表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/88

71 神罰と暫しのさよなら

本日2話。これ2話目。

『聞こえますか……慈愛と成長の神、アリスリナスです。一定以上の知能を持つ者に今の状況を伝えます。現在世界は……いえ、生物は滅びへと向かっています。原因は龍脈の枯渇です。ある国の……いえ、もう濁すのは止めましょう。アクウェス法国によって非常に大事な龍脈が枯渇しました。龍脈が復活するまで30年から40年ほどかかります。この間に世界の人類問わず、生物の8割ほどが亡くなる事でしょう―――』


神託は続く。

現在起きてる状況を知ってもらう為に説明がどうしても長くなってしまう。


『元々回復魔法……現在は《神聖魔法》ですが、他種族より明らかに劣る人間種……彼らが仲間外れにされないよう、他の種族同士の橋渡し役にと思って与えたのですが……非常に残念です』


今じゃ他種族の橋渡し役どころか、《神聖魔法》を持った奴らが率先して人種差別してるからな。真逆も良い所だろう。


『どうせ何もできないと神託を無視し、挙句の果てには龍脈を枯渇させるなど、最早我々は彼の国を見逃すことはできません』


そしてアクウェス法国に与える精霊に関する事以外の罰を知らせる。


『では、後は任せます。月の女神……ルナフェリア。そして……ごめんなさい』

『謝る必要はない。地上の問題はわらわが動く。それが創造神様との約束だからな。気にしないで良い。そもそもさっさとわらわが彼の国を滅ぼしておけば、こうはならなかっただろう』

『できれば殺さないでくれと言ったのは私です。それを聞いてくれた貴女にどうこう言うつもりはありません……よろしくね』

『うむ、日が昇り次第行動を開始する』

『我々3柱は月の女神に今回の件を任せます。彼の国に神罰を……』

『わらわとて、最早黙っているつもりもない。任せておけ』


とか言っても、やることは事前に決めているのだが。

とりあえず日が昇り次第と言ったな? あれは嘘だ。分身体を駆使して、夜のうちに《神聖魔法》の回収と付与をしておく。

ついでに法国にいるジェシカとエブリンの家族を『家ごと』空き地に転移させる。

ちなみに当事者達には知らせていない。家から出たら知らない場所で嘸かしビビることだろう。


《神聖魔法》関連を終えて少ししたら、日が昇り始める。

そしてちょっと面白かった。なぜかって? 全員が飛び起きたからだよ。

特に法国と、我が国アトランティスの慌てぶりが酷い。

まあ、慌ててる理由は全く違うが。方や滅亡の危機、方や女帝の正体が女神。

大体起きたなら始めようか。


『精霊達よ! 月の女神、ルナフェリアが命ずる! アクウェス法国領土への加護を禁ずる! 死の大地とならないギリギリを維持せよ! 行動開始!』


国ではなく世界全体に響く声である。各地にいる精霊達への命令だから仕方ない。

そしたら次は、あのふざけた魔法陣を吹き飛ばす必要がある。

転移……はしない方が良いか。敢えて目撃させた方が効果あるな。


「神威開放」


女神である事を隠す必要が無くなり、むしろ目撃させた方が効果的ならば、神威開放をして自己主張した方が良いだろう。

本能で格の違いを分からせ、頭を垂れさせる神の威光。普段から出すと外に出た瞬間そこにいる全員がその場で跪くか祈りを捧げるため、隠している。

今回は目立つのが目的のため好都合である。

目撃できる程度の速度でアクウェス法国へ飛んでいく。

大きな3対の翼を広げた女神が一部の国で目撃された。


『陛下が……女神?』

『月の女神って言ってたなぁ……』

『陛下がブチギレてる時、赤い月が不気味に輝いてたの関係あるのかねぇ……』


『師匠女神様だったの!?』

『強さに納得』

『……確かに納得』




そして当然、1番の地獄は元凶であるアクウェス法国である。

神託後、日が昇り飛び起きる。

神託は本来神子が受けるもの。夢かとステータスをチェックすると《神聖魔法》が無くなっている。そうなるともう、あの神託は信じるしか無い。

それはつまり、この国は神々を怒らせ、月の女神が動くという事になる。

まさかまさかと現実逃避したいところだが、神託はなんと言っただろう?


月の女神、ルナフェリア。


ルナフェリア……中央にできたアトランティス帝国の女帝がその名前だったはず。

背に翼があり天使ではないかとか言う話も出ていた。

そして、我らの国が接触したら問答無用で追い返されたという情報もある。

神託を無視していたという情報は初耳だが、もしそれが本当なら神々は前々から怒っていても不思議ではない。

そしてこの女帝が月の女神だったとしたら、追い返されて当然とも言える……。


頭が良かったり、それなりの立場で情報を持っているほど、絶望感が強い。

そしてそのタイミングで聞こえる、精霊達への『お願い』ではなく『命令』だ。

更に少し後、女神襲来である。



白を基調とした建物が多いアクウェス法国、上空。

そこに一柱が降臨した。

大きな3対の翼を広げたドレスを着た少女。

白2対黒1対の計3対の少女自身より大きな翼。

風により靡く長いスプリンググリーンの髪。

空中で腕を組み仁王立ちするかのようなその少女は、少女らしからぬ威光を発していた。


法国を見下ろしていた少女はふと、視線を逸し、そちらへ向け指をさす。

その指先が光ったと思った瞬間、爆発音と揺れ、更に衝撃波が発生。更にもう1度光り同じように爆発音と揺れ、衝撃波が発生。再び爆発音と轟音が響く。


法国の王都、聖なる都という事で聖都と言われている。

が……現在女神の2撃により一部ボロボロだった。

聖都の直ぐ側の地下に異世界人召喚の魔法陣を用意していた。

まず1撃目で上が無くなり、2撃目で魔法陣が吹き飛び、魔法陣が溜め込んでいたエネルギーが暴発し爆発。その際の余波で聖都を囲っていた壁の一部が崩れる。

壁が受け止められなかった衝撃波が微妙に内部にも被害を出していた。


「次碌な技術も、知識もないのに龍脈に手を出したら、発案者と技術者全員始末するから覚悟しておくように」


聖都を一瞥して、用が済んだため撤退した。




アトランティス帝国へ戻り、残りの引き継ぎ作業をしている時、周囲の4大国から手紙を持った者が出発したようだ。

待つと着くのは数日後になるため、迎えに行き手紙をチェック。

手紙には揃って協力できることならすると言うので、4国の王族を集め今後の話をしておく。

龍脈を再生するためにしばらく留守にするため、周囲の4大国が協力してくれるならありがたいところである。


「死ぬわけではない……のだな?」

「うむ。体が一時的に無くなるだけだな。体が戻り次第帰ってくるつもりだが、それがいつになるか分からないんだ」

「つまり、いない間は守ってれば良いのか?」

「いや、たまに相談に乗ってくれるだけでいいんじゃないか? 武力に関してはわらわがいなくても問題は無いだろう。眷属や従魔は残るからな」

「ふむ……それだけでいいのか?」

「ヒルデとエステルが運営する事になる。聞かれた時にアドバイスするぐらいで構わない」

「他に何かありませんか? 正直負い目を感じるというか……」

「そうだな……」

「ないない。どの道この問題ばかりはお前達どころか人類には無理だ。だがそうだな……法国でも見張っておいてくれればそれでいい。またふざけたことをしないようにな」

「我々としても気になるところだからな。そこは心配しないでくれ」

「いつ……始めるんですか?」

「引き継ぎが終わり次第すぐにでも。既に龍脈からの供給が停止しているんだ。早ければ早いだけ良いからな」


人間側にも思うことはあるのだろうが、しんみりしててもしょうがないので、さっさと送り返す。奴らも忙しい事には変わりないだろうし。

帰る王族達は深々と頭を下げていた。

こういう奴らもいれば、法国のような奴らもいる。人類は色んな者達がいて見ていて面白くはあるが、せめて自分達で解決できる事にして欲しいものだ。



全ての引き継ぎを終え、いよいよ始めるとしよう。

法国から帰ってきてからというもの、シロニャンがずっと胸元にへばり付いている。甘えん坊は中々治りそうにない。

とは言え、ルナフェリアがいない場合の最高戦力はシロニャンである。特に1対多の時。万が一攻めてきた場合には必要だ。一緒に神界へ行くわけにはいかない。


「わらわが留守の間、頼んだぞシロニャン」

「ぢゅい~……」


物凄い嫌そうにグリグリしてくるシロニャンを撫で撫でして、ブリュンヒルデへと渡す。戻ってくるのは確定してるのだから我慢してくれ。


「では、わらわの家を頼んだぞお前達」

『はっ!』


身に着けていた物は全て"ストレージ"に放り込んだし……引き継ぎもした。

アストレートとマハは召喚解除されるから先に送還しておいたし。オートマタも一室で停止させ寝かせてある。

防衛システムもサブ権限を眷属に与えてあるし……よし、大丈夫だな。


「では、少し行ってくる」

「行ってらっしゃいませ」

「ぢゅい~……」


出かける時と同じような雰囲気なのは良いことだ。……シロニャン以外。

ヴルカンとシルヴェストルも少々寂しそうだがこればっかりはな。

少しの間我慢してもらおう。

では、行くか。


『世界よ! 我が神力を授ける!』


地面に付いている右手、両足からスルスルと薄れ、消えていく。

ルナフェリアを構成していた神力全てが世界へと取り込まれ、しばらくすると龍脈からいつもの様にマナが噴き出し始める。

これにより、マナ不足による生物の死滅は回避された。


ルナフェリアのいた所に、ステータスリングだけがぽつんと残された。


実は完結まで書き終わっているので、最初と同じように明日から毎日上げて行く予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
更地にしなかったのか。 しても良かっただろうに。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ