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転生先は現人神の女神様  作者: 子日あきすず
ファーサイス 不死者の森編
29/88

27 作戦準備と着替え

バンッ!


「突発じゃんけん大会! いえーい! あ、ペルシアだ」

「……」

「「「「「うおおおおおおお!」」」」」


うむ、今日も騎士達は元気だな。良いことだ。


「あの、師匠。勝ったは良いのですが、自分ペルシアは……」

「ほう、珍しい。……リンゴ」

「ありがとうございます!」



さて、練習だ、練習。

早速弓兵達に混じって訓練をする。


「な、なんですかそれ」

「魔導城壁の次に苦労したであろう魔導弓。あ、そうだ。これ引いてみて」

「え、良いんですか?」

「私以外に引ける人がいるのか気になるのよね」

「それはどういう……」

「まあまあ、使ってみたまえ。持つ所はここ。左手に魔力を少し流して魔力矢の生成、右手にこれ持って魔力を流すと"プレスティージオ"でストリングを引けるから」

「なるほど……」


この世界の人間の身体能力は、前世より高い。まあ、それでも魔物に殺られる事が多いのだから、あれなのだが。


「ふっ! ……んん!? かって! えっ!? かってぇ!」


うーむ……。あ、《身体強化》した。


「ふっ! ……お、お?」


お、引けたか。ある程度引いてしまえば、コンパウンドボウはカムのおかげで楽なんだ。


「その魔導弓は偏差の必要がないから、真っ直ぐ射ってみて」

「分かりました」


カシュン!


あ、だいぶズレたな。


「うーむ、不思議な感じですね。しかし、やはり慣れてるのが1番でしょうか」

「まあ、少し待ちたまえ。その弓の売りはカスタム製。弄ってみましょう」


今のカムの動きと、昨日の練習時の記憶を掘り起こし、調整する。


「どう?」

「……ああ、これはすごいですね」

「まだ少しズレてるかしら。…………これで射ってみて」

「分かりました」


静かに引き、カシュン! という風切音だけ残し、真っ直ぐ吸い込まれる。


「…………最初と全然違いますね」

「最初は私専用のチューニングだったもの。それはベースの弓本体にオプションを付けて、よりその人に合わせる。そして、弓の両端についている滑車で、引けば引くほど力が必要なくなっていくの」

「なるほど……。これはルナフェリア様が?」

「いいえ、前世で競技などに使われていた弓よ。2種類ある弓が組み合わさった感じかしら。本来はもっと小さいのだけど、魔装具にするに当たって、こんなサイズになったわ……」

「これ、素材なんです?」

「それは秘密よ。白い部分はミスリルとだけ教えてあげる。とりあえず私以外にも引けるのが分かったし、良しとしましょう」


チューニングを全て自分用に戻し訓練を開始する。

作戦開始までに《弓術》をどこまで上げられるかね。


・・・・・・

・・・


弓が完成してから2日。《弓術》はまだLv2。まだまだ見習いレベル。

今日も今日とて練習だ。


「ルナフェリア様」

「どうしたの?」


カシュン!


「予定が決まりました。今日から一月半後、冒険者達と一斉討伐開始します」

「そう……。して欲しい事は?」

「出来る限りサポートに回って欲しいと言うことです」

「サポートねぇ……考えておくわ」

「お願いします」


さてさて、サポートか。どうしようかね。相手はアンデッドだから、リュミエールを使う?

《ライトエンチャント》に《ダークシールド》、後は《オールレジスト》かな。

後はてきとーに弓射ってよう。サイズ的に森では使いにくそうだが、経験にはなるか。

私がさっくり大規模殲滅してしまうと色々問題だから、サポートに回れと言ってるんだろう。

そういう意味では弓で丁度いいのかもしれんね。


後で冒険者ギルドに顔出しておく必要があるな。あっち側で参加だし。


そう言えばここ2日で分かった事だが、この弓、杖に近い機能もありそうだ。

この世界の杖は、RPGなどでよくある魔力増幅、制御補助の杖だ。

魔力を杖に流し、杖先で魔法を発動させる。

魔導弓の場合、弓がと言うより、弓の部位がって感じだが。

魔力制御は本体とリリーサー(弦を引っ張る物)、魔力増幅はストリング(弦)の聖魔糸。

更に、先端の矢速強化。ただし、弓の使用と魔力制御を同時に行う必要があるが。


魔法を矢にできると言うことで、"ファイアランス"や"エクスプロージョン"などを試したが、素晴らしいのはオリジナル魔法すら矢としてぶっ放せる事か。弓とはいったい……って挙動する矢を撃てる。

メインウェポンこれにしても良いな。全然使える。魔導銃はカートリッジの仕様的に弾種、威力固定だったが、魔導弓はそんなこと無いし。テンプレ(変態)に1発ぶち込んだだけでお蔵入りである。

思ったより魔導バレルが優秀。即席じゃなくて、もっとちゃんと作ってやろう。


さて、作戦開始まで練習と改良だな。


・・・・・・

・・・


「ルナフェリア様、ここはこう……」

「……こう?」

「いいですね。ここはこう……」


何をしてるかって? 指導されてる。


「淑女たる者、常に優雅に、高潔に、淑やかにです。上っ面だけでも完璧にして下さい」

「上っ面だけでも……」

「貴族の時点で高潔とは無縁ですからね。男女関係なくしっかり被ります。悟られる時点で貴族としては3流ですね。冒険者は魔物との戦闘、商人は商売、貴族は……会話が戦場です。日常会話すら殴り合いです。下手したら殺し合いです」


私の前に立った時点で強制3流だな……。悟られるどころか筒抜けだが。


「下手なこと言った時点で首が飛ぶことがあります。特にこの国、無能は消えるのが早いですね。まあ、ルナフェリア様は貴族ではないのですが、容姿や服装的にそれに合わせて淑女目指しましょう? 表向きは皇族ですし」


なんてことを話しながらピシッと指導されてました。ブリュンヒルデさん結構手厳しい。

『侍女にもプライドと言うのがあるんです!』だって。

ちなみに、ずっと私の歩き方が気になってたらしいよ。しょうがないね、約90年男だったから。


「せっかく良いの持ってるんですから胸張って歩きましょう」


すみません。言うことを聞かなくなってきた老体時の癖なんです。許して。

未だに無意識に体を庇ってしまう時があるんです。


「足運びはこうですよ。上半身の動作はなるべくゆっくりを意識して下さい。余裕を見せるのです。ポーカーフェイスは完璧なので良いとします」


ポーカーフェイスしているんではなく、なっちゃうんですよ!


「言葉遣いは……皇族なので高圧的、命令形が基本なのですが……。基本的に冒険者という事なので、良いとしましょうか」


助かった。


・・・・・・

・・・


「ルナ様、脱いで下さい」

「……は?」

「ドレスが完成しました!」

「……ああ、うん。突然何を言い出すんだこいつとか思っちゃったわ」

「他の3人は?」

「着替えの準備してます!」

「……着替えますかね」

「こちらでーす」


エブリンに連れられ移動する。

さて、どんなドレスになったのか。


「お連れしました!」


部屋に入ると、正面にドレスが飾られていた。


「ほっほう……」



聖魔のドレス レジェンド

ルナフェリアの従者達の作品。

精霊の加護(全属性軽減)、魔力増幅、皺防止、清潔、体温調整、形状記憶。

従魔と契約精霊、侍女の3人が主の為に作った思いのこもったドレス。

聖魔布で作られているため、非常に高い防御力を発揮し、魔法攻撃を軽減する。



白ベースのドレスか。紐……と言うか布が絡んでるが、羽衣のイメージだろうか。所々透けてるな……。

とりあえず……カラフルじゃなくてよかった……本当によかった……。


どれどれ?


「エブリン……胸、ギリギリ過ぎだと思うのだけど?」

「わ、私じゃないですよ!」

「嘘つくな、見なくても分かるわ」

「うぐっ……」


羽衣的な布を首にかけ、胸の外側に引っ掛けてお腹でクロスさせ、腰でちょうちょ結びか。

スカートは……内側に黒のミニと、外側に白のロングか。あ、これ両方胴体に繋がってるんだな。

布を重ね合わせてるからできる芸当か。横に置かれているこれは……?


「そちらは袖になります」


ベースが白で、内側のミニが黒、袖が薄っすら青で、羽衣的布が薄っすら緑か。ニーソも黒か。

うん、大人しく着せられるとするか。


「本当に素晴らしい布です。軽いし丈夫。それに加え皺になりませんし汚れも付かない。高くなりすぎて売るのは無理でしょうが」


知ってた。弓で『聖魔糸』として使用してる感じ売るのは無理だな、と。

まあ、精霊達の力の一部とも言えるから売る気は無いが。

そういえば、あれ作ってもらおうかな。この容姿なら問題ないはずだ!

リンゴ……ナシ……微妙か? ミカン……はありきたりだろうか。……よし、あれにしよう。

開放されたらベアテ達に頼もう。


「ルナ様、服に魔力を流して下さい」

「うむ」


ジェシカの指示通り、軽く服全体に魔力を流す。

すると、服が微調整され、スッと体に吸い付くようにフィットした。


「はい、終わりました」

「ふむ、軽いわね。肌触りもいいわ。これからはこの服ね」


少し動いて服のチェックをする。

腰のリボンが動いてもあまり崩れず、形を保っている。これが形状記憶か。

外側の白のロングスカートは、前には無いから動きやすさは変わらずか。

この外側のスカートも少し膨らんでいるが、これも形状記憶だな。

針金とかが入ってる訳でもないから、気にせず座れ、皺にもならないと。


「うん、良いわね。ありがとう、大事にするわ」

「ご期待に添えられたようで」

「ところで、ベアテは?」

「完成させてから寝ました。起きたら見るって」

「そう、じゃあ、寝かせておきましょう」


せっかく綺麗なドレスになったのだから、あの子達と優雅なお茶会行こうか。

……あの子達がいる時点で、優雅とは無縁な気がするな。主にヴルカンとシルヴェストルのせいだが。


「お茶にするわよ」

「畏まりました」

「「はいっ」」


ある程度お茶をしてたら、侍女組が指導に移ったので、ベアテが起きるまでのんびり。

そして、ベアテが起きてきたらあるものを渡して、聖魔布を使って《裁縫》をお願いする。


「これならすぐできそうですね」

「よろしくね」


ベアテ本人はよく分かって無さそうだが、何をするのかは分かってるから良しとしよう。

作ってるうちに気づくだろう。



最近の王都はざわついているな。

作戦2日前だから騎士と冒険者達がバタついてるだけだが。

私? 準備する物なんか無いが。《弓術 Lv3》になったぐらいか。

ああ、後ブリュンヒルデさんに仕込まれた。


そう言えば、あの子達はついてくるとして、ベアテとかはどうするかね。

ブリュンヒルデはお留守番。だが、ジェシカが来たいと。そしてエブリンもセットか。

ベアテはどっちでもいい……と。

……ジェシカとエブリンは臨時拠点待機だな。そこで運ばれてくるだろう怪我人の治療させるか。

本人達もその方が良いだろう。ベアテは2人につけるか。

私は精霊達と最前線だな。森が広いからかなり広がるだろうし、激戦区に行くかね。


明日、ギルドに顔出すか。


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