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二色眼の転生者《オッドアイズ・リ:ライフ》  作者: でってりゅー
第三章 ライゼヌスを覆う影
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第八十三話 人皮装丁本

毎日投稿二日目ェェェェ!


結構何回かRT企画やっているんですけど、八割異世界転生チート物で二割がチート無しなんですよね。

こうしてみると、やっぱチート物って多いしジャンルとして強いんですね。


 ライゼヌス国王のグレイズ、ベルに招待され、バルメルド一家全員で王城で食事会に参加している。

 周りは楽しそうに食事をしているのだが、俺だけは気分が優れずに会話に参加せずにいた。

 出された料理もあまり食が進まずにほとんど手をつけていない。


「クロノス君?料理美味しくないですか?」

「あぁ、いや、そうじゃないんだ……」


 全く料理を食べないのでベルに心配されるが、首を振って答える。

 俺は席を立つと「顔を洗ってくる」と告げ食堂を抜け出す。

 見張りの兵にトイレの場所を聞き、案内を断ると一人で夜の城内を歩き始めた。


「やっぱ……気分がすっきりしないな……」


 夜空に浮かぶ月を見上げながら一人呟く。

 どうしても、司教が瓦礫に潰された時の顔を忘れることができない。

 瞼を閉じると、未だにあの時の光景と司教の悲鳴が鮮明に思い出されてしまう。

 昨日からそれが原因で眠ることができないのだ。

 眠れたとしても、その時の光景を夢の中でまで見てしまい飛び起きてしまう。

 完全に司教が死んだ瞬間の光景がトラウマになってしまっている。

 恐ろしいのだ、瞼を閉じる度に思い出されるあのインスマス面が歪み、絶望の顔でこちらを見つめるあの顔が……

 頭を振るい嫌な光景を消し去ろうとする。

 だがそんなことをしても記憶が消える訳でもなく、相変わらず暗い気分のままだ。

 ふと、後を振り返った時に窓から見える一本の塔が目に止まる。

 最上階の窓からは灯りが漏れており、の場所にいるのが誰かを思い出す。

 そういや、インスマス教会から持ち出した人の皮で装丁された本があったな。

 あれは英語で書かれてたから読めなかったけど、あの人なら読めるはずだ。

 トイレを済ませると俺は食堂ではなく、彼女の元を訪ねる為踵を返した。


✳︎


 最上階に続くクソ長い階段をひたすら登る。

 こんな長い階段を毎回登り下りしてあの人は辛くはないのだろうか?

 なんてことを考えながら足を動かしている内に一枚の鉄製扉の前に辿り着く。

 少し戸惑うが、意を決すると扉を四回ノックした。

 すると扉の向こうから「合言葉は?」と幼い少女によるこの世界の言語で問いかけが来る。

 俺が日本語で『そんなものはない』と答えるとガチャリと音がした。

 また変なトラップが作動したりしないかとビクビクしながら扉を開け中に入るが、特に何も起きない。

 安堵しながら部屋に入るとこちらに背を向け、机に向かってセシールが作業をしていた。

 近づいてみるも、こちらに振り返らず無言で何かの鉱石を削り加工している。

 ただ無心で作業するその後ろ姿に、少しだけ憧れを抱いた。

 加工が終わったのかセシールの手が止まる。

 そしてこっちを振り向き、


「ふぅ、遅いぞサカタ。今日は肉だろうな……って誰だ貴様!?一体どこから入ってきた!?」


 ええええええええええ!?

 この人昨日覚えておくって言ったのにもう俺のこと忘れてるよ!!

 どんだけ鳥頭なのこと人!?

 俺を見るなりセシールは椅子から飛び降り距離を取る。

 そして作業台に置いてあった工具を手に取ると俺に向け、


「さては貴様、私の研究成果を盗みに来たか他国のスパイだな!?」

「いや違いますよ!俺ですよ俺!」

「私はまだオレオレ詐欺に引っかかるような年齢ではない!」

「だから違

「問答無用!!」


 だぁぁぁぁまたこのパターンかァァァァ!!


「野郎ぶっ殺してやらぁぁぁぁって思ったら何だお前か!」


 良かった!

 今度はちゃんと思い出してくれた!

 「驚かすなよ」とボヤきながらセシールは手に取った凶器を作業台に戻す。

 驚いたのはこっちだわ!とツッコミたかったが、それはそれでまた面倒になりそうだったので素直に謝っておいた。


「お前何しに来たんだ?サカタは?」

「一人ですよ。ちょっとお話がありまして、インスマス教会のことなんですけど……」

「は?インスマス教会?なんだそれは?」


 え、もしかしてこの人、ライゼヌス騎士団とインスマス教会の戦い知らないのか!?

 いやまぁ、知らなくても不思議はないか。

 研究以外のことどうでもよさそうだし、聞いてたとしてもすぐに忘れてるだろうし。


「知らないならいいです。実はお願いがありまして」

「お願い?私は忙しいんだ、お前が提案してくれた機能を携帯電話に付けるのに忙しんだぞワノロス」

「クロノスです。これなんですけど」


 そう言って懐ろから人皮装丁本を取り出す。

 この本は英語、地球の言葉で書かれているので騎士団に渡しても解読できる人はいないだろうとそのまま持ち込んだ。

 屋敷に置いて誰かに見られると困るので常に持ち歩いているのだ。

 本を手渡すとセシールは表紙に触れた途端顔をしかめる。


「おい、お前これ」

「気づきましたか……」

「この手触り──ナマコじゃないか!?」


 やっぱり分かってしまうか。

 気づいて欲しくなかったが、彼女の言う通りの本はナマコの皮──は?


「しかしなんで本の装丁でナマコなんだ?」

「いや、ナマコじゃないですよそれ……」

「なに!?しかしこの手触りはどう考えてもナマコ……」

「いやだからナマコじゃねーよ!人の皮だよ!!」


 しまった、人の皮って言っちゃった!

 本当はそのことに気づかれたくなかったのに!!

 装丁が人の皮だと聞くとセシールは驚きの表情を見せ、


「人の皮だと!?……いや、確かに、よくよく撫でて見れば人肌の温もりが

「ねーよ!!」


 どこをどう触っても冷えた感触しかないよ!

 本当にこの人と話すと終始セシールさんのペースになる。

 こっちは気分が暗くてツッコむのにも体力消費すると言うのに。


「で、このナマコの皮なんだが」

「あぁ、うん、もういいですよナマコの皮で」

「これを私にどうしろ?ウロノス」

「点が一本多いです。その本、地球の言語で書かれているんですよ」


 説明を聞き「なに!?それは本当かフロノス!?」と驚き本を捲る。

 今度は点が一個少ないです、と冷静に指摘するもスルー。

 パラパラとページを捲り流し読むと、初めてセシールは真剣な眼で俺を見る。


「ノロノス、これをどこで手に入れた?」

「お、今度は二画消しましたね。それはインスマス教会って場所で入手しました」

「インスマス?あの北の海に面した小さな漁村のことかグロノス」

「おしいけど違う!ええ、そうですよそのインスマスですよ!」


 ふむ、と小さく唸るとセシールはもう一度本を捲る。

 どうやら興味を持ったようだ。


「で、私にこれの翻訳をしろと言う訳か?」

「ええ。それが翻訳できれば、インスマスについて何か分かるかもしれないので」

「……いいだろう。研究の片手間でいいならやってやるぞ」

「ありがとうございます。急ぎじゃないんで、ゆっくりで構いません」


 何とかまともにセシールと会話することができた。

 どうやら興味のある話題を持って来ればちゃんと会話は成立するらしい。

 名前は一度もちゃんと読んでくれなかったけど。

 セシールは人皮装丁本を机に投げると、


「で?用件はそれだけか?」


 と聞いてきた。

 その問いに思わず驚いてしまう。


「どうして……わかったんですか?」

「これを渡すだけならわざわざこんな時間に私を訪ねなくても、サカタに頼んで渡せばいいだろう。つまりこれは口実で、本題が他にあると言うことだろう。……いやちょっと待て、それ以前に何でお前王城内にいるんだ?」


 ようやくそこに疑問を持つのか……

 しかしセシールの指摘は当たっている。

 俺が彼女を訪ねたのは人皮装丁本のこともあるが、もっと別のことを聞きたかったからだ。

 同じ転生者だからこそ、セシールに聞けることもある。

 一呼吸置き、俺は意を決して彼女に尋ねる。


「セシールさんは転生者……人を、殺したことはありますか?」

次回投稿は明日22時となります。


セシールさんのキャラ扱いやすくて結構好きです

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