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異世界詐欺師のなんちゃって経営術  作者: 宮地拓海
第二幕

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300/781

212話 思い出と手紙と

 二十九区は、豆を押しつけるのに必死だ。


「来る途中で道を尋ねられたんだが……豆を押しつけられたぞ」

「あらあら。それはきっと『お礼』のつもりなのねぇ」


 ひょうひょうとした顔で笑うマーゥル。

 こんな押しつけがましい『お礼』なんぞいらん。マーゥルの免税証明がなければ、金を取られるんだからな。


「どうせならソラマメを寄越せよな。名産なんだろ」

「あら、それは無理よ~。ソラマメはね、つい先日大量に注文が入ったから、領主がぜ~んぶ買い占めちゃったのよ。一般家庭には出回らないわ」


 くすくすと軽い笑いの合間に、にやりと意味深な笑みを含ませるマーゥル。

 俺たちが豆板醤をリベカに教えた影響が、早くも二十九区に出始めているようだ。

 アッスントが早い段階で商談を持ちかけていたというのも大きいのだろうが。



 とどけ~る1号で昨日のうちにアポを取っていた俺たちは、昼過ぎに差し掛かった今、マーゥルの館でのんびりとお茶をすすっている。


「よっしゃ! 大将のイラストが描けやがったぜです!」

「あらあら、モコカ。大将だなんて……うふふ。本当に面白い娘ねぇ」

「この館で一番偉いんだから、大将だぜですよ!」

「まぁまぁ。どうしましょう。ねぇ、シンディ?」

「主様のお好きになさればよいかと思いますよ、私は」

「そ~ぅ? なら、面白いからそのままでいいわね」

「えぇ。面白いですからねぇ」


 モコカの面接は物の五分で終了した。

 一目見て「まぁ、可愛い虫人族さん」と、瞳をきらめかせたマーゥル。

 一言二言言葉を交わすと、もう夢中になっていた。

 そして、極めつけの特技――イラストを披露すると、モコカの採用は決定された。


 こうして、何年も何十年も採用者が現れなかったマーゥルの館の給仕に、新たなメンバーが加わった。

 マーゥルはモコカの才能を高く評価し、情報紙の仕事との掛け持ちも、ベッコの元へ勉強に行くのも了承してくれた。

 モコカは好きな時にイラストを描き、学び、それ以外の時間を給仕として働くことになった。もっとも、マーゥルが必要とする時は給仕の仕事を最優先させるという条件はついているが。


「まぁ、可愛い。これ、私? ちょっと可愛く描き過ぎじゃないかしら?」

「いえいえ。よぉ~く特徴を捉えてあって、上手いもんですよ」

「大絶賛感謝するぜです!」


 なんとか、上手くやっていけそうだ。

 というか、もう完全に馴染んでやがる。モコカのコミュ力すげぇな。


「ねぇ、見て見てヤシぴっぴ。これ、私なんですって。可愛いと思わないかしら?」

「あぁ、可愛い可愛い。よく似てるよ」

「うふふ。ということは、私自身も可愛いってことね? もう、ヤシぴっぴはお上手ね」


 いや、自分で都合よく解釈しといて「お上手」も何もないだろうが……


「……ヤシロは年上もイケる口」

「そんな口は持ち合わせてねぇぞ、マグダ」

「……年下も余裕」

「俺は無節操か」

「……幼女が好物」

「それはさすがに嘘過ぎるな!?」


 好物ではねぇよ!


「……もし、Gカップの幼女がいたら?」

「………………うむ」

「悩まないでくれるかな、ヤシロ。あと、そんな幼女存在するはずないから」


 おのれの負けを認めたくないエステラが希望的願望を述べている。

 いるかもしれないだろうが。数百年もの間、まったく老いないエルフだっているんだから。


 今回二十九区には、俺とエステラ、そしてマグダが来ている。

 マグダは……少しでもモコカのそばにいて情報紙に載せてもらおうという魂胆なのだろうな…………本人は口にしていないけれど。


「マグダちゃんも可愛いわぁ。ウチの給仕に欲しいくらい」

「……マグダは引く手数多だから」

「そうなの、残念ねぇ」


 マーゥルはマグダにもメロメロだ。

 変わり者ランキングなら、マグダも上位にランクインするだろうしな。


 ナタリアをこれ以上モコカのそばに置いておくと――モコカが手放しで「美人美人」と連呼するから――表情筋がドヤ顔のまま固まってしまいそうだったので、有無を言わさず置いてきた。

 代わりは別に必要なかったのだが、行きたいヤツはいるかと聞いたらマグダが名乗りを上げた。ロレッタも行きたがるかと思ったのだが……定食の失敗が悔しかったようで、陽だまり亭に残ってジネットの技術を盗むのだそうだ。


 ちょっと行きたそうにしていたジネットだったが、ロレッタが抱きついてそれを阻止していた。

 イメルダが言っていた「技術は盗むもの」という言葉に感銘を受けたようだ。


 まぁ、もうすぐ二十四区へ行くことになるし、今回はいいと判断したのだろう。


「もしよろしければ、マーゥルさんも参加なさいませんか?」


 今回、マーゥルに会いに来たのはモコカの件だけではなく、二十四区教会で開く予定の『宴』への招待も兼ねていた。

 マーゥルが来れば、100%ドニスは参加する。

『宴』には、ドニスとフィルマン、そしてリベカとソフィーの参加が不可欠だ。フィルマンはともかく、ドニスを上手く引っ張り出せるかが重要なキーとなる。


 なのだが――


「ごめんなさいねぇ。私、みだりに他区へは行けないのよ」


 あっさりと断られてしまった。

 マグダやモコカを気に入ったことから、教会の獣人族のガキどもで釣れるかと思ったのだが……


「って……みだりに四十二区に遊びに来てんじゃねぇか」

「それは、お忍びだもの」


 じゃあ、忍んで来いよ。


「二十四区へ行くとなると、領主様とお会いすることになるでしょう?」


 そう問いかけるマーゥルの目は、「それが目的なんでしょう?」と言っていた。

 丸分かりか、こっちの魂胆。


「特に今――『BU』全体の懸案事項を抱えた今、私が他区の領主と密会なんかしたら問題が大きくなってしまうわ。深い意味がなかったとしても、ね。まず間違いなく、その手引きをした四十二区の心証は悪くなるわねぇ」

「そう……ですか」


 そんな意図はない――とは、口が裂けても言えないからな。下心はありありだし。

 それでも取り繕うように、エステラは「表面上の」言い訳を口にする。


「楽しい催しになるかと思いましたので、よければと思ったのですが。残念です」

「そうね、とても残念だわ。またの機会に誘ってね」

「はい。是非」


 またの機会ってのは、すべてのゴタゴタが片付いたら――ってことか。

 ベルティーナがやりたがっている、四十二区での宴になら呼べるかもな。


「そうそう。二十四区の領主様と言えば……ヤシぴっぴ、彼に何か言ったわね?」


 それは、ほんの少し責めるような感情のこもった口調だった。

 何か…………まぁ、言ったけど。


「お手紙が来たのよ。名目上は、私がヤシぴっぴたちを紹介するために書いたお手紙への返事ということでね」


 そう言って、一通の手紙を差し出してくる。

 達筆な字で書かれた、質実剛健な印象を与える手紙だ。

 封をしていた蝋には二十四区領主の紋章が刻まれている。


「そのうち手紙を書くとは言っていたが……早速書いたんだな、あの一本毛」

「ぷふっ!」


 わざとらしく怒ったような表情を作っていたマーゥルが、堪らず吹き出した。

 やっぱりマーゥルも気になってたんだな、あの一本毛。


「くすくす……も、もう、ヤシぴっぴ……笑わさないで。少しだけ叱ってあげようと思ってたのに……くすくす」


 はて、叱られるような覚えはないのだが。

 などと惚けつつ、俺は差し出された手紙を受け取る。読んでもいいということだろうから、早速手紙を開く。



『親愛なる、我が旧知の友へ――』



 そんな一文から、手紙は始まっていた。

 そして、時候の挨拶から貴族的な挨拶が続く。

 そして。



『貴女の手紙にあった者たち、特にオオバという者は非常に興味深い者であった』



「へぇ。気に入られてたんだね、ヤシロ」

「うるさい、黙って読め」


 俺の肩越しに手紙を覗き込むエステラがにやにやとしながら余計なことを口にする。

 なぜ背中に寄り添うような格好で肩越しに手紙を読んでいるのにもかかわらず俺の背中に柔らかい物が一切触れていないのか、俺はその点を小一時間問い質したい。


 さらにドニスの手紙は、フィルマンが俺たちに影響され変わり始めたことや、自身の積年の悩みがやがて解消されるかもしれないことなどが堅苦しい言い回しで綴られていた。

 内容だけ見れば、俺たちは随分と認めてもらっているようだ。


 もっともそれは、「貴女が紹介した者たちを、ワシは評価しているぞ」というアピールなのかもしれないのだが。……まぁ、おそらくそうなんだろう。

 そして、話の流れは「もうすぐワシの悩みは解決し、そうなれば時間も取れるだろう」という方向へと導かれていく。

 まぁ、つまりアレだな。

「時間が出来たらお茶でも飲もうぜ」というお誘いのための前振りと言ったところだ。


 そんな内容を「汲み取ってね~」とばかりに遠回しに遠回しに匂わせまくって、手紙は結びの挨拶へと移る。



『時候不順の折、体調など崩されぬよう。


 追伸 まもなく、我が区で新たなる調味料が誕生するそうだ。貴女の口に入ることがあるならば、是非感想などを聞かせていただきたく候。


 ではまた、いずれ。





 ドニぴっぴ 』



「ごふっ!」

「ぶふぅーっ!」


 なんか、変な塊が気管に入った!

 咳が止まらない……っ!

 

「ね? ヤシぴっぴが何か言ったとしか思えない手紙でしょう? 私も、三十分くらい苦しんだのよ?」


 マーゥルの不満の根源はそれか……確かに、これはつらい。

 つか、何書いてやがるんだ、あの一本毛ジジイ!

 なぁ~にがドニぴっぴだ!


「……あの、ジジイ…………賠償請求してやろうか」


 ノドの奥が「ひぃー」と掠れた音を鳴らす。肺の奥の方がちくちくとむず痒い。

 俺の背後ではエステラが「こほっこほっ」とむせている。


「でもそうね、ヤシぴっぴはとってもいい娘を紹介してくれたし……お手紙にはお返事を出さなきゃいけないわね」


 おそらくというか、まぁ間違いなく、マーゥルはこちらが望んでいることを正確に理解している。

「お返事」ってのには、そこら辺を汲み取っていい感じに働きかけてくれると、そういう意味が含まれているのだ。


「それに、そうね……私も、一人くらいはお茶飲み友達がいてもいいかもしれないわねぇ」


 そう言ったマーゥルは、これまでは見せたこともないような幼い笑みを浮かべていた。

 自身も、領主になるべくすべてを捨てて人生を歩んできた。そんな中で、自分に好意を寄せ続けている相手のことを憎からず思っているのだろう。


 茶飲み友達になることを、こいつは楽しみにしているように見える。


 まさかとは思うが……そこにもなんらかの意図があったんじゃないだろうな?

 だからつまりは、結婚なんかとうに諦めていた――けれど、セロンのレンガを見て、一つの手段としての結婚を考えた。

 それは縁がなく実を結ぶことはなかったが、一度可能性を見出した結婚というものに、今さらながらに心が躍り…………もし出来ることなら、ずっと自分を思い続けていたあの人と………………なんてな。


 最初にトレーシーに会わせることで、「マーゥルの紹介なら話が持ち込みやすい」という実績を作り、こちらの警戒心をなくさせる。

 そして、自分の望む未来をたぐり寄せるために満を持して二十四区へ俺たちを送り込んだ――随分とややこしい状況になっていることを承知で、そんな二十四区を俺たちになんとかさせるために――ってのは、勘ぐり過ぎか?


「あら、ダメよヤシぴっぴ」


 マーゥルの心を読もうと見つめ過ぎたのかもしれない。マーゥルはドニスからの手紙を受け取りがてら、俺にこんな苦言を呈してきた。


「秘密は女を美しくするものよ。なんでもかんでも見透かそうなんて、紳士のすることじゃないわ」


 それは、俺の仮定がそう遠くはないだろうということの証明になり得る発言だった。

 マーゥルにしても、「これくらいのところまでは読まれたのだろう」と仮定しての発言だ。

 裏を返せば、「取り繕いようがない事実なので、詮索するな」という自白とも取れる。


「悪いなとも、思っているのよ」


 誤魔化すように、マーゥルがこちらを見ずに話を続ける。

 手紙を丁寧に折りたたみ、宝物を扱うように大切に封筒へしまい込む。


「あの人、私に出会ってからずっと独り身だったから」

「あの人というのは、ミスター・ドナーティですよね?」


 空咳をした後、エステラが確認を取るが、マーゥルは視線を向けただけで何も言わなかった。

 野暮な質問はするなということだ。


「私も、もっとはっきり答えを出していれば、違った道もあったのかもしれないわね」


 違った道とは、マーゥルにとっての道なのか、ドニスにとっての道なのか……


「なんだか怖かったのよ、返事をするのが。だから先延ばしにしちゃったのね……ずっと、ずぅ~っと、先延ばしに」


 封筒にしまった手紙を胸に抱き、窓の外へと視線を投げる。

 なんとも乙女チックな表情を見せるマーゥル。意外と言えば意外なのだが……脈あり、だったのか、ドニスは?


「怖かったというのは、他区の領主との、その……そのような関係になることが、ですか?」


 領主同士の恋愛ともなれば、周りを巻き込んだ大騒動になるだろう。

 政略的なあれこれや、しがらみ、思惑、策略と、胡散臭い暗躍が目白押しとなることだろう。

 エステラも領主という立場上からか、真剣みを帯びた瞳でマーゥルを見つめている。


 だが、マーゥルは薄く頬を染め、照れ笑いを浮かべて手を振った。


「ううん。そうじゃないの。……恋、そのものが、怖かったのよね」


 薄紅色に染まる頬を押さえ、腰をくねらせて肩を揺するマーゥルを見て、俺は呟く。


「何言ってんだ、このオバハン?」

「……ヤシロ。め」

「身悶えてる今のお前の方がよっぽど怖いわ」

「……ヤシロ。彼女もかつては少女だった」

「あぁ、分かっている。分かってはいるんだが、視覚的な情報が強烈過ぎてな」


 マグダが静かに諫めてくるが、致し方ない部分も理解してもらいたい。

 頬を染め体をくねらせるオバハンの破壊力たるや……平和主義で温厚な俺がかかと落としをお見舞いしたくなるレベルだ。


「彼は――凄く真剣だったから。恋を知らなかった私には、その一途な思いが少し怖かったのよね」


 ドニスの一途な思いは重いからなぁ……怖がられても仕方ないか。


「あの頃は、彼も私も若かったから……不器用だったのよね、お互いに」

「おいくつくらいの頃だったんですか?」


 どこにそこまで興味を引かれているのか、エステラがぐいぐいと食いついている。

 まぁ、隣でマグダも耳をピンと立てているから、女子はこういう話が好きなんだろうな。……俺は、オバハンの恋愛話なんぞにまったく興味をそそられないのだが。


「彼が二十歳で……私が九歳の頃だったわね」

「お前もかドニスー!」


 窓の外に向かって思わず叫んだ。

 叫ばずにいられようか。


「……ヤシロ。め」

「いやまて、マグダ。きっと俺は悪くない」


 なんだ?

 ドナーティ一族のストライクゾーンは九歳限定なのか?

 そういう掟でもあるのか!?


「……一族に受け継がれている病気なんだな、あそこのロリコンは……フィルマン、本当はドニスの息子なんじゃねぇの?」

「それはないよ。ミスター・ドナーティは未婚だし」


 フォローをするエステラだが、顔は素直に引き攣っている。

 年齢差で見れば、まだフィルマンの方がまともに見える。十四歳と九歳だ。年齢差五歳なら、まぁよくある話だ。相手が九歳ってのはちょっとどうかと思うがな。


 だが、ドニス! オメェはダメだ!


 二十歳で九歳の娘に言い寄ったって……犯罪じゃねぇか!


「あいつはハビエルか!」

「ヤシロ、大ギルドの責任者を犯罪者の代名詞みたいに言わないように」


 似たようなもんだ。

 いや、むしろ代名詞だ。

『強制翻訳魔法』だって、そのうち「ろりこん」って言葉を言ったら「もしかしてハビエル?」って聞き返してくるに違いない。そうに違いない。


「九歳で二十歳の男性に言い寄られたら、それは、怖い……ですよね」

「でしょう?」


 一定の理解を示したエステラに、マーゥルは嬉しそうに頷いた。嬉し恥ずかしラブモード全開で……満更でもなかったのかよ。


「他区の領主にプロポーズされたのは、その時が初めてだったわねぇ」

「プロポーズしたのか!?」

「それくらい、本気だったのよ……きゃっ」


「きゃっ」をやめろ!

 硬く握られた俺の拳は、マグダの小さな手によって拘束され、振り下ろされることはなかった。マグダに感謝するんだな、マーゥル。マグダがいなかったら、今頃お前の前歯はなくなっていたことだろう。


「でも、当時の私は幼くて、おまけに次期領主で……結局、そのお話はなかったことになったのよね」


 二十九区としても、次期領主を他区に嫁がせる訳にはいかなかったのだろう。


「そして、弟が生まれて私が次期領主でなくなった時には……私の方が少し荒れていたから…………ふふ。本当に、恋愛が下手で嫌になっちゃうわ」

「タイミングというのは、ありますよね」


 自嘲気味に笑うマーゥルにエステラが声をかける。

 そうした後で、ちらりとこちらへ視線を向けてきた。


 ……なんだよ。

 同意を求めてんのか?

 俺に聞くなよ、んなこと。


「……機会は待つものではなく、作るもの」


 ぼそりと、でもよく通る声でマグダが言う。

 いつもの半眼で、誰を見るとはなく、真っ直ぐ前を見つめて。


「……幸せは、思っている以上に逃げ足が速い。手に入れたいなら、全力で追いかけなければいけない」


 マグダの手が、俺の服の裾をぎゅっと掴む。


「……マグダは、なくしたくないものをなくなさないように、全力で頑張る所存」


 かつて、両親の帰りを待ち続けていたマグダ。

 待っていれば、泣き叫べば、両親は戻ってきてくれる――と、そう思っていた無力で幼い少女。


 初めて会った時のマグダは、本当に空っぽの目をしていた。


 強くなったんだな、こいつは。


 最近はまとまりがよくなってきた髪の毛をかき乱すように、マグダの頭を撫で回す。

 お前が頑張ってんのは、みんなが知ってる。

 だから大丈夫だ。

 お前はもう、何もなくしたりはしない。


「そうね……マグダちゃんの言うとおりね」


 マーゥルも、この小さな少女の口にした言葉に相好を崩す。


「欲しいものは、どんな手を使ってでも手に入れなきゃね」


 お前が言うと怖ぇよ、マーゥル。

 なんか、言葉の端々に黒いもんを感じるんだよな、こいつは。


 何か通ずるものがあったのか、マグダとマーゥルは互いに見つめ合い、そしてこくりと頷き合った。


「……ただ待つだけで幸せが舞い込んでくるのは、爆乳の持ち主だけ」

「そんなことはないと思うよ!?」


 エステラ、必死の抗議である。


「……店長だけが、待機の姿勢で幸運を呼び込んでいる」

「確かに、ジネットちゃんの周りにはいい人脈が形成されているけど……ジネットちゃんもいろいろ頑張っているんだよ」

「……無論、それは承知している。ただ…………あの爆乳は卑怯」

「胸に吸い寄せられてやって来たのはヤシロだけだよ!」

「おいこら、そこの風評被害振りまきマシーン」


 誰が爆乳に吸い寄せられたか。まだ吸ってねぇわ。


「うふふ。あなたたちは、本当に賑やかで楽しいわね」


 手紙を大切そうに胸に抱き、マーゥルは立ち上がる。

 部屋の奥の、やたらと豪奢な棚に近付き、引き出しへとドニスからの手紙をしまう。


「さぁ、このお話はこれでおしまい」


 ぽんと手を打って、こちらへと振り返る。

 その顔は…………あぁ、そういうことか。


「ヤシぴっぴの目論見が上手くいくことを祈っているわね」


 自分とドニスの過去話は、俺に対するヒントだったわけか。

 ドニスを攻略するのに役立てろと。

 そして、それだけのヒントを与えてやったのだから、私の利益になることをしっかりやれよと、そういう腹積もりなわけだな、このオバハンは。


 まぁ、確かに。ドニスの過去が分かればこちらの手札は増える。

 スピリチュアルモードで過去を言い当てる(ように見せかける)ことも可能だ。

 なにより、フィルマンの思い人の年齢が、あの頃のドニスが恋をした相手と同じ年齢だというのは、揺さぶりをかける道具としては強力だ。


 こいつは貸しか?

 それとも借りか?


 恋する乙女モードなどどこ吹く風で、こちらを挑発するように笑みを向けているマーゥル。

 欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れる。

 それが、マーゥルの信条だ。



『私の欲しいものを与えてくれるなら、私を好きなだけ利用していいわよ』



 余裕の笑みを浮かべるマーゥルの顔は、そう物語っているようだった。

 ふん。上等だ。

 なら、せいぜい利用させてもらうさ。……お前たちの生み出したくだらない制度をぶっ壊すためにな。


「モコカ」

「おぅ、なんか用かですよ?」

「お前は、俺に感謝をしているな?」

「そりゃあもう、感謝しまくりだっつぅのですよ!」


 素直でいい娘だな、モコカ。


「なら、俺がお願いしたことは、なんだって叶えてくれるよな?」

「モチのロンだぜですよ! 命に代えても叶えてやるってばよです!」

「なら……」


 ちらりと、マーゥルを見る。


「存分に気に入られておいてくれ、お前の雇い主に」

「おぅです! 望むところだぜです!」


 俺の意図を知ってか知らずか、マーゥルは微笑みを崩さない。

 ポーカーフェイスが板についている。やっかいなオバハンだ。


「自分の願いも、『大切な人に頼まれて』ということにすれば、思い切りやすいからな」


 モコカがそこまで言うなら仕方ないわね、って言い訳を、お前にくれてやるよ。

 おそらく、お前が欲しいものと、俺が欲しいものは一致しているだろうからな。


 そのためには、まずは『宴』を成功させなきゃな。


「じゃあ、マーゥル。ドニスに手紙をしたためてくれるか?」

「あらあら。急に言われても、なんて書けばいいのか迷っちゃうわね」

「なに、簡単な挨拶と世間話でいいんじゃないか」


 貼りつけた仮面のような笑みで俺たちは『交渉』を開始する。


「そうだな……新しい給仕を雇ったとか、『そちらで何か楽しいことがあったら、是非聞かせてほしいなぁ』みたいなことなんか書いておけばいいんじゃないかな?」

「うふふ。そうね。それは、お返事が楽しみだわね」


 もはや、貸し借りの量は分からなくなっている。

 だからここはひとまず――お互いが最大限の利益を得られたらチャラ――ってことで、手を打とうじゃねぇか。


『BU』の突き崩しに、協力してもらうぞ、マーゥル。



 マーゥルに手紙を頼み、俺たちは四十二区へと戻った。

 馬車に揺られて、崖を迂回するようにぐるっと回り道をして。


 あぁ、本当に…………回り道は大変だな。







いつもありがとうございます。



レビューをいただきましたっ!(ノ´∀`) ノ


それもお二人も!(*´▽`)人(´▽`*)


というわけで、いつものように投稿順で――




まず、2017/04/09 22:45の方。


ビジネス書のような「ツカミ」から入るこのレビューは、初見の方をゆったりと誘うような語り口調で進み、真面目な、ともすれば難しいことを言っている――ように見せてさり気におっぱいを挟み込んでくる。面白い技巧の凝らされた構成でした。

一見すれば謎をも感じる仕掛けも、本編読了後には「なるほどね」と納得の内容で、誇張せず真実の範囲で内容を最大限魅せる巧いレビューでした。


どうもありがとうございました!




そして、2017/04/13 18:52の方。


タイトルからしてこだわりが溢れています。看板は重要ですからね。

まず一読して、ふと初期の頃を思い出し、懐かしい気持ちになりました。登場人物の成長を見守るうち、読み手まで少しずつ変化をしていく、そんなことを感じさせる様が窺えて思わずほっこりしました。

登場人物の誰にも触れていないのに、登場人物のことを知りたくなるような構成で実に興味深いレビューでした。


どうもありがとうございました!



今回のお二人は、お二方とも初レビューなようで、感謝感激、とてもありがたいです。

嬉しいですねε-(´∀`*)ムフーッ




さて、4月14日ということで――



『異世界詐欺師のなんちゃって経営術』


4巻の全プレ期限は、本日23:59までです!

更新の時点ではまだ期間中ですが、もしかしたら皆様がここを読んでいる頃には終了しているかもしれません。


今回も多くの方にご参加いただき、大変感激いたしました。

感謝の言葉もありません。


「べ、別に感謝なんかしてないんだから! 『ありがとう』なんて言葉、言ってあげないんだからね!」


――ということではないんですよね、「感謝の言葉もありません」

「いや、ないのかよ!?」とか、思っちゃうんですけれど、私などは。


「とっても感謝してます! しまくりやがってます!」

という意味です。


本当にありがとうございました。

短い文章ではありましたが、多くの方とお話し出来て楽しかったです。



と、いうわけで。

書籍版『異世界詐欺師のなんちゃって経営術』は、これにてとりあえず一区切りです。


しかし、そこは天下のスニーカー文庫様。


この先、空前の詐欺師ブームとか、パイオツカイデー現象とか、

はたまた宮地の新作がトットちゃんバリの大ヒットを飛ばしたりしたら、

掘り起こしアニメ化とか、あるかもしれません!(ないとは言い切れない!)


そんな奇跡が起こりましたら、

是非皆様とご一緒にバンザーイってしたいと思います。その時はよろしくお願いしますね。





そんなわけで。

WEB版――元祖『異世界詐欺師のなんちゃって経営術』は、

なんだかんだで300話ですって!(まぁ、びっくり)


挿話とか挟んでいるので、今回が212話ではありますが、

トータルで300話だそうです。


……びみょーなメンバーでしたね。

マグダがいてくれたのがせめてもの救いでしょうか。

ジネット……


このあと、ちょっとしつこいくらいにジネットジネットしちゃいたい気分ですね。



さて、

実を言いますと、

ここまでは、結構前に書き溜めておいたお話だったりします。

もちろん、アップ前に読み返して誤字チェックとかしておりますが、

結構忘れているものですね。

前回ベッコをいじり倒してふざけていたのに、

今回は真面目に過去の話とかしてたんですねぇ…………真面目、か?



うぅむ……さて、どの順でお話しすれば怒られないでしょうか……

まず、決定事項を述べて、お願いか……

はたまた、申し訳ないなぁ~って気持ちを述べた後でご報告か…………



とりあえず、言っておかなければいけないことを!

言います!


実は、

ちょっと、時間が取れそうにありません。


ストックが足りませんでした。

というか、今頃にはやることが片付いているはずでした。

でも予想以上に手間取ってしまい……先のお話を書いている時間がありません。

申し訳ないです……5日に1回の更新なのに……衰えたものです。


次回分は、もう書いてあります。


その次は、二十四区へ乗り込む――はずでした。

が、二十四区解決編を書くのはとーてーも、時間が必要になるので、ちょっと無理かもなのです。


ですので……申し訳ないのですが…………




挿話です。




はい、引き延ばしです!


もともとの予定では、次々回から二十四区に乗り込んで、宴をして、そして……

と、お話がぐいぃーんと進むはずだったのですが、

申し訳ない!

足踏みします。

とりあえず、ジネットのおっぱいが揺れるだけのお話が数話続きます。

(二ヶ月ほど更新をお休みしようかと思ったのですが、「挿話なら書けるかな☆」と思い直し、このようなことになりました)


挿話と言っても、全く別の話ではなく、

『宴の準備をしよう編』みたいな感じになるかと思います。


「引き延ばしとか、めんどくせっ!」と思われる方は、二ヶ月ほど更新が止まっているつもり貯金(お金は貯まりませんが)をしていただいて、本編再開後からまたお付き合いくださいませ。


一応、一目で分かるように話数をいじろうかと思っています。

213話の次が、

寄り道1話とか、

引き延ばし1話とか、

おっぱい1揺れとか、

1ぷるーんとか、

そのような感じになるかな~と、漠然と考えております。

(1ぷるーんとミキプルーンは似ているなぁ……ふふっ)



本編をお待ちいただいている皆様には申し訳なく、誠心誠意謝罪させていただきます。


「フィルマンの恋はどうなるんだ!?」

「ほろ酔いベルティーナを出せ!」

「再開後、ドニスの一本毛枯れ落ちちゃってんじゃねーの!?」

「そもそもリベカのおっぱいは何カップなんだー!?」


などなど、思うところはございましょう。

ですが、何卒、ご容赦のほど、よろしくお願い奉ります。


次回は213話、

陽だまり亭でのお話になります。

懐かしいあの人もぽぃ~んと登場いたします。(ヒントはホタテ!)

その次から、お祭りの時のように準備に奔走するヤシロのお話になります。


本当に、申し訳ない。






――と、そんなお話の後で恐縮なのですが……



来週、北海道行ってきま~す\(^▽^)/



あぁっ! 怒らないでください!

違うんです!

今回は100%遊びなんですが、違うんです!

とりあえず話を聞いてください!



私、4月15日が――誕生日なんです!



自分にご褒美♪(OLさんか!?)



毎回、シリーズが終わる度に、

次回作に向けての願掛けと言いますか、

新しい発想を吸収するためと言いますか、

旅行に出掛けるようにしているんです。



デビュー作が完結した時は、浅草へ。

二作目の時は奈良へ。(ここで『異世界詐欺師』のベースが生み出されました)

そして、今回は、


初の重版!

二巻の壁超え!


という、デビューからのささやかな夢を実現させたということで、

かねてより憧れていたものを体験しちゃおうと決めていたのです!


それが、


陸のファーストクラス――グランクラス!


新幹線大好きっ子が、一度は乗ってみたい、

いや、乗らずには死ねないという、新幹線界の最高峰シート、

それが、グランクラスなのです。

グリーン車なんて目じゃないんです!

まさに、陸のファーストクラスなんです!


それに乗ってきます!

だって、乗りたいんですもの!

とにかく凄いのです。


まず、

グランクラスの車両には、グランクラスのチケットを持っている人しか入れません。

さらに、添乗員さんもグランクラス専用の添乗員さんなんです!

おまけに、お酒、ジュース、飲み放題!

軽食も出ちゃう!

リクライニングしても後ろの人に怒られなーーーーーい!


奥様「でも、お高いんでしょう?」


はい、お高いです。

ビックリしました。


……………………えっ!? って、なりました。


けどまぁ、飛行機でファーストクラスに乗るよりかはお安いかと。


そして、なぜまた北海道かといいますと――



新幹線で北海道に行けるって、凄くないですか?



新幹線誕生から数十年が経ちますが、

新幹線で北海道まで行けるようになったのって去年からなんですよね。

行かないわけにはいかないじゃないですか!

北海道新幹線、開通二周年!


というわけで、

折角グランクラスに乗るんだから、一番遠いところまで行って、ゆっくりと堪能しちゃおうツアーです!



またいっぱいツイートしますね♪





……というわけで、

更新お休み……とか言うと怒られるかなぁ~って。

だからせめて挿話でも……って。



ヤシロがいっぱい頑張りますので、

挿話もよろしくです☆





――陽だまり亭



ヤシロ「あぁ……移動が面倒くさいな」

ジネット「お疲れ様です。移動が多くて大変ですね」

ヤシロ「座ってるだけだから、まだマシと言えばマシなんだが……いかんせん、速度が遅い」

エステラ「何言ってるのさ、ミスターハビエルの馬車はかなり速いだろう? あれよりも速い馬車はそうそうないよ」

ヤシロ「そもそも、馬車が遅いんだよ」

ジネット「えっ、馬車が遅い……ですか? わたしは、あれよりも速い乗り物を見たことがありませんが」

ヤシロ「俺の故郷には新幹線ってのがあってな。そいつがもう、とにかく、滅茶苦茶速いんだ」

エステラ「へぇ。そんなに速いんだ」

ヤシロ「あぁ。なにせ、東京~大阪間を二時間半そこそこで結んじまうんだからな」

エステラ「とーきょー?」

ジネット「おーさか? どこなんでしょうか?」

ヤシロ「んー……東京は芸能人がいて、大阪は芸人がいるところだ」(※ヤシロの偏見です)

ジネット「えっと……ちょっと、分からないです」

ヤシロ「距離にして、550㎞くらいかな」

エステラ「それを二時間で!? そんなの無理に決まってるじゃないか」

ヤシロ「それが可能なんだよ。しかも、車内は全然揺れないんだぞ」

エステラ「……本当なのかい?」

ヤシロ「疑り深いヤツだな。『精霊の審判』をかけてもいいぞ。(ただし真実だった場合は、その代償としてお前の太ももに顔をすりすりさせてもらうが)」

エステラ「心の声がダダ漏れだよ! 絶対させないから!」(内股「きゅっ」)

ジネット「でも、それが本当なら凄いことですね。まるで魔法の乗り物のようです」

ヤシロ「俺の故郷は魔法や超常現象とは無縁の世界だったぞ」

エステラ「けど、そんな速い乗り物なんて、それこそ魔法でも使わない限り出来そうにないじゃないか」

ヤシロ「まぁ、いろんな段階を経てるからな……」

ジネット「いつか、この街にもそんな魔法の乗り物が出来ればいいですね」

ヤシロ「魔法つっても……この街の魔法なんて、精霊神の使ってるアホみたいな魔法しかねぇじゃねぇか」

ジネット「ア、アホって……ヤシロさん。言葉には気を付けてくださいね。シスターに怒られちゃいますよ」

ヤシロ「ふん。『精霊の審判』のせいで、何度面倒に巻き込まれたと思ってるんだ。それくらい言ったって罰はあたらんだろうが」

エステラ「……いや、あたるんじゃないかな。そのうち」

ヤシロ「とにかく、この街にしても、いわゆる『魔法』ってのはないわけだろ? 炎を『ボー!』とか、空を『スイー!」とか」

ジネット「そういう魔法は見たことがありませんね」

エステラ「そういう分かりやすい魔法があったら、もう少し世の中は便利になるかもしれないけど……まぁ、ないだろうね」

マグダ「……店長」

ジネット「あ、マグダさん」

マグダ「……頼まれていたお米(50kg)と塩(50kg)と味噌(50Kg)と砂糖(100Kg)と鉄の寸胴鍋(特大サイズ)と調理用油(20ℓ)を買ってきた。(それらの荷物を片手で『ひょい~』)」

ヤシロ「…………」

エステラ「…………」

マグダ「……なに?」

ジネット「えっと、マグダさん……重たく、ないですか?」

マグダ「……平気。先日店長と一緒にウクリネスの店で買った店長用の新品ブラ(Iカップ)に比べれば、まるで重みを感じない」

ジネット「わたしの下着はそんなに重たくないですよ!?」

マグダ「……中身が詰まれば、重いっ」

ジネット「それでも、その荷物より全然軽いですっ!」

エステラ「……そういえば、マグダの腕力って――あれはあれで、魔法、みたいなもの、かな?」

ヤシロ「あ、あぁ……でもまぁ、腕力では空を飛んだりは出来ないしな」

(窓の外で)シラハ「うふふ、捕まえてごらんなさ~い」(空を「すい~」)

(窓の外で)オルキオ「あはは。よぉ~し、捕まえちゃうぞ~、私の可愛いこねこちゃん☆」

エステラ「…………飛んでるね」

ヤシロ「……絵面的にはメルヘンの欠片もないけどな」

ウェンディ「英雄様! どうかお助けください! 光の粉を全身に浴びて、こんなに眩く光り輝いてしまいました!」(ドア「ばーん!」全身「ぴっかーん!」)

エステラ「眩しっ…………か、輝いてるね」

ヤシロ「…………まぶたを閉じても眼球が悲鳴を上げてるな」

メドラ「だぁ~り~ん! 見ておくれよ! ダーリンがケモ耳フェチだって四十一区でまことしやかに囁かれ始めたから、変身にかかる時間を気合いで短くしてきたよ! ふん!(ケモ耳『ぴょこん!』)どうだい!? これで、いつだって、その……も、もふもふしていいんだからねっ!」

エステラ「……ヤシロ」

ヤシロ「あぁ、すまん。ウェンディの光で今何も見えねぇんだ。ついでに何も聞こえないことにしておく」

ジネット「こうやって見ると、この街にも魔法のような素敵な力がたくさんあるんですね」

ヤシロ「『素敵な』?」

エステラ「まぁ、素敵なんじゃないかな。ボクたちには真似の出来ないことだしね」

ジネット「もしかしたら、『しんかんせん』という乗り物が四十二区を走る日が来るかもしれませんね、いつか」

ヤシロ「この街の、『魔法のような力』を使って、か?」

ウェンディ「英雄様ぁ!(『ぴっかー!』)」

メドラ「ダ~リン!(『ぴょこん!』)」

(窓の外で)シラハ「ほらほら、こっちよ、うふふふ~(『すい~!』)」

マグダ「……Iカップ」

ヤシロ「――うん。ないな」

ジネット「ふぇっ!? そんなきっぱりと」

エステラ「……っていうか、マグダ…………何言ってんの?」

ヤシロ「ま、この街はこの街なりの進化と発展を遂げればいいさ」

ジネット「そうですね。少しずつ未来へ進んでいくのも楽しいですよね」

ヤシロ「ただ、おっぱいがIカップになる魔法だけは、みんな覚えればいいと思う!」

ジネット「これは魔法じゃないですよ!? もう、懺悔してください!」



――科学って、改めて凄いですね。新幹線とか、もはや『高速移動魔法』みたいなものだと思います。



次回もよろしくお願いいたします。

宮地拓海

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