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転生先は現人神の女神様  作者: 子日あきすず
ファーサイス 不死者の森編
37/88

閑話01 ジェシカとエブリン

多少なりともサブキャラ掘り下げるか……と言うことで、侍女の2人です。

閑話を書くとしたらこんな感じでさくっとですかね……。

最初以外はエブリン視点。


今日は2話同時になります。

これは2話目。

閑話『ジェシカ』


なぜ? なぜなのだろうか。

確かに、耳や翼、尻尾があったりなかったり。耳の形が違ったりといった違いはあるかもしれない。

逆に言えば、それだけしか違わないという事。

そして、多少姿は違えど会話ができる。意思疎通はできるのだから、別に問題は無いではないか。

別に結婚しろとか、優遇しろとは言っていない。ただ、普通に。そう、普通に接すればいい。ただそれだけなのに、なぜそれができないのか。


アクウェス法国。

《回復魔法》を神々の奇跡と謳い、神々へ感謝をするため、祈りを捧げるために教会を広めた国。

だが、どの国にも暗部、闇という部分があるだろう。この国は人間至上主義だ。

『人間こそが選ばれし者であり、頂点に立つべきである』とか言う、よく分からない事を言っている。

人間は数が多い、多いのだが『人類』の中では数が多いだけで、身体能力的には全てに劣ると言っても過言ではないと思う。


『人類』とは人間、魔人、獣人、ドワーフ、エルフ、ドラゴニュートの事だ。

魔法の扱いに長けた人間、魔人。

猫、狼、兎などの動物の耳や尻尾と言った特徴を持った人間、獣人。

地の精霊と人間から生まれたと言われる、ドワーフ。

風の精霊と人間から生まれたと言われる、エルフ。

ドラゴンと人間から生まれたと言われる、ドラゴニュート。

というように、全て人間から派生した、我々人間こそが祖だという。

我々人間こそが優れ、お前達は祖である我々に尽くすべきである。というのが法国の言い分だ。


私からすれば何言ってるんだ、としか思わない。

魔人も獣人も、ドワーフやエルフも、ドラゴニュートだってそれぞれ特徴を持っている。

魔人は魔法を、獣人は優れた身体能力に鼻や耳と言った動物ならではの特性を。

ドワーフは《土魔法》や《火魔法》に優れ、細かい作業に精通している。

エルフは《風魔法》や何と言っても《精霊魔法》に優れ、必ず精霊様1人と契約をしているという。

ドラゴニュートはドラゴンの血が流れており、どの『人類』よりも優れた肉体と魔力を持っている。

それに比べ我々人間はどうだ? 数が多い以外に誇れる所はあるのだろうか。


《回復魔法》持ちが人間に多いそうだ。

これは他の『人類』より、肉体能力などが劣るため、神々の慈悲ではないかと思っている。

『癒やしの力を与えましょう。他の種族と協力し生きるのですよ』

そういう意味で、神々はこの力を与えてくれたのではないか。私は常にそう思う。

だが、今の法国はどうだろう。《回復魔法》持ちを抱え込み、人間じゃないからと手を差し伸べない。

そんな我々を、力を与えてくれた神々は許してくれるのだろうか?

『得た力をどう使おうが、我々の勝手』

それは、まあそうだろう。それ自体は否定するつもりは無い。

だが、限度、節度というものがあるだろう。今の法国は、明らかに度が過ぎていると私は思う。


私は《回復魔法》を上級まで使用できる。これは、世界でも数える程度しかいない。上級の《回復魔法》は非常に有り難みがある魔法なのだ。

なぜなら……魔物などの被害により失った手足を治すことができるから。

上級魔法の"リカバリー"を使用することにより、手足が生えてくるのだ。

これがどれだけ貴重なことか。そして、こんな魔法が使用できる私を法国が放っておくわけもなく。だからといって私も黙って利用される訳もなく。

愛人なんて誰がなるかと。そんな訳で、私は旅に出ます。このまま法国の駒になる気なんてありません。その際しっかりと親とは縁を切り、出てきました。

ああ、別に喧嘩別れとかではありません。その辺りは特に問題では無いのです。


その時ちゃっかりとエブリンも付いてきていましたが、特に何も言いません。

《回復魔法》で治療の旅に出て、少しでも苦しんでいる人を助けられれば、それでいいでしょう。


エブリンはそれなりに良いとこの貴族なのですが、周りの評価的にはあまり良くありません。別の意味で猫をかぶっているのを私は知っています。

だって、私と2人の時や、旅している時はしっかりとした、非常に頼りになる人なのですから。お姉ちゃんとはこういうものなのでしょうか。

お世話になってばっかりです。


面と向かっては言えませんが、いつもありがとうございます。


◇◇◇◇


閑話『エブリン』


私はアクウェス法国と言う国の、上級貴族の家庭に生まれ、言われるがままに生きていました。

しかし、小さい頃にジェシカと言う平民の子と会いました。

会った当時はそんな気にしてはいなかったのですが、ある日ふと気づいたんです。

何か、他の子達と違う気がする……と。その時から既に惹かれていたのでしょう。

今ならなぜ違う気がしたのか、良く分かります。彼女は、ジェシカはしっかりと自分を持っていたのです。

『なぜなのか? どうしてなのか?』という事をよく考えず、ただ親に言われるがままに生きていた私との差。そんな彼女に私は惹かれていったのです。


その時に『良い子な私』はいなくなったのでしょう。

良い子というのは『扱いやすい、言ったことに従う子』です。

上級貴族であり《回復魔法》の中級まで扱える私。

自分で言うのもなんですが、人の目を引く優れた容姿。

そんな私を親が、法国も放ってはおきません。

貴族の女性というものは、駒でしか無いのです。そんな生涯を、私は望みません。育ててくれた親には悪いと思いますが……いえ、言うほど思いませんね。

『愛情』とは程遠いと、気づいてしまったのですから。


良くも悪くも、ジェシカという存在は私を変えました。

ですが、後悔はありません。むしろいい出会いだったと感謝しています。

私の夢は『彼女と同じ世界を見ること』です。


ジェシカ、貴女は私に感謝しているようですが、お礼を言いたいのはこちらの方です。貴女と出会ってから、人生が変わったのですから。

それに、貴女は我々からしたら分かりやすすぎますからね。

交渉事には向きませんよ。貴女をフォローする人間は、必要でしょう?


これでも貴女より年上で、上級貴族として教育されてきたのです。

その辺りはお姉ちゃんに任せてください。その代わり料理などは任せましたよ。


◇◇◇◇


閑話『帰るつもりのない、巡礼の旅』


旅をしている間に様々な事がありました。

私達を囲い込もうとする国や、治療の報酬としてちゃっかり息子を差し出そうとしたり、拉致ろうなんてものもありましたね。


こういうのも何ですが、美人2人で旅ですからね。妙な輩は嫌でも寄ってきます。

しかし、上級貴族として育てられ、こうした旅で経験も積んでいるのです。

そんな罠には嵌りません。というか、ただの美人が2人旅なんてするわけ無いでしょう。自分で言うのもなんですが、かなり逞しいつもりですよ。

最近では解体も覚えましたからね!

治療する旅してるのに生き物を殺すのかって? それとこれとは話が別です。

貴族生活より、こういう生活の方が生き生きしている自信があります。


旅をする際早々に冒険者登録もしましたしね。

そんなこんなで旅していると、ジェシカが聖女なんて呼ばれるようになっていました。気づいたら聖女御一行です。御一行といっても2人しかいませんが。


私達にそんなつもりはなくても、治療してもらっている側からすればそうなのでしょうね。


◇◇◇◇


閑話『運命の日』


……遂に我々が邪魔になりましたか。

法国という事で堂々と『そういう者』を付けますか。この者は確実に『裏の人間』でしょう。隠しているようですが、体の動きが完全にシーフのそれです。

ところどころ見える動きが、武を嗜んでいる者の動きです。

こんな聖職者がいてたまるもんですか。


……しかし、これは困りましたね。間違いなく狙いはジェシカでしょう。

なんとかしなければなりませんね……。とは言え、本職相手にどれだけ立ち向かえるか……。

……いいえ、やれるだけのことをやるしかありませんね。

私は後悔したくはありません。まずは、ジェシカから離れないようにしよう。

ジェシカ自身も鈍くはありません。恐らく気づいている……。

覚悟はしていたとはいえ、黙って殺られる気はさらさらありませんからね。



いくら全員《回復魔法》が使えるとはいえ、3人で不死者が沢山いる森に行くとか、ふざけてますね……。何度かさり気なく邪魔してやったので、痺れを切らしたのでしょうか。

とは言え、非常にまずい事には代わりありません……。



いったいどうなっているんですか! この森は!

なぜこんな高位アンデッドがゴロゴロと!

これはまずい! あいつを監視してる余裕が!



……とか思っていたら、あっさり足を切られ、アンデッドを避けるサークルから蹴り出され……ジェシカも刺されてその場に崩れ落ちてしまいました……。

ああ、これで死ぬのでしょうか。随分とあっさりした最期ですね……。

せめてもう少しあの子の側に……ん……?

アンデッドが寄ってこない事に気づき、確認しようとしたら上から声がして、閃光と共にワラワラいたアンデッドが消し飛びました……。一体何ごとですか……?

……天使? とか思ってるうちに何でも無いかのように治療されました。


なんですか、その詠唱速度は……。しかもエクステンドオプション付き……。

"エクステントハイヒール"なんて<Index>にはないはず……しかも"エクステントキュアオール"? "キュアオール"だけでも《回復魔法》の上級……。

3対の羽って……ソロネ、ケルビム、セラフィムといった最上位天使のどれかってこと……? 天使なら今の《回復魔法》も納得はできるけど、こんな所に最上位天使がいることがおかしい……。


「あ、貴女は……」


ジェシカが呟くように問いかけるけど……。


「……ただの冒険者」


いや、その答えはおかしい! って赤!? 赤い腕輪ってCランクってこと?

そんなバカな!


って何かアラクネと戦い始めたんですけどー!?

えっアラクネいたの!? あの時点でもう勝てる気しないんですけど!

うわ、うわ、あれ完全に遊んでる……。うわ、幼女強い。

え、何か繭?に包まれた。あ、こっち来た。


行く当てはあるかと聞かれたが、当然無い……。

もう帰れないだろう。元々帰るつもりは無かったし。

そうして、私達はこの人?に付いて行くことになった。


まさかこのようj……この方が月の女神様だったなんて。

ルナ様を見てると頬が緩みそうです。何と言うかその、所々子供っぽい所があるというか、ぬいぐるみを抱えて布団に潜り込む姿とか堪りませんね。

侍女の特権です。眼福です。とか思ってるとぬいぐるみが顔に飛んでくるんです。

柔らかいとはいえかなりの速度で結構痛いです。

私のポーカーフェイスは完璧なはずです。思考を読むのは卑怯だと思います。



これからジェシカと私、エブリンの幸せな日々が始まります。

聖職者として、女神様本人にお仕えする日が来るなんて、思いもしませんでした。

いえ、聖職者と言うのは投げ捨てましょう。ええ、そんな肩書はいりません。


私は今、とても幸せです。それが全てです。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ジェシカとエブリン、聖女がどっちがどっちだったか忘れてきていた為、そういう意味でも振り返り回はとても助かりました。 後、こういうサブキャラ振り返り回が大好きなので、最高です。 ...ちなみ…
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