表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/88

閑話10 お悩み解決、女神様!

寝る前布団でゴロゴロしてたら思いついたので。

とある教会にて、悩みを抱える聖職者の女性がいた。


『私にはお慕いしている方がいます……ですが、私は聖職者。女神様はあまり好まれないとか……』


とか言う悩みであった。

本来なら笑ってスルーする所だが、本人が余りにも深刻に考えているようなので、暇潰しも兼ねて相手する事にした。少々気になる事もある事だし。



教会へと一柱が舞い降りる。


「え……」

「笑い飛ばしたいところだが、余りにも深刻そうだったのでな」

「め……女神様!?」

「で、何故そんな悩んでいる? 妾としてはそんなつもりは一切無いのだが?」

「えっと……その……」

「神眼でバレるのだから、無駄だぞ? ……聖女一行に法国が原因か」

「うぅ……」


神眼で思考や過去が見える。

例え言いづらかろうが、神々にはバレるのだ。

ただ過去を遡り続けるのは面倒なので、実際に話して思考を誘導する。

すると、すぐに分かるわけだ。


「ふむ……。まあ結論から言えば、好きにすると良い。子供作らないと種として詰むぞ? ……ジェシカやエブリン、それと法国はどちらも極端な例だからなぁ」

「よろしいのですか……?」

「構わん。誰が誰を好きになろうが妾は口出さんよ。眷属達やフィーナになると話は別だが……まあ、それは置いておこう」


これではい終わり……としたいのだが、そうもいかないな?


「ジェシカとエブリンは確かに生前未婚だった。だがこれはあいつらが決めた事。妾は一切何も言っていないぞ」

「そうだったのですか……」

「所謂一般的な女性が考える幸せ。『素敵な人とくっついて、子供を授かり、子育てして……』とかなんだろうが、奴らがそんな事に見向きもしなかっただけだ」


いや、ジェシカとエブリンにとって、素敵な人は確かにいたんだな。

それが異性ではなく、同性だっただけだろう。

ジェシカにとってはエブリンが。エブリンにとってはジェシカが、確かに素敵な人だった。ただそれが『愛』や『恋』ではなかったと言うだけだ。

確実に2人は支え合い、お互いに影響しあって生涯を終えた。これは間違いない。


「2人は実に我が儘に、生前を過ごしたぞ? あれほど我が儘を通せた者はそうはいまい……王とて無理じゃないか?」

「え……お二人が我が儘……ですか?」

「そうだぞ。奴らは生涯、自分がやりたいことをやって死んだからな、うん。まあ、それを許可したのも妾だが」


ジェシカとエブリンの2人は元々法国の人間だ。

だが自国のやり方が気に入らず、家と縁を切り飛び出し旅を始めた。

そして治療しながら街や村を回り、いつしか聖女一行と呼ばれるようになった。

『聖女』などという使えるコマを法国が放っておくわけもなく。

それでも尚我が儘に、自分達のやりたい事だけをやり、処分されそうになった所で女神……シュテルに拾われた。

その後はシュテルの所でのんびりしつつ、アトランティス帝国ができてからはそこでシュテルのお世話、フィーナの相手、治療院で治療……と。


「やりたい事だけやってたな。休めって言うと、フィーナと遊び始めるんだあいつらは。基本自分の好きな事しかしてないから、疲れを知らん。いや、むしろその疲れこそが奴らにとっては幸せだったのかも知れん。やりたい事をやった、充実していたからこその『疲れ』だな。後は布団に潜り込んで熟睡だ」


別に2人の我が儘は悪いことではない……むしろ世間的には良いことだ。

貧しい村々を回り、お金または2人分の少ない食材を貰い、治療して次の村へ。

だからこそ聖女と呼ばれ、妾が拾った後も特に何も言わず、好きにさせていた。

奴らの食べる食材はこっちで用意した物だ。食材の買い出しなんか行かないぞあいつら。羨ましいぐらいに自分達のやりたい事を、生涯やっていたわけだ。

女神という特大のバックアップを付けて……な。

ただ幸運だった訳ではない。奴らの行動の結果、妾が奴らを拾ったのだから、2人の行動の賜物だろう。


「ある意味幸せで、ある意味不幸……それがあの2人だ」

「幸せで……不幸?」

「そうだな。あいつらはお前のように『恋』などは知らん。世間一般的に言われる女の幸せとは無縁だ。だが、他の者には不可能と言えるほど、己を貫き我が儘に好きな事だけをして死んだ。奴らの生き方は極端だったんだ」

「…………」

「だが2人に生前を問えば、それはもう幸せだったと答えるだろう。人は我が儘な生き物だ。そして、幸せかどうかなど決めるのは本人だけだ。世間一般から見ればどうであっても、奴ら2人からすれば十分に幸せだった」


他者の言葉を気にしすぎる必要はない。

結局は自分がどうなのか……それが全てだ。

他者に全く迷惑をかけないと言うのはまず無理だ。迷惑をかけてかけられ、それでも笑って生きられる奴らを大切にしろ。

人類全員に好かれるなどとうてい無理な話だ。あの聖女一行とて、邪魔と言う理由から殺されかけているのだからな。


「お前の人生、決めるのはお前だ。そこに我々神々を気にする必要はない。お前が恋をして、好きな者とくっついたならそれはそれで良しだ。聖職者とは、神々に祈りを捧げる者達……そこに男女も、既婚未婚も、年齢も関係ない。お前がそう選んだのなら、その選択を尊重しよう」

「女神様……」

「そもそも、妾も女神になる前は人で、既婚者だったからな」

「え……えぇ!?」

アトランティス帝国(うち)では結構有名な話なんだが、この辺りでは知らないのか? いや、そもそも知ってたらそんな悩みはしないか。ハハハハ」

「な……なんと……」

「ところで、問題は法国の方だ。その考えはどっから来た?」

「え? えっと……子供の頃に読んだ女神様のお話……でしょうか?」

「法国に関しての話はある意味、人間達への戒めの意味もあるから、結構バッチリ書いてあるはずなのだが……そうか、子供用か」


あの件に関しては、人によって認識が違うのは地味に問題があるのだが……数世代も変わればそんなものか?

まあ、それはともかく。


「教会なら原本のコピーがあるだろう? 子供用じゃないしっかり書かれた物が。今すぐにでも読み直してこい。法国に関してはそれで解決するだろ」

「は、はい! あの、ありがとうございました」

「うむ。では妾は戻る」


いつもの場所へと転移して帰る。

残された女性はお祈りした後、言われた通り原本のコピーを読みに行き、悩みが解決した。

無事くっつく事ができるかは……別の話だが。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
凄い傑作でした。あぁ終わっちゃったかぁと惜しいですが、ここで終わるからこそですね。
[一言] すごく面白かったです! 素晴らしい物語をありがとうございました!
[一言] 最後まで読ませて頂きました!素晴らしい終わり方と後日談だと思います。 ほっこり感動しました。ありがとうございました
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ