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二色眼の転生者《オッドアイズ・リ:ライフ》  作者: でってりゅー
第三章 ライゼヌスを覆う影
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第七十一話 恐怖からの逃走

今ツイッターで「rtした人の作品読みに行く」企画やってるんですけど、120近く作品紹介きてて完全に消化追いついてないですwww


 書庫を出て透明マントで姿を消しながら、ベルと教会の地下一階廊下を歩き続ける。

 教団員と何度かすれ違いヒヤッとする場面もあったが、バレることもなく、あのディープ・ワンとか言う魚の化け物に会わずに『信徒用儀式部屋』まで辿り着く。

 儀式部屋は大部屋で扉は無く、部屋には青白い炎が燭台に灯されていた。

 部屋の隅には水が張られており、中央には見たことの無い奇妙な門と装置が設置されている。

 何かの魔法に使う装置だろうか?

 気にはなるが門の設置された儀式部屋は放って置いて、その隣の部屋を目指す。

 隣の部屋の前に人はいないが、一応扉に耳を張り付け中の音を拾おうとする。


「……どうですか、クロノス君」

 「子供の泣く声が聞こえてくる。見張りはいなさそうだけど、油断せずに行こう」


 お互いの顔を見て頷き、ドアノブに手をかける。

 音が出ないように静かにドアノブを傾け扉を開ける。

 中は薄暗く灯りがなかった。

 地面も壁も赤黒い土で覆わていた。

 部屋半分が鉄格子によって遮られておりここは牢屋なのがわかる。

 この世界に初めて来た時のことを思い出す。

 牢屋には寝間着姿の子供たちが頭を垂れていた。

 その中に見覚えのある上層区で誘拐された子供の姿もある。

 きっとクラウラもこの中にいる!

 俺たちは透明マントを脱ぐと牢屋へと駆け寄った。


「皆さん、助けに来ましたよ!」


 ベルの声に子供たちがハッと顔を上げ俺たちを見つめる。

 助けに来たと言う言葉に子供たちが歓喜を上げ始める。


「しっ、静かに。騒ぐと見張りが来る」


 人差し指を唇に当て静かにさせる。

 牢屋を開けようと扉を確認すると、扉には南京錠が掛けられていた。


「鍵が、どうしましょうか?」

「針金で開けられるだろ……開けられない?」


 マントの内側に仕込んでおいた針金を取り出し鍵穴に差し込む。

 叔父の一人から鍵開けのやり方を聞かされておいて良かった。

 半分しかまともに聞いてなかったけど。

 鍵穴に差し込んだ針金をカチャカチャと鳴らしながら弄り続けるとカチャンと音が聞こえる。

 錠前が外れ、牢屋の扉を開けることに成功した。

 心の中で小さくガッツポーズを取りながら牢屋の中に入る。

 騒ぎかけた子供たちを制すると、俺はクラウラの姿を探す。


「……クロノス?」

「ッ!姉さん!」


 牢屋の隅で小さい子供たちに抱きつかれているクラウラを見つけた!

 すぐさま傍に寄ると彼女の手を握りしめた。


「良かった。無事で」

「助けに来てくれたのね!でも、どうしてクロノスが?お父さんや叔父さんたちは?」

「外で待機してるはずです。俺が来たのは何と言うか……その場のノリと神の啓示?」


 言っている意味が分からずクラウラは首を傾げてみせる。

 まぁとにかく、これで第二目標の『子供たちの保護』は完了だ。

 しかし──


「問題はここからどうするかだな」


 口にしながら周りを見渡す。

 全員で円状に座り、俺は頭を悩ませていた。

 次の目標は『子供たちを脱出させる』なのだが、計画が大きく狂っている。

 本当は侵入時に使用した下水道を使うつもりだったのだが、あそこにはテケリ・リと鳴く謎の存在が潜んでいる。

 魔物なのか、はたまたディープ・ワン絡みなのか分からないが、正体も分からないのが潜む場所に子供たちを連れて行く訳にはいかない。

 となると、別の方法で教会の外に子供たち全員を脱出させなければならない。

 正面の玄関門から脱出することも考えたが、六十人近くいる子供たちを引き連れて移動なんてしたらすぐに見つかってしまうだろう。


「走って逃げるにも、一階の間取りが分からないと袋小路に追い詰められる可能性があるしなぁ」

「魔法で倒せばいいじゃない。こんなに子供がいるんだから、全員で戦えば……」

「大人相手に子供たちだけの魔法で勝てるとは限らないでしょう。しかもここは敵の本拠地、敵信者が何十人いるのかも分からない」


 バルメルド家の人間って何でこう脳筋ばっかりなんだろうか。

 姪とは言え、やっぱりと同じ血を引いてあるから母さんみたいな脳筋発想に至るのかなぁ?


「あの、クロノス君。私が幻惑効果のある匂いを出し続ければ、誰にも気付かずに外に出ることもできますけど」

「それじゃあベルが持たないだろ?」


 幻惑効果か。

 確かにそれは使えそうだけど、それでベルがダウンしたら脱出に支障が出る。

 いや、ちょっと待てよ?

 別に教会内を律儀に歩く必要はないんじゃないか?

 魔法を使えば壁に穴を開けられるはずだ。


「もう見つかってもいいんだし、魔法で壁に穴を開けながら進めばいいんじゃないか?何なら、俺が地上まで穴開けるぞ。俺にはマナ不足の心配なんてないし」


 何でか知らないけど、禁断の森での事件以降、俺にはマナ切れが起きない。

 どんなにマナを使用してもガス欠にならないのだ。

 理由は知らないけど特に気にはしていない。

 地下から地上まで穴を開けるぐらいなら余裕でできる。

 しかし、サムズアップする俺を見てクラウラが溜息をついた。


「それならもう試したわ。だけどここの壁、マナを通さないのよ」

「マナを通さない?まっさか〜」


 牢屋の壁に穴を試しに開けようと手を置く。

 赤黒い土は冷んやりとしており、手の平にゾワッとした感触が広がる。

 嫌な手触りを感じながらも体内のマナを手の平から地面へと流し込み、


「土よ!」


 壁に子供が通れるサイズの穴をイメージして魔法を発動させた。

 が……何も起きない。

 シーンと牢屋の中は静まり返り、壁から手を離して確認するが、赤黒い壁には針ほどの穴も開いていなかった。


「……あれ?」

「だから言ったじゃない」

「いやいや、マナが足りなかっただけだろ!土よ!土よ!土よ!」


 繰り返しマナを流して魔法を発動させようとするが、壁には一ミリも穴が開く気配はない。

 ただ赤黒い土にマナが流れ、発動する瞬間にそれが霧散している感じだ。

 何度もマナを流しては霧散し、流しては霧散しを繰り返してようやく俺は息絶え絶えになって諦める。


「ぜぇ……ぜぇ……うん!こりゃ無理だな!」

「マナを無力化する土──ですか」

「ベル、知ってるのか?」

「そのような性質を持った魔物がいるのは知っています。でも、マナを無力化する土なんて物は聞いたことありません」

 「案外、その魔物がこの壁の土に含まれてたりしてな」

「……やめて下さいよクロノス君!想像してしまうじゃないですか!」

「ごめん」


 不穏な発言でベルに怒られてしまう。

 普段ならそんな頭のおかしいことする人間なんていないと言えるのだが、先程の書庫で見つけた本のこともあるしないとは否定できない。

 なんせ人の皮で本の装丁をする様な連中の拠点だ。

 土に魔物を練り込むなんて恐ろしい真似をしていてもおかしくない。

 だが、そうすると地道に教会内から脱出経路を探さなければならない。

 子供たちを引き連れてか?

 いやいや、それはさすがに無理がある。

 俺は透明マントを持ってるからいいが、他の子たちは身を隠す術がない。

 かと言って子供たちを全員覆える程マントは大きくないしどうしよう……良い手が思い浮かばない。


「正面突破は絶対できないし、先に騎士団を招き入れるか?いやでもそれだと子供たちの安全が……ぐぬぬ」


 ぶつくさと一人呟きながらこの後どうするか考える。

 しかし、どんなに考えても子供たちを引き連れたままここを脱出するのは不可能だ。

 途中で誰かが捕まってしまうだろう。


「クロノス君?大丈夫ですか?」


 一人唸る俺を見かねてベルが心配そうにしている。


「クロノス君だけ先に外に出て、騎士団の皆さんを呼びますか?その間、私がここに残って皆さんを守ります」

「いやそれは絶対にダメだ。それだったら俺が残るわ。つか、やらないぞそんな作戦」


 ベル一人残すなんて後で責め立てられるに決まってる。

 そもそも、ここに誰か残しても教団員たちが押し寄せてきたら守りきれない。

 俺でも守りきる自信がない。


「なら、やっぱり私が幻惑効果のある匂いを出しながら……」

「でも、それだとお前がマナ切れ起こすかもしれないんだろ?もしそうなったら、発見されて逃げ切れなくな


 ベルの提案を否定する。

 だが途中で一つの考えが思い浮かんだ。


「ベル。お前のその匂いって、ここならどのくらいの範囲まで効果が及ぶんだ?」

「え、と……この広さの教会内なら全体まで届くはずです。だけど風がないから、広がりきるまでに時間がかかります。だから移動しながら、必要な時に匂いを生成して……」

「いや、その必要はない」


 いちいち匂いを生成する度に止まっていたのでは埒が明かない。

 だから──


「良いこと思いついた」


 この中で俺だけにしかできない、妙案を思いついて、俺はベルに笑ってみせた。

僕も評価と感想とか欲しいなぁって知人に言ったら「お前の作品話数多すぎてそこまで行けないんだよ」って言われて目からゴボウでした

またストック溜まったんで毎日投稿やります。たぶん水曜日の22時から同週日曜日まて


あ、PV16000超えました!

いつもありがとうございます!

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