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二色眼の転生者《オッドアイズ・リ:ライフ》  作者: でってりゅー
第三章 ライゼヌスを覆う影
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第八十五話 さよならと贈り物

先週午後ロードショーでシャークネード4やってたから見たんですけど、全くシリーズが終わる気配が無くて草

でも面白かったですよ!


 爽やかな日差しと小鳥のさえずりで眼を覚ます。

 眼を覚ました俺はライゼヌス本家の自室のベットの上にいた。

 身体を起こし鏡を見ると、いつものボサボサ頭と間抜け面した自分の顔が映されている。


「えーと……俺、王城の食事会に居たんじゃなかったっけ?」


 寝起きだから頭がはっきりしない。

 そもそも俺、いつ自室に戻ってきっけ?

 確かぁ……セシールに会いに行った後ベルに庭園に連れて行かれてぇ……ベルに頭を抱き寄せられて、その後から意識がないような……?


「……あ、あぁ!うわァァァァァァァァ!?」

 

 思い出したァァァァ!

 俺そのままベルに頭を撫でられて寝ちゃったんだ!!

 女の子に頭を抱き寄せられて、頭撫でられながら胸の中で眠るとか恥ずかしくねぇのかよ!!


「今度からどんな顔してベルに会えばいいんだ!?超気まずいじゃねぇかァァァァ……!!」


 ベットの上で一人悶えていると部屋の扉が開きサティーラメイド長が入室する。


「おはようございますクロノス御坊ちゃま。素晴らしい朝ですね」

「え、あ、あぁ、おはようございます。サティーラメイド長」


 一人恥ずかしさに苦しみ悶えている姿を見られてしまった。

 でも、あの後どうなったか聞くには丁度いい相手が来てくれた。


「あの、サティーラメイド長。俺、昨日はいつの間に屋敷に戻ってきたんですか?」

「王城でのお食事会の途中で眠っていた所をティンカーベル王女様に発見されたと聞いております。その後大旦那様方と共に馬車で御帰りになりましたが、その時には既にお眠りでしたので、ジェイク旦那様がお部屋までお連れしました」

「そう、ですか」

「とてもよくお眠りになっておいででしたが、先日から御坊ちゃまはお忙しいかった故、致し方ないことかと」


 てことは、ジェイクたちは俺がベルに抱かれながら寝落ちしたのを知っているってことか……やべぇよやべぇよ。

 ジェイクたちに何て言われるかと不安を抱くと「お食事のご用意ができております」とサティーラに急かされる。

 慌てて着替えて一階まで降りると、既に全員が席に着いて朝食を食べていた。

 「おはようございます」と挨拶しながら席に急ぎ着席する。


「クロちゃんおはよう。よく眠れた?」

「あの……はい。それなりに」


 隣に座るユリーネがニコニコと話しかけてくる。

 ジルミール関連でしばらく参っていたが、ユリーネも調子が戻ってきたみたいだ。


「あの、母さん……昨日の夜のことなんですけども……」

「そうそう!もぉビックリしたわよ。ベルちゃ、ベル王女殿下がね。クロちゃんが庭園で寝てるって教えてくれて、見に行ったらクロちゃんったらぐっすりなんだもの」


 え、あれ?

 もしかして、俺がベルに抱かれながら眠ってたのを……見ていない?


「声をかけても揺すってもクロちゃんが起きないから、そこでパーティーはおしまいにして、みんなで帰ったのよ」

「ほ、他には?」

「他?いいえ、それだけよ。あ、でもダメでしょクロちゃん。顔色悪いとは思ってたけど、辛い時は辛いってちゃんと言わなきゃ。それで他の人家のお庭に勝手に入って──」


 くどくどとユリーネのお説教が始まる。

 でも俺の耳にはユリーネのお説教は入っておらず、誰にもあの姿を見られていないことに安堵していた。

 長々と続くユリーネの説教を見兼ねて更に隣に座っているジェイクが止めに入る。


「お母さん、その辺にしてあげなさい。クロノスも初めての戦闘で疲れていたんだろう」

「ダメよお父さん。叱る時はしっかりと叱る……そう決めたでしょ?」


 叱る時はしっかりと叱る。

 その言葉にやたら重みを感じるのはジルミールの一件があったからだろう。

 甘やかされて育ったジルミールのような人間になって欲しくないと、そう思って俺を叱ってくれているのだ。

 いや、わかるよその気持ち?

 あんな一件の後だからこそわかるし、その気持ちはすげー嬉しいんだけども。


「だけどユリーネ……今、食事中だから……」


 小声で耳打ちすると家族全員の視線に気づいてユリーネが赤面する。


「あ、あははは……ごめんなさいね」


 笑って誤魔化そうとするが苦しくなり素直に謝った。

 いやぁ、平和だなぁ。

 ほんの二日前にインスマス教会でひと暴れしたとは思えない。

 平和を感じていると「ところでクロノス」とジェイクが声をかけてくる。


「今日、殿下がいらっしゃるそうだ。あまり粗相をせず、キチンお別れを言いなさい」

「お別れ?」

「忘れたのか?今日の昼頃には王都を立つんだぞ?」


 王都を立つ……そっか、今日でライゼヌスに来てから五日目か!

 つまり、もうニケロース領に帰らなければいけないと言うことだ。


✳︎


 朝食を食べ終えたのち、荷物をまとめ、メイドのメアリーさんが屋敷の表で待機させた馬車に載せる。

 もっとも持ってきた物なんてほとんどない。

 下着なんかは本家に来た時既に用意されていたので、ニケロースから持ち込んだのなんてイルミニオたちのお土産ぐらいしかない。

 なので来た時に俺はほとんど手ぶらだったのだが、クラウラたち親戚姉弟に工作物やら似顔絵やらを貰ったのでちょっと荷物が増えたのだ。


「それじゃあクラウラ姉さん。他のみんなも元気で」

「あなたもね。次来る時は、ちゃんと相手しなさいよ」


 馬車に乗る前にクラウラたちと別れの挨拶をする。

 オモチャにされるからと滞在中は逃げてばかりであまり一緒に遊べなかったが、次来る時はちゃんと遊び相手になってあげよう。

 魔法を撃ち込まれるのだけは勘弁してほしいけどな。

 親戚たちと握手し挨拶を済ませる。

 ユリーネに肩を叩かれ、馬車の傍にベルと坂田が待っているのに気づいた。


「坂田さん、わざわざお見送りに来てくれてありがとうございます」

「数少ない知り合いだ。友人の門出ぐらい見送るよ」


 お礼を言いながら握手する。

 すると坂田が声のトーンを落とす。


「昨日、セシールの所に行ったらしいね。彼女から聞いたよ。君が今回の件で悩んでいたこともね」


 え、あの人坂田さんに話したのか!?

 てっきり黙ってくれると思ってたのに!


「いやぁ、それは……」

「その様子だと大丈夫そうだね。彼女に感謝するんだよ。君と王女様二人っきりになるように仕向けたの彼女だから」

 「え!?」

 

 ベルに庭園に誘われたのってセシールさんの差し金だったのかよ!?

 相談乗るつもりないとか言っていてあの人!


「まぁ、彼女なりに君のことを心配していたんだよ」

「会いに行った時はすごい邪険に扱われたんですけど」

「そういう人だから。それと、君が渡したって言う本の件は確実にやっておくとのことだ。携帯電話のアイディア料のお返しだとさ」


 人皮本のことか。

 セシールさんならきっと全部解読してくれるだろうから、次会った時にでも受け取ることにしよう。

 伝言を伝え終わると坂田は俺の肩を掴みベルへと向き直させる。

「どうぞ」と囁くと気を利かせてその場から離れて俺とベルだけになった。

 いやその気遣い嬉しいけど今はいらないんですけどォォォォ!!


「おはようございます。クロノス君」

 「お、おはようございます……」


 やばい、超気まずい。

 昨日抱き寄せなんて恥ずかしいことされ、更にそのまま寝てしまったのだ。

 正直ベルに顔合わせるのも恥ずかしい。

 俺は気恥ずかしさでたまに顔を逸らしているのに、ベルはニコニコと笑顔を浮かべて俺を見ている。


「昨日はよく眠れましたか?」

「え、えぇまぁおかげざまで……」

「ならよかったです。クロノス君ぐっすりでしたから」


 あぁ、やめてくれ……そんな笑顔で俺の恥を痛感させないでくれ。


「あの、ありがとうな。おかげで助かったけど……でも、他の人には絶対言わないでくれよ!恥ずかしいから!」

「はい。私も……ちょっと恥ずかしかったですから」


 そう言って少し頬を赤くしはにかむベル。

 あぁ、なんでこの世界の女の子は可愛い子が多いんだろうなチクショウ!

 不覚にもちょっとトキメイちゃったよ!!


「じゃあ、二人だけの秘密な」

「はい。秘密です」


 お互いに秘密を共有して小さく笑う。

 すると、ベルはポケットに手を入れ小さな水晶の付いた首飾りを取り出す。


「これ……クロノス君にプレゼントです」

「首飾り?ベルが作ったのか?」

「ちょっと不格好かもしれませんけど」

「そんなことないよ。よくできてる」


 確かに水晶に紐を通しただけだから市販のより少し味気ないけど、ベルの手作りなのだ。

 文句なんてあるはずがない!

 首飾りの水晶は淡いピンク色で中に桃白い花びらが一枚閉じ込められている。


「水晶の中に花びらか。面白いなこれ」

「アラウネが他種族に物を贈る時、自分の花の花弁を結晶化して贈るんです。親愛の証として」

「ありがとう。大切にするよ」


 早速首飾りを掛けてみる。

 親愛の証として贈られた首飾りを身に付けたからか、ベルはとても嬉しそうに笑っていた。

 でもまだ何かあるのか、少し照れたように、


「それで、もしクロノス君がよければなんですけど、愛称を……」


 あー、愛称か。

 そういや、俺はずっとベルって愛称で呼んでるけど、ベルからはクロノスって名前で呼んでもらってるな。


「クロだ。親しい友達にはクロって呼んでるもらってる」

「クロ君……ですか?」

「そ、クロ君。ベルでよければ、そう呼んでくれ」

「……はい!じゃあ、今日からそう呼ばせていただきます!」


 愛称を呼び合うことが決まるとベルはまた嬉しそうに笑顔を浮かべた。

 待っていた馬車に乗り込み、見送りに来てくれたみんなの顔を見る。


「お義父さん。お世話になりました」

「みんな元気でね」

「じゃあまた。またきっと来るよ」

 

 ジェイクとユリーネ、最後に俺が挨拶しメアリーさんの指示で馬車が走り始める。

 こちらの姿が見えなくなるまでベルたちに手を振り、噴水広場、商店街、門を抜け、俺たちは王都ライゼヌスを後にする。

 これからまた数日かけて、俺たちはニケロース領の我が家へと旅立った。

今日は帰ったらジョーズ 復讐を見ます


次回投稿は明日22時です!

そして明日で三章終わりですよ!

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