30 変化の時と作戦継続
「ぬお! な、なんだ!?」
「なんだ?」
これがそうだろうと、言われた通りすぐに目を閉じ待機しておく。《月の魔眼》の魅了も相当だ。
光が体を通ると、すぐに変化が分かった。
騒いでいるギルマスや隊長、教会組を放置し、とりあえずいらない効果を全て切り、目を開ける。
ステータスリングからステータスを確認しておく。
名前:ルナフェリア
種族:女神
性別:無性女性形
職業:月の女神
身分:神
称号:夜と魔を司る者
年齢:90
スキル
【武闘】
《剣術 Lv4》 《槍術 Lv3》 《弓術 Lv4》 《刺突術 Lv3》 《格闘術 Lv5》
《盾術 Lv2》
【魔法】
《魔力操作 Lv10》 《月魔法 Lv10》
《結界魔法 Lv10》 《空間魔法 Lv10》 《重力魔法 Lv10》
《精霊魔法 Lv10》 《強化魔法 Lv10》 《回復魔法 Lv10》
《生活魔法》
【生産】
《魔導工学》
【身体】
《魔力強化 Lv10》 《身体制御 Lv10》
【その他】
《思考加速》 《並列思考》 《並列魔法 Lv10》
《空適性 Lv10》 《夜適性 Lv10》 《魔法適性 Lv10》
《魔導武装》
【種族】
《月の祝福》 《月の魔導》 《飛行 Lv10》 《呪歌》
【固有】
《森羅の魔眼》 《神力体》 《多重存在》 《物質創造》
【所持称号】
一般
[ドラゴンキラー] [魔導技師]
固有
[創造神の御使い] [月の女神] [現人神] [夜と魔を司る者]
[転生者] [亡国の美姫]
うん、スッキリしたな。
そうか、《格闘術》はもうカンストしてるんだな……。
《森羅の魔眼》がえげつない訳で。
《森羅の魔眼》
以下の魔眼を内包。
《真実の魔眼》
思考や過去を見通す神の魔眼。高精細鑑定、高精細分析の効果も持つ。神は欺けない。
《月の魔眼》
空から地上を眺めているように見ることができる。非常に強力な魅了効果を持つ。
マナや魔力に関する物が見える。
《闘気の魔眼》
闘気が見える。強力な威圧効果を持つ。
《霊魂の魔眼》
精神や魂といった物が見える。レイス系などもばっちり。
《気絶 麻痺 沈黙 混乱 凍結 石化 呪い 衰弱 威圧 恐怖 魅了 狂気》
それぞれの状態異常にする魔眼。
《竜眼》
竜の眼。上位竜が持つ魔眼の一種。魔力の流れを見ることができる。千里眼、恐怖。
魔眼の対処って基本的に視界から逃れるか、レジストする必要があるのよね。
この状態異常系の魔眼って、基本敵が持ってる奴だった気がするんだが。
これ、私が持っちゃダメな奴だと思うんだけど?
私相手にレジストなんかできるわけないし、《月の魔眼》と同時使用できるからね?
まあ、必要になったら当然使うけど。
他にも色々あるが、《真実の魔眼》や《月の魔眼》の下位互換だったりする。
《精霊の魔眼》とかあるけど、精霊達が見えるだけだから、《月の魔眼》の下位互換だね。
闘気は魔法扱いのようだよ。"マテリアルシールド"だと闘気扱う相手には不十分だな。
ゲームで言うなら攻撃力物理依存の魔法判定だ。よって、レジストの判定が入る。
あえて言うならスタミナのようなもんだな。闘気使えば疲れるようだし、休めば回復する。
さて、騎士やギルマスは突然自分の体に現れた、闘気に驚いているんだろう。
こいつら鍛えているだけあって、闘気も相当だ。
神力は同じ神々か、精霊達にしか感知できないから、こいつらからしたら突然なんだろう。
精霊達は別の意味で興奮しているが。
「今度は何が変わったんでしょうね」
「なんだろうねー」
「私達は特に変化なしですかねー?」
「……特に無い」
「こちらも特に変化は感じま……」
「なになに! 土何かあった!?」
「鉱石と水晶が増えたようですね」
「おおー!」
と、盛り上がっている。こいつら、パッチ経験済みのようだ。
まあ、何年生きてるか分かったもんじゃないからな……。
えっと、増えた魔法は……これか!
「お嬢! ちょっといいか!」
「よくない」
「……」
増えた魔法把握するのに忙しい。
……ふむ。
「"マジーアボディ"」
増えた魔法を早速使用してみると、前のテーブルの上に1人の女の子が生まれた。
ペタンと俗に言う女の子座りをしており、上半身は力なく重力に引かれている。
「!! 私がいるー!」
そう、見た目はヴルカンそっくりだ。ヴルカンが周りをぐるぐる回って眺めている。
そして、もう1つの魔法を使う。
「"パペット"……ふむ、なるほど」
すると力なく座っていた物が、すくっと立ち、動き出した。
「おお! 動いた! なにこれ!」
「新しく増えた《人形魔法》よ。どうも、本来は人形の体を何かしらで用意する必要があるけど、超級なら魔力で体が作れるようでね。前にいたヴルカンを真似て作ったの」
「魔法が増えたのかー!」
操作してるヴルカン人形でヴルカンと戯れる。
その間にぽかーんと人形を見ているギルマスに話しかける。
「で、なに?」
「あ、ああ。なんか知らないかと思ってな」
まあ、私に聞くのは正解だな。ということで、闘気について説明した。騎士達も一緒に。
聞いたギルマスと隊長達は早速離れて練習しだす。
魔法師団は増えた魔法についてをご所望だ。
「増えたのは《人形魔法》。大きく変わったのは《召喚魔法》ね」
そう言って説明する。
天使召喚と悪魔召喚しか無かった召喚魔法が、初級の"オーディール"を使用すると亜空間で戦闘になり、勝利すれば勝利したやつを召喚できるようになった。
戦えるやつは使用時に選べるので、ドラゴン選んで勝てばドラゴン召喚できるようになるぞ!
召喚に必要な魔力があるならな。後、勝てればな? 1対1だから、頑張れ!
《人形魔法》は人形に核となる魔石を"メイキングドール"で埋め込み、"パペット"で操るスキルだ。
上級にある"オートマタ"で自律行動を行い、製作者の命令に従う。魔力が無くなると停止する。
超級の"マジーアボディ"で魔力によって魔力体を作成し、"パペット"で操れる。
まあ、よくあるあれだな。ゴーレムだ、ゴーレム。上級まで行ければな。
「以上。何が召喚できるようになるか、とか、有用性などは自分達で調べなさい」
「ありがとうございます」
「……待った、ギルマスと隊長達集めて。重要な話」
「分かりました」
ギルマスと隊長達に来てもらって気づいた話をする。
「《召喚魔法》にそれなりに大型の飛行系がいる。つまり、対空戦も考えたほうがいいわよ。ユニコーンや亜竜のワイバーン、グリフォンとかもいるし、上位竜もいるわ」
「……1人で勝てるとは思えんが……だからといって対策を考えないのは無能か」
「なるほど……大きさってどのぐらいか分かります?」
「えっと……大体ワイバーンで4メートルぐらい。ただ、こいつらって召喚されている間の経験はしっかり残り成長していくようだから、大きさも術者次第ね……。ペガサスは普通の馬ぐらいだけど、飛べるし素早く、《雷魔法》持ちっぽいわね。グリフォンは6メートルぐらいかしら、《風魔法》持ちね」
「同じく《召喚魔法》持ちを育てて対抗させるのが1番ですかね……」
「……城壁弄らなきゃダメかなぁ。マテリアルだけでも常に……まあ、話はそれだけよ」
「オスカー隊長、今の話を治安部隊にしてきてくれ」
「では、少々行ってきますね」
オスカー隊長を見送り、また闘気の練習に戻った。まあ、いいや。
私もまだ、出番は無いな……。今のうちに何かしらを召喚できるようにしておこうか。
……ふむ。
「《召喚魔法》を試してくるわ。本体見ておいて」
「おまかせを」
「"オーディール・――――――"」
意識が微睡みへと誘われ……再び目を開けると……。
随分好戦的なわんちゃんだな。わんちゃんって見た目じゃないけれど。
「さあ、死合おうぞ!」
一方、作戦真っ只中で森の中の者達にも、当然『変化の時』の影響があった。
「ん!?」
「敵か?」
「いや、敵じゃない」
「よし、ちょっと休憩してぇが、どうする?」
「あまり良い場所とはいい難いが……今の状態で進むのはちょっと心配だな」
「だな。集まって各自警戒しつつ確認だ」
「おう」
斥候を先頭に進んでいた高ランクの冒険者のパーティーが休憩に入る。
4人PTで、各自背を合わせるように止まり、ステータスリングで確認をする。
「どうだ?」
「特に変化ねぇな……?」
「こっちも……特にスキルに変化は見られない」
「俺も特に変化は……ん! 待て、スキルが増えた」
「まじか」
「お前らなにかある感覚するだろ?」
「ああ、するな」
「動かせないか意識してみろ」
「《闘気操作》……ってなんだ?」
「【武闘】に入ったってことは、魔力見たいなもんじゃねぇの?」
「いろいろ試してぇところだな。……む、敵だ!」
「ッチ。あんま不確定要素持ったまま戦いたくねぇなぁ!」
「これ、物語でよく聞く『変化の時』ってやつだよな?」
「だろうな!」
突如体に発生した闘気の存在を把握し、スキルも確認した。
流石上級冒険者、ベテランだけあって落ち着いて状況把握を済ませ、敵の存在にも気づく。
そして1人が武器を構えながら呟く。
「……この、闘気っての? 敵にもあんのかね」
「やっぱ、気になるよな」
「だが、敵骨だぜ?」
「少し、様子見てみるか?」
「数体ずつ見ておきたいところだな」
それから数体ずつ残しては確認しつつ、自分達も闘気の使用感を掴みながら進んでいく。
「あー、闘気いいな。楽だわ」
「んだなぁ」
闘気を剣に纏わせてみると、明らかに敵を斬る時に必要な力が減ったようだ。今のところ敵の闘気使用も確認できていない。しかも、今回は敵を倒すだけなら楽なのだ、開始前に受けた補助のおかげで。
リュミエールの"ライトウェポン"と、オスクリタの"ダークシールド"と、ルナフェリアの"オールレジスト"が、とんでもない効果を発揮しているようだ。
まず、アンデッドと戦えば間違いなく呪いを掛けられる。呪いは回復系の効きが悪くなるが、これを面倒だからと放置するやつはまず居ない。
呪いの効果はどんどん重複し、効果を増していく。状態異常の呪いLvが上がっていくと思えばいい。
当然高レベルの呪いは解除に手間取り、低レベルよりも回復系の効きが悪くなる。
そんな状態で致命傷を受けたら? 当然そのまま仲間入りだ。ゲームっぽいが、ゲームではないんだ。
そのまま死んで終わりである。よって、万が一を考えるとしょっちゅう解除していくしか無い。
もう面倒くさいのはお分かりだろう。当然金だってかかる。しかも呪い対策アイテムはあの教会販売。
それが"オールレジスト"によって効果中はガン無視できるんだ。
更にリュミエールの"ライトウェポン"である。ルナフェリアの魔力を使用された精霊魔法の効果は当然そんじょそこらの"ライトウェポン"とは大違いである。
現状受けた者達の武器はそこらの魔剣顔負けの効果を発揮している。
アンデッドに武器がぶつかった瞬間、光の小爆発が起き、その爆発場所は消滅している。
下級アンデッドじゃ話にならない、触れた瞬間消し飛ばされる。
そして、敵を抑えるタンク役の人達や、新人達は気づくだろう。"ダークシールド"も尋常じゃないと。
この世界には属性という物がある。同じ属性は非常に効果が薄い。
水に水をかけたところでなんだというのか。火に火を入れたところで意味はないし、風もそうだ。
むしろ下手したら吸収され、力が増しかねない。
岩に岩ぶつければ多少効くんじゃね? とは思うが、属性の時点で魔法法則に従う為、そんな常識は残念ながら通じない。やるなら投石など、魔法以外の方法で岩をぶつける必要がある。
対抗属性で反発させる方法も取られるが、今回は単純にリュミエールとオスクリタの両方に出番をあげただけだろう。
補助を実感した冒険者達は絶句である。大量に参加している者達の心が1つになっただろう。
『なんだ、これは』と。
それはもう1つになっただろう。ちなみに騎士達は絶賛していた。付き合いが違う。
冒険者達はこれで察しただろう。
完全に人形を保ち、貴族顔負けのドレスを身に纏う精霊様を、6人も契約精霊とし、万規模にまさかの超広範囲指定でこの効果だ。普通範囲を広げれば広げる程、対象を増やせば増やす程効果は分散する。
たまにギルドで見かけ、大体ギルマスやテアさんが担当しているのを見て、容姿的にも高位の依頼人だと思っていた少女が、これである。
『情報が生死を分ける事もある』というのが常識な上級冒険者達は、気配や情報集めである程度察していたようだが。低級の見た目で舐めてかかった間抜け共は顔面蒼白である。
そもそも、強い弱いはともかく、貴族や王族だった場合どうするつもりなのか、とベテラン達は呆れていたが。処罰もあり得るし、運良く回避したとしても、不快にさせれば報酬が減るんだぞ? と。
むしろあの容姿、格好で違うという方が無理がある訳だが……。
まあ、ルナフェリア本人が内心で『はいはい、テンプレテンプレ』と受け流すなり、一撃で沈めるなりしていたので被害はほぼ無いのだが。
依頼でも何でも無く、ただ単に冒険者側の情報を仕入れてただけだし。
とまあ、一時的にある意味大混乱だった訳だが、それを除けは比較的順調に作戦は進んでいる。
現状森を進んでいるのはベテランの騎士達と冒険者達で、中級組は少し時間を空けてからの進軍となっている為、待機中に『変化の時』が訪れたので余裕を持って検証ができていた。
そして、『変化の時』を体験できた事で、非常に興奮していた。
「ふはは! 流石月神か! 従おう、主よ」
「今後とも宜しく、マーナガルム。戦うのが好きそうだけれど、戦闘以外でもいいかしら?」
「無論構わんが……なんだ?」
「ほら、私がこんななり……見た目だから、貴方に近くいてもらおうかと」
「うむ、いいだろう」
「じゃあ、帰るわね」
「ああ、待っていよう」
"オーディール"によって生成された亜空間から帰還する。
精霊達に帰ってきたことを知らせ、魔眼で作戦状況を確認する。
……特に問題は無さそうか。と言うか、ぶっちゃけ出番無さそう……。
正直あの補助系魔法だけで仕事としては十分と言えるからなぁ……。
にしても、進みが遅いな。各PT最終目的となっている、中央にある巨大な湖まで何日かかるやら。
現状発生源も不明なんだ、湖に到着してもまたそこから調査だぞ。
しかも奥に行けば行くほど、湖に近づけば近づくほど、アンデッドの数が増えるんだ。
今よりさらに進行は遅れるぞ。相手も強くなってくしな。既にスケルトンウルフが混じってるようだ。
あいつは討伐推奨冒険者ランクE+だったか。安全に倒すなら、Dランクが1PTで当たれって事だ。
1PTは4人から6人が基本。Eランクなら2人だが、+がついてるから3人いた方がいいだったかな。
まあ、今森に入ってるのは第一波だ。最低でもBランクだから問題は無いだろうが。
「ギルドマスター、定時報告です」
「おう、どうだ?」
「はい、まず各方角の状況ですが―――」
数人の騎士が臨時拠点へやってきて、ギルドマスターと隊長達に報告を始めた。
皆とても微妙な表情だ。予定より進みが悪いらしいから、しょうがないか。
「中で夜を越すのはやめるべきか……」
「夜はアンデッド達が強くなりますからね……ベテラン達はまだしも、他がどうか……」
大変だな、お偉いさん達は。ちなみに、夜になるとアンデッド達が強くなるは△だな。
△夜になるとアンデッド達は強化される。
○夜になると魔法生物系は強化される。
◎夜になると月属性の者達が超強化される。
と言うわけで、魔法生物と言われる者達は、アンデッドやゴーレム、つまり魔法で動くような奴らだ。
夜になると月明かりによってマナが活性化される。その影響で強くなるんだ。
私の神力は月明かりとは桁外れに活性化させるわけだが、どうもこいつらには影響がない。
何かしらの法則で別扱いなんだろう……。
何よりフィーバーするのが我々、月の者達だ。魔法生物は1.3倍。月の民は2倍程度強化される。
まあ、天然な月の民はほぼいないっぽいけど……。
《月魔法》と《召喚魔法》持ってれば月の民が召喚できるようだ。
《月魔法》が必要とか敷居高すぎると思うの。前提がLv10じゃん? 人間じゃ寿命足りないよね。
創造神様による明らかな月贔屓。贔屓される側なので、文句ありません。
いいぞ、もっとやれ。まあ、逆に昼間は弱体化してるとも言えるんだが。
それはそうと、余程の事がない限り私の出番は無いので、もう少し召喚できるやつを増やそうかな……。
私が動くと騎士達に怒られるんですよ。何でかって? 奴らも自分の立場に誇りを持ってるからな。
『私が動けば誰も怪我しなくて済むんだからいいんじゃね?』って思うんだが、『国のために死ねるなら本望です!』って返ってくるだけだからな……。逞しい奴らよ……。
本人達がそうするってんだから、そうさせるけど、一応私も冒険者なんですがねぇ……。
私の立ち位置がなんとも言えんよな。いっそ正体ばらして好き勝手やったほうがいいんじゃ……。
その場合ファーサイスを出ることも視野に入れないとな。ま、なるようになるか。
召喚できるやつ増やしてよっと。
【魔法】
《魔力操作 Lv10》 《月魔法 Lv10》
《結界魔法 Lv10》 《空間魔法 Lv10》 《重力魔法 Lv10》
《精霊魔法 Lv10》 《強化魔法 Lv10》 《回復魔法 Lv10》
《人形魔法 Lv10》 《生活魔法》
表向きステータス表示
名前:ルナフェリア
種族:精神生命体
性別:無性女性形
職業:冒険者
身分:元皇族
称号:魔導技師
年齢:90
所持称号】
一般
[魔導技師]
固有
[亡国の美姫]




