報労記4話 守るために
「なかなか面白い子でしょ、彼女」
と、ダック・ボックが肩を揺らす。
もれなく、腹の肉もタプタプと揺れているが。
「あの性格はね、父親譲りなんだよ」
同じ区に住む貴族故に、面識もあるのだろう。
随分と親しげな口調でダックは語る。
「十歳の頃、剣を教えてほしいと言ったら『まだ早い』と断られたんだよね。だから、『じゃーもーいい』って言ったら『素振りくらいなら!』って。結局必殺技まで教えてくれたんだよねぇ、彼女の父親」
それはなんというか……物の見事にかまってちゃんだな。
というか……
「剣術をやっていてその体型とは何事だ」
「あはは。二十歳を超えた頃から同じだけ動いても痩せなくなってきてねぇ」
「貴様は持続しないからいかんのだ。体重が危険ゾーンに入ってから慌てて剣術を再開し、ある程度痩せたらそれに満足して辞めてしまう。そんなことを繰り返していれば、太りやすい体になるのは当然ではないか、ダック」
あぁ、いるいる。
太ってから慌てて運動し始めて、痩せたら安心して辞めちゃって、リバウンドを何度も何度も繰り返すヤツ。
しかも、年齢とともに代謝は落ちるから同じ運動量じゃ痩せなくなって、じりじりと体重が増加していっちまうんだよなぁ。
ダメなタイプだな、あいつは。
「今でもね、100kg台に突入したら運動して90kg台に戻してるんだよ?」
「目標が低過ぎるのだ、貴様は! 貴様の身長なら70kg台が妥当であろうが」
「あはは、そんなに軽くなったら風に飛ばされちゃうよ」
70kgは飛ばねぇよ。
ダックは目測で170cmにちょっと届かないくらいだから、60kg台でもいいくらいなんだけどな。
ルシアも、そこまで高望みはしないのだろう。
「トトさんの父君とは親しいのですか、ミスター・ボック」
「うん。私の兄と彼女の父親は年齢が同じでね。幼いころはよく家に遊びに来るお兄さんだったんだよ」
以前ルシアは、ダックは自分より十歳近く上だと言っていた。
なのでダックは三十代で……その兄貴と同じ年齢だというトトの親父はそれより上。
トトは、たしか前に来た時に年齢を言っていた気がするが……うむ、覚えていない。
だが、あのおっぱいの張りから見て……二十代前半。そうだな、二十四歳というところか。
「トトは二十四歳か?」
「覚えていてくれたのか、ヤシロ君!? 感激だ!」
「いや、トトさん。お兄ちゃんのあの目線は……」
「……ついに年齢まで分かるように」
ロレッタとマグダが驚愕の表情で俺を見てくる。
まぁ、鍛錬を積めば誰にでも出来ることさ、これくらいはな。
で、二十四歳の娘がいる父親ってことは……四十代中頃から五十代って感じか。
でもダックの兄貴と同じ年なら、四十代か……十五で成人を迎えるこの世界なら、十代のうちに出来た子だということも十分に考えられるから……
「トトの親父さんは四十歳前後か」
「は、はいっ。父上は今年で四十二になります! な、なぜご存じなのですか……!?」
「お兄ちゃん、おっぱい見ただけでご家族の年齢まで分かるようになったですか!?」
「……ヤシロの進化に、畏怖の念を禁じ得ない」
「懺悔してください」
「いやいや、男ならこれくらい誰でも出来るから。なぁ、ダック?」
「私には無理だなぁ」
「コツを掴めば簡単なんだよ。例えば、エステラだったら……父親は二十二~二十三歳か?」
「誰の胸が乳幼児だ、コラ」
「それは――どぅるるるるるるる……じゃん!――エステラ様です!」
「うるさいよ、ナタリア。ナタリア、うっさい」
う~む、おっぱいの張りを見て年齢を推測するのはまだまだ不完全か。
「よし、俺も今以上に研鑽を積むか!」
「それ以上積まなくていいですよ、お兄ちゃん!?」
「……ヤシロは、神の領域に足を踏み入れるつもり」
「もう……、懺悔してください」
エステラが騒ぐせいで、庭先がわちゃわちゃしてしまった。
エステラが騒ぐせいで。
「とりあえず、ジネット、ニュースカラップに引き続きカツオのたたきを焼かせてやってくれ」
「ニューフェイスみたいに言うんじゃないよ。なにさ、ニューホタテって?」
おや、エステラにはスカラップがホタテと翻訳されて聞こえたのか?
まぁ、同じだからいいけどな。
「ではマリンさん。感覚を忘れないうちに、もう一度練習してみましょう」
「はい! ご指導お願いします、店長さん!」
意気込むマリン主任。
まぁ、散々わちゃわちゃしてたから、感覚忘れちゃってると思うけど。
「で、マグダは中で軍艦をマスターさせてきてくれ」
「……任された。ロレッタを超える逸材に仕上げてくる」
「ちょっと待ってです!? そんなに可能性を秘めてるですか、デラっちょ!?」
「……マグダをも越えられる可能性を秘めている」
「そ、それは強力ですね……! では、あたしの持てる技術も継承して、あたしとマグダっちょでデラっちょを最強のグンカニストに仕上げるです!」
「……ホソマキストにも」
「デラっちょ! 修行ですよ!」
意気揚々と店内へ飛び込んでいくロレッタとマグダ。
グンカニストってなんだ!?
ホソマキストって……つーか、マツコをデラっちょって呼ぶんじゃねぇよ!
デラックスにはさせません!
「で、トトはウクリネスに会えたのか?」
「うむ! とても素晴らしいものをいただいたのだ! あの方は素晴らしい職人だな!」
ウクリネス製のスポブラは非常に着け心地が良いようで、トトはにっこにこのご満悦フェイスで自身の胸をドンと叩く。
「見てくれまいか、このすっきりとしたラインを!」
「ではじっくりと拝見しよう!」
「見ないでくれまいか!」
秒で意見をひっくり返された!?
「たおやかな膨らみを見ろと言ったじゃねぇか!?」
「そんなことは言っていない! すっきりとしたラインを見てくれと申したのだ!」
「では、じっくり拝見しよう!」
「見ないでくれまいか!」
目を覆うようにアイアンクローされた。
ひどくない?
「貴様のせいで話が遅々として進まぬ。少し口を閉じろ、カタクチイワシ」
「いいじゃねぇか、乳の話なんだし」
「遅々としてだ! 乳ではない!」
「うん、ルーちゃん。女の子が、あんまり「チチ、乳」連呼しないようにね」
「ふん。貴様とカタクチイワシの前で淑女ぶったところで、何の益があるというのだ」
「だよな! パンツ見えそうでも『あ、私気にしないから』くらいサバサバしてる方がいいよな!」
「誰がパンツなど見せるか!? レディに対して失敬だぞ、カタクチイワシ!」
知らないのかもしれないけど、レディは大声で「パンツ」とか言わないんだぜ、ルシア。
「スアレス様、あの……下着の話は、それくらいにしていただいて……」
トトが赤い顔でルシアを止める。
下着の話が恥ずかしいらしい。
「今はこの素晴らしいスポブラの話を聞いてくださいませぬか?」
「下着の話じゃねぇか」
まぁ、ウェルカムですけども!
「とりあえず、一度見せてもらおうか」
「ヤシロ、いい加減にしないと刺すよ?」
「刺される程度で見せてくれるなら、全治三ヶ月くらいまでなら耐えられる!」
「見下げ果てた男だね、君は」
それが情熱というものなのだよ、エステラ君。
男は皆、この情熱を心に持って生まれてくるのだ。
「締め付けないのに、胸全体を包み込み、どんなに速く動いても胸が暴れないのです!」
「それはすごいな! エステラも試してみたらどうだ?」
「残念ながらヤシロ様、エステラ様は常時暴れないお乳ですので比較が出来ないのです」
「そっかー、残念だなぁー」
「君たち二人の言いたいことはよく分かった。決闘だ!」
相当急いで仕事を片付けてきたのだろう。
エステラは随分と心の余裕をなくしている。
ピリピリしてんなぁ。
「なぁ、それってそんなにいいのか?」
デリアがトトに話しかけ、普通の顔でツンっと胸を突く。
「いいなぁ!」
「懺悔してください」
くっ! もう指導が終わったのか。
ジネットがマリン主任に付きっ切りでカツオを焼いている隙に、目一杯はしゃいでおこうと思っていたのに!
「へぇ~、割としっかりしてるなぁ」
「あ、あのっ、あんまりぽいんぽいんしないでくれまいか……っ!?」
デリアが興味深そうにトトのおっぱいを下からぽいんぽいん持ち上げている。
「興味深ぁ!」
「ヤシロさん」
鼻を摘ままれたって視線が離れないっ!
おぉっと、よく見ればトトのおっぱいはデリアとほぼ同じ大きさじゃないか!
HカップとHカップ、夢の競演っ!
「トトとデリアは同じくらいのサイズだな☆」
「ん? そうか?」
「デリア、怒っていいよ。ヤシロの今のセクハラ発言に」
エステラの言葉は聞いていないようで、デリアは自分とトトの胸を左右の手で同時に鷲掴みにする。
「ドリーム・マッチ!」
「黙れ」
デリアが止まらないと悟るや否や、こっちに矛先を向けてくるエステラ。
それでも負けない! 今、とっても素敵な気分!
「ホントだなぁ」
「き、君っ、貴族の令嬢の胸を、そんな気やすく、つかっ、掴むのではない!」
されるがままのトト。
口調こそ、平民に対する貴族の強気なものだが、女子相手には強く拒絶も出来ないようだ。
……くそ、俺も女子に生まれていればっ!
「でも、これくらいの大きさじゃ、そこまで揺れなくないか?」
「……え?」
言って、デリアが物凄い速度で移動する。
ゆっさり――
「な? そんな言うほど揺れないだろ?」
揺れた。
確かに揺れた。
しかし、トトが言うような大暴れというほどではない。
動きに合わせてあっちこっちおっぱいが暴れ回るようなことはなく、まるで一つの塊のように雄大でたおやかに、ゆっさりと揺れるデリアのおっぱい。
つまり。
「デリアのおっぱいはスポブラの機能を備えた、スポーツおっぱいだったのか!?」
そんな世紀の大発見をした俺に対しエステラは、「ヤシロ、うるさい」と冷めた言葉を投げかけるのみだった。
やはり、世紀の大発見を凡人が理解するには時間を要するようだ。まったく、やれやれだぜ。
「そなた……、素晴らしい動きだな」
「ん? そうか? 普通だろ?」
見失いそうな速度のバックステップをして、驚異的な速度で戻ってきたデリアを、トトが興味深そうに見つめる。
あのな、デリア。
全然普通じゃないから。
「マグダの方が速いぞ」じゃないんだ。
一般人から見れば、とんでもない領域で優劣争ってんだよ、お前らは。
「あのっ! もし迷惑でなければ、一度手合わせ願えぬだろうか!?」
「ん? あたいとか? おう、いいぞ」
「離れてやれよ」
デリアが暴れると、陽だまり亭に被害が及ぶ。
特に、今は庭で火を使ってるんだからな。
「大丈夫でしょうか、デリアさん」
「まぁ、怪我をするようなことはしないだろう」
トトは騎士を目指して訓練してたようだし、ゴロツキのような乱闘にはならないはずだ。
「武器は木剣で構わないだろうか?」
「あたいは素手でいい。武器は使ったことないから」
確かにデリアが剣や槍を振り回しているイメージはないな。
「えっと……自分は剣を使いたいのだが」
「おう、いいぞ」
木製とはいえ、剣対素手か……
「デリアに怪我をさせんなよ」
「無論です! 自分は騎士ですよ!」
キッと睨まれる。
いくら礼儀正しい騎士であろうが、木剣で殴ったら相手の体にアザくらい出来るだろうが。
トトは、庭先に停まっているやたら豪華な馬車に向かい、木剣と木の盾を持ち出してくる。
……何があると思って持ってきたんだよ、そんなもん。
え、なに? お前って、強そうなヤツを見かける度にこうやって手合わせ願い出てるの?
どんな戦闘民族だよ。
あ、ちなみに馬車は外に放置したままだ。
陽だまり亭には厩なんてもんはないしな。
嫌なら領主の館にでも寄って預かってもらうんだな。
……ま、現在ダックの家の馬は馬車から外して日陰で休ませてやってるけども。
「では、お願いします!」
「よし、じゃあナタリア、合図を頼む」
「では、僭越ながら」
店から少し離れ、デリアとトトが向かい合って立つ。
その中間にナタリアが立ち、伸ばした手を振り下ろす。
「はじめ!」
「やっ!」
「でりゃあ!」
合図と同時に駆け出した両者。
一瞬で間合いがゼロになり、トトの鋭い一撃が突き出される。
が、それをパワーで撥ね退けてデリアの蹴りがトトを襲う。
なんとか木の盾で防ぐが、衝撃に耐えたその一瞬でデリアが大きな回し蹴りを繰り出す。
体重の乗った強力な一撃をトトは後ろに飛びのいて避け、着地と同時に今度は弾丸のように前進してデリアの喉元めがけて剣を突き出す。
喉へ迫る切っ先を避けるように、デリアが後方へ体をのけぞらせてそのまま一回転、綺麗なバク転を披露して双方の動きが止まる。
「……す、すごい」
たった五秒程度の短い時間であったが、息をするのも忘れそうな激しい攻防を目の当たりにしてエステラがごくりと喉を鳴らす。
あぁ、まったく、とんでもないな。
「ゆっさゆっさだったな!」
「どこ見てたのヤシロ!?」
そんなもん、一番視線が引き寄せられるところをに決まってんだろうが!
他のところになんか一切目が向かなかったっつーの。
「もう十分でしょう。双方、お疲れさまでした」
ナタリアの声を聞き、身構えていたデリアとトトが肩から力を抜く。
「なかなかやるなぁ、お前」
「いえ、あなたの方こそ。驚きました」
デリアに対しては少々偉そうな口調だったが、手合わせをして印象が変わったのかトトが口調を変えた。
「この下着をつけていなければ、最初の一撃は避けられなかったでしょう」
ぽんっと、自身の胸を叩くトト。
あれだけの動きをすれば、胸が揺れて痛くなるのもしょうがない。
その苦痛をしっかりと和らげてくれたらしいな、ウクリネスのスポブラは。
「あと五年早く出会えていれば、私も王宮の騎士団に入れたかもしれないのに……まぁ、今さら言っても仕方のないことであるが……」
スポブラの性能がいいからこそ、悔やまれる。
そんな顔でトトは寂しそうに笑う。
「いいじゃねぇか。今からやりたいこと見つければさ」
いいスポブラに出会ったのなら、今から別のなりたい自分になればいい。
きっとデリアはそう言いたいのだろう。
「デリアの言うとおりだ」
そんなデリアの気持ちに、俺も同意を示す。
「スポブラっていいよね☆」
「デリアはそんなこと言ってないよ」
「デリアさんはそんなことおっしゃってませんよ」
「デリア姉さまはそのような趣旨の話はされてませんよ、ヤーくん」
「あたい、そんなこと言ってねぇぞ?」
四方八方から総批判だ。
「滅せよ、カタクチイワシ」
あ、あいつだけは批判なんて生温いもんじゃねぇな。
呪詛だ、呪詛。
「けれど、確かにクマ人族のお嬢さんの言うとおりだね」
ダックがお饅頭みたいな手をぽふぽふと叩きながら、トトの前へと歩いていく。
「王宮騎士団にはもう入れないけれど、今からでも新しいステージを見つけることは出来る。君が最も輝ける場所が、きっとどこかにあるはずだよ」
「ダック様……」
「とりあえず、ウチの私設騎士団でよければいつでも歓迎するよ」
「誠でありますか!? ぜ、ぜぜぜぜ、是非!」
「じゃ、帰ったら騎士団長に話しとくね」
「ありがとうございます!」
なんか、就職先が見つかったっぽい。
よかったな。
「ちょうどよかったよ」
喜ぶトトを見て、ダックがにっこりと笑う。
「今後は、私も外遊の機会が増えると思うからさ――護衛にうってつけの人物を欲していたんだよね」
「……え?」
にこりと笑みを深めるダック。
トトが、言い知れぬ不安をその表情に滲ませる。
「三十一区のテーマパークや、新たに出来た港は、我が区としても今後注視していくべき場所だからね。私も四十二区に訪れる機会が増えると思うんだ」
えぇ……あんま来んなよ。
ただでさえよその領主がうろついてんのに、この辺。
「その際、彼の協力を得られると便利なことが多いと思うんだよね」
と、俺を見るダック。
エステラを見ろ、そーゆー時は。
「だから、フレキシリス君には私の護衛として同行してもらいたいな」
遠出をするから騎士を護衛としてそばに置きたい。
そんなごく普通の要求を口にしながら、そっと細長い紐をトトに手渡す。
「その時は、よろしくね」
「よろしくね」と言われたトトは、手渡された細長い紐、たすきを伸ばして直視し、求められていることを悟って吠える。
「よろしくって、おっぱいたすきをですか!?」
「印象は、いい方がいいでしょ?」
「むぁぁあああ!」
領主から強要されたことを突っぱねられる貴族は少ない。いや、いない。
自分のところで引き取ると宣言して早々、とんでもないセクハラを強要する鬼のような領主。
まったく、貴族ってヤツはとことんとんでもねぇな、いいぞ、もっとやれ。
「がんばれよ、トト☆」
「君のせいだからな、ヤシロ君!」
「あ、そうそう。四十二区とは友好関係を維持したいからさ、マクロスピルス君たちへの協力もしてあげてね」
マクロスピルスってのは、トトの幼馴染で三十四区の貴族であるクルスのことだろう。
ネグロとクルスという二人の貴族が、腐敗しきっている現在の土木ギルド組合を内部から作り変えようと奮闘しているのだ。
組合を浄化できれば、四十二区に軸足を置いているトルベック工務店との関係も良好になるだろう。
そうすれば、四十二区に対して恩を売れないまでも友好アピールにはなるか。
組合を変えるのだと熱意を燃やすネグロと共にやって来たそのクルスという貴族は――トトにおっぱいたすきを仕込んだ張本人!
なかなか話せる男なのだ!
「どっちにしても、おっぱいたすき頑張ってな☆」
「だから、みんな君のせいだからな、ヤシロ君!」
「むぁー! むぁー!」と牙を剥かれるが、俺が「やれ」って言ったわけじゃないし?
向こうが「どうですか?」って提供してくれてるものだしさ?
クレームは向こうに言ってほしいもんですなぁ。
得をしてるのは俺だけどね!
「さて」
と、ダックが手を打つ。
ぽふっと。
「美味しいお寿司と、新しい料理でお腹も満たされたし、連合騎士団の話もまとまったし、そろそろ帰ろうかな」
やるべきことはやったと、ダックは満足顔だ。
……が。
「連合騎士団?」
「あれ? ルーちゃん、話してないの?」
「それは三十五区と三十四区の話であろう。エステラには追々話すつもりでいたが、カタクチイワシにまで説明してやる謂れはない」
「またまたぁ~。心配かけたくないから急いだんじゃないの?」
「誰がだ!? たわっ、戯けたことを抜かすな、ダック!」
なんか知らんが、照れたルシアがダックの首を絞める。
割と強めに。
「待って待って待って! 堂々と領主暗殺はまずいよ、ルーちゃん!」
ぺしぺしとルシアの腕を叩くダック。
「ふん!」っと、ルシアはそっぽを向き、俺をちらっと見て「んべっ!」と舌を見せた。
……なんなんだよ。
「バオクリエア」
けふっけふっと咳をしつつ、ダックが呟く。
バオクリエア。
レジーナの故郷にして、ウィシャートと結託してこのオールブルームにヤバい薬物を密輸して、じわりじわりと突き崩そうと画策していた大国。
現在は王位継承権で第一王子と第二王子がほぼ同じ勢力でいがみ合っており、他国への目立った侵略行為は見受けられないが、ヤバい思想の第一王子は隙あらば他国にちょっかいをかけてくる厄介な人物のようだ。
この街でも度々問題を起こしていたゴッフレード。そいつと繋がりのあったノルベール。そういった連中を使って突き崩しを図っていた油断ならない国がバオクリエアだ。
で、そのバオクリエアがなんだって?
「もし、連中が軍を率いて進軍してくるなら船を使うだろうから、危険なのは三十五区なんだよ」
陸路でも行けるが、その道程は山あり谷ありの過酷なものだ。
軍を率いて攻め入るのであれば、大軍を一度に送り込める海路を使うだろう。
そうなれば、オールブルームで最も大きな港がある三十五区が一番危険だ。
「それに備えて、三十四区と三十五区で連合騎士団を結成して警備を万全にしようってことになったんだ」
「会談の内容を易々と漏洩するな、バカめが」
ルシアはあきれたようにため息をついたが、ボックは気にも留めていない様子でにこにこしている。
つーか、お前ら最初、こんな重い話を陽だまり亭のフロアでしようとしてたのか。
「まぁ、すぐどうこうなるとは思っていないけれど、いつまでも平和だなんてお花畑でもいられないからね。備えはしておいた方がいい。それも、なるべく早くからね」
バオクリエアの現国王の身に何かあれば、政局は一気に変化する。
第一王子が王位に就けば、他国への侵攻が本格化する危険は十分に考えられる。
現に、現国王は病に倒れた。
レジーナが危険を冒してまでバオクリエアへ戻り、特効薬を作っていなければ、その戦火がオールブルームに伸びていた可能性はあった。
「最悪でも、王宮騎士団や狩猟ギルドが駆けつけてくれるまで港を防衛できる程度の戦力は必要だからね。これからウチの騎士たちにはたっぷり訓練してもらわないと」
「なぁ、ルシア様!」
ダックの話を聞いて、デリアが一歩前へ進み出る。
「三十五区はカンパニュラの生まれた街だし、あたいも結構好きな街なんだ。だから、もし悪いヤツが攻めてきたら、あたいも加勢するからな」
「……ふふ。それは、なんとも頼もしい援軍だな」
「マグダとナタリアもきっと手伝ってくれるよ! なぁ、ナタリア」
「エステラ様の命がございますれば」
「エステラ、めーがござるよな?」
「うんっと、デリア。理解できなかった言葉は無理して使わなくていいからね」
苦笑しつつ、ルシアの前へ進み、エステラがルシアの手を取る。
「何があろうと駆け付けます。それ以前に、その連合騎士団に四十二区も混ぜていただきたいくらいですよ。……まぁ、ウチの兵は練度に少々不安がありますが」
弱いもんなぁ、エステラんとこの兵士。
つーか、騎士がいないんだよなぁ、この区には。
「よいのか? 兵を派遣すれば、その区の練度が知られ、手の内をさらすことになるのだぞ? 我が区が四十二区へ攻め入ろうとすれば、そちらの弱点を的確につくことが出来るようになる」
「そうならないよう、四十二区は三十五区にとってなくてはならない同盟区でい続ける所存ですよ。敵に回すより味方でいた方がよいと、この先もずっと思ってもらえるように」
ニッと、両領主が笑みを交わす。
「では、そなたの兵を鍛えてやろう」
「お手柔らかにお願いします。……デリアとやり合える騎士がいる部隊の特訓には、とてもついていけそうにありませんので」
「そなたには厳しさというものがことごとく足りておらぬからな」
まったくだ。
マグダやデリアがいてくれるからいいものの、エステラのところの兵士だけじゃ四十二区は守れない。
兵だけじゃなくて、馬番の腕も悪いんだよな。
その辺の事情を知っている領主はエステラの館ではなく、イメルダの館に馬車を預けに行くってくらいには。
「ついでに馬番も育ててもらえ」
「それは、ハビエルギルド長に頼む方がよかろう。イメルダ先生の家の馬番は素晴らしいぞ」
「……ぅぐ。どうせ、ウチの馬番はへっぽこですよ」
「馬もな」
「あのね、ヤシロ! うちの馬は血統も誉れ高い――」
と、いつものよく分からない馬自慢が始まったので聞き流す。
血統がよかろうが、まともに馬車も引けない貧相な馬じゃねぇか。
買い替えろ。
「なるほど。これが『微笑みの領主様』の長所であり、弱点というわけなんだね」
ダックが、顔から笑みを消し、静かな声で言う。
「三十五区が足枷になっても、きっとあなたは見捨てない」
「え?」
そして、すぐにまたほほ肉に目が埋まりそうな笑みを浮かべる。
「これは、真剣に守らなければいけないね、三十五区を」
「いや、守られているのはむしろこちらの方で……、先輩としていろいろ教えていただいてることも多いですし」
「うんうん。今はね」
「いや、今はというか……」
ダックには、エステラに見えていない未来が少しだけ見えているのだろう。
俺も危惧していた部分ではある。
ルシアは、エステラと懇意になるより以前、孤高の女領主というような扱いを受けていた。
『亜人好きの変わり者』
『婚約破棄された女』
そんな、表立っては囁かれない噂話に足を引っ張られていたというのもあるだろうが、ルシアには大っぴらに出来ない部分が多かった。
ゆえに、ルシアは一人で立ち向かえるだけの強さを手に入れた。
その強さに、エステラは当初幾度となく救われている。
だからこそ、エステラはルシアに恩義を感じ、何はなくとも友好関係を固持する姿勢を崩さない。
だが、一人で立てる強さを身に付けていたルシアは、裏を返せばそうせざるを得なかった領主でもあるのだ。
ルシアには、エステラ以上の味方がいない。
ま、ダックもいるのだろうが、かつて婚約関係にあった男女だ。必要以上に庇い立てをすればどのような噂が出回るか分かったものじゃない。
不貞行為に厳しいこの街の風潮で、妻も子もいるダックは大っぴらにルシアを庇うことは難しかった。
『ルシア・スアレスがいまだに結婚しないのは、ダック・ボックとの関係が続いているからなのではないか』なんて、クソみたいな噂を立てられると、大打撃を受けるのはルシアの方だ。
ルシアにしても、ダックの家族にそのような不安を与えたくはないだろうし。
――と、なってくると、三大ギルドや『BU』、外周区の領主と『直接』繋がりを持ち始めたエステラにとっての弱点になる可能性が出てくるのだ。
あの、ルシアが。
三十一区のテーマパーク然り、ウーマロたち土木ギルド造反組然り、大きな事業をまとめ上げているのは四十二区だ。
そこの領主であるエステラを攻略しようとした時、一致団結する集団を突き崩すにはどこを狙えばいいか……
長らく『孤高の女領主』として、どの区とも接近を拒んでいたルシアは絶好のターゲットになる。
今でこそ、ドニスやゲラーシーとも気兼ねなく話しているルシアだが、それらはすべて四十二区を介して集まった集団の中での話だ。
三十五区が単独で何かを働きかけた時、四十二区を介する集まりと同じようにいくかといえば、おそらくその限りではないだろう。
エステラは新米というのがいい方向へ作用している。
先輩領主に甘えることが出来るからな。
だが、ルシアはそれが出来ない。
虚勢を張るため、盛大に対立した区もあるだろう。
エステラが「助けてください!」と頼めば動いてくれる領主でも、ルシアに「助けてくれ」と言われて動くかどうか……怪しいものがある。
ルシアがエステラに助けを要請し、エステラが「助力願います」と言えば力を貸してくれそうではあるが。
もっとも、ルシアなら互いのメリットやデメリットを並べ立て、助力せざるを得ない状況を相手に理解させて強引に説き伏せてしまうかもしれんが。
つまりルシアは、殊更気にかけて庇ってやらなければいけないほど弱くはないが、放っておいても大丈夫だろうと突き放して放置できるほど強くもない。そういう立ち位置にいるのだ。
もし、ルシアの身に何かあれば、エステラへ大打撃を与えられる。
俺が四十二区を崩壊させようと目論むなら、守りの強固になった四十二区への直接攻撃ではなく、単独行動の多い四十二区領主の弱点を的確に潰すという方法を取る。
武力でも、財力でも、なんでもいい。
ルシアを潰せば、エステラは動揺し、最大限の譲歩を引き出せるだろう。
ルシアを人質にすれば、四十二区領主の座すら明け渡すかもしれない。
そういう意味で、ルシアは危うい立ち位置にいる。
それすらも承知したうえで、エステラのよき理解者をやってくれているのだから、ルシアには頭が下がる。
「しっかり守ってやれよ」と、そんな視線を向けていると、ダックはこちらを向いて無言で俺を指差した。
まるで「一番の抑止力は君だよ」とでも言いたげに。
そして、ふっくらした腕を動かしてジェスチャーを始める。
なになに?
『この女、俺のお気に入りにつき、手出し無用。泣かせると全力でぶっ潰す。オオバヤシロ――っていう旗でも立ててくれると安心だなぁ』
「って、アホか!」
「あ、伝わった?」
「さーな」
「まぁ、考慮しておいてよ」
重たそうなほほ肉を持ち上げて、にこにこと笑うダック・ボック。
……ったく。食えねぇ男だ。
人畜無害そうな顔で、いろいろとよく見ている。
ちょっと気を引き締めて接しないとな、こいつには。
「それじゃ、またね。あ、今度は三十四区にも遊びに来てね。キャラバン、楽しかったからさ、あーゆーヤツ、またやってね? 約束ね。今度、私の妻も紹介したいから」
「いいからさっさと帰れ、ダック・ボック!」
帰り支度を済ませた後もなかなか馬車に乗らないダックに業を煮やしたルシアが一喝する。
うん。その言葉、お前にもそのまま伝えたい。
いいからさっさと帰れ。三十五区へ! ハウス!
「あの、ダックさん。こちら、もしよろしければお持ちください」
「わぁ、ありがとうね、店長さん。これはお寿司?」
「はい。ヤシロさんに衛生面に関して確認を取り万全を期しましたので、生魚ですが問題ないはずです。ですが、なるべく早くお召し上がりくださいね」
「うんうん。帰ってすぐ食べる。いや、馬車の中で食べちゃう!」
「それは奥方と子らの分だ! 食い尽くすな!」
ダックから寿司折を取り上げ、馬車に同乗するトトに押し付けるルシア。
「もしこいつが一切れでもつまみ食いしたら、その旨、漏らさず奥方に報告をするのだ。こいつには折檻が必要だ」
「いえ、奥方様はそのようなことをされる方ではありませんよ、スアレス様」
「なんだ。そなたは知らぬのか?」
「……え?」
世間ではおとなしそうな奥様で通ってるんだろうな、ダックの嫁。
でも、実際は過激だと……
バラしてやんなよ、ルシア。
「それじゃ、また遊びに来るよ」
「いえ、間に合ってます」
「あはは。カタクチイワシ君は冗談がうまいなぁ~。じゃ」
こっちの話をバッサリ切り捨てて馬車に乗り込むダック。
……冗談じぇねぇっつの。
「では、自分もこれにて失礼いたします。デリア殿。いずれまた」
「おう。また手合わせしような」
トトもダックに続いて馬車に乗り込む。
そして、馬車が出発する――かと思いきや、窓が開いてダックが「ルーちゃん」とルシアを呼ぶ。
ルシアが近付いて「早く帰れ」と、脂肪たっぷりな頬をつねる。
涙目になりながら、小さく折りたたまれた紙をルシアに手渡して、今度こそダックは帰っていった。
「はぁ、緊張した~☆」
「嘘だろ」
マーシャが水槽の中でちゃぷんっと水をはねさせる。
お前がダック相手に緊張する理由が分からん。
「三十四区は、人魚にとってはあまりいい印象のない区なんだよ」
「そうなのか?」
マーシャの言葉が本気なのか冗談なのか分からず、エステラへ視線を向ける。
「大昔、三十四区で人魚の誘拐事件が頻発したんだよ」
「誘拐?」
「ほら、人魚はみんな魅力的だからさ」
と、しかめた顔で肩をすくませるエステラ。
人身売買……か。
「しかも、それを先導していたのが当時の三十四区領主、エグゼリオ家だったんだよ」
「エグゼリオ家? 領主、変わったのか?」
「その誘拐事件が明るみに出てね。王族は大変激怒して即貴族としての地位と権限を剝奪した後、国外追放処分としたんだよ」
国外追放って……
三十五区から出たとしたら、海路を行くことになるのか?
逃げ場ねぇな、そいつ。
「かなり昔の話だけど、人魚としてはまだちょっと怖いらしいんだよ、三十四区は」
「だから、連合騎士団の結成には神経を使ってな」
ダックからの手紙を読み終わったらしいルシアが話に合流してくる。
「マーたんの許可を取り付けるのに苦労したぞ」
「だぁ~ってぇ~……人魚を誘拐する三十四区だし、現領主はルシア姉をフッた嫌なヤツって思ってたし……ルシア姉、それでいろいろ言われてたみたいだし……」
「私のために怒ってくれていたのか、マーたん!?」
「マーシャがそんなことを気にしていたなんて、ボク知らなかったよ」
「ルシア姉は、私の大切なお友達だからねぇ~」
「マーたん、好きじゃぁああ!」
「えい、マーシャ☆カッター」
「どぅわぁああ!?」
飛びつこうとしていたルシアが空中で体をひねって凶刃を避ける。
惜しい!
「残念がるな、カタクチイワシ!」
空中で軌道を変えるとか、お前は本当に人間か?
「まぁ、アレはアレなりに歩み寄ろうとしておるのだ。すぐにとは言わぬが、アレなりの努力も見てやってほしい」
「うん。ルシア姉の頼みだからね。ウチの子たちにも一応は言っておくね」
「助かる」
明日一日、ルシアがマーシャに付き合うのは、この決定を受けて接待をするためなのかもしれないな。
マーシャは不安なことを不安だと素直に認めないタイプだから。
そばにいて、じっくりと納得してもらおうというつもりか。
「あ、それで世代交代を……」
「さすが、ヤシロ君。鋭いねぇ~☆」
誘拐事件があったのを、エステラは『大昔』と表現した。
なら、古参の人魚はマーシャ以上に三十四区に対して反感を持っているはずだ。
「私は、子供のころに親から話で聞かされただけの世代だけど、上の世代には当時を知ってるお婆ちゃんもいるからねぇ」
その三十四区が港の警備に就くと知れば、三十五区への寄港を嫌がるだろう。
だから、ルシアは必死に三十五区の港を盛り上げようとしているのか。
忌避感の少ない若い世代が少しでも好感を持ってくれるように。
「領主が変わっても、当時存在した貴族の家はまだ残ってるから、完全に信用できるわけじゃないんだけどねぇ」
「二度と狼藉は働かせぬ。私が、命に代えても阻止してみせる」
「うん。ルシア姉を信じる」
その辺の抑え込みを、ルシアとダックでやるという話し合いをしていたのだろう。
何より、マーシャの信頼を得るために。
「それに、守りはしっかりと固めなきゃいけないもんね」
言って、マーシャはエステラを見る。
急に視線を向けられたエステラは「……へ?」と目を丸くしているが。
親友のエステラを守るため、己の中の飲み込みにくい思いを飲み込もうとしているのか。
「エステラ」
「へ?」
「お前、いい友達に恵まれたな」
「え? なに? なんなの、みんなして」
「こんな美人に好かれて、羨ましいという意味だ。で、あろう、カタクチイワシ」
「余計なことを言うな」と、視線で怒られた。
エステラはエステラのままでいいってか。
へーへーそうかい。
「お前ら、仲良しなんだからおそろいの服でも着てみたら?」
「ボクにホタテは無理だよ!」
むきー! っと怒るエステラを見て、ルシアとマーシャが笑う。
いろいろと、考えてくれているようだ。
「カタクチイワシ」
エステラに笑みを向けたまま、ルシアがダックからの手紙を俺に差し出す。
「見ていいのかよ?」
「かまわん」
中を開けてざっと内容を確認する。
……おいおい、これって。
「かつて、人魚の誘拐を行ったエグゼリオ家に人魚キラーを提供していたのが、ハーバリアス家――十一区の領主だ」
海水を固める薬。
それを騎士たちへ広め、対人魚との戦闘を優位に導いた立役者。
現在、薬師ギルドを束ねる大貴族。
それが、十一区領主、三等級貴族のハーバリアス。
「ウィシャートと結託しておったのは、おそらくそちらだ。二十二区の方はハーバリアスとウィシャートに嵌められておったようだな」
「ここで言っていい話なのか、それは」
「貴様も、探らせておったのであろう?」
「まぁ……」
ナタリアやイネスにそれとなく頼んではいた。
が、三等級貴族の身辺を洗ってもらうのは危険が伴うので「出来る範囲で」と言っておいた。
おかげで、十一区も二十二区も一切情報が拾えなかった。
「人魚キラーについては、レジーナが詳しかった。おそらくバオクリエアで作られたものなんだろう」
「であるならば、その時代からウィシャートを介して繋がりがあったのであろうな」
ハーバリアスがバオクリエアと繋がりがあり、密輸をするためにウィシャートを抱き込んだのか、ウィシャートがバオクリエアからの薬を餌にハーバリアスに接近したのかは分からんが、相当昔から腐ってたようだな、あの辺。
薬師ギルドの元締めが、昔からバオクリエアと繋がっていたとなると、薬師ギルドが有している薬の情報はバオクリエア由来ということか?
じゃあ、なんでレジーナの薬剤師ギルドは認可が下りたんだ?
たしか、薬師ギルドの作る薬とは製法も材料もあまりに違い過ぎるから別物として扱われた――って話だったが。……ふむ、分からん。
今度レジーナに聞いてみるかな。
「その昔の繋がりを逆手にとって、ダックが探りを入れてくれた」
「無茶したんじゃないだろうな?」
「かなりの無茶をしたようだな」
おいおい……
「それだけの価値があると踏んだのであろう、今の、オールブルームに」
四十二区を中心に、急成長を見せている外周区、そして『BU』。
この勢いを守るために、かなり無理をしてくれたらしい。
「当初、ウィシャートに協力しているのが二十九区の貴族だったことから、三十区と二十二区が結託して二十九区潰しを画策しているのかと我々は考えた」
俺も、そのように考えていた。
だが、事態は二十九区潰しなんて小さなものに収まっていなかった。
「連中が狙っていたのは、国家を崩壊させかねないとんでもないものだった」
区なんてもんじゃなく、国をひっくり返そうとしていやがった。
「ウィシャートが捕まり、その背後関係を洗うことは難しくなったが、誰が後ろにいたのか、それは知っておいた方がいい。そう思ってダックに協力を要請した」
「婚約破棄の代償って、でっかいんだな……」
「まだまだ貸しが勝っておるがな」
まだ返済できてないのか……
三等級貴族に目を付けられたら、五等級貴族なんかぷちゅっと潰されるだろうに。
「最も疑わしいのは十一区だ。二十二区は、ハーバリアスの手によって目くらましに利用された可能性が高い。……とはいえ、無関係だと安心するには早計ではあるがな」
そうだな。
俺は、ウィシャートの館にあった隠し通路を見て、ウィシャートの後ろにいたのが十一区だろうと予測を立てた。
ルシアはまた別の方法で同じ答えにたどり着いたのか。
「とりあえず、十一区には要注意。二十二区は、気を付けつつ要観察ってところか」
「ま、そのあたりが妥当であろうな」
ウィシャートを潰しても、まだまだ安心は出来ないんだよなぁ。
……ったく。根を張ったしつこいカビみたいなヤツだ。
「大丈夫ですよ、ルシアさん」
ぐっと胸を張り、エステラが自信たっぷりに言う。
「ボクたちは強固な絆で結ばれています。この先何があろうが、ボクたちが手を取り合えば、今回のようにどんな敵でも退けられますよ、きっと」
そんな根拠のない自信を、恥ずかしげもなく堂々と見せつけるエステラに――
「ふふっ、そうであるな」
「うんうん、そうそう☆」
ルシアとマーシャは笑って同意を示す。
その瞳には、何がなんでも守ってやろうって意思が込められているように見えた。
この、どこまでもお人好しな微笑みの領主様を、な。
あとがき
あぁ、緊張する!
あ、どうも、4月7日 異世界詐欺師更新再開直前にあとがきを書いている宮地です。
うわぁぁあ、落ち着かない!
無事に更新されたでしょうか?
皆様がこれを目にしているということは、ちゃんと更新され続けている、ということなのでしょうが。
あとがきも、前倒し前倒しで書いておかないと――いつ仕事に忙殺されるか分かりませんからね……怖い怖い。
さて、お楽しみいただけているでしょうか『報労記』
なかなかまったりとした内容になっておりますが、こんな感じです。
今回は4話ということで、夜釣りも終わって次なる計画に…………あれ?
夜釣りが、終わってない?
というか、まだ始まってすらいない!?
Σ(・ω・ノ)ノ!
……プロットではすでに終わってるはずなのに?
(・_・;どきどき
当初の予定では、
1話で陽だまり亭の空気を思い出していただいて、
2話で夜釣りに向かって、
3話で新しいことを始めようって話になって、
4話でその計画に向かって歩き出す――はずだったんですが……なぜ?
っていうか、寿司職人のお話、夜釣りの後の予定でしたのに!?
マーシャさん、フライングですよ!?
あと、三十四区の領主さん!?
なんで出てきてるんですか!?
……え、作者がおっぱいたすきに会いたくなったから?
なら仕方ない( ̄▽ ̄)
というわけで、
作者の予定など知ったことかというレベルでキャラクターが勝手に動き回ってすでに既定路線から外れまくりですが、なんかその方がキャラが生き生きして見えるのでこのまま突き進みたいと思います!
『報労記』
物凄くまったりした内容になる予定です!
今回、微かに不穏な空気が流れましたけれども、ここから不穏な展開に――なんてことはなく、この後は夜釣りに行ってみんなで遊んだりキャンプしたりする予定です
……予定通りに進めば、ですけどね!
飽きずにお付き合いいただけると幸いです☆
さて、
更新をお休みしていた期間に、
「あ、これあとがきで書きたいな~」みたいなことがいっぱいありまして
「更新再開したらいっぱい書くぞ~」と意気込んでおったわけですが、
その数ある書きたいことの中から、
今回は、
セミの抜け殻の話をしてもいいでしょうか?
セミの抜け殻!?Σ(・ω・ノ)ノ!
数あるエピソードの中から、あえてのセミの抜け殻!?Σ(・ω・ノ)ノ!
いえ、これはほんの数日前の話なんですが、
夢を見たんですよ
セミの抜け殻の!?Σ(・ω・ノ)ノ!
えぇ、セミの抜け殻の夢を。
と言いますか、実は、更新再開が迫っていた影響なのか、
4月に入ってから立て続けに変わった、妙に印象に残る夢を見たんですね。
まず、4月7日から再開しますよ~と告知ツイートをすると決めていた4月1日
セミの抜け殻の夢を見まして、
次いで4月4日、ロレッタが「7日から更新するよ~」って宣伝をするツイートをした日
友人の母親にやんわり追い出される夢を
そして、更新再開の4月7日、
捕まえたバッタの口から小さなエビが飛び出してくる夢を!
なんかことごとく変な夢!?
ただですね、妙に気になったので夢占いのサイトで調べたら、
これらはみんな吉夢だそうなんです。
え、これが!?
っていうのも実はいい夢なんですよ~と言われ
やっぱ異世界詐欺師が好きなんだなぁ~と再認識しました、
結局のところ、浮かれていたんでしょうねぇ。
改めて、再開、ありがとう!
\(≧▽≦)/
で、夢なんですけども、変な夢だったんです。
4月1日
中学の頃の友人と修学旅行に向かう途中なんですが
電車に乗り遅れまして、
で、「乗り遅れた(笑)」って大爆笑して
「じゃ、二人で別の旅館でも行くか」って言って、
そしたら友人が「あ、じゃあ俺がお勧め旅館紹介するわ」って
そして連れていかれたのがめっちゃ趣のある大きな旅館
『セミの抜け殻旅館』
いや、そういう名前だったんですよ!
変わった名前だな~って思って中に入ったら、どっしりした印象で
すごく落ち着く空間で「いい宿だなぁ~」って感じでテンション上がるんです。
で、「お部屋五階になります」って案内されたんですが
五階へ向かう階段の踏み板にびっしりとセミの抜け殻が!!
旅館の名前、回収キタなコレ!?
ま~ぁ、見事なセミの抜け殻が。
広い階段なのにセミの抜け殻がびっしりなんで、通れるところが狭いんです
で、「すごいなぁ、これ」ってセミの抜け殻を見ながら五階まで上るという夢で、
部屋からの眺めがまた最高で海とか見えちゃって、随分と気分のいい夢だったんですが――
電車に乗り遅れる夢は大きな転機が訪れている暗示
しかも、めっちゃ笑っていたのでいい転機だろうということでした。
セミの抜け殻の夢は転機と成長を表すそうです。
転機がびっしりと!?Σ(・ω・ノ)ノ!
めっちゃ成長しそう
階段を上る夢は目的に向かって前進している暗示。
と、変な夢でしたけど、結構いい意味の夢だったようです。
4月4日
上の夢でも出てきた友人に「泊まりに来いよ」と誘われ
友人宅へお泊まりに行くんですが、
そこで見たこともない女性が出てきまして
友人曰く「母親だ」と。(友人の母親とはまるで別人なんですが、夢の中では「へぇ、そうなんだ」と納得してました)
で、その母親に、やんわりと、や~んわりと「帰れ」って言われる夢を(笑)
見事に追い返されまして
誘われて行ったのに(笑)
話、通しとけよ(笑)
って、笑いながら「なんでやね~ん」って帰るっていう夢を見たんです。
で、目が覚めた時に、
「いや、あの女の人誰!?」って、そんなことが妙に印象に残ってまして。
調べてみたら、
知らない人に追い返される夢は、トラブルから解放される暗示らしいです
しかも私、夢の中でめっちゃ笑ってたのでいい方向へ変化するだろうと。
へぇ~( ̄▽ ̄)
そして4月7日
これが一番分からない夢なんですが、
見たことがない実家にいまして
……えぇ、まぁ、すごい矛盾してるんですが、夢の中でそう認識してたんですよ
そしたら、家の中にバッタがいまして
「逃がしてやろう」と摘まみ上げると、バッタの口から小さいエビが「ぽーん!」って飛び出してきて
「何食ったの!?」って大笑いする夢を……なんでこんな夢を見たんでしょう?
バッタの口からエビが飛び出す夢とか、初めて見ましたよ!
調べてみたら、バッタの夢は成功の暗示だそうですよ!
バッタが!?
知らんかった!
努力が実を結ぶとか、これまでの人生が結果に結びつくとか
とにかく報われる前兆なのだとか
そして口から飛び出してきた小さいエビ!
小さいエビの夢は小さな幸運が訪れる暗示だそうです。
……え、私の人生のすべてをかけて小さな幸運?
いやいや、小さくとも感謝しましょうとも。
さぁ、幸運カモン!
春ですからね、風が強いですからね!
短めのスカートがふわり、とかね!(≧▽≦)b
小さな幸運、素晴らしいじゃないですか!
――と、ここ数日で立て続けに見た奇妙な夢がことごとく吉兆を告げるいい夢でしたのでご報告というか、
自慢したかったんです!(≧▽≦)てへっ!
まぁ、占いはしょせん占い。
いいところをいい感じでいいように解釈して、ちょっとでもハッピーな気持ちになれるならそれでいいですよね。
信じ過ぎず、頼り過ぎず、依存せず、気にし過ぎないのがいいでしょう。
それでは、ちょっと双眼鏡とか一眼レフカメラを持ってお散歩行ってきます!
春ですからね!
風強いですからね!
小さな幸運、カモン! へいへい! カマーン!
新年度早々、おまわりさんのご厄介にならない程度にはっちゃけてきます☆
( ゜∀゜)o彡゜
次回もよろしくお願いいたします。
宮地拓海




