表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界詐欺師のなんちゃって経営術  作者: 宮地拓海
第一幕

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

153/795

134話 初デート@乙女

 俺は今、メドラと腕を組んで四十一区の大通りを歩いている。

 ……おかしいなぁ。ついさっき音速で目的の店に着いたはずだったんだが……


「あ、いけない! アタシとしたことが、すっかり忘れてたよ!」


 という言葉を発し、メドラは来た道を光速で駆け戻っていったのだ。

 内臓への負荷、アンリミテッド……


 そして、大通りの入り口、四十二区側に着くと、抱きかかえていた俺を地面へと降ろし、がっしりと腕を組んできた。

 俺の右腕にメドラが両腕を巻きつけ、体をぴったりと寄せてくる。

 ……ねぇねぇ、この人。自分が右側に立ったよ?

 それって、万が一の時は利き腕(=右腕)が自由になる方が相手のことまでまとめて守ってやるよって意味合いだと思うんだけど……俺、やっぱ守られる立ち位置なのかなぁ?


「アタシはね、初デートの時は、勇気を振り絞って腕を組んで歩くんだって、十二の頃から決めていたんだよ」

「……何年間温めてきた夢だよ……」

「ほんの少しさっ」


 まぁ、千年くらい生きる生物なら十年二十年は『ほんの少し』って言ってもいいかもしれんがな……

 この生き物は一体何年生きるつもりなんだろうな。


 あと、勇気を振り絞るって……え、そんな必要があるの?

 お前が振り絞っちゃうと、魔神だって怯えて敵前逃亡しちゃいそうなんだけどな。


「嬉しいねぇ。こうやって、腕を組んで大通りを歩くなんて……歌劇のヒロインになった気分だよ」


 俺は、NASAに捕獲された宇宙人になった気分だけどな。見て見て、右足、実はカカトがちゃんと地面に着いてないんだ。だって、メドラの方がデカいんだもん。右肩、ものすげぇ持ち上げられてんだもん。

 どうせなら、俺がメドラの腕に掴まる形にしない?


 そんな提案をしようとメドラを見ると、バッチリと目が合った。

 途端にメドラは頬を赤く染め、口を尖らせて、少し俺を責めるような目で睨んでくる。


「あ、当たってるからって……そんな嬉しそうな顔するんじゃないよ。……まったく、これだから男ってヤツは」


 ……あぁ、うん。当たってるよ。すっげぇ当たってる。っていうかヒジが埋もれてる。いや、めり込んでるよ。

 けどなんでかなぁ、ち~っとも嬉しくないんだよなぁ。


「ねぇ、ダーリン」

「……なんでしょうか?」


 敬語だ。

 いや、ほら、親しく話して関係者だと思われると困るしさ。


「みんなが、アタシたちのこと、振り返って見ているよ」


 そりゃ見るだろう。こんな世にも珍しい光景。

 ざっと見た感じ……

 驚愕の目が三割で、真顔(思考停止)が四割、好奇の目一割で、俺に向けられる同情の眼差しが二割ってところか。


「ままぁ……あの人ぉ……」

「しっ、見ちゃダメよ」


 そんな母娘の会話が耳に届く。

 ははっ……俺も目を逸らしてぇよ、こんな現実リアルから……


「ふふっ。まぁ、確かに幼い娘にはちょっと刺激が強過ぎるかもしれないねぇ」


 いやぁ、それはどうだろう?

 刺激が強過ぎるってとこだけには激しく賛成だけどな。

 ……そろそろ、右肩が疲労骨折しそうなんですが…………


「ダーリンはご飯を食べたいかい? それとも、この街の名産、マンゴーでも食べるかい? ……そ・れ・と・も……アタ……」

「ご飯がいいな!」


 危ない……今のは、最後まで聞いてしまうと回避不可能な呪いをかけられる呪文だ。

 さすが異世界……命の危険がゴロゴロ転がってやがるぜ……


 はぁ……ミリィと手を繋いでた時は、あんなにほんわかした気持ちになれてたのになぁ……


「あ、見てごらん。あそこが、アタシの行きつけの店だよ」


 わぁ、凄い既視感。

 ついさっきこの佇まい見た気がするなぁ。


「雰囲気もいいし、何よりご飯が美味しい。きっとダーリンも気に入ると思うよ」

「まぁ、それは楽しみではあるが……」


 雰囲気がいいってのは、落ち着いてて~とか、馴染みの顔がたくさんいて~とかだよな?

 なんか、セクシーなジャズとかが流れてて、薄暗かったり、ピンクの照明だったりする『いい雰囲気』じゃないよな、間違っても?


「さぁ、入ろうじゃないか」

「あぁ。そうだな」


 ちょっと、ここ最近類を見ないくらいに心臓がバクバクだがな……


「…………さぁ、入ろうじゃないか!」


 あぁ……はいはい。


 俺は店のドアを開け半身を引いてメドラを店内へと誘導する。

 レディーファーストってのか? まぁ、こういうのは店のヤツがやれって感じなんだが……メドラがものすげぇ満足そうな顔してるから、きっとこれで正解なんだろう。


「さすがダーリンだ! 気が利くじゃないか!」


 そりゃまぁ、あそこまであからさまに催促されりゃあな。


 にこにこと上機嫌のメドラに続いて店内へと踏み込む。

 店内は、天然木をその姿のまま利用したような、アジアンテイストな内装だった。

 絶妙に歪んだ一枚板のテーブルや、でこぼことした流木のような丸太を上手く加工したカウンター。バナナの葉っぱのような厚手の植物が天井付近に飾られており、なんとも涼しげだ。


 大通りから路地を二本入った、『二本目』にあるこの店は、ほんの少し高級感が漂う、こだわり派の店って感じだ。

 まぁ、デリアが好きそうな感じではないな。


「アラ。アラアラ。メドラちゃん、いらっしゃいネェ」


 カウンターの奥から、ロングヘアの美人が顔を出す。褐色の肌がこの店の雰囲気によく合う、オリエンタルな美女だ。目はとろんと垂れており、温和な性格をうかがわせる。

 常に笑顔でいるのだろうか、目がニコちゃんマークみたいに一本の線で書けそうな雰囲気だ。


「よぉ、オシナ! 邪魔するよ」

「ウンウン。ゆっくりしてってネェ。最近はフードコートにお客さん取られちゃってモゥズゥ~ットひまひまな……の…………ネェ………………ンンッ!?」


 あ、目が開いた。


 オシナという名前らしきオリエンタルおっとり垂れ目美女(バストサイズはCと見た!)は、メドラの巨体の陰に隠れていた俺を発見するや、ピラミッドの地下で新たに発見された棺に刻まれているかつての王の名を発見した考古学者のような、驚愕と歓喜と戸惑いを綯い交ぜにした複雑な瞳で俺を見つめてくる。

 瞳の色が紫で、なんだかとても妖艶だ。見つめていると吸い込まれそうになる。


「…………メドラちゃんは、肉食だっけネェ?」


 待て、オシナとやら。

 お前は今、俺のことを捕らえられた獲物と判断した、そういうことで間違いないな?


「何言ってんだい、オシナ。前にも話したろう! アタシに花束を贈ってくれた……それで、本気でアタシに食ってかかってきた男気のある、大した男だよ……きゃっ」


「きゃっ」じゃねぇよ。

 え、なに?

 お前、俺のこと他所で言いふらしてるの?

 やめてくれる? 簡易裁判所に名誉棄損で告訴するよ?


「こ、この、カワイイ坊やが、オオバヤシロなのネェ?」


 かわいいだぁ?

 どんな目ぇしてんだよ? こういう顔立ちはな、『美少年』っつうんだぞ?


「オシナ的には、てっきりメドラちゃんの四倍くらいある厳ついメンズだと思ってたのネェ」


 それ、もう人間じゃねぇよ。

 トロルとかビッグフットとか、そういうモンスター系の生き物だろ。


「バカだねぇ! この可愛らしい体から、アタシを怯ませるような覇気を放つからグッとくるんじゃないかい! アタシが、アタシの一番に相応しいと思った男だよ? ただデカいだけのでくの坊に、このアタシがなびくもんかい!」


 いやいや。でくの坊でもなんでも、立候補者がいたら取っ捕まえて首輪しといた方がいいと思うぞ。まぁ、立候補者が『いたら』だけどな。


「フ~ン、ヘ~ェ、ホ~ォ……」


 オシナがジロジロと俺を舐めるように見つめてくる。

 俺の周りをゆっくりと回りながら、首を上下に動かし、つぶさに観察してくる。

 ……酷い辱めだ。動物園の動物って、こんな感じなのかな。


「ネェネェ、メドラちゃん」

「なんだい? というか、あんま見んじゃないよ! ダーリンが怖がっちまうだろう」

「ダイジョブダイジョブ。ネェ?」


 いや、「ネェ?」と言われても……あんま大丈夫じゃないし。


「それより、メドラちゃん」

「だからなんだい?」

「シェアしよ」

「「はぁっ!?」」


 褐色垂れ目のおっとりぽや~ん系美女が、よく分からない発言を繰り出した。

 率直に言って、帰りたい。

 だが、とりあえず、意味不明な発言の真意くらいは聞いておこう。


「……あの、それは、どういう…………」

「オオバ・ダーリン・ヤシロちゃんはたいへんカワイイので、オシナ的にお気に入りに登録なのネェ」

「……遠慮しときます」


 物凄い地雷臭!

 うん、この人に関わると、絶対痛い目を見る!


「ネェネェ、ダーリン。ウチで住み込みの従業員しないネェ?」

「住み込み……?」

「ウンウン。ウチ、ちょっと経営危ないネェ。それを改善してくれると、オシナ的に凄く嬉しいネェ」

「あ、そういうの、もう間に合ってますんで」


 四十一区版陽だまり亭かよ。


「そぅ? 残念ネェ。ここに住めば、いつだってメドラちゃんにも会えるのにネェ?」


 尚のことお断りです!

 なんだ?

 このおっとり美女がジネットで、メドラがエステラポジションか?

 あははは……笑えねぇ。


「ごめんなさい……俺、爆乳が好きなもんで……」


 視線を外してお断りしておく。

 はっきり言っておかないと、こういう人は諦めが悪そうだから。


「ソッカァ~、やっぱりメドラちゃん一筋かぁ……」

「いや、それは無い!」

「……もう、ダーリンってば……親友の前で、そういうのは…………もう! 照れんじゃないかい!」

「だから、お前のことじゃないって!」


 もっと凄いのがウチにいるの!

 Iカップ!

 こっちのおっとり美女から、そこはかとなく漂う危険臭を完全撤廃した無毒のぽわわん系正統派美少女にして、オールブルーム最大のおっぱいを持つジネットってのがいるんです!


 ……まぁ、別に。俺がジネットのことをどうこう思ってるって意味では、全然ないわけだけども……そういうんじゃないし。


「マァマァ。オシナたぶんこの先ズット諦めないから、今はいいよネェ。とりあえずご飯食べてネェ」


 ん? 

 今さらっと危険なこと口走ってなかったか、この人?


「サァサァ、こっちのイイ席座ってネェ」

「ダーリン。この席は日当たりもよくて、たまに気持ちのいい風が吹き込んでくるんだよ。さぁ、座ろうか」


「座ろうか」ってことは、「椅子を引いて座らせろ」ってことだよな?

 学習したよ、もう。


「メドラ、ちょっと待ってな」


 左手を上げてメドラを止めてから、俺は先回りをして風通しのいい方の椅子を引く。


「どうぞ」


 相手がエステラやレジーナなら、ここで「どうぞ、お姫様」とか言うんだけどな。冗談が通じるから。……メドラに言うのは自殺行為だ。それくらい俺にも分かる。


「ダ~リンっ! あんたって男は、ホンット~に気が利くねぇ!」

「ホニャニャ~。紳士さんなんだネェ。コリャ、メドラちゃんイチコロなわけだネェ」


 いやいや。店先で前振りがあったからな。それだけだからな? 普段はこんなことしないからな?


 にこにこと、メドラが椅子に腰を下ろす。それに合わせて椅子を押してやるのだが……重っ!

 メドラが座った後の椅子は押しても引いても、ビクともしなかった。

 筋肉が物凄く詰まってるんだろうなぁ……小指の先だけで、俺の全身の筋肉より筋細胞多いかもしれん。



 …………さて。



 なんだかんだと、流されるようにここまで来たわけだが……すべては俺に都合よく進んでいる。……まぁ、なんでか俺とメドラとが極々限られた一部地域で公認のカップル的誤解を生んでしまったことに関しては都合がいいとは口が裂けても言えないわけだが……まぁ、今はそれはいい。

 今考えるべきは……


「メドラ。この店にはよく来るのか?」

「あぁ。アタシの行きつけさ。ここにしか来ないって言ってもいいくらいだね」


 メドラがホッとしたような表情を見せる。

 心休まる場所。ここは、メドラにとってそういう場所なのだろう。


「ハイ、メドラちゃん」

「おぉ、悪いねぇ」

「ハイハイ、ダ~リンちゃん」

「……ダ~リンちゃんって」


 俺とメドラの前にウェルカムドリンクが置かれる。

 カフェオレのような色合いの飲み物の中に、タピオカっぽいものが入り、グラスの底に沈んでいる。

 なんか、OLさんが好みそうな飲み物置いてるんだなぁ。

 あ、OLってのは、「オシャレ・レディ」の略だからな?

「オフィス・レディ」は性別を固定する呼称で、最近ではあまり好ましくないとされているからな。

「オシャレ・レディ」だ。


 で、そのOLさんが好みそうなタピオカっぽいもの入りカフェオレっぽいものを飲んでみたのだが………………バケツを所望する。


「アラアラ? お口に合わない感じ?」

「い、いや…………想像してたのと、味が違い過ぎたから……」


 ゴボウの煮汁の味がした。


「これネェ、ゴボウドリンク、黒豆玉入りネェ」


 さほど外れでもなかった……つか、黒豆玉とやらは、どうも煮て柔らかくした黒豆をすり潰して団子にした物らしい……一切甘くない。

 ただ、悔しいかな……「そういうもん」だと思って飲むと、意外と美味く感じるのだ。

 あぁ、悔しい。


「メドラちゃんは、いつものヤツでいいネェ?」

「あぁ。頼むよ。ダーリンは何が食べたい? 今日はアタシがご馳走してあげるよ!」

「いやいや、仮にもデートなんだったら、俺が奢るぞ」

「そういう男気もダーリンのいいとこだけどさ、ここはアタシの親友の店なんだ。アタシに顔立てさせておくれよ」


 甘えるような目つきで言うメドラは、なんだか少し必死そうに見えた。

 まぁ、ここで「俺が」「アタシが」をやり合うのもみっともないか。


「じゃあ、ご馳走になろうかな」

「さすが、物分かりがいいね! これでうだうだ言うようなら、ビンタ一発お見舞いするところだったよ!」


 やべぇ!? 気軽に選んだ選択肢が、まさか死と隣り合わせだったとは!?

 一個間違えたら即死亡エンドって、どんだけ難易度高いギャルゲーだよ!?


 …………ギャルゲーにメドラみたいな攻略キャラがいて堪るかっ!


「さぁ、遠慮なく、なんでも注文しとくれ」


 とはいっても、この店にはメニューのようなものが一切置かれていない。

 壁に書かれてもいないし……何があるかを尋ねて、説明を受けて、で、注文するようなスタイルなのかもしれんな。


 だが、頼む物は決まっている。


「じゃあ、メドラと一緒のにするよ」

「え?」


 メドラが目を丸くする。

 こういう場合は相手に合わせるのがセオリーだ。

 相手の奢りで相手より高いものを頼むわけにもいかず、また下手に遠慮し過ぎるのも相手を見くびっているようで失礼に当たる。

 ならば、相手におすすめを聞くか、同じものを頼むのが失敗する確率が低い。


 それに、同じものを食っているっていう、一体感みたいなものもちょっと生まれるしな。


「……ふ、二人で、一つかい?」

「んなわけあるか!」


 一体感持ち過ぎ!

 同じものを二つください! 各々に一つずつ!


「なるほどネェ。ダ~リンちゃんは、メドラちゃんが好きな食べ物を好きになりたいってわけネェ」

「えっ!?」


 いや、違うよ。とんでもなく見当違い。

 だから、ほっぺたを赤く染めるのやめてくれるかな? 瞳、うるうるさせないで。


「じゃあ、ちょっと待っててネェ」


 オシナがルンルンとカウンターの向こうへと消えていく。

 掴みどころのない人だ。

 年上っぽくはあるけれど。


「メドラ。オシナとはいつから友達なんだ?」

「子供の頃からさ」


 オシナがな。

 メドラは幼いオシナの子守りでもしてやっていたのだろうか。


「アタシとオシナは、同じ年の同じ日に、同じ街で生まれたんだ」

「えぇっ!?」


 じゃあ、なに!?

 同じ歳?!

 つまり、木こりのハビエルや四十区領主のデミリーと近しい年齢!?

 見えないんですけどぉ!?


 オシナはどう見ても二十代中頃だ。

 いい感じに熟れて食べ頃タイムに突入したくらいの年齢のはずだ。

 それが…………四十代?


「驚くのは無理もないね。アタシもオシナも、周りからはよく『若い』って言われるからねぇ」


 相当自慢なのか、小鼻が広がりきっている。

 いや、メドラが若いって言われるのは、パワーとか体力面でだろう?


 オシナが、四十代…………あれが、美魔女ってヤツか……。女は怖ぇ……


「なんだか悪かったね」

「ん?」

「強引に連れ出しちまってさ」


 相当強引な拉致事件を起こした犯人とは思えない、殊勝な発言がメドラの口から聞こえてくる。

 俺の鼓膜、壊れたか? 雑音か?


「ダーリンを見たら、つい嬉しくなっちまってね……今、ようやく落ち着いて……よく考えてみると、ダーリンには迷惑だったかなって………………怒ったかい?」


 まぁ、迷惑かどうかと言われれば、大きく『迷惑』側に傾いてはいるが……


「んなことねぇよ」


 そもそも、俺はメドラに会うつもりで四十一区に来ていたのだ。

 門前払いでもしょうがない状況で、メドラは自分から出てきてくれた。

 アレがなきゃ、こいつと飯を食うこともなかったろうな。


「今日はリカルドのところにも用事があったんだが、どっちかっていうとメドラに会いたくてこっちに来たようなもんなんだ」

「ダーリン……」


 メドラが柔らかい笑みを漏らす。

 こちらが気を遣っていると悟り、その気遣いを無駄にしないよう、あえて多くを語らない。笑みだけを交わす大人のコミュニケーションだ。


「……アタシの笑顔が、そんなに見たかったのかい?」


 あ、伝わってなかった。


「いや……魔獣のスワーム討伐に行くんだろ? 激励、ってほど大袈裟なもんじゃないが、一言、会って礼を言いたかった。あと、『頑張れ』って」

「あ……、あぁ! そうかいそうかい! そういうことかい! あはは、いや、アタシはてっきり……勘違いだったようだね!」


 メドラが照れ隠しに頭を掻いている。

 狩りの天才も、恋愛は初心者のようだ。


 ……恋愛とは、認めねぇけどな!


「まぁ、任せておきな! アタシが自ら赴いて、魔獣どもを蹴散らしてやるんだ。一日とかからずに方が付くだろうよ」


 凄い以外の形容詞が見つからないな。


 今回、狩猟ギルドの中から選ばれた十数名で討伐隊を結成し、魔獣のスワームを討伐に行くことになっている。

 マグダも、その中の一人にカウントされている。


 非常に危険なミッションではあるが……メドラがいるなら大丈夫、そんな気がするから不思議だ。

 頼りになるヤツってのは、いるだけで安心感を与えてくれるからな。

 貴重な存在だ。


 ――と、そんなスワーム退治の壮行会ってのも、一応は一つの理由ではあるが……


 俺は、おそらく四十一区の代表として俺たちの前に立ちはだかるであろう、闘将メドラの実力を見に来たのだ!


 普段から食べている物を見せてもらえれば、メドラがどれだけ食べるのかが想像しやすい。

 さぁ、さらしてみやがれ、お前の『普段の食生活』を。


「お待たせネェ~」


 カウンターの奥から姿を現したオシナが、踊るような歩調で俺たちに近付いてきて、メドラの前に料理の載った皿を置く。


 そこには、ちょこ~んと、まるで遠慮するかのように、コンパクトにまとまった料理が載せられている。

 OLさんが好みそうな小さな小さなお弁当。それをお皿に移し替えたような、驚きの少量だ。


「…………え?」

「これネェ、メドラちゃんの大好物ばかり集めた料理なのネェ」

「まぁ、騙されたと思って食べとくれ! 本当に美味いからさ!」


 いや、美味いかどうかは、この際どうでもいいんだが…………これだけ?

 俺の目の前にも同じ料理が置かれる。


「どうしたのさ、ダーリン? 何かおかしいかい?」

「いや、……メドラのくせに少な過ぎるんじゃ……いや、もとい、狩猟ギルドのギルド長の食事にしては、量が少ない気がするんだが……?」

「ん? そうか?」

「アァ、……確かに、最初は驚くかもネェ」


 オシナがけらけらと笑って、オシャレ女子が注文しそうな、一般男性だったらこれだけでは満足出来ないような、少量で、その分を盛りつけや食材にこだわりましたって感じの料理を指さして言う。


「メドラちゃんは、昔から小食だったんだよネェ。きっと、メドラちゃんの筋肉って、燃費がいいんだろうネェ」


 パワーがある上に、スタミナまで十分とか……チート過ぎんだろ、その筋肉。


「じゃ、じゃあ……大食い大会に出場したりは……?」

「アタシが? 出るわけないじゃないかさ! アタシは少しの量を楽しんで食べたい派なのさ。大食いは趣味じゃないさね」

「そ、そう……なのか」


 今回の視察は、意外な結果に終わった。

 まさか、こんなことになるなんて……


 メドラ、こう見えて実はメッチャ小食で、量を食うより雰囲気を楽しみたい派らしい。


 大食い大会には、参加しない。本人がはっきりとそう言ったのだ。


「大会には、ウチの中から活きのいいのを何人か出場させる予定だよ。いくらダーリンが相手と言えど、手加減はしないからね」


 メドラは逆に、俺が参加するものだと思い込んでいるようだ。

 そうか。イメージで『こいつは絶対出るだろう』ってのは、当てにならないんだな。


 つまり、四十一区で注意すべきは、グスターブとかいうピラニア人族のみ!

 いや、他にも手強いヤツがいるのかもしれんが……




 勝てるかもしれねぇな、大食い大会。




 そんな安心感が、俺の胸の奥からほんのちょっとだけ湧き上がってきていた。

 いやいや。油断は禁物だ。

 禁物だが……イケる気がする。

 あとは采配をミスりさえしなければ…………勝機はある!


「メドラ」

「なんだい?」


 色々といい情報をありがとよ。


「お前と飯が食えてよかったよ」

「なっ!? も、もう! やめとくれよ! そ、そんなこと言って……アタシを骨抜きにしたって、手加減はしてやらないからね」

「いや、そんなつもりじゃねぇよ」


 今のは、ちょっとした礼のつもりだ。


「勝負は正々堂々、真っ向勝負で行こうぜ」

「あぁ、もちろんさ」


 勝負事の話になり、メドラが狩人の顔つきになる。

 口角を上げ、ニヤリと笑みを浮かべる。


「愛と勝負は、別物だからねっ!」

「さ、食べようか」


 ドヤ顔で決め台詞を吐くメドラを盛大に無視して、俺はオシャレなプレート料理に箸をつける。


 ……別も何も、そもそも『愛』が存在してねぇっつうの。



 オシナの作る料理は地味ながらも、どれも美味くて、色々なあれこれが片付いてから改めて食べに訪れたいなと思える、そんな味だった。



 狩猟ギルドの魔獣のスワーム討伐が終わったら、いよいよ大食い大会本番だ。

 俺は、カフェオレっぽい見た目のゴボウジュースを飲みながら、静かに闘志を燃え上がらせていた。

 そして、……この地味な味わいのドリンクが、結構ツボにはまっちまって……悔しいなぁ、なんて思ってもいたりしたのだった。







いつもありがとうございます。




さて!

準備期間も終わり、いよいよ大食い大会が開幕します!


……というところで、大変申し訳ないのですが……風邪を引きました。

ちょっと頭とかぼや~っとして休養が必要そうです。


というわけで、明日はお休みします。(挿話です)


3000文字くらい書いて力尽きる予定です。

本日も早々に就寝いたします。

ですので、


感想欄に面白いボケとか、最新おっぱい情報とか、


絶対、書かないでくださいねっ! 絶対ですからね!



いやぁ、季節の変わり目ですねぇ。

そろそろ、おっぱいに包まって寝ないと、夜間は肌寒いですよね。


女性のみなさん、おっぱい放り出して寝ると風邪を引きますので十分ご注意くださいねと言いつつも心のどこかで、「出来たら放り出して寝ててほしいなぁ」という微かな希望にすがりつかずにはいられない自分自身の性分が、ちょっと好き。





タイミングがいい感じですので、書く予定のなかった魔獣のスワーム退治のお話を挟み込みたいと思います。

マグダ視点で見る、狩猟ギルドのギルド長とか、そんな感じのお話になるか、

もしくはヤシロがおっぱいをぽぃ~んってするお話か、どちらかになるかと思いま……おっぱいかなぁ……



そして、それが終われば、開会式です!

そこはかとなく体力を使いそうなエピソードになりそうな予感的なものをうっすらと感じつつあるので、体調を整えてから執筆に挑みたいと思います!



長らく引っ張ってきましたが、ようやく大会です。

まぁ、最終的におっぱいの大きさ大会になる可能性も否定しきれないところではありますが、

そんなに大きなおっぱいをお持ちなら、ちょっと熱っぽいおでこにひんやりしたおっぱいを載せてもらってもいいですかね?


『冷やしおっぱい、はじめました』


とか書いといていただければ、全国どちらへでも駆けつけさせていただきます。

そして、おでこにひんやりおっぱいを載せてもらって……


「あ……下乳、冷たくて気持ちい……」

「うふふ。ずっと日陰にいるからね、下乳は」

「…………下乳以外は日の当たる場所に出てたりするの!?」


そんな幼馴染が欲しかったです…………。

いや、今からでもいいんで欲しいですっ!



そんなわけで、本日のあとがきは短めですが、

明日一日、ゆっくり休んで、おっぱい……もとい、元気いっぱいになって帰ってまいります!



皆様もどうか、体調を崩されたりいたしませんよう……


ネットで調べた結果……冷やしおっぱいはどこでも始まっておりませんでしたので……




今後ともよろしくお願いいたします。


宮地拓海

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ