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転生先は現人神の女神様  作者: 子日あきすず
世界が違っても変わらぬ事
76/88

68 女帝は一応冒険者

創造のダンジョンで活動してるお話。


じわじわ増え続け、遂にブックマークが1000を超えた模様。

ありがとうございます。

ファーサイスの収穫祭などにも顔を出しつつ、時は過ぎてゆく。

騎士達の受け入れと……学園の職業科施設の最終確認しといた方がいいか。

学園の開始と同時にするからな。分かりやすくていいが、どちらも我が国にあるから面倒なんだが? まあ、やるんだけど。面倒なだけでできないわけじゃないし。


騎士達を受け入れる騎士寮は既にあるし、冒険者ギルドにも何をするか既に言ってある。と言ってもダンジョンと訓練場を騎士達にも利用させるだけだが。

ダンジョンで対魔、訓練場で対人の合同訓練だ。

うちの騎士達も混ぜる予定。エインヘリヤル隊とワルキューレ隊だな。刺激になれば儲けもの。

ちなみに私も混ざります。身体能力のゴリ押しじゃなくて技量がほしい。繊細かつ豪快に武器を振るいたいよね。向上心を忘れない神様です。




「お、陛下じゃん。これからダンジョン?」

「うむ。鉱山中層でも行ってみるつもりだ」

「鉱山中層ってまだ誰も行ってないんだっけ?」

「だな。なんの鉱石が採れるのか見てこようかと思ってな」

「今行けてる場所で稀にミスリルが出るぐらいだったか。となるとミスリルが普通に採れるようになるかな?」

「ミスリルはかなり良い鉱石だが高いからな。出てくれるとありがたいところだ」

「ミスリル武器が精一杯だからなぁ。防具にするには高すぎる」

「防具には向かんだろう。魔力通さないと耐久に難ありだ。魔物素材使った方が良いだろうよ」


ガタイの良い男とゴスロリ系ドレスを着た少女の、冒険者同士の会話である。

場所は冒険者ギルド本部のロビーだ。ダンジョンへ行くための道と各種受付があるが、広さはかなりの物なため空いている所でPTメンバーを待ったりなどの小休憩場所として、机と椅子が複数用意されている。一応飲食は可能だが、大食堂があるため常連……ここを拠点としてる者は食べるならそっちを利用する。


「しかし、このダンジョンのおかげで金銭的余裕ができたのはありがたいな」

「ほう、稼いでるのか?」

「ぼちぼち……な。武器修理資金を急いでかき集める必要が無くなったんだ。心の余裕が違うぜ。最悪香辛料でなんとかなるしな」

「あの辺りは鉄武器でもあれば十分だな」

「おう。ただ、なるべく香辛料は避けてんだ。新人共には良い稼ぎどころだろう」

「まあ、初心者向けだろうな。上行けるなら行った方が稼げるだろう?」

「余裕があるなら登った方が良いな。トラップを気にしないで良いから気が楽だよ。安全を確保しつつ来たのを片っ端から倒して行くだけだからな」

「ふむ、だいぶ慣れてきたか?」

「そうだな。流石に慣れたが魔物は普通に強いからなぁ。後あれだ、陛下の収納がほんと羨ましい」

「収納か。"インベントリ"と"ストレージ"を使用した魔法カバンを生産ギルドに提供したからな。そのうち出回ると思うぞ」

「まじか!?」

「大中小で容量をある程度決めてあるから、買うことも検討してみると良い。それなりの値段になると思うが……お前達なら元はすぐ取れるだろうよ」

「よし、後で話してみよう」

「今頃魔導部門の者達が頑張ってるだろうよ。聞いただけでどれだけ有用か分かるだろうしな。問題は《時空魔法》が高い必要があることか」


ゲームなら勝手に解体されインベントリに入ったりするのだろうが、当然ゲームではないのでそんなことはなく。

解体ナイフを突き刺せばバラされるからその辺りは楽だが、持ち運びは人力だ。

"インベントリ"自体は覚える人は多いが、問題は容量の方である。魔力量に依存されるのでこれがなかなか厳しい。

魔物だけ突っ込んで行けば良い……と言う訳にもいかないだろう。ポーションだったり、予備の武器だったり。非常食や飲み物だって入れる必要がある。

"テレポーテーション"を使えない限り、ダンジョンからの脱出方法は限られる。もしものために非常食や水は欠かせない。ポーションもあるに越したことはない。

死んだらそこでさよならだ。リスポーンなんかしない。

これは創造のダンジョンも同じである。

生存率的な意味でも、所持量的な意味でもPTはフルPTを推奨しているのだ。解体した肉などをそれぞれが持ち、少しでも多く持って帰る為に。


冒険者は楽ではない。楽ではないが、命に直結する分感謝されやすかったりする。

つまりやりがいは非常にある訳だ。

魔物の討伐、護衛依頼、魔法薬の材料採取。場合によってはペット探し。

『ペット探しぃ?』となりやすいが、ペット(家族)が行方不明になった者からすれば気が気じゃないだろう。冒険者は職業柄スキルを鍛えるから、一般市民が探すより効率的である。


魔物の討伐は勿論、直接的な脅威から守って貰える。倒した魔物次第では食料にもなり、防具にもなる。つまり売れる物になる。


護衛依頼も魔物から、たまに盗賊から守って貰える。そして、行商人が無事街や村に着けばそこに住んでる人からすればありがたい限りだろう。流通があるのは良いことだ。


魔法薬の素材採取だって、森の中や山に採りに行く必要がある。そこは当然魔物の領域だ。冒険者に取ってきて貰うのが一般的。

そして素材は各種ポーションとなり、一般市民から自分達冒険者、はたまた貴族まで幅広く利用する。材料がなければ作れないのだから、有り難がられる。


まあ、当然その辺りを理解しない、できない残念な奴もいるのだが。そこは気にするだけ無駄だろう。


「さて、わらわは行くとするか」

「おう! いい報告待ってる」

「普通の銀とか金でも国としては良いんだがな」

「冒険者的にはなぁ。まあ、金にはなるからいいんだが」


小休憩エリアからスタスタ離れ、ダンジョン入り口の受付を顔パスで素通りし、ダンジョンへ転移する魔法陣のある大部屋に到着する。

この大部屋は中央ど真ん中に入り口である強大な転移魔法陣があり、部屋に入る前から見える創造神様の立像が1番奥の壁際にある。

礼拝堂のど真ん中にダンジョン転移用の巨大魔法陣がある……と思った方が分かりやすいか。つまり休憩用、最終確認用の長椅子もある。

そして、一箇所大部屋から続く廊下があり、少し進むとジェシカやエブリン達のいる治療室がある。当然治療室に来る道はここだけではない。


「やあ諸君。何か問題は?」

「お、陛下だ。特に問題は―――」


と言いかけた時に1人の男……少年がダンジョンから飛び出てきた。

見た目的にはルナフェリアより年上……と言いたいが、ルナフェリアの見た目年齢は幼く見えるため、年齢的には同じぐらいの15歳前後だ。

少年の身に着けている革の軽鎧は所々に傷が入りボロボロだ。赤くなっている部分もあるので貫通もしているのだろう。


「だ、誰か! 仲間を、友達を助けてくれ!」

「―――あったようだな」

「そのようだな」

「おい坊主、落ち着いて要件だけ話せ」


ルナフェリアに返事をしようとした男が少年から先を促す。


「階層17の森で白いウルフと灰色のウルフがやって来て囲まれたんだ!」

「ちっ、ホワイトウルフがリーダーの群れか。17にいるってことは進化したか」

「わらわが行こう」

「「「了解です」」」

「えっ!?」


驚く少年をガン無視し魔法陣の上で17と呟き転移して行った。

「あの子1人ですか!?」と言う少年に周囲の冒険者達が目を向ける。

『ああ、こいつ知らないのか。そう言えば最近見るようになったガキだな』という少々生暖かい視線である。

そもそもここにいる冒険者達は『下手したらもう死んでるな』というのが総意であり、『陛下が行って間に合うかどうか……』という状況だ。

狼の群れが獲物をそう簡単に逃がす訳がない。だが目の前に少年が1人いる。確かこいつら5人だか6人PTだった。少なくとも1人は既に瀕死だろうな。

1人逃したなら甚振るタイプのリーダーか。ある意味助かったな。


「おい小僧、さっさと治して貰ってこい」

「でもっ」

「うるせぇ。ここに来た時点でお前の役目は終わりだ! そのまま放置したらお前も死ぬぞ」

「ぐぬ……」

「おら、行くぞ坊主」

「えっちょ……」


首根っこを掴まれてズリズリと連行されていった。



創造のダンジョン下層・17 ルナフェリア冒険者用分身体


「……"サーチ"……"ジャンプ"」


17層に転移されてすぐに"サーチ"で階層を確認。反応がある位置を魔眼でチェックし、そこへ転移する。

視界に入ったのは5人中2人が倒れ、2人を持っていかれないよう護りながら3人が辛うじて立っている状態だった。

突然正面に出てきた少女にギョッとする5人だが、すぐに状況が変化する。


「"咲き誇れ、氷雪の薔薇"」


まずは狼達の足止め。

少年少女達を囲うように氷の薔薇と茨がパキパキと広がっていき、狼達が飛び下がりグルルと警戒している。

その間に5人へと応急処置程度の《神聖魔法》を使用し回復させる。倒れていた2人は意識がない状態だが、これで死にはしないだろう。


グレーウルフの1匹が勇気を出して飛びかかるが、氷に足を踏み入れた瞬間薔薇が揺れ、ウルフの体が凍っていきキャンキャン言いながら全身が凍った。

それを見た他の狼達は氷に触れないようグルグルと周りを回り出す。恐らく消えるのを待っているのだろうが、術者がルナフェリアである。消えるわけがない。


「戻ったらちゃんと治療してもらうように」

「えっと……」

「"トランスファー"」


5人の少年少女達は状況を飲み込む前にダンジョン入り口へと転送されていった。


「さて……"穿て、氷雪の茨"」


既に発生していた氷の薔薇と茨。その茨が瞬時に伸び、グレーウルフとホワイトウルフの頭を貫く。


動けば動くほど薔薇が揺れ、凍る魔力を振り撒く。動かなければ動かないで足元から凍る。近寄らなければ茨が伸び突き刺さるか絡め取る。

それがルナフェリアオリジナルの氷雪シリーズ。

属性を変えれば炎の薔薇や茨なども可能だが、『戦闘も優雅に?』という発想から植物系でパッと見で綺麗なのは氷ということになり、氷を使用することにした。


氷を消し、狼達の死体を回収。ウルフは肉も革も使えるからお持ち帰りだ。

ルナフェリアはそのまま鉱山中層へと向かっていった。



5人の少年少女はダンジョンへの転移魔法陣のあるロビーへと転送されてきた。


「「えっ?」」

「あれっ?」

「来たか」


突如視点が切り替わり驚きの声を上げた3人に、ロビーにいた男達が近寄る。

正確には床に寝てる2人の確認のためだが。


「ふむ、息はしてるな」

「こっちもしてるぞ」

「そうか、間に合った様だな」


そこへ治療室の方からジェシカがやって来て声をかける。


「最低限しか治療していないそうなので治療室へ来てください」

「だそうだ。行って来い」

「え、あのでも……」

「そう言えば同じぐらいの女の子が助けてくれたんだ! あの子は!?」

「ルナ様ならこのまま鉱山中層行くとか言ってたのでしばらく戻りませんよ」

「ちゅ、中層!?」

「お前らが心配する相手じゃねーんだよ。さっさと治してもらってこい!」


とか叫びながらもズリズリと引きずり連行していく常連の冒険者であった。

ジェシカとエブリンは人気者である。

見た目が2人揃って美人なのもあるが、魔法治療の相場の半額ぐらいで治してくれるのだ。冒険者からしたらありがたい話だろう。

最近は何人か増えたが、どれも値段は変わらず半額程。怪我の度合いや使用する魔法で値段が変わる。ただ、基本的には魔法薬と言われるポーションよりは高い。


ただ余計な声をかけようとすると護衛の2人……アストレートとマハに睨まれる。それを無視すると問答無用で威圧を放つからヤバい。

2人はルナフェリアに召喚された超級の召喚体である。ランクで言えばSとかSSクラスだ。純正竜が2匹護衛に付いてるのと同じという事になる。

よって、ナンパは防がれている。




「さて、グノームよ。何がある?」

「これは……」

「む?」

「外では見たこと無い物があります。他は銀と金ですね」

「おや、ミスリルは?」

「ありません。その代わりヘリオドール鉱石と言うものがあります」

「ほう? 案内」

「こっちです」


鉱山中層へとやって来たルナフェリアと地の精霊皇女グノーム。

早速グノームによるチェックが入り、何やらダンジョン外では見ない鉱石があるという。このダンジョン特有の物だ。


「はて、ヘリオドール……なんだったか」


グノームに案内されながら前世の記憶を遡る。

ヘリオドール……それは宝石の名前。色は黄色だ。

となると、グノームが鉱石というのだから前世の物とは違いそうだ。


「ここにあります」


そう言ってグノームが持つツルハシをコツンとすると、地面が動き黄色い……鉱石と言うよりは水晶体が出てきた。



ヘリオドール鉱石 ファントム

品質:普通

地属性を持った鉱石。

これで作られたものは高い地適性を持つ。

通称属性鉱石



魔眼による《鑑定》によるとヘリオドール鉱石のレア度はファントムであり、品質は一般的な物だ。

通称属性鉱石と言っているが、ここでしか取れない物なので創造神様がそう言うジャンルとしているのだろう。


そして検証だが……。

魔法適性も強度もミスリルレベルだが、一致した属性を纏わせると威力が跳ね上がり、対抗属性は威力が下がり、他は変化無いようだ。

これらを使用した金属杖が1番活かせそうだが、見た瞬間に得意または使用属性がバレるのは欠点か? いやでも、魔法陣の色で結局バレるのか。


ミスリルよりは値が高くなるだろうが、威力増幅効果はミスリルにはないので、属性を使うならありかもしれんな。

ミスリルは万能系。魔法じゃなく《魔力操作》でいい。属性関係なし。

属性鉱石は対抗属性以外なら問題ないが、一致させると威力が上がる。《魔力操作》でも良いが、それなら属性鉱石より安いであろうミスリルで十分。

完全なミスリルの上位互換はルミナイトだな。


まあつまりだ。


「特産の1つとしては申し分ないな」

「ただこの階にはヘリオドール鉱石しかありませんね」

「どれ、他を探してみるか」

「はい」


しばらく探したのだが……はて、困った。

ヘリオドールしか見つからなんだ。


「ありませんね……」

「グノームの感知範囲を超えた場所にあったとしても人間に採取は不可能だろう。それはつまり無いも同然な訳だが……ヘリオドール……地だけってのもな?」

「属性の違いで私に感知ができないという可能性は?」

「完全否定はできないが……可能性は低いだろう。鉱石だし……まさか、属性……? グノーム、火山地帯に行くぞ」

「……ああ、なるほど」


創造のダンジョンは……1~40を下層、41~70を中層、71~100を上層としている。

その中層にある火山地帯へやって来てグノームにチェックさせると、予想通り発見した。

それを元に色々回ってみた収穫がこれだ。


火山:ルビー鉱石。

水辺:アズライト鉱石。

鉱山:ヘリオドール鉱石。

森林:エメラルド鉱石。


上から火、水、土、風の属性鉱石を発見した。

光のセレスタイト鉱石と、闇のオブシディアン鉱石は中層でも上の方でポツポツと発見された。


属性鉱石は宝石鉱石と言っても良いな。名前も見た目も宝石に近いし。違いと言えば透明度や光沢だろうか。後重さ。これ《鑑定》無いと少々厄介かもしれんな。

……微妙なサイズとかの宝石よりこっちの鉱石の方が価値高いし、詐欺は無いか?

逆の方があり得るか。宝石を属性鉱石と言って売る方向。取引時にレシート的な物を渡すよう冒険者ギルドに言っとくか。産地はうちだけだしな。


よし、撤収しよう。少々時間がかかったが成果は上々だ。

属性鉱石を冒険者ギルドに売ればそこから生産ギルドに行って、鍛冶部門の連中が狂喜乱舞することだろう。

炎魔剣のシルヴァンとか、ルビー鉱石に変えれば尚良いだろうな。持ってきたら作ってやろうか。

火が得意だから火の鉱石取り行くのに、敵火属性ばっかで苦労するだろうがな。




「「おっ!」」

「あ、あなた!」

「……ああ、お前達か」


帰ってきてグノームを自由にさせたルナフェリアを出迎えたのは、助けた4人の少年少女達だった。

そして周りの奴らは明らかに笑いを堪えていた。

こいつら、私の立場とか言ってねぇな?


「あの、ありがとうございました!」

「「「ありがとうございました!」」」

「うむ、次も助かるとは限らんからな。気をつけろよ」


少年少女達が何やら口を開こうとした時、後ろからカシャンカシャンという鎧の音が複数聞こえてきた。そしてその音の発生源がすぐにやってくる。

合同訓練としてギルド地区の騎士寮に……一足早いお試しとしている内のファーサイスの騎士5人だった。


「む? なんだお前達、これから行くのか?」

「ふとチャージングボアの肉が食べたくなりまして、なら獲ってくるかと」

「ああ、まあ。突如食べたくなる物が出るのは分かる」

「という事で夕食獲ってきます」

「うむ。気をつけろよ」

「はい」


なかなか良い笑顔で言い放ち、5人の騎士達が森フィールドへと転移していった。

あの者達は大体A間際で、ボアはCだから余裕だな。中々好評のようで何よりだ。


さて、受け付けに属性鉱石渡さないとな。




騎士達とすれ違うように歩いていったルナフェリアをぽかんと見送った少年少女。


「今のってファーサイスの騎士様だよね?」

「そうだね……ファーサイスの国章付いてたし……」

「あんな親しそうに……本当に何者?」

「分かんねぇ……」


とか呟いていると周囲が遂に耐えられなくなって笑いだした。


「くっくっく……あの子が何者か知りたいか?」

「はっはっは、中々面白かったからそろそろ教えてやるよ」

「有名なんですか?」

「有名も有名だ。と言うかこの国に住んでて知らないのは、お前らのような来たばっかの奴らだ」

「えっ?」

「なんたって陛下だからな。陛下。この国の建国者。女帝ルナフェリア様だ」

「「「「えええええええええええ!?」」」」


思いっきり叫びだした4人に周りも大爆笑である。

そして少し落ち着いた頃に疑問が浮かんでくるわけで。


「あの、護衛とかいませんでしたけど、1人でダンジョンとか大丈夫なんですか? 王様ですよね……?」

「まあ気持ちは分かる。言いたいことは分かるが『陛下だから』なぁ」

「うんうん。『陛下だから』なぁ」

「ええ?」

「簡単に言っちまうと、陛下がこの国最強なんだよ。それこそ格が違う。護られるはずの陛下が護衛よりもつえーんだ。おめーら東にある訓練場行ったか?」

「訓練場ですか? まだですけど……」

「あそこで通称ルナ印と言われる紋章を着けた騎士が訓練してる。国と言うより陛下の私兵になるな。あの人達を纏めて相手にするのが陛下だ。暇な時にでも見てくると良い」

「うんうん。それにさっきまでいた君達が見た陛下は分身体だ。本体には一応護衛2人と侍女が付いてるぜ」

「え……? 分身体?」

「分身体って情報収集ぐらいにしか使えないんじゃ……」

『陛下だから』

「「「「…………」」」」


まさかの全員からの『陛下だから』発言に沈黙するしか無い4人だった。


「でも陛下だとしたら態度まずかったかな?」

「た、確かに……」

「「むむむ……」」

「あのぐらいなら大丈夫だ。と言うかダメそうなら俺らが殴り倒してる」

「「「「えっ」」」」

「当たり前だろう? 見た通りの少女……本体なんか幼女に近いからな。来たばっかの奴らは嘗めてかかるんだよ。その馬鹿共を見て楽しむのが毎度恒例だが、あまりにも酷い場合は俺らが潰す。俺らからしたら恩人でもあるからな」

「まあ、陛下は大体のことは許してくれると言うか、怒りすらしないからなぁ。俺ら冒険者は『陛下』じゃなくて同じ『同僚』として接することが許されてる」

「へぇ……」

「ただし、『親しき仲にも礼儀あり』だ。勘違いはするなよ? 陛下は確実に強者だからな。陛下自身はスルーするだろうが、その場合俺らが許さねぇからな」

「「「「は、はい!」」」」

「おう! ま、そのまま真っ直ぐ育てや。ここのギルドにいる奴らは大体良い奴しかいねぇ。何かあったら周りを頼れよ」


ギルドの形態はどの国も同じだが、ギルドの雰囲気と言うのは場所による。

やたらギスギスしていたり、嘗められないようにガン飛ばし合っていたり。

アトランティス帝国にある冒険者ギルド本部はかなり緩い。大体全員自然体である。大食堂だけでなく、ロビーでも笑い声が聞こえる。まあ『受付嬢の邪魔に為らない程度に』だが。邪魔になるレベルになると睨まれる。

受付嬢の声を遮らない程度なら好きにしろスタイルである。


そして暴れると周囲の冒険者達から一斉に威圧が飛んでくる。それでも止まらないとボコられるのだ。

『新人虐め』や『新人潰し』と言われる行為、大体他の支部だと見て見ぬふりだったりするが、このギルド本部は周りが動く。本当に速攻で周りが動く。

それは何故か……『陛下』が動く案件だからだ。

気づいたら地に伏せ、陛下が見下ろしている事が何回かあった。

創造のダンジョンは新人だろうと香辛料を集めつつ、ウルフなどを狩って経験を積むことができる。その新人がいなくなるとギルドだけでなく国にとって不利益だ。

よって、『新人虐め』や『新人潰し』と言われる行為はルナフェリアが来る。

そして陛下は忙しい。何より少々情けない。なので冒険者達が見て見ぬふりを止め、ここでは速攻で動くようになった。


例外は『陛下自身が対象だった場合』である。その場合はニヤニヤと見てる。

陛下だし安心。一種の娯楽。

え? 陛下だからこそヤバいだろう? 安心して下さい、うちの陛下は化物です。

『新人虐め』や『新人潰し』なんかしている奴ら如きに、うちの陛下がやられる訳がないのだ。


実は1つ、ゲームがある。

『陛下に一本入れられるか』

不意打ち上等。ただし、ギルド地区限定。対象は、冒険者用分身体。

一本入れたら 『女神の雫』の中で好きな奴を貰える。入れなくても良い攻撃だった場合、粘った場合などもしかしたら貰える。

たまに3人組やシルヴァンといったSランクが混じっているが、未だに一本も入っていないのである。『女神の雫』を貰ったやつは何人かいる。

本体はちっこいし護衛2人と侍女が付いてるからすぐ分かる。頭にシロニャン乗ってるし、エーレンベルクも漂ってたりする。見分けは簡単。

本体に行くと護衛どころか侍女にすら叩き伏せられるのである。そして、見分けぐらいしろと他の冒険者達にお説教される。ちゃんと確認したりしない冒険者は早死にするのだ。だからお説教される。一部だけ違う変異種に気づかないとか。




「帰ったぞー」

「お帰りなさい陛下」

「喜べ、こんなのがあったぞ」


ダンジョン用買い取り受付のカウンターにゴロゴロと属性鉱石を色別に並べる。


「えっ、宝石ですか!?」


グワッと視線がカウンターの上に集まる。


「いや違う。《鑑定》によるとこれは属性鉱石と言われる物らしい。宝石ではなく鉱石だ。グノームが外では見たことないと言うので、うちの特産だ!」

「…………マスター!」


受付嬢がルナフェリアの言葉を聞きフリーズした後、ガタッと立ち上がりバタバタとギルマスを呼びに走っていった。

そしてギルマスとバタバタ走ってきた。


「新しい特産だって!?」

「これがそうらしいです!」

「……宝石か?」

「属性鉱石。ミスリルの親戚の様な性能だったぞ」

「……マジか!」


とりあえず《鑑定》結果と検証結果を教えておき、詐欺対策も案を出しておく。


「これを杖にしてしてやれば同属性なら1.4か6倍ぐらいにはなるはずだ。剣とかなら1.2か4倍ぐらいか。ただし、対抗属性だと杖本来の効果と打ち消しあって杖なしと同じぐらい。剣とかならマイナスになるだろうな」

「ふむ……それで採れるのは中層か。確かに、ミスリルや下手な宝石より値が張りそうだな」

「もう3つ程特産があるのは知ってるが、人類に取り行くのは不可能だろう……」

「む、なんだ?」

「本体が持ってる杖の素材と、本体が着てる水晶部分だ。ルナクォーツとルミナイト。後マナタイトクォーツだな。90層とか行かないと採れん」

「そりゃ無理だ」

「とりあえず属性鉱石は採れるのがいるだろう。十分使えるはずだ。マナタイトクォーツとかまで行くと加工できるかすら怪しいからなぁ……。とりあえずシルヴァンはルビー鉱石欲しがるだろうよ」

「呼んだ?」


後ろからご本人登場である。

魔力を流すと火に変換し剣に纏わせる魔装具を愛用するSランク冒険者。

二つ名はその武器から炎魔剣だ。分かりやすくて良いんじゃないか?

とりあえずルビー鉱石の特徴を教えてあげた。


「なにそれ欲しい。でも火山中層か……って言うか、火を纏ってるのって魔装具の効果だよね? ダメじゃない?」

「材料と金持ってくれば同じ"ルーン"刻んでやるぞ」

「…………明日1日用意に使って……明後日行くか? 行くしか無いな。これがルビー鉱石?」

「うむ。宝石のルビーは無いから、間違える事はないだろう」

「1本分あればいい?」

「修理も考えると多少余裕持って採ってきたほうがいいだろうな」

「ああ、そうか。やっぱ採れるだけ採ろう」


近いうちに持ってきそうだな。


「じゃあギルマス、後は任せる」

「おう、任せろ!」



その後冒険者ギルドから生産ギルドに素材が行き、鍛冶部門の者達が狂喜乱舞していた。魔導部門の者も混じっていたようだが。


そして、一週間ぐらい経った時、シルヴァンがやって来た。


「お、陛下ー! 作ってくれ!」

「なんだ、もう採ってきたのか」

「頑張った」

「腰の剣も貸せ」

「あいよ」


素材と剣を受け取り、"ストレージ"に放り込む。

本体の方で加工してシルヴァンに渡すのだが……。


「あ」

「あ?」

「……やり過ぎたか?」

「え?」


"ストレージ"から直剣を取り出し、鞘から抜く。

赤……と言うよりはオレンジに近い刀身をしており、柄と鞘は赤黒い。

ルナフェリアがちょろっとだけ魔力を流すと、刀身がオレンジに輝き、柄の根本部分から炎が刀身を包むように渦を巻く。


「うおっ! あっつ!?」

「うーむ……まあ、いいか。同じくアーティファクトだ。正しく使えよ」


魔力を霧散させ、鞘に仕舞って差し出す。


「おおぉぉぉ……。一生大事にする」

「そうしろ。所持者制限がかかっているからな。お前専用だ。将来誰かに引き継がせれば所持者の変更は可能だ。それをしないで死んだらわらわが回収するからな」

「分かった」

「銘は『紅炎剣・レーヴァテイン』だ。魔力を与えれば与えるほど色が青白くなっていく。青ければ青いだけ高温だと思えばいい。さっきのオレンジだと低いな。それと、鞘に入れて放置するか魔力を流せば多少自動修復がある」

「まじで!?」

「あくまで多少だ。研ぐ必要がない程度に思っておけ。欠けたりしたら無理だぞ。破片が回収できるならなんとかなるかもしれんが。鞘と剣、2つで1つだからな」

「うひょー……あ、これね。一月分の生活費を除いた全財産」

「ふむ。だいぶ溜めたな? まあ、アーティファクトなんぞ値は付けられんからそれでいいか。それとこれも返すぞ。愛着あるだろう」

「武器は早々これが手に入ったから、出費はそんな無かったんだよねぇ。愛着はあるし、予備として仕舞っておくよ」

「貰った金は国の資金でも回すか」

「それは嬉しいね、有効に使って。じゃあ訓練場行ってくるよ」

「うむ、慣れておけ。特に温度な」

「分かった」


Sランクが貯めに貯めた額だ。国の資金に回せるほどの……である。

ただ、製作者やできた物を見る限り高すぎる……と言えるかは微妙であった。



紅炎剣・レーヴァテイン アーティファクト

ルナフェリアの作品。

魔力を流すと炎を纏う紅蓮の魔剣。

火の属性鉱石が使用されている。最高温度は地面をガラス化させる程。

鞘に自動修復機能があり、研ぐ必要がない。ただし欠けたりしたら無効。

持ち主は熱さを感じない。

現在の所有者:シルヴァン



訓練場でこの剣を試しているシルヴァンを見た他の冒険者達は、戦慄していた。

が、シルヴァン自身もとんでもないの受け取ったと冷や汗ダラダラだったらしい。


魔法の仕様が変わる前、紅炎とは火の超級"プロミネンス"を指していた。

周囲全てを焼きつくす第二の太陽を出現させる。それが"紅炎プロミネンス"


加減を間違えるとまずいので、必死で検証するシルヴァンの姿が目撃された。


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― 新着の感想 ―
ルナフェリア、わざわざ救助に行くんだ? 何があっても自己責任とか言わないん?
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