第五十二話 王城でのお茶会
前から言おう言おうと思ってたんですが、私作品を書く時はスマホのメモ帳使ってるんで全角スペースが使えないんですよ。
だからこっちに乗せる時はいつも文章頭にスペースが空かないんですよね。
PCからしか修正できないんで、暇とやる気がある時に修正します。
家にいると書く気起きないのですよ……ゴメンなさいね
普段着ている服とは変わり、まるで社交ダンスに行くかのような服装で俺は王族の馬車に揺られていた。
ボサボサの頭をユリーネが一生懸命に整えようと先程から何度も櫛で撫でている。
「うーん……クロちゃんの髪の毛、癖が強くてなかなか綺麗にならないわ」
「力加減が足りないんじゃないか?どれ、貸してみなさい」
天然パーマの頭を何とかしようとジェイクもユリーネも悪戦苦闘している。
二人に挟まれながら俺は始終死んだ目で揺られていた。
その様子を正面の席で王城からの使者が温かい目で見守っている。
何故こうなったのか、それは一時間前に遡る。
屋敷に来た王城からの使者は、ライゼヌス第一王女様が俺に会いたいと迎えを寄越したのだ。
当然そんな話はイルミニオにもジェイクにも、もちろん俺だって初耳だ。
そもそも俺はライゼヌス第一王女と知り合いでも何でもないはず。
何かの間違いではないかと使者に返答したが、クロノス・バルメルドで間違いないと断言されてしまった。
御丁寧に招待状まで渡されたよ。
困惑する俺にジェイクから「呼ばれたなら伺わないのは先方に失礼だ」と窘められる。
確かに第一王女から招待状まで来たのに断りなんかしたら、俺は首を吊る事になりかねん。
と言う訳で保護者同伴で使者と共にライゼヌス王城まで馬車で向かっている途中なのだ。
俺の跳ねた髪の毛を寝かせようと苦戦する両親。
ようやく寝かせられたと思ったら、またすぐにぴょこんと髪の毛が跳ねてしまった。
「これは無理だな。どうやっても髪の毛が跳ねる」
「困ったわ〜。せっかくお城にお呼ばれされたのにこれじゃあ失礼じゃないかしら?」
「すいません。癖っ毛で……」
「仕方ないわね。クロちゃん、お父さんに短剣で髪を切ってもらいましょう」
「いや嫌ですよ!そんな物騒な!」
「すまない母さん……短剣は今持ち合わせていないんだ!」
「お義父さんも真に受けないでください!」
何度か物騒な事態に発展しそうになる。
馬車の中でずっと髪の毛を直そうと騒ぎながら、俺たちはライゼヌス王城へと辿り着いた。
王城の中を使者に案内される。
城内の通路にはよく分からない模様の壺や絵画が置いてあるのだが、俺が興味を引いたのは豪華な芸術品ではなく──
「ん……?んんっ!?」
大きな額縁に飾られたライゼヌス王城を背景に大勢の人が並んでいる写真だった。
この世界に写真があるのは驚きだ……驚きなのだが、俺が驚いたのはそこではない。
この写真、色が付いているのだ!
色彩画などではなく、前世の世界で毎日のように見かけたカラー写真が!!
飾られた写真を食い入るように覗き見る。
足を止めて写真をじっと見つめる俺に気づき、ジェイクたちも写真を見て感嘆の声を漏らす。
「すごい絵画ですね。まるで本物か目の前にあるみたい」
「ああ、私もこんなに綺麗な絵画は初めて見た」
「いえ、そちらは絵画ではなく『写真』と呼ばれる代物です」
「シャシン?初めて聞く名前です」
「ここ数年で我がライゼヌスの研究者の発明の一つです!」
誇らしげに使者に俺は写真を指差しながら尋ねる。
「この写真を撮ったカメラはどなたが発明したんですか?」
「かめら?いえ、そちらは光残石と言う魔石で投影した物でございます」
初めて聞く名前の魔石が出てきた。
この世界ってどんだけの種類の魔石があるんだ?
「光残石は周囲の光景を記憶することができる魔石でございます。ですがとても希少な石で、加えて周囲の光景を常に記憶してしまう為に実用性がないとされていました。しかし、我が国の優秀な研究者がついに実用化に成功したのです!この写真はその記念に撮影された物なのでございます」
「ほお、それはすごい。残したい光景をこうして保存できる技術を確立するとは、我が国の未来は明るいな」
話を聞いて再び驚きを見せるジェイクだが、俺はんな話はどうでも良かった。
この写真の技術を造った人物に会いたい。
この技術に写真と言う名称を名付けた人物に会いたい!
これを造ったのは間違いなく俺と同じ世界の人間。
つまり、俺と同郷のはずだ!
「この技術を造った人に会えませんか!?どうしても会ってみたいんです!」
「少し難しいかもしれません。その研究者、かなりの人嫌いでして……直接会えるのはほんのごく一部の関係者のみなのです」
「そうですか……」
くっそぉ……もし俺と同じ転生者なら話をしたかったのに。
いや、透明マントを使って忍び込めば会えなくもないか?
俺が良からぬことを計画していると、こちらですと使者が案内を再開する。
城内の通路を数分歩き連れてこられたのは、城の外側に面した庭園だった。
陽の光を一身に浴びる色とりどりの花畑が俺たちを迎えてくれる。
「姫様は奥でお待ちです」
使者は庭園の奥へと続く大理石の道を手で示す。
俺たちはそれに従い庭園の奥へと歩く。
薔薇や二輪草などに囲まれた道を進み、花のアーチをくぐるとその先は円状の休憩所となっており、中央に白いテーブルが置かれていた。
休憩所には、淡い桃色のドレス着た翠髪の少女と何人かの男が花を手入れしている。
あの子がライゼヌス第一王女か……背丈が俺とそう変わらないから同い年だろうか?
ドレスを着た少女を見てジェイクは片膝を、ユリーネは中腰に屈み二人は頭を下げる。
俺も慌ててジェイクの真似をして片膝を付き頭を下げた。
「ライゼヌス第一王女殿下。お招きいただき誠にありがとうございます。息子クロノス・バルメルド、父ジェイク・バルメルド、妻ユリーネ・バルメルド、ただいま参りました」
ジェイクが挨拶をすると足音が近づいてくる。
下げた視界の隅に淡い桃色のスカートが見えた。
「ようこそおいで下さいました。突然の 招待にも関わらず来て頂きありがとうございます。どうかお顔をお上げください」
お許しが出たのでゆっくりと顔を上げる。
淡い桃色のドレス、美しい顔立ちに翠色の長い髪、しかもその側頭部には桃色の花が咲い……て?
「こんにちは、クロノス君」
「ベルぅ!?」
見上げた少女を見て腰を抜かす。
正面に立ちにこやかな笑顔で俺の名を呼んだのは、昨日城下町で出会ったベル・ローザだった!
え、なんで、ちょっと待ってどういうことこれ!?
「ベルがなんでここに、つかライゼヌス第一王女ってベルなのか!?」
「あら、気づいてなかったのクロちゃん?」
「知りませんよ!王都に来たの三日前なんですよ!?」
「さっきクロちゃん、王族の方々が写ったシャシンをずっと見てたじゃない。あの中にベルちゃん写ってたわよ。最前列に」
マジかよそこまで見てなかった!
ちょっと待てよ、ベルが第一王女って知っても二人は驚いてない?
「──さてはお義父さんとお義母さんは知ってましたね!?ベルがこの国の第一王女だってこと!」
「当たり前だ。私は月一の騎士団本部に報告の為に王都には何度も来ている。パーティや式典がある時は警備を担当しているから、王女殿下とは前から面識があった」
「私もお父さんから話を聞いてたから知ってたわ。服を買いに行った時にベル殿下から直接お話を聞いたし」
「なんで教えてくれなかったんですか!?」
「君と会った時、王女殿下は御身分を隠されていた。ならば私も教えるべきではないと黙っていた。そもそも私が見ず知らずのご令嬢をそのまま連れ歩く訳はないだろう。普段だったらすぐにご両親の元へと送り返す」
「私は言っちゃダメだって、殿下にお願いされてたから」
つまりユリーネは服の買い出しに行った時に口止めされてたのか。
でもなんで俺だけ教えるのダメだったんだ?
「ごめんなさいクロノス君。私も本当は別れ際に正体を明かしたかったんだけど、その方が後で面白いからって、あるお方に口止めされて……」
あんのクソ神かァァァァァァァァ!!
ああそうかい俺だけベルの正体を知らずに後で驚いた姿を見たかった訳かい!
あんにゃろぉ次会ったら絶対膝蹴り喰らわしてやる!
今頃天界で腹を抱えて笑ってるであろうギルニウスに内心憤怒する。
そんな胸の内を知らずベルはにっこりと笑う。
「本日は昨日の御礼として御茶会にお招きいたしました」
「いえ〜、お招きありがとうございます」
この二人の態度からして、使者から御茶会に呼ばれたのも聞いていたな。
また俺にだけ口止めされてたのかよ。
「では、改めてご挨拶いたします。ティンカーベル・ゼヌスです。よろしくお願います」
ドレスの裾を摘みお辞儀をするティンカーベル。
陽の光を浴びて彼女の頭に咲いている桃白い花が輝いて見えた。
次回投稿は明日でござんす!
久々にスーファミのミニ四駆やりたい
P.S. 前回の前書きはグロンギ語でした




