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二色眼の転生者《オッドアイズ・リ:ライフ》  作者: でってりゅー
第三章 ライゼヌスを覆う影
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第六十四話 ライゼヌスを覆う影②

連続投稿二日目です!

最近暑くて堪んないですね。


 ライゼヌス城謁見の間に置いて、ライゼヌス王国の現国王グレイズ・ゼヌス、文学大臣の坂田、そしてこの俺クロノス・バルメルド。

 以上三名は、ギルニウス教会の神父の体を借りて現世に降臨したギルニウス本人と対話していた。

 しかし、グレイズ国王は城とは部外者の俺が残っているのに疑問を持つ。


「ギルニウス様、この少年はもしや?」

「うん。僕が呼んだ転生者の一人」

「そうでしたか」


 ギルニウスが肯定するとグレイズ国王はそれ以上何も言わない。

 どうやら国王も転生者の存在は知っているらしい。

 そういや、この国を創った『異界の戦士』も元は異世界転移した人物だったっけ?

 だから不思議には思わないのか。


「つか、良いのかよ神様?神様がそんな頻繁に現世に降りて人と話して?」


 素朴な疑問を神様にしてみる。

 神様ってそんな気軽に地上に降りていいのかよ。

 質問を受けた神様はやれやれと首を振った。


「わかってないな〜相棒は。いるかいないかわかんないような不透明な存在より、確実にいるとわかっていて手助けしてくれる存在の方が信仰してもらい易いんだよ。つまりこれは、ギルニウス教の布教活動の一環でもあるんだよ!ね、国王陛下!」

「……そうだ。ギルニウス様は、国の一大事にはいつも力を貸してくれている。その度に神様は私たちを救って下さった。だから我が国の国民もギルニウス様を信仰しているのだ」


 グレイズ国王の補足に「ほらね!」と神様が勝ち誇ったような顔をする。

 ウゼェなそのドヤ顔。


「僕はこの国が建国した時からずぅーっとこの国を護ってきたのさ。だからこうして信者も多い訳だしね!国王のグレちゃんだって、子供の頃から面倒見てたし」

「あの、ギルニウス様……私ももういい歳ですので、その『グレちゃん』と呼ぶのは止めていただけませんか?」

「え、なんで?だって君、側室で囲った奥さんたちにも二人きりの時は『グレちゃん♡』って呼ばせて

「うわああああぁぁぁぁ!!」


 しなを作って甘い声まで再現する神様。

 それを遮ろうとグレイズ国王の悲痛な声が響き渡る。

 その声を聞きつけて外で待機してた人たちが駆けつけないかと心配したが、誰も謁見の間に飛び込んで来ることはなかった。

 謁見の間に微妙な空気が流れる。

 国王は数回咳払いをすると俺と坂田を睨む。


「今の話は忘れろ。他言したら、首を刎ねる……!」

「「はい、国王様……」」


 グレちゃんに凄まれて坂田と一緒に素直に頷いておく。

 俺たちだって聞きたくなかったし知りたくなかったよそんな情報。

 そうだよな、神様は常に信徒たちを見守ってるって前に言ってたから俺たちの日常を覗いてるんだよな。

 つまり夜の事情まで知ってるってことか、最低のクズだな。

 心の中で神様に対する評価がただ下がりし始めた。

 そんなことも露知らず、神様は本題に戻る。


「それで、今回子供たちを誘拐した事件の犯人だけど……インスマスの人間が関わってるのは間違いないと僕は思う」

「根拠は?」

「相棒……クロノスが、前日にインスマス教会の偵察に行ってくれてたんだ」


 インスマス教会……?

 あーあのいきなり魔法ぶっ放してきたところか!

 そう言えばあそこも『インスマス』って名前だったな。


「最近夜になると、僕のテリトリーに侵入してくる不貞な輩──いや、タコがいてね。そのタコと同じ像がインスマス教会に飾ってあるらしいんだ」

「タコって……あの邪神みたいなヤツか?」


 そうそう、と俺の質問に神様が何度も肯定する。

 あの教会で見たタコはかなり禍々しい形をしていた。

 あんなのと毎晩戦ってたのか神様は……もしかして、夜忙しいと言ってたのもそれが理由か?


「じゃあ昨日の夜、俺がインスマス教会の連中から逃げてドッタンバッタン大騒ぎしてた頃、神様はタコの邪神と戦ってたのか!?」

「そうだよ〜。いや〜、昨日は今までで一番キツかったよ。それで力使い過ぎたゃってさ〜」


 それで昨日の夜にギルニウスルームに行った時はちっこい光の球になってたのか。


「ちょっと待って。神様が忙しいって言い出したの二年ぐらい前だよな?もしかして、その時からずっと?」

「そうだよ。でも、最初は大きな魚二匹が相手だったんだよ。それを何度も撃退してたらタコが変わりに出てくるようになったんだ」


 さらりと答えてるけど、そんなに長い時間戦い続けてたのか……ずっと遊んで人をからかいに来てるだけの暇な神様だと思ってたのに。


「おや?相棒、もしかして僕のこと見直しちゃった?やっぱいい神様なんだなぁ〜って見直しちゃった?」

「ああ、素直に見直した。てっきり信者の生活覗き見て仕事しないで人を煽るだけの神様かと思ってたわ……」

「いやちょっと待ってそれどういこと!?今まで僕をどういう神様だと認識してたの!?」


 ギャーギャーと喚く神様を無視する。

 だが俺の中で神様に対する評価は確実に上がっていたのだ……ちょこっとだけな。

 話を戻そうと坂田が神様を宥める。


「まぁまぁギルニウス様。それは今はいいですから、話の続きを」

「いや全然良くないんだけど……で、なんだっけ?タコの話だっけ?」

「そうです。その邪神の像と、ギルニウス様が戦っていた怪物が同じだったんですよね?」

「そうそう。あんなの崇拝してる宗教がいくつもあるとは思えないからね。だから相棒から教えてもらったインスマス教団が今回の事件を起こしたと見てる。インスマスには良い噂はないしね」


 神様の話にグレイズ国王と坂田は思い当たる節があるのか険しい表情を見せる。

 なんだ、インスマスって漁村はそんなに酷い所なのか?


「サカタ、昔インスマスにギルニウス教会の支部を建てようと人員を派遣したことがあったな?」

「はい。あの時は教会の方二名と護衛の騎士十名を派遣したと聞いてます。ですが、帰って来たのは護衛の騎士たった一名……それも精神が錯乱した状態で」

「残りの者は全員行方不明で、捜索隊を出したが追い返されたはずだったな」

「ええ。戻ってきた騎士はまともな会話もできず、今も精神病院で治療中のはずです」


 グレイズ国王と坂田の間で次々と不穏な単語が飛び交う。

 行方不明者に錯乱した騎士一人しか帰ってこれなかったかって、もう真っ黒じゃねーかその村。


「そのインスマスって村、完全にアウトじゃないですか」

「旅行に行った学生や郷土調査に出向いた一団が丸ごと行方不明になった。インスマスの海には巨大な魔物が住んでる。村では皮膚病が蔓延して他者に感染する。インスマスにはロクな噂がない」

「一つぐらい無いんですか良い噂?」

「一年通して漁業が大漁ぐらいだな」


 坂田の言葉に開いた口が塞がらない。

 それだけしかないのかよ良い噂……でも漁業やってる人は羨ましいか。

 いやでも、そこから黒い噂を差し引いてもやっぱり真っ黒のままだ。


「それにあそこには、私たちと同じ世界から来た者がいる可能性がある」

「え?転生者か転移者がインスマスにいるんですか?」

「気がつかなかったのか?直接見たんだろう?インスマスの人間の服装を」


 坂田の言っている意味が分からず首を傾げる。

 確かに直接見た、背広にジーンズとキャップ帽の三点セット。

 別に普通の格好──


「ああああああああああ!?」


 そうだよおかしい!

 なんで見た時に気づかなかったんだ!?

 背広にジーンズにキャップ帽って、中世色の世界ではありえないはずないんだ!

 だってそれはまだこの世界にはないはずのファッションなんだから!

 

「本当に気づいてなかったのか」

「相棒って案外抜けてるからね」


 暴れ狂う俺を見て坂田と神様が呆れる。

 すると坂田は何か思い出したのか、「そう言えば」と続ける。


「確かインスマスにギルニウス教会の方を派遣する前、インスマスには複数の宗教団体が存在したと聞いています。ですが、派遣した時には一つに統合されたと」

「え、この世界にはギルニウス教以外にも宗教団体ってあるんですか?」

「そりゃあるよー。僕以外にも神様はいるからね」


 神様が答えてくれる。

 てっきりこの世界にはギルニウス以外神様いないと思ってたんだけど、ちゃんといるのか。

 ギルニウスよりまともな神様なんだろうな、きっと。

 俺の質問で坂田の話を遮ってしまうが、グレイズ国王が続けるように促す。


「して、サカタ。その統合された宗教団体は?」

「現地の人間が運営をしているそうです。ですが村の人間同様、外界との交流を嫌い、あまり多くの情報はありません。ある神を崇拝しているぐらいしか」

「その宗教団体の名前は?」


「“ダゴン秘密教団”」


 ダゴン──と言う名前を聞いた瞬間、俺の脳裏に覚えない景色が一瞬浮かび上がる。

 海底に沈む都市と、巨大な門、そしてその周りを泳ぐ人の姿をした魚たち。

 この記憶はどこで見たんだっけ?

 夢の中だっただろうか?

 あやふやな記憶の断片、しかしまるで靄がかかったかのようでその全てを思い出すことができない。

 いや心のどこかで思い出すのを自分自身が拒んでいる。

 その景色が何だったのか理解しようとすると吐き気を催す。

 でもここで吐いてはなるまいと堪えて我慢した。


「バルメルド少年、大丈夫か?顔色が悪いぞ」


 吐き気を我慢しているとグレイズ国王に声をかけられる。

 俺は首を振り「大丈夫」ですと答えた。

 理由は分からないが、海底都市のことを思い出すのは無理のようだ。

 そう言えば、あの夢の中で神様に呼びかけられたような気がする。


「なぁ、神さ


 夢のことについて神様に訊ねようとした矢先、謁見の間の扉が勢いよく開け放たれる。

 何が来たのかと警戒し全員が振り返る。

 だが扉を開けて立っていたのは灰白色の髪の小柄な少女だ。


「セシールだ。呼ばれたから来てやったぞ馬鹿ども!」


 上機嫌な声色で現れたのはライゼヌス一の発明家、ノームのセシールだった。

次回投稿も明日の22時になります!

暑いし海行きたいですね。

悪魔の暗礁辺りにでもオフ会開いて行きますか

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