、少年時代を思い出しますよね……
宮地「ちなみに、公園内の大人のトレジャーは?」
管理人さん「あぁ~、それも持ち出し禁止なんですよ~」
宮地「くぅっ! 令和のジェネレーションめ!」
こうして、私は自然が多く残る公園の草むらで
ぴょんぴょんと元気に跳ねまわるショウリョウバッタたちに見送られ、公園を後にしたのです。
宮地「そんだけいたら、もう『タイリョウバッタ』だね! ぷくすぅ!」
管理人さん「あぁ~、すみませ~ん。そういうのも、公園内ではダメなんですよぉ」
宮地「難しいな、令和のジェネレーション!?」
というわけで、キャラメイクの難しさとバッタのお話でした。
試験官「というか、試験官と管理人さんのキャラ、無駄に立ってたね!? そういうの、本編で発揮して!?」
もっと精進します!
次回もよろしくお願いいたします。
宮地拓海




