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二色眼の転生者《オッドアイズ・リ:ライフ》  作者: でってりゅー
第三章 ライゼヌスを覆う影
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第四十八話 ぶらり夜の町

深夜春アニメが始まりましたね!

観たい番組が多いのに観る時間があんまりない!


 ギルニウス教会の懺悔室で俺と神父の体を借りた神様のギルニウスと対面していた。


「いやぁーしかしよく戻ってきてくれたね。薄情な君のことだからてっきりそのまま帰るかと思ってたよ」

「そう思ったんだけどな、確認したいことがあったから戻ってきた。そう思ったから神様も懺悔室で待ってたんだろ?」


 まぁね、と笑う神様にちょっとイラッとしたけど、今は他の人体を借りているので殴るのはやめておく。

 楽な姿勢で椅子に腰掛けて足を組むと俺は質問を始める。


「あんた、ベルに何か吹き込んでただろ?」

「あ、やっぱりわかっちゃった?」

「そりゃな。今朝バルメルド家覗きに来て奴が、昼間に俺の前で転んだのは偶然にしちゃ怪しいからな。それにあの子は俺が名乗る前から俺の名前を知ってたみたいだし、そもそも初対面の人間と一緒に行動しようなんて警戒心が薄すぎる」

「初対面ではないんだけど……さすがに露骨過ぎたかな?」

「そうかもしれないなーって思ったけど、ベルが祈りを捧げている最中に『ギルニウス様、お導きありがとうございます』って言ってたのを聞いて確信したんだ」

「あちゃー、あの子は素直だから仕方ないか」

「第一、あんた前から忙しい忙しいって言ってたのにこんな時間に俺と話してていいのかよ?」

「息抜きだよ。夜なったらまた天界に戻って大仕事だ。その前に僕を信仰してくれている可愛い信者たちを見ておこうと思ってね」


 神様っぽいこと言っちゃって……あ、本物か。


「んで?ベルを使って、あんたは俺に何がしたかったんだ?町巡りぐらしいかしてないけど」

「え?なんの話?」


 俺の質問に神様が疑問符を浮かべる。

 それを見て俺もキョトンとしてしまう。

 俺とベルを引き合わせたのは何か意味があるのではなかったのか?

 まさかこの神様、俺の脱童貞の為に女の子を紹介してくれたのか?


「あー違う違う。一昨日ぐらいにね、ベルが教会に来た時に家を抜け出すのをお許し下さいってお祈りしてたんだ。それで、あの子の夢の中で君の事を話したんだ」

「は?なんでそこで俺の話を?」

「君は可愛い女の子には優しいから、助けを求めれば間違いなく町で遊べるだろうって」

「あー、なるほどぉ!俺をダシに使ったと……ア"ァ"!?」

「まぁまぁ、そのおかけで可愛いを女の子とお知り合いになれたじゃない」

「そうだな。そこだけは感謝してる」


 だがこいつに利用されたのが癪なのだ。

 俺の為ではなく他の人の目的の為に俺をダシに使ったのがな!


「ごめんごめんって、君と僕の仲だろう相棒」

「言っとくけど、俺はあんたと協力関係を結んだが、ギルニウスと言う神様をまだ完全に信仰している訳じゃないからな」

「あら、それはまたなぜ?」

「転生させてくれたことには感謝してる。でもそれとあんたを信仰するのはまた別だ。もしかしたら途中で神への生贄にとか言って殺されるかもしれないし」

「生贄なんて物騒なことしないって、僕ってそんなに胡散臭い?」

「胡散臭い。第一説明も無しに王都に行くな、なんて手紙寄越したのに、いざ会ったら歓迎するなんて行動する奴信じられるかよ」

「ん?手紙ってなんのこと?」

「とぼけちゃってぇ。俺が王都に出発する前の日に『オウトニハイクナ』って日本語で書いた紙送ってきたろ。神様字書くの下手すぎじゃね?少し勉強したら?」


 字の汚さを思い出し呆れていると神様は首を傾げる。

 まるで、そんな物は知らないと言いたげな顔で。


「おいおい、忘れたのかよ」

「ちょっと待って、本当に僕はそんなの知らないよ?」

「え……だって、俺が日本語を読めるっ知ってて送るのなんて神様ぐらいしか……」

「僕は他人の意識に干渉できるんだよ?君に何か言伝するなら、わざわざ手紙なんか使わないよ」


 お互いに眉間にシワを寄せる。

 あの手紙は神様が送った物じゃないのなら、一体誰が俺に警告文を送ったんだ?

 

✳︎


 懺悔室で神様と話し終えた俺はジェイクたちの元まで戻る。


「ただいま戻りました」

「おかえりなさ……あら、クロちゃんその手に持ってるマントどうしたの?」


 手に持っている白い無地のマントを見てユリーネが尋ねる。

 懺悔室を出る時に神様に渡されたのだ。


「あぁ、神父様がこれから冷えるだろうから羽織って行きなさいって」

「あら、良かったわね。今度来た時にお礼を言わなくちゃね」

「もう言ったから大丈夫です」


その後は馬車に乗り屋敷へと戻る。

 昨日と同じ様に夕飯を食べ、大浴場に兄弟たちと入り、書庫から本を部屋に持ち込み、礼拝部屋で祈りを捧げ、イルミニオたちに「おやすみ」の挨拶を済ませる。

 昨日と全く同じ、そう……ここまではだ。

 俺は寝室に戻ると扉の鍵を閉める。

 ベッドで俺が寝てるように見せかける為に衣類を詰め込むと布団を被せた。

 そして夕方に神様から貰った白いマントを羽織る。


「全く、子供に夜遊びさせるとかロクな神様じゃねーな」

 

 姿見で自分の格好を確認しながらボヤく。

 懺悔室から出る時、神様は俺に一つのお願いをしてきた。


『夜の城下町を観察してきてほしい』


 ただそれだけの内容だった。

 その為にわざわざ魔法式が組み込まれた魔導具であるマントまで渡されたのだ。

 なぜそんなことを俺がしなければと思ったのだが、神様にお願いされる手前断れなかったのだ。


「えーっと、マントを着たらフードを被ってマナを流すっと」


 神様に教えられた通りマントに触れてマナを送る。

 マント全体に隅々までマナが渡りきると、姿見に映る自分の体が、マントで隠れた部分が消えて見えなくなっていた。


「おお?おおおお!?」


 全身をマントで隠すともう姿見に自分の姿は完全に映らない。

 その場でくるりと一回転して見ても鏡には存在は認識できなくなっていた。

 間違いない、これは透明マントではないだろうか!?

 なんと素晴らしい!

 ドラえもんや賢者の石でよく見たあの夢にまで見た道具を実際に使えるだなんて!

 あー生きてて良か、いや一回死んでるけど……


「この透明マント、マナが続く限りは透明になるのか」


 だんだんマントが透け始めているのを見て、もう一度マナを流し込むとまた完全に視界から消える。

 幸い俺の体はマナを使ってもすぐに失った分を補給する体質なので、マナ切れの心配はないだろう。

 マントの使い方を理解すると窓を開けてベランダに出る。

 音が響かないように静かに窓を閉める。


「そんじゃ、夜の散歩へと……レッツゴー!」


 俺は風魔法を使って夜の空へと飛び出した。

 なるべくマントが風で靡かないように抑える。

 富裕地区を抜け城下町の大通りに差し掛かると魔法を使うのを止め、人混みから離れて歩くのに切り替える。

 いくら透明で見えないとは言え、すり抜けたりはできないのでなるべく人と接触しないようにしなければ。

 夜の城下町は昼間と違う意味で賑やかだ。

 皆意気揚々と酒瓶を掲げて道を歩き、酒臭い息を振りまいている。

 客引きに獣耳と尻尾を持つ獣人族の女性や鳥のような姿をした天海族の女性が見えた。

 他にも海人族のマーメイドや妖精族のエルフなんかもいて、昼間には見なかった亜人種の姿が多く見られる。

 さすが大陸中心都市ライゼヌス、大陸中の種族が集まるだけはある。

 人波を観察しながら歩いていると、正面から歩いてきていた男性とぶつかってしまった。

 相手はよろよろと歩くと尻餅をついた。


「うぃ〜おっとっと!」

「あ、すいません。大丈夫ですか?」

「どこ見て歩いてんでぇ〜!気ぃつけろ!」


 どうやら相手は酔っ払ってるらしく、呂律が少し回っていない。

 ぶつかってしまった相手に声をかけて手を差し出すが、


「……あり?だぁれもいねぇ。声がしたと思ったんだけど」


 あ、そうだ。

 今俺の姿見えてないんだった。

 見えない声に酔っ払いが周りを見回していると、その様子を見ていた他の人たちが声をかける。


「なぁにしてんだあんた。大丈夫か?」

「おい、今ぁ俺誰かとぶつかったよなぁ?」

「何言ってんだよ。あんた急にふらついて座り込んだんだろ」

「いやぁ、誰かとぶつかって謝られた気がしたんだがなぁ」

「酒の飲み過ぎじゃねーか?」


 酔っ払いを見てみんなが笑っている。

 あまりこの場に長く留まるのも良くないので、俺はもう一度ぶつかった相手に頭を下げるとその場から離れた。

 酒臭い大通りを抜けて噴水広場までやってくる。

 人の来ない茂みに隠れると座って一息ついた。


「はぁー人混みキッツ」


 透明マントのおかげで誰にも姿を見られてはいないが、相手から見えないと言うことはぶつかる危険が多いということだ。

 ちょっと余所見をしていると人とぶつかりそうになってゆっくり観察もできやしない。

 ここに来る途中の露店で売っていた『森の水』とか呼ばれていた飲み物を乾いた喉に流し込む。

 おっと、姿が見えないからって盗んだ訳じゃないぞ。

 ちゃんとお代は商品を取る時に置いてきた。

 商品が宙に浮いて、何もないところから銀貨を投げられてお店の人驚いてたけど。

 水を全部飲み切りもう一度一呼吸する。

 『森の水』とか言う商品名だから、ミネラルウォーターみたいなもんかと思って買ったんだけどただの水だったわ。

 これなら俺が魔法で出した水の方が美味いかもしれない。


「あーあ、これからどうしようかなー」


 神様に夜の城下町を観察してほしいとは言われたが、特にこれと言ってめぼしい物はなかった。

 まぁ大人のお店が多いなってのと、夜になると人族以外の亜人種をよく見かけるってぐらいの感想しかない。

 しかも子供の俺は他人に姿を見られてはいけないので、こそこそ動かなければいけないのが面白くない。

 もっと堂々と歩き回りたいのだが、夜遅くに子供が町を歩いてるのを見つかるのは色々と問題あるので仕方ない。


「もう帰ろうかなー」


 そろそろ町を歩くのも飽きてきたしなぁ。

 星空を眺めながらどうするか考える。

 ニケロース領の村と同じで星がよく見える。

 なんだか村で見るよりも星の光が強く輝いて見える。

 まるで星同士が張り合っているかのようだ。


「お集まりの皆様、どうか僕の話を聞いてください!」


 夜空を見上げていると噴水広場に男の声が響き渡る。

 視線を下げると、噴水の前に黒いローブを纏う集団とその先頭に立つ一人の青年の姿があった。

 道行く人たちも青年の声に足を止め彼らに注目する。

 集団の先頭に立つ黒髪の青年は二十代前半ぐらいだろうか。

 俺と同じ人族で腰に剣を帯刀している。


「この町に危機が迫っている!僕らはその危機をみんなに伝える為にやってきました!」

 

 彼の言葉に皆が何事かと足を止めて集まり始める。

 俺もマントを羽織り直すと茂みから出て最前列に割り込んだ。


「どうか最後まで聞いてほしい、僕らの言葉を!僕らは、悪神からあなたたちを救いに来た者たち!『インスマス教団』である!」

もうそろそろ3章中盤になります。

次回もまた週末になりまする。

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