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ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』


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夏祭りを楽しめ!(2)


 わたあめ、本当に買ってもらい、抱える。

 なんか、ホクホク。

 不思議な感じ。

 わたあめってこんなに大きい袋に入っているものだっけ?

 体の半分くらいがわたあめの袋なんだけれど?

 

「なあなあ、あっちにお面があるぞ!」

「覆面ライダーのお面がある~! マヨイちゃん、プリティキュアラーのお面もあるよー」

「プリティ……」

 

 日曜の朝にやっているアニメらしい。

 ああ~、そういうのあったなぁ。

 この世界でも似たようなアニメをやっているんだ。

 ……ま、待てよ?

 もしかして私にクラスで友達ができないのって……女児向け作品を見ていなかったから?

 確かに(りん)と一緒にドラマは見ているけれど、アニメは見ていない。

 色々、やることがあって。

 そ、そうか……女児ってドラマじゃなくてアニメを見るのか。

 そりゃあ女児と話も合わないよね。

 今度早起きしてニチアサ見てみるか。

 真智と十夜は覆面ライダーやナントカ戦隊のお面を楽しそうに選んでいる。

 ふーん、この世界の戦隊ものってこんな感じなんだ。

 なんか色々盛り盛りだな。

 

「ねえ、こっちにくじ引きあるよー」

「夕飯に焼きそば買ってよ、叔父さん! 屋台のご飯勝買って行けばおばさんもご飯作らなくていいから、いいでしょ!?」

「私のことを気遣ってくれてありがとう、真智くん。そうだね、焼きそばをお夕飯にしようか? お好み焼きや焼き鳥やたこ焼きもあるけれど、焼きそばでいいの?」

「それも食べたい!」

「ふふふ、じゃあ買おっか。残っても明日食べたらいいしね」

 

 真智の家、本当に仲良しだな。

 真智はおばさんの手伝いを通して、おばさんがなにを大変に思っているのかわかっているんだろうな。

 いいな、一般的な幸せ家庭って感じで。

 おばさんと叔父さんの手を引っ張る真智の可愛さヤバい。

 そのまま幸せに、健やかに育て――!

 

「わあ! マヨイちゃん、見て見て! バナナにチョコレートがかかっているよ! 美味しそうー!」

「本当だ。あ、でも向こうにかき氷もあるよ」

「かき氷も美味しそう~!」

 

 十夜、もしかして一番はしゃいでない?

 こんなに興奮している十夜、ゲームの中でもヒロインとのデートの時の緊張と興奮の姿くらいか?

 いや、デートの時とはまったく違う。

 ヒロインとのデートの時は嬉しそうなのと、やはり緊張感が伝わってくるはしゃぎ方。

 これは――そう! 無邪気!

 子どもならではの無邪気なはしゃぎ方!

 可愛い! シンプルに、素直な子ども可愛い!

 しかし――!

 

「ちょっと十夜くん! あんまり目移りしていと迷子になっちゃう! 人にぶつかっちゃうよ!」

「だってだって!」

「ゆっくり見よう? お店は逃げたりしないから。ね?」

「う、うーーん……でも……ううん、わかった」

 

 手を掴んで捕まえたが、まだまだ子ども。

 はしゃぎたくなる気持ちはわかるが、さっきよりも明確に人が増えてきている。

 

「こらあ~! 十夜~!」

「あ、おとーさん」

「あ、ありがとう、真宵さん! 十夜を掴まえてくれて! まったく、お前ときたら……! 迷子になるところだったぞ!」

「ご、ごめんなさい」

 

 小学校男児あるある。迷子。

 むしろ十夜は割とおとなしい方だと思うのだが、一番はしゃいで迷子になりそうな真智が以外にもおばさんや叔父さんと手を繋いで出店周りをしているんだよね。

 まあ、はしゃいではいるんだけれど。

 

「見て見て十夜! こっちに金魚すくいあるよ!」

「スーパーボール釣りだぁぁぁ」

「待つんだお前たちぃーーーーーー!」

 

 せっかく十夜を掴まえた十夜父。

 しかし、残念ながら本日かなりの人数の善岩寺(ぜんがんじ)家兄弟が来ている。

 一夜さん以外は未成年。

 高校生以上の兄弟は友人たちとお祭りに行っている、というが小学生の兄弟は一緒に来ている。

 全員ゲームに出ていないし、顔と名前が一致しないので追々紹介を、みたいな空気だったので私もあえて聞かなかったんだけれど……。

 十夜よりもはしゃいでいて、十夜父の声なんてミリも聞こえていなさそうである。

 あっという間に蜘蛛の子でも散らすが如くいなくなる善岩寺(ぜんがんじ)家兄弟。

 これは……仕方ない。

 私が十夜を連れて行くか。

 

(すぐる)さんと日和(ひより)さんももうすぐくると思うから、ゆっくり見てまわりましょう。真智は――ご家族で回る方が楽しそう」

「あ……じゃあ、ぼくたち二人でデート?」

「デ…………」

 

 な、なにを言い出しているの?

 十夜と、デート!?

 

「そういうのはおとなになってからだよ」

「えー」

 

 この子もなにを言い出すんだ。

 そもそも善岩寺(ぜんがんじ)家からの婚約話は十夜父母に説明してなしにしてもらったじゃないか。

 いや、善岩寺(ぜんがんじ)家にはたくさん支援してもらっているから、将来的にどうなるかはわからないけれど。

 

「うん……」

「ん?」

「わかってる。マヨイちゃんのお家はすごく大変だものね。だから、ぼくおとなになったらまたマヨイちゃんにけつこんしてくださいって、言うね」

「え……ええと……」

 

 柔らかく微笑む十夜には、当然だけれどゲームの攻略対象、善岩寺(ぜんがんじ)十夜(とうや)の面影がある。

 落ち着いていて誰にでも優しくて、人にも霊にも隔たりなく接する平和主義者。

 できるだけ戦うことはせず、双方が穏やかに過ごせるようにと祈りを込めて生きている霊媒師。

 それでも、困っているヒロインのために尽力してくれる。

 その面影。

 十夜までそんなことを言うなんて。

 本当に、やめてよ。

 あなたたちは将来、ちゃんと運命の人に出会うの。

 私ではない、正しい運命の相手に。



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