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63 忍び寄っていた脅威

描写もちゃんとしよう! という事でした結果です。

グロいかもしれないが、こいつの食事描写はこんなだと思う。

ベリアドースの東の森。

そこに1匹の液状魔法生物が生まれていた。

この世界でスライムと言われる魔物だ。

プルプルのゲル状の魔物で、コアを破壊されると溶けるように消える。

動きはそこそこ速く、流れるように移動。対象を取り込み、溶かして消化する。


液状なので打撃には強いが、コアをピンポイントで刺突したり、火や氷で蒸発、固形化されるのにめっぽう弱い。

よって、不意打ちにさえ気をつければ弱い魔物とされている。


しかし、スライムの厄介な所はその種類の多さだ。

ドラゴンと同じように、環境に合わせ進化する。ドラゴンとは違い、弱い個体だからこそ進化も早く、遥かに広い可能性を持っている。


液体が炎の様なスライム。マグマの様なスライム。はたまた強酸のスライム。

様々な進化先を持ち、全て把握されていない。



この森にいるスライムは……どうやら動きは遅いようだ。ただ、一回りほど大きいように見える。

スライムはズリズリと西へ向かっていた。向かう方向に特に意味はない。

と言うか、進んでいる方向など把握していない。ただ、進んでいるだけだ。



己の欲求。

『空腹』を満たすために。


暴食のスライム……世界を喰らい尽くす可能性のある存在が、誕生していた。



スライムに知性はない。あるのは本能のみだ。

スライムに触れた草、蔓、木……全てが取り込まれていく。そして、徐々に……徐々に大きくなっていった。


じわじわ進むこと数ヶ月。

スライムは遂に森を抜け、ベリアドース大国の王都へと向かっていた……。

いや、ただ進んでいる先に王都があった。

ズリズリ、ズリズリと進んでいくスライムは既に異様な大きさになっていた。

基本野球ボール程のスライムが、既に抱える大きさに成長している。


だが、ベリアドースは気づかない。

冒険者達を追い出したベリアドースには気づく者がいない。

世界の危機となり得るものが、一つの大国に迫っていた。

じわじわ、じわじわと……遅いながらも確実に。

通った後にはぺんぺん草すら残らない。草原にはスライムが通った後がしっかりと残っていた。




ベリアドース大国、王都東門城壁上。


「ん? なんだあれ」

「む? ……なんだあれ」

「なんだろうな、あれ……」


城壁の上で見渡している騎士達が遂に見つけた。

何だか分からないがすぐに他の騎士達にも知らされ、警戒態勢に入った。


「ありゃあ……スライムか?」

「でかいな……?」

「でかいが、スライムのようだな」


スライムと分かった騎士達は緊張感が抜ける。

これが冒険者達だったら余計警戒しただろう。

どちらかと言えば騎士達は対人、冒険者達は対魔物だ。つまり、魔物に関しては冒険者達の方が詳しい。

スライムは基本弱い。が、種類差が激しいのもまたスライムだ。『知ってるやつがいないスライムは警戒しろ』というのが冒険者では当たり前である。


ただ直進するスライムは門から少し離れた城壁へとぶつかった。

そして、スライムはそこから動こうとはしなかった。


「動かないな」

「だなぁ。とりあえず《攻撃魔法》使える奴呼んでくるか」


スライムは……じわじわと壁を吸収していた。

大きくなったスライムは触れる面積がその分増え、吸収速度が上がる。食べれば食べるほど大きくなる。

確実に城壁が削れていっていた。


そんなことはつゆ知らず、緩みった騎士達はのんびりと倒すための準備をしていた。時間をかければかけるだけ、討伐は困難になっていく。


「……あれ、スライムは?」

「は? そこにいるだろ」

「いや、いないぞ」

「んなわけが……あれ?」


そして、のんびりと準備しているうちに……城壁が突破された。

スライムは彼らの後ろ、つまり王都へと侵入している。


「うお、なんだ!? す、すらいむ? 驚かせやがって……」


丁度入ってきたスライムの近くにいた中年ぐらいの男。

大きいとは言え、スライムごときに驚かされたのが気に入らないのか、スライムを蹴り飛ばそうとしたが……。


スライムが飛んでいく事もなく、かと言って男が逆に飛ばされる事もなく……男の足はスライムにめり込んでいた。

ぶにょんと入り込んだのだ、スライムの中に。


「あ?」


さて、スライムの食事方法はどうだったろうか。

取り込んで、溶かす……だ。

つまりこの男、自ら餌として右足を差し出したことになる。


「ああぁあ!? 足! 足がぁああああ!」


食べることに特化したこのスライムの消化はとても早い。

男の叫び声を聞いた者が何事だと集まり、当然騎士達もやってくる。


必死に足を引き抜こうとする男だが、スライムとて放しはしない。

一人の騎士が男の後ろに回り、引っ張るがびくともしない。

そしておバカが両方引っ張ればいいんじゃね? という発想からスライムに掴みかかった。発想的には普通だが、状況的にはただの馬鹿である。

当然、おバカの両腕も飲み込まれた。


「あれっ!?」

『……お前は馬鹿かぁ!? あれっじゃねぇよぉおおおお!』


周りにいた者達の心は一つになった事だろう。

騎士の仕事が増えた。

まあ結果的に、足を飲み込まれた男と両腕を飲み込まれたおバカ、両方を引っ張る事で左右から引っ張ることにはなったのだが。


「びくともしねぇぞ!」

「「ぐあああああ」」


じわじわと足、腕を溶かされる男達と、なんとかしようとする騎士達。

スライムとて何もしないわけではない。スライム側がすることは単純だ。


それは……ただ、引き込むのみ。


突如グンッ! っと引き込まれ、両腕を取り込まれたおバカは前のめりになり……顔から突っ込んだ。

右足を取られていた男もバランスを崩し、スライムの方へ倒れ込む。

当然、引っ張っていた騎士達も一緒に。


つまり、大の男の大人4人が一瞬にして引っ張られた。それだけの力だ。


顔から突っ込んだ男は叫ぶことすらできず、バタバタと暴れ……動かなくなる。

スライムも饅頭の様な形から変え、周囲の4人を取り込みに入った。


「た、助けてくれ!」

「スライムに取り込まれて死ぬとかいやだああああ!」


巻き添えを食らった騎士達が仲間に助けを求め暴れるが……。

周囲の騎士達……いや、周囲の者達は動けない。

なぜなら……かなり絵面がヤバいのだ。口元を抑える者、はたまた吐く者までいる。子供達は速攻で下げられ……見てしまった子は泣き出し走っていった。


確実にトラウマ物である。


半透明の、半液状の物に取り込まれた者達はどうなるか……。

一度取り込んだ獲物を逃がすようでは生物としてダメである。

では逃さないためにどうするか? 締め上げるのだ。

半液状のスライムは全体が脳であり、胃でもあり、筋肉でもある。全身を使って取り込んだ者を締め上げ、放さない。

そして、スライムは半透明である。取り込まれた人間がどうなるか……丸見えなのだ……。水の中に放り込まれ、その水ごと圧縮される。そんな状況だ。

経験したものは当然いないだろうが……なんとなく想像はできるだろう……。ゴミ収集車とか、歯車の間とかでもいい。

それがまさに、目の前のスライムでおきていた。


溶かされながらベキベキと形を変え、肉塊となっていく元人間。

服? 靴? 鎧? 剣? こいつには……関係ない。全て……だ。


「た、たすけ……」


とぷん……。

ベキベキ……バキ……ボキン……


目に見えて溶けていく人だった物。そして、目に見えて大きくなるスライムの体。

取り込み終わったので、後は消化するだけ……それは、動きながらでもできる。

スライムがのそり……のそりと動き始めた。


『次は我が身……』


一瞬にして恐怖に負けた者達が逃げていく。


助かるためには即座に足を、腕を切り落とすべきだった。

もしくはコアを破壊するべきだった。


人という動物を4匹食べたスライムは一気に成長した。

今までは草や木ばかりだったが、それらに比べれば人は魔力を沢山持ち、栄養も豊富だった。


スライムに騎士達が攻撃を仕掛けるが、大きくてコアに武器が届かない。

魔法で攻撃してみるのだがどうにもおかしい。大して効果があるようには見えないのだ。


正確には効果はある。ただ、足りないのだ。火力が。

火の魔法で攻撃すると表面が焼ける。その焼けた表面を食べる。すると、元に戻る。氷の魔法を当てられると表面が固形化するが、それも自分で食べる。すると、元に戻る。スライムの再生能力を超える火力で攻撃しないと意味がない。

更に最悪な事に、火力の低い《攻撃魔法》はスライムに魔力というご飯を与えるだけだ。つまり、倒すどころか余計育つ。


スライムはのんびりとベリアドース王都を蹂躙していた。


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― 新着の感想 ―
JOJO第二部を思い出したが、流石にそこまで即吸収はしなかったようだ。
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