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二色眼の転生者《オッドアイズ・リ:ライフ》  作者: でってりゅー
第三章 ライゼヌスを覆う影
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第六十五話 ライゼヌスを覆う影③

今日からバイオハザードのアニメーション映画最新作が公開ですね!

さっそく行ってきまイ・ヤァァァァ──!!


 謁見の間にセシールが突然現れた。

 彼女はズカズカと歩き近づいてくる。

 近づいて来るセシールに俺は少しビビっていた。

 いやだって、またナイフ突きつけられたら怖いじゃん?

 しかしセシールは警戒する俺を余所に坂田に近づき、ふん!と声を荒げながら坂田の尻を蹴った。

 突然尻を蹴られて坂田は思わず跳び上がる。


「痛い!何するんだセシール!?」

「サカタァ!私は今日肉が食べたいと言ったはずだ!なぜ魚料理を持ってきた!?」

「いや、そんなの聞いてないが?」

「今日は肉の気分だったのだ!今度からちゃんと人の話は聞け!」

「君に言われたくはない……と言うか、文句言うくらいなら食事は研究室じゃなくて食堂まで食べに来てくれ」


 なんか一方的に坂田に文句を言っている。

 しかも坂田の返答を聞いてないぞ。

 セシールはくるっとグレイズ国王に向き直ると手を掲げる。


「よぉグレイズ国王!相変わらず不健康そうだな!」

「四六時中研究室に篭ってる君に言われたくはない」

「それはそうと研究予算を増やしてくれ!」

「新しい発明が出来たら考えておこう」

「なにィ〜?よしわかった!」


 納得するのか……。

 すごい国王様相手にフレンドリー……いやかなり失礼な態度だ。

 しかしグレイズ国王はあまり気にしてない。

 言いたいことを言い終わったのか、今度は神父の身体を借りた神様に向き直り、


「よぉギル公!久しぶりだなぁ!」


 笑顔で肩パンし始めた。

 だが力加減はちゃんとしてるのか、神様はそれを咎めはしない。


「やぁセシール。久しぶりだね」

「久しぶりすぎだろ!私はすっかり歳喰っちまったぞこのヤロ〜!」

「君は無事望んだ場所に辿り着けたから、もう僕の力は必要ないと思ってね」

「そうか……?そうかもな」

「ああ──ところでいつまで殴ってるつもり?」

「十年分殴り終えるまで」

「肩壊れるよ!今ご老人の身体借りてるんだからもっと優しくしてよ!」

「老人には優しくするが、お前に優しくする理由はないだろ?」

「あぁもうこれだから転生組は!」


 キョトンとした顔で訊ねるセシールに神様が神父の身体で暴れる。

 ど、どうなっているんだ?

 昼間会った時は敵意剥き出しだったのに、今はそんなものは微塵も感じない。

 完全に親戚のおっさんのノリだ。


「驚いたか?」


 昼間と全然違うセシールを見ていると坂田が小声で話かけてくる。


「いや、驚きますよそりゃ……昼間と別人じゃないですか」

「セシールは普段はああなんだ。でも研究になると全くの別人になる。研究バカなんだ」

「そこ、聞こえてるぞ!」


 小声で話しているとセシールに聞きれてしまう。

 とんだ地獄耳だな。

 セシールは神様に肩パンするのを止めると坂田に詰め寄る。


「サカタァ!貴様私が研究バカだとぉ!?」


 ヤバい、このパターンだとまた坂田が蹴られる!


「その通り過ぎて文句言えないじゃないか」


 そこは認めるんだ!?

 さっきから驚いてばかりでもうどのタイミングで挨拶すればいいのかわからない。

 だが坂田の横に立つ俺にようやく気付き、こちらをマジマジと見てくる。

 またナイフを突き立てられるじゃないかと俺は身構え、


「おいサカタ。こいつ誰だ」

「ええええええええええ!?」


 覚えない?

 俺のことを覚えてない!?

 昼間電気ショックを与えてナイフで刺そうとした相手を覚えてないだと!?


「彼はクロノス・バルメルド。昼間紹介したろ」

「全然覚えてない。この場にいるってことは転生者かこいつ?」

「その話も昼間にしましたよ!セシールさん鳥頭ですか!」

「なんだと!?私は鳥より牛の方が好きだぞ!」

「いや知らねぇし聞いてねぇよ!」

「ちなみにチキンは胸より脚が好きだ!」

「坂田さァァァァん!!」


 全く会話が成立しねェェェェ!

 堪らず坂田に助けを求めた。


「昼間、君に電話交換手のアイディアをくれた子供だよ」

「あぁあぁあぁ!あの時の子供か!すまんすまん。研究以外の事は割とどうでも良くてな!覚えてなかった!」


 そこまではっきりと言われると怒りを通り越して、もはやいっそ清々しいな。

 なるほど、確かにこの人は研究バカだ。


「まぁ、思い出せていただけたなら何よりです……」

「だから覚えていないんだって。まぁ許せ!今から覚える!」


 もはやツッコむのも面倒くせぇ……もうこのフリーダムをまともにするのは諦めよう。

 研究室にいる時と外にいる時で性格違いすぎだろ……。

 グレイズ国王が小さく咳払いするのが聞こえる。

 どうやら俺たちの話が終わるまで待っていてくれたみたいだ。


「それでセシール。何故君がここに?」

「そっちが呼んだんだろ。謁見の間まで来いって。このナイフのことで話があるって言うから、わざわざ持ってきてやったんだぞ」


 文句を言いながらセシールは懐に閉まっていたナイフを取り出す。

 ナイフは危険がないようにしっかりと布で包装されていた。

 あのナイフは昼間、セシールが俺を刺そうとして使った物だ。

 あの奇妙な文様が──


「ん?あっ、そのナイフ!」


 ナイフの文様を見て俺は声を上げる。

 どうして気づかなかったのだろう?

 セシールの持ってるナイフと誘拐犯が使っていたナイフの文様が全く同じであることに。


「なんだクリノス。ナイフがどうかしたか?」

「クロノスです。そのナイフの文様、誘拐犯が使っていたのと全く同じナイフなんですよ」


 俺の言葉にセシール以外の全員が驚く。

 しかしどうして同じナイフをセシールが持っているんだ?


「誘拐犯?何のことだ?」

「あー、説明すると長いんだけどね?」

「ならいい」


 説明しようと神様が口を開くも軽くあしらわれる。

 本当、神様相手でも容赦ねぇなこのロリ。


「お前らが調査を頼んだこのナイフ。この世界の物じゃないな」

「この世界の物じゃない?どういうことだセシール?」

「まぁ待てよグレイズ国王、説明するから。まずこのナイフの金属は、存在しない製造法で造られてる」

「それはライゼヌスではない製造法、他大陸の技術と言うことか?」

「違う違う。もっとデカイスケールだ。今この世界に存在していない技術だ」

「では、転生者である君たちの世界の技術が?」

「それもないな。少なくとも、前世で死ぬまで研究してた私が知らない技術なら、この二人も知らん」


 はっきりと言うなぁ。

 確かに俺技術屋じゃないから分からないけど。


「二つ目、このナイフの刀身に浮彫されているのからして、こいつは何かの呪術に使用する物と思われる。ギル公、お前のところって生贄捧げる儀式とかするか?」

「しないよそんな物騒なこと!そんなことしなくても、ちゃんと神として可愛い信者たちの為に働くよ!」

「じゃあ誰にも理解できんな。そしたら私にはもうお手上げだ。民俗学は専門外だ。この浮彫が何を意味してるかわからん」


 セシールはナイフを持った両手を上げ「お手上げ〜」のジェスチャーをする。

 貸してみろと坂田はナイフを手に取った。

 俺も横からナイフの刀身に浮彫された文様を覗き見る。

 刀身に浮彫されているのは見た事のない文字列だった。

 確かに見た事のない──少なくとも前世でも今世でも目にした事のない図式だ。

 狂った曲線が反復繰り返しされており、じっと見ていると不安と焦燥感に駆られる不気味な文様だ。


「なんですかこれ?意味不明すぎます」

「私にもわからん」


 でも何故だろう……この狂った曲線、どこかで見たような?

 ──そうだ、鈴!

 誘拐犯が持ってた鈴にも同じ文様があったはず!

 俺はポケットにしまったままだったあの鈴を取り出すとナイフと並べる。

 すると文様が繋がっているかのように見え、ナイフと鈴が同じ製造法であることが分かる。


「クロノス君、この鈴はどこで?」

「誘拐犯が持ってたんです。催眠効果を引き出す鈴です」

「それを先に言ってくれ!セシール!」


 坂田は俺から鈴を奪うとセシールに投げた。

 それを受け取るとセシールは鈴を隅々まで観察する。


「君は鈴の調査をしてくれ。奴らがどんな手段で催眠と洗脳効果を施したのか分かるかもしれない。今後の対策の為にも頼む」

「はぁ〜?私は今携帯電話の試作品を発明してる途中なんだぞ?こんな音が鳴るだけの金属の調査なんて……」

「次の予算会議で追加予算の申請出しておくから」

「よっしゃ任せておけ!明日までには報告するからな!」


 さすが坂田、扱い方を心得ている。

 セシールは予算のワードにウキウキしながら鈴を片手に謁見の間から退出する。

 また部屋には神様とグレイズ国王、坂田と俺の四人が残った。


「セシールに任せておけば、あの鈴の調査は問題ないでしょう。後は『インスマス面』の犯人が、どこに子供たちを誘拐したかです」

「そりゃ、インスマスの人間なんだから『インスマス教会』でしょ。場所は相棒が知ってるし」


 神様の言葉に俺は頷く、確かにインスマス教会の場所は昨日行ったからわかる。

 しかし問題はまだ山積みだ。

 グレイズ国王はこみかみを指で押さえ頭を悩ませる。


「問題は誘拐された子供たちだ。彼らを人質に取られては我々は手を出せない。かと言って、強行手段に出れば敵が何をしでかすか……」


 誘拐された子供たちの中にはクラウラもいる。

 彼女を人質にされたらバルメルド家のメンバーはまず手を出せなくなる。

 もちろん俺だってそうだ。

 俺は魔物との戦闘経験はあるが、対人戦には慣れてない。

 心理戦の駆け引きなんていきなりはできない。

 どうやって対処すべきかと頭を抱えていると、


「ちょっと厳しいけど、一番確実で安全な作戦はあるよ」


 呑気に神様がそう口走った。

 その言葉にグレイズ国王が食い付く。

 どんな案でも神様が提案するなら現実的かもしれないと。


「本当ですか!?」

「うん。この男を使えばいい」


 そう言って神様は俺を指差す。

 え、俺を使うってどういうこと?


「クロノスをインスマス教会に潜入させて、子供たちの保護と護衛をさせればいいんだよ」

「はぁぁぁぁ!?」


 その無謀な提案に俺は抗議の声を上げるのだった。

次回投稿は明日22時です!

この話で「覆う影○」はおしまいです。

次回から別サブタイトルになります

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