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ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』


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VS誘拐犯!?


「グ、アッッッッッッ……!!」

「うぎゃっ」


 あんまり可愛くない声をあげて、地面に転がり落ちる。

 ま、まあいいわ。

 今のうちに逃げよう。


「ぐ、ぐっ、ぐそ、がき……!」


 股間を押さえ込み、目を地走らせながらこちらを睨みつける男を一度振り返り、あっかんべーしてから祭り会場の方へと走る。

 十夜をあの変質者と二人きりにしてしまった。

 私は可愛いけらど、十夜もめっちゃ可愛いから心配だ。

 十夜みたいな将来イケメンが確約されているショタが、どんなに霊媒師としての才能があって、相手の感情がわかるとしても体は子ども。

 体格差もかなりのものだし、私を無視して逃げてくれていればいいのだけれど……。


『ヒューー……ヒューー……』

「っ……」


 祭りの明かりは見えるのに、走っても走っても全然辿りつかない。

 まさか、結界?

 落ち着いて辺りを探ってみと、やはりなにか気配がする。

 最悪。

 “生きている人間”の気配じゃない。


『ずるい』

『おまつり……』

『さみしい』

『あそんで、おねえちゃん』

『たのしそう』

『ねえ、あそぼう』

『あかるい……』


 や、やばーーーい!

 多い多い多い!

 どこに隠れていたのってぐらいゾロゾロと林の影やら草葉の間から出てくるー!

 見た感じただの浮遊霊だけれども、あまりにも数が多い!

 夏祭りはそもそもこういう霊たちを成仏させるためと、淀んだ空気を一気に浄化するために開催される。

 祭りの空気に寄ってきて、こうして会場を眺めて羨んでいたなんて。

 この浮遊霊たちにれそれほど強い力はないけれど、数が多すぎる!

 五十……いや、七十……もっと増えてない?

 私一人じゃさすがに対応しきれない。

 どうせ夏祭りで浄化され、おそらく中には浮かばれて成仏して転生に入る霊もいるだろう。

 ……そういえば、夏祭りで浄化がされるとは聞いているけれど、具体的にどのタイミングで……?

 早ければ早い方がいいんだけれど!?


「はあ……はあ……どうしよ……」


 夏祭り会場には戻ってきたけれど、みんなの姿がない。

 携帯の存在を思い出して、(りん)に電話してみるが出ない。

 人混みの中で携帯が鳴っていることに気がついていないのかも。

 うーん、これ、どうしたらいいんだ?


「わっ」


 スマホの画面を眺めていると、(すぐる)から電話がかかってきた。

 か、神タイミングー!


「もしもし!」

『もしもし、お嬢、こんばんは。今どちらですか?』

「わかんない! 今、迷子!」

『え? えええええ?』


 だって仕方ないじゃん、初めて来る公園だし、人がいっぱいいて目印もない。

 屋台を見ても同じ焼きそば、焼き鳥、お好み焼きと定番なものが並んでいる。

 何往復もしたわけでもないのに、この屋台はここ、なんて覚えてないよ!


『えっと、なにが見えますか?』

「屋台。えっと、焼きそばと焼き鳥とお好み焼きが並んでる。その対面は金魚とスーパーボールすくい」

『探してみますから、屋台の横にいてください。他に知っている人がいたら、保護してもらってくださいね。すぐ行くので、心配しないでください』

「う、うん。早く来てね」


 さすがに、中身は成人しているから……大丈夫なんだけれど。

 錫杖を握り締める。

 でも、不安なんだもん。

 不安すぎていつの間にか体がカタカタものすごく震えている。

 む、無理ないよね。

 小学生が、六歳女児が誘拐されかけたんだよ?

 怖かった。

 マジで怖かった。

 前世のことを思い出して、奥歯がガタガタ鳴るほど体中震えて仕方ない。

 怖いよ、早く来てよ、(すぐる)

 もう、怖がってもいいよね?

 怖かったから、慰めてもらったっていいよね?


「ひっく……ううう、ひっく……」

「お嬢! 真宵お嬢様ー!」

「っ! (すぐる)!」


 自分でも気づかないうちに、(すぐる)を呼び捨てにして声の方に駆けていく。

 人混みの中でもとても通る声。

 商売中の(すぐる)はとても通る声で呼び込みしてたもんな。

 だから(すぐる)がどこにいるのかすぐにわかった。

 私の姿を見つけたら、(すぐる)もすぐに両手を広げて駆け寄ってきてくれる。


「うわあああん! (すぐる)ぅー! 怖かったぃぁぁぁ!」

「どうしたのですか? 大丈夫ですよ。もう大丈夫。ほらこっちに来てください。あんまり嬉しくないかもしれないですが、日和(ひより)も来ていますから」

「ひよ……」


 涙が止まった。

 いや、まあ、来るのは知ってたけれど……一緒に来てるの!?


「呼んだー? 真宵!」

「出たぁ……」

「なんでそんなに怯えられてるのかな!?」


 思わず(すぐる)の後ろに隠れる。

 使用人を連れた日和(ひより)は、珍しく着物姿。

 いや、浴衣?

 ううん、生地もしっかりしているし、帯もちゃんと刺繍入りのものだ。

 近くにいるだけでも浄化の力が宿っていそうな……袈裟と同じ生地、効果のあるものみたい。

 おかげで後ろからついてきていた浮遊霊が、一気にいなくなった。


「それで、真智や十夜のご家族たちとは逸れてしまわれたのですか?」

「う……ううん。知らない男の人に抱えられて……いつの間にかこの辺りに連れてこられててま」

「はい!?」

「誘拐!?」

「錫杖で殴って逃げてきたの……」

「まさか本当にその錫杖が物理的に役立つなんて……」


 いや、マジでそれな。

 私もまさかこんなに早く出番があると思わなかったわ。

 錫杖・物理に。

 秋月に言われた通り、短くても買っておいてよかった……!

 教えてくれてありがとう、秋月……!



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