報労記25話 のんびりできる……わけもなく
紙芝居が完成し、紙芝居を入れる木枠もなかなか豪華な作りになり、腹も膨れて日差しも温かく、潮風の心地よさを満喫できるくらいにゆとりが出来た。
このまま、日中はゆったりと過ごして、夜は少々騒がしく船上パーティーでもして、疲れた者から適当に寝て、明日の朝三十五区へ到着、か。
急に決まった割には、なかなか充実した時間を過ごせそうだ。
うん。やっぱ船旅はいいな。
心が穏やかになるし、なんというかこう、慌ただしい俗世から離れたことで心の洗濯が出来る的な? 贅沢な時間の使い方をしている気分になれる。
忙しなくバタバタ駆け回るなんて、ナンセンスだよなぁ。
デッキに持ち出したシェーズロング、またはサンベッド、サンラウンジャー、プールサイドチェア、長いデッキチェア、水着で横になって日向ぼっこするあの寝転べる長いイスなどと呼ばれる『イスとベッドの間の子』みたいなヤツに横になり、優雅に日光浴なんかをしていると、クルーのサリサがゆったりとした歩調で歩いてくるのが見えた。
ハワイアンカクテルでも注文したら持ってきてくれないだろうか。無駄にデカいグラスに必要以上にカラフルな飲み物を入れて。ジェットコースターのレールみたいな形状のストローでも差してさ。
「皆様」
よく通る声で、サリサは告げる。
「まもなく、三十七区の港へ到着いたします」
「「「えっ!?」」」
俺を含め、数人の声が重なる。
思わず飛び起きた俺と、思わず立ち上がったのであろうエステラの視線が重なる。
そして、まったく同時に同じ言葉を口にした。
「「忘れてた!」」
そうだよ。そうだよそうだよ!
三十七区に寄るんだったよ!
うっわ、なんかもうすっかり終わった気分でいたけども!
もとより最大の港として栄えていた三十五区の港と、想像以上に盛況な新しい四十二区の港に挟まれて「どうしたらいいの!? ぅえ~ん!」と泣きつかれていたのをすっかりと忘れていた!
ビコーズ、三十七区領主にさほど興味がないから!
「そういや、何か観光の目玉になるようなもんを考えなきゃいけないんだったっけな」
「えっ!? もしかして、無策なのかい? 困るよ、それじゃあ」
「やかましい。今の今まで『コツが分かってきたよ! 海の魚の気持ちになればいいんだ!』とかなんとかよく分かんないこと言いながら竿を振ってたヤツが偉そうに!」
「お二人とも、口論はその辺にして、到着まで残りわずかな時間を活用して、最低限の体裁を整えるべきではないでしょうか?」
「って、涼しい顔してるけどな、ナタリア。お前も忘れてたろ? さっき俺らと一緒に『えっ!?』って言ったの見逃さなかったぞ!」
「君は桃太郎の役にのめり込み過ぎなんだよ! 休暇とはいえ給仕長としての自覚は失わないでもらいたいもんだね!」
「では、浮かれまくっている主に、溜まりに溜まっている執務の存在を思い出させて差し上げましょうか……?」
「そーゆーことじゃないよ、もう!」
「なぁあ、お前らうるさい! 今ちょっと、ぱっとやってわっと盛り上がるもんがないか考えてんだから静かにしてろ!」
バッタバタだ!
船の上で大わらわだよ、まったく!
「もういっそのこと、三十七区スルーして三十五区行こうぜ?」
「寄るって手紙出しちゃったし、今頃、港で到着を待ってくれているよ、お出迎えの準備を整えて」
「でも、三十七区だろ?」
「でもってなにさ!? ちゃんと敬意を持って接してよね」
「えっ!? デミリーやドニスに対しても敬意を持っていないこの俺が!?」
「その根本が問題なんだよ、君は!」
と、自分もすっかり忘れていたくせに、エステラが偉そうに俺を叱る。
お前だって、敬意なんか持ってなかったくせに。
違うというなら、三十七区領主の名前を言ってみろ! 俺は知らん!
「まったく。そなたらはまったく進歩しておらんな。領主との約束を忘れるなどと……」
「って!? ルシアさんめっちゃ寝間着じゃないですか!?」
「しようとしていた、お昼寝を、ルシア様は。終わったから、友達のヤシロの、当面の仕事が」
俺に義理立てて紙芝居が完成するまで付き合っていたルシアだったが、紙芝居が完成したということで自室に戻っていた。
そうか、こいつ、寝る気だったのか。
「寝てていいぞ。三十七区領主には、『ルシアは約束をすっかり忘れて船で眠りこけている』としっかり伝えておいてやるから」
「誰が眠るか! ギルベルタ、すぐに着替えの準備をするのだ」
「了解する、私は」
いそいそと、ルシアとギルベルタが自室へと引き返していく。
引き返すなら、着替えてから出てくりゃよかったのに。
「エステラ様も、支度をいたしましょう」
「う、うん。あぁ、ちょっと日に焼けちゃったかも!?」
「エステラさんは、日傘を差さないからですわ」
「そういう君も、夢中になり過ぎてしっかりと日焼けしているよ」
「この程度、焼けたうちには入りませんわ!」
そうかなぁ?
結構焼けてると思うぞぉ?
今晩、風呂に入るなら気を付けろよ。めっちゃ沁みるかもしれないから。
「とにかくお召し替えを」
「ドレスは用意してあるんだよね?」
「はい。今朝まではしっかりと覚えておりましたので」
「船、楽しいからねぇ。仕方ないよ、お互い」
「では、そういうことにしておいて差し上げましょう」
「なんで若干ボクより上に立とうとするのさ、君はいつもいつも!」
さて……
領主二人がバタバタと自室へ駆け戻っていった頃、俺は俺でちょっと焦っていた。
「……マズいな。なんにも思いつかない」
観光の要になるような、「これぞ観光地!」みたいな何かが……何かないか?
観光地……観光……お土産……海…………おっ!
「マーシャ!」
「な~に?」
「小さな貝殻を集めてくれないか」
「……ビキニ用?」
「もっと小さいヤツだ!」
「…………ヤシロ君、今、懺悔してる暇あるの?」
「そういう案件じゃないんだよ!」
だからジネット、「言わねば!」みたいな顔で指を組んでこっち来なくていいから!
「それからレジーナ。透明な小瓶を持ってないか?」
「透明かいな? 琥珀色のやったらいくつかあるんやけど。日光を避けるため薬瓶が」
「透明でないとダメなんだ」
「透明……あ、せやったらアレがあるわ。菌類を捕まえて観察する用の小瓶」
「……菌?」
「今は何も入ってへんわな。おもろい菌を見つけたら捕まえよう思ぅて持ってきたヤツや」
お前は、船に何を期待して乗り込んでんだよ。
「ぁ、……そうぃうのなら、みりぃもある、ょ?」
「本当か?」
「ぅん。ヌメリ虫がいたら捕まえようと思って」
わぁ、笑顔が素敵。
ミリィ、本当にあの見た目凶悪なムカデMAXが好きなんだぁ。
「少し分けてもらっていいか?」
「ぅん。持ってくるね」
「ウチも取ってくるわ。ミリィちゃん、一緒に行こか」
「ぅん」
よし、あとは砂浜の砂を……って、それじゃ乾かしてる時間がないか。
「ジネット」
「はい」
「砂糖か塩を大量に用意できないか?」
「どちらも用意できますよ」
塩は結構安いが、そこそこ金はかかる。
砂糖はパーシーがアホほど持ってくる。
「じゃあ、砂糖を頼む」
「はい」
「……パーシーに貢がせることが決まった模様」
「今、確実にそう考えてた顔してたですよね、お兄ちゃん……」
「お前らにも手伝ってもらうぞ。とにかく時間がない」
「はいです! なんでも言ってです!」
「……では、そこでセクシーな踊りを」
「それ、お兄ちゃんが二回やって二回却下されたヤツですよ!」
「……アホみたいな顔で」
「アホみたいな顔でセクシーダンス踊る人は、漏れなくアホみたいに見えるですよ!? 折角のセクシーが台無しです!」
「ヤーくん、私もお手伝いいたしますね」
「おう。向こうのうるさいのが頼りになりそうもないから、しっかり頼む」
「頼りになるですよ、あたし!?」
「じゃあ、ロレッタ。スイートルームに行って、俺の画材道具を全部持ってきてくれ」
「任せてです! チョッパヤで行ってくるです!」
お前はどこの業界人だ。
チョッパヤで着替えないとケツカッチンだよ~って? やかましいわ。
「ヤシロく~ん! 貝殻って、こんなのでいいの?」
マーシャが持ってきてくれたのは、小さな巻貝に、桜貝のような綺麗で小さな貝殻たちだった。
「最高のチョイスだ。さすがマーシャだな。いい貝をよく知っている」
「えっへん☆」
「てんとうむしさん、こんな瓶で平気?」
「ウチのヤツは、ミリィちゃんのより随分小さいで」
ミリィの小瓶は直径5センチ高さ8センチほどの円柱形で、レジーナの小瓶は直径3センチ高さ5センチ程度で、口の部分がすぼんでいる釣り鐘のような形をした小瓶だった。
コルクの栓がいい雰囲気じゃねぇか。
「いい具合だ。それじゃ、使わせてもらうぞ」
「一個でえぇんかいな? 念のため、いくつか持ってきたけど」
「とりあえず、サンプル品ってことにしとけばいい。気に入れば、向こうの領主が好きなだけ買い揃えるだろうよ」
小瓶を一個ずつもらって、中を入念に拭いておく。
油分やホコリが付いていると、見栄えに影響するからな。
「お兄ちゃん、画材道具持ってきたです!」
「ヤシロさん、お砂糖、持ってきました」
「よし、画材道具はそこに置いておいてくれ。ジネット、悪いが塩を20グラムほど乾煎りしてきてくれるか?」
「はい。行ってきます」
「悪いな」
「いいえ」
さぁ~て、材料は揃った。
じゃあ、海の定番お土産を作りましょうかねぇ。
「あぁ、しまった。汚れてもいい綺麗な袋がいるんだった。出来れば絹とか綿の目の細かいヤツで」
「じゃあ、用意させるね~☆」
「濡らさないでくれよ」
「サリサ、よろしく~☆」
「えっと、贈答用の袋を使うということですか?」
「うん☆ 大丈夫。あとでエステラに弁償させるから★」
高いんだろうなぁ。
まぁ、必要経費だ、うん。
「ロレッタ、真水」
「もらってくるです!」
「これから何が出来るんやろ? 楽しみやなぁ」
「ぅん。楽しみ、だね」
レジーナとミリィも、工程を見学するつもりのようだ。
もうすぐ港に着くんだから、一時下船する準備でもすればいいのに。
まぁ、ちょっと寄るだけだし、特にすることはないか。
バタバタしてんの、俺らだけかよ。
「袋、お持ちしました」
「お兄ちゃん、真水とお塩と店長さん持ってきたです!」
「あ、あの、お待たせしてすみません」
そこまで急いでもないんだが、ロレッタがジネットを担いで戻ってきた。
お姫様抱っこで。
……ちょっと代われ。胸元に触れる胸元のふわふわが楽しそうだから!
「よし、まずは腕の筋を伸ばして……」
「……ヤシロに遊んでいる時間はない。早く作業を始めるべき」
マグダに叱られた。
いつの間にか、しっかり者のお姉さんになっちゃって。
「じゃあ、この袋に砂糖を入れる。あ、それくらいでいいぞ」
複数の袋に20グラムくらいずつ砂糖を入れていく。
「あ、いっけね。竹串がいるなぁ」
「もらってくるです!」
ロレッタが駆けていく。大車輪の大活躍だ。
「あと、何か忘れてるものないかなぁ~」
「ヤシロさん。一度に言ってあげればいいですのに」
だて、走り回るロレッタって、なんかロレッタっぽくて楽しいじゃん。
あいつも嬉しそうだしさ。
「砂糖を袋に入れたら、絵の具を溶かして色水を作る」
青、緑、茶色、黄色、赤と。
「砂糖が溶けないよう、一滴ずつ色水を加えて揉む。こうして、砂糖全体に色を付けていくんだ」
「お手伝いします」
「失敗しても、まだ砂糖はあるから、気負わずやれ」
「はい」
「んふふ~、贅沢だよね~☆ ちょっと前まで、砂糖なんてめったにお目にかかれなかったのに☆」
サトウダイコン様々だな。
それを作ってる農家はアレだし、それを加工してる業者はアレなんで、サトウダイコンがすごいということにしておくけれども!
「綺麗に色づきました」
「……こちらも。目が覚めるような赤」
「おぅ、さんきゅう」
「なんだか、砂糖をもみもみするのって、楽しいですね」
「お、分かるか。じゃあ、ジネットも俺が興すもみもみ教の信者に――」
「次は何をするんですか?」
流されたぁー!
おのれ、ジネットめ……こっそりもみもみしてやろうか? 「あ、まちがえちゃった~、てへっ☆」とかいって!
…………うん、沈められるなぁ、イカリと共に。『怒り』と『錨』のダブルミーニングで。
「色が付いたら少し乾かす……っていうほど時間がないんだが」
「乾煎りしてきましょうか?」
「いや、砂糖だし」
「あ、そうですね」
砂糖を乾煎りすると、焦げたり溶けたりしてしまう。
というか、絵の具を混ぜたものをフライパンに載せるのはNGだ。
「紙の上にでも広げて、気持ち乾燥させればいいだろう。試作品だし」
「では、風で飛ばないように気を付けて、みんなで広げましょう」
というわけで、そちらはジネットたちに任せて、俺はもう一つの方に取り掛かる。
……といっても、やることなんかほとんどないんで…………そうだな、せめてヨットでも作るか。
カバンから工具と木片を取り出し、ちょこちょこと加工していく。
「ほんま、なんでも出てくるカバンやなぁ。売ってほしいわ」
「セクシーランジェリーは入ってねぇぞ」
「『精霊はんのなんちゃら』!」
「いや、入ってねぇっつーのに!」
何を疑ってくれてんだ。
で、お前のやり方だと一生『精霊の審判』使えないからな。
「とかなんとか言ってるうちに、ヨットの完成だ」
「すごく細かい細工ですね。ヤーくんは木工細工師にもなれそうですね」
「まぁ、ゼルマル程度なら、軽く捻れるな」
「うふふ。そんなことを言うと、また雷を落とされますよ」
「ゼルマル、雷落とすの好きだからなぁ。きっとへそフェチなんだぜ」
「おへそ、ですか?」
「あれ、言わないか? 俺の故郷では、雷は雷神っていう神様が起こしている現象で、雷が鳴っている時にヘソを出していると雷様にヘソを取られるって言われてたんだ」
「神はんまでそーゆー性癖持ちなんかいな。たいがいやな、自分んとこの故郷」
性癖じゃねぇよ!
…………違う、よな?
「でも、どうしておへそなんでしょうか?」
「雷が鳴るってことは雨が降るだろ? そうすると気温が急に下がるから、腹を出してると腹が冷えて腹を壊すんだよ」
「なるほど。それで、お腹を温かくするようにと子供たちにそう教えるんですね」
たぶんな。
「うふふ。今度、教会の子供たちに教えてあげましょう」
「嘘にならないか?」
「戒めは、愛情の一種ですから」
精霊神って、柔軟な対応してくれるんだなぁ。
戒律見直した方がいいんじゃないか、精霊教会。ゆる過ぎだろ。
「ほい、色塗り終わり」
「わぁ、白と青に、鮮やかな赤が目を惹く可愛い模型ですね」
模型?
いや、模型なんだけど、こういうのを見たら普通そのものの名前を言わないか?
「もしかして、ヨットって知らない?」
「はい。船に似ていますが、海で乗るものなんですか?」
「あぁ。マーシャは知ってるよな?」
「うーうん? 小型船じゃないの?」
そうか。
ヨット、ないのか!?
「……じゃあ、ヨット作っても仕方なかったじゃん……」
ヨットの模型見ても「なんじゃこりゃ?」ってなっちゃうじゃん。
「しょうがない。大至急船を掘るか」
「え、でも、この小さな船はとても可愛いですよ?」
「……船に見えるかな?」
「はい。わたしは、船に詳しくないので、これでも十分船に見えますよ。マーシャさんはどうですか?」
「船室とかブリッジを簡略化したと思えば、見えなくもないかな~?」
「小型の漁船は、たしかこのような形をしていたと思います。このように立派な帆は掲げておりませんでしたが」
三十五区生まれのカンパニュラは、こういう漁船を見たことがあるらしい。
あぁ、確かに。一人か二人で海に出て網を引く程度の漁船ならこんな感じか。
ボートだな。
「じゃ、帆の向きを変えて、それだってことにしておこう」
ヨットは、帆の向きが船の側面と平行だが、漁船なら垂直にするべきだろう。
横から風を受けたら転覆するしな。
そうして、少々改造して、七福神の宝船のような形状に作り替えた。
おぉ、縁起がよさそう。
「で、こいつを小さい貝殻数個と一緒に小瓶に入れ……その上から乾煎りした塩を入れていく」
小瓶の半分が埋まるくらいに塩を入れ、コルクで蓋をすれば完成だ。
「よし、出来た」
「お兄ちゃん、折角の船と貝が隠れちゃったですよ?」
「……塩を先に入れるべきだった」
「いいんだよ、これで。カンパニュラ、ちょっと振ってみ」
「はい」
小瓶を渡すと、カンパニュラは静かにそっと小瓶を振った。
指で摘まんで手首をひねらせて。
すると、さらさらと塩の粒が流れ落ち、塩の中から船と貝殻が上がってきた。
「ふぉおお!? 船が出てきたです!」
「……マグダは知っている。水は空気より重いから――的なヤツ」
なるほど。ついさっきサイフォンの原理を説明したから、ちょっと知恵を付けたんだな。
だが残念。
「こいつは、ブラジルナッツ効果だ」
「ぶらじる……ですか?」
「えぇ~っと……俺の故郷の近くにある国の名前だ」
地球の真裏だけども。
まぁ、この街よりかはきっと近いからいいだろう。
「ざっくり言うと、この塩の粒も船も貝殻も、重力によって同じ力で引っ張られている」
「はい、もう難しいです!」
「よし、頑張れ!」
「お兄ちゃんが酷いです!?」
「あとでまた、一緒にお勉強しましょうね」
ロレッタはまたカンパニュラに科学を教わるらしい。
そういえば、前にテレサに計算を教わってたっけな。
変なプライドを捨てられるのは、ロレッタの美徳だなぁ。
「で、塩の粒は小さいから、船や貝殻が生み出す隙間にどんどん流れ落ちていくんだ」
そうして、粒の小さいものが下へ落ちることで、デカい物が上に浮かび上がってくるというわけだ。
ナッツの詰め合わせを袋詰めで売ると、粒の小さいナッツが下に落ち一番デカいブラジルナッツが絶対一番上に来ることから『ブラジルナッツ効果』と名付けられた現象だ。
「そっとひっくり返せば、また船は沈む。で、ゆっくり振るとまた船は浮かび上がってくる」
「幽霊船みたいで可愛いねぇ~☆」
「もっと他に喩えはなかったのか……」
可愛くねぇよ、幽霊船。
「こんな簡単なものでも、船や貝殻、あと塩じゃなくて粒の小さい砂浜の砂を使えば、海を思い出せる土産物になるだろう?」
「確かに。これがお部屋にあると、いつでも海を思い出せそうです」
「な~んで、今までこーゆーのを思いつかなかったんだろうねぇ~、三十七区も、三十五区も」
「観光に力を入れてなかったからだろ」
この街の、特に外周区は自分たちが食うので精一杯だったんだ。
観光なんて、とてもとても……
「けど、これから盛り上げていけばいい」
「そうだね☆ 情報紙とリボーンに圧力かけ……もとい、相談してみよっと☆」
おぉーい、真っ黒いのチラ見えしたぞ、この人魚!?
とりあえず、いい反応を得られたのでほっと胸を撫で下ろす。
じゃあ、もう一個の定番土産を作りますかね。
砂糖の状態を確認してみる。
…………もたぁ。
「……ま、まぁ、いいか。見栄えさえよければ」
本番だって、色砂で作って最後に固めるんだし。
うん、へーきへーき。
「よし、じゃあやるか」
ミリィにもらった大きめの小瓶に色の付いた砂糖を入れていく。
慎重に、美しい模様になるように。
色を重ね、重ね、重ね……
「ロレッタ、竹串」
「はいです!」
竹串で砂糖を突いて、垂直に色を落としていく。
一層一層色を重ねて模様を描き出す工程は、最初から最終形態を明確に思い描けていないと成功しない。
気分は3Dプリンターだな。
見てる方は、完成するまでどんな仕上がりになるか想像もつかないだろう。
「よし、出来た」
色のついた砂糖で描いた、なんちゃってカラーサンドアート。
普通はカラフルな砂で層を作って、自然体の造形美を楽しむものだが、俺が作ったのはバブルのころ流行した砂で描いたアートだ。
「わぁ! 海です!」
「この木は見たことがあります。たしか、ヤシという名前だったと思います」
「空が綺麗ですね」
青い空に青い海。そして白い砂浜に大きなヤシの木が一本立っている。
ヤシの木の下には白い麦わら帽子が風にはためいている。
ザ・夏!
ザ・オーシャン!
ヤシの木モチーフのこういうアートって、昔流行ったんだよなぁ。
親方がいっぱい持ってた。
サーフィンモチーフとか。
サーフィン出来もしないのに。
ハワイやサイパン、グァムへの旅行が流行っていた時代だったからだろうな。
「……ヤシロなら、まだもう一段上に行ける」
カラーサンドアートを見たマグダが、もう一段高い要求を寄越してくる。
まぁ、確かに時間がないな~と思って簡単な絵柄にしちまったけども。
「じゃあ、時間の許す限りやってみるか」
「じゃあ、はぃ。もう一個、使ってぃい、ょ」
「悪いな、ミリィ」
「……マグダは、海の中が見てみたい」
「また難しい要求を」
「……ヤシロなら出来ると、マグダは知っている」
「へいへい」
そんじゃ、海の中でイルカと戯れる魚たちでも描いてみるかね。
すっと息を吸い、集中すると周りの音が聞こえなくなった。
竹串を使い、少しずつ、少しずつ色を積み重ねていく。
深い海の底は赤を混ぜて濃い紫に。
海面に近付くほど色を薄くしてグラデーションを。
そして、大きなイルカと戯れる魚の群れを躍動的に――
「よし、出来た!」
「「「おぉー!」」」
なんか、拍手が巻き起こった。
周りを見渡せば、いつの間に集まっていたのか、ほとんど全員がそこにいた。
いないのはナタリアとギルベルタ……あ、向こうでマーシャになんか聞いてる。
「すごいね、これ! ジネットちゃんに聞いたんだけど、これを海の砂でやるんだって?」
「おう。準備に時間がかかるから、今は代用品だけどな」
「それでも素晴らしい出来栄えだよ」
エステラが興奮気味に言って、俺の手元を覗き込む。
手を伸ばそうとしてやめる。
「動かすと崩れるかな?」
「いや、結構べたついてる砂糖だからな。落とさない限りは平気だろう」
「ん~……でも、やっぱりやめとく! 怖いし」
「本番は砂で作るから、水のりで砂を固めるんだ。だから、持ち帰っても大丈夫になる」
「それはいいね」
「もちろん、砂だから落として瓶を割っちまうとアウトだけどな」
「それは仕方ないよねぇ」
「カタクチイワシ!」
慎重に扱うエステラとは対照的に、ルシアは先に完成したヤシの実のカラーサンドアートを手にずかずか歩み寄ってくる。
うん、やっぱあの程度の振動じゃ崩れないよな。
「これは夕日の方が綺麗ではないか?」
「そうだな。もっと黒を増やして、影の印象を強めると綺麗に仕上がると思うぞ」
「であろうな! いや、なに、私は日ごろから、日中の青い海も美しいが、夕焼けに赤く染まった海こそが最も美しいと思っていたのだ。眺めていると、少しセンチメンタルな気持ちになるのも、またよい」
お前がセンチメンタルなんて言葉を知ってたことにびっくりだよ、俺は。
センチメンタルと対極にいるような性格のくせに。
「わぁ~☆ お魚一杯だねぇ~、か~わいぃ~☆」
マーシャが向こうのプールからこっちのプールへ瞬間移動してきて、カラーサンドアートを見てはしゃぎ出す。
……いや、ホント瞬間移動くらい早いんだって。プールの中、時空歪んでんじゃないかって思うほど。
「ヤシロ君、イルカも知ってるんだねぇ~」
「やっぱ、この辺にもいるのか」
「うん。この辺じゃないけどね」
「じゃ、クジラも?」
「うん! いるよ~☆ おっき~ぃの!」
果たして、今翻訳された『クジラ』は、俺の知る『クジラ』なんだろうか。
とんでもなくデカい別の生き物の可能性もあるんだよな、この世界の場合。
だが、カツオや鮭など、俺の知るのとほぼ同じ魚がたくさんいるから、クジラもきっといるのだろう。
リヴァイアチャンも、クジラの一種かもしれないしな。
異世界だからって、奇抜な姿に進化するってわけじゃないんだよな。
言われてみれば、人間の造形が地球とさほど変わってないんだから、似たような進化をしたのだとしてもおかしくはない。
……もっとも、獣人族とか、ハビエルみたいな規格外の人間がうじゃうじゃいるから、同じような進化とは言い難いかもしれんが。
「……これが、海の中」
「そ~だよ~☆ と~っても綺麗なんだから~☆」
「ヤシロさんは、どうして海の中の様子をご存じなんですか? やっぱり、泳ぎが上手だからでしょうか?」
「いや、ジネットちゃん。泳ぎが上手でも、海の中はボクも泳いだことはないよ」
日本ならスキューバーダイビングもあるし、シュノーケルだってそれなりの水深まではいける。
そんなことしなくても、ネットで検索すればいくらでも見られるんだけどな。
それ以外だとグラスボートとか……お、そうか。
「グラスボートを作れば観光名物になるかもしれんな」
「よし。じゃあ、それは一旦四十二区に戻ってから話そうか」
「待て、エステラ! 三十五区を交えて話すべき内容であろう、それは!」
「ぐらすぼーとって、どんなものなんですか?」
「あぁ、ジネットちゃん、ここでそれを聞いちゃダメだよ!」
「よい! 話せ、カタクチイワシ!」
ムキになるなよ。
どうせ、まだ作れねぇよ。
「船底の一部をガラス張りにして、海の中を覗き込めるようにしてある観光船だ」
「わぁ、それなに!? すっごく楽しそう!」
「もう少し豪華なのだと、船底に座席を用意して、船底の側面に覗き窓をいくつも作って、魚と一緒に海の中を進むんだ」
「それは素晴らしいな! して、そなたは作れるのか、カタクチイワシ!?」
「俺には無理だよ」
水圧の計算とか、ガラスと木材のつなぎ目とか、どうすりゃいいのかさっぱりだ。
そもそも、俺は船なんぞ作れん。
船を作る詐欺なんかしたことねぇからな。
「その辺は、ウーマロ案件だな」
「作れるかい、ウーマロ!?」
「工期はどれだけ必要なのだ、キツネの棟梁!?」
「いやいやいや! 無理ッスよ!? オイラ、今初耳ッスからね、そんな船!」
「「となれば、カワヤ工務店か……」」
「あぁ……領主様二人が、すっかりヤシロさんに毒されちゃったッスねぇ……」
失敬な。
こいつらが悪辣非道なのは今に始まったことじゃないだろうに。
「そんな仰々しいものじゃなくて、もっと簡単なものならすぐ出来るぞ」
「本当か!? 試しに作ってみようではないか」
「じゃあ、ルシア。材料の調達を頼む。ガラスと木の板をたくさん」
「ガラスが必要なのか……」
「なるべく大きくて歪みのないヤツでないと、作っても楽しくない」
「とりあえず試作品ということで、3セットほどでよかろう?」
「じゃあ、このサイズのガラスを三枚と、それを囲えるくらいの箱を作るイメージで木の板を」
「……むぅ。分かった。三十七区に着いたら、我が館に手紙を出し準備させておくとしよう」
「じゃあ、明日は港の近くの浅瀬で水遊びだな」
「何を作るんですか? わたしにお手伝いできることはありますか?」
椅子がまともに作れないジネット。
……うん。気持ちだけもらっとく。
「手伝いはウーマロがいれば事足りる。作るのは、簡単なアクアスコープだから」
「あくあすこーぷ、ですか?」
でっかい水中眼鏡だ。
顔と同じくらいのデカさで、そいつを水につけて水中を覗き込むのだ。
浅瀬で歩きながら覗いてもいいし、ボートに乗って沖へ出て、船の上から水中を覗いても楽しい。
「うむ。では、その遊びが面白ければ三十五区の港にプレイスポットを作るとしよう」
「……ヤシロぉ」
「んだよ。作りたきゃ四十二区にも作ればいいだろう。港の形状が違うんだから、見える景色はまるで異なってて、どっちがいいとか悪いとか、甲乙はつけられねぇよ」
「それは素晴らしいことですね。みんなで一番です」
確かに、ジネット向きかもな。
「なぁ、ヤシロ。それって釣りに使えるかな?」
「古くは、漁師が魚の群れを探すのに使ってたらしいぞ」
「そっか。じゃあ、あたいもいつか作ってもらおっと」
その時は大工か行商ギルドに言ってくれよ。
全員分手作りとか御免だから。
「でさ。三十七区はこのお土産だけでいいのか?」
「「「…………」」」
デリアの言葉に、俺とエステラ、ルシアが視線を交わす。
お土産を置けば観光客が押し寄せてくるよ☆
……なんてわけがない。
そうだよなぁ……四十二区と三十五区の港に飲まれるかもって危惧してる領主を納得させなきゃいけないんだよなぁ……
「はぁ……しょうがない」
ない袖は振れない。
ないものはないのだからしょうがない。
あるものでその場を凌ごう。
「三十七区に紙芝居を見せてやるか」
「分かった! 準備してくる!」
「私も!」
「アタシも、気合い入れてくるさね!」
キャストたちがばっと立ち上がり、足早に自室へと戻っていく。
まぁ?
三十七区で先に見せたからって、三十五区の子供好きの貴族イーガレスがへそを曲げるわけでもあるまい。
こんだけ離れた区なんだし。かぶらないかぶらない。
……と、思ったんだけどなぁ。
「イーガレスには、ベッカー家というライバルがおってな」
「おい、やめろ、ルシア。その話、なんとなく聞きたくない」
「港関連の会議で度々顔を合わせるうち、ことあるごとに張り合うライバル関係になり――」
「やめろっつってんだろ」
またそんな「港関連の会議で度々顔を合わせる」とか言っちゃって……そのベッカーさん、確実に三十七区に住んでるじゃないですか、やだー。
「素晴らしいものを見たら、すぐさま自慢の手紙を送るであろうな。そう、今日のうちにでも」
「……俺の嫌な予感、当たってると思う?」
「あぁ、大当たりであろう。……まったく、せっかく解決しそうだったことを……」
だって、しょうがないだろう!?
他に思いつかないんだから!
「じゃあ、三十七区にはアクアスコープとグラスボートでも紹介するか」
「現物もないのにかい?」
「え、ここの領主って、そこまで気を遣わなきゃいけないヤツだっけ?」
「ヤシロ様。お話中失礼します」
ナタリアが話に割り込んできて、俺の腕を引いて甲板を移動していく。
連れてこられたのは、先ほどまでいた場所とは反対側。
進行方向を向いて左手側。
そちらには、遠く港が確認できた。
そして、その港には――
『熱烈歓迎!』という横断幕と、『三十五区、四十二区、三十七区友好の懸け橋へ!』という幟がでかでかとはためいていた。
「……うわぁ」
「藁にも縋る思いなのでしょうね。……よっ、天下一のワラ男子」
「嬉しくねぇよ……」
ワラ程度にしか期待されてねぇんなら、俺は帰らせてもらいたいんだが?
「三十七区へは、間もなく到着いたしますが、三十五区へはまだ一晩あります」
「……三十五区の方を考え直した方が効率的か」
「おそらくは」
「はぁ……どうせ、知恵の一つも出さないんだろうなぁ、お前んとこの主は」
「あの方でしたら、『紙芝居がダメなら鉄板で作った鉄芝居とかどうかな!?』程度の提案が関の山かと」
「おかしいなぁ……出会った当初、俺はあいつのこと頭の切れる油断ならない相手だと認識していたんだが」
「それはそれは。ヤシロ様にも、未熟な時代があったのですね」
俺の思い違いかよ、お前んとこの主が優秀だと思ったのは。
「ねぇ、ヤシロ」
俺たちの後を追ってきて、港に掲げられた横断幕を見て「うわぁ……」と素直な感想を漏らしたエステラが、苦笑を浮かべて俺に言う。
「三十七区にはもうすぐ到着するからさ、三十五区の貴族に提案するものを変更した方がいいよね」
「だな。まさに今、ナタリアとそう話してたよ」
「でさ、考えたんだけど……紙芝居がダメなら、鉄板に絵を描いて鉄芝居――」
「あー俺も未熟だったんだなぁー!」
予想を裏切らないな、このポンコツは。
……お前、真面目に考えてないだろ、実は?
「でもさ、後出しするなら豪華な感じを演出しないと……でしょ?」
「まぁ、それはその通りだろうけどな」
だからって、材質を変えてどうなるもんでもないだろう。
「何か案はないのかい?」
「まぁ、案というか……紙芝居は小さいからな、演者を確保できるなら、もっとデカい……そうだな、高さが2メートルくらいある紙芝居を作っても面白いとは思うけどな」
「それはすごいね! 迫力がありそうだよ」
もっとも、そんなデカさの紙は自重で破れてしまうから、木製の紙芝居になるだろうけどな。獣人族の協力なくしては上演できない代物だ。
「ただ、それにしても根本は『紙芝居』だから、しょせん二番煎じ。考えるなら根本的に発想を変える必要がある」
「だよねぇ…………うん。ヤシロに任せる」
「俺は、四十二区に帰ったら、きっちりと領主に対価を請求しようと思う」
「あはは……ホント、頼りっぱなしで悪いけど、ヤシロに任せた方がうまくいくって確信してるから。よろしくね」
ぽんっと、肩を叩いてエステラが俺に微笑みかける。
他所ではあまり見せない、無防備な笑みだ。
……ったく、俺を安く使いやがって。
「ヤシロが欲しがってた『娯楽』の建設に協力するからさ。ね?」
そんなおねだりボイス出したって、こっちはなぁ…………ったく、分かったよ!
「……三十七区が終わったら、なんか考えとくよ」
「やったぁ! ありがとね、ヤシロ☆」
『☆』じゃねぇよ!
マーシャみたいな声出しやがって。
「ほほぅ……エステラ様も、なかなか」
何が「なかなか」だ。
ちゃんと躾けとけよ。お宅の主、外聞って言葉をトイレかどっかに落としてきたみたいだぞ。
ちゃんと拾って返しとけよ。「トイレにワンバンした外聞ですが」って。
「では、三十七区では全力の紙芝居を披露してやるといい」
「随分とあっさり引き下がったな、ルシア。お前んとこの貴族を説得できないと、お前がこの先ずっと余分なメンテナンス費用を負担することになるんだぞ?」
「なぁに、心配には及ばん。頼もしいブレーンがおるのでな」
などと訳の分からんことを抜かして、俺にウィンクを飛ばしてくるルシア。
……お前ら、大概にしろよ、やいこら、領主ども。
「エステラ様のなけなしの可愛いアピールを、大人のウィンクであっという間に上書き……さすが、やり手ですねルシア様は。エステラ様、反撃です!」
「そんなもんで競ってないし、なけなしで悪かったねぇ」
「どうせなけなしなら、なけなしの乳を振り絞ってみてはいかがでしょうか?」
「あるけどね、普通に!」
「…………普通?」
「うるさいよ」
あっちで勝手に遊び始める面白主従。
あぁ、よ~く分かったよ。お前らが考える気なんかないってことが。
……ったく。めっちゃエロい見世物を提案して、大人の街にしてやろうか?
…………あり、かも?
「俺の故郷には『秘宝館』と呼ばれる施設がいくつもあってな――」
「三十五区の品位を著しく損なうような提案であった場合、その首を掻き切るぞ、カタクチイワシ」
「分かった。秘宝館は諦めるから、おっぱい見本市を開催しよう」
「ソレが譲歩になるような内容だったのかい、秘宝館というのは……まったく、君の故郷はとんでもないところだね」
バカモノ。
文化だ文化。
異国の文化は尊重せんか!
まったく、これだから最近の若い連中は……ぶつぶつ。
「ヤシロ、準備できたよ!」
気合いの入った声と共に、パウラたちがちょっとオシャレした格好で甲板へ並ぶ。
「……何があると思ってそんなオシャレ着を用意してきたんだよ」
「だって、初めての船旅だもん。失礼がないようにしなきゃいけないって思ったの」
ネフェリーの発想は、やっぱりちょっと昭和だな。
デパートへ行くのに正装して全員なぜか帽子をかぶって出かける国民的アニメのご一家のようだ。
「ま、アタシのは普段着さね」
「ノーマって普段からそんな格好してんのか。なんか、オッサンにモテそうだな」
「なんでオッサンに限定するさね、デリア!?」
「いや、露出だっけ? それが多いとオッサンたちが喜ぶんだろ?」
「あんたの普段着の方が、よっぽど露出度が高いさね!」
まぁデリアはチューブトップにホットパンツだもんな。
でもなんでかなぁ。「はだける」程度の露出であるノーマの方が百倍色っぽいんだよなぁ。
出せばいいってもんじゃないんだよ。
「あっ、見てください 船が向きを変えましたよ!」
港が見えてから、『外から見るオールブルーム』を眺めていたジネットが、前方を指さして俺たちを呼ぶ。
船はゆっくりと旋回し、舳先を港へと向ける。
入港の準備に入り、船内をクルーが慌ただしく駆け回る。
「見てください! たくさんの人が手を振ってくれてますよ!」
甲板から身を乗り出すように、ジネットは大きく手を振り返す。
マグダやロレッタ、カンパニュラがそれに続き、ハビエルは拳を高く掲げる。
「おーい、おーい!」なんて、両腕をぶんぶん振ってデリアが呼びかければ、港からは「ようこそ~!」なんて声が返ってくる。
ちょっと驚くくらいの歓迎ぶりに、俺もエステラも、ルシアでさえも目を丸くして、顔を見合わせ肩をすくめた。
張り切り過ぎだ、三十七区。
「なんだか楽しいことが始まりそうですね」
船が徐行を始めた頃、ジネットはこちらへと振り返り、太陽が嫉妬するような眩しい笑みを浮かべた。
ばたばたして若干どんより気分だった仕掛け人たる俺と両領主は、「じゃ、ちょっと頑張るか」と意識を切り替えた。
船が威風堂々と着岸し、俺たちは揃って三十七区の港へと降り立った。
あとがき
物忘れが激しい、宮地です!
もうね、
会社の人の名前と顔すら一致しない今日この頃です。
電話「ぷるるるるる(←巻き舌)」
宮地「はい、もしもし」
取引先『あ、もしもし? 宝田(仮名)さんいますか?』
宮地「はて……そんな人、ウチにはいませんけれど?」
取引先『お宅の部の部長だよ!?』
宮地「あぁ、あの人、そんな名前でしたっけねぇ?」
取引先『それで、いますか?』
宮地「え~っと……(オフィスを見渡す)……いませんねぇ」
宝田(仮名)「目の前にいますけど!?」
宮地「おぉ!? あんただったのか!?」
……というのは、いささか大袈裟ですが、
まぁ、似たようなことが先日……なんか、自分の記憶媒体が信用できなくなってきました。
どこのメーカーのメモリー使ってましたっけねぇ、私?
え~っと……ごそごそ(脳内メモリーを取り外して確認中)…………カバヤ?
えっ!? お菓子のメーカーの!?
えっ!? 私の記憶メモリーって、お菓子のオマケだったの!?
じゃあ、物忘れ激しくても仕方ないかなぁ~
お菓子のおまけですし(≧▽≦)
(※カバヤさんはUSBメモリーとか作っておられません。あと、とっても素敵なお菓子とオマケつきお菓子を作っている企業さんです)
さて、物忘れと言えば、
皆様、うっかりすっかり忘れていてくださいましたでしょうか?
三十七区に寄ることを!
うま~いこと、三十五区でやることを話し合うことで、
印象の薄い三十七区の存在を記憶から抹消し、
今回でヤシロたちと一緒に
「あっ、そういえば三十七区に寄るって言ってたっけ!? すっかり忘れてたよ~、あっはっはっ」
と、共感していただけたらいいなぁ~
という試みでした。
ミスリード、とはまたちょっと違いますが
忘れていただけるように先の楽しみをバカスカと提供した次第です。
……感想欄で「三十七区忘れてますよ」って指摘されるかどうか、
ドキドキ……(現在、22話公開した直後です)
「うっかりしてやられたぜ☆」
という皆様には、おっぱいの祝福があらんことを!
「いや、しっかり覚えてたけど?」
という皆様には、ちっぱいの加護があらんことを!
祈っておきましょう。
いえ、別に
作中のキャラの物覚えを悪くして
「自分だけじゃないんだ!」って安心感を得ようとか、
これっぽっちしか思っていませんからね!
(>_<;
というわけで、四十二区御一行様は三十七区へ立ち寄ります。
人生なんていうのはですね、
「よし、これで問題解決。あぁ~、うまいこといってよかったぁ~」
とか思った瞬間にトラブルが起こるように出来ているのですよ!
それがリアル!
それこそが現実です!
……せっかく定時で帰るためにばっちり計画立てて、完璧過ぎるタイムスケジュールを正確にこなして、「よっしゃ、帰るべ!」って思った瞬間に
パートさん「宮地さ~ん。何もしてないのにPCが動かなくなりました~」
とか言われて結局残業する羽目になるのが現実なのですよ!
そして「何もしてない」って言う人が何もしてなかったためしがありゃしない!
原因は、いつもヒューマンエラー!
m9つ(☆>▽・)
「真実はいつも一つ」よりも心理ですよね、そっちの方が。
というわけで、
ヤシロさんたちにもバタバタしていただきました☆
道連れって、素敵な響きですよね☆(≧▽≦)
それはさておき、
最近の子供たちは、旅行のお土産とか贈り合ったりするのでしょうか?
小学生の頃は、夏休みとか、
家族で旅行に行った友人からたくさんお土産もらいました。
見たことのないキャラクターのキーホルダーとか、
キーホルダーになってる小さいクイズの本とか、
温度によって色が変わるタイプの温度計とか。
なんか、こう、平べったくて、
寒い時は黒いんですよ。
で、温度が上がると、黒が薄くなって、「○○℃」みたいなのがどんどん現れてくる
みたいな?
青からどんどん赤に変わっていく、的な?
手のひらで温めて色を変えて遊んじゃうから、結局気温計れない、みたいな?
そんな温度計が、昔はお土産の定番だったんですよ。
申し訳程度に、空いたスペースに『京都』とか『東京』とか書かれているっていうね
書いときゃ土産っぽいだろう感満載の、なんとも素敵なお土産です。
当時の最先端技術だったんですかね?
温度で色が変わる、温度で色が消えるっていうのがやたらと流行っていたように思います。
まぁそんな感じでお土産を贈り合ったせいか、
小学生の頃はランドセルにめちゃくちゃキーホルダー付けてましたね。
もらったやつ全部つけるから、じゃらじゃらしてうるさいという。
でも、クラスの連中みんなそうなんですよ
90年代末期の女子高生の携帯ストラップのような状態でした
( *´艸`)
そんな中、
親戚のニーチャンとかが買ってきてくれるのが
ちょっとお高いお土産で、
その中にカラーサンドアートがあったんですよね。
砂でヤシの木と海とヨットが描かれていて、
なんだかとってもオシャレで、すごく好きだったんですよ。
山の中で生まれ育ったので、海に対する憧れが強かったんですよねぇ、私
小瓶に入った貝殻とか、結構好きでした。
小学校の修学旅行で伊勢志摩に行った際は、
海のポストカードを買いましたし
今回、ヤシロが作るお土産を書いていて、すごく懐かしくなりました。
皆様は、何か心に残っているお土産ってありますか?
私は、カラーサンドアート……も、よかったんですが、
北陸の方の温泉に行った親戚のオジサンにいただいた湯飲みが素敵でしたね☆
(≧▽≦)
あのですね!
露天風呂に入っているお姉さんが描かれている湯飲みなんですが、
重要なところは湯気と、露天風呂の岩でうまいこと隠れているんですよ!
(≧▽≦)見えそうで見えない! ニクイ演出!
でもですね!
あの当時、
先述した通り、
温度で色が変わるというギミックが流行っておりまして……
もう、分かりますよね?
そうなんです!
その湯飲みに熱いお茶を注ぐと!
お茶の温度で湯気とか岩とか『だけ』が!
無色に!
つまり消えちゃうんです!
そしたらもう!
丁度うまいこと隠されていたじゅーよーな部分が!
「ぅわ~お☆」
な状態に!!
(≧▽≦)o彡°いいぞ、もっとやれ!
あんなにも親戚のオジサンを尊敬したことはなかったかもしれません
素敵な贈り物をありがとう(*´ω`*)
やっぱりお土産って、心に残るものが一番ですよね☆
うん、綺麗にまとまった☆
……四十二区のお土産に、どうにかして作れないものか……けど、あの温度で色が変わる仕組みが分からない…………よし、勉強だ!
次回もよろしくお願いいたします!
宮地拓海




