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異世界詐欺師のなんちゃって経営術  作者: 宮地拓海
第一幕

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17話 際どい言葉

「ボ……ボナコン、だとっ!?」


 狩猟ギルドの応接室にどさりとその肉を置くと、狩猟ギルドの代表者はあからさまに表情を引き攣らせた。


 狩りを終え街へと戻ってきた俺たちは、その足で狩猟ギルドへとやって来たのだ。

 昨日の今日でもう獲物を手に入れてくるとは思っていなかったのだろう。

 狩猟ギルドの代表者は面白いくらいに狼狽えていた。


「ちゃんと証拠もあるぞ」


 これがちゃんとボナコンの肉であると証明するために、ボナコンの角を持ち帰ってきていた。

 ごとりと、重量感たっぷりのその角をテーブルに載せる。


「……こいつは…………確かに、ボナコンの角だ…………だが、しかし、そんな……」


 マグダが獲物を持って帰ってきたのがよほど信じられないようで、狩猟ギルドの代表者は何度もマグダをチラチラと見ている。

 ……っていうか、いい加減面倒くさいな。


「なぁ。お前の名前をまだ聞いてないんだが?」


 いつまでも狩猟ギルドの代表者なんて回りくどい呼び方も出来ないだろう。

 なにせ、これからは頻繁に肉を買い取ってもらわなければいけないのだからな。


「名前を教えてくれないか?」

「ウッセ、ダマレ……」

「おい! こっちは商談に来てんだぞ!? 黙れとはなんだ!? 名前くらい名乗るのが礼儀だろう!」

「だから、ウッセ・ダマレだ!」

「はぁ!?」

「俺の名だよ!」

「ウッセ・ダマレが?」

「あぁ」


 ウッセ・ダマレってことは、ダマレさん家のウッセ君か…………


「ぷぷぷ~! 変な名前っ!」

「うっせぇ! 黙れ!」

「自己紹介、乙っ!」

「今のはマジで黙れつったんだよ!」


 ややこしい男である。

 ただ、その名前が照れくさいのか、ほんのりと頬を朱に染める様は、どことなく可愛……くはないな、全く、うん。オッサンだしな。


 テーブルの上には6キロほどの肉の塊が置かれている。 

 持っていった弁当をすべてマグダに奪われた俺たちは、焚火をしてボナコンの肉を焼いて食ったのだ。

 ……マジで美味かった。

 しっかりした歯ごたえと、噛めば噛むほど溢れてくるジューシーな肉汁。

 一人1キロ程度をぺろりと平らげてしまった。

 高い肉なのに、もったいない……


 だが、それも致し方なかったのだ。

 空腹に、あの極上の肉……我慢など不可能だ。

 きっと、忠犬ハチ公でさえ『待て』を無視するレベルだぜ。

 むしろ、よくこれだけ残したと褒めてもらいたいくらいだ。


「さて、ミスターダマレ」


 俺は椅子に深く腰を掛け、脚を組む。

 尊大な態度を取ってみせ、狩猟ギルドの代表者・ウッセに向かって商談を開始する。


「いくらで買い取ってくれる?」


 ウッセは行商ギルドの買取価格と同じ額で買い取ると約束した。

 中央区の高級料理店御用達の肉だ。さぞかしいい値で買い取ってくれることだろう。

 まぁ、量は少々物足りない感じが否めないが……


「…………まさか、ボナコンを……」


 俺の質問には答えず、ウッセはぶつぶつと何かを呟いている。

 なんとも往生際の悪い男だ。

 どんなに渋ったとしても、これを買い取ってもらわない限り俺はここから退かない。

 どう転んでも、たどり着く未来は一つしかないのだ。男ならさっさと金を払って無駄な時間は省くべきだ。


 それが出来ないのが小市民の性……貧乏性というヤツだ。

「損をしたくない」という思いが胸の中に渦巻いて払拭出来ないのだ。

 そして、その感情が、己を奈落へ突き落とす危険な感情であることを知らない者は多い。


「本当にマグダが捕ったのか?」


 ほらきた。


「お前らの誰かが捕ったんじゃないのか? だとすりゃ、こりゃ密猟だ。そんなヤバイ代物は買い取れねぇな!」


 なるほど。許可証の無い者が勝手に狩りをしてはいけない……海魚漁の際、エステラはわざわざ許可証をもらっていたからな。狩りも同じなのだろう。

 だが……


「俺たちの誰がボナコンを仕留められるってんだよ?」


 見てみろよ。

 全員ひょろっひょろじゃねぇか。

 ジネットとエステラは女で、二人とも華奢な体型だ。エステラなんか悲しくなるくらいに真っ平らじゃないか。華奢……そんな言葉では誤魔化しきれないほどにな!


「こんな華奢な体でボナコンに勝てるってのか?」

「……ヤシロ。ボクの胸を指さしながら華奢とか言うの、やめてくれるかな?」


 エステラが静かに怒りのオーラを放つ。

 小さいことを気にするヤツだ……二つの意味で。


「女じゃなくて、お前が手を……」


 と、ウッセは俺の手を見て言葉を止めた。

 俺の右手には包帯が巻きつけられている。


「あいにく、俺の手は狩猟ギルドで負った怪我でこの有り様だ」

「俺らが悪いみたいに言うなよ! お前が勝手に怪我したんだろうが!」

「自業自得だろうが名誉の負傷だろうがなんでもいい。利き手がこの様では、俺に狩りは無理だ」

「く……っ」


「俺たちは手を出していない」といくら主張しようが、それを証明出来なければ「やった」「やってない」の水掛け論になってしまう。

 だが、このメンバーでは狩りが不可能なことは一目瞭然だろう。

 負傷している都会っ子、胸ばかりがご立派な食堂店主、そしてミス貧乳だ。マグダを除けばボナコンを仕留められる者など皆無。これ以上の説得力もあるまい。


「こ、こんな切れっ端じゃあ買い取れねぇな!」

「それはおかしいな」


 ミス貧乳ことエステラが落ち着いた声で反論する。


「魚でも野菜でも、『カットされていてはいけない』という条文はないはずだけれど? もちろん、獣の肉もね」


 自身も海魚を捕るようなヤツだ。行商ギルドとも取引したことがあるのだろう。

 エステラの自信たっぷりな態度に、ウッセは口を噤んだ。


「そうですね。ウチも、カットされたお野菜を購入していましたし。人参のヘタとか、虫の食った菜っ葉とか」

「ジネット。お前は黙ってろ。……なんか悲しくなるから」


 なんでそんなもんを買ってんだ……俺がギルドを作る以前に、ジネットがすでにゴミを金出して回収してんじゃねぇか。


「ミスターダマレ」


 もう一度、名を呼ぶ。

 今度は、トーンを落として、突き刺すような声で。


「いくらで買い取ってくれる?」

「く…………」


 ウッセがマグダを睨む。

「なんでウチにいる時には獲物を手に入れられないくせに他所で成果を出してんだ」というような恨みがましい視線だ。マグダ本人がその視線をさほど気に留めていない様子なのがせめてもの救いか。


「マ、マグダ」


 ウッセの顔つきが変わる。

 引き攣りながらも、必死に笑みを作ろうとしているようで、歪な笑みを浮かべる。


「やったじゃねぇか! 俺は信じていたぜ、お前はいつか成果を上げられるってな」


 なるほど、そう来たか……


「お前を奮起させるためにあんなきついことを言ったわけだが……いやぁ、よかった! 実によかった! これでお前も、立派なギルドの一員になれたってわけだ」

「元からギルドの一員だろうが」


 興が乗ってきたウッセに、水を差すように一言くれてやる。

 一瞬口ごもるが、すぐさまウッセは言い返してくる。


「獲物が捕れなきゃ、仲間とは認められねぇ。在籍していただけだ」

「それで?」

「こうして獲物を捕れるようになったわけだから、こいつは名実ともに狩猟ギルドの一員になったってことだ。いや、俺も心を鬼にした甲斐があったってわけだ」

「つまり何か?」


 飄々と語るウッセの目を見つめ、真顔で、淡々と尋ねる。


「マグダに獲物を捕らえさせるために、あえて突き放すような発言をして発破をかけたと、そう言いたいわけか?」

「そ、そうだ! よく分かってるじゃねぇか! そういうわけだからよ、こいつはウチの構成員なんだわ。協力してくれて感謝するぜ。何かあったら、その時は融通するからよ、今回はこれで……」


 俺は腕を伸ばし、ウッセを指さす。


「カエルになるか?」

「――っ!?」


 ウッセの言い分はこうだ。

 自分はマグダに奮起してほしかった。だからあえて突き放すような態度を取った。

 追い出すような真似をしたのもそのためで、陽だまり亭と専属契約するという話もみんな『嘘』だったというわけだ。


「こっちは既に、マグダに食事と宿を提供している。それを『実は演技でした』で済まされては敵わない」

「い、いや! だから! 飯代と宿代は払う! 最初からそのつもりだったんだ!」

「その言い訳が通用すると思ってるなら、この場で精霊神に判断してもらうとしようぜ。お前の言動に嘘がなければ、お前は人間でいられるだろうよ」


 この街の人間は、迂闊過ぎやしないだろうか。

 モーマットといい、このウッセといい、自分で墓穴を掘り過ぎだ。

『精霊の審判』の存在を認知しながら、どうして嘘になるような安易な発言をするのか、俺には理解出来ない。

 相手がその気になれば自分の人生が終わる。

 または、それを交渉材料として無理難題を吹っかけられる。

 そんな弱みを、自ら生み出すなんてナンセンスだ。

 まったく、こいつらは愚か…………っ!?


 その時、俺が見たのは――

 腰のナイフを抜き放ち、テーブルを踏み越えて俺に向かってくるウッセの姿だった。

 ウッセが振り上げた腕が……ナイフを握った腕が振り降ろされ、俺へと突き刺さ……


「そこまでだよ!」


 ……る、直前に、エステラがウッセの首にナイフを突きつけた。


 ウッセが動きを止める。

 俺の眉間から5センチほど離れた位置で、ウッセの握るナイフが停止した。


「ヤシロを殺しても、ボクが君をカエルにするよ。ボクも一応陽だまり亭の関係者だからね。こちらとの契約に携わる者なんだ」


『精霊の審判』は、当事者……つまり、嘘を吐かれた者が告発するものだ。

 だから仮にお人好しのジネットが騙されているのを横で見ていても、俺には『精霊の審判』を使う権利はないというわけだ。

 だが今回、エステラは自分もその範囲内にいると主張しているのだ。


 ……つか、危なかった。

 エステラが相手の考えを読めるヤツでよかった。

 ジネットは何が起こったのか分からずおろおろしているだけだし、マグダはぼ~っとしているからこういう突発的な出来事に対応出来ていない様子だ。

 俺も完全に油断していた。まさかこんな手段に出てくるとは……

 エステラがいなかったら、俺は殺されていたな。

 なるほど……相手を殺せば『精霊の審判』にかけられずに済むのか……とんでもない理論だ。


 だが、十分考えられる事態だった。

 迂闊だったと言わざるを得ないだろう。


「…………俺をカエルにしたら、こいつの命は……」

「やめておきなよ」


 往生際悪く言葉を吐こうとするウッセに、エステラは冷たい声で言う。


「見てごらんよ、彼を」


 そう言って、アゴで俺を指す。


「そこまで接近されてなお、落ち着いたもんだろう?」

「…………」


 ウッセが俺を見下ろしてくる。

 ……この角度で見るとマジ怖いな。チビりそうな勢いだ。


「彼には、何か裏の手でもあるんじゃないのかな。ボクなんかには考えつかないような秘策が」


 とんでもない。ないない、ないよー。


「でなければ、そこまで冷静でいられないと思うけど」


 あまりの展開に何も出来なかっただけですが?


「あまり、彼を甘く見ない方がいい……彼は、危険な男だからね」


 ハムスターの次に愛らしい生き物であるこの俺がか?


「さぁ。ナイフを、下ろしてもらおうか」

「…………分かった」


 エステラの声を聞き、ウッセはナイフを下ろして俺の前から離れていった。

 っはぁぁぁああああ~~……っ! ………………怖かった。

 だがまぁ、体外的には余裕ぶっておかないとな。


「賢明な判断だな」


 声は震えてなかったと思う。

 大丈夫。威厳は保てた。

 こういうところでは、ピシッと決めておかないとな。


 しかし、これでかなりの好条件で交渉が進められることだろう。

 それこそ、行商ギルドの二倍の額で買い取れとかも……


「さて……随分なことをしてくれたわけだが…………」


 俺が見据えると、ガチムチで強面のウッセが身を縮めた。

 怯えるような目でこちらを窺っている。今さら遅いっての。


 が……


「……まぁ、今後もいい取引がしたいからな。以後、このようなことがないように頼むぞ」

「…………え?」


 声を漏らしたのはウッセだった。

 ウッセも覚悟していたのだろう。どんな無理難題を吹っかけられても仕方ないと。

 それが、厳重注意で終わりなのだから、気も抜けるだろう。


 ジネットはホッとした表情を見せ、マグダは相変わらず虚ろな目をして俺を見ている。

 エステラは意外そうに目を見開いていた。


「とりあえず、このボナコンを買い取ってくれ。それから、今後は月に数度肉を売りに来ることになると思う。マグダ一人で来ても丁重に扱うようにしてくれよ」


 暗に、「マグダに対し、不当な扱いをすると容赦しないぞ」という脅しをかけておく。

 これで、マグダが肉を売りに来ても粗雑に扱われることはないだろう。


「ヤシロさん……マグダさんのために……」


 ジネットが見当違いな呟きを漏らす。

 マグダのために、ではない。

 毎回俺が同行しなければ取引出来ないとか、そんな状況は最高に面倒くさいからだ。効率が悪いしマンパワーに頼った経営はいつか破綻する。

 俺が携わらなくても滞りなく循環する仕組みの構築が必須なのだ。

 ここの連中は、マグダになら何をしてもいいという考えを持っているようだし、買い叩かれることはもちろん、商品を強奪されて取引自体なかったことにされるなんてこともないとは言い切れない。


 それを防ぐための脅しだ。

 今回見過ごす代わりに、今後一切においてこちらに盾付くことを封じたのだ。


 もしマグダが怪我でもして帰ってこようものなら……『狩猟ギルド』と『陽だまり亭』の契約を反故にしたとしてお前ら『全員』をカエルにしてやる。


 そんな思いが、きちんと伝わっただろうか?

 強張った表情を見るに、大まかには伝わっていそうだ。なら、いい。


「今後とも、いい関係を継続していけることを願っているよ」


 ギルドの代表者が突然の失踪……なんてことにならないようにな。


「……あ、あぁ。こちらもだ」


 様々な思いを込めて、俺とウッセは握手を交わした。

 結局、ボナコンの肉は4000Rb、そして、角が8000Rbで売れた。

 狩猟ギルドは肉専門ではなく、毛皮や角、骨や牙なんかも商品として扱っているのだ。そこに気が付いていればもうちょっと小銭が稼げたかもしれんのだが……もったいないことをした。






「正直、意外だったよ」


 狩猟ギルドを出ると、エステラが俺に話しかけてきた。


「あぁ。角まで売れるとはな……なら、毛皮も持って帰ってくればよかった」


 暴走マグダに引き裂かれて切れっ端になっていたが、10Rbくらいにはなったかもしれん。


「そうじゃない。君のことだよ」

「俺?」


 エステラは俺に歩調を合わせ、ゆっくりとした口調で言う。


「てっきり、無茶な要求を吹っかけると思っていた。あの小さな塊で一頭分を要求するとかね」

「それをやって得られる利益は今回限りだろ」


 相手に警戒心を与えると、こちらが不利になる案件をどんどんぶつけてくるようになる。

 最悪の場合、マグダが狩りに出た時は臨時休業とか、そういう手段に出られる可能性もあるのだ。肉なんて、そう日持ちしないしな。

 大損するくらいなら、死なばもろともで……なんて、冗談じゃない。


 それに、とち狂ってマグダ暗殺、なんてことにならないとも言い切れない。

 刺激は適度が一番。爆発はさせるべきではない。


「おかげで、ジネットちゃんは大喜びみたいだけどね」


 エステラが、先を行くジネットに視線を向ける。

 ジネットはマグダと手を繋いで、嬉しそうに何かを話しかけている。

 ぼさぼさの髪を撫で、にこにことした笑みを向ける。

 マグダは無表情ながらも、耳がピクピクと動き、尻尾もピンと立っている。確か、ネコの尻尾は機嫌がいいと立つんだったよな。どうやらマグダはご満悦のようだ。

 ……てことは、ネコ科の美少女にスカートを穿かせれば…………


「だいたい何を考えているのか想像はつくけれど、尻尾のある獣人族はスカートの下に見えてもいい短パンやアンダースコートを穿いているよ」

「邪道か!?」

「外道なら、ボクの目の前にいるけどね」


 なんだその「上手いこと言いました」みたいな得意顔は。イラってするな。


「それにしても、場当たり的な発言をするヤツが多過ぎるんじゃないか?」

「というと?」

「ジネットは言わずもがなだが、農家のモーマットも『なんでも言ってくれ』とか言うし、川漁ギルドのデリアは短絡的思考で俺たちを魚泥棒と決めつけた。そして、狩猟ギルドのウッセは、明らかに嘘と分かる見苦しい言い訳を重ねた。どいつもこいつも、俺がその気になればカエルに出来ると思うんだが?」

「あぁ、なるほど」


 エステラは、俺が言いたいことを理解したのか鷹揚に頷いてみせた。


「四十二区の住人のおおらかな心が表れていると言える事案だね」

「フォローが苦しくて逆にバカにしているようにしか聞こえんぞ」

「そんなことはないさ。ジネットちゃんなんか、愛すべき存在だろ?」

「愛すべきね……」


 ジネットを愛したりしたら、そこから先の人生気苦労が絶えなそうだ。

 ドMにおすすめだね。見せかけのMじゃなく、真性のドMに。それこそ、人生を棒に振ってみたいとかいう無謀な願望を持っているようなヤツに。


「もっとも、ジネットちゃんが愛される要因は他にもたくさんあるけどね」

「あぁ、おっぱいだろ。お前も好きだなぁ」

「それは君だよ! ……まったく、口を開けばおっぱいおっぱいと……」


 エステラが腹立たしげに腕を組む。

 しかし俺は知っている。その行為が、薄い胸を隠すためのものだと。


「『なんでもする』なんて言葉は、誰もが冗談だと分かりきっているものだろ?」

「それを悪用出来るのが『精霊の審判』だろ?」

「悪用って……」

「実際そうじゃねぇか。いいように使われ過ぎだろ、この魔法。脅しや復讐以外に使われたことあんのか?」

「そう言われると……、調べてみないことには……」


 まぁ、あったとしても数は少ないだろう。

 ルールなんてのは、遵守するヤツが窮屈な思いをして、悪用するヤツが大儲けをするようになってしまうのだ。時間が経てば経つほどにな。


「やっぱり危険だよな。ジネットみたいなヤツは、特に」

「彼女は彼女なりに考えているようだよ」

「お前は目も悪いのか?」

「……他にどこが悪いと思っているのか、参考までに聞かせてもらいたいんだが?」


 ジネットが考えているように見えるなんて、視力が無いのではないかと疑うレベルだ。

 あいつは、目の前に飛んできたものを「良い」「悪い」だけで判断しているようなヤツだ。そして、「悪い」を選択することは滅多にない。


「君は意外と心配性なんだね?」

「慎重なんだよ」


 バカを見たくないからな。


「ジネットちゃんは、確かに危ういところは多々あるけれど、それでも、気心の知れた人の前でなければ『なんでもする』なんて発言はしないよ。狩猟ギルドでもしなかっただろう?」


『なんでもしますから、マグダさんの手当てをさせてください』とは、確かに言っていないな。


「けど、俺の前では何度かそれっぽいことを言ってるぞ」

「だから、それは」


 エステラが俺の前へと回り込み立ち止まる。

 そして、俺の鼻先に人差し指を突きつけた。


「君が気心の知れる相手だということだよ」


 何をドヤ顔で……


「俺に気を許してるってのは、防犯意識が著しく欠落してる証拠なんじゃないのか? なにせ俺は『危険な男』なんだろ?」

「おや? もしかして気にしていたのかな?」


 厭味を言ったら、嬉しそうな顔をされてしまった。


「あれは商談を円滑に進めるための方便さ。悪意はないよ。それに……」


 ここでエステラはグッと俺に近付いてくる。

 凄く近い位置から俺を見上げ、会心の笑みで言う。


「ボクも、君に気を許しているからこそ出来た発言なんだけどな」


 ふん。

 芝居がかり過ぎて胡散臭いと思うのも面倒くさい。


「だったら、『なんでもするから』くらい言ってみやがれ」

「はは。君にそんなことを言ったら、本気で何をされるか分からないじゃないか」


 そんなことを、爽やかに笑って言いやがる。

 ふん。


「『脇を舐めさせろ』くらいのことしか言わねぇよ」

「その行動が、一体君にどんなメリットをもたらすと言うんだいっ!?」


 エステラが両脇をギュッと締め、真っ赤な顔で俺を睨む。

 その顔が見られるだけでも、俺は楽しいがな。


「そ、それにだね!」


 墓穴を掘ったとでも思ったのか、エステラは速やかに話題の転換を図る。


「君の好きそうな損得勘定で考えても、誰かをカエルにすることにはデメリットの方が多い」

「そうなのか?」

「例えば商談で衝突が生じたとして、君がモーマットをカエルに変えたとしよう。単純に、メリットはあるかい?」

「そいつがモーマット個人との商談ならご破算、ギルド全体との商談でも、次の代表者と一から商談のやり直しになるか……軽い脅しになる程度だな」

「その軽い脅しと引き換えに、今後誰も君と商談をしようとはしなくなる。『あいつは人をカエルに変えるようなヤツだから口を利くな』とね。あ、シャレじゃないからね」


 行商ギルドのアッスントのように脅しで使う程度が限界なのかもしれないな。

 脅しまでなら、農家側は「逆らうと生活が出来なくなる」という思考が優先するが、もしモーマットがカエルにでもされようものなら「こいつとの取引は危険だ」が優先されるようになる。いつ自分がカエルにされるか分からないからな。「生活が~」などと言っていられるレベルを超えてしまうのだ。

「殺すぞ!」という脅しと一緒だな。実際に殺人を犯せばその瞬間から脅しは脅しではなくなってしまう。そして、殺人者には誰も近付かない。


 確かに、一線を超えるというデメリットは大きい。


 でも待てよ……


「ゴッフレードはどうなんだ?」

「ゴッフレード? って、あの取り立て屋のかい? よく知っているね」


 エステラが驚いた様子で俺を見る。


「ジネットちゃんのところにいれば出会わないタイプの人種だと思うけど」

「いや、ジネットみたいなタイプこそ、ああいうのに引っかかるんじゃないのか?」

「ゴッフレードは、『厄介な客』専門の取り立て屋なんだよ」

「『厄介な』?」

「踏み倒しの常習者や……金融ギルドと敵対する人間、とか」


 潰し屋みたいなものか。

 ライバル企業を潰すために少々法に触れるようなやり方で絡んでくる連中だ。

 地上げに応じない飲食店に強面の客が連日押しかけ店内で大喧嘩をする、みたいなのもその一種だな。

 なんにせよ、最低の人種だ。

 ゴッフレードはそういう類いの人間ってわけだ。


「ゴッフレードと会ったのは大通りでだ。その時ヤツは一人の男をカエルにした。衆人環視の中でな」

「それが脅しとなる稀有な職業だろうね、取り立て屋は」


 己の威厳がそのまま看板になる。

 ゴッフレードに睨まれた者は素直に金を払うだろう。理不尽だと感じても、無理をしてでも。カエルにされたくはないから。しかも、ギルドとの交渉と違い、こちらが拒否しても執拗に絡んでくる厄介な相手だ。


「君も、あの男には関わらない方がいいよ」


 いや~……もうすでに、金儲けのために接触しちゃったんだけど…………

 まぁ、今後関わらないように気を付けよう。


「ってことは、教会で『精霊の審判』をかけてきたお前を、俺は糾弾してもいいわけだな」

「ボクはそれ以上に君にかけられているけどね……」


 恨みがましい目で睨んでくる。

 まったく、過ぎたことをグチグチと、器と胸の小さいヤツだ。


「ヤシロさん」


 気が付くと、ジネットとマグダが立ち止まり、こちらを向いていた。

 後方を歩く俺たちを待っている。

 表情は、これ以上もないほどに嬉しそうだ。


「マグダさん、狩りのない時はお店で働いてくれることになりました」

「……は?」

「給仕をしてくださるそうです」


 わぁ……、なにその無謀な人事。

 すげぇわ、ジネット。俺ならそんな思い切り過ぎた采配出来ないわぁ。


「マグダ……接客業の経験は?」

「……ない」

「接客業に一番必要なものが何か分かるか?」

「……………………腕力?」

「うん、それはいらない。最もいらない」


 客を殴る気満々かっつの。


「接客業に最も必要なもの、それは笑顔だ」

「………………集める?」

「そうじゃない。お前が笑顔になるんだ」

「…………得意」

「うそつけーぃ!」


 思わず面白い感じで突っ込んでしまった。

 丸一日以上一緒にいるが、こいつが笑っているところなんか見たことがない。


「お前、ちょっと笑ってみろ」

「………………マジウケる~」

「女子高生かっ!?」

「……『じょしこうせい』?」

「いや……こっちの話だ」


 さっきの『マジウケる』はきっと『強制翻訳魔法』の誤変換に違いない。そうだと思いたい。

 つか、女子高生でももうちょっと感情豊かに言うぞ、そのセリフ。

 平板もいいとこじゃねぇか。感情の起伏が一切なかった。真っ平らだ。エステラの胸と同じ惨状だ。


「感情に起伏を持たせるんだよ。エステラではなく、ジネットのように!」

「……ねぇ、ヤシロ。それは、感情の話だよね?」

「起伏の話だ!」

「だから、『感情の』起伏の話だよね?」


 エステラが胸を押さえながらどうでもいい部分に食いついてくる。

 どこの起伏でもいいだろうが!

 とにかくジネットを見習えばいいのだ!


「感情の起伏だ!」

「と、言いながら、手がおっぱいを表すジェスチャーをしているよっ!」


 しまった。

 思わず両手を胸のところでポッコリさせるジェスチャーを入れてしまった。


「…………起伏」


 マグダが俺の言葉とジェスチャーを真似する。


「ダメですよ、マグダさん! ヤシロさんが伝染します!」


 慌ててジネットがやめさせる。

 ……さらっと酷いな、ジネット。


「とりあえず、マグダ。笑ってみろ」


 俺が言うと、マグダはしばらく考え込んだ後で、右の口角を少しだけ持ち上げた。

 髪が伸びる人形くらいにささやかな変化だな……


「…………ふふっ」

「客を嘲笑するんじゃねぇよ」


 ダメだ。

 こいつに笑顔はハードルが高過ぎた。

 元気な接客は無理だろう。

 ならば、無言でも行き届いたサービスを心がけるべきだろう。


「大丈夫ですよ! わたしが接客のいろはをきちんと教えますから!」

「いや、ジネット。こいつはそもそも方向性が違うんだ。お前が武器としている『笑顔』『元気さ』『揺れまくるおっぱい』のどれも、こいつには使えない」

「最後の一つは武器にしてませんよっ!? って、そんなに揺れてますかっ!?」


 ジネットが大きく張り出した胸を押さえつける。

 ぷに~んと形を変える柔らかい膨らみ。

 あぁ、揺れているともっ! 毎日毎日、ありがとうございます!


「………………二年後に期待」


 マグダがとても小さく呟いた声を、俺は聞き漏らさなかった。

 ……届くといいな、お前の理想に。


 エステラが仲間を見るような目でマグダを見つめている。が、マグダは未発達なだけだが、お前のはそれで完成形だからな?

『未』と『無』の間には超えられない壁があるからな?


「……店長のように、おっぱいで客を喜ばせることが出来るようになる」

「マグダさん、その発言には語弊がありますっ!? わたしはそんなことでお客さんを喜ばせていませんよ!」


 焦って訂正を求めるジネット。

 だが、客のうち何人かは、確実にお前の胸を見に来ているぞ。


「わたしは、パイオツカイデーでお客さんに喜んでもらっているんですよ」

「ごふっ!」

「ヤシロさんっ!? どうしたんですか!?」


 どうしたはこっちのセリフだ……それ、まだ生きてたのか?

 つか、それならマグダの言ってたこと合ってんじゃねぇか。


「『パイオツカイデー』とは、なんだい?」


 おい、エステラ。その言葉に食いつくな。

 早く風化してほしいんだから。


「ヤシロさんの国の言葉で、『笑顔がステキ』という意味だそうですよ」

「へぇ。いい言葉だね『パイオツカイデー』」


 ……もうやめて。俺をこれ以上責めないで……


「ふむ。ねぇ、ヤシロ」


 エステラが胸を張ってこちらに満面の笑みを向けてくる。


「どうだい? ボクもなかなかに『パイオツカイデー』だろ?」

「そんなわけあるかぁ!」


 はっ!?

 しまった。

 一言でツッコミゲージが満タンになってしまう強烈なボケだったもので、つい突っ込んでしまった……


「……そ、そんなに、ダメ……かな?」


 エステラがショックを受けたように胸を押さえる。

 ……あぁ、違う意味で受け取ってるはずなのにジェスチャーが的確過ぎてちょっと面白い。


「いや、そうじゃないんだ……だが、この話題はもうやめよう」


 真っ直ぐにエステラを見られなくなってしまった。


「……マグダも、『パイオツカイデー』を目指す」

「そうですね。頑張りましょうね」


 頑張ってなんとかなるものならな。

 つか、本当にもうやめよう、この話題……


「……ヤシロ」


 マグダが、ちょっとした精神的疲労によって蹲る俺の服をちょいちょいと引っ張る。

 振り返ると、マグダ……の向こうで蹲るエステラが目に入った……が、それは無視して……マグダが俺をジッと見つめていた。


「…………教えて」


 パイオツをカイデーにする方法か?

 毎日揉むといいらしいが…………あ、接客の方か。


「……マグダ、どうすればいい?」


 こいつはこいつで、真剣に働くつもりがあるようだ。


「……店長みたいに、したい」


 こいつはジネットを店長と呼ぶんだな。……俺は呼び捨てなのに。


「お前がジネットみたいになるのは不可能だよ」

「…………」


 ハッキリ言ってやると、虚ろな目に少し影が落ちる。

 こいつも落ち込んだりするんだな。


「あ、あの……ヤシロさん……」


 ジネットが何かを言いかける……まぁ、言いたいことは分かるけどな……が、それが終わる前に俺はマグダの髪をくしゃくしゃと撫でる。


「お前とジネットは違う。違うのに無理やり同じになる必要はない」

「…………でも」

「お前は、お前のやり方で客をもてなせばいいんだよ。お前のやり方でジネットに追いつけ」

「…………マグダの、やり方で…………」


 優秀な人間がいたとして、そいつを量産すればすべてが上手くいくかと言えば、実はそうではない。好成績を収めた人間の真似をしても上手くいくことは少ない。

 それは、その優秀なヤツに合ったやり方だからだ。他人が真似をしても成果は期待出来ない。

 それに、判を押したように同じ人間ばかりの企業と、多種多様な感性を詰め込んだような企業では後者の方が大成するものだ。

 多角的な視野を持つ企業が成功する理由の説明は必要ないと思う。


 ならば、陽だまり亭も新しい風を取り込むべきなのだ。

 ジネットを増やすより、ジネットにはないものを持った者を増やす方がいい。それがいつしかそいつの『魅力』になれば、違った層の顧客も増える。

 煎じ詰めて言えば、『巨乳もいいけどつるぺたもね!』ということだ。


 マグダも、顔の作りはいいのだ。

 こういうキャラを極めればマニアなファンがつくかもしれん。

 常連がつけば、食堂は安定する。俺の収入も増える。

 いいこと尽くめだ。


「お前は、お前のいいところを活かせばいい」

「…………腕力?」

「それは違うと言ったよな? 覚えてるよな?」


 本当に大丈夫か、こいつ? ……俺が一から教え込まなきゃモノにならねぇぞ。


「俺が色々教えてやるから、少しずつ覚えていけ」

「……うん」

「…………!」


 今、少しだけ……マグダが笑った気がした。

 瞬きをしたら、元の無表情に戻っていたが……


「お願いしちゃっていいんですか、ヤシロさん?」


 ジネットが申し訳なさそうな……でも、とびっきり嬉しそうな顔で俺に尋ねてくる。

 まぁ、無愛想人形を店に置いて客が逃げるよりかはマシだからな……労力はタダで手に入るものだしな。


 俺が肯定すると、ジネットは心底嬉しそうに微笑んで、深々と頭を下げた。


「ありがとうございます。ヤシロさんは、本当にいい人ですね」


 だから……そんなんじゃないってのに。

 利益最優先!

 俺のためなの!

 ……いい加減、理解しろっての。


「……それで、その…………もう一つ、お願いしたいことが…………」

「ん?」


 もじもじと両手の指を絡め合わせていたかと思うと、勢いよく頭を振り下げる。


「もう一着、マグダさんの制服を作ってください!」


 九十度を超える深いお辞儀をして、ジネットがそんなことを言う。

 まぁ、そうだな。制服なら統一感が必要だもんな。マグダの分も必要だよな。


「お忙しいところ、無理を言っているのは重々承知なんですが……マグダさんにも、あの可愛い服を着せてあげたいんです」


 ジネットは制服をお洒落着と捉えているようだな。

 まぁ、言われなくても時間を見つけて作る…………


「お願いします! わたしに出来ることでしたらなんでもしますから!」


 ……っ!?

 こいつ、また……


 気心の知れた相手には…………ね。


「じゃあ、脇を舐めさせろ」

「ぅぇえええっ!?」


 少しは痛い目を見て、自重することを覚えろ。 

 でなければ、本当に取り返しのつかないことになる…………


「…………ご、後日、でしたら」


 ……っ!?


 ………………

 ………………

 …………はぁっ!?


「い、いや……いいのか?」

「ぁう、よ、よくは……あんまり、ないですが…………でも、マグダさんの制服はお願いしたいですし…………それくらいのことは…………でも、あの、きちんと洗って清潔にした後にしていただきたいなと……っ!」

「ストップだ、ジネット!」


 ……こいつは、どこまで………………


「冗談だ……」

「え?」

「制服は作る。陽だまり亭のためになるし、それは俺の利益にもなるから……」

「そ、そう、ですか……よかった」

「その代わりな……」

「はい」

「……気安く『なんでもします』とか、もう言うな」

「え…………あの…………はい。気を付けます」


 あぁ、くそ…………顔が熱い。

 なんで俺が照れなきゃいけないんだ。

 ……変なこと言わなきゃよかった。


 違うんだ。本当に脇を舐めたいわけじゃなかったんだ……ただ、そういう恥ずかしい目に遭わされる危険があるということを教えてやろうと…………あぁ、もう! なんなんだよ、ジネット! 嫌がれよ、もっと!


「…………ヤシロ」


 ジネットをまともに見られず、顔を背ける。

 そんな俺を覗き込むようにマグダが声をかけてくる。


「…………どうぞ」


 と、マグダが両腕を上げる。

 袖口のゆったりした半袖を着ているマグダの脇がさらされる。


「…………お願い、今はそういうのやめてくれるかな?」

「……舐めない?」

「やめて……俺、死んじゃうから……」

「……そう」


 マグダに照れさせられるとは…………屈辱だ…………


 こういう、俺が弱っている時に、いの一番で食いついてくるはずのエステラは……いまだ蹲って頬をグニグニ揉んでいた。……何やってんだあいつ?

 まぁ、何やってんだは、俺も一緒だけどな…………


 今後、ジネットに変なことを言うのは控えよう……全部ブーメランとなって俺に返ってくる。


 ある意味、一番の天敵はジネットなんじゃないかと、俺は思った。







いつもありがとうございます。



さて、接客業にとって、

最も大事なことはなんだと思いますか?



お釣りを渡す時に、こちらの手に触れるかどうかですっ!



私は他人に……特に見ず知らずの方に触れられるのが苦手で……

ですので、手に触れずにうま~くお釣りを渡してくれる店員さんを見ると感動しますね。


たまに、親切心からなんでしょうが、

こちらの出した手を包み込むようにしてしっかりお釣りを渡してくださる店員さん、

いらっしゃいますよね?


…………ごめんなさい。

本当にスミマセンが…………やめていただきたい。


人に優しくされると、

一人になった時に耐えられなくなるから……


もし、私にお釣りを渡す際、

私の手に触れるのであれば……


結婚を前提にお釣りを渡していただきたい。


それくらいの覚悟がない方はお断りですっ!

遊びでお釣りを渡さないでっ!

本気でぶつかって!


ですので、むしろ私にお釣りを渡す時は……



――チャリーン!

店員「ほら、釣りだよ。拾いな!」 


くらいでちょうどいいかもしれません。


そして、這いつくばって小銭を必死に拾い集める私を、

冷たく蔑んだ目で見下ろしていてくれたりすると……通います。



逆に、こちらから受け取りに行くパターンとかダメですかね?


ほらあれですよ!

「先に大きい方、五千円のお返しです」

とか言いながら、谷間に五千円札を挟んで、

それを私が受け取るという………………あ、それは別料金が発生するんですか? じゃあ結構です。




次回もよろしくお願いいたします。


宮地拓海

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