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二色眼の転生者《オッドアイズ・リ:ライフ》  作者: でってりゅー
第三章 ライゼヌスを覆う影
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第八十六話 推薦状

あぁ〜ようやく三章終わるんじゃ〜

もっそい暴走したけど無事終わります


 インスマス児童誘拐事件から一年が経った頃──


「うーん……困った。いや実に困った」


 ライゼヌス城の廊下で、一人の男が手元の資料と睨めっこしながら歩いている。

 彼はライゼヌスの文部大臣坂田、地球からの転移者──すなわち異世界人である。

 この世界に来て早数十年、それまでに成した功績は数知れず、今はこうしてゼヌス大陸に位置するこの国の文学を発展させる為に先頭に立ち指揮をしている。

  この異世界で、地球で学んだあらゆる学問をこの世界の人々に広めようと奮闘しているがそれはまた別の物語。

 では何故、彼が唸り声と共に困っているのかと言うと、それは彼の持つ資料が原因である。

 その手元にあるのは、今年ライゼヌス王国に籍を持つ全ての子供たちの成績表なのだ。

 坂田以前よりも地球から転移、転生しこの世界を訪れていた者は数多くいる。

 その者らは少なからずこの世界に己の知識を残している。

 無論教育形態もその例に漏れず、坂田が文部大臣の地位に就く前からある程度の形式は組み立てられていた。

 坂田はそれを崩さないように調整しながら、己の知識をそこに組み加えたのだ。

 故に自分たちの知識を継承するであろう成績優秀者たちは常にチェックしなければならない。

 その中からライゼヌスを発展させる原石を探し、より高いランクの学校に編入できるよう推薦状を書くのだ。

 まぁそれは理由の半分で、もう半分は自分と同じ地球出身の転生者が混じってないかチェックする為でもある。

 この世界に転生、転移した人間が多くいると言ってもそれを見つけられることはほぼない。

 いたとしても故人の場合が多く、生きている同郷の人と会えるのは本当に稀なのだ。

 その点では転生者としてこの世に生を受けたクロノス、セシールと出会えたのは本当に運が良かった。

 セシールは日本以外の国の転生者だが、クロノスは坂田と同じ日本からの転生者。

 故郷の話が通じる相手は貴重なので、これからも彼との繋がりは大事にしようと坂田は考えている。


「最近は慌ただしくて、彼との連絡が取れてないから、近況を知りたいのだが……まずはこの仕事を終わらせなければな。いやしかし、困った」


 再び手元の資料の分厚さを確認して溜息をこぼす。

 このリストの中から次の年も成績優秀として翌年のリストに残るのはほんの数百人だ。

 でもその数百人の中から転生者を見つけ出すのも、ライゼヌス発展の原石を探すのもかなりの長時間労働になるのだ。

 単に推薦すると言っても、その者に合った環境の学校を選ばなければならない。

 その学校に送ってお終いと言う訳にもいかないのだ。

 

「やっぱり選考基準が曖昧なのが問題だな……グレイズ国王に頼んで人員を増やしてもらうか?いや、それよりも国内で学力統一調査試験とでも銘打って部門別テストでもするか?」


 手元にある資料以外にもまだまだ資料は山程ある。

 そのことを考えると頭を抱えるのも仕方ない。


「こんにちわ、サカタさん」


 資料を眺めながら歩いていると少女に声をかけられる。

 ライゼヌス王国の王女にしてグレイズ国王の一人娘、ティンカーベル・ゼヌスだ。

 今日は庭園の世話をしていたようで、いつものドレス姿ではなく汚れても構わない白一色の質素な服を着ている。

 実際その服は既に土まみれとなっている。

 彼女を知らない人に「この方が王女です」と言っても誰も信じはしないだろう。


「これは王女殿下。本日もご機嫌麗うるわ……またそんな泥だけで。国王様に怒られますよ」

「お見苦しい姿で申し訳ありません。サカタさんがお見えになったので、ご挨拶をと思いまして」

「それは光栄でございます」


 社交辞令もそこそこにサカタはティンカーベルが自らの元に来た意味を考える。

 ただ挨拶するだけならわざわざ自分の元に来たりはしない。

 おそらく挨拶以外に用があるのだろう。


「して、御用件は?」

「クロ君にですね」


 クロ君、と言われて坂田は一瞬混乱するが、すぐにクロノスのことだと理解する。

 確かティンカーベルとクロノスは文通をしていたはずだと坂田は思い出す。

 この二人は一年前の事件から変わらず連絡を取り合っていた。


「手紙を出そうと思うのですけど、サカタさんも御一緒にどうですか?」

「手紙ですか。いいですね。でもなぜ私にお声掛けを?」

「サカタさん、クロ君とお別れの時に親しそうに話してたので」


 どうやらクロノスが王都を出発する時の別れの挨拶でそう思ったようだ。

 さすがは王女、よく見ている。


「私は押し花のしおりを一緒に送ろうと思っているんです。前にクロ君、私の育てた花を褒めてくれたので」

「なら私も何か送らないとですね」


 そう答えながら手元の資料を持ち直す。

 ずっと持っていると手が痺れてしまいそうだからだ。

 しかし、ここで坂田はふと思い出す。

 クロノスは転生者で見た目は子供だった……ならば、この世界の学校に通っているのではないかと。

 資料をめくり、五十以上もあるページを流し見して名前を探す。

  そして──


「殿下、私の贈り物が決まりました」

「本当ですか?クロ君、喜んでくれるといいですね!」

「ええ、きっと喜びますよ」


 悪巧みを考える子供のように坂田は微笑む。

 彼の持つ成績優秀のリストには、クロノスの名前が記載されていたのだった。

これにて第三章王都来訪編は終了です!

クトゥルフ要素含んだお話でしたがいかがでしたでしょうか?

初めての作品なんでかなり好き勝手やりました!

最近はブクマとか評価が増えてとっても嬉しかったです!


次回は八月五日の22時になります!

んで、次回から新章やります

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