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異世界詐欺師のなんちゃって経営術  作者: 宮地拓海
第一幕

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92話 お買い物

 ミリィの花屋に行く前に、大通りでポップコーンを買っていく。当然陽だまり亭二号店のハニーポップコーンだ。

 最初は屋台を増やそうかとも思っていたのだが、現状は二つあれば十分だったりする。

 あまり一気に手を広げるよりも、地盤を固めて確かな顧客層を形成する方が重要だと思い直したのだ。経営は戦略的に、そして、臨機応変にだ。


 しかしながら、猛暑日にポップコーンは、さすがに売れ行きが悪いようだ。

 喉、渇くもんな。


 売り子をしている妹たちに、水分補給と定期的に交代して木陰で十分休憩を取るように言い含み、俺たちは花屋へと向かった。


「涼しぃ……」


 ミリィの花屋は、ひんやりとした涼しさに満ちていた。

 打ち水の効果っぽいな。


「ぁ……いらっしゃい」

「よぉ。昨日はありがとうな」

「ぅうん。みりぃも、たのしかった」


 ミリィは、大きなハサミを使って花の茎を斜めにカットしている最中だった。

 その花をまとめてテーブルに置くと、パタパタと俺たちの前までやって来る。

 動き方がちょこちょこしているので、本当にテントウムシみたいだ。いや、本当にテントウムシ人族なんだけどな。


「ちょっと聞きたいことがあるんだがな」

「なぁに?」

「竹はあるか? 出来るだけ太くて長い、立派なヤツがいいんだが」

「ぁ…………ぅぅ……」


 ミリィが困ったような表情を見せる。

 なんだ? 実は今売り切れたばっかりとか、そういうことか?


「ぁの……れじーなさんがね……」


 レジーナ?


「てんとうむしさんが、『太い』とか『長い』とか『立派』とか言う時はせくはらしようとしてる時だから、気を付けなさいって……」

「すまん、ジネット。俺、今からちょっとレジーナをぶっ飛ばしてくる」

「あ、あの、落ち着いてください、ヤシロさん! ミリィさん、レジーナさんのその発言はご冗談ですので、お気になさらずに!」

「ぇ……そうなの?」


 あんの真っ黒薬剤師……腹の中まで黒いのかあいつは……今度絶対ぶっ飛ばす。


「竹なら……、ちょっとまってくれれば用意、できるよ?」

「そうか。太くて長くて立派なヤツな」

「ぁう……ふ、太くてなが……」

「復唱はしなくていいですよ、ミリィさん! ヤシロさん、今面白がってやりましたね!?」


 いや、だってよ……


「ジネットも、昔はどこか抜けててぽや~っとしたヤツだったのに……そういうことに敏感になったんだなぁ……しみじみ」

「誰のせいですかっ!?」

「………………レジーナ?」

「…………それは…………否定は、出来ませんけども……」


 やはり、そばに男がいれば少なからず意識したりするのだろうか?

 意識…………俺を?

 …………………………………………


「……てんとうむしさん?」

「なんでもない!」

「にょっ!? ……な、なに、が?」

「あ……いや、…………すまん、なんでもない」

「ぇ…………ぅ、うん。わかった」


 何をやってんだ、俺は。


「それで、竹は……どれくらい、ぃる?」

「まぁ、2メートルくらいあればいいかな。もっと長くてもいいけど」

「わかった。こんど、もっていくね」

「よろしく頼む」


 エプロンのポケットから紙束を取り出し、さらさらと文字を書き込んでいく。


「ぁの……ごちゅうもん、ありがとうございました」


 手を揃え、ぺこりとお辞儀をするミリィ。頭の上で大きなテントウムシの髪飾りが揺れる。

 髪飾りが揺れるのが嬉しいのか、顔を上げると「ぇへへ……」と、髪飾りを手で押さえて照れ笑いを浮かべる。

 え、なにこれ。テイクアウトお願いしていい?


「あの、ミリィさん。これはなんの植物なんですか?」


 ジネットがカウンターのそばに飾られている細長い草を見つめて言う。

 花らしいものは咲いておらず、普通に草だ。茎と葉。葉っぱは、気持ちイチゴに似ているか?


「ぁ……それは、スノーストロベリー…………今から植えておくと、雪が降る頃に、毎朝実をつけてくれるの」


 雪……

 こんな猛暑日に耳にする単語じゃないよな。

 一体いつになるんだろうな、収穫出来るのは。


「毎朝イチゴが食べられるんですか?」

「ぅん。上手に育てたら」

「ヤシロさん、一つ買ってみませんか?」


 先行投資ってヤツか?

 まぁ、試してみるのも悪くないだろう。

 雪が早く降りますようにという、夏場独特の願いも込めてな。


「それじゃあ、それも竹と一緒に届けてくれ。今日は他にも行くところがあるからな」

「ぅん! 持っていっておくね」


 代金を先払いし、俺たちは花屋を出た。

 店先まで見送りに来てくれたミリィは、俺たちが見えなくなるまでずっと手を振っていてくれた。

 ただ、いつもの『エンドレスばいばーい』は、なかったけどな。見送る立場の時はやらないようだ。


「さて。レジーナを殴りに行こうか」

「いえ、それは…………えっと、あとは金物屋さんと、先ほどのスノーストロベリーを植えるための鉢を買いに行きたいのですが」

「鉢……じゃあ、セロンのとこだな」

「はい」


 金物屋よりもレンガ工房の方がここからは遠い。遠回りするなら手ぶらな状態の方がいい。荷物を持ってこの酷暑の中を遠回りするなんざ考えただけで汗が出る。先にレンガ工房へ向かうとしよう。


「こんな、さんさんと太陽が降り注ぐ日だと、ウェンディが日中でも光ってるかもしれんな」

「うふふ……そんな、まさかですよ」


 などと笑いながら、人通りの少ない道を歩き、レンガ工房へとたどり着く。


「あ、英雄様!」

「うっわっ! 眩しっ!?」


 レンガ工房で俺たちを出迎えてくれたのはウェンディだった。……のだが、ちょっとした日陰に入るとこれでもかと光を発散し始めやがる。

 こいつ、目に悪いな……


「も、申し訳ありません!」

「お前、まだ光る花の研究を続けているのか?」

「はい。でも今は、レンガに使える塗料の開発がメインです。その……セロンの仕事を支えたいので…………キャッ!」


 わぁ、可愛い猿のマネ~。

 照れたんじゃないぞ。今のは猿のマネだ。断じて照れたんじゃない! そうでないと認めない!


「今、レジーナさんの薬で、光を抑えますね」

「わざわざ買ってきたのか?」

「いえ、あの……英雄様の前であまり眩しい光を発すると……その……、『目がくらんで何も見えない~』とか言いながら、私の胸を揉もうと狙ってくるから……一応持っておけと言われまして」

「すまん、ジネット。俺、今からちょっとレジーナをぶっ飛ばしてくる」

「あ、あの、落ち着いてください、ヤシロさん! ウェンディさん、レジーナさんのその発言はご冗談ですので、お気になさらずに!」

「はい。もちろんです。英雄様がそのような破廉恥な行いをされるはずがありませんもの」

「……そいつは、どうかな?」

「含みを持たせないでください!」


 まったく。レジーナのせいで変な噂が広がりまくりだ。

 あいつはもうずっと部屋に閉じこもっていればいいんだ。


「これはこれは。ようこそ、我が工房へ」


 手ぬぐいをバンダナのように頭に巻いて、さわやかな汗をかいたセロンが窯場から現れた。

 この猛暑日にレンガを焼いているのか? なんだ、ドMか?


「セロン。お前は変態だったんだな」

「すみません、英雄様……いきなり過ぎて話が見えないのですが……?」


 セロンが戸惑い気味にウェンディを見る。するとウェンディはくすくすと笑って微笑みを返す。視線と視線が交差すると、二人は揃って軽やかな笑いを零した。

 よしっ! この場で爆発しろ!


「実は、鉢植えが欲しいんです。スノーストロベリーを植えたいと思いまして」

「あぁ。それでしたら、おすすめの物がありますよ」


 リア充爆破計画を練り始めた俺を置いて、ジネットが鉢植えを注文している。


「あ、そうです、英雄様」


 鉢植えを取りに行きかけたセロンだったが、俺の方を向き直り、自信たっぷりな表情でこんなことを言ってきた。


「以前、英雄様に教えていただいた物が完成したんです! 手前味噌で恐縮ではありますが、なかなかの出来だと思います」

「……俺、なんか言ったか?」

「一緒に持ってまいります。もしお気に召しましたら、是非お持ちください」


 嬉しそうな顔で焼き場へと戻っていくセロン。

「あぁ~ん、暑いぃぃんんんっ!」とか、変態チックな声でも聞こえてこないかな。そして、お前のイケメン度を急落させるがいい。


 もちろん、そんな奇抜なことは起こるはずもなく、戻ってきたセロンは相変わらずの爽やかスマイルで、輝く汗が男前に拍車をかけていた。……ちっ。


「ご覧ください! 七輪ですっ!」

「……ぅわぁ~……」

「是非お持ちくださいっ!」

「え、なに? 俺に死ねって言ってるの?」


 こんなクソ暑い日に七輪なんか使うかよ。

 俺はお前と違って熱気に興奮する変態ではないんでな。


「え、でも……海漁ギルドのギルド長様とお話をされていた時、七輪があれば嬉しいとおっしゃっていましたよね?」

「あ? あ…………あぁ、あの時かぁ……」


 数週間前。

 吹く風がとても涼しく、秋が深まったような、そんな気持ちにさせる気候が続いた時期があった。

 そんな折り、海漁ギルドのマーシャが俺にサンマとハマグリを持ってきてくれたのだ。

 そこで俺は、「七輪があるといいんだけどなぁ」という旨の発言をし、たまたまそこに居合わせたセロンに七輪とはどういうものかを教えてやったのだ。


 ……まさか、マジで作るとは。しかも、こんな猛暑日に……


「も、もしかして、ご迷惑……だったでしょうか?」


 セロンの顔色が一瞬で青くなる。


「英雄様の許可も得ず、勝手に作成してしまいまして………………ぼ、僕は、なんて早まったことを………………そ、そうだ、こんな素晴らしい物を、自分が作らせてもらえるだなんて勘違いを…………ぼ、僕はぁぁあっ!?」

「セロン!? 英雄様! 申し訳ございません! もし罰をお与えになるなら、どうか、私にも同等の罰を! セロンを見つめていながら、止めることを怠った、この私にも!」


 頭を抱えて地面に蹲るセロン、その肩を抱きつつ、俺に向かって膝をつき頭を下げるウェンディ…………え~、俺、完全に悪者じゃん…………


 ……はぁ。


「ぅ、うわ~い! ちょうど七輪が欲しかったところなんだよねぇ~、さすがセロンとウェンディは気が利くなぁ! あ~、よく見たらこりゃあ一級品の七輪だ~! さすが、仕事が丁寧でグレードが高いぜー!」

「本当ですか、英雄様!?」

「よかったね、セロン!」

「ウェンディのおかげさ! 僕を応援し続けてくれたから!」

「そんなことない! 私はただ、セロンのそばにいただけ……」

「それが、僕の力になるんだよ……」

「セロン……」

「ウェンディ……」


 お前ら、七輪で焼くぞ?

 醤油一差しして香ばしく焼き上げるぞ、リア充め!


「いいお買い物が出来てよかったですね、ヤシロさん」

「俺の国では、こういうのを押し売りとか泣き落としとか言うんだぞ」


 こんなもん、詐欺の一種じゃねぇか。

 ただ、七輪のクオリティはマジで素晴らしい。

 さぞや、美味いハマグリが食えるだろう。……雪でも降る頃になればな。


「それじゃあ、スノーストロベリーの鉢と一緒に陽だまり亭に届けておいてくれ」

「はい。七輪は全部で四つございますが、おいくつお持ちしましょうか?」


 四つ……

 ちらりとジネットを見る。

 ジネットは「お任せします。……でも、お優しい対応を」とでも言いたそうな困り笑顔を俺に向けていた。

 ……くそ、こいつら。詐欺師に押し売りするとは……とんだ食わせものだ。


「折角だから四つもらうよ。いつか、七輪パーティーでもやるさ」

「いいですね! その際は、我々も是非っ!」

「お手伝い出来ることがあれば、なんだっていたしますので!」


 え~ん、なんかすっごいグイグイくるんですけど~……


「分かった! 分かったよ! 雪が降ったら雪見酒でも飲みに来い」

「「はいっ!」」


 光り輝くような笑顔を浮かべて、セロンとウェンディは頷いた。……あ、ウェンディはマジでちょっと輝いてたけどな。


 これ以上いると、窯場の熱とリア充のラブラブハートで猛暑日がさらに暑くなりそうだったので、俺たちは早々にレンガ工房を後にした。

 不思議なもんで、レンガ工房を出た瞬間、温度が2℃ほど下がった気がした。


「……暑苦しい場所だったな」

「幸せそうでいいじゃないですか」

「……今度セロンに足つぼやってやる」

「可哀想ですよ。うふふ」


 俺の隣を歩きながら、ジネットは肩を揺らしてくすくす笑う。

 なんだかとても機嫌がよさそうだ。


「買い物は楽しいか?」

「え?」

「いや。あんまりないだろう? こうやってゆっくりといろんな店を回るなんてことはさ」


 だいたいアッスントがやってくれるようになったからな。優秀なのはありがたいが、やはり買い物は自分の足で歩き回るのが楽しい。

 日本にいた頃、PCのパーツを探して一日中電気街をウロついたこともあった。

 なかなか楽しい思い出だ。


「お前も、たまには休みを取って、こうやって買い物を楽しめばいい。そうすれば、新たに見えてくることもあるだろう」


 まぁ、そうなったら、どこかの怪しい店でまんまと詐欺に引っかかったりしそうで、ちょっと心配ではあるがな。


「そうですね……。お店の方も、少し安定してきましたし」


 実際、マグダとロレッタが揃っていれば、店は回せるようになりつつある。まだまだジネットの下ごしらえや指示が必要ではあるが、そのうちそれすら必要なくなるかもしれない。妹たちもいるしな。


「そういう時間を作ることも、悪くないかもしれませんね」


 ジネットの笑みはとても朗らかで、出会った頃よりもほんの少しだけ、大人っぽく見えた。

 陽だまり亭にしがみついているだけだったこいつは、もういないのだ。少しずつ距離をあけられるようになり、少しずつだがマクロな視点で世界を見つめることが出来るようになってきている。

 陽だまり亭が、ジネットにとって大切な場所であることは、この先一生変わることがないだろう。だが、それだけではなくなるかもしれない。

 いや、そうなるはずだ。

 陽だまり亭は、ジネットにとって『大切なものの一つ』というポジションになるのだ。


 それは、ジネットが成長したという証拠になるだろう。


「でも……」


 ふと……

 前を向いて歩く俺の視界からジネットが消えた。

 流れていた景色に溶けるようにいなくなってしまったのだ。


 ジネットが足を止めたのだと気付いて、そちらを振り返る。

 風景が手ぶれ画像のようにピンボケして、立ち止まるジネットにだけ照準が合っていた。


「その時は、ヤシロさんも一緒にいてくださいね」


 いつもと変わらない。あの笑顔がそこにあった。


「……ぇっと」


 一瞬。

 ほんの一瞬だが、頭が真っ白になった。


「…………まぁ、たまには、な」

「はい」


 くっそ…………何をちょっと浮かれてんだ、俺は。


 とてて、と、ジネットが俺の隣に来るのを待って再び歩き出す。

 流れていく景色が、さっきまでよりほんの少し淡く見えるのは……まぁ、気のせいなんだろうな。


「さぁ! 次は金物屋だ! ノーマのおっぱいでも拝みに行こうぜ!」

「もぅ、ヤシロさん。そういうことばっかり言ってるから、レジーナさんにいろいろ言われちゃうんですよ」


 優しく叱るように、ジネットが俺の腕を軽く押す。

 あれ? ジネットってこういうボディータッチする娘だったっけ!?

 してたかなぁ……してたか。じゃあなんだ? 俺が意識するようになったってのか?

 ふざけんな。なんで俺が……


「まぁ、レジーナだからな。さすがにノーマのとこにまでは顔を出してないだろう。引きこもりの人見知りだしな。あいつたぶん、キノコの一種なんだろうな」

「くすっ…………酷いですよ、ヤシロさん」


 盛大に吹き出した後で言ったって説得力がない。

 くすくすと笑うジネットと並んで大通りへ戻り、一本裏の路地に入ると、そこは金物通りだ。


 緩やかな上り坂になっている金物通り。そこの入り口付近にノーマの金型屋が建っている。

 何かある度にいろんなものを注文しているため、俺にとってはもうすでに馴染みの深い店になっている。


「ノーマ、いるかぁ?」

「あぁ、ヤシロかい? いるにはいるんだけれどねぇ……」


 店の奥で優雅に煙管をふかすノーマ。紫の煙が薄暗い室内でくゆる。天井付近で円を描いて消えていく。

 カウンターに体重を乗せるようにもたれかかるノーマ。おっぱいがどでんと乗っかっている。


「あんたが来たら、警戒するようにレジーナに言われてるんだよねぇ」

「すまん、ジネット。俺、今からちょっとレジーナをぶっ飛ばしてくる」

「あ、あの、落ち着いてください、ヤシロさん! ノーマさん、レジーナさんのその発言はご冗談ですので、お気になさらずに!」

「くふふ……分かってるさね。からかうと可愛いんだよ、そのボウヤはね。くふふ……」


 煙管を器用に回して灰を落とす。


「そうそう。『冷蔵庫』はどんな塩梅だい? 使い物になるなら他にも売ってやりたいんだけどねぇ」

「まぁ、ぼちぼちだな。やっぱり天候に左右されやがる」

「そこは仕方ないさね。井戸に放り込んでおくだけなんだからね」


 新しい葉を煙管に詰め込み火を点ける。

 微かに甘い、煙のにおいが立ち込める。


「ヤシロさん。『れいぞうこ』というのは?」

「あぁ。俺がみつ豆作る時に、寒天を冷やしていた箱だ」

「あぁ、アレが冷蔵庫なんですかぁ」

「いや、違うんだけどな……」


 それは、とても冷蔵庫とは呼べない代物だった。

 陽だまり亭の井戸は深い。故に、水面近くはなかなかひんやりしている。

 というか、井戸水はキンキンに冷えているのだ。

 そこへ、この『冷蔵庫』なる、完全防水の金属の箱を放り込む。これだけのことなのだ。

 まぁ、確かに冷えるんだけどな。河原で夏野菜を冷やしているような感覚と言えば想像出来るかもしれないな。

 とはいえ、このクソ暑い真夏を乗り越えるには、いささか数が不足し過ぎだ。

 まぁ、精々みつ豆が美味しく作れる、くらいが関の山だ。


「それで? 何が欲しいんだい?」

「はい。スコップを二つほど」

「スコップだね。ちょいと待ってな。いいヤツを選んできてやるからさ」

「はい。よろしくお願いします」


 その後、ノーマが持ってきたスコップを二つ購入し、俺たちは陽だまり亭へと戻った。

 暑い中を歩き回ってクタクタだ。



 だけど、……なんでかなぁ…………なかなか楽しい一日だったと、そう思えた。







いつもありがとうございます。



ありがたいことに、最近感想欄がとても賑やかです。

そろそろ落ち着いてくる頃かなぁと予測を立てていたのですが、

日ごとに増加傾向にあるようで、みなさんの愛に押し迫られて、

もはや窒息寸前です……ひぃひぃふぅ……もとい、ぜぇはぁ。



出来る限りこれまで同様のお返しをしていきたいところなのですが、

時間にも限りがあり、これから8月末に向けて個人的にちょっと忙しくなることもあり、

何より本編が滞っては本末転倒ですので、

本日より、ごたごたがある程度落ち着くまでは

短めな返し(頂戴した感想に対し1:1くらいの割合)で参りたいと思います。

どうかご容赦くださいませ。


ただ、SSページを盛り上げるためにも、SSはちょいちょい書いていきたいので、

一日2~3名様を上限に、『大当たり』と称して感想返しにSSを投入させていただく所存です!

……え? いらない? まぁそう言わずに…………


選出方法は……どるるるるるるるる、ばん!

作者権限!

私をより気持ちよく持ち上げてくださった方に進呈します!


……というのは冗談として、

あみだなり、くじ引きなりして決めようかな、と思っております。



返信が短くなっても感謝の気持ちは変わりませんので、

どうかここはひとつ、ご了承くださいますようお願い申し上げます。





さて、ふと思ったのですが……



ヤシロ「パイオツ・カイデー」

ジネット「ぱいおつ・かいでー?」




ヤシロ「エステラはつるぺただからな」

エステラ「誰がつるぺただい!?」




……なぜなのか?



『強制翻訳魔法』では、


「一部の人にしか通じない作られた言葉」は伝わらないというルールがあります。


では、「つるぺた」は?

最近ではみんながヤシロを「ツンデレ」なんて呼んでいますが、

なぜ「一部の人にしか通じない作られた言葉」に該当しそうなこれらの言葉が普通に使用されているのか…………



それにはこんなわけがあるのです。




ヤシロ「ジネット。聞きたいことがある」

ジネット「はい。なんですか?」

ヤシロ「ちょべりば~!」

ジネット「どこの言葉ですか!?」

ヤシロ「な? 通じないんだよ。でもなんで『つるぺた』とか『ツンデレ』が通じるんだ?」

ベルティーナ「それに関しては、精霊神様の魔法に詳しい私がお答えいたしましょう」

ジネット「あ、シスター」

ベルティーナ「ヤシロさんは、『強制翻訳魔法』の有効範囲について、疑問を持たれているわけですね?」

ヤシロ「あぁ。どう考えても一貫性が無い。どういうことだ?」

ベルティーナ「当然です。『強制翻訳魔法』は生きた意志により効力を発揮しているのですから」

ヤシロ「生きた意志?」

ベルティーナ「『強制翻訳魔法』には、学習能力がある。――と、言えば分かりやすいでしょうか」

ヤシロ「そうなのか?」

ジネット「そうですね。一度覚えた言葉の法則は、その後応用され、よりスムーズに会話が出来るようになっていると思います」

ヤシロ「確かに、『にゃんにゃん』は通じなかったが『ズッコンバッコン』は通じたもんな」

ジネット「ヤシロさんっ!」

ベルティーナ「それともう一つ。私たちも日々成長しているでしょう?」

ヤシロ「俺たちも?」

ベルティーナ「例えば。ジネットがヤシロさんに『そうだ死ね』と言ったとします。その際、ヤシロさんはどう解釈されますか?」

ヤシロ「『そうですね』を噛んだんだろうなと、思うかな」

ベルティーナ「そうです。そのように、相手の人となりを知り、より深い理解をすることにより、同じ言葉であっても解釈が変わってくるのです」

ヤシロ「『うっせぇ、ばーか!』が、純粋に悪口に聞こえるか、親愛の表れと受け取るか、みたいなもんか?」

ベルティーナ「ニュアンスもさることながら、例えば、『ブリの照り焼き』を『ブリ照り』と略すような文化圏の言葉であれば『イケメン』が『イケてるメンズ』の略であるのだろうなという推測がつきます。『強制翻訳魔法』は、そういった推測を積み上げてきた情報から構築し、どのような言語にも対応出来るように成長していくのです」

ヤシロ「グーグルの『もしかして○○?』とか、マイクロソフトオフィス・ワードの漢字変換が使用者のクセを覚えていく、みたいなもんか」

ベルティーナ「蓄積された情報が多ければ多いほど、よりスムーズな翻訳が可能になります。ですので、たまに驚くような言葉がサラッと翻訳されたりもするんですよ」

ジネット「外からこの街に来られた方の多くが、ある程度住み慣れた頃に同じ疑問を持たれますね。『その言葉、どこかで教わったのか』と」

ヤシロ「じゃあ、『パイオツ・カイデー』の意味も分かるのか?」

ジネット「はい。分かりますよ。『笑顔が、素敵』ですよね」

ヤシロ「……そこはちゃんと伝わらないままなんだな……相変わらず曖昧だな『強制翻訳魔法』……まぁ、生きた意志とかいうのが働いているなら、制度にブレがあるのはなんとなく頷けるが……」

ベルティーナ「私たちは、日々こうして顔を合わせ、言葉を交わすうち、次第に心を通わせ、相手を理解していきます。私やジネットがもっとヤシロさんを理解し、ヤシロさんが私たちをもっと理解してくだされば、コミュニケーションはより円滑に取れるようになるでしょう。それが、『強制翻訳魔法』というものなのです」

ヤシロ「なるほどな」

ジネット「分かっていただけましたか?」

ヤシロ「あぁ。つまり、『ご都合主義』なんだな」

ジネット「聞いてましたか、ここまでのお話っ!? もっと愛のある内容だったと思うのですが!?」

ヤシロ「『なんかよく分かんないけど、通じるもんは通じるし、通じないもんは通じない。でも、それってそういうものだから、ご都合主義だけどあんまり深く突っ込んじゃや~よ☆』ってことでいいんだな?」

ベルティーナ「はい。概ねそんな感じです」

ジネット「違いますよ!? 生きた意志による解釈が……! お互いを信頼し理解することでより円滑なコミュニケーションが……! 愛ですよ、愛! 愛のなせる業です!」

ヤシロ「そうだな! 『ご都合主義』でも、愛を持って、おおらかな気持ちで、おっぱいでも揉み揉みしながら、広い心で受け取ってくれるととっても嬉しいなっ!」

ジネット「誰に向けて言ってるんですか、ヤシロさん!?」

ヤシロ「みんな! 愛をよろしく!」

ジネット「みんなって誰ですか!? ヤシロさん!? ……ダメです、言葉が通じません……『強制翻訳魔法』のエラーでしょうか? しっかりしてください、生きた意志ー!」




――というわけで、『愛』って、大切ですよね。




☆『強制翻訳魔法』まとめ☆


・生きた意志による学習能力が備わっている。← NEW

・発信者と受信者の理解度により翻訳内容に変化がある。

・略し言葉は本当の意味で伝わりやすい傾向がある。

・置き換え言葉は状況により伝わりにくいことがある。

・ただし、状況により伝わることがある。(ズッコンバッコンとか)

・ニュアンスを上手い具合に伝えてくれる小粋な計らいをしてくれる。

・遊び心を忘れない。(大阪弁とか)

・結局のところ『ご都合主義』← 重要



ジネット「愛ですよ! 愛っ!」

ヤシロ「ご都合……」

ジネット「愛ですっ!」



ウチのワード様は「ちちうえ」を『乳上』に、「にゅうじょう」を『乳上』と変換します。

おっぱい汚染が酷いのなんの。これが、『学習』です!


『レッツ・ゴー・トゥ・ザ・乳ワールド!』


わはっ! 行きた~い!

みたいなことになります。これが、『学習』です!



……最近、設定や内容を褒めてくださる方が多く、嬉しい反面、不安が生じてきた次第です……

そんな高度なお話じゃないのに……8割方おっぱいで乗り切ろうとしているキャラ小説なのに……

ありがたくもプレッシャーに押し潰されそうです…………ぷちゅ。

ギャグはギャグとして受け取っていただけると非常にありがたいです。



今後ともよろしくお願いいたします。



宮地拓海



追伸

明日は所用のため更新時間が少々遅くなるかもしれません。ご了承ください。


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