表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二色眼の転生者《オッドアイズ・リ:ライフ》  作者: でってりゅー
第三章 ライゼヌスを覆う影
53/253

第五十話 二日目の報告会

やっとこさ五十話入りました!

三章ももうすぐドッタンバッタン大騒ぎです!


 気がつくと俺は、小高い丘の上に立っていた。

 地平線まで続く草原に巨大な木、澄み切った空に流れる雲。

 久しぶりのギルニウスルームだ。

 眠いんだからぐっすり寝かせてくれと内心ボヤきながら、あのいつもムカつく笑みを浮かべる神様を探して──


「……あれ、神様?おーい?」


 ギルニウスの姿がない。

 いつもなら目の前にあの腹立つ爽やかスマイルで出てくるのに。


「人呼び出しといていないってどういうことだよ」


 待っていても現れる気配がまるでない。

 仕方なしに周りを歩いて探す事にする。

 いつもは神様がパッと現れて、その場で立ち話するだけだから、こうして一人この場所を歩き回るのは初めてだ。

 この空間はいつ来ても不思議な場所だ。

 風の流れは強くも弱くもない。

 雲の流れはいつも一定。

 太陽がある訳でもないのに常に陽の光に包まれているかのような暖かさ。

 何より、歩いていて行けばどこまでも行けるように見える草原。

 この不思議な空間は本当は何の為に存在しているのだろう?


「神の考えてることを理解しろってのが無理な話か」


 神と邂逅する場所としか認識してないが、ギルニウスがこの空間を作った以上意味はきっとあるのだろう。

 案外、ここで昼寝したいから作ったってだけの可能性もあるし。

 なんて考えながら空間の中を歩き回る。

 しかしどこまで行ってもギルニウスの姿は見当たらない。

 今度は木の元まで歩いてみると、木の根元に弱々しい光を放つ球体がゆらゆらと宙に浮いていた。


「神……様?だよな?」

「あぁ、そうだよ……最初に会った時とは逆だね」


 声に合わせて球体が光を放つ。

 どうやら本当にこの玉っころが神様らしい。


「なんでそんな球になってるんだ?何かの遊び?」

「力を使い過ぎて、人の姿を保てなくなっちゃったんだよ。休めばまた元の姿に戻れるから問題はないけどね」

「そんな姿になるまで力使うって……夕方教会で別れてから何があったんだよ」

「そりゃ、僕は神様だからね。悪しき神から世界を救う為の戦いにだね──」

「はいはいすごいすごい」


 適当に聞き流して手を叩いてみせると神様が「ムムッ」と声を上げる。

 どうやら態度が気に入らなかったらしい。


「君信じてないね?こう見ても僕は、日々世界と信者たちを助ける為に常日頃から邪神たちと戦争を──」

「わかったわかったよ。で、世界を救う為に戦っていた神様は、俺に透明マントなんて渡して、夜の城下町の何を見せたかったんだ?」

「え?あぁ……夜のライゼヌス王国はどんな感じか見てもらいたくてね。僕は忙しかったから」

「俺は天界の親善大使じゃねーぞ」

「それで夜の城下町はどんな様子だったか、教えてくれるかな?」


 俺は聞かれた通りに城下町の様子を答える。

 酔っ払いが多かったこと、亜人種の娼婦たちがいたこと、屋台で売ってた水が値段の割には美味しくなかったこと等、見たままの事を一つ残らず話す。

 話を聞いている間に神様の体は球体から徐々に人の姿の輪郭となり、城下町の出来事を話し終える頃にはあの爽やか顔のいつもの姿に戻っていた。


「──って、感じだ。結構楽しい散歩だったよ」

「そうかい。教えてくれてありがとう」

「でもなんでわざわざ俺に見に行かせたんだ?あんた人や動物に憑依できるんだから、人伝で状況を知るより見に行った方が早いだろうに」


 神様は生き物に頼んでその体に乗り移る能力を持っている。

 ネズミとか鳥とかリスとか……結構色んな物に乗り移っているのを見たことがある。

 あれ使えば、俺に又聞きするより町の様子を完全に知れるだろうに。


「さっきも言ったけど、ここのところ僕は忙しいんだよ。下界を見てる暇がない」

「昼間神父の体間借りしてた奴が言うことかよ」

「昼間はいいんだよ。休息の時間なんだ。奴らは夜になると動き出すんだ」

「奴らって?邪神とか言うのか?」

「うん。あいつらは地上に降りようと暗躍してる。僕はそれを阻止する為にこの一年近く、ずっと戦っているんだ」

「ふーん?」


 珍しいギルニウスの真剣な表情。

 邪神と戦っていると言うのは嘘ではないらしい。

 イマイチ現状が理解できていないので生返事になってしまう。

 と、今の邪神の会話で一つ思い出した。


「あ、神様。あんた今日悪神扱いされてたぜ」

「悪神!?この僕が!?一体どこのどいつだい、そんな罰当たりなこと言う奴は!」


 更に珍しく怒りを露わにするギルニウスの姿が見られる。

 やっぱり神様だけあって悪神扱いされるのは嫌なんだな。


「インスマス教団って奴らだよ」


 怒り狂う神様の姿が見たくて教団の名前を教える。

 だが俺の予想に反して、神様はその名前を聞くと怪訝な顔で俺を見つめていた。


「インスマス?今インスマスって言った?」

「お、おう。インスマス教団って奴らが、夜の噴水広場で演説してたぞ。もうすぐこの国は災いが起きるけど、ウチの教団に入れば救われまーすって」

「……そうか、あいつらが。となると、やはりタコどもがいきなり活動し始めたのは──」


 その教団に思い当たる節があるのか、神様はぶつぶつと呟き始めてしまう。

 一人呟き歩き回る神様を前に立ち尽くしていると、バッとこちらを振り向く。


「それで?インスマス教団の話しは他にあるかい?」

「面白そうな奴らだったから、後をつけてインスマス教団の教会まで行ったんだ。それで中をこっそり覗いたら、いきなり魔法撃たれたよ。透明マント着てたのにだぜ?」

「あのマントはマナを使用して効力を発揮する物だからね。マナを感知できる魔術師なんかには意味ないからね」

「それを前もって言ってくれよ!」

「いやぁ、まさか教団本拠地まで行くとは思ってなかったから。前々から思ってたけど、君って結構無謀な行動が多いよね」


 そう言われてしまうとぐぅの音も出ない。

 興味本位で中を覗いて攻撃されたのだから、確かに俺の不注意が招いた結果だ。


「しかしよくそれで捕まらなかったね?」

「大蛇や蜘蛛に比べたら、人間から逃げるのなんて百倍簡単だわ」

「はははっ!確かに違いない!」


 魔物に追いかけられるのは本当に恐ろしいからな。

 俺もフロウも未だに蜘蛛に襲われた時の光景を夢に見る。

 蜘蛛の毒で溶解した生き物を見た俺に至っては、数ヶ月肉を食べられなくなってしまった。

 症状の緩和はしたが、未だに肉を見るとあの時の事を思い出してしまう。

 神様はひとしきり笑うと、またすぐに神妙な面持ちになる。

 

「教会を見た時、何か変わった物とか見なかったかい?教団員がどんな姿をしてたかとか、変な呪文を唱えてたとか」

「教団員は普通の人間だと思うぞ?教祖は老人、演説してた奴も人間っぽかっし、見張りも人間だったはず。あ、でも信仰対象の彫像は気持ち悪かったな。なんか、タコみたいな奴だった」

「……そうかい。ありがとう」


 神様は何かに納得したかのような表情を見せる。

 何だろう、インスマス教団とは因縁でもあるのか?

 それとも単に信者を取られたくないのだろうか。


「相棒はまだ王都に滞在するのかい?」

「一週間の滞在予定だからまだ五日間はいる」

「なら、インスマス教団にはもう関わらないようにするんだ」

「言われなくても、あんなのに関わるのは俺だってごめんだよ」


 あんな明らかに怪しい集団に好んで近づく人なんていないだろう。

 姿は見られたが、顔までは見られていないとは思う。

 だが町中で教団の信者を見かけても目を合わせないようにするつもりだ。


「よろしい。村に帰るまで何も起きないこと祈ってて」

「やめてくれよ……その言い方だと何か起きるみたいじゃないか」


 あと五日でニケロース領に帰るのだ。

 ここで問題が起きるのはごめんだぞ。

 嫌な言い方をする神様にしかめ面を見せていると空間が僅かに歪む。

 どうやら、もうすぐ朝が来るみたいだ。


「もう朝になるのか。神様、借りてた透明マントはどうすればいい?」

「そのまま君にあげるよ。僕はこれから一眠りさせてもらうよ」

「そうかい。じゃあな」


 手をヒラヒラと振り別れを告げる。

 目の前が次第にボヤけ始め、真っ白に染まる。

 三日目の朝が昇るのと共に、俺はギルニウスルームから退出した。

来週もまた見てくださいね〜!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ