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第八十八話 人生の分岐点

ソフィーのアトリエ買ったんですけど、ソフィーが可愛すぎて生きるのが辛いwww


 学校から帰ったら二年前に王都で知り合った異世界転移者の坂田が自宅に来ていた。

 再会できたのは嬉しいのだが、王都で文部大臣として仕事している坂田が何故こんな離れの村に来たのだろう?

 とりあえずと屋敷に案内し客間でお茶菓子を振る舞う。


「うん。こちらのお菓子はおいしね。使用人の方の手作りかな?」

「母の手作りです」



 茶菓子に舌鼓を打ちながらジェイクとユリーネの支度が整うのを待つ。

 その間にお互いの近況について話し合っているとジェイクとユリーネが身支度を整えて現れた。


「遅くなって申し訳ありません。父のジェイクです」

「同じくし母のユリーネです。本日はわざわざ遠いところからお越し頂いたのにお待たせして申し訳ありません」

「いえ、こちらこそ事前にお知らせもせずに訪問した非礼をお許し下さい。何分急ぎの案件だったもので」


 三者一様に謝罪を口にする。

 坂田の言う急ぎの案件とは何だろうかと考えていると、坂田は大きめの封書を取り出しテーブルに置く。

 封書には達筆で『クロノス・バルメルド様』と書かれている。

 「開けてごらん」と言われて封を切り中身を取り出すと一枚の紙だけが入っていた。

 なんの通知かとその場で読み上げる。


「えー……クロノス・バルメルド殿。あなたは勉学にて最優秀者として成績を収め、ライゼヌスの治安維持、及び技術発展に貢献いたしました。貴方様の更さる成長と躍進を願い、Aランク『サンクチュリア学園中等部』への入学を推薦いたします!?文部大臣 坂田!?」


 これって、坂田から上位ランクの学校への推薦状!?


「サンクチュリア学園って言ったら、中等部でも一番大きな学園よ!?そこに推薦されるなんてクロちゃんすごいじゃない!お母さんが子供の頃入れなかった学校よ!」

「そのサンクチュリア学園って、そんなに有名な学園なんですか?」

「もちろんよ!ライゼヌスの王族はもちろん、騎士に商人、魔法使いや研究者とか、とにかくたくさんの家系の子たちが集まるのよ!」


 要するにお金持ちの集まる学園ってことか。

 ちなみにランクB以上の学校は名前が付けられる。

 その方が箔が付くとかって理由を聞いたことがある。

  確かに騎士の名家である生まれのユリーネは行きたがっただろうな。


「ちなみになんで母さんはサンクチュリア学園に入学できなかったんですか?」

「毎年入学希望者が多すぎて、抽選会が行われるんだけど……外れちゃったのよね」

「外れちゃったんですか」


 定員超過で抽選会までやるなんて、どうやらかなりの人気校らしい。

 隣で会話に加わらず書面を眺めていたジェイクが初めて口を開く。


「失礼ですが、クロノスは既に三ヶ月後の卒業後に別の中等部に進学が決まっております。こういった書面はもっと早く本人の手元に届けるべきではないでしょうか?」


 ジェイクの言うことはもっともだ。

 俺は後三ヶ月で初等部を卒業する。

 希望する中等部への進学の届け出は大体卒業する半年前に提出していたはずだ。

 その提出をしてから既に三ヶ月経っている。

 だと言うのに今更別の学園への推薦状を届けに来るなんて確かに変だ。

 その指摘を受け、坂田は意外にもすぐに白状した。


「その点についてはこちらの落ち度です。申し訳ありません。実は、以前の魔物の群れの大移動の際に問題が起きまして」


 魔物の群れの大移動は俺が王都に行けなくなった原因の一つだ。

 ゼヌス大陸に生息する魔物たちがいきなり大陸中を横断し始めたのだ。

 種類を問わず突然大陸中をあらゆる魔物が移動するせいで、街道では魔物に襲われる人が多く、しばらく物資の流通が途絶えてかなり大騒ぎになった。

 そのせいでベルの手紙も来るのがかなりの間届くの遅れたし。

 ちなみにその時は餓死しないようレイやニールたちの住むエルフの集落とだけ交易をしていた。

 こちらは野菜を提供する代わりに鹿肉などを分けて貰っていたのだ。

 数ヶ月でその現象は収まったが、結局何が原因で魔物たちが移動をしたのかはハッキリしていない。


「その期間中にクロノス君に推薦状が送られ、荷を乗せた馬車が魔物に襲われてしまったのです。結果推薦状が本人に届いたかの確認がこちらでも取れず、こんなギリギリになってしまったのです」


 申し訳ありませんと再び坂田は謝る。

 しかしそれは坂田の責任ではないのは明らかだ。

 ジェイクもそのことは分かっており、「いえ、そういった事情ならば仕方ありません」と答えた。


「でも坂田さん。俺、こんな推薦受けるほど何かした覚えないんですど」

「痴呆にはまだ早いだろう。ついこの前、インスマス児童誘拐事件で貢献してくれたじゃないか」

「いやでも俺、子供を逃すのとジルミール捕まえるぐらいしかしてないし」

「それだけでも大きな貢献なんだよ。研究に行き詰まってたセシールに助言もしてくれたしね。君の推薦の件に関しては既に他の職員や国王様にも説明してある。何も問題はない」


 はぁ、と生返事で答える。

 自分ではそんなに大きなことをしたつもりはないのだけれども……まぁ、くれると言うのならありがたく受け取っておこう。

 むしろ進学する中等部よりも遥かに高いランクに進学できるのだ。

 そう考えるとかなりおいしい話。

 それに話しからしてお金持ち学校、と言うことは可愛いお嬢様もいっぱいいるのでは!?


「でもそうなると、お引越ししなくちゃね。ここからじゃ遠いもの」


 ユリーネの一言に現実に引き戻される。

 お引越しって、そんなに距離があるのか?


「サンクチュリアって、ここからそんなに遠いんですか?」

「遠いわよ〜。だって、王都の東側の街──『モルトローレ』にあるの。ここからだと片道で七日もかかるわ」


 七日って、そんなにここから遠いのかよ!

 絶対通うの無理じゃねーか!


「そこはご心配なく。モルトローレにはサンクチュリア学園以外にも多くの学園があり、生徒の為に学生寮を用意しております。部屋を借りれば家族全員で移住と大掛かりなことをする必要もありません」


 さすが坂田さん、最高のタイミングで補足してくれる。

 学生寮の話を聞いてジェイクとユリーネは興味を持ち始める。


「本来サンクチュリア学園に入学するには抽選会にて決まりますが、推薦枠の場合は抽選を行わずとも入学できます。更に学生寮の部屋割りも優先して行うので溢れることはありません」


 つまり学生寮の入居も確約されているのか、なんて素晴らしいんでしょ!

 坂田の説明を一通り聞き終えジェイクは腕を組み考え込む。


「……クロノス、君はどうしたい?決めるのは君だ」

「推薦をくれるなら俺は是非行きたいです。こんなチャンスもう絶対ないですし」

「そうか……」


 何だか歯切れの悪い返事だ。

 反対する雰囲気って訳でもないが、他のことを言いたげそうな……


「でも、いいのクロちゃん?そうしたら、レイリスちゃんとも、フロウちゃんとも……ずっと会えないかもしれないのよ?」


 ユリーネの言葉でジェイクの態度に腑が落ちた。

 そうか……この村から学園のあるモルトローレは遠い、王都みたいに気軽に行き来できる距離じゃないんだ。

 もしサンクチュリア学園に進学したら──レイとフロウとは、離れ離れになってしまうんだ。

皆様のおかげでアクセスPVが4万超えました!

いやー……一体どこからこれだけの人が見にきてくれているのだろうか……


次回投稿は来週日曜日の22時です!

八月の終わりにまた連続投稿する予定です。

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