報労記58話 早朝試食会
教会の寄付から戻って十数分。
アッスントが息を切らせて戻ってきた。
「はぁ、はぁ……」
「朝っぱらから、嫁のいる家に戻ってはぁはぁしてんじゃねぇよ」
「嘘のない情報を並べて不正確な情報を作り上げるのは、やめていただけませんか?」
なんでだよ。
お前の得意技だろうが。
自分がやってることは、いつか自分にもやられるってことだ。
因果は巡っているらしいからな。
「それで、嫁はぁはぁ。何か進展は?」
「そのけったいなあだ名を今すぐ廃止してくださるなら、状況をお話しいたしますけれど!?」
「……まぁまぁ、とりあえずお茶でも飲むといい、嫁はぁはぁ」
「定着させようとしないでくださいますか、マグダさん!?」
アッスントがきょろきょろとフロアを見渡し、「そういえば、今日はロレッタさんはお休みでしたか」とほっと息をつく。
追撃が来ないことを確認して、安心したのだろう。――が、あまい!
「汗がすごいですよ。こちらのタオルをお使いください、嫁はぁはぁ様」
「カンパニュラさんはそちら側へ行ってはいけません! どうにかこちら側に踏みとどまってください!」
カンパニュラは空気が読める子なので、きちんと追撃が出来るのだ!
「およめしゃ、はぁはぁ!」
「ダメですよ、テレサさん! 悪い大人を見習っては! 見習うなら店長さんを見習ってください! そうです、カンパニュラさんも!」
カンパニュラに差し出されたタオルを手に取り、直接肌には触れないようにという配慮なのか、そのタオル越しにカンパニュラの手を両手で包み込むアッスント。
手を握り、真剣なまなざしでカンパニュラを見つめ、本気の説得にかかる。
さっきから失礼なヤツだなぁ、こっち側とかそっち側とか。
お前は完全にあっち側の癖に。
しょうがないので、マグダに合図を送る。
「……あぁ、アッスント。幼い少女に、そんなこと……」
「悪意の塊ですか、あなた方は!?」
なんで俺まで入ってるんだよ。
俺はまだ何も言ってないだろうが。
もし俺が口を開けば、こうなる。
「カンパニュラ、泣くなよ? 俺がちゃんと言っといてやるからな」
「ずしんと重い一言を吐きますね、ヤシロさんは!? やっぱり一番重たいですよ、あなたの悪意が!」
「大丈夫ですよ、ヤーくん。私は、これくらいでは泣きません」
「まっとうなことを言っているのに悪意に聞こえてしまうのは、周りの環境が悪いからですね!? 店長さん!? 店長さんはいらっしゃいませんか!?」
アッスントが泣きながらジネットに助けを求める。
お前、言葉巧みに相手の裏をかいて相手を追い詰める商人が、あんな裏表もない詐欺師レベル1の教本に載ってそうな善意の塊みたいなジネットに泣きつくとか……
「こいつ、商人としてやっていけるのかねぇ?」
「……もうちょっとしっかりしてくれないと、四十二区が心配」
「誰のせいですか!?」
「「ん~……ウーマロ?」」
「どんな角度の責任転嫁なんですか、それは……?」
アッスントがげっそりしている。
いかんな。
ブタは丸々太っている方が美味しそうなのに。
「行商ギルド支部長様は、他区でも存分にその辣腕を振るわれておりましたし、とても心強い、信頼に値する方ですよ」
と、カンパニュラがげっそりブタをフォローする。
「ただ、地元には仲良しさんが大勢いるので、少々気が緩むのでしょうね」
「いえ……仲良しというか、天敵というか……まぁ、ここと外では顔を使い分けているのは事実ですけれど」
「では、私が継いだ後の三十区でも、そのお優しい顔でお付き合いをお願いしますね」
「それはもちろんです。あなたのような優秀な領主様なら、こちらからお願いしたいところです」
「う~っわ、エステラ批判だ」
「そんな意図はありませんよ、ヤシロさん!?」
「……アッスント。『飛んでも揺れない』は、さすがに言い過ぎ」
「言ってませんし、マグダさんの方が十分酷いですよ!?」
アッスントがこちらに責任を転嫁してきたところで、フロアにエステラが顔を出す。
「マグダに何を言わせてるのさ、ヤシロ」
フロアに出てくるなり、俺を責めるエステラ。
現場も見ていないかったくせに、俺が言わせたと決めつける。
まったく、なんて酷いいじめっ子だ。
マグダには嫌われたくないから、厳しいこと言えないんだよなぁ、こいつ。
「エステラさん。いらっしゃるなら、早く助けに来てくださいよ」
「今、厨房の方はちょっと忙しいんだよ」
肩をすくめて厨房へ視線を向けるエステラ。
嘘吐け。お前はその忙しさに何も関わってないくせに。
アッスントが弄られてるのはどーでもいいけど、自分が弄られ始めたから出てきただけだろう。
「中では駄菓子作りをされているのですか? あぁ、それで店長さんが出てこられないのですね」
「うん。ジネットちゃんは今、レシピをアレンジし始めてるから、ちょっと時間かかるかもね」
「ヤシロさんはよろしいんですか?」
「教えられるもんは全部教えた。俺は今から別の仕事だ」
朝にお披露目した駄菓子は、もうすでにジネットに教えてある。
あとはジネットが改良しながら量産すればいい。すげぇ楽しそうだし、好きにやらせておく。
「ちなみに、錦玉羹のデザインをイメルダが凝りまくって、それを再現するためにベッコが中でこき使われているよ」
「涼しいお顔で領民を見捨てないであげてくださいませんか?」
あまいなぁ、アッスント。
エステラはな、「ベッコならまぁいいか」の精神なんだぞ。
なんだかんだ言いながら、やってのけるのがベッコだしな。
「それで、ベッコが失敗したものをすべて食べ尽くすために、シスターがその隣でスタンバっているんだ」
「なんなんですか、その珍妙な光景は……」
ほんと、厨房が結構手狭なんだよな。
冷やしたり乾燥させたり寝かせたりするものが多いから、作業スペースが圧迫されてなぁ。
「というわけだから、氷室の建設を大至急頼む。アッスントとエステラのおごりで」
「いえ、あの……、私は以前そのようにお約束しましたので異論はありませんが……なぜエステラさんが?」
「ヤシロがね、寄付すれば世界がひっくり返るものを作ってくれるっていうからさ」
今後、氷室は四十二区になくてはならないものになるだろう。
というわけで先行投資させる約束を取り付けた。
まぁ、すでにジネットがちょこっと払っちまってる分は取り返せなかったけどな。
いやなに、その辺を有耶無耶にしてやろうとしたら、ジネットが「にっこり」ってよ。あの顔は卑怯だよなぁ。まったく。
仕方ないんで、当初よりもかなり豪華な氷室にしてやることにした。
「ジネットの許可も取り付けた。設計図も用意したし、ウーマロには有無を言わせない。すぐに建設に取り掛かってくれ」
「いささか気になる部分がありましたが……まぁ、ウーマロさんならなんとかされるでしょう。では、材料の調達はお任せください」
氷室の場所は、陽だまり亭の庭の奥の方。
厨房の外側だ。
こいつが完成すれば、料理の幅はぐっと広がる。
なかなか決断できなかったが、作ると決まった以上、それを最大限フル活用するべきだろう。
「というわけで、アッスント。簡易氷室をあるだけ持ってきてくれ。今回は、作れるもんを作れるだけ量産するぞ」
「分かりました。すぐに手配しましょう。ついでに氷もいくつかご用意しますね。氷室の中に入れておけば、空間が冷えますから」
「一個は空にしといてくれ。これからマーゥルのところに氷を取りに行くから」
「なるほど。ヤシロさんたちのご用事というのは、それだったのですね」
「マグダは別行動だ。ホメロスのところへ行ってもらう」
「ホメロスさん……というと、米農家のカモ人族の方ですね。何かご用事なのでしょうか?」
「いや、米を分けてもらおうと思ってな」
「買ってくださいよ、行商ギルドから!?」
「いやいや、あそこは、ゴミ回収ギルドからの付き合いだし? なんか最近、米の需要が爆上がりで儲けてるらしいし? 200~300kgくらい献上させても心が痛まない的な?」
「経済を適正に回すべきだと言い出したのはヤシロさんですよね!?」
いいや?
俺は、俺が儲けられる社会システムを構築すべきだと考えて行動しているが?
今も昔もな。
「分かりました。簡易氷室と一緒にお米もお持ちします」
「じゃあ、粉になってるヤツにしてくれ。こっちで粉にする手間が省ける」
「上新粉でよろしいですか?」
「あと白玉粉と片栗粉も」
「分かりました。それで各々いかほど……先ほどの200~300kgはご冗談ですよね?」
「今はそこまで要らねぇよ。これから作るものが定着したら、そんなもんじゃすまなくなると思うけどな」
「……この後、じっくり観察させていただきます」
「じゃあマグダ。見学料として、なんかいろいろ漁ってきてくれ」
「……任せて。店長のメモに書かれた食材はもちろん、書かれていない『ちょっといいなとは思うけど、お金を出してまではいらないかな』と思って手を出してこなかったものもいただいてくる」
「ヤシロさん……あなた、この展開を読んで、先にマグダさんにメモを渡していましたね? まったく、食えないお方ですね」
いやいや。
メモを作ったのはジネットだよ。
作らせたのは俺だけど。
アッスントは美味しい情報をわんさか手に入れていい思いばっかしてるから、少々身銭も切ってもらわんとな~って思っただけだ。
「あぁ、そうだ。状況は?」
「滞りなく。行商ギルドの支部長宛に手紙を出しましたし、こちらの思う通りに動いてくれるでしょう」
「お前の思い通りに動かざるを得ない手紙を出したんだろ?」
「んふふ。そんな大それはことは……まぁ、ねぇ?」
否定しなかったなぁ。
まぁ、他所の支部の連中も、儲けが出るなら文句はないだろう。
たとえ、その過程で馬車馬が「もうヤメたげて! 見てらんない!」と泣き出すほどこき使われようとも。
本望だろう? ん?
「じゃ、こっちは計画が頓挫しないように商品の開発だな」
「はい。では、準備に取り掛かりましょう」
この後、俺はマーゥルのもとへ、マグダはアッスントと一緒に行商ギルドへ向かう。
一度解散して、各々必要なものを持ち寄り再び陽だまり亭へ集結したら、本格的に駄菓子作りの開始だな。
爽やかな朝だ!
さぁ、今日も元気に、陽だまり亭オープーーーン!
……けっ、客が来ねぇ。
「大工は出禁だな」
「昨日の夜は、きっとみなさん夜更かしをされたでしょうから、まだ寝ている方が多いんじゃないでしょうか?」
薄情にも店に金を落としに来ない常連客共に呪いを送っていると、ジネットがにっこりと俺の呪詛を浄化しにやって来た。
カンタルチカに突如現れた海鮮網焼き。
それで大盛り上がりして、昨日はかなり深酒したヤツが出たはずだ。
仕事は休めないから、ぎりぎりまで布団にしがみ付いてるのだろう。目に浮かぶ。
「ウーマロも来ないとはな」
「ウーマロさんは、今朝鯛茶漬けを召し上がりましたし、朝は来られないと思いますよ」
「……ウーマロは今日、現場をすべて回って、資料を確認して、オマールたちとミーティングすると言っていた」
「マグダにだけ、きっちりと報告しやがったのか、あいつは」
日が昇る前から各所を見て回り、進捗確認をして今後の方針を話し合うらしい。
追加された仕事もあるしな。その辺の話を詰めるとすると、結構時間がかかりそうだ。
こりゃ、昼飯を食いに来る時間もないかもな。
「マグダ。今日は昼飯届けてやるか?」
「……やぶさかでない」
「じゃ、ウーマロの今日の昼飯は『氷室よろしく弁当』だな」
「……『急いでくれると嬉しいにゃんを添えて』」
おぉ、そんなスゴイのまで添えられるのか。
こりゃあ、明日にでも完成しそうだな、氷室。
「ふふ。では、腕によりをかけて美味しいお弁当を作りますね」
「……『嬉しいにゃん』はマグダが添える」
「はい。添えてあげてください」
何を添えるつもりか知らんが、ウーマロなら、的確に察知するだろうな。
あいつのあの人間離れした能力、有効活用できれば世界が変わ――有効活用はムリか。
「ヤシロく~ん☆」
厨房の中からマーシャの声が飛んでくる。
今日は、水槽を押せるのがマグダしかいないから、移動に制限がかかってるんだよな。
水槽はフロアに置いておき、現在はいろんなヤツに抱っこされながら移動している。
主に、エステラとイメルダがべっちゃべちゃだ。
「これって、もう食べられる~?」
「ヤバいな。同じ空間にいたせいでマーシャがベルティーナに感染した」
「……飛沫感染」
「怒られてしまいますよ、お二人とも」
ぽふぽふっと、俺とマグダの前髪を押さえて、ジネットが厨房へと向かう。
え、今のって叱られたのか?
急に褒められたから何事かと思ったぞ。
マグダも目を細めて耳ぴるぴるさせてるし。
今の今まで、たとえ人が来なくとも清掃は完璧にと、ジネットとマグダと俺でフロアの清掃をしていたのだが……虚しいもんだなぁ、報われない努力って。
「やっぱ、大工は出禁!」
「ヤシロさん。厨房へ行きましょう。マーシャさんも呼んでいますし。お菓子作りですよ。楽しいですよ」
俺の体内に渦巻く呪詛の念を霧散させようとでもしているのか、ジネットが俺の腕を取って無邪気に笑う。
お菓子作りが楽しいのはお前だろうが。
で、厨房へ入ってみると――
マーシャ、ベルティーナ、エステラ、イメルダ、マーゥル、おまけのアッスントが、キラキラした目でこちらを見ていた。
……年齢層の高いガキどもだこと。
「ヤーくん。予定の時間まではまだもう少しあります」
「あとちょっとー!」
「でもでも~、もうすでに、す~ごっくいい匂いがしてるよ☆」
カンパニュラとテレサに、食いしん坊の見張り役を任せたのは正解だったな。
小さい子供に「ダメだよ」と言われては、つまみ食いも出来まい。
ジネットやマグダだと、「押せばなんとかなる」って思われてるしな。
俺くらい厳しく振る舞わないと、連中のつまみ食いは収まらないんだ。
まったく、やれやれだ。
「でも、本当にいい匂いですね」
「米を炊くといい匂いがするのは当然だ。……とはいえ、これは堪らんな」
「はい。料理人の特権ですね」
料理人でもないヤツがその特権のお零れに預かりまくっているんだが……
ジネットはすぅ~っと胸いっぱいにいい匂いを吸い込んで、ほぅっと幸せそうに息をつく。
現在、アッスントに持ってこさせた上新粉と白玉粉を、水で練って団子にしたものを蒸している。
それを平らに伸ばして弱火で焼いて、薄焼きせんべいを作ろうと思ってな。
パリッと硬いせんべいではなく、サクッと軽いせんべいだ。
練乳が作れるから、ミルクせんべいでもやろうかと思っている。
ガキの頃行った縁日で食ったのが結構美味かった気がする。
くじを引いて重ねるせんべいの枚数が決まるのだが、親方が大当たりを引いて二十枚重ねをもらってたんだよ。
「こんなに食べられないなぁ」って、困ってる親方を見て、女将さんと笑ったっけな。
あれが出来れば、駄菓子屋で売ることも可能だろう。
そのために、パリッとサクッと軽いせんべいが必要になる。
現在は粉の量や調理時間、調理方法を変えて試行錯誤している段階だ。
練ってすぐに焼くヤツ、練った後に湯掻くヤツ、そして今作ってるのは練った後に蒸すヤツだ。
さて、どれが一番うまくいくのか……
「まだこれから焼くんだから、もうちょい待ってろ」
「え~、こんなにいい匂いなのにまだ食べられないの~?」
「まだ食べられないのですか?」
泣くなベルティーナ。
マーシャのおねだりとは悲愴感が桁違いだから。
「あ~……しょうがねぇな」
「やったぁ☆」
「ありがとうございます、ヤシロさん!」
俺はまだ何も言ってないんだが?
なんで自分の望みが通ったと早合点してんだ、こいつらは。
「うふふ。ヤシぴっぴは本当に優しいいい子ねぇ」
やめてくれるマーゥル。
お前の言霊、他人のより強力そうだから。
なんか、呪いで本当にいい子にされちまいそうで寒気がする。
いい子になる呪い。……なにそれ、怖い。
「ジネット、砂糖と醤油とみりん、あと片栗粉を用意してくれ」
「何を作るんですか?」
わぁ、ここにも嬉しそうな顔をしたヤツが一人。
「何が出来るのでしょう? それも駄菓子でしょうか? 売値はおいくらほど!?」
あ、こっちには種類の違う笑顔を晒してるブタがいた。
お前はこっち見んな。見つめられても楽しくないから。
「みたらし団子を作ってやるから、試作品には手を出すなよ」
まもなく蒸しあがる団子を犠牲にして、他の団子には手を出させないようにする。
まぁ、少し試せばどれがうまくいきそうかだいたい把握できるしな。
こっちにはジネットもいるし。
「ジネット、団子が蒸しあがったら竹串に三個ほど突き刺して、焦げ目がつくくらいに軽く炙っといてくれ」
「ふふ、もう美味しそうですね」
その間、俺はみたらしのタレを作る。
「見ていても構いませんか、ヤーくん?」
「よし、じゃあ、ジネットより先にこっそり見せてやろう」
「あ、あっ! わたしも見たいです! ズルいです!」
「てんちょうしゃ、あーし、おてちゅらい!」
「ありがとうございます、テレサさん。では一緒にお団子を作りましょうね」
団子を串に刺しながら、横目でしっかりと調理工程をチェックしているジネットの隣で、ささ~っとタレを作る。
こんなもん、教えるまでもなくジネットならもっと美味いのを作れるさ。
「あぁ……お団子の焦げた香ばしい匂いがします……!」
ベルティーナが匂いにつられてかまどへ近寄っていく。
間違っても火傷はするなよ。ジネットにガチギレされるぞ。厨房への出入り禁止もあり得るレベルで。
そういうとこ厳しいから、ジネットは。
「ほい、タレも完成だ」
「あぁ、こちらからもいい匂いがします」
「シスター」
「ですがジネット」
「座っててください」
「はぁい……」
ふらふら歩き回るベルティーナが叱られて、しょんぼりと椅子に座る。
うちわで香りをベルティーナの方へ送ってやれば、憂い顔は一瞬で霧散してぱぁぁっと明るい表情を見せる。
ジネットも呆れて「もぅ」なんて息を吐きつつ、どこか楽しそうだ。
「シスターに抱っこされてれば、いい匂いがいっぱい嗅げそうだね☆」
「ですが、シスターの抱っこは順番待ちがすごいですよ」
一人が抱っこされると、ガキどもが群がって「ぼくも」「わたしも」とうるさいんだよな。
だから、ベルティーナはあまり誰かを抱っこしない。
ジネットが言うには、泣いた時と、寂しい時は、すぐやって来て抱きしめてくれるらしいけど。
「じゃあ、焼いた団子をこのタレにたっぷりと絡ませて……ほい、みたらし団子の完成だ」
団子の白に浮かぶ香ばしい焦げめの黒を包み込む、輝くような飴色のタレ。
とろりと流れる甘いタレが視覚から美味さをアピールしてくる。
人類が生み出しし、至高の逸品。
とくと召し上がれ!
「美味しいです!」
「わっ、あま~い☆」
「……よき」
「売れます! これは売れますよぉお!」
出来たみたらし団子に喰らいつき、皆一様に笑みをこぼす。
……若干、方向性の違うあくどい笑みも含まれてはいたが。
「ヤ、ヤシロさんっ、こ、これわっしょいです!」
「『これは』と『わっしょい』がくっついて一つの単語になっちまってたぞ、今!?」
とりあえず、お気に召したようだ。
砂糖醤油の上を行く、完成された甘味。
当然のように、エステラとイメルダは物凄く食いついて、お子様のテレサ&カンパニュラよりはしゃいでいた。
一同がみたらし団子に夢中になっている間に、薄焼きせんべいを試作する。
焦がさないようにじっくりと弱火で焼いていく。
一枚一枚、鉄板の上で、こまめにひっくり返しながら……
「うん、やっぱこれが一番だな」
口当たりが軽く、パリッとした仕上がりになったのは、上新粉に米粉と片栗粉を少々混ぜたものだった。
蒸し上げるともっちり感が強く出てしまい、蒸しも茹でもしないと少々ぼそぼそしてしまった。
なので、粉を混ぜて練って軽く湯がいたものを伸ばして焼く――というのが採用された。
まぁ、どれも悪くはなく、どれでも有りと言えば有りだったのだが、その辺は俺とジネットの好みで選ばせてもらった。
「軽い口当たりになりましたね」
「小麦粉じゃ出せない食感だな」
グルテンが多いと、どうしても重たくなってしまうからな。
米粉ではなくコーンスターチを使用してみてもいいかもしれない。
今度試してみるか。
「で、この薄焼きせんべいに、練乳をかけて、もう一枚薄焼きせんべいを乗っけてサンドすると――ほい、ミルクせんべいの出来上がりだ」
「いただきます!」
力強く立候補したのは、やはりベルティーナだった。
他の連中は、みたらし団子を食い過ぎて、ちょっと腹が膨れているっぽい。
「甘くておいしいです! これはきっと、子供たちが大好きな味です」
「じゃあ、こっちの梅ジャムを試してみてくれ」
ジネットに頼んで、梅干をジャムにしてもらった。
塩分を洗い落とし、ハチミツで甘さを加えた、梅の風味が生きた甘いジャムだ。
「素敵な香りと、独特の甘さで、こちらも美味しいです。是非先ほどのすももジャムでもいただいてみたいです」
ベルティーナはいたく気に入ったようだ。
もっしゃもっしゃ食べている。
その横で、ジネットが料理人の顔でミルクせんべいを試食する。
「えびせんに似ていますが、配合が異なるので軽さが違いますね」
「小さいガキには、これくらいがいいだろう」
「そうですね。あごの発達していない子供も、元気いっぱいな子供も、どちらも美味しく食べてくれそうです」
やんちゃなガキなら、十枚くらい重ねて食えばいい。そういう食い方が美味いんだ、こいつは。
「ちなみに、えびせんにソースを塗って食うと美味いぞ」
ソースせんべいも、祭りの屋台の定番だった。
そうだな。今年の光の祭りではソースせんべいとミルクせんべいの屋台を出してみよう。
海漁ギルドに協力を仰いで……いや、ダメだ。
「マーシャには、今年も人魚釣りをやってもらわねば!」
「んふふ~、それはど~かな~☆」
なぜだ!?
今から貯金して、釣れるまでチャレンジしまくるのに!
糸に付いた針は不安定だから、ついうっかりホタテを釣り上げちゃったらゴメンだけどね☆
……よぉし、今からフライフィッシングの猛特訓だ!
「ヤシロさん、もしゃもしゃ、懺悔してくだしゃい、もしゃもしゃ」
「頬っぺたぱんぱんにして言うことじゃねぇだろ」
お前も一回懺悔した方がいいんじゃないか、ベルティーナ?
食欲に負け過ぎだぞ、お前の信仰心。
「えびせんは三十六区から三十八区に教えてあるから、こっちで作らなくても手に入るだろう。……連中がサボらず研究を続けていれば、な」
「ヤシロ、顔が怖いよ。気になるなら視察にでも行けばいいじゃないか」
なぜ俺が?
むしろ向こうから「今、こんな感じなんですが、検品していただけますか!?」って商品を持ってくるべきだろう。
「光の祭りでソースせんべいの店を出すから、出来のいい区のえびせんを使うって情報をうっかり流しといてくれ」
「またそうやって競争心を煽ろうとする……。でも、そうだね。出来が良くて安い方を使おう」
「んふふ。エステラさんもなかなかのものですよ。では、私が絶妙に無視できないさりげなさで噂を流しておきましょう」
「わぁ~、こっちの三人、みんな同じ顔してる~☆」
「「「失敬な!」」」
こんな腹黒い~ズと一緒にしないでもらおうか!
よし、はっきりと言葉にして伝えておこう!
「こんな胸なだらか~ズと一緒にするな!」
「口を開く瞬間、視線がお腹から胸に上がったよ! ボクは見逃さなかったからね!」
「おそらく『腹黒い~ズ』と言いたかったのでしょうねぇ」
しまった。エステラのせいで名称が変わってしまった。
視覚情報が強過ぎたばっかりに!
「ヤシロさん。もしゃもしゃ、もしゃもしゃもしゃしゃも!」
「もう、何言ってるか分かんねぇよ」
懺悔してこい、この爆食シスター。
「うん、どれもとても素敵ね。子供たちが喜びそうだわ」
一方、マーゥルはそれぞれ一つずつ食べ、それ以降は手を付けていない。
やはり、ガキが好むような甘いお菓子は、そうそうバクバク食えないようだ。
「でも私は、さっきのお団子が一番好きだわ。みたらし団子だったかしら? あれがもっと気軽に食べられるようになると嬉しいわね」
「アレの原料はほとんど米だからな、米どころに影響力を持ってる権力者に言えば、量産体制はすぐに整うんじゃないか?」
オールブルーム随一の米どころと言えば、清酒造りに精を出している三十三区だ。
三十三区が最高の米を作り、お隣の二十四区が最高の麹を作っている。
つまり、二十四区領主のドニスなら、友好関係にある三十三区の米をいくらでも融通できるというわけだ。
「あぁ、そういえば。なんか昔懐かしい雰囲気の懐古酒場とかいうのがあるんだっけ? 米どころの団子と熱いお茶は、それはよく合うだろうな」
お前がおねだりすれば、あっという間に茶屋が軒を並べることになるぞ。
で、お土産用のみたらし団子を作る工場と、団子屋が量産されるのだ。
「もぅ、ヤシぴっぴ。そういうことにそういうことを使ってはいけないのよ」
自分の欲を満たすために、自分に惚れている男の好意を利用するのはよくないって?
それは、お前自身も、案外満更でもないってことか?
ドニスに聞かせてやれば、向こう百年は発酵食品が無料で手に入りそうな情報だな。
「ヤシぴっぴ?」
「何も言ってないだろうが」
怖いんだよ、目が。
あと、察する能力が。
お前のセンサー、アンテナ何本立ってる? バリ3は余裕で超えてるよな?
「今見て分かったと思うが、駄菓子は設備と場所さえあれば案外簡単に量産できる。数を増やせば増やすほど、一個当たりの原価は下がっていくと考えていい」
「アッスントさんのおかげで、たくさん仕込みが出来ましたからね」
アッスントが運んできた簡易氷室。
今、陽だまり亭の庭にはワンボックスカーサイズの氷室が四つ並んでいる。
一瞬、陽だまり亭にキャンプ帰りの家族連れが押し寄せてきたのかと錯覚しそうな風景だった。
その中に、琥珀糖やキャラメルが並んでいるのだが、なかなかに壮観だった。
現在、トレーシーが氷室の見学に行っている。
トレーシーは見たことがなかったらしい、氷室。
ネネと二人で、駄菓子製作にどれほどの設備が必要なのかを検討しているようだ。
この後、ジネットにあんこを炊いてもらって、あんこ玉でも作ってみよう。
駄菓子屋に置けるかどうかはさておき、他の区でお菓子工場を作るならついでに羊羹工場も作ってもらえばいい。
そうすりゃ、もっと手軽に水ようかんが食える。
何を隠そう、俺は水ようかんが好きなのだ。
粒あんもこしあんも、抹茶あんに梅あんも!
「そうだ! 抹茶がいるな! アッスント、茶葉の選定を頼む」
「なんだか、今日のヤシロさんは熱いですね!?」
「昨日寝てないからねぇ……。そのうちぱたりと倒れると思うよ」
次々湧き上がってくるアイデアを吐き出していると、エステラに呆れられてしまった。
ふふん。そんな顔をしていられるのも今のうちだぞ?
食ったら絶対好きになるから。
で、ようかんが出来ると、錦玉羹の味がもうワンランクアップする。
「お待たせしたでござる。ただいま戻ったでござるよ」
錦玉羹作成でイメルダにしごき抜かれていたベッコだったが、ある程度作ると早々にマスターして、今後どんなデザインも任せられそうになった。
なので、別の仕事を振っておいた。
無償労働者を遊ばせておくのはもったいないからなぁ。
というわけで、ベッコにはレジーナの店へ重曹とクエン酸を取りに行ってもらった。
地味に遠いからなぁ、あの店。
「ちゃんと手に入ったか?」
「無論でござる!」
「雑にカバンに入れて、『どっちがどっちか分からんでござる~』なんてことにはなってないだろうな?」
「心配ご無用でござる!」
むふふんっと、胸を張るベッコ。
その向こうに、レジーナがいた。
「ご本人にお越しいただけた故、間違えようがないでござるよ」
「レジーナどうした!? 具合でも悪いのか!?」
「そら、自分や。さすがに疲れが見え隠れしとるで?」
早朝に帰ったばかりのレジーナが再び出てくるなんて……こりゃあ、明日から四十二区は梅雨入りだろうなぁ。
「ジネット。洗濯物は今日中に終わらせた方がいいぞ。明日から豪雨が続く恐れがある」
「失敬やな、自分。頼まれたもん持ってきただけやのに」
文句を言いながら、レジーナが厨房へと入ってくる。
「……人、多っ!?」
厨房にみっちりと居並ぶ面々に、めっちゃ引いてるレジーナ。
人口密度高いよなぁ、やっぱ。
「それにしても、えらい甘い匂いしとんなぁ。ちょっと香ばしいし」
「みたらし団子というものをいただいたんですよ。あとでレジーナさんも召し上がりますか?」
「ん~……せやねぇ。ほな、時間があったらよばれよかな」
「はい」
レジーナ的には、どっちでもいいのだろう。
あんまり食に貪欲じゃないからなぁ、こいつは。
食も細いし。
だが、ジネットが作りたそうな雰囲気を察して、「そっちが大変じゃなければ」って条件を付けた感じか。
なんだかんだ、ジネットの作るものにハマってきてるな、こいつも。
餌付けされてるぞ、レジーナ。
「……レジーナ。陽だまり亭の最新作」
言いながら、マグダがミルクせんべいを差し出す。
こいつはこいつでレジーナに懐いてるんだよなぁ、最近。
進んで絡もうとするし、結構世話も焼いてやっている。
やっぱ、ママ親からの手紙を運んできてくれたのが大きいのかねぇ。
「これはなんなん?」
「……それは、ミルクせんべい」
「ふむ……ミルク=おっぱい、せんべい=ぺったんこ……なるほど、食べる貧乳やね!」
「違うよ、レジーナ!」
「あら、大変ですわ。エステラさんが共食いを」
「違うって言ったんだよ、ボクは今!」
「うわ、甘ぅて美味しいなぁ、このぺったんこお乳」
「レジーナさん?」
「うわっ、シスターはん、居はったんや!?」
ベルティーナの存在を見落として盛大にはしゃいだレジーナ。
イメルダとエステラが賑やかにじゃれ合ってるから見落としたのか?
いるに決まってんだろう。新作試食会だぞ?
ベルティーナがいないわけがない。
「レジーナさんはこちらに来て懺悔です」
「まぁまぁ、可愛らしい~冗談やんか~。堪忍して~なぁ、ベルティーナはん」
「はぅっ!?」
名を呼ばれ、胸を押さえて立ち止まるベルティーナ。
いやいや。
いくらなんでもそんなことで引き下がるわけが――
「…………むぅ。今回だけですよ」
引き下がったなぁ!?
名前呼びが胸に「ざっくー!」突き刺さったらしい。
う~っわ、めっちゃ嬉しそうな顔。
「……これ、使えるなぁ」
「悪用はダメですよ、レジーナさん」
「どうしてもアカンやろか、ジネットはん?」
「はぅ……っ、呼ばれる方も嬉しいのであれば、それはそれでよいのではないかと……っ」
「押し返されてんじゃねぇーよ」
レジーナから放たれる胸きゅんオーラに圧倒されるように体を引いていたジネットの後頭部をぺきょっと叩く。
そんなもんで許してたら、四十二区に性のテーマパーク『エロいーランド』が出来ちまうぞ。
…………よし、作ろう!
「レジーナ! エステラから許可を取ってもらいたい案件がある!」
「やぶさかやないで!」
「はい、結託しないで2メートル離れて、そこの卑猥結社」
いつの間に結成されたんだ、そんなちょっと素敵な爛れ組織。
エステラの指示で、厨房の端と端に追いやられた俺とレジーナ。
2メートルどころじゃねぇな、この距離。
おまけに、間にはエステラとジネット、そしてベルティーナが立っている。
くっ、エロスが完全に遮断されている!
「分かった。エステラも楽しめるように、おっぱい型テーマパーク『ぽろりーランド』を作ろう」
「却下だよ!」
「せやかて、精神が肉体に影響を及ぼすっちゅーんは、実証されとることなんやで? 毎日楽し~暮らしてはる人は顔つきが柔らかぁなるし、不平不満ばっかりの生活を送っとると厳つい顔つきになる言ぅて。せやから、毎日期待に胸膨らましとったら、そのうち肉体にも影響が出てくるかもしれへんなぁ」
「む……ん~…………一考の価値が……」
「ないですわよ」
悩み始めたエステラをばっさりと両断するイメルダ。
お前の言葉、そこらの手斧よりよく切れるな。
「……レジーナと言えばおっぱい――で、思い出したけれど」
「何で何を思い出してくれとんねんな、虎の娘はん……」
「………………」
「………………マグダはん」
「むふー」
折れたなぁ。
めっちゃ折れたなぁ、レジーナ。
今さら「いや、もう船の上ちゃうやんか」とか言い訳しても遅いから。
マグダは今学習したから。「甘えればまかり通る」って。
「……それで、レジーナの卑猥なおっぱいで思い出したけれど」
「わぉ、上乗せされたわ」
「ジネットもベルティーナも、マグダには『懺悔しろ』って言わないよな? 贔屓だぞ、これは」
「日頃の行いの積み重ねだよ。君だって随分減刑されている方だよ? 君がそれを上回る速度で悪行を積み重ねているだけで」
「そんなことねぇよ! なぁ、ジネット?」
「もう少し、普段の言動を省みてくださいね」
にっこり微笑まれたわぁー!
俺の訴え、全否定だわー!
ないわー!
ないのわー!
「……それで、レジーナのおっぱいぷるんぷるんカーニバルで思い出したのだけれど」
「マグダさん」
「……ごめんなさい」
「はい」
ベルティーナ、甘い!
というか、マグダ、卒ない!
くそぅ、ズルいよなぁ。絶対ズルいよなぁ!
いいなぁ、美少女って。何しても許されてさぁ!
「ほんで、何を思い出したん?」
「…………え?」
「いや、なんか思い出したんやろ?」
「……………………はて?」
「忘れてもうてるやん!? 途中から前振りがおもろーなってもぅて、本編すっかり忘れ去られてもうたやん!?」
たまにあるんだよ、マグダは。
楽しいことに夢中になっちゃうことが。
「まぁ、たぶん、おっぱいで思い出したってんなら、アレだろう」
と、俺は指で台形を形作ってみせる。
「……そう、プリン」
俺のヒントで思い出したマグダが得意げに胸を張る。
「……プリンがたくさんあるから、食べていくといい」
「自分……またおっぱいプリンとか作ったんかいな? よぅやるなぁ、こんだけ監視の目ぇがある中で」
「違ぇよ。作ったのはジネットだ」
「おっぱいプリンを!?」
「違います! もぅ!」
今の流れ、俺の発言だったら絶対懺悔なのにな!
レジーナもズルい!
「普通のプリンです。……いえ、特別な普通のプリンです」
「え、どいうことなん?」
おっぱいプリンではないと言いたいらしいジネット。
でも、普通のプリンでもないのでちょっと混乱している。
「なに、ちょっと卵白を大量に使いたくてな。余った卵黄でプリンを作ったんだ」
「余った卵黄って……普通、余るんは卵白の方ちゃうのん?」
まぁ、料理してて余りがちなのは卵白だな。
だが、お菓子作りの時は卵白が大活躍するのだ。
パンに分類されちまうから作らないが、ラングドシャとかめっちゃ美味い。
「でまぁ、卵黄しか使ってないからかなり濃厚で、コクのあるプリンに仕上がってるぞ」
「へぇ~、そら贅沢やね」
「……しかも、氷室で冷やされているので、さらに美味しい」
マグダの尻尾を見れば、それがどれだけ期待値の高いことかよく分かる。
プリンは冷えてた方が美味いからな。
どうせこの後、貴族どもが押しかけてくるのだからと、ちょっといいおやつを用意してやったのだ。
「へぇ~、そら楽しみやなぁ」
「だが、その前に。お前の持ってきた魔法の粉で、スペシャルなドリンクを作ってやろう」
レジーナから重曹とクエン酸を受け取り、作業台の前へ立つ。
ギャラリーが詰めかけ、俺の手元に注目が集まる。
「まず、水の中に重曹と砂糖、ハチミツを入れ、しっかりと溶かす」
カチャカチャとマドラーを回し、グラスの中の重曹を溶かしていく。
そう、グラスだ!
パフェを作って以降、陽だまり亭にもグラスが導入されたのだ。
お高いので、高級感を出したい時にしか使わないけどな。
「これを、アルカリ液と呼ぶこととする」
重曹は、酸に反応して発泡する。
なので、別々の容器で原液を作り、最後に混ぜ合わせるのだ。
「で、このアルカリ液には氷を入れて、しっかりと冷やしておく」
重曹は、温度が高いほど激しく発泡するので、液体の温度を下げておくことでしゅわしゅわが長持ちする。
「次に、果汁と水の混合液にクエン酸を入れて、こちらも粉が溶けきるまでよくかき混ぜる。これを酸性液とする」
今回はリンゴの果汁を使用する。
オレンジやブドウでもいいのだが、なんとなくアップルソーダが飲みたかったのだ。
「で、最後に、よく冷やしたアルカリ液の中へ、ゆっくりと酸性液を注ぎ込んでいくと――」
グラスの中で液体が混ざり合い、しゅわしゅわと小気味よい炭酸の弾ける音が鳴り響く。
「ほい、完成。で、お先にちょっと味見」
人に出す前に自分で確認する。
……うん。分量ばっちり。ナトリウムの塩気も感じない、甘く爽やかなアップルソーダだ。
氷がジュースをキーンと冷やしてくれて美味さ倍増。
一気に飲み干した。
「ぷはぁ! うまい!」
「ヤシロさん!」
「ヤシロさん!」
「ヤシロ!」
ジネットとベルティーナが食いつき、エステラが「ズルい、自分ばっかり!」とばかりに詰め寄ってくる。
へいへい。すぐに次のを作るよ。
「じゃあ、手伝ってくれるヤツ~?」
「はい!」
「私もお手伝いしたいです!」
「おてちゅらい!」
「……では、みんなマグダの隣に並んで」
ジネットよりも先に俺の隣をキープしていたマグダ。
やる気満々だ。
「そんじゃ、俺が計量して渡すから、お前らはひたすら混ぜてくれ」
「はい!」
かなり細かいが、分量を間違いさえしなければ、誰にでも作れる。
こいつは、自分で作って飲むものとして売り出した方がヒットするかもしれないなぁ。
そして、俺たちはしばししゅわしゅわののど越しを楽しんだ。
あとがき
よめ、はぁはぁ(*´Д`)
どうも宮地です
世界中の旦那さん、ご主人さん、婿さん、夫さん、ハズバンドさん、相方さん(他諸々)
が、みんな嫁はぁはぁだったならば、世界の争いの半分くらいはなくなるでしょうね
さぁ、メンズ・イン・ザ・ワールドの皆様!
レッツ☆嫁はぁはぁ(*´Д`)はぁはぁ
むっはぁー!(;゜∀゜)=3
というわけで、本編をうまく掬った宮地です。
絶妙な掬い加減を披露してしまいました。
深掘りし過ぎず、無関心過ぎず
付かず離れず
突っついても揺れず
……エステラさん、元気かなぁ( ̄ω ̄ )
本編といえば、
以前、私も実際に作ったことがあります、
重曹&クエン酸サイダー
その頃、ちょこっと糖質制限ダイエットとかしていましたもので
手作り系にハマってたんですよね
ジャムとか、アイスクリームとか、フロランタンとか作ってました
エリスリトールとかラカントとかを使用して
それから、パン作ったり、パンツ食ったりしてましたね~(もぐもぐ)
んまーい!(゜∀゜)ぱぁぁあ!
……ん?
パンですよ、パン!
手作りパンが美味しいなってお話ですよ!?
なんですか、その「あぁついに……」みたいな目は!?
ぱんつくってたんです!( >Д<)
で、ですね、
そんな中、じゃあ、炭酸飲料も作っちゃおう!
ということで、
食用の重曹とクエン酸(食用じゃないものもあるので、試してみようという方は注意してくださいね!)を買ってきて作りました( ̄▽ ̄)
作り方は、本文でヤシロが言っていたような感じで、
重曹と炭酸を溶かした水を混ぜて――
しゅわぁぁあ!
おぉ、すごい!
マジで発泡した!(≧▽≦)/
かき氷シロップとかはないので……そうだ、手作りジャムを溶かそう!
ジャムの上澄みはもはやシロップ!
果肉もたっぷりでとってもゴージャス☆
そしてきっと、ううん、絶対デリシャス!
いただきまーす!
(# ゜Д゜) しょっぺ!?
思わずグラスをシンクに叩きつけそうなほどしょっぱかったです(・_・;
イチゴ風味の塩水でした
後々調べてみたら、重曹が多かったっぽいですが、
それでもやっぱり、無味無臭の炭酸飲料を飲みなれている身からすると、
分量ばっちりで作り直したヤツもまだ塩味が強かったですね。
アレは、飲めない。(;´・ω・)
ただ、
かき氷シロップとか果汁でやると、その微かな塩味を感じなくなるらしいです
糖質制限やっていたころは、かき氷シロップで試そうとは思いませんでしたし
糖質制限をやめた今となっては、お安くて美味しい炭酸飲料がそこかしこにありますし
挑戦してませんけどね\( ̄▽ ̄)/
ちゃんと作ると美味しいらしいので、
ちゃんとしたレシピを検索して、挑戦してようという方はチャレンジしてみてください☆
あと、クエン酸とコーンスターチを使ってラムネも作ってみたんですが……
クエン酸……っ!(´;ω;`)
……酸っぱい!
やはり、企業ってすごいですね。
美味しいものを安定して供給してくれるなんて、
もう信仰の対象と言っても過言ではありませんね!
クーピーラムネ、んまー!( ゜∀゜)
やっぱり、手作りって、
「えっ、僕のために作ってくれたのかい、べいび~?」
っていう感情がないと美味しさ八割減ですよね。
どうしたって市販品には勝てないんですもの。
材料費は市販品を買うよりかかっちゃうし、それに光熱費と調理時間もたくさん……
ですので、手作りお菓子は『作る』ことが目的になる人にはお勧めですかね~
私は昔っから、自分が作った料理が嫌いでして
美味しく感じないんですよね
やっぱり人に作ってもらうっていうのが、最高の調味料なのでしょう
フロランタンとか、ビスコッティとか、蒸しケーキとか、抹茶アイスとか
そこそこクオリティを上げられたものもあるんですが、
数年経った今、
「あ、アレもう一回食べたいな」となっていないということは
まぁ、そういうことなんでしょうねぇ
アレだったら、
中学生のころ、ただレンジで溶かしたチョコレートを型に入れて固め直しただけの
「お料理やったことなくて、ちょっと失敗しちゃったけど……一所懸命作ったから!」
って、夕日の沈む体育館裏で手渡された幼馴染の女の子の手作りチョコレートの方が何倍も美味しかっ……
あ、すみません。
そーゆーのもらったことありませんでした。
そもそも、幼馴染の女の子もいませんし、
ウチの学校体育館もなければ夕日も沈みませんでした。ずっと昼!
なんなら、チョコレートもまだ日本に入ってきてなかったかもしれません。
ちょっと、記憶を捏造してしまいました☆
でも、糖質制限をしていたのは本当なんですよ(*´ω`*)
……なら、なぜ今現在、私のお腹はこんなにも……(ぷにぷに)
もしかしたら、
糖質制限してたっていうのも、記憶の改ざんだったのでは……(・_・;
少々自分の記憶が信用できなくなってきましたので、
軽く過去のあとがきを読み返してきます。
きっと、あそこになら、私の過去が……いや、
宮地拓海のすべてが記載されているはずだから!
\( ̄▽ ̄)/
……アレがすべてなのかぁ……なかなか残念な仕上がりになったものですねぇ、私。
ジネットさんのように、『作る』のが好きで
それを美味しそうに食べてもらえると嬉しいな~みたいな人がいてくれたら
もっと美味しいものが食べられたんでしょうねぇ
私、野菜炒めが上手な女性がツボでして
冷蔵庫の中に残ってた野菜を、塩コショウで適当に味付けしただけの野菜炒めが
「これ、うまっ!?」(*´▽`*)
ってなる人が、たまにいるんですよね!
真似しても、絶対あの味にならない!
というか、私は自分の作った野菜炒めは食べたくない!
なんでか美味しく出来ないんですよねぇ……
やはり、ありものでぱぱっと美味しい料理が作れる人って、
男女問わず素敵ですよね!
陽だまり亭には、二人いますからね、そんなお料理上手が。
そんな陽だまり亭で作る炭酸飲料だから、きっと美味しいのです!
私が作るとクッソしょっぱかったですけども!
ヤシロが作れば、そしてジネットが研究開発すれば
日本の飲料水メーカーがクリビツテンギョーするような、めちゃうまな炭酸飲料になるのです!
ですので、実際に重曹&クエン酸で試してみて
「こんなもんで、街中が熱狂とか、ねーよ」と思わないように!
腕前が違うんです!
陽だまり亭ツートップは別格なんです!
ついでに、最高の調味料『愛』もたっぷり入っているんです(*´ω`*)
というわけで、
「そんなに美味しくないのになー」とか思わずに、
この先もお楽しみください☆(――という言い訳でした☆)(というか、そのために料理とか、作ってもらうと~とかの前振りがあったわけですね~、なるほど~)
……いや、だって、
実際作ってみたら、しょっぱくてしょっぱくて……
これを美味しく作れる人なんかいるのかな~って(^^;
やっぱりアレですかねぇ、
『愛』が足りなかったんですかねぇ?
今度作る時は、自然と『愛』が注ぎ込まれるように
『弾ける素肌! 夏だ! 水着だ! ムフフな水中大運動会! ぽろりしかないよ(≧▽≦)! ~豪華270分ノンストップエディション~』
を流しながら作ってみたいと思います(゜∀゜)o彡°
入り込め、愛!(゜∀゜)o彡°
次回もよろしくお願いいたします。
宮地拓海




