表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

131/131

秋月マヨ、デビュー!


 一夜さん――いや、兎追(うおい)ぴょん子の初配信が終わったらいよいよ私の番。

『それじゃあ、次の配信で会おうね! 次回は雑談配信! 初配信で話しきれなかったことをお話ししようね~!』と、早めに切り上げてくれた。

 うおー! ついに私だーーー!

 

「こほん、おほん。んん、んんっ」

 

 別にボイスチェンジャーを使うつもりはないけれど、謎に声を整える。

 ヤバい、緊張で吐きそう。

 秋月(あきつき)マヨのガワを準備して、マイクのミュートも確認。

 BGM、待機画面を――始動!

 

「よ、よし……い、いくぞ……!」

 

 時計を確認。

 三、二、一……開始!

 

「こんばんは~。秋月(あきつき)マヨです! 初めまして!」

 

 落ち着け、落ち着け。

 すっごい早口で全部言おうと思っていたことを言いそうだったけれど閲覧者数が安定するまで、待て。

 百、百十……百三十前後で安定。

 ひ、ひいい……!

 思ったよりもめっちゃ来てるぅ~~~~!

 落ち着け、落ち着け、まだ始まってもいないぞ。

 

「どうも! 秋月(あきつき)マヨです! 私は月の巫女さんなんです。この世界には修業に来ています! えっとですね……」

 

 な、な、な、なにを言うんだったっけ?

 やばい、めっちゃ緊張している。

 緊張しすぎてなにを言うのか忘れたんだけれどーーー!

 

「ッ!?」

 

 急に足元に黒い紐が蠢いている。

 な、なに? これ?

 黒い紐が人間の顔のように歪み、それがあの鬼ババアの顔だと気がついて喉が引きつった。

 待ってよ。

 今日、私のデビューの日なのよ?

 この日のために、私がどれほど準備してきたと思っているの?

 冗談でしょ?

 この鬼ババア、いったいどうやってここに……!

 というか――これ、なんて強い怨念!

 いや、もう、これはっ……!


「こ、この鬼ババア……! そこまで私のことを邪魔したいの……!? 生き霊を飛ばすほど!? ふっざけんなよ! 私はアンタの思い通りになんてならない――今度は負けない!」


 あの鬼ババアは、死んでいない。

 つまり、これは生き霊!

 どこまでも人の幸せや成功を許さないのね。

 生き霊なのに、ここまで怨念の塊みたいになって、完全に生きた悪霊じゃない!

 夜だから隠の気を借りて強化して、私に飛ばしてきたのだろう。

 本家だったら秋月の力で阻まれていただろうけれど、私がいるのは別邸。

 秋月に教わりながら家を結界で囲んでいたはずだけれど、多分秋月の教えてくれた結界は“千頭山(せんずやま)家以外のモノ”が対象。

 残念ながら、この鬼ババアは千頭山(せんずやま)家の人間。

 だから、結界条件の対象外。

 それをいいことにこんな怨念を飛ばして……本当に人間かな?

 でも、思い通りになんでなってやらない。

 私を力で押さえつけた時と違って、今のあんたに体はないのだ。

 物理的な力ではなく、霊的に襲ってくるのなら返り討ちにしてやれる。

 こんな理不尽な強襲に、私は絶対に屈しない。

 二度と屈してなるものか。


「ずっと準備してきたんだ。私はVtuberになる! お前の邪魔なんて、修行してきた私には通用しない! ――――」


 お経を読み始める。

 対魔、攻撃のお経。

 どこまでも人を傷つけることしか考えていない悪魔のような生き霊、神の御前に引き摺り出して、空の彼方まで吹き飛ばしてやる!


『ぎゃう……ぐ、ううう! この、このぉ! 生意気な! 小娘ぇ、がぁぁあああ! 許さない……許さない!』


 それはこっちのセリフよ。

 別邸に来る前ならいざ知らず、私は毎日の禊と浄化の修行で強くなった。

 咄嗟に机の下に置いてあった錫杖を掴み、先端の輪っかを鳴らす。

 お経で弱体化し始めた鬼ババアの生き霊は、解けて先程の紐状に戻りつつある。

 その紐の――鬼ババアの顔面のど真ん中を狙って、錫杖の底を叩き下ろす。


「去れ! 悪霊!」


 カッ、と地味な音だが鬼ババアは凄まじい断末魔をあげて地面の中に溶けて消える。

 気配が……床を通って町の方に飛んでいく。

 あっちの方向に本体――鬼ババアが収容されている施設があるのか。

 結界のアップグレードしないと。


「はあ……はあ……」


 気を一気に使ったから、疲労がすごい。

 机の上の水を飲み、錫杖を机の下に戻すと開けっぱなしのノートパソコンの画面がすごい動いている。

 なんだ?

 なんの作業していたんだっけ? 私。


「はっ! ご! ごめんなさい! えっと、私の、その、実家のような場所で、私、鬼ババアにいじめられていて……今、その鬼ババアが生き霊を飛ばしてきたの。だから、返り討ちにしてやりました!」


 これ、変にごまかすよりネタにした方がいいよね?

 心臓がバクバクしすぎて痛いー!

 しかも閲覧者数が地味に増えている。

 二百人いってるー!

 なんで今ので増えてんの?

 意味わからない。


「そんな感じで、私はゲーム実況の他に修行動画や、今、この世界で頑張っている霊能力者の方々が日頃どのようなお仕事をしているのかを紹介したいと思っています! 私自身がまだまだ未熟者ではありますが、素人でもできる簡易お祓いや簡単な結界の張り方も動画にしてあげていけたらと思うので、楽しみにしてください! まずは、家の近所の林に巣食う悪霊のお祓いを行う動画を、数日に分けて投稿予定です。似たような内容でつまらないかもしれないので、簡単なお祓いや結界、道具の解説を入れてありますのでよかったら見てくださいねー」


 は、はあ、はあ、はあ……ど、どうだ? これ、軌道修正できてる?

 も、もう疲れてる、私。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ