59 ギルド通り作成
さ……て……。
やることは、北東ギルド地区の改良と南西学園地区の作成か。
『ギルド地区に住んでる諸君! 明日の昼……はあれか。食事の時間が過ぎた頃にギルド地区を改造する。始める前にも言うが、作業中は建物の中で大人しくしているように!』
これでよしと。
後は時間になるまで学園の方を設計するとしようか。どんなのにしようかなー。
前世と似たような建物が安定だが……うむぅ……。
早速《思考加速》を使用しながらの設計に入る。普通じゃつまらんから……森の中にある魔導学園的な物を作りたいなー。
本格的にルナフェリアに付くことになったブリュンヒルデ。
基本的に以前はジェシカとエブリンに付いていることが多く、ルナフェリアを見ている2人を見ている事が大半。
よって、ルナフェリアの行動にはまだ慣れていなかった。
その場合相談するのは当然教え子でもある2人になるわけで。
「ルナフェリア様が微動だにしないのですが?」
「ルナ様ですか?」
「また何か考えてるんじゃない? 紅茶は飲んでる?」
「いえ、飲んでません」
「となると何か作るとか、作りたそうな物があるとか言ってませんでした?」
2人からすれば微動だにしない=考え事中が基本である。
微動だにしないと言ってもルナフェリアの場合少々違いがある。
生物じゃないので微動だにしないのは基本なのだ。
判断する所は紅茶を飲んだり、何かを食べているかいないかである。
『食べても飲んでもいない場合、大体何かしらを作ろうとしている時だ』
というのがジェシカとエブリンが学んだことである。
更に言うと……それを邪魔すると不機嫌になる模様。
物作りが好きだから邪魔すると新作の実験台にされる。紅茶すら飲んでいない場合はそっとしておくに限る。
というありがたい助言を聞いたブリュンヒルデだった。
「ギルド地区の改造では?」
「それはない。それに関してはとっくに完成図が頭にあるはずだから」
「ですね。他の物で何かありません?」
「となると、学園になりますか」
「学園?」
「アエストが学園を移したいと言うのですよ。それで南西に学園地区を作るとか」
「……アエストから学園に関する何か指定はありました?」
「どういうことです?」
「こういう物にして欲しいとか、規模の指定とかです」
「いえ、『人材は4大国が用意するから、建物は任せる』だったはずですが」
「「あー……」」
2人は天を仰いでいた。
1番丸投げしてはいけないタイプに丸投げした訳である。
ルナフェリア、外見はお嬢様だがああ見えて工作馬鹿である。
間違いなく生産ギルドの人間だろう奴である。
しかも1人で材料も用意できる。加工も1人でできる。土地やら何やらも自分が国のトップなので文句言うやつはいない。
武力? 古代竜も食材扱いだ。ハハハハ。
つまり、止 め る や つ が い な い。
そして工作馬鹿はその分野において自重という言葉を知らん。
どこまでも突っ走る事だろう。それはもう清々しい程に。
「ギルド地区を改造する時間になるまで放っておいていいですね、あれは」
「そうだねぇ。時間が来たら声かけるだけでいいと思う。精霊様も寄ってないし」
ヴルカン達すら寄らず、ルナフェリアの元にいるのはシロニャンだけだった。
そのシロニャンは太ももの上でスリスリしたり、ゴロゴロしたり寛いでいた。
「ふむ……。まあ……我々は睡眠などが必要無くなりましたし、変わらず付いてましょうか……」
そうして観察を始めるブリュンヒルデだが、見事2人が言うように微動だにせず時間が来るのであった……。
ご飯? ジェシカが作ったよ。
「ルナフェリア様? ギルド地区のお時間はどうしますか?」
「む……? おっと、もうこんな時間か。始めましょう」
気づいたら日を跨いでいたどころか昼も過ぎていたようだ。
『ギルド地区の諸君! これから改造するから大人しくしているように!』
では始めよう。
ギルド通りと言う大通りをギルド地区に作成するのだ。
元からある大通りに商業ギルド、中間辺りに生産ギルド、奥に冒険者ギルド。
ギルド関係者を対象とした店はそのギルド通り付近に作ればいい。
更にちゃんと訓練場も作ろうと思う。
強固な結界を張った土地で、入場料を取る。
お金を払い、自分の手の甲にスタンプを押す。このスタンプが有効の間結界を通過できる。結界内部でのみ、このスタンプのカウントが進む。
スタンプは上書きが可能で、上書きすると残り時間がその分追加される。
入場料は国4割、ギルド6割ぐらいとする。
ギルド員監修の新人訓練などは専用のスタンプを使用。
スタンプは当然魔道具で、魔晶石で作られた単三電池の様な物を使用する。
所謂充電池で、周囲のマナを吸収し、再び使用可能になる。
電池がなくなると判子の色が変わる。その際判子を定位置に戻すと、勝手に電池が交換される。これは魔導銃の自動装填システムを使用している。その為、飛び出した使用済み電池は自動で補充用の入れ物に帰る。
うむ。
という事で、地面ごと建物を動かしての大改造だ。
やったね住民! 建物がスライド移動する貴重な体験ができるぞ。
ズズズズっと動かして整えていく。
元々十字に大通りがあり、ど真ん中は我が家があるのでそれを囲うように円で繋がっている。
今回北東に┐型の大通りを作ろうと思う。┐の右端に訓練場、上に冒険者ギルド本部が来るようにしよう。
内側に生産ギルドで、商業ギルドは変更なしかな? 南東が商業地区だから、あまり離すわけにはいかないだろう。
そして、夕方ぐらいには作業が終了した。
『作業終了だ。ギルド通りができたため、冒険者を主な対象とした店はそちら側に出すと良い。子供連れなどの一般市民は南東で買い物すればいいだろう。飲んで騒ぐ酒場などもギルド通りに。少々洒落た店は南東だな。それと重要なお知らせが1つある。うちに学園を作ることになった。これは4大国と話して決まった事だ。最初は南西の予定だったが、北西に作ることにした。基本的に学園関係者以外は立ち入り禁止となるからそのつもりで。詳しい話はこの後ギルドにするため、各ギルドマスターは集まって欲しい。以上!』
すっかりギルドに話すの忘れていたから、話しておかないとな。
学園を北西にする理由は簡単だ。学園でダンジョンを利用する可能性があることと、南西に学園を作った場合、北西が空き地になる訳だが、そうなるとそこが居住区になるだろう。
一応商業地区となっている南東が真逆となり遠いのだ。つまり買い出しが大変。
よって、南西を空き地として北西に学園を作る。商業ギルドに学生を対象とした店を北西に出して貰えばいいだろう。
やって来たそれぞれのギルドマスターに纏めて話をしておく。
商業ギルドには学園生向けのお店の話を。冒険者ギルドには学園生がダンジョンを利用する可能性がある事を。生産ギルドは……特にねぇな。
ついでに訓練場の話もしておく。知っておいてもらった方がいいだろう。各ギルドマスターはそれなりに重要人物だからな。
「という事で、訓練場は防音も含めた結界を張ってあるから、今後はそっちを利用するように」
「それはありがたい。訓練場どうしようか考えていたところだ」
「一応壁も用意してあるけどまず結界に当たって、万が一結界が破れた場合壁に当たる。壁はアダマンタイトで作ってあるから十分防げるはずよ」
「まさかとは思ったが、やっぱりアダマンタイトだったのかあの壁」
「あの壁だけでいくらするんですかねぇ……」
「頑丈じゃない壁なんて不要でしょう。まあ、結界が破れた場合神都全体に通知が来るから何もしないでいいわよ」
「全体に通知?」
「仕込んであるのよ。まあ、この神都全体に仕組まれてる防衛システムの一種だと思ってればいいわ」
「生産ギルドとしては気になりますねぇ……」
「これは一応内緒ね。国の防衛に関する事だから」
実はそれなりに仕込んであるんだ、この土地には。
現状平和だからまだ一度も起動されていないが。
「仕組み自体は内緒だけど機能の一部を言うと、私が使用している神都全体に拡散されるのも機能の一部だし。神都を囲んでいる壁に何らかの攻撃が加えられても全体に通知が来るようになってるし。実はセキュリティーゲートを潜った際、間者はマーキングされて私に位置モロバレしてる」
「「「えっ?」」」
「後王族なんかもマーキングされるわね。公爵とかもね。かなり優れていない限りこれに気づくのは無理でしょう。気づいたところで害は無いしね。公爵とか王族の位置を把握してるのは安全面からだし。困るのは悪巧みしてる工作員ぐらいでしょう。間者は情報収集するだけなら放置してるわ」
「放置でいいのか?」
「別に構わないわ。隠さなきゃいけない情報って特に無いのよね。それに情報を持ち帰って貰った方がこちらとしては好都合。まず攻める気にはならないでしょう」
うちにいる精霊達と戦いたいと思う馬鹿はいない……と思いたいなぁ。想像を絶する馬鹿は案外いるんだよねぇ……。
少し考えれば分かるだろ……ってのを普通にやる奴がなぁ。やれやれだよ。
「まあ、それは置いといて。正式に4大国に認められた訳だからよろしく。今後忙しくなるかもしれないわよ」
「我々からすれば稼ぎ時なので何の問題もありませんね」
「うちも建築部門が忙しいぐらいですかねぇ?」
「こっちはギルド本部が中央に来たからな。むしろ今までより楽だ」
ギルド組は特に問題なさそうか。さて、今後はどうなっていくのやら。
とりあえず学園だな。
旧→ご飯? エブリンが作ったよ。
新→ご飯? ジェシカが作ったよ。




