報労記2話 賑やかな来訪者たち
「会いに来たよ、カタクチイワシ君」
小太りを大きく通り過ごしたまんまる領主が手を振っている。
にこにこと、目が頬肉に埋もれそうな勢いで細められている。
「肉まんを思い出す顔だな」
「他区の領主様に失礼ですよ、お兄ちゃん!?」
んばっと、厨房から飛び出して、ロレッタが俺にツッコミを入れてくる。
今日、お前すげぇ機動力だな。あっちこっちと忙しいヤツだ。
「あぁ、いいよいいよ、可愛いお嬢さん。彼を叱らないであげておくれ。こういう楽しい空気、私は割と好きな方だから」
「ほっ……、デミリーさんタイプの領主様っぽくて安心したです」
「えっ!? フレキシリス君、私って、そんなにキてる!?」
「だ、大丈夫でありますよ、ダック様! ダック様はふっさふさです!」
「いや、そこじゃないです、似てるとこ! で、そっちのおっぱいさんも他区の領主様にこの上なく失礼ですよ!?」
デミリーって、他所の区でもそーゆー扱いなんだなぁ。
「けど、おっぱいたすきとデミリーだったら、おっぱいの肩を持つけどな!」
「親しいデミリーさんの肩を持ってあげてです!」
「いやだ! おっぱいを持つ!」
「意味が変わって、ただの願望になってるですよ、お兄ちゃん!?」
持ちたい、載せたい、揺らした~い!
「外します!」
「まぁまぁ、とっても魅力的だよ、フレキシリス君」
「嬉しくありませんっ!」
にこにこ顔のダックに慰められても、おっぱいたすきことトトは涙目のままだった。
こんなにも芸術的だというのに。
「なんの戯れだ、ダック。領民を辱める趣味があるのか、この下衆ブタが」
「ないない。ただね、我が区の領主想いな貴族の子息から素晴らしい情報をもらってね」
「クルス君です! 自分を売ったのはマクロスピルス家のクルス君なのです!」
あぁ、一緒に来た三人組の一番ひょうきんなヤツな。
トトの幼馴染だっけ?
そっか、情報売ったのか。貴族よのぉ。
「カタクチイワシ君に喜んでもらえるギリギリ上限はこの辺だって」
「上限? カタクチイワシなら、美女を与えれば際限なく大はしゃぎするであろうが」
「彼はそんな節操なしじゃないよ」
にやりと、ダックが口元を緩める。
「度の過ぎるハニートラップは、却って信用を失う。それはルーちゃんもよく知っているだろう?」
「ふん。数多の女を泣かせている現場をこの目で見ておるのでな、肯定はしがたいが……」
ルシアの目が、俺を見る。
「畜生までは堕ちておらぬと信じたいところだな」
「ヤシロ君は、はしゃぎ過ぎて怒られるくらいが一番好きなんだよね~☆」
なんか、女子が分かったような顔でうんうん頷いている。
いいえ、おっぱいなら行きつくところまで行っても喜びますが!?
……まぁ、美女をあてがって俺を意のままに操ろうなんてド三流な発想の悪党には、手痛いしっぺ返しを喰らわせてやる所存だが……
「おっぱいなら、なんだってウェルカム!」
「あはは、本当にユニークな人だね、カタクチイワシ君」
ぱちぱちと手を叩いて笑い、トトに「もう外してもいいよ」と許可を出す。
おい、なに勝手に許可出してんだよ!?
ずっとつけててもらえよ! たすきは尊いものだぞ!
……とはいえ、涙目でおっぱい揺らされても、素直にはしゃげないんだよなぁ。
「まぁ、涙目でおっぱい揺らされても、素直にはしゃげないしな」
「いや、めっちゃはしゃいでたですよ!?」
「……むしろ、涙目だからこその付加価値を見出していた模様」
「ヤーくん、おイタが過ぎるのはダメですよ?」
怒られた。
つか、諭された。
へーへー、分かったよ。
外せばいいだろ、たすきをよ!
「こんなことのために連れ出されて、貴族も大変だな、領主が横暴だと」
「ダック様を悪く言わないでいただきたい!」
「おっぱいたすきを強要するような領主でも!?」
「べ、別に……っ、そこまで、……どうしてもイヤというわけでも……」
「では継続でお願いします!」
「断る!」
なんて頑な!?
ダックの言うことは聞くのに俺はダメなのか!?
権力に尻尾を振るタイプか!?
なんて女だ!?
「彼女はね、四十二区の服屋さんから招待状を受け取っていたんだよ。だから、馬車に同乗してもらったんだ」
「お、恐れ多かったです……」
ぷるぷると、トトが震える。
ぷるぷると、揺れる。
「正直、友達のヤシロの視線は」
「抉るぞ、カタクチイワシ」
怖い領主が睨んでくるので泣く泣く視線を外す。
「これからお店へ行ってまいります」
「お、スポブラを受け取りに行くのか。着けたら見せてくれな」
「殿方にはお見せできませぬ!」
「大丈夫! 気にするな!」
「あなたが気にしてください!」
くぅ!
勢いで誤魔化しちゃえ作戦は失敗か!
「では、ダック様。御前失礼させていただきます」
「あぁ、うん。じゃあまた帰りにね」
「失礼いたします!」
かっちりとした礼をしてトトが店を出て行く。
「硬いヤツだなぁ」
「騎士の一族だからねぇ」
「誰より柔らかそうなのに」
「彼女の母君もすごいからねぇ」
「くだらぬ情報を与えるな、破裂させるぞダック・ボック」
ダックの頬を摘まんで両側に引っ張るルシア。
ダックが涙目で「やめて、やめて」ともがいている。
仲良しだな、お前ら。
「寿司を食いに来たんだよな?」
「うん。ルーちゃんがご馳走してくれるっていうからね」
「前と同じものでいいのか?」
「うん。アレはとても美味しかった。いつか妻にも食べさせてあげたいよ」
そっか。
同じでいいのか。
んじゃ、ちゃちゃっと準備してちゃちゃっと終わらせるか。
「握るのは、マーシャんとこの寿司職人が来てからになる」
「大丈夫。それまでは適当に仕事をして待ってるから」
「領主間の会談を『適当』などと抜かすな、ダック」
いや、領主間の会談の場所をわがままで変更したお前が言うなよ、ルシア。
まぁ、職人が来る前に準備を終わらせておくか。
フロアは、マグダとカンパニュラの頑張りでスタンバイOK。
大工たちも端っこに避けられている。
「ロレッタ、ジネットは?」
「人数分の外套を用意するって二階へ行ったです」
「ノーマは?」
「さっきまで店長さんとシチューを作ってたですけど、あたしが『ノーマさんといえば、お味噌汁も美味しいですよね~』って言ったせいか、現在鰹節を削り始めてるです」
「何個寸胴鍋持ってく気だ、河原へ」
しかし、今から鰹節を削ってるということは……ふむ。
「ロレッタ、こっちの面倒な領主連中を頼む」
「いや、荷が重いですよ!? 特にあの丸い人とはほとんど面識ないですし!」
「なかなか失礼、お姉ちゃんのロレッタも、他区の領主であるダック・ボック様に対して」
「あぁ、構わぬ。ダックと義姉様では、義姉様の方が地位は上だ」
「そんなことないですし、義姉様やめてです!」
「つか、いつからお前はギルベルタに『お姉ちゃんのロレッタ』なんて呼ばせてんだ?」
「違うです! 気付いたらそう呼ばれるようになってたです! あたしのリクエストじゃないですよ! ね、ギルベっちゃん!?」
「長女、お姉ちゃんのロレッタは、だから、お姉ちゃんのロレッタ、お姉ちゃんのロレッタは」
「どこからどこまでが一つの文章か分かりにくいです!? なんかめっちゃ呼ばれたですけども、今!」
「……ヤシロ、ここはいいから、何かをするなら早く」
「おう、悪いな、頼れるマグダ」
「……むふー。副店長なら、当然」
ロレッタと比較して、場をまとめる能力が高いと証明された――と胸を張るマグダ。
ま、どっちもどっち、五十歩百歩、AカップBカップだけどな。
三つとも似たような意味だ。
騒がしいフロアをマグダとカンパニュラに任せて、俺はノーマのもとへと向かう。
「ノーマ。その味噌汁、ちょっと手を加えさせてもらっていいか?」
「けどねぇ、ロレッタからリクエストがあったんさよ」
いや、してねぇよ、リクエスト。
「美味かった」と言っただけだ。
「わがままな領主が押しかけてきてな。ちょっと接待することになった」
「ルシアさんかぃね?」
「いや、その幼馴染のダック・ボックっていうブーちゃんだ」
「あぁ、あの……」
ノーマはピンと来たようだ。
どっかで会ったっけ? あぁ、港のイベントの時に見かけたのか。
「けど、ヤシロが男の領主に気を利かせるなんて、珍しいじゃないかさ」
「いいモノをもらったんでな」
「あぁ、おっぱいたすきかぃね。まったく、しょうもないさねぇ、男ってやつは」
ノーマが鋭い!
凄まじい推理力と観察眼。名探偵にでもなれるんじゃないか?
『この謎、アタシが挟んでみせるさね!』
うん、売れそう!
「しょーもないこと考えてないで、この味噌汁をどうしたいんさね?」
「気安く心の中読まないでくれる?」
「なら、分かりやすく顔に出すんじゃないさよ」
ポーカーフェイスなんだけどなぁ。
「寿司を握ることになったから、寿司に合う味噌汁にしたいんだ」
「魚介で出汁を取るんかいね? カニの味噌汁、美味かったさねぇ」
カニ尽くしフェア以降、カニが大好物になったノーマ。
カニの味噌汁もいいが……
「今回は、赤だしを作ってみようと思う」
寿司と言えば赤だし!
あの濃い味付けが寿司にぴったりで美味いんだ。
というわけで、ノーマに譲ってもらって、俺はせっせと赤だしを作った。
「お口の中でわっしょいわっしょいします!」
赤だしを食ったジネットが会心の笑みを浮かべている。
人数分の外套を用意し、厨房へ戻ってきた時ちょうど赤だしが完成したのでジネットに試食を頼んだのだ。
「これは、豆麹のお味噌と米麹のお味噌を混ぜたんですね」
「よく分かったな」
「リベカさんからお裾分けをいただいた時、どんな風に使おうかと味見をしましたから」
リベカが塩麴ラーメンにハマるより少し前、複数の味噌をサンプルとして寄越してくれた。
実際使ってみてほしいと。
あいつ、麹を作るのが好きでも、その先の用途までは考えてないことが多いんだよな。
「新しい味噌が出来たのじゃ、試してみていい感じならレシピを広めてほしいのじゃ!」みたいなノリなんだよなぁ。
まぁ、ジネットは張り切って試行錯誤しちゃうわけだけれど。
というわけで、赤味噌も白味噌もなんちゃって八丁味噌も、味噌関連はかなり充実している。
醤油も、いろいろ挑戦しているようなので今後に期待だ。
「少し変わった風味がしますね。これは……」
「甘エビの頭で出汁を取ったんだ」
「あぁ、エビのお味噌ですか。面白い香りになるんですね」
「カニもよかったけど、アタシはエビの香りも好きさねぇ」
ジネットの隣で赤だしの味を見ているノーマもご満悦だ。
味噌をちょっと分けてくれって言ってたから、家でも作る気なのだろう。
「あ、そうだ、ジネット。今三十四区の領主が来ててな、寿司を握ることになった。やるか?」
「はい。お寿司を握るのはなんだか久しぶりですね。……ふふ、そんな何ヶ月も経っていないはずですのに、不思議です」
濃かったからなぁ、この一~二ヶ月。
「でも、お魚はどうされるんですか? お寿司に出来るほど新鮮なお魚は用意していませんが……」
「あ~、そうだなぁ」
客足が遠のくという予想だったので、食材は最低限しかない。
……まぁ、その『最低限』には『ベルティーナの食事』が含まれているので、とても最低限には見えない量ではあるんだけれども。
鮮魚は置いていない。
「マーシャ、寿司に使える魚って用意できるか?」
「大丈夫~☆ 職人たちに持ってくるよう、事前に言っておいたから~☆」
「……いつ言ったんだよ」
「ここに来る前~☆」
「カタクチイワシが港へ来ようが、職人が呼ばれようが、寿司が握れるだけの食材を用意するようにと、マーたんは申し付けておったぞ」
俺が断るって選択肢は最初からなかったのかよ。
おかしいなぁ。たしか「教えてあげれてくれない?」ってお願いだったはずなんだけど。
決定事項だったんだな、あれ。
「美味しいカツオがあるから、期待しててね~☆」
カツオかぁ。
それは楽しみだ。
「サーモンはあるか?」
「もっちろ~ん☆」
「あ、あの、ヤーくん」
厨房から顔だけを出してフロアを覗いていた俺の前へ、カンパニュラが慌てた様子で駆けてくる。
「鮭は、今日の賄いでデリア姉様が焼いてくださることになっているので、その……おそらくデリア姉様がたくさん持ってこられるかと思うのですが……?」
マーシャにサーモンを用意してもらったら、デリアが持ってくる鮭が無駄になってしまうのではないか――と、カンパニュラは危惧しているわけだ。
「大丈夫だ。サーモンと鮭は別物だから」
「え? えっと……『サケとシャケは別物』ですか?」
どうやら強制翻訳魔法が仕事をしていないらしい。
「カンパニュラちゃんはまだ知らないから、翻訳がちゃんとされてないのかもね~☆」
まぁ、確かに。
サケ、シャケ、サーモンと、何個も呼び名を付ける言語圏はそうそうないかもしれないな。
なので、翻訳するとみんな同じ言葉になってしまうのか。
カンパニュラがきちんと違いを把握して、それを別物だと認識すれば、翻訳結果も異なってくるのかもしれない。
「すごくザックリ言うと、焼いて食うのが鮭で、生で食えるのがサーモンだ」
魚屋でそう教わったし、寿司屋の大将も同じことを言っていた。
海へ降りて大きく成長する鮭は、オキアミをエサとしている。
だが、そのオキアミの中にはアニサキスが潜んでいることがあり、そんなオキアミをバクバク食って成長した鮭の体内にも、アニサキスが寄生してしまう。
アニサキスに寄生された鮭を生で食うと、人体に恐ろしい影響が出てしまう。
なので、鮭はしっかりと焼いて、アニサキスを退治してから食わなければいけない。
「寄生虫なんかいるですか!?」
「俺の故郷ではな。こっちの鮭はどうか知らん」
「似たような感じだよ~☆」
やっぱいるのか、アニサキス。アニサキスじゃないかもしれんけど。
まぁ、生食は控えるべきだな。
「で、俺がマーシャに頼んだサーモンは、人工のエサで養殖した、生食が出来るヤツなんだ」
「サーモンは人魚の間でも人気が高いからね~☆ 養殖は結構昔から盛んに行われていたんだよ~☆」
その情報を聞いた時は、俺もビビった。
まさか異世界で魚の養殖をしているとはな。
あと、アワビと牡蠣も養殖しているらしい。
「こっちに来た当初、赤い身の川魚は忌避されてたから、人魚も食わないのかと思ってたぜ」
「人魚は昔から食べてたよ~。サーモンだけじゃなくて、陸の人が忌避して食べない魚介類って、いっぱいいるからね~。人魚だけで楽しんでた感じ☆」
貝類やウニ、魚卵やイカタコ系はハードル高かったかもな。
分かりやすい海魚以外、海に馴染みのない陸の人間は口にしなかったのだろう。
デリアが鮭好きなのはマーシャの影響か? ……いや、親父さんの影響だって言ってたっけな。
川で取れる魚は、片っ端から食べてたのかもしれない。川、好きだもんなぁ、デリア。
「ちなみに、今回寿司に使うサーモンはトラウトっつって、正確には鮭ではなく鱒なんだ」
「ます、ですか? ニジマスでしたら、父様がよく捕まえてきてくださいましたが」
「あぁ、そうそう。その鱒だ。あいつが海まで降りると鮭になる」
「えっ!? マスとシャケは同じ魚なのですか!? ですが、大きさが全然違っていたと記憶していますが……」
「海にはね~、魚を大きくする栄養がいぃ~~~いいっぱいあるんだよ。だから、海まで出てきたマスちゃんは大きく大きく育ってシャケ君に成長するのです☆ えへん!」
海の偉大さを語り、マーシャが胸を張る。
もっと張って! もっと!
「その鱒をね、海まで連れて行って、安全なエサだけで大切に育てた、鮭と鱒のいいとこ取りなハイブリットお魚が、ウチのサーモンっていうわけなの☆ 分かったかなぁ?」
「はい。よく理解できました。すごい食材なのですね」
「まぁ~ねぇ~! えへへん☆」
いいよ!
張って!
もっと張って!
「お兄ちゃん、顔がうるさいです!」
「……声にせずとも言葉が聞こえてくる」
「まったく、見下げ果てた男だな、カタクチイワシ!」
「でも楽しそう、友達のヤシロは」
マーシャに海の話を振れば胸を張る。
この世界で幸せに生きていくための大切な情報だから、メモを取っておくように!
「では、デリア姉様が鮭をお持ちになっても、無駄にならずに済みそうですね」
カンパニュラがほっと息をついた時、そのデリア姉様が、それはそれは見事な鮭を携えて陽だまり亭へと戻ってきた。
「たっだいまー! 見てくれ! オメロがこんな大物を捕まえたんだぞ!」
「おぉ、やるな、オメロ!?」
「えへへ~、だろぉ? 案外やるんだ、あいつ~」
自分のところの副ギルド長の活躍が嬉しいようで、デリアはにこにこ顔で大きな鮭を自慢してくる。
「アンチャンがもっと大きな鮭を獲るってムキになってた」
「ガキか、タイタ……」
大人なカンパニュラの父親とは思えないガキ臭さだ。
「そんじゃあ、この鮭さばいてくるな!」
みんなの賄いを作るのだと、大いに張り切るデリア。
しかしその時、陽だまり亭へ寿司職人たちが大量の魚介類を水槽ごと持って押しかけてきた。
「遅くなりました!」
「本日は、ご指南よろしくお願いいたします!」
「いたします!」
「いたしま~す」
ぺこりと頭を下げる美女が四名。
……と、獣人族の男女が四名。
どーゆーわけか、寿司職人らしき美女四名はデッカイ壷の中に入って獣人族に背負われている。
「この娘たちが海漁ギルドの寿司職人だよ。み~んな人魚なの~☆」
なるほど。
あの四人が入っている壷には海水が入っているというわけか。
「で、それを持たされている獣人族たちは?」
「お寿司屋さんのアルバイト君たちです!」
「まさか、寿司屋のバイトになって壷持ちさせられるとは思わなかっただろうな」
俺の指摘に、獣人族たちが苦笑を漏らす。
「ですが、これも修行の一環です」
「私たちも、いつか立派な寿司職人になるべく、こうして人魚の寿司職人さんたちに弟子入りしたんです!」
「ですので、オオバヤシロさん!」
「どうか!」
「「「「ウチの師匠を鍛えてあげてください!」」」」
「師匠の実力が伴ってから弟子入りすればよかったのに……」
フライングが過ぎるんじゃねぇーの?
「運び役なら、海漁ギルドにいっぱいいるだろ? 足の生えた男衆が」
「え、イヤです。気持ち悪い」
「ぬめぬめはちょっと……」
「衛生面も不安ですし、店の評判が落ちかねませんので」
「『別に一人くらい減ってもいいかな~』って思える人たちはちょっと困るかも~」
物凄い拒否反応?!
おたくら、同じ種族だよね!?
俺の目にはどー見ても半魚人だけど、アレらも一応人魚なんだよね!?
で、最後のヤツ! 黒い部分漏れ過ぎだよ!?
「私も、ど~しようもなくなるまでは、キャルビン避けてるもん☆」
うん。
ギルド長がこうなんだから、若い連中があぁなっても仕方ないか。
「な、なぁ、ヤシロ」
人魚たちの登場に、デリアが困惑した表情を見せる。
「今から何するんだ? 魚、いっぱいあるけど……」
と、自身の手の中にある大きな鮭を気にする。
「今から寿司を教えるんだけど、俺らの賄いはデリアの鮭にするから、さばいてきてくれていいぞ」
「お寿司……」
言って、デリアは魚介類が元気に泳ぐ大きな水槽を見つめる。
「久しぶりに食べたいなぁ!」
お前が寿司になびくんかい!?
いやいや!
そこは、他のヤツが寿司になびいて、「あたいの鮭は!?」ってなるパターンじゃねぇーの?
真っ先になびいたな、おい。
「けど、カンパニュラと約束したしなぁ。今日の賄い……」
「でしたら、こうしませんか?」
俺の戻りが遅かったからか、フロアでわいわい騒いでいたからか、ジネットがフロアへとやって来て、デリアの持つ鮭を指さす。
「そちらの鮭は焼いてから身をほぐし、おにぎりにして夜釣りの時の夜食にしましょう」
「わっ! それ絶対美味しいヤツだな! さすが店長だ!」
「おにぎりでしたら、私もお手伝いできますよ、デリア姉様」
「じゃあ、一緒に作ろうな、カンパニュラ」
「はい」
というわけで、デリアの鮭は夜食用となり、昼の賄いはこの後大量に生み出されるであろう寿司になった。
なんとも贅沢な賄いだな。
「うっま! 鮭、うまっ!」
いや~、切り身にされた鮭を見てたらど~にも焼き鮭が食いたくなってな。
一切れもらってしまった。
皮目が焦げるくらいにしっかりと焼いて、リベカ特製醤油をさっと垂らして、白米と一緒に掻き込む!
「美味いっ!」
「「「すみません、焼き鮭定食一つ!」」」
「皆様、お寿司をいただかれるのではないのですか?」
「「「だって、あんなに美味しそうなんだよ、カンパニュラちゃん!」」」
端っこに避けられても寿司が出てくるまでしつこく粘っていた大工たちがぶーぶー文句を垂れる。
木こりと狩人も混ざってるが、大工の割合が多いので『大工たち』でまとめる。めんどいから。
カンパニュラの人気は、大工に留まらず広範囲にわたっているのだ。お祝いに駆けつけたオッサンたちは多い。――と、申し添えておこう。
「あたいも一切れ食べよ~っと」
「わ、私も……っ、あの、半分ほど」
「……では、カンパニュラはマグダと半分こ」
「じゃあ、あたしは店長さんと半分こするです!」
「おにぎりにするまで待てないんかぃね……まったく」
ノーマが、焼いた鮭を持ってきてくれる。
おにぎり用に焼き鮭と鮭フレークを作ってもらう。
ノーマなら、任せて安心だ。
ジネットはというと――
「準備できました。なに握りやしょう?」
髪をアップにまとめ、ねじり鉢巻をして気合い十分。
俺が教えた挨拶を口にして嬉しそうに笑っている。
「「「スマイル、テイクアウトで!」」」
ウチ、その大手ファーストフード店みたいなサービスやってねぇーんだわ。
「ご指導、お願いします!」
「「「お願いします!」」☆」
人魚娘たちが揃って頭を下げる。
一人、マーシャっぽいヤツが混ざってるな。
というか、人魚ってみんなマーシャみたいな感じなのかと思ったら、割とまともな感じの娘たちで逆に驚いた。
四人中三人は礼儀正しい、おとなしめな印象だ。
「きゃは☆」
一人を除いて。
「え~っと、じゃあ、まずは名前から教えてもらおうかな」
「マーシャです☆」
「お前は知ってるよ」
「んふふ~、知名度ありあり~☆」
いや、知名度っていうか……まぁ、知名度は高いけども。
「じゃ~、右から順番にご挨拶して~☆」
「はい。海漁ギルド四十二区支部寿司職人部門主任の――」
「待って! ……いつの間にか支部が出来てるんだけど?」
「うん☆ エステラにタラバガニ三杯で許可もらったの~☆」
賄賂に弱いな~、ここの領主。
つーか、カニならナタリアが動いた可能性が高いな。
「まぁ、支部って言っても、寿司職人の所属を明確にするためのものだから☆」
確かに、職人だけを派遣して本体は遠い海の上、なんてことになればこいつらは不安になるかもしれない。
支部があればそれだけで安心できるだろう。
というか、マーシャが気軽に利用できる休憩所が欲しかったってのが本音なんじゃねぇの?
「で、このホタテでもない人魚が支部の責任者なのか?」
「はぅっ!? あ、あの、私は支部長ではなく、ただの主任でして……」
「ホタテじゃないからか?」
「ほ、ホタテは関係ありませんっ」
ホタテでもないビキニの胸元をきゅっと腕で隠し、主任だという人魚が壷に肩まで浸かる。
それに合わせるように、他三人のホタテでもない人魚も壷に身を隠す。
「み、みんながみんな、ギルド長みたいにプロポーションに自信を持っているわけじゃないです……」
「うん……さすがに、私もホタテはちょっと……」
「あれは恥ずかしいというか……無理、というか……」
「ギルド長、はれんち~☆」
おいこら、四番目。
「ん? なんだって?★」
「ギルド長と同じ衣装を身に纏うなど恐れ多くて!」
「そうそう! 私たちなど布で充分なんです!」
「それに、この水着は四十二区の発明でもありますので、身に着けることで友好の証になればと、そのような思いも込めて!」
「ギルド長、せくし~☆」
マーシャの黒い笑顔を見て、人魚たちが一斉にフォローに走る。
……いや、フォロー出来てねぇよ、四番目。
「そっかそっかぁ~、友好の証なのか~☆」
「「「「そうですそうです、そうなんです!」」」」
「じゃあ、ヤシロ君が考えたマイクロビキニっていうヤツも身に着けてみれば~?★」
「「「「アレは水着ではなく紐です!」」」」
うん。なんとなくこいつらの人間性、見えたかも。
ま、四十二区でもうまくやっていける人材だろう。
「まったく。このホタテは由緒ある人魚の正装なんだからね」
マーシャが不服顔で腕を組む。
「最近の若い娘たちは、みんな恥ずかしがるんだよねぇ、この正装」
「じゃ、海漁ギルドの制服だって強制しちゃえばいいのに」
「余計なことを言わないでください、オオバさん!」
「みんながみんな、あんなぼぃんじゃないんです!」
「ホタテからはみ出しまくるなんて、ギルド長くらいです!」
「私たちみ~んな、収まっちゃう感じ~☆」
「「「……それを言うな」」」
壷人魚たちががっくりと項垂れる。
うん。確かに、みんなB~Cだもんね。
マーシャみたいに横から下から全方位ハミ乳することはないだろうな。
でも!
それでも!
「ホタテが見たい!」
「「「「おたくの店長さんに言ってください!」」」☆」
「というわけだ、ジネット!」
「懺悔してください」
ちぃっ!
あの勢いと流れで「では、ホタテってきます!」とかなるかなって思ったのになぁ!
「と、とりあえず、服装のことは置いておいて……まずは名乗らせてください」
こほん、と、主任人魚娘が咳払いをして姿勢を正す。
それに倣って、他の人魚娘も姿勢を正す。
きゃいきゃいした雰囲気はあるものの、きちんと教育されているようで、ピシッと揃っている。
一度マーシャに視線を向けて確認を取ってから、主任人魚から順番に名乗りを上げる。
「私は、主任のマリンと申します」
「マリーナです」
「マナリアです」
「マ――」
「ちょっと待って!」
ポンポン名乗りを上げていく人魚娘を黙らせる。
「名前が似過ぎてて分かりにくい!」
覚えられる気が一切しない!
「ごめんね~☆ 人魚の娘って、『マ』から始まる名前が多いの。ちょっと前の世代の人魚たちは、子供の名前を付ける時に親の名前から一文字取る傾向があったんだけど、母親もたいてい『マ』から始まる名前だから☆」
えへへ~っと、照れ笑いを浮かべるマーシャ。
かくいうマーシャも『マ』から始まる名前だ。
「しかし、こうも『マ』から始まる名前を一度にたくさん聞かされると、覚えられる気がしねぇな。ちなみに四番目。お前の名前は?」
「マツコです!」
「なんかお前だけは覚えられそう!?」
『マ』から始まってるけど、毛色が違う!
「私もいつか、ギルド長みたいな大きな、いやビッグな、いやデラックスな人魚になりたいと思います!」
「デラックスを目指すのはやめようか!?」
なんでかは分からないが、マツコをデラックスにするのだけはイケない気がした。
なんでかは分からないけれども!
「では、マリンさん、マリーナさん、マナリアさん、マツコさん、お寿司の練習を始めましょう」
「覚えたの!? すごいねジネット!?」
俺なんか、もう『主任』『マツコ』『他二人』でいいやって思ってるんだけど。
「それじゃあ、ジネットはルシアとあの丸い領主の寿司を頼む」
「ダック・ボックだよ~。覚えてね~カタクチイワシ君~」
にこにことダックがそんな要求を寄越してくる。
残念だったな。
本人がいなくなった今、おっぱいたすきの印象は薄れ、そこへ四人のビキニ美女が登場したことですっかり記憶の彼方だ!
「俺の故郷には、こんなことわざがある……『遠くのおっぱいより、近くのちっぱい』!」
「絶対ないですよね、お兄ちゃん!?」
「……ヤシロの故郷なら、あり得なくもない」
「残念な街に生まれおって、カタクチイワシめ」
言われ放題である。
「……どうせちっぱいですもん」
「そりゃ確かに、ギルド長と比べると見劣りしますけれど……」
「……これでもそこそこは……」
「でも微笑みの領主様よりはあるもん☆」
「今の発言、エステラに言いつけちゃお☆」
「はぅっ!? やめてください、ギルド長!」
マツコがマーシャに泣きつく。
自分ではいじるくせに、部下にはいじらせないのか、マーシャは。
エステラのこと、それなりには大切に思っているようだ。
「もう、ヤシロさん。ダメですよ」
ジネットに小さな声で叱られる。
別に人魚たちの胸を腐したわけではないのだが……むしろ、近くにあって嬉しいなと…………分かったよ。へこんだ気分を盛り上げてやればいいんだろ。ったく、世話の焼ける。
「まぁ、決して小さくはないから気にするな、CCBC」
「カップ数で呼ばないでください!」
「ふぐぅっ!」
「あぁっ、Bカップさんが壷に沈んじゃったです!?」
「かけている、追い打ちを、お姉ちゃんのロレッタは」
「……なぜ一人だけ潜ったのかが明白に」
「あはは。本当に賑やかだよねぇ四十二区は。飽きないなぁ~」
「こんな場面で笑うな、ダック。不謹慎だぞ」
「もう、ヤシロさん」
「ヤーくん。め、ですよ」
なんだか騒がしくて、そしてなんでかまた叱られた。
ジネットとカンパニュラに。
俺なりに、精一杯励ましたんだけどなぁ。
「相変わらず美味しいね! ね、ルーちゃん!」
「黙って食えんのか、貴様は。貴族らしからぬ品性のなさだな、ダック」
「茶碗蒸しの、お届けやー」
「むっはぁああ! ハム摩呂たん、かわゆす! 天使! マジ天使!」
「黙って食べてです、ルシアさん!?」
「……貴族にあるまじき品性のなさ」
厨房にまで聞こえてくる賑やかな声に、思わず苦笑が漏れる。
「なにやってんだかな、あいつらは」
「あっちはいつも通りだとして~、こっちは何をするのかなぁ?」
「へぇ~、さすがヤシロさねぇ。見事な包丁さばきさね」
現在厨房には俺とマーシャとノーマがいる。
カツオがあると言われたので、ちょっと作ってみたいものがあったのだ。
ジネットが寿司を握って領主たちの相手をしている間に作ってしまおうと思う。
「……で、またアタシが先に見ちまって、店長さんは拗ねないんかぃ?」
以前、ジネットたちが素敵やんアベニューへ遊びに行って留守だった時、ノーマにナスの煮浸しを教えてジネットがちょっと拗ねたんだよな。
あの時のことをノーマは結構気にしていた。
「嫌われたかぃね?」と、結構ガクブルしていたらしい。
だがジネットはそんなことで人を嫌ったりしないし、怒りもしない。
実際、ちょっともやっとしただけだったみたいだしな。
「まぁ、大丈夫だ。ここでやるのは準備だけで、作るのは外でやってくるから」
「外まで行くんかぃ?」
「ちょっと火が出るからな」
「……何をする気さね?」
「まぁまぁ、いいからいいから」
言って、切り分けたカツオの半身と、ハム摩呂に言って持ってこさせたワラの束を手に厨房を出る。
「ジネット。ちょっと庭に出てくる」
「はい。……えっと、何かを作るのではなかったのですか?」
「あぁ。だから、作ってくる」
「お庭で、ですか?」
「ちょっとここを頼む」と厨房に引っ込んだ俺がさっさと厨房を出て、あまつさえ店からも出て行こうとしていることに、ジネットも目を瞬かせる。
「ロレッタ、準備は出来たか?」
「はいです! 言われたとおりにしたですよ」
ロレッタに言って、庭に石で簡易的なかまどを作ってもらった。
現在、かまどでは薪がパチパチと火の粉を弾き飛ばしている。
いい感じだ。
ここでワラを燃やす。
そう。
これから俺が作るものは――
「カツオのたたきを作ってくる」
「カツオを、叩く……んですか?」
「最後にな」
カツオのたたきは、ご存じの通りカツオの表面を強い火で焼き焦がし、タレに漬けて味を染み込ませた料理だ。
『たたき』と名が付いているのは、最後にタレに浸けて味を染み込ませるために叩くからだ。
そして、カツオのたたきを作る際、火を熾すのに最もいいと言われているのが、ワラだ。
ワラを使うことで香り高く焼き上がってくれるのだ。
「あ、あの、見学に行ってもよろしいでしょうか?」
「けど、領主様たちがさぁ~」
「白々しいことを申すな、カタクチイワシ。我々も行ってやるので問題はなかろう」
「私も見てみたいな。陽だまり亭の店長さんも知らない新しい料理を」
とまぁ、こんなことをすれば絶対釣れるだろうと思った連中が物の見事に釣れた。
「じゃあ、大工ども。店番してろ」
「「「いや、無理無理!」」」
店番も出来んのか、オッサンどもは!?
まぁ、庭にいるから店番とかいらないんだけども。
俺が庭に出ると、それに続いてわらわらと全員が庭に出てきてしまった。
そんな大したことするわけじゃないんだけどな。
「カツオの半身に鉄のクシを刺して、身が扇形になるようにしておく」
カツオの身が反って扇形になるようにしておくと、火の中でひっくり返す時にやりやすいのだ。
なにせ、カツオの炙りは時間との勝負だからな。
もたもたしていると中まで火が通ってしまう。
カツオのたたきは、表面は焦げるくらいに炙り、中は生。
これが理想にして基本だ。
ガッと焼いて、氷水で一気に冷やす!
氷がないので、キンキンに冷えた井戸の水を用意した。ちょっと心許ないが、なんとかなるだろう。
「よし、じゃあよく見てろ」
ロレッタが用意しておいた焚き火にワラをくべる。
すると、ワラは一瞬で燃え上がり、高い炎を立ち上らせる。
「わっ!?」
「きゃっ!?」
と、短い悲鳴が上がるが、構っている時間はない。
燃え上がる炎の中にカツオを突き入れる。
ワラに触れないように、踊る炎の中でしっかりとその身を炙っていく。
カツオを焼くと、硬い皮が柔らかくなって口当たりがよくなり、さらに皮と身の間の脂が溶け出して旨みが増す。
なので、皮目をしっかりと焼き、反対の身の部分は軽く炙る。
こうすることで、表面は香ばしく中はまろやかな生の状態になるのだ。
「ほい、おしまい」
「えっ!? そんな少しでいいんですか?」
「あぁ。絶妙な焼け具合だと思うぜ」
ワラの炎で炙るのは1分程度だ。
これで十分。
これ以上やると焼き魚になっちまう。
そんな話をしている間に炙ったカツオを冷水に突っ込んで冷ます。
水っぽくならないように素早く引き上げ水分をしっかりと拭き取っておく。
「ロレッタ。火を消さないように維持しててくれるか?」
「任せてです! あ、でも、完成品もちゃんと見せてほしいです」
「へいへい。試食第一号にしてやるよ」
「ホントですか!? やったです!」
ま、時間がないからしっかりと味が馴染まないと思うけどな。
フロアに戻り、寿司職人スペースに炙ったカツオを持ち込む。
それを1cmほどの厚みで切っていく。
「わぁ。中は生なんですね」
「だが、表面を炙ったおかげで香ばしく、生臭さも消えて、甘みが増してるんだぞ」
「それは、試食が楽しみですね」
「だが、これを食うのはまだあとだ。ノーマ」
「ほぃな」
ノーマに頼んで作ってもらったタレを持ってきてもらう。
醤油と砂糖、ショウガとニンニク、酒と塩。そしてレモンを搾り入れて、あとは薬味としてネギとミョウガを大量に入れている。
「このタレに漬けて、綺麗な布巾を被せて――叩く!」
ぺちぺちぺちと、タレが身の中に浸透するように軽く叩く。
「あとは、味が染み込むまで少し置いておく」
虫除けのために布巾を掛けたまま置いておく。
二時間ほど浸け込んでおきたいところだが、まぁ、三十分くらいでいいだろう。
「待ち遠しいね、ルーちゃん」
「今食わせろ、カタクチイワシ」
「折角だから、美味いヤツを食って帰れ。――帰れ」
「なぜ二度も言った!?」
それはもう、帰ってほしいという思いがにじみ出し過ぎてな。
「まぁ、待ってる間にちょっと変わった寿司でも食っててくれ」
言いながら、俺はタイ、サーモン、エビ、エンガワを握る。
「あの、ヤシロさん。どこが変わったお寿司なんでしょうか?」
「何か、特別な握り方をされたのですか、オオバさん!?」
「「「詳細を!」」☆」
ジネットに続いて、寿司職人人魚たちが俺に視線を向ける。
特別なことをするのはこれからだ。
「ちょっと待ってろ。……食うなよ?」
俺がいなくなった途端に手を出しそうな他区の領主二人に釘を刺しておく。
フロアを出て、表で待っていたロレッタから、燃えた薪を一本もらう。
ロレッタもついてきていいぞ。
火の威力も弱くなってきたし、もう大丈夫だろう。
「ほら、危ないから近寄るなよ」
火のついた薪を持って、簡易寿司カウンターへ向かう。
そして、握っておいたタイ、サーモン、エビ、エンガワの表面を軽く炙るように薪の炎を近付ける。
魚の脂が焦げる、なんとも香ばしい匂いが立ち上る。
「ロレッタ。これを外のかまどへ戻しといてくれ」
「ここで持って待ってるです。きっと店長さんもやりたいはずですから」
……それもそうか。
じゃ、ちゃちゃっと仕上げるか。
表面を炙ったタイの上にスダチの皮を刻んだものを載せ、塩を上から振りかける。
サーモンには青ネギの輪切りを、エンガワには柚子胡椒を載せ、エビには塩ダレを塗る。
「ほい、炙り寿司だ。食ってみろ」
「美味いっ! 何をしたのだ、カタクチイワシ!?」
いや、めっちゃ見てたよね!?
お前の目の前で全行程やって見せたよね!?
「これはすごいなぁ! 香ばしいのに、すごく甘くて、いくらでも食べられそうだよ」
「生が苦手ってヤツでも、これなら割とすんなり食えそうだろ?」
領主二人が舌鼓を打っている間に、他の連中の分を握る。
まずはジネット。で、マグダとロレッタとカンパニュラ。
デリアとマーシャとノーマの分もちゃんとある。
「ハム摩呂も食うか?」
「大喜びからの~、まさかのご遠慮やー!」
「目的が分かんないですよ、ハム摩呂!?」
「はむまろ?」
「いいからもらっとくです! これ、めちゃくちゃ美味しいですから!」
燃える薪を片手に、炙り寿司をペロリと平らげたロレッタがハム摩呂にも勧める。
「食べられないヤツあったら、あたしが食べたげるですから!」
あわよくばおこぼれに与るつもり満々で。
「すごいですね。表面を炙るだけで、こんなにも風味が変わるなんて。そっと添えられた薬味がネタのよさを引き立たせていて、お口の中でわっしょいわっしょいしています」
「やってみるか?」
「はい、是非!」
「だそうだ。よかったな、ベルティーナ」
「はい、とても!」
カツオのたたきの匂いでも嗅ぎつけたのか、ルシアの隣にベルティーナが座っていた。
「ギルベルタも食うか? ルシアの給仕、いらないだろ?」
「もらう、あとで。終わったら、ルシア様のお食事が」
「よい。ギルベルタも一緒に食せ。ジネぷぅが握るものはシスターベルティーナが食べるようなので、カタクチイワシに握らせればよい」
「「「「私たちにも、是非試食をお願いします!」」」☆」
「……ヤシロ。マグダが炙りを手伝う。加減は覚えた」
一度庭へ出て、もう一本火のついた薪を持ってきたマグダ。
ロレッタはジネットの隣に立って薪を持っている。
じゃあ、ジネットの方はロレッタに任せて、こっちはマグダにやってもらうか。
「ノーマ。薬味と味付けを頼んでいいか?」
「任せとくさね」
ノーマなら、綺麗に盛り付けてくれる。
俺は寿司を握りながら、ジネットや人魚娘たちに指導とアドバイスを行う。
「大工他オッサンども~。俺のヤツは一貫1000Rb。ジネットのが800Rb。人魚娘のが食べ放題。どれがいい?」
「「「食べ放題ので!」」」
金を稼いでいるくせに……渋ちんどもめ。
「オオバさんと店長さんがめちゃくちゃ速いです!?」
「なのに、お客さんはこちらが一番多いです!」
「役割分担をしましょう!」
「さんせ~い☆」
「では、私が握ります」
「私が炙ります」
「私が薬味を載せます」
「私が食べま~す☆」
「「「って、こら!」」」
仲いいな、人魚娘。
「ヤシロ! あたいにも何か仕事振ってくれ!」
「じゃあ、ベルティーナが暴走しないように押さえといて」
「えぇ……またかよぉ……」
だって、一番体力使うんだもん、その担当。
適材適所だな、うん。
あとがき
光が当たらなかったヒロインにも光を!
で、真っ先にスポットライトを浴びた、おっぱいたすき!
愛でましょう\(*´ω`*)/
どうも、曲がったことと萎んだ乳を見過ごさない、宮地です!
腐っても鯛、萎んでもパイという言葉があるように、
その価値はどれだけ時間が経とうが、どのような状態になろうが変わらず尊いのです。
崇めましょう\(*´ω`*)/
というわけで、
三幕でお寿司を教わった海漁ギルドでしたが、
ラーメンフィーバーのあおりを受けてずーっと放置されておりました。
ここにきて、一気に新キャラ四人娘です!
あ、名前は覚えなくていいです。
デラックスと他三人、みたいな感じで大丈夫です。
似通った名前がトリックの鍵になったり、ミスリードして実はこの中に一人裏切者がいたり
とか、そーゆー展開はありませんので。
似通った名前の、似通ったバストサイズの人魚娘が四人出てきたな~って思っておいてください。
…………というか、ヤシロさん!
Cカップは十分大きいですよー!
(;」゜□゜)」< Cカップの重さは、500mlのペットボトルとほぼ同じなんですよー!
見慣れているせいか!?
IカップとかHカップとか、見慣れているせいか!?
どーしてエステラさんでプラマイゼロにならな――サクー!
……(・_・; 懐かしい痛み
しかし、今回はすごい事実が発覚しましたね……
これまで、四十二区以外で最大のおっぱいを誇っていたトレーシー(Gカップ)を超える人物が三十四区にいました!
しかも、
ジネットに肉薄する大きさで、
おっぱいたすきです!
……これは、主戦場が四十二区から三十四区に代わってしまいかねない大事件ですね!
四十二区でも、デリアしかいないのに、Hカップ!
まぁ、イメルダさんがこのまま順調に成長を続ければ、いつしかHに手が届くかもしれませんけれども!
FからG……そしてHへ――
たぶん、他所の区でIカップが出てきたら、そいつがラスボスでしょうね。
ということは、他所の区のHカップは魔王軍四天王レベルの強敵ということですか……
しかも、伝説の装備 (おっぱいたすき)まで装備しているとなると……手強いです!
たすきは、古くから日本に伝わる装備品ですので、
エンシェントアーマー、古代の鎧ですね。
うわ、めっちゃ強そう!?
しかも、ホタテ未装着の人魚が四人ですよ。
これはいわば、「変身するたびに破壊力が遥かに増す。その変身を後二回も残している」という状況!
四十二区、最大級のピンチなのでは!? もしかして! ねぇ!?
太刀打ちできるのか、エステラ!
まぁ、無理だろうけども!
そんな強敵を前に、ヤシロはどう立ち向かうのか!?
あぁ、そう、カツオのたたきを作るの。
美味しいよねぇ~カツオの叩き。
……平和か!?(゜Д゜;)
報労記はギスギスもやもやのない展開を目指しますので
ここでバトルとかにはならないのです。
人類みな兄弟。
仲良きことは美しきかな。
人を見たらおっぱいと思え。
そういう素晴らしい言葉を体現するようなお話にいたしましょう。
争うのではなく協力し合いましょう。
それが、この世界を平和で満たすことに繋がるのです。
『強敵』と書いて『おっぱい』と読みましょう。
強\(≧▽≦)/敵
本作が、世界平和の一助になれれば、こんなに嬉しいことはありませ……まぁ、無理でしょうけども!
平和に貢献どころか、こんなことばっかり言ってて誰かに怒られないかドキドキしますね……
みなさん、この辺に書いてあること、他の人には内緒ですよ!
偶然が折り重なり合ってこの場所にたどり着いた、あなたがただけが読むことの出来るあとがきですからね!
切り取ってツイートとかしちゃダメですよ!?
炎上、いくない!
炎上防止守りに祈りを捧げておきましょう。
なにとぞ、なにとぞ……
いやいや、でもそこまで炎上しそうな発言はしていないはず…………萎んでもパイとか言ってたなぁ、さっき!?
Σ(゜Д゜;)めっちゃアウトっぽい!
そうですね、ここは素直に、撤回し、謝罪をいたしましょう。
お乳の中には夢と希望が詰まっているのですから、
お乳はいつまでもいつまでも萎みません、よね!
おっぱいは永久におっぱいです!
『永遠』と書いて『おっぱい』と読みましょう!
永\(≧▽≦)/遠
なんか、見たことあるな、こーゆーの!?
Σ(・ω・ノ)ノ!デジャヴ
というわけで、なんかバタバタと新キャラが出てきておりますが、
そこはそれ、今後レギュラーメンバーとのお話もじわじわと書いていこうかと思います。
シーラ・キャンサーとか、需要ありますかねぇ?
私はもうちょっと書きたいキャラなんですが……ほら、三十二区のカーネルさんとこの給仕長で
ドえらい訛りのカントリー娘です。
訛りっ娘、大好きなもので(*´ω`*)
……まぁ、とりあえず、夏くらいまでは出てくる予定ないんですけども。
この先、夏ころまでは書くこともう決まっているので
三十二区?
出てきませんなぁ……
気が向きましたら、このキャラ好き~とか教えていただけると、
女の子キャラなら可愛いシーンを書いてみたり、
イケメンキャラだったら、そっと出番を削ってみたり
しますので☆
えぇ、嫉妬ですけども!?
それが何か!?(;>△<)くっそぅモテやがって!
そんなわけで、書いている私もこの先どうなるのかちょっと分からない始まり方をしております『報労記』
引き続きよろしくお願いいたします!
おね\(≧▽≦)/がい
次回もよろしくお願いいたします。
宮地拓海




