186話 キツネvsキツネ
ニュータウンに、立派な柱が聳え立っていた。
電柱を一回り大きくしたような太さの、安定感のある柱。
丸太を一本ドンと突き刺したのではなく、いくつかのパーツを組み合わせて強度を保ってあるのがハッキリと分かる。まさに建造物。
アスレチックに置いておけば、わんぱく小僧がこぞって昇り始めそうだ。
「想像以上の出来だな」
「ホントッスか!? ヤシロさんにそう言ってもらえると自信持てるッス!」
いや、俺よりも技術のあるヤツが俺の言葉に一喜一憂すんじゃねぇよ。建築に関してはただ知識のある素人レベルなんだぞ、俺は。
「見た目だけじゃなくて、性能もしっかり見ておくれな」
早朝の光が朝露を反射させ水分を多く含んだ朝の空気がきらきらと輝く中、ノーマがゆったりとした歩調で柱の陰から姿を現した。
妖艶な衣裳とけだるげな表情は、ご出勤明けの夜のお姉さんを彷彿とさせる。
「お勤めご苦労様です」
「……なんか、違う意味を含んでる気がするさね、その労いの言葉」
実際、ノーマも滑車部の取り付けやら動作確認、メンテナンス等で共に作業をしていたのだろう。
目を凝らせば、あちらこちらに大工と金物ギルドのマッチョたちが転がっている。
死屍累々。
トドのハーレムに迷い込んだ気分だな。
「大将二人以外は全滅か?」
「この女が無茶させたせいなんッスよ」
「はぁ!? バカをお言いでないさね! あんたが急かしたんじゃないかぃ!」
「オイラたちはあと三日くらい工期に余裕を持ってたッスよ! それを急げ急げって……」
「ウチの金物を急かしておいて、自分たちだけダラダラしようというその根性が気に入らないんさよ!」
「別に急かしてないッスよ! ……ったく、ヤシロさんが絡むと必要以上に張り切るッスから」
「は、はぁ!? な、何言ってんさね、このキツネは!? バ、バカも休み休みお言いな! ……別に、ヤシロに褒められたいとか、アタシは…………あ、あんたこそ、いいカッコしようと設計図にない意匠をあっちこっちに施すから余計な時間がかかったんさよ!」
「建築にデザインは必要なんッスよ!」
「はーい、そこまで! ケンカすんなよ、お前ら」
「「そもそも、こいつんとこの下っ端がひ弱過ぎるのがいけないんッスよ!」さよ!」
……あぁ、うん。お前ら二人が無茶させたんだってことがよく分かったよ、今の発言で。
ほどほどにしとけよ。高い技術を持つドM職人って、お前らくらいしかいないんだからな。
あとはジネットくらいのもんだ。
「お前らの部下じゃなくてホントよかった」
「な、なんでさねっ? ヤシロがウチに来てくれるんなら、ちゃんと優遇してあげるっさよっ?」
「オイラんとこなら、役職をあげるッスよ」
「卑怯さよ、大工キツネ! そんならウチはギルド長に推薦するさね!」
「どっちが卑怯なんッスか!?」
「ケンカやめい!」
どっちにも行かねぇよ! ……俺は適度に休みたい派なんだよ。お前らのバイタリティには付いていけん。
しかし、こいつらはなんでこう仲が悪いのか……同族嫌悪なのかねぇ。
ウーマロがマグダ以外で顔を見て話せる唯一の女。美人でボインなのに一切緊張しないあたり、本当に興味がないんだな。美人でボインなのに……未発達に夢中なクセに。
「この犯罪者」
「唐突に酷いレッテル貼られたッス!?」
「普通の男は、徹夜明けで注意力が散漫になっているノーマの胸元に『ちらり』を期待くらいするもんだ」
「ヤシロ……あんたも十分犯罪者さね」
ささっと胸元を正し、ノーマが煙管を取り出す。
……ちっ。もうちょっとで何かがこんにちはしそうだったのに。
キツネ人族の職人を二人従えて、とどけ~る1号の前へと移動する。
改めて見上げるとかなりデカい。
手で押したくらいじゃびくともしない。全力キックも跳ね返されるだろう。
「マグダが本気を出せば倒せるか……」
「なんで倒そうとしてるんッスか!? マグダたんとかデリアさんあたりがその気になったら倒せちゃうッスから、冗談でもそういうこと言わないでほしいッス!」
あぁ、確かに。デリアなら「んじゃ、ちょっと試してみるか(ばきー!)」とかしそうだな。
「滝からは少し離したんだな」
「はいッス。マーゥルさんがそうしてくれって言ったんッス」
「マーゥルが? 来たのか?」
「いや、昨日の内にヤンボルドとグーズーヤをマーゥルさんのところへ送ったんッス。あとは、とどけ~る1号と同じ発想で手紙でやり取りしたんッスよ」
上から長いロープをたらし、そこに桶をくくりつけて、手紙で情報伝達を行ったらしい。
マーゥルが位置をずらしてくれと要求してきたのは…………手紙を取りに行きやすい場所へ変更したか……より見つかり難い場所へ誘導したか……滝を利用する際に邪魔にならない場所へ避けたか…………三番目っぽいな。要するに、ゆくゆくは滝に水車を作ろうと目論んでいるってわけだ。
欲しい物は全部手に入れようとするマーゥルっぽい発想だな。
ニュータウンの崖側は、落石の心配もあるために住宅は建てられていない。
この辺りは自然のまま残っている。当然、手入れはされているが。
だから、横にずらす分にはなんの問題もなかった。
崖側にあるのは、ハムっ子たちが掘った大きな洞窟と、滝、そしてとどけ~る1号だ。
……四十二区が、二十九区に侵食していってるみたいだな、まるで。
「今もヤンボルドたちが上で待機してるッスから、動作確認を一緒にしてほしいんッスよ」
とどけ~る1号が、きちんと荷物を届けられるのか、それをテストしようってわけだ。
しかし……
「一昨日、地質調査したばかりじゃねぇか……なんでもう出来てんだよ」
「いや、だからッスね、このキツネ女が……」
「アタシに対抗して張り切ってたんはあんたら大工さね」
要するに、こいつらトップ二人が張り合ったせいでどんどん仕事が進んじまったわけか。
おそらくこんな感じだろう……
「あとはあのキツネ女のパーツが出来るのを待つだけッス~」
「滑車ならもうとっくに出来てるさね。早く柱を建てて試験させておくれな」
「柱なんかすぐ建つッス! ほら、もう建ったッス! もうすでに滑車待ちッス!」
「滑車の取り付けなんかすぐ終わるさね! というか、この柱、耐久性は平気なんかぃねぇ、こんな突貫で」
「突貫じゃないッス! ウチの連中はこれくらい余裕で出来るッス!」
「ウチの男衆の方が、もっと働けるさよ!」
「ウチが!」
「ウチこそが!」
……なんてな。
おそらくそう大きく外れてはいないだろう。
大工と金物屋……ご苦労だったなぁ。今度陽だまり亭で大盛りサービスしてやるよ。
「マーゥルんとこにはヤンボルドとグーズーヤが行ってるんだよな? 滑車の不具合とかは誰が見るんだ?」
「安心おしな。ウチからゴンスケも出してるからねぇ。大工だけじゃ頼りないからさぁ」
「…………誰だよ、ゴンスケ。初耳だよ」
「何度も会ってんじゃないかさ。陽だまり亭を占拠したゴロツキを追い出した時とか」
「あの時は何人もいたからなぁ……」
「ほれ、あいつさね。ケツアゴで、顔の下半分がヒゲで青~くなってて、ムッキムッキなのにくねくねしたしゃべり方するオッサンさね」
「お前んとこ、そんな男ばっかじゃねぇか! 九分九厘そんなんだろうが!」
とりあえず、わざわざ名前を覚えてやる必要もないので、これ以上無駄なことに脳を使うのはやめておく。
「で、そのアゴスケは頼りになるのか?」
「ゴンスケさね!」
どっちでもいいんだ、名前なんて。
ムキムキオネェその1だろ、結局。
「ゴンスケの腕はピカイチさね。それに、見極める目も持ってるから、信用していいさよ。アタシが太鼓判を押してやるさね」
「えらく信用してんだな」
「重要な仕事の時は、よく相槌を頼んだりしてるからねぇ」
「つまりアレか、ノーマの『右乳』なんだな」
「『右腕』さね! いやさよ、乳にあんなケツアゴついてたら!」
ま、そりゃそうだ。
「んじゃあ、早速試してみるさね」
「オイラが手紙を用意しておいたッスから、これを上まで運ぶッス」
ウーマロがいくつかのチェック項目の書かれた紙を取り出す。
稼働性、耐久性、先端の揺れ、異音の有無、などなど……
荷物を送る際に何か異変がなかったかを上の連中にチェックさせるようだ。
「一応、上の連中に合図を送っておくッス」
と、ウーマロが指笛を鳴らす。
鼓膜を刺激するような甲高い音が鳴り響く。
「上手いな」
「へ? こんなんで褒めてくれるッスか!? なんなら教えてあげるッスよ!」
「いや、それはいらんけど」
なんだろう。俺が褒めるのはそんなに珍しいことなのだろうか。
ウーマロが気持ち悪いくらいににやにやして、ノーマが腹立たしげにそれを見ている。
ほどなくして、遥か上空から角笛みたいな野太い音が返ってきた。
あぁ……なんとなくヤンボルドが出しそうな音だな。
こいつらは、普段からこんな風に合図を送り合ったりしているんだろうか。妙に手慣れている。
「さぁ、ヤシロさん。試しにやってみてッス」
「えぇ……俺が?」
荷台の役割を果たす木箱に手紙を入れて、ウーマロが俺に振ってくる。
だが、この高さを見てしまうと…………正直、面倒くさい。
なにせ、ロープをひたすら引っ張って20メートル以上も荷物を持ち上げるのだ。
腕がパンパンになりそうだな。
「四つの滑車と錘で、簡単に動かせるようになってるさね。いいから試しておくれな」
妙に自信満々なノーマ。
まぁ、試すけどさ。疲れたら代わってもらうし。
と、ロープを引っ張ってみると……
「軽っ!?」
想像以上に軽く、しかもちょっと引っ張っただけで木箱はぐんぐん上昇していった。
ノーマが自信満々なわけだ。これは誰かに自慢したくなる技術だな。
「陽だまり亭の井戸にも、この装置を利用してもらいたいくらいだな」
毎日毎日、トイレ用の水を屋根の上のタンクへと汲み上げているのだ。
アレがかなり重くて相当きつい。……最近は俺がやらされる頻度が上がってるしな。力仕事はマグダがやればいいのに……俺みたいなか弱い男子に重労働を課しやがって…………ったく。
「一回、わざと手を離してみとくれな」
これまた自慢げにノーマが言う。
ロープから手を離してみるも、荷物は落下することなくきっちりとブレーキがかかっている。
勢いよくロープを引き、荷物が上昇している最中に手を離してみても、しっかりとブレーキがかかり、荷物はその場にとどまった。揺れも少なく、アレなら液体でも零さず運べそうだ。
「大したもんだな」
「金属の歯車だと、噛み合う時にどうしても衝撃が生まれちまうんさよ。だから、魔獣のアキレス腱を使って柔軟性を持たせたんさよ! それから、滑車の溝には魔獣の革を張って摩擦を上げつつも摩耗を防ぐ細工を……」
と、ノーマの得意顔から次々と言葉が溢れ出してくる。
今回の装置に取り入れたギミックを余すことなく聞いてほしい。そんな思いがにじみ出している。
話を聞けば、なるほどと納得するような肌理の細やかな配慮がそこかしこにちりばめられているらしい。
……ただ、そのドヤ顔はあまり人に見せない方がいいぞ。ちょっとアホっぽいから。
「……というわけで、こいつは女でも子供でも死にかけの爺さんでも、簡単に荷物を上まで運ぶことが出来るんさよ! 嘘だと思うなら、試しに死にかけの爺さんでも連れてきておくれな!」
「いや、こんなところで天寿を全うされても困るだろうに」
ノーマは、技術があるのに、ちょっと残念な娘なのだ。
褒められたくて仕方がないらしい。耳としっぽがわっさわっさ動いて、珍しく感情が露わになっている。いつものすました表情からは想像も出来ない顔だな。
「さすがノーマだ。お前に頼んでよかったよ。おかげで随分楽に運搬出来るようになった」
「むはぁ~………………っ! それほどでもないさねっ。これくらいっ。ん~…………むふん!」
凄く嬉しそうだ。
なんか、すまし顔を作ろうとして盛大に失敗してるし、むにむに身もだえてるし。
褒められ慣れてないんだろうなぁ。
「まっ、オイラたちの土台がしっかりしているからこそ成し得た装置ッスけどね!」
「張り合うなよ……お前らも十分凄いから」
まったく、この二人は………………一緒に仕事をさせ続ければ、どんどん高度な技術を生み出してくれるんじゃないだろうか。うん、なんかそんな気がしてきた。
ライバル意識の強い者同士を一緒にすると、切磋琢磨がとどまらないのかもしれないな。
「アタシらの技術のおかげでいい仕事が出来たんさ、感謝するんさね」
「装置にこだわり過ぎて重量オーバーしたくせによく言うッスよ! オイラたちが設計を変更してなきゃ搭載すら出来なかったんッスからね!」
「はいはい。もうそこら辺にしとけ。どっちも凄いから」
「あ~、日が出てきたら少し暑くなってきたさねぇ……」
「って! さり気なく服をはだけさせて胸元強調するなッス!」
「ノーマのおかげで素晴らしいものが出来たZE!」
「そしてヤシロさんもあっさり釣られ過ぎッスよ!?」
バッカお前、ウーマロ。顧客満足度ってのは、サービス面での影響が凄く大きいんだぞ。
そんなもん、ノーマの勝ちに決まってんだぞ。いやむしろ、谷間の勝ちだ!
「さぁ、たにーま1号のテストを続けるぞ」
「とどけ~る1号ッスよ!?」
そんなもん、どっちだって似たようなものじゃないか。いやむしろ、たにーま1号の方が愛着が持てるというものだ。改名を検討しようかな……
そんな重大議案を胸に抱えながら、再びロープを引き下げる。
ほとんど力を入れることもなく、面白いようにするすると木箱が上がっていく。
一辺が1メートル四方の巨大な木箱は、きっとそれだけでかなりの重さがあるだろうに。
手紙一つを送るにはかなり大袈裟な入れ物ではあるが、空の状態で落下させることを考えると、ある一定の重さは必要なのだとか。
俺はそこまで細かく計算してはいなかったのだが、これだけ少ない力で持ち上げられるようにしようとすれば、相当複雑な計算が必要だっただろう。
キツネ人族は、思っている以上に頭の回る人種なのかもしれないな。
などと考えていると、崖の上で『ジリリリッ!』とベルの音が響き、ロープがロックされたように動かなくなった。
「思ってたより時間がかかるッスね」
「そうさね。ヤシロでこんなにかかるとなると、ハムっ子たちには荷が重いかもしれないさねぇ」
いやいや、十分だろ。
俺が想定していた労力の十分の一程度も疲れなかったぞ。
っていうか。
「ハムっ子たちにやらせる気なのか?」
「ん? そのつもりなんじゃないんかい?」
「いや、まぁ……そのつもりだったけど」
当番制にして、荷物を送ったり、送られてきた荷物を届けたりということをしてもらうつもりだった。無論、エステラに了承は取ってある。
……が。
「俺って、ハムっ子たちをこき使ってるイメージあるのかな?」
ウーマロとノーマには運営方法までは話していない。
にもかかわらず、俺が新しいことを始めるとハムっ子を労力に使うはずと思われていたようだ。
いかんな。ハムっ子たちが文句一つ言わずになんでもやってくれるから、ちょっと安く使い過ぎているのかもしれない。
「いえ、というかッスね……」
ウーマロが無言で、伸ばした指をす~っと横へスライドさせる。――と、その先には、キラキラした瞳でこちらを見つめるハムっ子軍団が待ち構えていた。
「すでにやる気満々なんッスよ、あいつら」
「……あいつらも、身の安売りし過ぎだよな、うん」
すげぇ楽しそうだから、まぁいいか。
「それで、使ってみた感想はどうッスか?」
「これから徐々に改良していくから、忌憚のない意見を聞きたいさね」
「いや、これで十分だよ。あとは使ったヤツの意見でも聞いてやってくれ」
そもそも、マーゥルとの連絡用にしか使わないものだ。
それなりの性能があれば十分に事足りる。
「あ、返事が来たッスよ」
ウーマロの言葉に頭上を見上げると、スーッと電動かというようなスムーズな動きで木箱が下降してくる。
いや、恐れ入ったよ、このスムーズな動き。
かと思いきや、着地間際になって「ガコンッ、ガコンッ!」と、木箱が激しく暴れ始めた。
「何やってんッスか!?」
「お、おかしいさね!? こんなはずじゃ……!」
慌てて駆け寄り、木箱をキャッチするノーマとウーマロ。
ノーマはすぐさま柱の裏側に回り、制御盤的な何かを検査している。覗き込んだら、大小様々な歯車がかっちり噛み合っていた。かなり複雑な作りになっているっぽいな。
「歯車の精度が悪いんじゃないッスか?」
「そ、そんなはずないさね! この歯車は、ヤシロにも褒められたヤツさよ!」
ちょいちょいと、金物の精度を見てくれとノーマは俺のもとへやって来る。
最初はハサミみたいな単純ながらも精度を上げるのが難しい物で、最近はこういう歯車にまで進化していた。
歯車は、歯の形状や間隔が均等でないと役に立たない、非常に難しいパーツだ。
最近、ノーマの歯車はかなりの精度を誇るようになっており、俺も一目置いていたところだ。
……けどまぁ、失敗もあるわな、そりゃ。
「調子に乗って作業を疎かにしたんじゃないんッスか?」
「そんなことないさね!」
「まぁ、歯車は難しいからな。たまにはこういうこともあるだろうよ」
「ほら! ヤシロもこう言ってるさよ!」
「ヤシロさんがそう言うなら……そういうもんなんッスねぇ」
いや、だからなんなの、俺へのこの信頼?
機械工作の神か何かだとでも思ってるのか?
「おにーちゃーん! お手紙入ってたー!」
こっちが整備の話をしている間に、ハムっ子たちが木箱を勝手に開けて中身を持ってきた。
……もう自分たちの仕事のつもりでいやがるな。気の早いお子様たちだ。
「何か送り返すー!」
「一人二人乗り込んで、一緒に送るー!」
「人は乗せちゃダメだぞ」
『BU』には通行税という制度がある。
荷物を持っていないとはいえ、許可されたルート以外から区内へ侵入すれば心象が悪くなる。最悪、密輸入を疑われても文句は言えない。
人の行き来は、領主間の合意が行われるまで控えるべきだ。
「人はダメだってー!」
「残念ー!」
「乗りたかったー!」
「人権保有者は不許可ー!」
「なら人権放棄するー!」
「今日から名実ともにお荷物ー!」
「「「ぅわ~い! それは名案やー!」」」
「こらこらこらっ!」
新しいオモチャで遊びたいがために人権を放棄するんじゃない!
……つか、オモチャじゃねぇから!
「「「みんなでガッコンガッコンしたかったー」」」
「ガッコンガッコンはすぐ直すさよ!」
「「「えぇー! ぶーぶー!」」」
「ぶーぶー言うんじゃないさね!」
「「「めぇええええっ!」」」
「なんでヒツジさね!?」
あぁ……ヤンボルドの悪ふざけがハムっ子に感染している……いや、伝承か?
「なんでヒツジだ」のくだりに、すげぇ既視感があるよ、俺は。
それはそうと、上から手紙が返ってきているようなので、そいつに目を通してみる。
「あれ?」
手紙は、二通あった。
一つは、ウーマロが送りつけたチェック項目の入った紙。
そしてもう一通は……
「毒々しいまでにハートマークの飛び交った封筒ッスね……」
「俺宛てじゃありませんように俺宛てじゃありませんように俺宛てじゃありませんように……」
「残念ッス。思いっきり『ヤシぴっぴへ』って書いてあるッス」
「ほぉ~、ウーマロお前『ヤシぴっぴ』なんて呼ばれることがあるのかぁ」
「確実にヤシロさんのことッスよね!? オイラに擦りつけようとしても無理があるッスからね!」
ちっ……。
マーゥルから、俺宛ての手紙だった。
この毒々しいまでのハート飛び交う封筒は、一種のお茶目なのだろう。
……俺の感覚では『嫌がらせ』に該当するけどな。
しくしくと痛む心臓をなんとか抑えつけ、封を切る。
中には、これまた毒々しいまでに可愛らしい便箋が入っており、そんな可愛らしさを帳消しにするような達筆な文字が筆で書かれていた。
『ヤシぴっぴ。無事、トレーシーちゃんとは会えたかしら? どう? いい娘でしょう? 私と趣味が似ているから、きっとヤシぴっぴとも話が合うと思うわ。少し難しい娘だけれど、とてもいい娘よ。面倒を見てあげてね』
……そういや、マーゥルがトレーシーとは「趣味が似ている」と言っていたが……その趣味ってのは、アレか? 四十二区マニアとか、そういうことか?
確かに、どっちも四十二区ウォッチングとか好きそうだけどな。目的こそ違うんだろうが。
俺たちが接触しやすいというようなことも言っていたし、まぁ、そういうことなんだろう。
『それと、素敵な出会いをありがとうね。彼、アッスント君。話の分かる、とても頭のいい子だわ。ソラマメの流通が大きく変わるかもしれないわね。その点も、惜しみない感謝を込めておくわね』
……アッスント君って。
あのアッスントが「いい子」扱いとか……どんだけ器デカいんだよ、あのオバサンは。
まぁ、あえて「オバサン」ぶることで、有利な立ち位置に立とうとしてるんだろうが……アッスントですら手を焼く相手かもしれないな、アレは。
『あの頑固な麹職人を口説き落とすなんて、なかなかの手腕よ。ヤシぴっぴ、素敵なお友達がいるのね。羨ましいわ』
はっはっはっ、面白い冗談だ。俺とアッスントが友達なんてな、はっはっはっ……けっ。
『もし、ヤシぴっぴも麹職人に会う気があるなら、二十四区の領主に手紙を書いてあげるわ。いつでも言ってね。あ、でも心配しないで、それを恩に着せるつもりはないの。これは、豆板醤のお礼。それが完成すれば、二十九区のソラマメの需要は飛躍的に上がるもの。手紙くらいいくらでも書くわ。感謝しているの。本当よ』
なんでかな……マーゥルに言われると、すげぇ胡散臭い。
乾いた笑いが自然と零れる中、先を読み進めると――
『任せて。二十四区の領主とは昔ちょっといろいろあったから、少しのわがままくらいは聞いてもらえるわ、きっと』
――そんな、不穏なことが書かれていた。
……何があったんだよ。聞きたくもねぇけど。
「とりあえず……エステラに相談するか」
二十四区の領主。そして、麹職人。この二人に会いに行く。
マーゥルの手紙から察するに、麹職人は二十四区にいるのだろう。確か、二十四区は大豆で儲けている区だったはずだから……なるほどな、味噌を生み出した区ってわけだ。
「こらー! あんたたち! メンテしてんだから、木箱に乗るんじゃないさねっ!」
怒声が飛び、そちらへ目をやると……
「上へまいりま~す!」
「「まいられよー!」」
ハムっ子が数人、木箱に乗り込んでわくわくした顔をさらしていた。……遊ぶなっつぅの。
「お~い、ヤシロー!」
そろそろ戻ろうかという段になって、エステラがトレーシーを伴ってやって来た。
何やってんだ、あいつは? トレーシーから目を離すわけにはいかないからって陽だまり亭に残ったくせに。
「へぇ! これがとどけ~る1号かい? 立派なもんだねぇ!」
四十二区の新施設に瞳をキラキラさせるエステラ。
隣でトレーシーもぽかーんと口を開けて見上げている。
「何かトラブルでもあったのかい? ノーマが凄く焦ってるけど」
「あぁ、ちょっと着地の時の動作が不安定でな」
「どれ。ボクがちょっと見てあげよう!」
腕まくりをしてしゃしゃり出て行くエステラ。……いや、ノーマが苦戦するようなもんに、お前が首突っ込んだところでだな……
だが、折角なので、この隙にトレーシーに確認しておく。
「エステラ。『見に行きたいな~』オーラでも出まくってたのか?」
「はい。それはもう」
愛おしそうにエステラを見つめ、その時の様子を思い出しているのか頬をほんのりと染めるトレーシー。
ここまでの道のりも、ちょっとしたデート気分だったことだろう。
「エステラ様は私から目を離せないと思いましたので、ご一緒しませんかと、勇気を出してお誘いしたんですっ!」
「そんな、勇気とか……デートに誘うわけでもないだろうに」
「は? デートでしたけど?」
怖いっ! なんか顔がすげぇ怖い!
思い出を踏みにじられた人の殺意を感じる。
「『結婚式』が行われた教会への道は、カップルで訪れたいデートスポットナンバーワンなんですよ」
またにっこりと微笑みを浮かべて、どこ調べかも定かではない情報を俺に寄越してくる。
その結婚式のアレコレで、今おたくの『BU』とトラブってんだけどな。
「あぁ……素敵な時間でした…………結婚を前提とした、初デート」
重っ!?
ちょっとしたデート気分どころじゃなかった!?
お見合いパーティーばりに真剣だったのか、こいつは!?
「それにしても…………壮絶ですね、ここは」
周りに転がっている筋肉の塊たちを睥睨し、トレーシーが頬を引き攣らせる。
こんな見苦しい光景はそうそう見られないからな。さぞ、精神を蝕んでいることだろう、可哀想に。
「まぁ、突然動き出したりはしないから、踏まないようにだけ気を付けておけばいいよ」
踏むと、靴が汚れるし、中には喜んじゃうヤツもいるからな。
「ヤシロー、ちょっと来てくれるかい?」
ノーマの隣でこちらに向かって手を振るエステラ。
……だから言わんこっちゃない。分からないことに首を突っ込んで、他人を巻き込むんじゃねぇよ。俺にも分かんねぇぞ、たぶん。
「エ、エステラ様がこちらに手をっ! ……ごふっ!」
「いや、……あいつ俺に手を振ってんだよ」
「おこぼれでも十分です、私は……」
「おこぼれで鼻血噴いてたら、血液すぐなくなるぞ……いいから、拭け。な?」
高そうなハンカチで鼻を押さえながら、なんでか幸せそうなトレーシーを伴って、エステラのもとへと向かう。
木箱は2メートルほど持ち上げられている。動きでも調べているのだろう。
「ねぇ、どの歯車が悪いの?」
「そんなもん、見ただけで分かるかよ」
一目で数ミクロンの歪みが判別出来るビックリ人間じゃねぇんだよ、俺は。
数百年生きる伝説の刀鍛冶師――とかなら、それくらいの芸当をやってのけるのかもしれないけどな。
「こりゃ、歯車を一つ一つ交換していくしかなさそうさね……はぁ……」
一個ずつ交換していけば、いつか悪い歯車に当たる。
だが、そのためにはすべての歯車をもう一個ずつ作らなければいけない。
ノーマの肩が自然と落ちる。……おっぱい、ぷるん。
「人が落ち込んでる時に、どこ見てるさね? ……手伝わせるさよ?」
胸元を押さえて、ノーマが憎々しげに視線を寄越してくる。
こんな拗ねた反応は珍しい。思わず手を差し伸べてやりたくなるような破壊力じゃないか。
「まぁ、手伝いくらいはしてやるよ」
「ホントさね!? 絶対さよ!? 男に二言はないさね!」
なんか……すげぇ喜ばれた。
「それじゃあ、木箱を一回降ろすさね」
そう言って、歯車に直結したレバーを操作する。……と、するする~っと木箱が下降してくる。
ゆったり降りてくる木箱を、興味深そうに眺めるエステラとトレーシー。
しかし、地面に着きそうになった時、「ガッコンガッコン!」と激しく暴れ狂う木箱に「びくっ!」と揃って肩を揺らす。
トレーシーなんか、突然の暴走に驚き過ぎて「きゃあ!」なんて可愛い悲鳴を上げて体をのけぞらせていた。
そして、そんな動作をすれば、あまりにも大きな物体を無理矢理押さえ込んでいる布に必要以上の負荷を与えることとなり――
ばっいいぃぃぃぃぃぃんっ!
と、サラシを突き破って目覚めたドラゴンが首をもたげるように二つの膨らみが出現した。
その驚きの光景に、辺り一面で倒れ伏していた筋肉の塊どもが敏感に反応を示し――
「「「「「イリューゥゥゥゥゥゥジョォォォォォォーーーンッ!」」」」」
一斉に体を起こした。
さながら、ハロウィンに墓場の下のゾンビが一斉に地上へ這い出してきたかのような光景だ。
じゃあなんだ、トレーシーはネクロマンサーで、あのおっぱいはネクロノミコンか?
大きなおっぱいには魔法が宿るんだね!?
「さぁ、陽だまり亭期間限定アルバイトのトレーシー。仕事に戻るんだ」
「「「「「棟梁! 俺たち、お腹がぺこぺこなので、陽だまり亭に行ってきますっ!」」」」」
うむ。
これでもうひと儲けが出来そうだ。
ただまぁ、大したもので……金物屋の筋肉たちは、一切反応を示さなかったな、ネクロノミコンに。
「うぅ……オオバヤシロさん……『突然動き出さない』って言ったのに……」
いや、そこはほら、状況が変わったからさ。
お前が魔法を使うから、男たちのHPが回復しちまったんだよ。
エステラには、生涯使えないであろう魔法をな。
様々な懸案事項を抱えつつも一応の完成を見たとどけ~る1号。
アッスントは無事マーゥルに会えたようで、ソラマメの流通もスムーズになるだろう。
そうそう、マーゥルの手紙の最後に書かれていた追伸に、俺は少しだけホッとしていた。
『追伸。ソラマメの流通の話が持ち上がって、少しの間だけど二十九区の領主はその対応に追われると思うわ』
ほんの少しだけ時間が稼げた。
『BU』への損害賠償を払うか、突っぱねるか……その決断を迫られる日がほんの少し遠のいたということだ。
その間に、二十四区の領主と麹職人に会いに行けと、そういうことなのだろう。
やらなきゃいけないことが多過ぎるが、反面時間はなさ過ぎる。
今は、マーゥルの厚意を甘んじて受けておいてやろう。……たとえそれが、マーゥルの手の上で踊らされている状況だとしても、な。
ご来訪ありがとうございます!
また、言っちゃいますよ~……
レビューをいただきましたっ!!
お名前が一緒なので、Twitterでお世話になっている方、ですかね?
[2016年 12月 03日 09時 31分]の方! ……からのレビューかと思いきや、まさかのハム摩呂!?
衝撃的な展開を迎えるこのレビュー。さながら、よく映画である、「ラスト3分であなたは驚愕する」的な作りですね!
掛け合いも軽妙で、ご存知の方にはほっこり和める、ご存じない方には本作の雰囲気を感じていただける、万人受けする書き口で読んでいて楽しくなりました。
あと、さりげに「あ、この話あとがき長いんだ」と、一見さんにも感じ取ってもらえるので、「あとがき長ぇ!?」と驚かれることも減る、かも?
読み手を楽しませようという心遣いの見える、あたたかいレビューでした。ありがとうございますっ!
というわけで、
これでレビューが52件になりましたっ!!
…………アレッ!?Σ(゜д゜;)
えぇ、そうなんです。お一人、旅立たれた方が……なにか、やんごとなき理由があったのでしょう。何も言わず、見送ってあげましょう。
今まで置いといてくれてありがとうございましたっ! ……くぅ(>_<。)
というわけで、また気持ちを新たに、前向きでいきますっ!
前のめりで!
前かがみでっ!
前かがみになったTシャツの無防備な首周りっていいですよね……
た、谷間が……っ!
よし、前かがみで行きましょう! 時代は前かがみですよ、皆様!!
というわけで、本編の話もいくつかさせていただきたいと思います。
ノーマの作ったものについて――
「金属の歯車だと、噛み合う時にどうしても衝撃が生まれちまうんさよ。だから、魔獣のアキレス腱を使って柔軟性を持たせたんさよ! それから、滑車の溝には魔獣の革を張って摩擦を上げつつも摩耗を防ぐ細工を……」
――みたいなことを言っておりましたが、
アキレス腱で歯車を作ったわけではなく、金属の歯車が噛み合う際の衝撃を緩和するためにアキレス腱を利用している、ということです。
どんなふうに使ったのかといえば……まぁ、なんかいい感じに、です。
というわけで、キツネ同盟による共同作業でした。
電動アシスト付き自転車みたいな機能の付いた滑車の誕生です。
四十二区最新の建造物は、ちょっとしたハイテクとなりました。
着地時の「ガッコンガッコン」はご愛嬌です。
ですので、
木箱におっぱいをつけておけば、着地する度に「ぷるんぷるんっ!」と…………よし、その案採用!
……採用、されないですかねぇ。
さて、「おっぱいぷるん!」といえば、
ついに、
『異世界詐欺師のなんちゃって経営術3』が発売されました!
もう全国に行きわたりましたでしょうか?
「無かった!」なんてお声もちらほらと耳に届いております。
……申し訳ありません。ちょっと大きめの本屋さんでないと置いてないかもしれません。
ちなみに、最寄駅前の本屋さんでは、発売日翌日には平積みから棚置きへ移動させられていました。……悲しい。残り三冊でした。
こちらと、重版分の1巻は、フェア対象作品となっております。
応募券を集めている方で、迷っている方は是非この機会にゲットしてください!!
今、全プレ企画とか、やってますので!
そうです! そうなのです!
発売と同時にTwitter全プレ企画も始まっております。
すでにご参加いただいた皆様、ありがとうございます。
プレゼントダウンロードURLは、もう少ししたら順次お送りいたします。
もうしばらくお待ちください。
そして、まだ参加してないよ~という方、
是非ご参加くださいませ!
参加方法と、どんなものがもらえるかは、活動報告をご覧ください!
動画へのリンクも貼ってありますので!
http://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/489881/blogkey/1573601/
動画、もうご覧いただけましたでしょうか?
先日配信された『なますに!』にて、こちらの動画を宣伝していただきました。
……その前に、作家大喜利とかいう、心臓と胃袋を摩耗させる企画があったりしたのですが…………大喜利の解答を送った直後の編集様からのメールに――
編集様「大喜利って、難しいですよね……」
――って書いてありまして……
「『……』って書いてある!? 意味深!?」と、絶対没になると確信していたのですが、……読まれまして、結果、ややウケ。
まぁ、ほっとしました。MC様に助けられた感じです。ありがたい。
と、そんなこんなの賑やかな配信の後半戦で、Twitter全プレ企画を紹介していただきました。
毎度毎度お仕事を増やしてしまって申し訳ない。
にもかかわらず、いつも笑顔で対応してくださる編集様には感謝の気持ちでいっぱいです。
もう、お尻を向けて寝られません。……あ、足でしたっけ? じゃあ、お尻を向けるのはセーフ? ん? アウトっぽいですか? じゃあ、やめておきます。
そんな『なますに!』で、(いえ、お尻を向けるような『なますに!』という意味ではないですよ)
Twitter全プレ企画のCM動画を流していただきました。
一部の方で、「タイムシフト試聴で見られなかった」という方がいたようですが、
ご覧になれましたかね?
もし、見られなかった方は、Youtubeにアップしておりますので、いつでもご覧いただけますよ。
なかなか楽しい出来になっていると思います。なってます、よね?
動画はもちろん、使用しているBGMもお手製だったりします!(著作権も安心!)
プレゼント内容も気合い入っております! 活動報告にサンプルとかありますので、チラッと見ていただいて、「よさげっ!」と思われたのであれば、是非Twitter全プレ企画へご参加いただき、ゲットしてくださいませ!
一人でも多くの方に参加していただきたくて、いろいろ気合い入れて頑張りましたよっ!
これまでは「いや、別にそこまでは……」とスルーしてきた方にも、是非おすすめしたい一品です!
『なますに!』内で、作曲も宮地がしたという話が出た時に、
「風邪引いても自分で薬作りそう」的なコメントが入ったのが面白かったです。
薬剤師か!? と。
そういえば、私の前作『薬剤師協会の治験者募集案内』のあとがきにも書いたのですが、
職場の方に「宮地ってどんなイメージ?」と伺ったところ、
中にお一人、
「なんか、庭で怪しい草とか育ててそう」と答えられた方がおりまして…………安定の謎の人物認識!
なるほど、野生の薬剤師に見えているっぽいですね。では、今後もそんな感じでいきましょう。
そうそう、作曲とか言うと物凄いことのように思われる方もいるかもしれませんが、
私の場合はそんな大したものではなくて、ギターでコード(和音です。ド・ミ・ソの和音で『Cコード』みたいなヤツです)を弾きながら、適当にメロディーを口ずさんで、それをPCで楽譜に打ち込むというシンプルな作りなのです。
ギター「♪ジャンジャカ、ジャンジャカ♪」
私「『♪パイオツ、パイオツ、カ・イ・デー! デカパイ、ペチャパイ、普通パイ~♪』よし、一曲出来た!」
こんな感じです。
ちなみに、現在Youtubeで配信しているTwitter全プレ企画のCM動画に使用されている曲には、こんな歌詞が付いております。
『♪~
パイオツ、パイオツ、カ・イ・デー
でかパイ、ぺちゃパイ、普通パイ~
パイオツ、パイオツ、カ・イ・デー
パイスラ、ぽろり、「あてている」
パイオツ、パイオツ、ナ・イ・デー
貧乳、ぺったん、えぐれパイ~
パイオツ、パイオツ、カ・イ・デー
下乳、横乳、た・に・まっ☆ 』
出始めの音符は「タ、タ、タン(8分、8分、4分)」ですので、「パ、イ、オツ」と歌詞を当て嵌めていただけると歌えるかと思います。
あと、「カ・イ・デー」はスタッカート(弾むように)をしっかりと意識すると楽しくなりますよっ☆
さぁ、レッツ・シンギング♪
――陽だまり亭
ヤシロ「よし、ロレッタ推しは中止だ!」
ロレッタ「待ってです! もうちょっと推した方が、なんとなくいい気がするです! せめて、今月いっぱいは!」
マグダ「……欲張り過ぎ」
ジネット「でも、ロレッタさんは、これまでたくさん頑張ってこられたので、ご褒美ということで、もう一ヶ月くらいいいんじゃないでしょうか?」
ロレッタ「店長さんっ! 大好きです!(抱きつきー!おっぱい『むぎゅー!』)」
ヤシロ「バカ野郎! そのおっぱいなら、俺も大好きだ!」
ジネット「懺悔してくださいっ!」
マグダ「……ヤシロ。ロレッタはおっぱいだけが好きなのではない」
ロレッタ「そうですよ!」
マグダ「……匂いフェチ」
ジネット「あ、あのっ、ロレッタさん。一旦離れていただけますか……」
ロレッタ「むぁああ!? 店長さんに変な誤解されたです!? 根も葉もないガセネタですよ!?」
マグダ「……なら、『精霊の審判』をかけるといい(ぷるぷる)」
ロレッタ「確実に嘘だから、ビビりまくってるじゃないですか!? いや、かけないですけどね!」
ヤシロ「で、この期に及んで、なんの話がしたいんだよ?」
ロレッタ「今回は、みなさんが子供の頃にしていた遊びを教えてほしいです!」
マグダ「……ヤシロは、女遊び」
ジネット「ヤシロさん、懺悔してくださいっ、ぷぅ!」
ヤシロ「とばっちりもいいとこだ!」
マグダ「……なら、『精霊の……』(がくぶる)」
ヤシロ「震えるなら、そのネタやめとけよ!?」
ロレッタ「『女遊び』というのは、『いや~ん、ヤシぴっぴ、こまっちゃう~ん!』みたいなことですか?」
ヤシロ「それ、金物ギルドの連中じゃねぇか!?」
ロレッタ「お兄ちゃんに、そんな過去が……」
ヤシロ「ねぇよ! 俺は、まぁ、だいたいファミコンしてたかなぁ……」
ジネット「『ふぁみこん』とは、どんな野菜なんですか?」
ヤシロ「お前、確実にダイコンの仲間だと思ってるだろ? なんか、いろんなゲームが出来る機械だよ」
ロレッタ「それ欲しいです! お兄ちゃん作ってです!」
ヤシロ「無理だわ!」
マグダ「……マグダはあまり遊んだ記憶がない」
ジネット「では、今度わたしが子どもの頃に遊んでいた遊びを一緒にしましょうね」
マグダ「…………マグダ、あまりおっぱいを使った遊びは、ちょっと……」
ジネット「どんな遊びだと思っているんですかっ?」
ヤシロ「ジネット! そのおっぱい遊びについて詳しくっ!」
ジネット「そんな遊びはしていません!」
ロレッタ「じゃあどんな遊びしてたです?」
ジネット「お人形遊びです!」
ロレッタ「わぁ、なんかとっても店長さんっぽいです」
ジネット「でも、お人形がなかったので、枕とかコップとかスコップとか庭の柵をお人形に見立てて遊んでいました」
ヤシロ「なにその九十九神の交霊術みたいな儀式!?」
ジネット「枕『柵さん、そんなところで何やってるの?』柵『世界の平和を、見守っているのさ』――みたいな感じです」
ヤシロ「……柵のキャラクターが、若干鼻につくな……」
ジネット「ロレッタさんはどんな遊びをしていたんですか?」
ロレッタ「ハムスター崩しです!」
ヤシロ「すげぇ危険そうな名前!?」
ロレッタ「危険じゃないですよ。ウチの弟を高く積み上げて……」
ヤシロ「危険じゃねぇか!?」
ロレッタ「怪我をしないように気を付けて……押し倒すです!」
ヤシロ「危険の極みじゃねぇか!?」
ロレッタ「大丈夫です! みんな、受け身が得意ですからっ!」
ヤシロ「逞し過ぎるだろう、お前ら姉弟!?」
ロレッタ「マグダっちょ! よかったら今度一緒にやるです?」
マグダ「……ハムスター積み上げなら」
ヤシロ「放り投げて高く高く積み上げていく気だろ!?」
ジネット「では、安全と平和のために柵さんを呼び寄せましょうか!?」
ヤシロ「呼ばんでいいわ!」
ロレッタ「みんなで何かして遊びたかったです」
ヤシロ「じゃあ、一番安全なあの遊びにしろ」
ロレッタ「どれです?」
ヤシロ「おっぱい遊び!」
ジネット「懺悔してください!」
――遊びは、怪我をしないように!
今回、あとがきめっちゃ長くなってごめんなさい。
3巻と全プレ企画と、二幕をよろしくお願いいたします!
宮地拓海




