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二色眼の転生者《オッドアイズ・リ:ライフ》  作者: でってりゅー
第三章 ライゼヌスを覆う影
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第六十三話 ライゼヌスを覆う影①

本当は週末に投稿する予定だったんですけど、思ったよりストック溜まるの早いし話の内容的に週一更新だとダレてしまうと思ったのでここらで一回連続投稿することにしました



 王都の人間を催眠状態にして子供たちを攫おうとしていた一味を撃退さた後、上層区の街路樹は人でごった返していた。

 荷台から子供たちを降ろすと次々と親が我が子の無事を確認に走り、子供たちも自分の親に抱きついている。


「ママ!」「あぁ坊や!無事でよかった!」「大丈夫か?どこか怪我してないか!?」


 親を呼ぶ声と我が子の無事に安堵する声があちこちから聞こえてくる。

 しかし、数台の馬車を逃してしまった結果子供に会えない親もいる。


「誰か!ウチの子を知りませんか!?」「ゆーちゃん!ゆーちゃん!返事して!」


 我が子を呼んでも返事のない親たちの悲痛な叫びも聞こえる。

 俺はと言うと、助けた甥と姪っ子たちに囲まれている上に手も腕も服の裾も、あらゆる場所を掴まれ身動きが取れずにいた。

 先程まで勝手にマナを吸い出し発動していた両眼も、役目を終えたからかいつも通りに戻っている。

 早くジェイクたち来てくれないかなぁと待ちくたびれていると、


「クロノスー!どこだー!?」「クロちゃん返事してー!」


 ジェイクとユリーネの姿が見えた。

 後ろにはイルミニオやサティーラ、メアリーに他の親族もいる。

 彼らは俺たちを見つけると人混みをすり抜け駆け寄ってくる。

 甥っ子たちは自分の親が来たのを見るとようやく俺を解放して親に抱きつく。

 ジェイクとユリーネも俺の元へ駆け寄ると同時に抱きついてきた。


「クロちゃん!無事で良かったわ!」

「心配したんだぞ!勝手に出歩くなんて!」

「いや、二人とも起きてくれなかったから仕方なく」

「そういう時は引きずってでも親も一緒に連れて行け!」


 んな無茶な。

 二人の抱擁を受けながら心の中でツッコんでいるとメアリーが現れた。


「クロノス坊っちゃま!お怪我はありませんか!?」

「あぁメアリーさん。大丈夫ですよ。俺はどこも怪我してません」

「そうですか……ですが、何故クロノス坊っちゃまや他の子供たちはこの場所へ?」


 メアリーがようやくその質問をしてくれる。

 他の皆は子供が心配が先にきてそこら辺聞いてくれないからな。


「変な集団が子供たちを馬車に乗せて誘拐しようとしていたんです」

「誘拐!?それで、誰がクロちゃんたちを助けてくれたの?」

「クロノスお兄ちゃんだよ!」


 ユリーネの質問に甥っ子が答える。

 それに続いて他の子たちも「クロノスお兄ちゃんが助けてくれた!」「にいたゃんかっこよかった!」「お馬さん止めてバッて助けてくれた!」と次々と答える。

 しかしそのどれも理解不能で大人たちは首を傾げる。


「クロノスが……うちのお兄ちゃんが皆を助けたのかい?」

「そう!」「ばぁー!ってじめんがどばーって!」「まてー!っておいかけてた!」


 甥と姪たちの説明にますます大人たちは首を傾げる。

 子供たちの説明が下手なのはあるがそりゃそうだろう。

 なんせ子供たちが説明しているのは催眠状態を解除した後の出来事だ。

 その前に行われていた俺と誘拐集団の戦闘は見ていなかったのだ。

 だが子供たちの口振りからして俺が助けたのだと理解するとイルミニオに訊ねられる。


「クロノス。君が皆を助けたのか?」

「そうです。その場に俺しかいなかったから」

「よく無事だったな……それに子供たちも……」

「普段から訓練指導してくれる父さんのおかげです」


 肘でジェイクを小突きながら答える。

 それが嬉しかったのか、ジェイクの顔が僅かに綻んだ。


「なら、君は見たんだね?誘拐犯の顔」

「バッチリと見ました。人のようで人とは違う奴らでした」

「……?どういうことだ?」

「人族なのは間違いないと思うんですけど、混血種みたいでかなり外見が変わっていたんです」


 あの容姿を人に説明するとなるとなかなか難しい。

 だが一つ確実なのはあれが生粋の人族ではないと言える。

 俺の答えにイルミニオが顎に手を当て考え込むと叔母の一人に質問してくる。


「ねぇ……クロノス君。クラウラ……ウチのクラウラはどこ?さっきから姿が見えないのだけれど」

「クラウラ姉さんは……」


 クラウラの母親に居場所を聞かれ視線を下げる。

 その行動がどう意味なのか、クラウラの母親は悟ると身体を震わせ始める。


「ど、どこかで休んでるのよね?あの子も無事なのよね!?」

「……すみません。クラウラ姉さんは、助けられませんでした」

「え……?」

「子供たちを乗せた馬車の何台かを止めることができなくて……その中にクラウラ姉さんが」

「嘘……嘘よね!?嘘なのよね!?どこかに隠れて、驚かせようとしてるだけなのよね!?」

「──すみません」


 謝る俺を前にクラウラの母親は涙を流し悲鳴をあげる。

 あの時、魔法を発動させるのがもう少し早ければ皆を助けられたはずなのに……。

 己の未熟さに悔しくを感じ拳を握り締める。

 泣き叫ぶクラウラの母親をサティーラとメアリーが慰める。

 そんな中、騎士団の鎧を身につけた集団が駆け寄ってきた。

 ライゼヌス城の警護をしていた近衛兵だ。

 兵士たちはイルミニオを前に整列し姿勢を正す。


「イルミニオ団長!緊急招集です!至急ライゼヌス城までお越し下さい!国王陛下がお待ちです!」

「……わかった」


  そう短く答えるとイルミニオは俺の肩を叩いた。


「クロノス、君も来てくれ。犯人の顔を見たのは君だけだ。陛下の前で証言をしてほしい。クラウラを助けたいと思うのなら、協力してくれ」

「……わかりました。一緒に行きます」


 泣きじゃくるクラウラの母親を見て答える。

 絶対にクラウラを助けださなければと、決意を胸に秘めながら。


✳︎


 イルミニオに連れられ再びライゼヌス城へと足を踏み入れる。

 もちろんジェイクや叔父全員も一緒だ。

 バルメルド男衆全員でライゼヌス国王の元へと向かう。

 本日二度目の王城なのだが、昼間のような厳格な静けさは影も形もなく、誰も彼もが慌ただしく場内を駆け巡っていた。

 俺たちも足早に場内を歩き、国王の待つ謁見の間へと赴く。

 謁見の間には荘厳な姿勢で玉座に座る一人の人間と、それを前に言い争いをしている何十人もの人たちがいた。

 何やら揉めているようであちこちから声が聞こえる。

 その中を掻き分け歩きながら、俺はジェイクに小声で尋ねる。


「父さん、玉座に座っているのが国王陛下ですか?」

「そうだ。あれがライゼヌスの現国王、グレイズ様だ」


 つまりあの人がベルの父親か。

 そういやライゼヌス国王って、側室で異種族ハーレム作ってるって聞いてたけど凄い厳格そうな人だ。

 もっと女大好きでヘラヘラしてる人かと思ってたんだけど、イメージとまるで違うわ。


「国王陛下!イルミニオ・バルメルド、ただいま参上いたしました!」


 片膝を着き忠誠の証に帯刀していた剣を外し頭を下げる。

 ジェイクたちも同じことをしていたので俺も真似して頭を下げた。

 イルミニオの張り上げた声に騒がしかった謁見の間がしん、と静まり返る。


「待っていたぞ騎士団長。現状の報告を」

「はっ!数時間前、王都全体で同時刻に誘拐事件が発生!賊は正体不明の魔法で子供たちを催眠、洗脳下に置き馬車に乗せて逃走したとのことです!逃走先は不明、目撃証言では城下町の裏路地に入ったとのことです!」


 王都全体で同時刻に誘拐!?

 事件が起きたのは上層区だけじゃなくて、全ての場所で起きていたのか。

 じゃあ、もしかしてこの王城でも同じことがあったんじゃ。


「誘拐犯と子供たちのその後の足取りは?」

「現在調査中です。ですが、犯人を直接見た者はおります。こちらの少年です」


 イルミニオがそれを示す。

 それを受け一瞬どうすればいいのかと驚くと、ジェイクが小声で話しかけてくれる。


「顔を上げて名乗るんだ。君の見た事を話しなさい」


 小さく頷き顔を上げる。

 その瞬間、今までイルミニオを見ていた人たちが一斉に俺を見つめてきた。

 少したじろぐが、すぐに頭を切り替え話し出す。


「は、初めまして国王陛下。クロノス・バルメルドと申します」

「……バルメルド?」

「俺……自分はイルミニオ・バルメルドの孫です」


 慌てて言い直すとグレイズ国王は顎に手を当て何やら考えている。

 え、何かマズイことしたかな俺?


「……そうか、君がクロノスか。ベルから話しは聞いている」


 あ、そっちね。

 ベルから既に俺の話を聞いていたのか。

 何かやらかしたかと思ってちょっとビビった。


「ではクロノス。君が見たと言う賊について話してくれ」

「わかりました。相手は──」


 ほんの数時間前に起きた出来事を全て話す。

 相手の特徴や武器、催眠効果を引き起こす鈴や連れ去られた子供たちのこと。

 以上です、と報告を終わると周りからザワザワと騒がしくなる。


「あんな子供が撃退したのか?」「嘘だろ?ウチの子より幼いぞ?」「きっと自分の子供が優秀だと見栄を張りたくて言わせてるんだろ」


 様々な野次が聞こえるが特に気にはしない。

 俺は嘘は言ってないのだから。

 グレイズ国王は俺の話を聞いている間ずっと目を閉じていた。

 俺の話が終わると目を開き質問してくる。


「君の話はわかった。賊は子供たちのことを"生贄"と言っていたのだな?」

「はい。何のことかは分からないけど、生贄を届けるのが先決だと」

「ふむ。君の説明だと、その賊は人族だったと見ていいのかね?」

「だと……思います。かなり変わった特徴だったので、もしかしたら混血種かもしれませんが」

「なるほど……だがそれだけでは、犯人の特定には繋がらないな。この王都には数多くの混血種がいる。その混血種の者全てを集めるのにも時間がかかる。その間に逃げられるやもしれ

「それはおそらく『インスマス面』でしょう」


 第三者の指摘が入り振り向く。

 謁見の間の入り口に坂田と年老いた神父の姿があった。

 坂田は頭を下げると挨拶する。


「御機嫌よう国王陛下。会談中申し訳ありません。ギルニウス教会から神父様がお越しになりましたのでお連れいたしました」

「サカタか、ご苦労。して、今しがた貴殿の言った『インスマス面』とは?」

「ここより北の地、海沿いの漁村に住む者たちに見られる、特有の皮膚病の別称で御座います」


 説明しながら坂田と神父が歩を進める。

 坂田は俺にウィンクすると隣に立ち説明を続ける。


「おそらくこの子の見た賊はインスマス出身者なのでしょう。これならば、かなり犯人を絞れるのではないでしょうか?」

「イルミニオ団長、その『インスマス面』とやらの特徴を持つと者の拘束、及び子供たちの捜索を」

「ハッ!ただちに!」


 イルミニオは立ち上がると控えていた兵士たちを連れ謁見の間から慌ただしく去っていき、叔父たちも同行していった。


「あの、坂田さん。ベルは無事なんですか?」

「無事だよ。誰かさんが大騒ぎしてくれたおかげでね」


 その一言にホッとする。

 そうか、あの爆発音はここまで届いて催眠効果を解除してくれたのか。

 イルミニオとすれ違う形で、坂田が連れてきた神父がグレイズ国王の前まで歩いてきた。


「御機嫌よう国王陛下」

「神父様。この様なお時間に御呼び立てしてしまい申し訳ありません」

「いえ、国の一大事。構いませんよ。ところで、少しお時間をよろしいでしょうか?」


 神父の問いにグレイズ国王は眉を潜めると周りの者に目配せする。

 それを受けて側近の者たちが部屋から出ようと動き始める。

 俺もジェイクに連れられ外に行こうとすると、


「君は残って下さい。もう一度私に先程のお話を聞かせてください」


 神父に呼び止められた。

 ジェイクと顔を見合わせると、「先に行って待っててください。彼をお借りします」と神父が告げた。

 ジェイクは何か言いたげだったが、頭を下げると謁見の間を後にした。

 謁見の間の扉が閉められ、残ったのはグレイズ国王、坂田、俺と神父の四人となる。

 いや、訂正しよう。

 正確には国王と坂田と俺、三人の信徒と、


「さて、それじゃあ皆で作戦会議を始めようか」

  

 神父の身体を借りた神様一人である。

次回更新は明日の22時の予定です

ストックの限り続けますのでお付き合いくださいませ


P.S. Amazonプライム登録したんですけど、旧作ドラえもん観れるの控えめに言って神じゃない?

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