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転生先は現人神の女神様  作者: 子日あきすず
現人神の女神様
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73 再臨、そして再開

本日2話。これ1話目。

アトランティス帝国の大神殿上空に転移し、降りていく。

防衛システムの結界があるが、全く関係なく通過する。


そして、結界を超えた瞬間に…………精霊に包まれた。


『帰ってきたー! しかも自然神様だー!』


ぶわーっと全身に精霊達が貼り付く。精霊達は我慢できなかった。されるがまま立ち代わり群がられている間に、精霊達から聞き捨てならない事を聞いた。

セラフィーナが今まさに虐められているらしいじゃないか。



セラフィーナが大事にしている誕生日に貰った神聖樹の杖。

あろうことかそれを奪い壊そうとしている者と、セラフィーナを抑えている者がいた。他の者は何しているかというと、虐めている奴らが無駄に上級貴族なだけに手が出せないでいた。


「やめて! お母様に貰った大事な杖なの!」

「ふんっ。俺より良いものを持つなど気に入らん!」

「そんなくだらない事で!」


フィーナは現在11歳。

子供だからこその残虐な行為と言うか、割りと子供は容赦がない。

そこに貴族のバカ息子というのが入ると完璧だ。

ただ、今回は相手が悪すぎる。よりによってセラフィーナに手を出し、更に最高のタイミングで『親』が帰ってきた。相手からしたら最悪のタイミングだが。


「返して欲しけりゃ力尽くで奪ってみろよ! この杖無しでできるもんならな!」

「そうする」

「させ……ぐえっ」

「なにっ!? くそっ!」


杖なんか無くてもセラフィーナは戦える。伊達に眷属騎士達に教わっていない。

右腕を抑えていた者が《身体強化》したセラフィーナに簡単にぶっ飛ばされる。

それを見て焦った杖を持ってる者が更に杖を痛めつけ始める。

そして左腕を持っていた者が顔面に容赦ないグーパンを喰らい離れる。


そのタイミングでバキッと言う音が響く。


グーパンしたセラフィーナがそっちを見ると、先端の方で折れた神聖樹の杖が目に入った。唖然として杖から少年に目を向けると……。

少年は肩で息をしているが、憎たらしい満足気なドヤ顔を浮かべていた。


「ハハハハ! どうだ! 俺に逆らうからこうなる!」


セラフィーナが本気で怒るのはこれで2回目だろう。

最初は両親が殺された時。でもあの時は何の力も無かった。

でも今は訳が違う。


「よくもお母様がくれた杖を……許さない……」


威圧なんて生温い……殺気が周囲を飲み込む。

まだ1人だけに当てるなんて器用なことはできない。周囲の子達はとばっちりだが、止めないのが悪い。そうすれば巻き込まれる事は無かっただろう。


セラフィーナの足元に4メートル規模の巨大な青白い魔法陣が表示され、すぐに輝き、現象として現れる。


「押し潰せ……! "グレッチャー"」


学園の防衛システムが発動し、《攻撃魔法》を使用したセラフィーナはシールドに囚われ、発動した魔法も削られるが、"グレッチャー"は氷の塊を敵の頭上に落とす上級クラスの《攻撃魔法》である。

削りきれず殺気に当てられた少年に落ちる……瞬間"グレッチャー"は消し飛んだ。

そして、セラフィーナを閉じ込めていたシールドも解除された。

何事かと思った時、上から声が聞こえた。


「魔法触媒無しで上級クラスをあの速度で発動か。うむ、我が娘は強くなっているようだな。だが、そんなクソガキのために殺人犯になることはないぞ、フィーナ」

「おかあ……さま……?」

「うむ、帰ってきたぞー」


下に降りてセラフィーナを抱きしめるとわんわん泣き出したので、撫で撫でして落ち着くまで待つ事にする。

その間に情報を集めておき、落ち着いたらセラフィーナを離す。


「さて……、お仕置きの時間だな。まさか帰ってきていきなり不快になるとは思わなかったぞ」


折れた杖の場所と自分の目の前の空間を入れ替え、杖を手元へ持ってくる。


「……木製の魔法触媒だからこれはもうダメだな」

「ごめんなさいお母様……」

「フィーナが謝る事では無いだろう。それに元々これ、練習用の杖だしな」

「えっ? 練習用だったの?」

「そうだぞ。7歳の時に渡したんだから当然だ。だから端っこの方で作った。むしろ今までよく耐えてたな。流石神霊樹か? 子供に渡すからと雑に扱う前提で渡した物だったが……。まあ、そろそろ新しいのを作るか」

「新しいの……」

「今に合ったやつを使わないと杖は逆効果だからな。まあ、その前に……クソガキ3人をしばき倒してからだ」


セラフィーナが落ち着く間に復活した周囲。

中でも元凶の3人に目を向ける。


「さっきからクソガキとは俺のことを言ってるのか!?」

「貴様だけじゃなくてその2人もだな」

「俺を誰だか知って言ってるのか!」

「貴様が誰だろうと関係ない。うちの子を泣かせた挙句に物を壊した。叱るには十分な理由だ。そもそも貴様こそわらわが誰か知っているのか?」

「何故俺が貴様に叱られなければならない! 俺と大して変わらんじゃないか! 貴様のことなど知らん!」

「……まあ、子供達は仕方ないにしても、何故教師達がこのクソガキを放って置くのか?」

「クソガキクソガキ言いやがって! 父上に言いつけてやるからな!」

「ふぅん……さぞかし偉いんだろうなぁ。君のパパは」

「そうだ! 侯爵だぞ! 今更謝っても許してやらんからな!」

「こちらのセリフだ小僧。話にならん。女神でこの国の王であるわらわに小国の侯爵如きが何かできるとでも? 最低でも王家を連れてこい」

「は……え……?」

「うちの子を泣かせた挙句、神聖樹とルナクォーツの杖の破壊。更に反省の色なし。精々自宅からの手紙を震えて待つんだな。当然3人ともだ」

「「「…………」」」

「学園長、今日はセラフィーナ連れて帰るぞ。家族団欒だ。国民達に戻ったことを知らせないとならんしな。帰るぞフィーナ」

「うん!」


セラフィーナを抱きしめて大神殿の会議室へと転移する。

そして念話でシロニャンとブリュンヒルデ、後エステルを集める。

皆が来るまでセラフィーナを抱えて撫で撫でしておく。

一番乗りは当然のようにシロニャンだった。


「ちゅいー!」

「にゃっ」

「ちゅいっ! ちゅいっ!」

「フィーナの頭を踏み台にするのは止めなさい……」


そしてブリュンヒルデも扉をバーンと開け入ってくる。


「ルナ様! ルナ……様?」

「やあヒルデ。外見についてはエステルが来たらな」

「はい」

「ところで、どのぐらい経った? 大半寝てて把握していない。聞くのも忘れた」

「約2年ほどです」

「ふむぅ。まあ2年で済んだなら上等か……。入れ」

「お待たせしました」

「うむ、では大事な話をしよう。国民も余裕があれば聞くように」


エステルも揃ったところで、早速始めよう。

そこそこ言うこともあるし、聞くこともある。


「ではまず、わらわの話をしておくか。国民全員に聞いてもらわないと困るからな。どこから話したものか……」


まず今までの月の女神は月神を模倣した体に詰め込まれた、いわば研修期間だったこと。名前も月を指すルナが入っていた。

そして今回の件で研修期間を終え、正式に一柱となった。キグルミからちゃんとした体を得たため、前とは比べ物にならない能力を持っている。

身長は冒険者用の分身体サイズになっており、髪の色と目が微妙に変わっている。髪はシャンパンゴールド、目が少々キリッとした。それと翼は純白に変わった。

『夜と魔を司る神』から『時空と自然を司る神』となり、名前も変わった。

ルナフェリアからシュテルンユニエール。星と万物、神を意味する名になった。

今まで通り陛下で良いが、名を呼ぶ時はユニエールと呼ぶように。眷属達はシュテルもしくはユニで構わない。創造神様はシュテルと呼ぶ。


「わらわに関してはこんなところか。月の女神じゃなくなり、万物の女神になった事、それにより名前が変わった事を覚えておけば構わん。ベアテ後で服作って」

『いつでも』

「では、いなかった間の報告を聞こうか」

「畏まりました」


いなかった約2年間の報告をブリュンヒルデとエステルから報告して貰う。

当然長くなるのが確定しているため、細かいのは後々聞くとして、大雑把にいなかった間にあったことをブリュンヒルデから聞く。


「1番大きな出来事はあれですね、東の小国が宣戦布告してきた事でしょうか」

「ほう。わらわがいる時にして欲しかったものだな」

「娯楽扱いですね?」

「当然。で、どうしたんだ?」

「シロニャン様がブレスで吹き飛ばしました」

「……え、国?」

「いえ、進軍してきた者達をですね。マーストに迷惑かけるのもあれなので、マースト着く前にぶっ放しました」

「……ああ、マーストの東側が直線で抉れてるのがブレス痕か……」

「はい。本道とはずれているので、直さずそのままですね。直すつもりだったのですが、『残しといた方が忘れんだろ』とマーストのトップが言うもので」

「神竜のブレスは最早レーザーだからなぁ。何割行ったんだ?」

「6万の約9割が消し飛びました。余波などを考えるとほぼ全滅ですね。射線からズレていたため国への被害は残念ながらありません。まあ、爆風で城壁が溶け、内部も微妙に飛んだようですが、少々物足りませんね」

「まあ、うちに戦争しかけてきてそれだけならマシだろう」

「ちなみに属国にはしていません。不要と判断しました。つまり何のサポートもしていません」


正直な話、戦後の後処理の方が大変だろう。それを一切放置した訳である。

酷い話だが侵略された側であり、相手の国に何の旨味もないので火の粉を払っただけである。

そして、シュテルは特に何か言うつもりも無かったのでスルーであった。


「ふぅん。確かにいらんな。肝心の法国はどうなった? 新しい宗教とか」

「それがですね……」


エステルがなんともいいづらそうな顔をしていた。気になるじゃないか。


「どうせ言わなくてもバレるんですから、今言った方がいいでしょう」

「……確かに。宗教に関しては陛下の作ろうぜという話がですね……」

「まあ確かに? 女神なのは確かだから、おかしくはないが……わらわ一柱だけは気が進まんな。どうせならわらわを入れた5柱な。と言うか大神殿の中にある礼拝堂そのまま使えばいいだろう」

「分かりました。ではそうしましょう。名前はどうしますか?」

「その辺りは興味ないから人類が好きに決めればいい。ああ、そうそう。神々の信仰と精霊の信仰は分けないでいいぞ。精霊は我々の子だからな」

「神々と精霊の信仰は分ける必要なしと……」

「それで、法国は?」

「それなんですが……ほとんど情報が無いんですよ」

「む?」

「ユニ様、うちには情報を集める暗部がいません。2年では育成も不可能です」

「はっは、確かにそうだ。わらわがしていたな」

「はい。ですので4大国からたまに来る手紙などで情報を得ていました」

「ふむ、なるほどな。4大国は気にかけてくれたか?」

「ええ、とても。ファーサイスの王妃様と王女様が休養と言う事でうちに来ていました。おそらく相談役を兼ねていたかと。他の国もちょくちょく情報などを」

「そうか。礼を言っとかんとな。戻ってきたことも伝える必要があるし……ふむ」


うちにいる間者を利用させてもらうか。

今日は20日だから時間的にも間に合うだろうしな……。


「久々に王家パーティーでもやるか。という事で4大国の間者よ、王に伝えておいてくれ。いつもの時間に迎えに行くとな」

「って間者を使うんですか……」

「どうせわらわが戻ってきた事を知らせに急いで帰るんだ。いいじゃないか」

「まさか4国も間者を伝令に使われるとは思わないでしょうね……」

「ははは、全体的に能力が上がったからな。しかも倍以上。時空を司るわらわから逃げたければさっさと死ぬか異世界にでも……いや、異世界でも追えるわ。死ぬしか無いな」

「そう言えば我々も能力が上がったんですよね……。まあ、それはともかく法国ですが、まだしぶとく残っているようですよ」

「ほう、流石。ああいった連中はしぶといものだ。と言うか精々頑張って苦しんで貰わないと困る。そのために殺さずああしたのだからな。死は救いだよねー」

「まあ、かなり瀕死のようですが」

「そりゃそうだ。土地が死に、支えが崩れ、日頃の態度が最悪。今が好機と日頃の恨みを晴らすだろうな」


神々の罰が温いと思った者もいるかもしれないが、そんなことは無い。

何も殺すだけが罰じゃないのだよ。『今後も生きる事』が罰になり得る。

なぜかって、散々好き勝手贅沢してたのにできなくなり、周囲からの目は厳しい

人間は有った物が無くなるのは非常に苦痛に感じる。それが良ければ良い程。

それを奪い取ってやり、サポートも一切しない。

そして、手を差し伸べてくれるような相手も作ってこなかった。

さぞかし辛いだろう。

『ざまあ』としか思わないが。


「よし、では早速仕事の引き継ぎと行きたいのだが、悪いがもう2,3日頼むぞ」

「何かご用事が?」

「ああ、ちょっと海上で自分の能力把握をしてくる」

「なるほど」

「何かあったら念話すればいいからな。それと学園のクソガキの親に脅迫状送って教育に悪い教師を首にしないとな」

「「脅迫状……」」

「フィーナに贈った7歳の誕生日プレゼントである神聖樹の杖を壊してくれたからな。侯爵とか言っていたし精々財産でも毟り取ってやるさ」

「へぇ……あの杖をですか……。侯爵ではそもそも足りないのでは?」

「取り巻きからも毟り取るつもりだが……ふむ、バルツァー商会で相場聞いておくか? ベルへルミナ、この杖を持って聞いてきてくれ。報告は念話で構わん」

「これは……かなり毟れそうですねぇ……。では行ってきます」


元魔法師団所属で、今も眷属騎士で唯一杖を使用しているベルへルミナだ。

折れてるとは言えある程度の性能は分かる。少々黒い笑顔を貼り付け揚々と歩いていった。


「うむ、では今回は解散だ。能力確認してくる」

「行ってらっしゃいま……あ、ユニ様。塩が余裕ありません」

「む? ああ、そうか。分かった。大丈夫だと思うが……補充前に確認だな。浸水しましたとか笑えんしな……3日ぐらいは持つだろう?」

「はい、そのぐらいなら問題ありません」

「では戻ったら補充する」

「よろしくお願いします」


大神殿で使用している塩は、この世界に来て早々に作った魔法装置だ。

砂糖の方はサトウキビを密かに栽培しているので問題無いが、塩は海水を使用している。一般的には岩塩だったり、ソルトクラブという魔物から取ったりが基本だが、海水から取り出した最高級品だ。

海は南に下り、シーフープの方へ行かないと無いので転移がないなら無理だろう。

いない間は眷属騎士が転移の練習も兼ねて交代でやっていたらしい。


移動する前に外で待ってる2人にも会っておくか。


「元気にやってるか? ジェシカとエブリンよ」

「はい、元気にやってます。おかえりなさい……ユニ様?」

「うむ、それでいい」

「ユニ様何で何も言わなかったんですかー! 凄いびっくりしたんですよ!?」

「時間無かったしな! お前達聖女一行に免じて家族ぐらいは連れてきてやった。で、仲良くやってるか?」

「はい、皆で治療院やってます。だいぶ余裕ができました」

「それは良いことだ。じゃあわらわは能力確認してくる」

「「はい」」


さて、シロニャンを定位置(頭の上)に載せ海上に行くか。


翼が目に入らない節穴eye

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